”Tralli-Valli”by Verka Serdjuchka
以前も取り上げたことのあるウクライナの男性、というかオカマのシンガー・シンガーであるヴョールカ・セルデューチカの、私が確認した限りでは最新作であります。もはや奴はウクライナだけではなくロシアでもそれなりの人気を獲得し、アーティストとしては上げ潮のイケイケ状態となっているようだ。
関係ない話だが、昨年辺りから松浦亜弥の形態模写とかで評判をとっているなんとかいうオカマ芸のタレントがいるでしょう?芸名は忘れたが、なぜか男だった頃の、つまり本名は覚えている。オオニシ・ケンジといった筈だ。
私はあの男が嫌いでねえ。嫌う理由はややこしいものではありません。ともかく何の番組でもテレビの画面に堂々と、何の遠慮もなしにしゃしゃり出てくるから。あの厚かましさが不愉快だ。
でもって。困ったことに私は今回、ここに取り上げようとしているヴョールカ・セルデューチカに、オオニシ某と同じ匂いを感じて仕方がないのである。こいつもきっと、厚かましい性格なんだろうなあと、これはもう確信に近いものを感じているのだ。
タレントとしての個性が非常に近しいのではないか?なんか似たような匂いを発しているのだ、両者は。
このアルバムも、ジャケの写真だけ見ているとなんの愛着も感ずることは出来ない。そこにはブクブク太った厚化粧のオカマ野朗が人を馬鹿にし切った表情で、ニンマリ笑っている画像があるだけだからである。
が、そこに収められた音楽の内容はというと、これがなかなか好ましい出来上がりなので、気分は複雑なのである。そうでなけりゃあこんなCD、ソッコーで中古店に叩き売ってやるんだがなあ。
まず、全編で聴かれる手打ちのドラムスが心地良い。ドスドスと打ち込まれるシンプルでいて重たいリズムにのり、いつものスラブ風といっていいのだろうか、哀愁漂うマイナー・キーのメロディに風刺と諧謔一杯(なのだろうと推察する。ウクライナ語など一字一句も解しません、私は。申し訳ないが)の歌詞を乗せて歌いまくる。こいつも世の中おちょくり気分でいっぱいの浮かれた男女のコーラス隊を従え、セルデューチカの歌唱は実にはつらつとしていて、ロシア民謡風パンクロック表現の一つの結実、なんて謳ってみたくなるのだ。
スラブ情緒一杯のアコーディオンの響きと、ちょっぴりクレズマーっぽいホーンセクションが東欧気分をいやがうえにも盛り上げ、ワイルドなエレキギターのカッティングがパンクの残滓の香りを漂わせる。このアルバムではときおり、ジャンゴ・ラインハルト調と言うべきか、ジプシー・ジャズっぽいアコースティック・ギターのソロが聴かれるようになっていて、これもセルデューチカのエキゾティックな個性によく合っていて、”当たり”と言えよう。
ともかく、これまで聴いてきたセルデューチカのアルバム中、もっとも好ましい音作りといっていいのではないか。
それでいて演奏時間は30分ちょっと、というあたりも人を馬鹿にしていて、いかにもセルデューチカ気分である。こんなもん、ミニアルバム扱いで売れっつーのよ。値段だけはフルアルバムでやがって。
まったく、ろくなもんじゃないですな。さあ、とっとと次のアルバムも出してみろ。負けずに聴いてやるから。
”Tralli-Valli”(2006)
1. Intro "V smysle nachalo"
2. Ljubi menja
3. Khorosho krasavitsam
4. Beri vse "Chto u menja est"
5. Trali-vali
6. Plakat ili radovatsja
7. A ja smejus
8. Scenka
9. Pomada
10. Kievskij vokzal
11. SMS-ochka
12. Sama sebe
13. Scenka
14. Khorosho krasavitsam (video-klip)
15. Trali-vali (video-klip)