ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

イタリアの蝙蝠傘

2008-10-01 01:44:17 | ヨーロッパ


 ” L'Ombrello E La Macchina Da Cucire”by Franco Battiato

 というわけで気分を変えて。
 イタリアのシンガー・ソングライターの中でもひときわ訳の分からん人物、フランコ・バッティアートの作品でも取り上げてみましょう。

 このバティアート、ポップスを歌うかと思えばオペラを書き、現代音楽やら電子音楽を導入してみたりと、才気煥発というんでしょうか、音楽のジャンルのあちこちをヒラヒラと飛び回り、多彩な作品を生み出してきた人物。
 確かに面白い音楽なんで、いくつかアルバムも手に入れてみたけれど、彼と彼の作品をほんとに理解できているかとなると、あんまり自信はありません。まあ、分かる範囲で勝手に楽しめばいいんだと決めていますが。

 やたら数多いバッティアート作品の中でも傑作の呼び名高いこのアルバム、イタリアの哲学者なんだそうですが、Manlio Sgalambroなる人の書いた詞にバッティアートがメロディをつけたもの。大物同士のコラボレーションって奴でしょうか。

 哲学者氏の詞がどのようのものか分からないのが残念ですが、このアルバム・タイトルと、CDのレーベルに蝙蝠傘の先がグニャと折れ曲がりミシンの針に変身しているイラストが描かれているあたりから、例の”手術台の上での蝙蝠傘とミシンの出会い”でしたっけ、あのシュールレアリズム理論に関わるフレーズなど思い起こされ、おそらくは相当に不思議なものではあるまいかと。

 終幕近くに延々とドイツ語の詩(?)が朗読されるのも、どういう意味があるのか気になるところですが、調べてみたけどよく分からん。

 ここでバティアートが展開するのは、クラシックにルーツを持つ彼らしい、オペラっぽい混声合唱が電子楽器による打ち込みの反復リズムに乗り、美しくもどこか奇妙なメロディを歌い上げて行く、幻想的な世界。
 刺激的でありつつ気品もあり、ほのかにユーモアの感覚も漂う、いかにもバティアートらしい音楽の迷宮が展開されています。

 途中でメロディとサウンドはそのままに、歌声が謡曲のそれになってしまうギャグ(?)あり。気がつけば、いつの間にか機械の打ち出すリズムがカッポンカッポンと鼓みたいな響きになっている。
 こんなジョークを済ました顔でやってしまうバティアートの子供みたいな遊び心が、妙に嬉しい私なのでありました。