ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

誰かZoricaを知らないか

2007-03-22 01:02:26 | ヨーロッパ


 え~、ルーマニアのZoricaという歌手のアルバムがちょっと面白かったんで何か書いてみようと思いましてですね、とりあえず検索をかけてみたんですよ。ともかく何の知識もない歌手である事だし。どのような活動をしている人なのかくらい、知りたく思いましてね。
 が、これが何も引っかかってこない。いや、”Zorica”なる名義の記事や画像とかはたくさん引っかかってきます。が、どれもこれも私が今回書いてみようとしている歌手のZoricaとは関係のないものばかり。とりあえず分かったのは、Zoricaなる名は東ヨーロッパでは一般的な女性名で、医学上の功績を上げたZoricaって人がいるらしい、なんて、何の参考にもならないことばかり。

 もう、嫌になってきましてですね。芸能人でファーストネームだけで営業している人に言いたいよ。前から思っていたんだが、ファミリー・ネームも名乗った方が良い。かってはシンプルなネーミングの方が親しみやすかったりしたんだろうけど、このパソコンが当たり前の時代、やめた方がいい。検索がうまく行かなくて頭に来るんだよ、まったく。
 今回の場合、ともかく他に検索のキイとなるような言葉がない。そもそもジャケにはルーマニア語しか書いてないから、そうでなくともチンプンカンプンではあるし。

 と、いい加減嫌になって来てですね、もうヤケで、レコーディングに参加しているアコーディオン弾きの名前を彼女の名のあとに付けて検索かけてみたら。ありゃりゃ。それらしきサイトが引っかかってきたので驚きました。
 しかも、音楽のサイトじゃない。どうやらルーマニア料理のレストランの宣伝サイト。で、そこの座付きバンドというのかな、晩餐の合間に出てくる座興バンドで歌っているのがZoricaであるようだ。しかも、そのサイトでは、アコーディオン弾きの男の方が名前の扱いが大きい始末。うむむ・・・

 その記事に添付されていたのが上の写真です。ルーマニア料理のレストランの片隅で、こんな感じで歌うのを稼業としているのがZoricaであるようだ。いや、もしかしたら店の持ち主がZoricaかアコーディオン弾きのどちらかであるような気もする。二人のサイト上での扱いの大きさから想像するに。いずれにせよこれもすべてルーマニア語の記事なんで、なんとなく想像するしか私には出来ないんですが。
 ただ、私の手元にあるCDのジャケ写真に比べるとZoricaがちょっと老け過ぎている気がするんだなあ。ジャケ写真は、もっとアイドルっぽい。まあ、女性の顔の秘密に関してはわからないことが多いし、これはちょっとこっちに置いておきますが。

 でも面白かったんですね、これもまた。Zoricaの歌が生きている日常がどのようなものであるのかに、こちらとしては不用意のまま直面できた。こちらはワールドミュージックの何のと勝手にロマンチックなイメージを抱くけれど、とうのミュージシャンにとっては地道に”お仕事”だったりするんですね。

 私なんかがもし二人の店を訪れて「イスラム圏とキリスト教圏の文化が激突するバルカンの地にあって、さらにラテン民族の飛び地でもあるという特殊な立場にあるルーマニアの、ルーツ系ミュージシャンたるお二人にうかがいたい」とか力んでインタビューしても彼らは、腹の底で(うっとうしい奴が来たなあ。こっちはとっとと料理を食って帰ってくれるのが一番ありがたいのに)とか思うだけかも知れないなあ、と。現実を生きて行くってのは、そういうものなんですね。

 あっと、本末転倒。とってつけたようになりますが、Zoricaの音楽は、ルーマニアの民謡をモチーフにしているんですかね、シンプルで人肌に暖かい楽しいものでした。とかく尖った手触りになりがちなバルカンの音楽としては例外的に、Zoricaの陽気な持ち味の歌声とあいまって、明るい陽が終始降り注いでいる感じ。
 ここで聞かれる、どこか丸っこい印象のメロディは、バルカンではアルバニアあたりでよく聴かれるもので、その辺のつながりも興味深く感じます。

 それにしても参加ミュージシャンは、歌手のZoricaと日常のパートナーであるアコーディオン弾きに加えて、リズム打ち込み役も兼ねたキーボード・プレイヤーがいるだけのシンプルなもの。スカスカの音のむこうにルーマニアの下町のざわめきが聞こえて来そうな。徹頭徹尾、庶民派で嬉しくなる二人であります。いや、ご当人たちはもっとゴージャスにやりたいと思っているんだろうけど、おそらく。