ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

エレキの魂

2007-03-03 05:58:21 | 60~70年代音楽


 エレクトリック・ギターを”エレキギター”、あるいは単に”エレキ”と呼ぶようになったのはいつ頃なのだろう?命名者は誰で、どんないきさつが?全然知らないのだが、どのみちあんまり立派な日本語とも思えない。と言っても、そんな言い方をするな!とかいきり立つほどの意味も無いだろう。まあ、日本でベンチャーズの人気が沸騰し、アマチュアのコピーバンドが日本に溢れた60年代中頃、”エレキブーム”の頃だったのだろう。

 その当時、”かまやつひろしのギターアンプ調整法”なるものを噂話として聞いた。まあ、たわいのないもので、”かまやつはアンプの高音部をすべてカット、低音部を思い切りブーストして使っている。そうすればカッコ良い音がするとイギリス公演の際、学んで来たからである”なんてのが話のすべてだった。

 ギターに夢中になり始めだった当方もすっかりその気になり、かまやつを真似してアンプの高音をゼロに、低音を全開にしてギターを弾いていたものだったが、安物の楽器ゆえ、どれほどの効果が出ていたものか。

 頃はといえば60年代終わり、GSブームも末期にさしかかった頃なのだが、”尾藤イサオのR&B天国”なるテレビ番組があった。ゴールデンカップスなど”実力派”のGSがよく出ていたので欠かさず見ていた。
 番組中の”勝ち抜きバンド合戦”のコーナーなども、”自分と同じように世に打って出る予定の者たちの実力と傾向を知る”という意味においても興味深いものだった。確か、そのコーナーの勝ち抜きバンドから、プロになったものもいたと記憶している。

 そこに出てくるバンドが次々に取り上げていた曲がジミ・ヘンドリクスの”紫の煙”だった。当時としてはその辺りのコピーを行なうのが最先鋭だったわけだが、問題はあの歪みきったギターの音をどうするか、だった。

 すばやい奴は”ファズボックス”などという、まあ、今で言えば雑なディストーションとでもいうべき出始めのエフェクターを仕入れてきて思い切り汚い音をスタジオに響かせていたが、そのようなものを持っていないバンドも多く、彼らはともかく異様な音が出ていればいいだろうとの解釈の元、深過ぎるエコーを効かせて、あの印象的なイントロを引き倒していたりしていたものだ。

 その後、いつのまにかフェイザーやらコーラスやらと、凝ったエフェクターが巷に流れ出し、誰もが簡単に、いかにもそれらしい快い歪みを手に入れることが可能になっているが、そういうのもつまらない気がする。なんかさあ、あまりにも安易に目的地に着いてしまうのって退屈じゃないか。

 などと、昔の不器用な”エレキ”の音が妙にいとおしく思えてきたりするのだ。ギターの音ばかりじゃない、音楽そのものも簡単に”一丁上がり”で、安易なものが、流行りものとして軽薄にもてはやされる世の中にうんざりした時などに。

 (と、他人事のような話をしているが、私も一時、ギターを弾く際の足元に色とりどりのエフェクターを並べて悦に入っていた過去はある、こっそり認める)

 まあ、そのうち、日々の暮らしに取り紛れて楽器に手を触れることもいつしかなくなって行くのが人生と言うものだが。そしてある日、ふと久しぶりにギターを引っ張り出してみる、なんて時には、懐かしの”かまやつ式アンプ調節”を行なう。高音はカット、低音はフルに。エフェクターなんて使わないよ、アンプ直、だね。この渋い音が我がふるさとって気がするよなあ。

 やっぱりかまやつ式音作りがいいな~♪と、この意味不明の文章を”チキンライス”の替え歌で締めておく。