報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「夏休みの登校日」 2

2021-10-31 21:17:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日09:58.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→東京中央学園上野高校]

〔「まもなく上野、上野です。お降りの際、車内にお忘れ物、落とし物なさいませんよう、ご注意ください。上野です」〕

 リサと絵恋は岩本町駅で地下鉄を降り、徒歩でJR秋葉原駅に向かった。
 そこから今度は山手線に乗り換える。
 岩本町駅と秋葉原駅は全く繋がっていないが、定期券だけは連絡運輸の扱いになっている。
 簡単に言えば、1枚の定期券で利用することができるようになっているという意味だ。
 当たり前だが、本来鉄道会社が違えば、それぞれの定期券を2枚買わないといけない。
 しかし、連絡運輸になっていれば、それを1枚に纏めることができるのだ。
 普通のキップはそれが認められていないが、定期券は認められているわけだ。
 細かい規定はあるのだが、簡単に言えばそんな感じである。

〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、鶯谷に止まります〕

 電車を降りる2人。
 この辺りは外回りよりも空いている。
 内回りのこの電車が混んで来るのは、日暮里駅や田端駅からであろう。
 今度は、そこから池袋や新宿に向かう客達で賑わうからだ。
 もちろん、上野駅だってそれなりの乗車がある。

 絵恋:「それにしても、アレね」
 リサ:「なに?」
 絵恋:「夏休みの登校日って、単なる安否確認なのよ。つまり、出欠取って終わり。フザけてるよね」
 リサ:「そうかな?私は学校行きたかったから良かったけど……」
 絵恋:「リサさんは学校が好きなのね」
 リサ:「好き。リサ・トレヴァーの中で、まともに学校行けたの私や『1番』くらいだったから。……あと、今の『0番』さんが『12番』だった時か……」

 善場のこと。
 ローティーンの少女達が捕らわれて人体改造実験が行われた中、善場は珍しいハイティーンの時に捕まってそれを受けたクチだ。
 他にハイティーンでそういう運命を辿ったのは、『6番』くらい。
 『6番』は他のリサ・トレヴァーと比べて食人欲は旺盛な上、太陽に弱いという欠点を抱えていた。
 その為、愛原一族の攻撃(プリウスアタック)により、宮城県遠田郡で夕日の直射を浴びて焼死している。

 リサ:「私だけ特別」
 絵恋:「私にとっても、リサさんは特別よ。手ェ握って」
 リサ:「また後でな」
 絵恋:「えーっ!」

 そんなやりとりをしながら、リサ達は久しぶりに登校した。

 リサ:「よし。怪しい人物はいない」
 絵恋:「そうね。さっさと入りましょう」

 昇降口で上履きに履き替える。
 それから階段を昇ろうとすると、カチャカチャと規則正しい金属音がした。

 リサ:「この音は……。栗原センパイ」

 先に階段を上がっていた栗原蓮華を見つけた。
 2年生は登校日ではないはずだが、どうやら部活のようだ。
 剣道着を着て、袴を穿いている。

 蓮華:「ああ、アンタ達か……」
 リサ:「おはようございます」
 蓮華:「ああ……。おはよう……」

 金属音がするのは、蓮華の左足から。
 彼女の左足は義足なのである。

 絵恋:「元気が無いみたいですけど、何かあったんですか?」
 蓮華:「ああ、悪いね。ちょっとブルーなだけ」
 リサ:「気持ちはブルー。だけど、アソコは真っ赤?」

 リサは自分の股間を指さして言った。

 蓮華:「ざっけんな!!」

 リサの冗談を悪い冗談だと思ったのか、蓮華が食って掛かってきた。

 蓮華:「ったく!」

 蓮華はそのまま2階の廊下をスタスタと歩いて行った。

 リサ:「……図星かな?」
 絵恋:「もしくは、部活絡みで嫌な事でもあったのかもね」
 リサ:「そういうもんなの?」
 絵恋:「そういうものよ。私は空手部だけど、よくあるもの」
 リサ:「ふーん……。運動部は大変だ」
 絵恋:「リサさんもいい加減、部活入ればいいのに……」
 リサ:「私は帰宅部で十分」
 絵恋:「リサさん、後で先輩に謝っといた方がいいよ?あの人、アレでしょ?リサさんの正体を知って、真剣で斬ろうとしてきた人でしょう?空手部でも噂になるほど、剣道部では強い人だって聞いたよ。そんな人怒らせたら、後々面倒だよ?」
 リサ:「そ、そうか……」

 リサは蓮華が真剣を振るう姿を思い出した。
 刃には、『悪鬼滅殺』とか彫られていた。
 第一形態の姿は鬼娘そのものであるから、鬼斬りから見れば、恰好の獲物であった。

 リサ:「い、今行ってきた方がいいかな?」
 絵恋:「こういうのは少し時間を置いてからの方がいいよ。まだ頭に血が昇っているかもしれないからね」
 リサ:「なるほど。分かった。それじゃ、帰り際行ってみよう」
 絵恋:「私も一緒に行くから心配しないでね」
 リサ:「ありがとう」

[同日11:00.天候:晴 東京中央学園上野高校]

 絵恋の言う通り、出欠を取り、担任の話を聞くだけで終わった。
 それでお開きになった後、リサと絵恋は2年生の教室に行ってみた。
 クラスはどこか、一応知っていた。

 蓮華:「ちくしょう……!ニュースにすらなってない……!」

 蓮華は教室にいた。
 しかも剣道着から制服に着替えている。
 リサ達と同じように、上はポロシャツだ。
 尚、ポロシャツかブラウスかは個人の判断に委ねられている。
 絵恋や蓮華など、運動部に所属している生徒は部活の際に着替える機会が多い為、脱ぎ着やすいポロシャツを着ることが多い。
 また、ブラウスの場合は透けやすいので、下にキャミソールなどを着なければならないが、ポロシャツであればそれを着る必要は無い。
 蓮華は窓際の自分の席に座り、スマホをイジっていた。

 リサ:「蓮華センパイ」
 絵恋:「し、失礼します」
 蓮華:「なに?私の機嫌がサイアクだと知って来たの?」

 蓮華はリサを睨み付けた。

 リサ:「今朝は失礼なことを言ってゴメンナサイ。謝りに来ました」

 リサが御辞儀をしながら言うと、意外に思ったのか、蓮華は目を見開いた。

 蓮華:「ああ、そんなこと……。生理の方がまだ良かったよ。私の方こそ悪かったね。怒鳴りつけたりして」
 絵恋:「何かあったんですか?私達で良かったら、話聞きますよ?」
 蓮華:「まあ、気持ちはありがたいけど、身内のことだから……」
 絵恋:「身内?」
 蓮華:「鬼斬りに行ったうちの身内がちょっとね……。もしかしたら、鬼に返り討ちにされたかもしれないの」
 リサ:「鬼って……ええっ!?」
 絵恋:「リサさんのお知り合い?」
 リサ:「いや、知らないよ!もうリサ・トレヴァーは私だけのはずだよ!?……まあ、もしかしたら、その亜種がまだ何人かはいるかもしれないけど……。でも、その返り討ちにされたかもしれない人って、センパイより強いの?」
 蓮華:「私よりも一段上の人だよ」
 リサ:「え?」
 絵恋:「先輩より強いってこと」
 リサ:「そ、そうなんだ」
 蓮華:「アンタも鬼でしょ?もしも『鬼斬りを返り討ちにした』とイキがってる鬼を見つけたら、すぐに知らせてちょうだい」
 リサ:「分かった。分かりました」
 絵恋:「でも、先輩よりも強い人がやられたのでしょう?」
 蓮華:「まだ、そうと決まったわけじゃないけど……」
 絵恋:「リサさんが偶然その情報を掴んで先輩に教えたところで、先輩は勝てるんですか?」
 蓮華:「もちろん、私1人だけで戦うわけじゃないよ。ちゃんと道場の師範に伝えるさ」
 リサ:「先輩より強い人をやっつける鬼なんて、一体……」

 リサでさえ、蓮華との試合の時は手こずったというのに……。

 リサ:「この事、善場さんにも伝えていい?」
 蓮華:「あの国家公務員の人ね。いいよ。むしろ、そういった所が動いてくれた方がいいかも……」
 リサ:「分かった。それじゃ」

 リサと絵恋は教室をあとにした。

 絵恋:「良かったね。少しは機嫌が直ったみたい」
 リサ:「クエストクリア?」
 絵恋:「クエストクリアだね」
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“愛原リサの日常” 「夏休みの登校日」

2021-10-30 20:16:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日09:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 斉藤絵恋:「おはよう!リサさん!迎えに来たよ!一緒に学校行こう!」
 リサ:「ああ、サイトー。おはよう」

 今日はリサ達の登校日である。
 もしまだ学校周辺に不審人物が見受けられるようなら、リサは休むことになっていた。
 しかし、一部とはいえヴェルトロのメンバーやその下部組織のメンバーが逮捕されたことで、そのような不審人物の出没はナリを潜めた。
 その為、今日の登校日は登校することになった次第である。
 授業や試験があるわけではない為、登校時間は朝ラッシュの終わった時間になる。
 尚、部活動がある場合はこの限りではない。

 リサ:「引っ越し、お疲れ様」
 絵恋:「ありがとう。向かい側だから、気軽に遊びに来てね」
 リサ:「うん、分かった」

 絵恋が住む賃貸マンションの引っ越しは昨日、行われた。
 それは、新大橋通りを挟んで向かい側のマンションだった。
 愛原達の住むマンションと比べれば、若干築年数は多い。

 リサ:「ちょうど良かった。帰りにうちに寄って。借りてたゲーム、返す」
 絵恋:「分かったわ。是非、寄らせてもらいまーす」

 2人は制服の夏服を着ていたが、盛夏用に認定された薄緑色のポロシャツを上に着ていた。
 ブラウスよりも通気性が良く、洗濯しやすい上に、首にリボンやネクタイを着けなくてもだらしなく見えないというのが理由である。
 加えて女子用の場合は、ブラウスよりもインナーが透けにくいという利点もある。
 但し、ブラウスより体にぴったりしやすい為、サイズが小さいとインナーが浮き出てしまうという欠点もあるが。
 もちろん学校指定の制服の1つであるので、胸ポケットの所には校章のワッペンが着いている。

 リサ:「サイトー、家のトイレの修理は終わった?」
 絵恋:「もうとっくに終わったわ。今度は洋式だけになったから、安心して使ってね」
 リサ:「公衆トイレじゃ、和式もあるからその練習用って聞いたけど……」
 絵恋:「駅のトイレとかでしょ?そういう所も洋式が増えたからね。逆に和式に当たる事が少なくなったから、もういいんじゃないかってお父さんが言ってた」
 リサ:「そう」
 絵恋:「でもね、また工事が始まったのよ」
 リサ:「なに?」
 絵恋:「今度は地下室よ」
 リサ:「地下室!?」
 絵恋:「プールの配管が壊れたんですって。だからもう今年の夏は、うちのプールに入れなくなっちゃった。ほんと、嫌になっちゃうわ。リサさんの水着姿、もっと見たかったのに……」
 リサ:「オマエに見せる為に着てるんじゃないからな?」
 絵恋:「でも、修理ついでに温水機能付きにしてくれるらしいから、冬でも入れるようになるからね」
 リサ:「元々温水機能って無かったっけ?」

[同日09:34.天候:晴 都営地下鉄菊川駅→新宿線969K電車10号車内]

 朝ラッシュのピークが過ぎた時間ではあるが、まだまだ乗客の多い駅構内を歩く。
 ピークは過ぎている為、当路線でも行われている女性専用車の運用は終了している。

〔まもなく1番線に、京王線直通、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。この電車は京王線内、区間急行となります〕

 トンネルの向こうから、轟音が聞こえて来る。
 そして、ゴォッという強風を巻き起こしながら京王電車が入線してきた。
 最後尾の位置にいる為、その風をまともに受けることとなる。
 2人の少女のサラサラとした髪がそれで大きく靡いた。
 スカートの裾も靡くものの、さすがにそれは捲れるほどではない。
 もっとも、捲れたところで、学校指定のスパッツを穿いている為、パンチラすることはない。
 リサ達は校則で、スカートの下には必ずスパッツを穿くことが義務付けられている(これは体操服のハーフパンツとはまた別)。
 かつてはスパッツではなく、ブルマーであった(ブルマーだったら、体操服と兼用できて費用も抑えられただろうに……)。

〔1番線の電車は、京王線直通、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕

 時間が時間なら、女性専用車の運用が行われる車両に乗り込んだ。
 この時間は既に終了しているので、もう男性客も同乗している。
 朝ラッシュのピークが過ぎたとはいえ、まだ空いている時間でもない。
 座ることはできず、リサと絵恋は空いている吊り革に掴まった。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ピンポーンピンポーンと京王電車ならではの音色のドアチャイムを鳴らして、ドアが閉まった。
 もっとも、音色自体は専売特許というわけではなく、JR東海の在来線なども同じような音色である。
 そして、電車が走り出す。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S11.Please change here for the Oedo line.〕

 リサ:「サイトー、体の具合とか大丈夫?」
 斉藤:「ええ、大丈夫よ。今朝も熱は36度5分の平熱よ。どうして?」
 リサ:「あ、いや……。善場さんが、私がまたあなたにウィルスを移してないか心配してたからね」

 本当は特異菌に感染していないかどうかである。

 斉藤:「私はリサさんのウィルスだったら、喜んで感染しちゃうんだけどなぁ……」
 リサ:「私もBOWだから、どうしても近くにいると移っちゃう。もちろん、私が意識しなければ、無症状だけど。だから、愛原先生達も症状は無い。というか、先生達は既に抗体があるから、また話は別だけど……」
 斉藤:「私には抗体は無いの?私自身もそんなに症状があるとは思えないんだけど……」
 リサ:「もちろん、私が活性化させていないからだけどね。(そうじゃなくて……)」

 リサは心の中でツッコんだ。

 リサ:(特異菌は私のウィルスや寄生虫をも食べてしまうらしい。サイトーに症状が無いのは、そのせいかもしれないのに……)

 しかし、体に違和感は発生することがある。
 リサは絵恋にそれが無いか、それとなく聞こうとしていたのだ。
 だが、絵恋はそれっぽい答えを返して来なかったし、見た目には(更には、こうして話をしていても)特異菌に感染しているようには見えなかった。
 100%適応できないと、特異菌はカビの一種であるから、カビの臭いがすることがあるという。
 BOWたるリサは人間よりもよく利く鼻を持っているが、少なくとも絵恋からはそのような臭いはしなかった。
 100%適応できた人間は、今のところ世界中に1人しかいない。
 しかも、それは日本人ではない。

 リサ:(サイトーは特異菌の感染者じゃないのか?それとも、私のウィルスやコロナウィルスみたいに無症状状態があるだけ?)

 もっとも、今は地下鉄トンネルの中だ。
 窓を開ければ、トンネルのカビ臭い臭いが車内に入って来る。
 そのせいもあるかもしれなかった。
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“大魔道師の弟子” 「ハロウィン前日のイリーナ組」

2021-10-30 15:54:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月30日12:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷・西側2階図書室→1階大食堂]

 講義室代わりの図書室内に、正午を知らせるホールクロック(大型振り子時計)の鐘の音が響く。

 イリーナ:「はい。それじゃ、今週の講義はここまでー。また来週~」
 マリア:「終わった終わった。じゃ、ランチに行こうか」
 稲生:「行きましょう」

 図書室を出た2人の弟子は、1階の大食堂に向かった。

 稲生:「土曜日でも午前中だけとはいえ、講義があるとは……」
 マリア:「師匠の気まぐれだよ。もっとも、昔は土曜日も仕事とかあったわけだからね」
 稲生:「確かに……」

 食堂に行くと、マリアのメイド人形達が昼食の準備をしていた。
 因みに、この食堂内にもホールクロックはある。
 この屋敷には色々な仕掛けが施されていて、中には時計にも仕掛けが施されていたりする。
 稲生はまだ1回しか見たことがないが、確かこの時計の後ろには隠し扉が仕掛けられていて、それを開けるには時計を操作しなくてはならないとか聞いたことがある。
 もっとも、稲生には全くその機会が無い。
 昼食にはパスタが出た。

 マリア:「あ、そうだ。勇太、御両親から来月の事とか聞いた?」
 稲生:「多分、そろそろメールで来ると思う。食べたら、後で確認するよ」
 マリア:「分かった」

〔「明日はいよいよハロウィンです。東京・渋谷では毎年、ハロウィンで大きな賑わいを見せますが、今年も感染拡大防止の為……」〕

 大型のテレビからは、昼の情報番組が流れて来る。

 稲生:「お、ハロウィンか」
 マリア:「この時にサバトを行う組もある」
 稲生:「サバトねぇ……」
 マリア:「うちはやらないよ。もうこの前やったし」
 稲生:「あ、うん。そうだね……。でも、大抵の組は既にやったでしょう?あとは……どこだろう?」
 マリア:「まあ、組単位というか、家族単位で行うかな」
 稲生:「家族単位?」
 マリア:「ナディアとか、家族持ちの魔道士とかいるでしょ?その場合は、家族でサバトを行うんだ」
 稲生:「裸で魔法の儀式をやるってヤツか……」
 マリア:「まあ、多くの場合は皆で風呂に入ったり、水浴びをしたりする程度で終わるけどね」
 稲生:「ああ、なるほど」
 マリア:「つまり……私達も、『家族』になったら、サバトをやってもいいってことだよ」
 稲生:「裸で……」
 イリーナ:「本当はエロいものじゃないからね?教会関係者が勝手にそう決めつけただけで」
 稲生:「せ、先生!?」
 マリア:「そうは仰いますけど、教会関係者にそう決めつけられてもしょうがない行動をした魔女達が少なからずいたのも事実ですよ?」
 イリーナ:「まあ、そうなんだけどね」
 マリア:「ぶっちゃけ、師匠方、1期生の皆様方が犯人では?」
 イリーナ:「そ、それは心外だよォ。他の門流の連中が色々とやらかしてくれたのさ。ま、まあ……多少便乗しちゃった部分はあるけど……」
 マリア:「ほら、やっぱり」
 イリーナ:「だからこそアタシらは、別にあなた達がサバトで『ハメを外しても』文句は言わないようにしてるのさ。まあ、それにも限度ってものはあるけども……。勇太君が“色欲の悪魔”に背中を押されて、マリアと【ぴー】しても別にいいのさ」
 マリア:「ちょ、ちょ、師匠……!」
 イリーナ:「そんな恥ずかしがることは無いじゃないか。事実、勇太君とはもうそういう関係なんだから」
 マリア:「そ、そうですけど、改めて言われると、ちょっと恥ずかしい気がします」
 イリーナ:「まだ若いねぇ……。何ならアタシ、明日は席を外そうか?」
 マリア:「べ、別に結構です」
 イリーナ:「まあ、勇太君と2人で地下のプールに入って行ってもいいよ」
 マリア:「考えておきます!」
 稲生:「ま、前向きに善処します」
 マリア:「勇太、それ、『何もしない国会議員の言い訳だ』とか言ってなかった?」
 稲生:「あ、いや、その、あの……」

[同日13:00.天候:晴 マリアの屋敷東側2F 稲生の自室→西側1Fマリアの部屋]

 昼食が終わった後は、明日まで休み。
 弟子の本分として、温習と称して部屋に戻った稲生。
 ノートPCを立ち上げて、実家のPCからメールが送られていないか確認する為である。

 稲生:「おっ、来てた来てた」

 実家からメール着信あり。
 確認すると、イリーナの占い通りだった。

 稲生:「やっぱり11月の連休狙いか……」

 稲生はそのメールを自分のスマホに転送すると、それを持って部屋を出た。

 稲生:「マリアさん、いる?」

 そして、マリアの部屋のドアをノックする。
 中から応答があったので、ドアを開けた。
 因みに、部屋からはミシンの音がする。
 どうやら、新たな人形作りをしているようだ。

 稲生:「実家からメールがあったよ」
 マリア:「で、何だって?」
 稲生:「先生の占い通り。11月の連休中に、こちらに来たいってさ」
 マリア:「分かった。後で師匠にも言っておこう」
 稲生:「先生は……」
 マリア:「昼寝に決まってる。ディナーまで起きない。もしかしたら、ディナーになっても起きない」
 稲生:「本当に悠々自適だよねぇ……」

 マリアは天井を指さして言った。
 イリーナは2階の部屋で寝泊まりしている。

 マリア:「何で来るって?」
 稲生:「電車だって。多分、“あずさ”だ。大糸線に直通する列車で来るんだろう」
 マリア:「それなら、白馬駅まで迎えに行けばいいか」
 稲生:「そうだね」
 マリア:「私が車を出すから、それで行こう」
 稲生:「ありがとう」

 この場合、『車を出す』とは、マリアが自分で車を運転するという意味ではなく、魔法で運転手ごと用意するという意味である。
 マリアがこの魔法を使うと、ロンドンタクシーみたいな車が出て来る(稲生が使うと、日本のタクシーみたいな車)。

 マリア:「それとも師匠に頼んで、車を出してもらう?師匠ならメルセデスベンツのSクラスくらい出せるぞ?」
 稲生:「いや、いいよ。ロンドンタクシーも、十分広いし」

 稲生は慌てて手を振った。
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本日の雑感 20211030

2021-10-30 15:39:03 | 日記
 ハロウィンである🎃
 本当はこの時期に合わせて、“大魔道師の弟子”でも一本書きたいところだ。
 魔女や魔道士なだけに。
 その前に、ここ最近の近況を書いておきたい。

 前の結婚相談所は満期退所した私だが、両親の強い勧めで別の相談所に所属した。
 システムは前の相談所と似たようなものなので、大きな不安である。
 だって、それで上手く行かなかったんだから。

 ただ、1つ思うことはある。
 両親は私に結婚して欲しいようだ。
 これさ……上手い具合に日蓮正宗信徒の女性と結婚できたら、そのまま両親折伏モードに突入できるんじゃね?と。
 ガチ勢の人達は、「そんな悠長に構えんな!今すぐ両親折伏しろ!」「順番が逆だ!先に両親を折伏してから結婚だ!」なんて言うだろう。

 まあ、「それができたら、苦労はしねーんだよ!」と、逆ギレしておく。
 なかなか“となりの沖田くん”のようにはいかないのだよ。

 今度は前回の轍は踏まないようにするつもりだ。
 前の相談所の担当者にも言われたことだ。
 結婚に漕ぎ付ける為には、離檀も厭わない判断をすること。
 ハッピーエンドなのは、先述した通り。
 だが、私の信心では叶えられそうにない。
 叶わない以上、いつまでも日蓮正宗にしがみついていても仕方がないというのが私の考えだ。

 今日紹介された女性ね……。
 御朱印集めが好きなんだって。
 でも、日蓮正宗には御朱印が無い。
 そもそも御朱印の起源を辿れば、その理由は納得できる。
 日蓮正宗の修行の基本は勤行と折伏(この2つを否定している某学会員の爺さんがいるようだが)。
 写経ではない。
 もう、この時点で何がしかのフラグが立ってるね。
 以上、“私立探偵 愛原学”シリーズをダラダラと続けさせて頂いているが、先ほど思ったことを述べてみた次第であります。
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“私立探偵 愛原学” 「証拠隠滅」

2021-10-28 19:53:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日11:00.天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 斉藤社長宅をあとにした私達は、一路、新橋へと向かった。
 そして、デイライト東京事務所近くのコインパーキングに車を止めると、その足で事務所に向かった。
 すぐに事務所内の応接室に通される。

 善場:「大変ご苦労様でした。愛原所長の行動力と洞察力には、目を見張らせて頂きました」

 善場主任は相変わらずポーカーフェイスで、私のデジカメを受け取る。
 そして、すぐにそのメモリーをノートPCに挿入し、そこからプロジェクターを通して白い壁に画像を映した。

 愛原:「最初の画像がエレベーターですね。斉藤社長の御宅は地下1階までしかなく、エレベーターもこの通り、通常は地下1階までのボタンしかありません。しかし……次の画像を」

 次の画像は、私がエレベータ鍵で操作盤の蓋を開けた所だった。

 愛原:「しかしこの通り、実は地下2階が存在していたのです」
 善場:「なるほど。それでは早速、地下2階の画像を見せてください」
 愛原:「はい」

 私は次の画像を映した。

 高橋:「うぉっ!?」
 善場:「あっ!」
 リサ:「うっ!?」

 何故かその場にいた全員が驚きの声を上げる。
 その理由は、私も画像を見て分かった。

 愛原:「わ、びっくりした!!」

 画像にはドアップで、青白い顔の少女が写っていたからである。

 愛原:「な、何だこりゃ!?」
 善場:「エブリン……ですかね?」

 言われてみれば、アメリカのルイジアナ州で現れたとされる新型特異菌BOW少女エブリンに似てなくも無い。

 善場:「エブリンみたいな少女と遭遇したのですか?」
 愛原:「いえ、全然!誰もいませんでしたよ!なぁ、高橋!?」
 高橋:「そ、そうっスね!」

 高橋も何が何だか分からないといった感じだった。
 あの地下室には、人の気配すらしなかった。
 次の画像もそうだった。
 今度は、おぞましい化け物が画面をほぼ独占していた。
 次の画像はまた別の化け物だったし、その次の画像なんか、白い仮面を着けた日本版リサ・トレヴァーだった。

 愛原:「そ、そんなバカな!?」
 高橋:「有り得ねーっ!どうなってんだ、一体ェ!?」

 私と高橋はただただ混乱するばかりであった。
 結局、エレベーター内の画像以外の地下室の画像は、ほぼ撮れていなかったに等しかった。
 だが、最初は驚いていたリサも、最後の画像を見て冷静になった。

 リサ:「先生達……やられたね」
 愛原:「やられた!?」
 リサ:「あの地下室……確かに誰かいたと思う」
 愛原:「誰かって、誰だ!?」
 リサ:「信じられないんだけど、エブリン」

 最後に映っていたのは、白い仮面を着けて、セーラー服を着た少女だった。
 恐らく、日本版リサ・トレヴァーだろうと思ったが……。

 善場:「た、確かに特異菌の中には、対象者に幻覚を見せる物もあるにはありますが……。しかし、特異菌は日本にはサンプルすらありませんよ?」
 高橋:「あの社長なら、裏ルートで手に入れられるんじゃねーの?」
 善場:「いや、それは無理ですよ」
 高橋:「いや、無理じゃねーだろ。コロナ禍で鎖国状態の中、どうしてヴェルトロが日本に入れたよ?しかも銃付きで。日本の入管がザルだからじゃねーの?」
 善場:「そ、そんなことはありません……よ」

 国家公務員として、同じ国家権力組織のことを疑いたくは無いのだろう。

 リサ:「あとねぇ……。私、消えることできるんだよ」

 リサはニッと笑った。

 愛原:「なに!?どういうことだ!?」

 リサは第1形態に戻った。

 リサ:「私の目を見て」
 愛原:「なに?」

 リサの目が赤色に光ったかと思うと、それに吸い込まれるように視界が赤く染まって行き……。

 善場:「勝手に部屋を出ないで!」

 気が付くと隣に座っていたはずのリサはいつの間にか消えていたが、善場主任の声でハッとドアの方を向いた。
 リサはドアの前にいた。

 愛原:「こ、これは一体……!?」
 善場:「催眠術の1つですよ。私も使えました。私の場合は、こちらの目を見て頂く必要がありましたが……」

 善場主任は前髪をかき上げた。
 すると、彼女の額の所に赤黒い痣があるのに気付いた。
 普段はファウンデーションで誤魔化している。

 善場:「私がリサ・トレヴァーだった頃、ここに『第三の目』がありました。それを見た獲物は、私が忽然と消えたように見えたそうです」

 人間に戻る際、第三の目は失われ、しかし後遺症として痣が残った。

 リサ:「『12番』の善場さんだけだと思う。それ……」
 愛原:「じゃあ、私達が催眠術に掛けられて、本当はあの地下室には化け物がうようよいたのに、無人のように思わされていたと?」
 リサ:「多分、他の化け物達はただの幻。カメラにも写ってしまうほどの幻。本物は……このリサ・トレヴァーまたはエブリン」
 愛原:「だけど、誰かの目なんて見なかったぞ?」
 リサ:「いや、見たと思う」
 愛原:「いや、マジで地下室で誰かの目なんて見なかったって」
 リサ:「誰が、地下室でなんて言った?」
 愛原:「地下室じゃない!?」
 リサ:「その前は誰の目を見た?」
 愛原:「えーと……」
 高橋:「あのレズガキです!先生!」
 愛原:「あっ!」

 絵恋さんはリサを連れて行く時、私と高橋の目を見ていた。

 愛原:「バカな!絵恋さんがエブリンだと!?」

 カメラの画像とリサが持つスマホの画像を見比べてみた。
 リサのスマホには、絵恋さんが写っている。

 愛原:「確かに、リサより背が高いような気がする……」

 絵恋さんはリサより背が高い。
 スポーツをやっているからというのもあるが、リサの成長が遅いというのも理由だ。
 それは、せっかく摂取した栄養が肉体の成長ではなく、BOWの力の維持や変化に使われるからだとされている。

 高橋:「先生。あのレズガキ、締め上げましょうや。いざとなったら、『強制的にレズビアンを矯正』してやりましょう」

 平たく言えば、レズビアンたる絵恋さんを高橋の知り合いの男達が輪姦(まわ)すという意味である。

 愛原:「待て待て。リサ、俺達が地下にいる間、オマエは絵恋さんと一緒だったんだよな?」
 リサ:「それが、サイトーのヤツ、途中でトイレに行ったの。私は私で、ゲームに夢中だったから……」
 愛原:「主任、絵恋さんの体内にあったウィルスとかは除去したんじゃ?」
 リサ:「ウィルスは除去しましたが、特異菌については何もしていません。まさか、特異菌に感染しているとは思いもしなかったので……」
 愛原:「でしたら、急いで絵恋さんを調べましょう」
 善場:「すぐにBSAAより、検査キットを取り寄せます」

 特異菌の感染状況は、症状が出ていない限り、専用の検査キットでないと分からないという。

 高橋:「リサ、今度あいつに会ったら、軽くシメとけ」
 リサ:「うん、分かった。私の寄生虫に感染させて、3日間下痢を楽しんでもらう」
 高橋:「教室でお漏らしとかもよろしく頼むぜ」
 リサ:「うん、分かったっ!」
 愛原:「オマエらなぁ……」

 しかし、日本にはまだ無いはずの特異菌の影がちらついたというのは……。

 愛原:「主任、その検査キットはどのくらいで届きますか?」
 善場:「今日発注して、来週には届くと思います」
 高橋:「そんなに掛かるのかよ!」
 善場:「BSAA極東支部にようやく保管されているくらいなのです。日本地区本部にはありません」
 愛原:「リサ。ゲームを返す約束はいつにしている?」
 リサ:「いつでもいいって言われたからしていない」
 善場:「分かりました。では、こうしましょう。検査キットが届き次第、あなたはゲームを返すという口実で、再び彼女と会ってください」
 リサ:「分かった」
 高橋:「そこで乗り込んで、強制的に検査ってか」
 善場:「ついでに皆さんにも受けて頂きますから」
 高橋:「え?」
 善場:「皆さんも感染している恐れがありますのでね」
 愛原:「ぅあちゃ~。そうかぁ……」
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