ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

太陽と薔薇のブルース

2010-07-10 04:32:44 | ヨーロッパ

 ”In forma di Rosa”by Rosa Paeda

 どういう人なのかまるで知らないのだが、ジャケの薔薇の花の赤い色彩があまりに強烈なので、ふと購入してしまった。妙なジャケ買いもあったものだ。
 南イタリアの、民謡系の人らしい。超短髪でメガネまでかけて、なんかインテリ臭い風貌に、「頭で音楽をやる人かもな?ヤバいかな?」と一瞬、不安が過ぎったりもした。

 イタリアも最南端、かの靴の形をした国の踵の辺りの音楽をやっているそうだ。聴いてみれば、いかにもそんな感じ、非常にアラブの影の濃い歌を聴かせる。そもそも、バックバンドはアラブの民俗打楽器を使用しているのだし。その他、ギターはフラメンコっぽくなりもし、木管楽器はバルカン的な曲がりくねったメロディを奏でもする。東地中海の陽の輝きと、それに反比例して地に落ちる果てしなく黒い影の音楽。様々な文化の混交。

 そして主人公のRosa Paedaは、やはり南イタリアらしいアラブ色濃い、”朗誦”なんて言葉を使いたくなるような重い土俗と、南の太陽の輝きを、その歌声で振りまく。
 最南端のこの辺りが、イタリア人にとっても”地の果て”の感じなんだろうか?南イタリアの民俗音楽を聴くといつも、地面深くに沁み込んで永遠に癒える事のない孤独の泉の響きを聴き取ってしまう。

 照りつける太陽とからりと乾いた空気と吹き抜ける潮風の中で、そいつは人々の魂に取り付いて永の年月を生きている。女たちがまとう民族衣装の厚ぼったい黒い生地の下で、営々と息付いている。
 そんな乾いた孤独のイメージが吹き寄せて来て、野生の花の周りでカラカラと乾いた音を立てて舞っている。