ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

Lolaの島唄、ビギンの輝き

2012-04-26 01:16:10 | 南アメリカ

 ”LOLA MARTIN”

 という訳で、フレンチ・カリビアンものであります。カリブ海はグァデロープにて1969年の録音とあります。古き島唄、ビギン集。いやあ、実に愛らしい一枚と言えましょうなあ。
 いつまでもしつこく続く冬に対する不愉快気分の表現として、あえて北国の陰鬱な音楽をずっと取り上げてきたこの日録なんだが、このところ妙に暖かかったんで、そんな時にはこういう音も聴いておきたい。

 しかし良いねえ、この音は軽くて。こういう音楽に出会うと私は、タモリの名言を思い出してしまうのだ。いわく、
 「いいねえ、あんたの音楽は。な~んにも言ってなくて」
 言われた相手は井上陽水で、苦笑しながら「いや、何か一言ぐらい言っていると思うんだが」と不満げに呟いていたが。
 この音楽に関しても、「何を言っているんだ。この音楽はいろいろなことを言っているぞ」とお怒りの向きもあるかもしれない。まあ、そりゃそうなんでしょうけど。

 これが同じカリブ海の音楽でもキューバものといいますか、スペイン系のものなんかになると、あのドロッと粘り気のある濃い口のスペインの怨念とアフリカの爆発力とが入り混じって、”血の祝祭”みたいな業の深さがどうしても漂う。
 そこへ行くとこの種のフレンチものは、なにやら小洒落た雰囲気など漂わせながらスイスイと街角を流れ過ぎて行ってしまう感がある。口笛など吹きながら。
 収められている曲目は詠人知らず版権開放ものが大半ですが、メロディラインは、これはカリプソの系列に属するものですな。優雅に上下するクロマティックな音列が心地よい。

 これはさ、確かに実は何か言ってるのかもしれないけど、そんな素振りも見せずに紅灯の巷に姿を消す遊び人の粋に通ずる良さがある、ととらえたい。
 このアルバムの主人公、Lola嬢の歌声も、こりゃアイドル声と言っていいでしょう。立派な歌なんか歌うより可愛がられちゃったほうがおいしいわ、との価値観が楽しげに泳ぎ回っている。バックコーラスの男声陣との掛け合いのシーンも多く、そこにはそこはかとない大衆芸能の楽しさ、胡散臭ささ、などが漂います。
 バックのリズム隊もギターや木管吹きも、結構、ややこしいことやったりもしているんですが、それを押し付けてくる感じではないですな。

 終わり近く、歌謡曲色の濃いマルチニック賛歌(?)から愛らしいワルツに、そして島の祭りにて締め、という構成が気が利いています。ローラの島唄、これで終わりかなあ。もっともっと聴きたいがなあ。

 試聴です。
  ↓

  


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