ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

街角のタンゴ2010

2010-08-07 05:34:17 | 南アメリカ

 ”Tricota”by Otros Aires

 この頃はタンゴの新しい波と言うか、例のゴタン・プロジェクトとかの活躍もあり、タンゴ・エレクトロの世界にも興味が集まるようになって来たようで。いや、そりゃたがか知れてますよ、そんなものに興味を持つ人なんて、まだまだほんのひと握りだろうけど。
 そんな訳で、これも一時、ゴタン・プロジェクトなんかと一緒に話題にされたエレクトリック・タンゴの注目バンド、Otros Aires の新作であります。

 と、書いたそばからナニですが、ここで聴かれる彼らのサウンドは、売り物だった打ち込みやらサンプリングやらの要素は大きく後ろに退き、かといってもちろん昔ながらのタンゴ表現に帰るはずも無し、なんだか妙に肉体性を感じさせると言いますか、生音も響きも生々しい”街角のタンゴ”の表情をうかがわせるものなのでありました。
 ともかく一番目立つのがロックの出自を隠すことのないワイルドな、というかもしろ”ガサツな”と呼びたいドラムスのプレイなのでした。こいつがガシガシと生々しいリズムをど真ん中で刻み、結構切ない調べを奏でてそれらしい雰囲気に持って行こうとするバンドネオンやピアノの動きを寸断しまくります。そしてこいつもワイルドに街のチンピラの激情をツバを飛ばしつつ語り通すボーカル。

 いずれにせよ、このバンドがデビュー当時に売り物にしていた妖しげなエレクトロニック・ポップ化されたタンゴの退嬰的な響きは後ろに下がり、なんだか”パンク・タンゴ”とでも呼びたいような生々しい”今の街の響き”をこの、今年になって出たばかりの彼らの盤は感じさせるのでした。今後の彼らがこのような方向へ完全に行ってしまうのか、それは私には分かりませんが。
 ここで思い出すのが、あれは8年前のことでしたか、日韓共催のサッカーのワールドカップで、移動の際のバスの中でアルゼンチンの代表選手たちが手拍子を打ち鳴らしながらタンゴの曲を歌っていた、というか喚いていたシーン。私はそれをテレビで見ながら、時代の中に生きる生々しいタンゴの姿を感じ、息を呑んだものでしたが。そういえば、あの時バスの中で演じられていた音楽が、この盤で聴かれる音にやや近いと言えそうな気もします。

 と言う次第で、You-tubeには、まだこの盤の音が上がっていないようなので、せめてその手触りにある程度近い、ライブの音を下に貼っておきます。





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