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”TIERRA AGRESTE ”by FLORENCIA TORRES
そもそもは、あるパンフレットの隅に載っていたこのアルバムの広告を見、ジャケ写真の彼女のビジュアルに興味を持ってしまった私なのだった。そう、またジャケ買いなのであって。
彼女は19歳のアルゼンチン人で、新人のフォルクローレ歌手。今年出た、このアルバムがたぶんデビュー盤である。フォルクローレなんていうとねえ。なんか甲羅を経た爺さんばあさんがしわがれ声で歌うのを聴くのが定番であって。こんなアイドルみたいな子が、どんなフォルクローレを歌うんだろうと楽しみだったんだが。うん、期待した以上に楽しめたのだった。
まず、若い女の子が基本的に持っているアイドル声の面影を残しつつ、なにやらぶっとい声でドスコイとパワフルに歌いきってしまう、その潔さが嬉しい。なんか、「あと50年くらいしたら、渋い歌い方ってのを身につけるから、それまで放っておいてくれる?」って年寄りの説教を封じておいて、高く広がるアルゼンチンの巨大な青空の広がりの下、気持ちよさげに好きな歌を歌う、そんな生命力の弾け具合がね。
また彼女は、歌の間に時おり、あの漫才の西川のりおが「ホーホケキョイッ」とかガラガラ声で怒鳴る、あれと声質も間もそっくりな歌声を混ぜる、変な芸を持っている。これはフォルクローレの世界に伝統的にある唸り芸なんだろうか?
ふと、デビュー当時の都はるみなど連想してしまうんだけど、TIERRA AGRESTE のそれは、あれよりずっと柄が悪そうで良い感じなんだ。客席でも、「おおっ、来た来た来たっ!」とか喜んでいるんじゃないのかな、皆は。
なんてレベルの庶民派の彼女だが、この天然パワーでどこまで行けるか。これからどんな風にフォルクローレの世界に新風を吹き込んでくれるのだろう。楽しみだね。