報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「修学旅行2日目」 3

2024-08-29 20:23:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月9日10時30分 天候:曇 沖縄県南城市玉城前川 おきなわワールド]

 善場「私の配慮が足りませんでした。申し訳ございません」

 高橋は喫煙所でタバコを吸っている。
 私は自販機で飲み物を購入し、それで水分補給していた。
 そこへまた善場係長が掛けて来る。

 愛原「いえ、お気になさらないでください」
 善場「例の船の事……それに関連したワードを出すと、激しい頭痛とフラッシュバックが起きるとのことですが……」
 愛原「ええ、まあ……。でも、それらの船はもうこの世に無いですし、今更その原因を調べようとしても無理でしょう」
 善場「精神科を受診してみるというのは如何ですか?催眠療法などで、それら封印された記憶を引き出すことは可能らしいですが……」
 愛原「気が進みませんなぁ……」

 高橋の話では、確かに豪華客船“破邪顕正”号には乗った。
 今は“青いアンブレラ”のメンバーとなっている高野芽衣子君と一緒にだ。
 この時は、まだリサとは再会していない。
 リサから送られてきたゴールドカードを使って、船内を探索しようとしていたのではないか。
 そしたら安全のはずの顕正号でバイオハザードが起こって、何とか船から脱出しようとしていた矢先、私はゾンビに襲われた。
 その際、転倒して頭を打って、大ケガをしたはずだ。
 私の意識と記憶はそこまでなのだが、高橋曰く、高橋と高野君が駆け付けてくれて、私の体に食らい付いていたゾンビを駆逐し、何とか救助ヘリがやってきた船首甲板のヘリポートまで連れ出してくれた。
 そう聞いている。
 その後、私は意識不明の重体に陥り、江東区の病院に半年近くも入院していた。
 霧生市のバイオハザードの際、私の体には元からTウィルスの抗体があることが分かったので、今更そのゾンビに噛まれたところで感染するわけではない。
 確かに恐怖体験ではあるものの、それがどうしてこんなフラッシュバックと激しい頭痛が起こるのかは分からずじまいだった。
 転倒して頭を強打した際の後遺症ではないかと思うのだが……。

 善場「所長は健康診断とかは受けられてますか?」
 愛原「一応、年に1度は近くのクリニックで受けてますよ」
 善場「その際、脳ドッグとかは?」
 愛原「それは受けてません」
 善場「そうですか……」
 愛原「あの……それが何か?」
 善場「……愛原所長。帰京したら、脳ドッグを受けられることを強くオススメします」
 愛原「えっ?」
 善場「私で宜しければ、脳神経科のクリニックを探しておきましょう」
 愛原「そ、そんな!申し訳ないですよ!」
 善場「そうでもしませんと、所長は受診されないようですから」
 愛原「ええ……。わ、分かりました!帰京したら、脳ドッグを受けて来ます!」
 善場「その方が宜しいです。それで金庫の件ですが……」
 愛原「は、はい」
 善場「BSAAが回収したとの報告が入りました。他にも似たようなものが無いか、探索を続行するとのことです」
 愛原「そうですか……」

 こりゃ、本格的に脳ドッグを受けなきゃいけなくなったようだ。

[同日12時00分 天候:曇 同市内 おきなわワールド・健食バイキング“ちゅら島”]

 昼食はパーク内のレストランで食べる。
 またもやバイキング形式で、リサは大喜び。
 まあ、バイキング=食べ放題というわけだから。

 リサ「先生!体の具合は良くなったの!?」
 愛原「ああ。心配掛けて済まなかった」
 リサ「わーい!それじゃ、こっちで一緒に食べよ!」

 リサは私の手を取って、グイグイと席まで引っ張って行く。
 鬼型BOWの力なので、振り解けそうにない。
 レストランは広く、団体予約もしているくらいであり、当然修学旅行生の受け入れも行われている。

 愛原「あ、ああ……」

 バイキングには沖縄料理もあったが、他にも中華料理とかうどんとかもある。
 ここでもリサは、ガッツリ肉を盛っていた。

 三上「おや、愛原会長。体の具合はもう大丈夫なので?」

 引率教師で学年主任の三上先生が話し掛けて来た。

 愛原「三上先生。御迷惑をお掛けしました。おかげさまで、今はもう大丈夫です」
 三上「そうですか。沖縄は、東京と気候が違いますからな。十分お気をつけて」
 愛原「は、はい。どうもすいません」

 どうやら三上先生は、私の体調不良の原因が、気候の違いによるものと思っているらしい。
 そういうわけではないのだが、ややこしいので、そういうことにしておくことにする。
 高橋とリサにも、目配せをしておいた。

 三上「助手の方は大丈夫なんですか?」
 高橋「あっ?あー……俺は大丈夫っス!」
 三上「そうですか。それならいいですが」
 リサ「お兄ちゃん、先生にジュース持って来てあげよう!」
 高橋「お、おー……そうだな。先生、何にします?」
 愛原「お茶がいいや。ジャスミン茶」
 高橋「うス!」

 私はリサ達の席の近くに座り、料理を持って来ることにした。
 朝にガッツリ食べた上、そんなに体を動かしていないこともあり、そんなに今ガッツリ食べたいわけではない。
 なるべく消化に良い物を選ぶことにした。
 そうなると、やはり麺類ということになるか。

 リサ「先生はサッパリした物がいいんだね」
 愛原「あんまり腹減ってないんだ。具合が悪くなったこともあってさ」
 リサ「ふーん……」
 愛原「ま、取りあえず消化にいいうどんとかにするさ」

 他に水餃子とか、ゆし豆腐とかもあったので、それをチョイスした。

 愛原「高橋も気にしないで、どんどん食っていいからな?」
 高橋「あ、はい。サーセン。……あの、ねーちゃんは何て言ってました?」
 愛原「病院に行けって言われたよ」
 高橋「そ、そうっスか」
 愛原「東京に帰ったらな」
 高橋「そ、それで、先生はどうなさるおつもりですか?」
 愛原「まあ、脳ドッグくらい受けてもいいかなと思ってる。善場係長もそうしろと仰ってるし」
 高橋「どこか、いい病院あるんですか?」
 愛原「まあ、後で探すさ。というか、善場係長が探してくれるらしいが」
 高橋「お、俺も探します!」
 愛原「別にいいよ。係長がとても心配されてるんだから、係長オススメの所に行くさ。そこで何も無ければ、係長を安心させられるってもんだ」
 高橋「は、はあ……」

 高橋は何を狼狽してるんだろう?
 やっぱり私が、脳の病気か何かだと疑っているのだろうか?
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“私立探偵 愛原学” 「修学旅行2日目」 2

2024-08-29 11:22:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月9日09時00分 天候:晴 沖縄県那覇市 貸切バス車内]

 私達は予定通り、ホテルをあとにした。
 バス2台に分乗して、2日目最初の目的地へと向かう。

 

 バスガイド「皆さん、おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」

 

 というバスガイドの問い掛けへの回答者がどんな感じかで、この学校の民度が分かるというもの。

 男子生徒A「もうグッスリっス!」
 男子生徒B「別の意味で!?別の意味で!?」
 男子生徒C「何の意味だよ?」
 リサ「ナンパダメ!ゼッタイ!」
 愛原「ん!?」
 小島「あいつが私達の部屋に乗り込んで来たんで、魔王様が『革命的に指導』しました!」
 高橋「え?え?え?」
 愛原「左翼団体みたいなこと言わないでくれる?」

 この学校、民度が高いんだか低いんだか……。

 バスガイド「本日はこれより、南城市にございます『おきなわワールド』へと向かいます。『おきなわワールド』までの所要時間は、およそ40分を予定してございます。『おきなわワールド』は……」

 だいたい座っている席は、昨日と同じである。
 私も高橋も、リサもレイチェルも1番後ろに座っている。
 私はスマホを取り出して、善場係長に連絡を取った。
 メールを送るだけだが……。

 高橋「なに?オマエ、ナンパされたの?」
 リサ「痛い目に遭うって、まだ分かんないアホがいるんよ」
 高橋「オメェ、見た目『だけ』はいいからな。見た目『だけ』は」
 リサ「何で『だけ』を強調すんの!」
 高橋「中身はバケモンだろうが」
 リサ「あぁ!?」
 レイチェル「まあまあ。あまりうるさくすると、愛原センセイに怒られますよ?」
 高橋「はッ!?」
 リサ「しまった!」

 レイチェルの警告に、脊髄反射で私の方を振り向く2人。
 だが、今はそれどころではなかった。
 BSAAが沈没した客船をサルベージする作業をしていたところ、沈没地点付近である物を見つけたというのだ。
 それは金庫。
 もちろん海底に落ちていたので、相当錆び付いていたそうだが、状態からして中は浸水していないかもしれないというのだ。
 しかもよく見ると、アンブレラの紋章が施されているというのだ。

 善場「配線が付いていたところを見ると、普段はカードキーか何かで開ける電子金庫だったようです。アンブレラのマークが付いていて、カードキーで解錠できるということは、リサのゴールドカードが使えるということなのではないでしょうか?」

 とのこと。
 すると、昨夜見た夢は……。

 愛原「その金庫は、その客船に積まれていたものなのでしょうか?」
 善場「いいえ。劣化状態からして、もっと前から海底に沈んでいたと思われます。実はあの現場は、何年か前に別の船が沈没した現場にとても近い所なのです。その船の名は……『破邪顕正』号」
 愛原「うっ……!」

 私の脳裏にフラッシュバックが起こり、激しい頭痛と眩暈が起こった。
 そして、スマホを落としてしまった。
 スマホは座席の上に落ち、そこでバウンドして床に落ちた。

 高橋「! 先生?!」
 愛原「うう……」
 リサ「先生!?」

 危うく意識が途絶えるところであったが、すんでの所でそれは阻止できた。
 だが、意識は朦朧としている。

 高橋「先生!ここは1つ、病院に!」
 愛原「い、いや……それには及ばない……」
 高橋「で、でも……!」
 リサ「私のGウィルスを取り込めば、たちどころに治るよ!」

 リサは口を開けた。
 そこからGウィルスの胚がコンニチワと覗いている。

 レイチェル「射殺しますヨ?」
 高橋「俺も手伝う!」
 愛原「と、取りあえず静かにしてくれないか……」

 取りあえず、ロキソニンは飲んでおく必要がありそうだ……。

[同日10時00分 天候:晴 沖縄県南城市玉城前川 おきなわワールド]

 バスは9時45分頃に、おきなわワールドに到着した。
 ここも有名なテーマパークということもあり、多くの観光客が訪れている。
 もちろん、バス駐車場も完備。
 バスはここに駐車している。
 本来なら一緒に中に入る私は、大事を取ってバスの中で待機。
 高橋も残った。

 愛原「あー……くっそ……情けねぇ……」

 私はバスの座席をリクライニングし、すぐ横のカーテンを閉めていた。
 熱は無いのだが、一応、額には冷却シートを貼っている。

 高橋「しょうがないっスよ。あの後、善場のねーちゃんから鬼電来ましたからね」

 メール交信中に起きたもので、突然返信が来なくなったから、係長も心配してくれたのだろう。
 そこで高橋が正直に、私が倒れたみたいなことを言ったものだから……。

 高橋「沖縄に来るみたいなことを言ってたんで、『それはやめとけ』と突っ込んでおきました」
 愛原「クライアントさんなんだから、偉そうに言うなよ……。はー……」
 高橋「マジで大丈夫っスか?」
 愛原「ああ……。ちょっと、外の空気でも吸ってくるか」
 高橋「お供します!ついでにタバコ吸いたいんで!」
 愛原「あー、そうかい」

 私は席を立った。
 先ほどまでは動くだけで、ズキンと脳に電撃が走るような痛みがあったが、ロキソニンが効いたのか、今はそうでも無くなった。
 ただ、激痛から鈍痛に変わったといった感じ。
 後でまたロキソニンを飲むことになるのかな。
 それとも、ここでコーヒー投入した方がいいかな?
 取りあえず私達は、バスの外で待機している乗務員達に一旦降りる旨を伝えてバスを降りた。
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“私立探偵 愛原学” 「修学旅行2日目」

2024-08-28 21:11:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月9日07時00分 天候:晴 沖縄県那覇市大道 沖縄ホテル・朝食会場]

 朝食会場は一般客向けのレストランとは別の宴会場。
 そこに修学旅行生用にバイキング形式の朝食が用意されている。
 沖縄料理もあるが、さすがに朝食には本州と同じ料理、例えば魚の西京焼きとかもある。
 まあ、リサなら絶対に肉中心の朝食にするだろうが。

 高橋「さすがに2食続けて沖縄料理も飽きるんで、ここで東京のと同じのが出てくるといいっスね」
 愛原「まあな」

 朝食時間になったばかりということもあり、修学旅行生達はすぐには来ない。
 昨日の疲れがまだ残っていたりすると、なかなか起きられないということもあるだろう。
 だが……。

 リサ「愛原先生!おはよう!」
 愛原「あれ、リサ?もう起きて来たのか?」
 リサ「後から来て肉が無くなってると困るから」
 愛原「そういうことか……。さすがに、朝からラフテーは無いぞ」
 リサ「それは残念」
 レイチェル「愛原センセイ、おはようございます」
 愛原「れ、レイチェル!迷わず成仏してくれ!」
 レイチェル「Huh?」
 リサ「レイチェル、ゾンビなの?」
 レイチェル「No!私は何のウィルスにも感染してませんよ?」
 リサ「だってさ」
 愛原「ゴメン。夢の話だった」

 私は夢の話をした。

 レイチェル「心外ですね。私はTアビスのワクチンを接種していますので、今更それに感染することはありませんよ?」
 愛原「そ、そうだよな。申し訳ない」
 リサ「枕が変わると変な夢を見やすいもんね」
 愛原「そ、そうだな。リサは大丈夫だったか?」
 リサ「今回はね。その前は、男の鬼達に……何でもない!」
 愛原「ん?」
 淀橋「それより早く食べようよ」
 リサ「それもそうだな」
 小島「絵恋さんはいないんですか?」
 愛原「いや、絵恋さんは一般客扱いだから、向こうのレストランで食べてるよ」
 高橋「ぼっち飯だ」
 愛原「急いで食べてこっちに来るらしいよ」
 高橋「さっさと学校行けってんだ」
 愛原「まあまあ……」

 沖縄県は東京と比べて、日の出と日の入りが遅い。
 その為、もしかしたら、学校が始まる時間も遅いのかもしれない。

 愛原「沖縄は日の出が遅いんだよ」
 高橋「何の話っスか」
 淀橋「確かに、いつもより外が明るくなるのが遅かったような……」
 愛原「そして、日が暮れるのは遅い」
 小島「昨日、そうでしたね」
 愛原「日本って案外広いってことが分かるよ」

 警備会社で働いていた頃、社員旅行があった。
 北は北海道、南は沖縄に行ったりした。
 どちらも冬。
 札幌は16時で暗くなるのに、那覇は17時になってもまだ明るかった。

 小島「日本は東西に広いってことですね」
 愛原「そういうことだな」
 リサ「肉ゲット~♪」

 リサはソーキとローストチキンを手にしていた。

 淀橋「うわ……朝から胃もたれいそう……」
 小島「フツーはこれだけ食べたら太るのに、リサさんは太らないね。さすがは魔王様」
 リサ「むふー!」
 レイチェル「食べた物は、体内のGウィルスに吸収されるからですよね」
 リサ「リサ・トレヴァー大先輩から受け継いだGウィルスは食いしん坊だから」
 レイチェル「リサの強さの秘訣はそこですね」
 リサ「むふー!」

 誇らしげな顔をするリサだったが、私は一瞬その顔が歪んだのを見逃さなかった。
 知っている。
 リサは現在の食生活では、これ以上強くなれないということを。
 私も知っている。
 これ以上強くなるには、人食いや人の生き血を啜るしかない。
 だがもちろん、そんなことができるわけがない。
 苦肉の策として、血中老廃物を啜るということで僅かに強化させるに留まっている状態だ。
 それで、“鬼つよし”か……。

 絵恋「リサさーん!おはよー!」

 しばらくして、沖縄中央学園の制服に身を包んだ我那覇絵恋がやってきた。

 リサ「エレン、来たー」
 高橋「ここは東京中央学園関係者以外は立入禁止だ!」

 高橋が絵恋の入室を阻止しようとした時だった。

 絵恋「ほっ!はっ!」
 高橋「うっ!?」

 絵恋は空手の有段者だということは知っている。
 だが、沖縄に引っ越してからは道場通いは休止中だと聞いているが……。
 稽古休止中とは思えないほどの身のこなしで、高橋を軽くいなしてしまった。

 絵恋「はーっ!」
 高橋「がっ……!」

 高橋は絵恋の突き技を受け止めたが、それでもダメージがあったようだ。

 高橋「てめェ……!」
 絵恋「ふっ!」

 スカートの下に穿いているブルマが見えたが、絵恋は気にしていないようだ。

 男子生徒A「おー!」
 リサ「エレン、強いー!」
 絵恋「良かった。腕は鈍ってない」
 淀橋「飲み物でも飲みましょうよ。ドリンクバーだから、飲み物くらいいいでしょ」
 絵恋「ありがとう」
 リサ「…………」

 何故かリサは訝し気な顔をしていた。

 愛原「高橋、大丈夫か?」
 高橋「え、ええ……。大丈夫です。……あいつ、あんなに強かったです?」
 愛原「本当は空手道場に通ってるのかもな。空手の発祥って沖縄だから、ここは本場だ」

 高橋は絵恋の思わぬ反撃に困惑していたが、リサもリサで訝し気にしていたのが気になった。

[同日08時00分 天候:晴 同ホテル1階ロビー]

 朝食を食べ終わった後、リサ達は旅館棟に戻って行った。
 絵恋は学校に行ってしまった。
 私達は引率の先生方と集まって、今日の予定を話した。

 坂上「バスは予定通り来るそうです。9時にホテルを出発して、今度は南城市に向かいます。そこで今度は、おきなわワールドと玉泉洞を……」
 愛原「今度の宿泊先は、高級ホテルのようですね」
 坂上「はい。午後はリゾートホテルの施設で、マリンアクティビティをする予定です」
 三上「私にはホテル併設の海水浴場で海水浴というイメージしか湧かないが、安全性は大丈夫なのか?」
 坂上「正式に海開きされている砂浜ですし、私達が監視に当たります。ホテルの施設内ですから、安全性も保障されているでしょう」
 三上「うむ……」

 海か……。
 沖縄では、海は切っても切れない関係であるが、昨夜の夢が海洋性のウィルスに関する夢だっただけに、嫌な予感がしなくも無かった。
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“私立探偵 愛原学” 「悪夢からの朝」

2024-08-28 16:13:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:不明 地中海上 豪華客船内]

 枕が変わったせいか、私は変な夢を見た。
 羽田空港のカプセルホテルに泊まった時は、そんなことはなかったのだが。
 それは船の中だった。
 それも、ただの船ではない。
 Tアビスという生物兵器ウィルスに感染し、ウーズという化け物に変化してしまった船内の人々の猛攻を交わしながら進む猛者の後ろを付いて行くという夢だった。
 TウィルスやCウィルスに感染した人間は、腐乱死体の見た目になる。
 しかし、Tアビスは水死体のような見た目から更に体が変化する。
 この船は……クイーンゼノビア号?
 ウーズの猛攻を交わしながら船内を探索しているのは、BSAAの猛者達だろうか。
 彼らは船内で手に入れた鍵やカードキーを手に、施錠されたドアを開けたり、中にはヴェルトロの隠し金庫を開けたりしている。
 クイーンゼノビア号は、老朽化した豪華客船であった。
 船会社が倒産して廃船寸前だったところを、FBCというヴェルトロに肩入れしている組織がタダ同然で引き取り、それをTアビスの秘密研究施設やヴェルトロのアジトに改造してヴェルトロに引き渡した船である。
 FBCとは、アメリカ合衆国が肝煎りで設立した組織。
 テロ組織ヴェルトロと繫がり、ヴェルトロにウィルステロを起こさせ、FBCがそれを鎮圧することにより、その存在を世界中に知らしめるというマッチポンプを行っていた。
 そう、正に消防団員が、自分が活躍している所を見せたいが為に放火事件を起こしていたようなものである。
 そんな船内を探索していると、ヴェルトロの隠し金庫があったにも関わらず、それをスルーして行くBSAAの猛者達がいた。
 折しも船内には、自爆装置が起動した旨のアラームとアナウンスが鳴り響いている。

 愛原「おい!ここの金庫は開けんのか!?」

 私は後ろから彼ら……恐らく、ジル・ヴァレンタインとパーカー・ルチアーニというBSAAの古参組と思しき後ろに声を掛けた。
 しかし、2人は私のことなど見えないかのように、船橋に向かうエレベーターに乗ってしまった。

 愛原「この金庫は……!?」

 他の金庫はヴェルトロの紋章が描かれていたが、彼らがスルーした金庫には別の紋章が描かれていた。
 それはアンブレラの紋章。
 開いた傘を上から見た図をデザイン化したもの。
 このマークはあの2人……特にジルにとっては忌むべき物だろうに、どうしてスルーしたのだろうか?

 愛原「リサのゴールドカードがあれば開けられるかも……」

 しかし、それはリサしか持っていない。
 何とかして開けようとした時だった。
 部屋の天井にあるダクトから、見覚えのある者がウーズ化してやってきた。

 レイチェル「愛原センセイ……見ィ~つぅけたぁぁぁぁぁ♪」
 愛原「わぁぁぁ!?」

[5月9日06時15分 天候:晴 沖縄県那覇市大道 沖縄ホテル・愛原と高橋の客室]

 愛原「わぁぁぁぁっ!?」

 そこで目が覚めた。

 高橋「先生!?どうしました!?」

 バスルームにいた高橋が、ドアを開けて出て来た。
 どうやら、先に顔を洗ったりしていたようだ。

 愛原「あー……びっくりしたぁ……」
 高橋「先生?」
 愛原「あ、いや、悪い。ちょっと、変な夢見ちゃって……」
 高橋「マジっスか。大丈夫っスか?」
 愛原「大丈夫大丈夫。枕が変わると、寝付きが変わるせいだな」
 高橋「もうちょっとしたら、洗面所開けますんで」
 愛原「ああ」

 高橋はまたバスルームに戻っていった。
 私はベッドから出ると、冷蔵庫に保管していた水を一杯飲んだ。
 それにしても、あの金庫は何だったのだろう?

 愛原「ん……?」

 それにしても、あれは本当にクイーン・ゼノビア号だったのか?
 船内の様子を思い出してみると、船内には日本語の看板とかもあった。
 クイーン・ゼノビア号は、ヨーロッパの船会社が造船・保有していたものだ。
 船会社在りし頃は世界一周クルーズなども行っており、日本にも立ち寄ったことはあったそうだ。
 もちろんその頃はちゃんとした船会社が運航していたものであり、けしてFBCの秘密研究施設でもなければ、ヴェルトロのアジトでもなかった。
 とはいうものの、当時は日本人の乗客も少しはいたのかもしれないが、外国籍の船で日本語の案内看板が設置されているとは思えない。
 クイーン・ゼノビア号のことについては、私もデイライト主催の研修で公開された資料映像などで見たことはある。
 その際、特に船内で日本語表記の案内板など見たことも無かった。

 愛原「! まさかあれは、破邪顕正号……うっ!」

 日本船籍の豪華客船で、今はこの世に存在しない破邪顕正号を思い出した。
 あれは日本船籍なので、当然船内の案内板は日本語表記が主流だ。
 あれも船内でバイオハザードが起きて……最終的には沈没したと聞いているし、姉妹船にあっても廃船処分となったと聞いている。
 確かに、あの船内にはアンブレラの紋章が付いた金庫とかがあったような気がしたのだが、それを思い出そうとした時、激しい頭痛が起きた。

 愛原「……くそっ!」

 一体、何だというんだ?
 目の前に軍服姿の高橋が現れた所で、我に返った。

 高橋「先生、どうしました?」
 愛原「いや、何でもない」
 高橋「具合が悪いんですか?」
 愛原「いや、そんなことはない。そんなことはないぞ。それより、洗面所は?」
 高橋「ど、どうぞ」

 私は洗面所に行って、顔を洗うことにした。

 高橋「あ、あの、先生……」
 愛原「何だ?」
 高橋「実は先生が寝落ちされた後、俺、タバコ吸いに行ったんです」

 この客室は禁煙だ。
 タバコを吸いたければ、外に出るしかない。

 愛原「それで?」
 高橋「あのレズガキが訪ねて来まして……」

 我那覇絵恋さんのこと。
 彼女はLGBTのLで、リサの事が大好き。

 愛原「夜中にか?」
 高橋「はい。それで何の用だと聞いたら、『早苗さんからもらったお菓子、先生達も食べますか?』って聞いて来たんスよ」
 愛原「斉藤早苗が絵恋の家に行く際の手土産として持って行ったという、手作りのクッキーとかか」
 高橋「そうです」
 愛原「それで、オマエは何て言ったんだ?」
 高橋「『バカヤロウ!先生に手作りクッキーを食べて頂く権利があるのは、この俺様だけだ!』と怒鳴りつけて追い返しました」
 愛原「オマエな、いくら非常識な訪問だからって、そんな近所迷惑な声を上げなくてもいいだろう」
 高橋「さ、サーセン」

 その割に、私は起きることはなかった。
 夢を見ていた割には、案外深い眠りに陥ったというわけか。
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“私立探偵 愛原学” 「修学旅行初日の夜」 2

2024-08-26 20:29:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月8日22時00分 天候:晴 沖縄県那覇市大道 沖縄ホテル旅館棟]

 高橋「よっし!見回の時間ですぜ!いっちょ、悪ガキはボコしますか!」
 愛原「ボコしてどうすんだよ!注意するんだよ!」

 


 高橋「ドーグはこれでいいっスかねぇ?」
 愛原「アンブレラの研究所の見回りじゃないぞ!……俺はリサ達の部屋を見て回るから、オマエは向こうの部屋から回って来い!」
 高橋「へーい……」

 高橋は男子生徒達が泊まっているフロアへと向かった。
 私はリサ達の部屋をノックした。

 リサ「来た来た!はーい!」

 リサは喜んでドアを開けた。

 愛原「おーす!就寝時間だぞ。今日は長旅だったんだから、早めに寝てくれや」
 リサ「はーい!」

 
(画像は沖縄ホテル公式サイトより)

 リサ達の部屋は和室であった。
 既に4組の布団が敷かれている。
 そして4人は、ホテル備え付けのナイトウェアに着替えていた。
 こういう旅館的な和室だと浴衣をイメージするが、リサ達が来ているのはビジネスホテルのナイトウェア風である。

 愛原「さすがに体操服じゃないんだな」
 リサ「そう言うと思って、ホラ」

 リサはナイトウェアの裾を捲った。
 ご丁寧にも、リサは緑色のブルマを穿いていた。

 リサ「皆も見せてあげて!レイチェルも!」
 レイチェル「は、はあ……」

 淀橋さんも小島さんもレイチェルも、お揃いの緑ブルマを穿いている。
 絵恋さんだけはまだ制服のままだったが、ネイビーブルーのスカートの下に緑色のブルマを穿いていた。

 愛原「分かった分かった!いい物見せてくれてありがとう!絵恋さんも、早く自分の部屋に戻って!」
 絵恋「はーい……」

 絵恋さんは寂しそうな顔をした。

 絵恋「リサさん、また明日来るからね」
 リサ「いつまで一緒にいるの?」
 絵恋「朝食の時間まで。朝食を御馳走になったら、学校に行くから」
 愛原「ホテルから直接?」
 絵恋「ええ」
 愛原「凄い体力だねぇ……」
 絵恋「リサさんの為ですもーん!」
 愛原「いいから早く部屋に戻って」
 絵恋「はーい」
 愛原「それじゃ、残りの4人は早めに休むように。就寝時間中は緊急時以外、部屋から出ることは許されない。トイレは室内にあるし、飲み物も自販機で買ったり、廊下のウォーターサーバーのをピッチャーに入れてあるね?」
 リサ「もちろんだよ」
 愛原「明日は7時から朝食で、9時に出発だ。もう高校3年生なんだから、いちいち何時に起きて……とか、そんな細かい事は言わない。もう自分で判断しなきゃいけない。もちろん、分からないことがあったら、それは何でも聞いてみるといい」

 こういうホテルの朝食は、バイキングスタイルだ。
 いちいち全員揃ってから、「いただきます!」とかやってる場合ではない。
 小中学校の修学旅行とかなら、そういう集団行動を身に付けさせる為にも、そういうことをやらせないといけないのかもしれない。
 しかし、彼ら・彼女らは既にその道を通っているはずなのだ。

 愛原「寝坊するなよ?朝食抜きになるぞ」
 リサ「それは困る!」
 淀橋「大丈夫ですよ。ここには寝坊しようものなら、スクワット何百回もやらされてきたエリート軍人さんがいますから」
 レイチェル「そういう訓練は受けてきましたが、BSAAは戦争の為の軍隊ではありませんよ?」

 そのこと。
 だが、レイチェルなら絶対に寝坊せず、寝坊したコを起こしてくれることだろう。

[同日23時00分 天候:晴 同ホテル・ホテル棟・愛原達の部屋]

 見回りが終わり、私と高橋は自分の部屋に戻った。
 その前に、引率の先生達と翌日の打ち合わせをしてからだ。

 高橋「ええーっ!先生、大浴場に入らないんですか?」
 愛原「こっちの専用風呂でいいじゃないか」
 高橋「狭いっスよ!?」
 愛原「1人で入るんだからいいだろう」

 私は旅館棟の大浴場ではなく、ホテル棟の室内にあるユニットバスに入ることにした。
 セパレートタイプではなく、ベタなビジネスホテルの法則通りの3点ユニット式である。
 即ち、トイレと洗面所とバスタブが一緒になっているタイプだな。

 愛原「いや、ここのホテルの大浴場、別に温泉ってわけじゃないし」
 高橋「そりゃそうっスけど」

 私はバスタブにお湯を溜めた。

 愛原「明日は本島北部だ。明日は明日で、別のホテルに泊まるんだから、そこでの楽しみがあるだろ」
 高橋「そこに期待しますよ」

[5月8日24時00分 天候:晴 同ホテル・愛原達の部屋]

 高橋が風呂に入っている間、私は自分のノートPCを出して、善場係長に対する報告書を書いていた。
 係長は伊豆諸島近海で起きたバイオハザード事件への対応で忙しい。
 リサのことは私とレイチェルに任されているので、報告書はしっかり作成しになくてはならない。

 愛原「寝る準備ができたら、早く寝よう。明日も早いしな」
 高橋「朝飯は7時からでしたね」
 愛原「その朝一に飯を食うからさ」
 高橋「そうなんスか?」
 愛原「引率者って、誰かが朝一に起きて生徒の監視しているってイメージ無い?」
 高橋「あー、まあ、確かに。それが俺達の役割ってことっスか?」
 愛原「頼まれたわけじゃないが、それくらいのサービスはしてあげてもいいだろう」
 高橋「まあ、先生がそう仰るのでしたら……」
 愛原「決まりだな。歯磨いて寝よう」
 高橋「はい」

 見回りをした時、生徒の中には疲れたのか、布団に入って既に眠っているコもいた。
 朝早かったし、長旅だったからだろう。
 生徒の場合はそれでも微笑ましい思い出になるだろうが、引率者がそれであってはいけない。
 私は歯を磨きながら、改めて自分に言い聞かせた。
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