ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

バリ・ジャイポン、混ぜるな危険

2010-07-21 03:33:10 | アジア


 ”Bali Jaipong”by SAMBASUNDA

 サンバスンダとは1990年代末、西ジャワで生まれた実験精神溢れるガムランのチーム。ジャワ島独特の小編制の瞑想的なガムラン音楽の伝統をユニークな方向に展開させる運動を行なっている。ともかく普通じゃない連中であるのは、グループ名から、すでに明らかであろう。
 とか何とか言っているけど、私はガムラン音楽に、まるで詳しくない。持ってるアルバムだって、これを入れても数枚といったところで。
 なんかねえ、これは偏見なのだろうけど、どうもガムラン音楽ってのは妙に格調高くて、胡散臭い気がしたのですな。”お芸術”好きな西欧人に受けようとして、あのような形が出来上がったのではないか、なんて疑ってしまって、好きになれなかった。と言うか本気で聴く気になれなかった。

 その後、バリ島の芸術自体が、そのような西欧を視野に入れた観光資源志向を孕みつつ発展して行った、なんて話を”バリ島”って本(講談社現代新書・永渕 康之 著) で読んだもので、ほれ見ろ、やっぱりじゃないか、などと意を強くしたのだった。ほら、”ケチャ”なんて大合唱音楽もあるでしょう、バリには。あれなんかも、いかにも”芸術でござい”なんて佇まいがあるでしょう。あれも偶然じゃない、はじめから西欧人のエキゾティックな南海に向ける期待にこたえんがために作り上げられた音楽なんだからね。

 などと悪口言っている私がこのアルバムを聴く気になったのは、同じバリ島に発生した、こいつは本物の大衆音楽である”ジャイポンガン”を、サンバスンダの連中が取り上げているからと知ったから。 
 ジャイポンガンというのは、小編制のガムランの伴奏を伴って歌い踊られる、比較的歴史の若いダンスミュージックで、変幻自在なリズムと感性の躍動が聴く者を血湧き肉踊る世界に誘う、といった音楽。
 端正なバリのガムランとエモーショナルなジャイポンガン、どのような対決を見せてくれるのか。こいつは興味をそそられた。

 聴いてみれば、バリのガムラン音楽が作り出す華麗な音像の中で、エロティックとまで言われたジャイポンガンの暴れまくる様、実に痛快であり、まさに外はカラッと仕上がり中は肉汁たっぷりの強力な民俗料理に仕上がっており、この辺には実はあんまり詳しくない私も、大冒険世界を大いに楽しんだのだった。これは凄いよ。

 残念ながらサンバスンダのこのアルバムの音はYou-tubeにはないみたいなので、ジャイポンガンの映像を再生回数の多いものを選んで貼っておきます。