ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

何人目かのフィオナ

2010-05-21 01:06:44 | ヨーロッパ

 ”Coming Home”by Fiona Kennedy

 棚を整理していたら、ずっと前に買ったまま放り出していたこのCDを見つけ、聴いてみる気を起こしたのだった。
 ええと、この歌手はどういう来歴の人だったのかな?と、このCDを購入した際には分っていたろう事が、もう思い出せない。情けないが、この頃真面目にトラッドの世界と向き合っていないからなあ。それにフィオナとかケネディなんて名は、トラッドの世界にはあり過ぎだってば。
 しょうがないから検索をかければ、リバーダンスとケネディ大統領関係の記事ばかりが引っかかってくる。そうか、リバーダンスで世間的には名を成した人なのか。私の知りたいのはそういうことではないのだが。それにしても後者は関係ないだろ。

 まあいいや、とりあえずスコティッシュ・トラッドの人、それも親の代から歌い手として有名な人らしい、ジャケの書き込みを見る限り。と言う分ったことだけ頭において聴いて行こう。
 トラッドと言っても枯淡の域に達している人ではなく、まだまだ生々しい肉感的と言いたい感触を持つ歌を歌う人だ。そして、トラッドと並行して新作のフォークを、それも自作の奴など歌う人で、このアルバムにも何曲かが収められている。
 それらを聴いていると、どちらが優れているというのではなく、トラッドもフォークも同じ水位の出来上がりで、聴いているこちらの気持ちも揺らがずにいられる。

 7曲目の「アフリカ」も、そのようなオリジナル曲の一つで、いやなに、実はこの曲が気になってこのCDを買い求めたのだった、それは覚えている。
 聴いてみると、特にアフリカ的要素もない”観光”っぽい爽やかフォークソングで、ちょっと拍子抜け。スコットランド民謡の歌い手がアフリカとどのように対峙するのか、興味があったのだが。むしろその次に収められたパーカッション入りのゲーリック・マウスミュージックのほうがアフリカを想起させる出来なんで、笑ってしまった。このノリでやったらよかったのに。

 その他、記憶の彼方から呼び戻された古い唄たちが神秘的なアレンジをほどこされて歌い継がれ、切なくも愛らしい最終曲、”Farewell My Love”に至る。美しいメロディがティン・ホイッスルをお供にひとときスコットランドの高原を漂い、そして消えて行く。
 なんか大きな気持ちの人だな。この、私にとっては何人目かに当たるフィオナのアルバム、他に持っていなかったか、探してみることにしようか。それとも、どうやら雨も上がったようだし、深夜の散歩にでも出てみようか。、