報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「千歳での過ごし方」

2017-03-08 22:17:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月6日12:00.天候:晴 新千歳空港3F]

 営業所内で会議中だった鳥柴だったが、昼を境に終了したようだ。
 敷島が昼食に誘うと、快諾した。
 営業所の車を出してもらい、それで向かった先は新千歳空港。

 鳥柴:「今日の夕方、出発ですか」
 敷島:「そうなんです。爺さん……もとい、最高顧問がそれで帰ってこいというものですから……」
 鳥柴:「昔は青函連絡船とかありましたからねぇ……」
 敷島:「うちの一族は、ぶっ飛びが多くて困りますよ」
 鳥柴:「敷島社長もまた、それのおかげで今回も生き延びられたんですよ」
 敷島:「そろそろ、平和に社長の仕事がしたいですねぇ」

 駐車場に車を止め、空港内に入る敷島達。

 鷲田:「遅かったな」
 敷島:「メモリーをコピーするのに、少し時間が掛かったんですよ」
 村中:「で、モノの方はあるんだね?」
 敷島:「この通り」
 鷲田:「御協力、感謝する」
 敷島:「鷲田警視達はこの後、もう飛行機に?」
 村中:「そのつもりだが、まだ少し時間があるので、昼食を取ってからにしようと思ってたんだ」
 アリス:「それなら一緒に食べませんか?」
 鷲田:「そうさせて頂くとしよう。せっかく北海道まで来たのに、美味いものの1つくらいは食って行かないとな」

 というわけでやってきたのはジンギスカンの店。

 敷島:「千歳市内で美味いもの食おうとするなら、やっぱり空港内になっちゃうんですかね?」
 鳥柴:「そうですね。私のところの成田営業所だと、空港以外にもいいお店はあるんですが……」

 因みにロイド達は店の外で待っている。
 ジンギスカン鍋と食材が運ばれてきたので、それで村中が慣れた手つきで野菜と肉を焼いた。

 敷島:「おっ、さすが村中課長。慣れてますねぇ?」
 村中:「ジンギスカンは長野でも流行ってるからね」
 敷島:「長野?」
 鷲田:「村中君は長野出身なんだよ」
 敷島:「あ、なるほど」
 鷲田:「ところで、DCJの鳥柴主任」
 鳥柴:「何でしょうか?」
 鷲田:「今回の事件、あなた達はどう見ておりますか?」
 鳥柴:「現時点では何とも言えません。ただ、今のところ、アリス主任を狙った犯行だと私は見ています」
 アリス:「どうしてこのタイミングでダディ達が出て来たのかは分かんないよ」
 鳥柴:「この辺につきましては、引き続き調査の必要があります」
 鷲田:「敷島社長の見解は……って、こら!村中君が焼いたのに、先に1人で食べるな!」
 敷島:「んぐっ!?」

 危うくラム肉を詰まらせそうになった敷島。

 敷島:「サイボーグ化したアリスの両親との攻防でしたけども、ほとんど終始。ただ、その両親をサイボーグ化した連中が背後にいたのは事実です。それが黒幕でしょう。それがKR団の残党達なのか、それともまた別のテロ組織なのかは分かりませんがね」
 鷲田:「なるほどな」
 村中:「アリスさんとしてはいかがですか?」
 アリス:「私ですか?」
 村中:「御両親が本当に亡くなって悲しくないですか?」
 アリス:「私にとって、既に両親は亡くなっていたも同然ですから。それが急に現れて、しかもサイボーグ化してたなんて、とても……」
 村中:「だよね。いきなりのことだから、実感が湧かないよね」
 敷島:「アリスとの結婚に反対されたのは、ちょっと心外でした」
 鷲田:「まあ、向こうさんからしてみれば外国人だからな。私も娘が外国人連れて来たら、諸手を上げて賛成する気にはなれんだろう」
 敷島:「うーむ……」
 鷲田:「話は変わるが、キミ達はどうやって帰るつもりかね?またあのロボット達を飛行機に乗せようとすると大変だろう」
 敷島:「なもんで、船で帰ることになりました」
 鷲田:「船?青函連絡船にでも乗るつもりかね?」
 村中:「あー、もしかして、あれかな?苫小牧港から出ている、フェリーのことかな?」
 敷島:「そうです。確かにあれなら、エミリー達も人間の乗客として乗れそうです」
 村中:「厳しい手荷物検査は無いだろうが、そんなにゆっくり帰って大丈夫なのかね?」
 敷島:「私も会社や息子が心配なので早く帰りたいところなんですが、最高顧問は何も心配要らないと」
 鷲田:「それは信じて良いのかね?いや、差し出がましいことは分かっているのだが……」
 敷島:「先ほどシンディに確認してもらいました。二海は献身的にトニーを見ててくれているのですが、昼の間は四季エンタープライズの託児所に入れてくれることになりました」
 鷲田:「それはいいのかね?」
 敷島:「最高顧問から見れば、何十人といる孫のうちの1人ですから、目を掛けてくれるんですよ」
 村中:「敷島一族、恐るべしだね」

[同日13:30.天候:晴 DCJ千歳営業所]

 昼食後、敷島達は帰京する鷲田警視達を見送った。
 再び車に乗って営業所に戻る。

 アリス:「ここの営業所の人達がね、詳しくエミリー達を見てみたいんだって」
 敷島:「営業所と言いつつも、やはり地下研究室は存在するわけか」
 所員A:「申し訳ありません。あのマルチタイプを間近で見る機会が無いもので」
 所員B:「空港から苫小牧行きのバスがありますので、その時間に間に合うよう、お送りさせて頂きます」
 敷島:「バスがあるんですか。そりゃいい」

 敷島が了承した後で、今度は鳥柴達が出発することになった。

 鳥柴:「それでは私達はお先に成田に帰らせて頂きます」

 敷島達を救助したヘリコプターで帰るらしい。

 敷島:「本当にお世話になりました」
 鳥柴:「いえいえ。またこうしてお会いできて良かったです。またロボットテロ対策で、御一緒になれるかもしれませんね」

 鳥柴は黒いスーツ姿だった。
 ショートボブの髪が風に揺れている。
 まだ30歳にもなっていないはずだが、女性であの若さで、どういう経緯で裏の調査員みたいな業務に就くようになったのか……。

 鳥柴達を乗せた車が、再び新千歳空港に向かって走り出した。
 ヘリコプターはそこに駐機しているので、そこから飛び立つつもりだろう。
 堂々と新千歳空港から離着陸できるということは、裏の仕事と言いつつも、ちゃんと正式な許可が取れるものだということだ。
 因みに手の空いた敷島はこの後、ケータイショップに行って新しいスマホを手にしなくてはならなかった。
 そしてようやく、常用の連絡手段を得ることができたのである。

 敷島:「ああ、井辺君か。悪いな。やっとケータイを手にすることができてね……。やっぱ公衆電話じゃ不便だもんな。それで、今後の予定なんだけども……」
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“Gynoid Multitype Cindy” 「戦いの終わり」

2017-03-08 14:40:07 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月6日10:00.天候:晴 北海道千歳市・某総合病院]

 敷島:「どうもお世話になりました」

 衰弱していたはずのアリスだったが、1日で回復した。
 DCJ成田営業所から駆け付けた鳥柴達によって搬送された病院がここ。
 どうやら、この町にもまたDCJの営業所があるらしい。
 どうも、空港の近くに営業所を構えたがるようだ。
 ロボットを空輸しやすくする為なのだろうが、敷島は他にも理由があるような気がしてしょうがない。
 敷島も検査の為に入院したが、そこは不死身の異名を持つ男、アリス同様に1日で退院した。
 尚、ロイド達の検査は千歳営業所に駆け付けたDCJの研究員が行った。

 敷島:「最高顧問、アリスの件ですが……」

 敷島は公衆電話で最高顧問に連絡していた。
 スマホはあの廃ペンションで無くしたからである。

 孝之亟:「おお。テレビで見たぞ。さすがは孝夫じゃな。これで、ワシの注文したロイドの心配はせんでいいというわけじゃ」
 敷島:「はい。本当はすぐにでも帰りたい所なんですが、これから警察の事情聴取とかがありまして……」
 孝之亟:「うむうむ。会社の方は何も心配いらんぞ。外堀対策はしっかりせんとな。あとはゆっくり船にでも乗って帰ってくると良い」
 敷島:「船っスか?いや、飛行機の方が……。ちょうど今、千歳だし」
 孝之亟:「じゃが、その為にはロイド達の電源をまた落として荷物室行きじゃろう?お前の嫁は、それでテロリスト共に連れ去られたのじゃないか。心配いらん。幸い、船会社の役員を知っておる。連れのロイド達を荷物扱いにせんよう頼んでやろう」
 敷島:「あ、ありがとうございます。(この爺さん、航空会社にはツテが無いんだろうか……)」

 敷島が電話を切ると、鷲田と村中がやってきた。

 鷲田:「大活躍だったみたいだな。ところで、北方領土が侵犯されたとロシアが騒いでるみたいだが、何か知らんか?」
 敷島:「いや、テロリストの船が勝手にそっちに行ったんですよ。私らは被害者なんで。その船も爆発して沈没したもんで、脱出するのに必死だったんですよ」
 村中:「相変わらず、ド派手にやるねぇ……」
 敷島:「どうもどうも。で、そっちはどうだったんですか?」
 鷲田:「どうもこうも、ロシア船籍の貨物船……正確に言えばタンカー偽装船だな。それが極秘裏に接岸するという情報を得たのだが、既に襟裳岬を曲がった所だった」
 敷島:「あらまっ!」
 村中:「証拠の船が爆発・沈没してしまった上、そのほとんどがロシア領海内に流れ込んだものだから、こちらとしても手が出せなくてねぇ……」
 敷島:「黒いロボットだったら、取りあえずまだ廃ペンションにその残骸が転がってると思いますよ」
 鷲田:「うむ。それは確認した。あとは、お前さんの所のロボットの映像の解析だな。ちゃんと記録されているんだろう?」
 敷島:「もちろんですよ。整備が終わりましたら、メモリーを提出します」
 鷲田:「よろしく頼む」

[同日11:00.天候:晴 千歳市内]

 敷島は電話でフェリー会社に予約の電話を入れた。
 カーフェリーなもので、車の方はもう予約で一杯とのことだが、船室は空いているとのことだった。
 そこを押さえた後で、今度は支払をコンビニで済ます。
 その後でDCJの営業所に向かうことにした。

 敷島:(結構忙しいな……。まあ、しょうがないか)

 タクシーを拾って、敷島はDCJの千歳営業所に向かった。
 そこには既にアリスがいるはずだ。

 敷島:「うおっ、こんな所にもバージョン4.0が!?」
 バージョン4.0:「コンニチハ。御用件ハ何デゴザイマスカ?」
 敷島:「あー、ここにいるDCJロボット未来科学館のアリスに会いにきたんだ」

 するとバージョン4.0、両目をギラッと光らせた。

 バージョン4.0:「サテハ、アリス主任ヲ狙ッタテロリスト!」

 ジャキッと右腕をショットガンに変形させる。

 敷島:「おおーい!?」
 バージョン4.0:「散弾銃ノ安全装置ヲ外シマシタ。ドコニ逃ゲテモ無駄デス」

 だが、ゲシッと後ろから蹴りを入れる者がいた。
 前に転がるバージョン4.0

 エミリー:「私のユーザー様に、何をするつもりだ?あ?」
 バージョン4.0:「え、エミリー様!?」
 エミリー:「敷島社長が来られるかもしれないと伝えていたはずだが?」
 バージョン4.0:「に、認識デキマセンデシタ!ナハハハハ……(大汗)」
 敷島:「てか、マジで散弾銃か、これ?」
 エミリー:「パーティー用の空砲か何かでしょう。申し訳ありませんでした。もう少ししましたら、この役立たずに代わりまして、私がこちらでお待ちしていたのですが」
 敷島:「いや、いいよ。アポ無しはやっぱマズいもんな」

 敷島は本当の受付に行って、入館受付を行った。
 入館証を手にしたのと、エミリーの先導があったので、今度こそセキュリティロボット達も態度がガラリと変わっている。
 会議室に行くと、そこにアリス達がいた。

 アリス:「タカオ、遅いわよ!」
 敷島:「しょうがないだろ。俺は俺でやることがあるんだからよぉ……」

 ちょうどシンディの再起動が終わった所らしい。

 アリス:「どう?気分は?」
 シンディ:「あ……はい。特に異常ありません」
 敷島:「そりゃ良かった」

 研究員達が注目しているのは、むしろ萌の方。
 妖精型ロイドが実際に動いているのを見たのが初めての者達ばかりだ。
 中には、是非とも分解して構造を確かめたいとする者も。

 敷島:「鷲田警視からの注文だ。あの戦いぶりを見たいから、メモリーをくれってさ」
 アリス:「じゃあ、メモリーチップにコピーしておくわ」

 アリスが端末を操作している時に、ふと気づく。

 アリス:「科学館の方には話がついたからいいけどさ、あなたは会社はどうするの?」
 敷島:「最高顧問の爺さんが船で帰って来いってさ。俺は会社が心配だから、早く帰りたいんだけど」
 アリス:「飛行機に乗せようとすると、またシンディ達の電源を落として梱包しないといけないからね」
 敷島:「こんな手間を掛けなきゃいけないのに、どうしてDCJさんはロボットの輸送を空輸に拘ってるんだろう?」
 アリス:「やっぱりスピードじゃない?アメリカの本体と、どうしてもやり取りがあるしね」
 敷島:「いずれは、その本体から独立するんだかしないんだかって噂なのにねぇ……」

 敷島はロイド達のメモリーチップを手に入れた。
 但し、萌に関しては本体内部にチップを入れる箇所が無い。
 その為、あくまでもエミリーとシンディのみである。

 敷島:「救助してくれた鳥柴さんも誘って、昼飯に行くか。……それにしても、鳥柴さん達は何しに北海道まで来たんだろう?」
 アリス:「私達の捜索と救助に決まってるじゃない」
 敷島:「いや、絶対それ以外にもあるはずだ」
 アリス:「多分、タカオの予想通りでいいと思うよ」

 KR団対策か。
 DCにとってロボットテロ組織は、商品のイメージを大きく損なわせる営業妨害集団でしかない。
 営業妨害を阻止し、しかもイメージアップを図るにはDC自らテロ組織潰しを行う活動をするということだ。
 アメリカでは既にそれを合法的に行っているという。
コメント (3)
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