ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

小山ルミ再発見

2008-09-21 04:42:45 | 60~70年代音楽


 ”ドラム・ドラム・ドラム”by 小山ルミ

 小山ルミといえばリアルタイムでテレビ等でその姿を見ているはずなのだが、不思議になんの記憶も蘇らない。今で言うバラドルみたいな事をやっていたような記憶もあるのだが、他の誰かについての記憶と混同している可能性も大いにある。
 などと思いつつ、クソ、もっとよく見ておけば良かったなあなどと30年遅れで悔しがってみるのも、今年になってCD再発された、この1972年に世に出ていたアルバムが、かなり良い感触の作品になっているのに気が付いたからである。

 結構カッコいいんだよ。平山ミキの”フレンズ”とか朱理エイコの”北国行きで”などなどカバー曲が多いのだが、今聴いても全然古臭くない”ロックな”歌唱法が切れまくり、へえ、小山ルミって、こんなに良い歌手だったのかと驚いている次第。
 もっとも当時、ゴリゴリのロック少年で歌謡曲などバカにしていた私が、リアルタイムでこのアルバムを聴き、その良さを素直に認めていたかどうかは分からないのだが。

 しかもこのアルバム、発売当時は8トラックのカートリッジ・テープでしかリリースされなかったのだとか。この扱いが何を意味するのか、今となっては実感として理解は出来ない。軽い扱いだったのか、それとも”めちゃくちゃナウい”処置といえるものだったのか?
 ともかくこのアルバムは普通の”レコード”という形ではなく、もっとラフに時代の中に放り出された。そんな”生の感触”が収められ音の中にも息ずいている、時代の熱さが脈打っている、そんな感触がある。

 ”フレンズ”などは平山ミキのオリジナルよりも、よりロックな手触りの出来上がりで数倍カッコいいし、終わり近くに収められている”許されない愛”の、自分の出せる最高音ギリギリまで使っての熱唱など、ちと胸が熱くなる感がある。そうだ、今頃になって”歌手・小山ルミ”の熱烈なるファンになっている私だ。

 ところで”許されない愛”って曲は、誰か男性アイドルの持ち歌との記憶があるが、誰だったか思い出せない。ここまで出ているんだが、という奴で。まあ、男性アイドルの名前なんてどうでもいいんだが。
 むしろ聴いているうちにこの曲、早川義夫が1969年に出したソロアルバム、”かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう”の中に入っていた曲、なんて気もしてくるのだった。そんなはずはもちろん、ないのであるが。

 この錯覚の原因は実は分かっている。早川のアルバムの一曲に、一部これと似たようなリズムとコード進行の曲があるのだ。そのあたりから生じた錯誤なのだ、おそらく。
 が、元の男性歌手の歌からはそのような錯覚は生じなかったのであって。これはやっぱり、小山ルミの歌唱の内に流れている時代の魂がロックだったからと言えるのではないか。

 早川のあのアルバムにおける、ピアノの弾き語りのみの死ぬほど地味な音楽に、60年代から70年代にいたる、屈折しつつ燃焼していた時代の魂が脈打っていた。その鼓動と共鳴するなにかが、この”ドラム・ドラム・ドラム”にも流れていることを今頃発見して、なにやら、どこかへ駆け出したいがいまさら行く先もない、みたいな妙な血の騒ぎをもてあます私なのだった。


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