”Semen Roris”by Lucus
どうやらイタリアの趣味趣味バンドらしい。この種の音は結構好きなんでいくつか持っているんだが・・・こういう音楽をなんと呼ぶのだろうか?ワールドミュージック系古楽派? まあ、ジャンル名なんて売り出し担当者がテキトーに思いついたものだろうからどうでもいいんだけど。
クラシカルな女性ボーカルをメインに、リコーダーやら古式バイオリン、トルコの民俗楽器サズと言った古ものめいた生楽器中心の素朴で静謐な音作りである。砂漠に浮ぶ蜃気楼みたいな儚い幻想を描き出している。
シンと時の止まったような世界に、淡い悲しみをたたえた歌と演奏が静かに渡って行く。
中東っぽいメロディが吹流されたり、グレゴリオ聖歌めいた男女コーラスが披露されたり。感じとしては中世ヨーロッパあたりが舞台で、ウクライナあたりから中央アジアに歩を進めている夢でも見ている設定か。
ジャケに使われている、アラビア文字めかしたアルファベットの字体などから、その辺のお遊びが好きな連中であることはすでに明らかだ。
面白いのはいくつかの曲で日本民謡と同じ音階が使われていることで、とはいえことさら日本情緒が強調されているわけでもなく、そこはかとなくどこかで聴いた記憶のあるようなないような幻の”古き日本”がひととき現われ、一舞いしては消えて行くのである。これは、はるか彼方の黄金境ジパングへの憧れでも歌っているのだろうか。
梅雨の時期をすっ飛ばしていきなり真夏にでもなってしまったかのような蒸し暑い一夜、一人でいたらこんなアルバムをふと思い出して聴きたくなってしまったのはいかなる行きがかりか。稲川淳二のCDを聴く手もあったんだが。
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