ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ノルディック、北のふるさと

2012-01-29 18:12:18 | ヨーロッパ

 ”Sarastus”by Rija

 何が驚いたと言って、急転直下、母の退院が決まったのには驚いた。週が開けたら、家に帰ってくる。
 昨年暮れ、救急車で母を病院に連れていった際には担当の医師から、「お母さんから以前より、”いざというときには、積極的延命処置は行わない”との要望を受けているのですが、ご家族の方も、それでよろしいですか?」なんて訊かれたものだった。それほどの症状だったと考えていいのだろう。それが意外に順調に。
 まあ、治ったといえるのかどうか。医師の説明のニュアンスから想像するに、「完治したと言えるほどでもないんですが、医学のやれることはここまでで。あとはご自身の回復力ということですね。まあ、だいぶご高齢ですしねえ」というところではないか。

 母をあずける予定でいた老人向け療養型病院はただいま満杯の状態で、順番待ちの列も長く、いつ入れるのか分からないという返事。まあそれまでは家に引き取っておきましょ、という次第なのだが、とりあえずの処置とはいえ家に帰れると決まってからの母がめっきり明るく元気になった様子など見ていると、よほど施設には入りたくなかったんだな、口には出さなかったが。
 それならいっそこのまま、どこまで行けるかやってみるかと思いかけているが、これはどの程度、無茶な考えなのか。なにしろ引き取り先は満員であり、とりあえずはそうするよりないのだが(結構気難しい母であり、どこの病院でもいい、というわけには行かないのだ)この”とりあえず”をいつまで続けるのか。そして母の”小康状態”はどこまで。冬空に重苦しい雲が下がって、先は見えない。

 本日の一枚。フィンランドの、土着志向らしき女性歌手。ジャケには副題のように”ノルディック・ヴォイス”と記されてあり、北欧独特の歌唱法を指すらしい。それが彼女の”売り”のようだ。

 聴いてみると、いわゆるトラッドの歌手とケイト・ブッシュみたいな不思議ちゃん系歌手の要素が混在した感じで、”ノルディック”の実態はよく見えない。超高音でヒラヒラ歌ったり、モンゴルのホーミーみたいな人力エフェクターを披露してみたりするが、明らかなノルディックの証しみたいなものはあるのだろうか。
 それでも、いかにも北国の音楽らしい陰りや神秘性などはそれなりに漂い、ワールドミュージック欲求は一応、満足させられる。
 伴奏陣も、ハープギターなどという珍しい楽器を動員したり、曲のあちらこちらに中世ヨーロッパっぽい雰囲気を盛り上げるフレーズを挟み込んだり、なかなかの凝った仕事をしている。

 ただ、彼女の母国のフィンランドの言葉は2曲でしか使われておらず、あとは英語の歌詞であったり、それほど濃厚に北欧志向の音楽性が披露されるわけでもなく、むしろあまりマニアックにならずに万人に、北欧の森と伝説の神秘を楽しんでもらおう、なんて意匠で作られた作品のようだ。収められた曲には、”スカボロー・フェア”みたいな曲調のものが多く、このあたり、汎ヨーロッパ的意識における”北のふるさと”のイメージかとも思う。






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