ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ラゴスの沖でパイプライン

2008-10-03 02:16:53 | アフリカ


 ”AFRICAN MUMMY JUJU ”by QUEEN OLADUNNI DECENCY

 ナイジェリアのジュジュ・ミュージック界の、珍しい女性アーティストである、QUEEN OLADUNNI DECENCY の70年度作品をCD化したもの。
 彼女は1950年代の生まれで28歳で亡くなってしまったそうだ。ジャケに、”ナイジェリアで最初の女性ギタリスト”とある。
 これまで聴いてきた男性によるジュジュ・ミュージックよりも、なんだか輪郭のくっきりした骨太の押しの強いサウンドと感じるのは私だけ?複雑に絡み合うギター群も、おなじみトーキング・ドラムの音も、その他のパーカッションの響きも、なんだか妙に生々しい手触りの音で跳ね回る。

 バックバンドのリーダーは彼女の夫だそうだが、サウンド作りの実権は彼女と夫、どちらが握っていたのだろう?まだまだ男権社会であったろう当時のナイジェリアで、その辺の力関係はどうなっていたのか、気になるところだ。
 これまで聴いてきた、どことなくホワホワした印象の男性ジュジュ歌手に比べると、芯が強く粘着力のある感じのQUEEN OLADUNNI DECENCY のボーカルであり、迫力あるその声を聴いていると、バンドの実権も彼女が握っていたと考えたくなって来るのだが。

 複数聞こえるギターの、どのパートを彼女が弾いていたのか分からないのだが、軽くディストーション(というか、”ファズ”と呼びたい、ある種、古めかしい響きなのだが)のかかった音で、かなり自由な感じで間奏を弾きまくるのがQUEEN OLADUNNI DECENCY と、これも信じたいところ。
 これは、このようなプレイが他のジュジュのアルバムで聴かれないところから、そう断じてもいいのではないか。
 なんだかサイケというか日本のグループサウンズなどにも通じるような”エレキでゴーゴー”な響きのギターなのだ、意味が分かる人とそうでない人がいる表現で申し訳ないが。

 ベンチャーズがアフリカに与えた影響、なんてことも脳裏に浮ぶ。かのバンドがアフリカで人気があったのかどうか知らないが、ともかくトーキングドラムの叩き出す南国のリズムに乗って、”エレキでゴーゴー”的な、良い意味で60年代風の軽薄な(?)フレーズ連発が嬉しい。
 ここまで来たら、いっそ”パイプライン”とか”十番街の殺人”とかを弾いてしまってくれたらいいのに、なんてめちゃくちゃな事まで言い出したくなる当方なのである。

 こういうのを”同時代感”というのかどうか。ともかく独特の刺激的なジュジュ・ミュージックが演じられていて、QUEEN OLADUNNI DECENCY の夭折は、ほんとにもったいないことだったなあと言わずにはいられないのだった。