ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

Балаган Лимитед

2007-03-19 04:15:00 | ヨーロッパ


 ご紹介しますは”バラガン・リミテッド”であります。

 ロシア民謡を今日風にポップにアレンジして聞かせる、という趣向のコーラスグループ。現地ロシアではそれなりに受けているようで、こちらに伝えられる現地の売り上げベスト10とかに新譜がランク・インしていたりする。
 ほんとなんですかね、この人気というのは?我が国で、民謡中心に歌っているグループが人気を博するなんて考えられないものな。たとえば昔々、我が国でも”赤い鳥”なんてグループが”竹田の子守唄”なんてのを流行らせたりした、あんな感じなのか。

 グループの個性はといえば、まあ、掲げた写真をご覧になれば即、お分かりの通りおめでたいものです。難しい事は言わずにアゲアゲで行こうぜ、みたいなノリで昔の、80年代風の、と言ってもいいかもしれない、そんなやや古めのディスコ・サウンドに乗せて、哀愁のロシア・メロディを歌い上げる。日本人のロシア民謡ファンとしては、もう少ししみじみやってくれないものかと思ったりもするんですが、現地のロシア人の感性とはこんなものなのかも知れず、まあ、しょうがないですな。

 それにしても。今、ちょこっと書きましたが、この”80年代ディスコ風”ってのが面白い。当時、”ジンギスカン”とか、そんな意匠の低俗なヒット曲ってのがあったでしょう。一小節四つ打ちのドスドス打ち込まれるバスドラの音に導かれ、エッホエッホの掛け声もアホらしく、なんとなくロシア民謡調のメロディが歌い上げられる、ヨーロッパ発の軽薄きわまるディスコのヒット曲が。

 まあ、あんなものを論じても仕方がないが、それにしてもあれ、なんでネタは”ジンギスカン”なのにロシア風のメロディだったんでしょうね?昔、東方の騎馬民族に侵略された西欧人の記憶の中ではロシアもモンゴルも区別はつかない?良く分かりませんが。
 なんか、あれを想起させられる部分もないではない出来上がりなんですな、バラガン・リミテッドの音作りってのは。あんな”ジンギスカン”のノリで、ロシア民謡を楽しげに歌い上げてしまう。で、どうやらそれがロシア人たちには受けているようだ。

 ここで、妙な方向へ話が行きますが。

 たとえばアフリカの都市型ポップスなどというものの多くは、逆輸入されたというかアフリカに里帰りしたアフロ・キューバン音楽が根になっていたりする。
 アフリカからドレイとして新大陸に連れて行かれた人々が現地で出会ったヨーロッパの音楽と自らの音楽とをバッティングさせて生み出した音楽、それが時を隔ててアフリカの人々に好まれ、演奏されるようになり、新しい音楽の花を咲かせる。ワールドミュージック・ファン好みの物語です。 

 で、このバラガン・リミテッドの音作りってのも、”ロシアに里帰りした擬似ロシア・サウンド”が元になってるんですかね?あの軽薄な”ジンギスカン”の”ロシア調”に共鳴したモスクワのミュージシャンとかが真似して作り出したのが、バラガン・サウンドなんだろうか?聞いていると、そうとしか思えないんだが。
 そもそもロシア人って、”ジンギスカン”を聞いて、どういう感想を持ったんだろうか?

 なんて、さっきからいくつも”?”マーク出してますが、こんな話題、誰にも興味ないよな、うん。ということで、中途半端ですが、ここでおしまい。

 あ、”80年代風”の件ですが、これはあながちロシアのポップス状況が遅れているって証明ではない。現地には欧米風に言って”今日風”な音も存在しているのだけれど、そもそもロシアの人々ってのは、あの80年代っぽいディスコやテクノの音が根っから好きみたいですな。韓国演歌における、鼻つまんだみたいなミューミュー言うシンセの音愛好現象みたいなものであります。といったって、これも誰にもわからないような話題だが。