[3月26日12:13.天候:晴 東京都渋谷区 バスタ新宿3F]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、バスタ新宿に到着致します。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
稲生達を乗せた高速バスは大きな渋滞にハマることもなく、無事にバスタ新宿の中に進入した。
乗り場は4階だが、降車場は3階になる。
稲生:「先生、先生。到着ですよ」
稲生は前の席に座るイリーナを起こした。
イリーナ:「……んあ?……ああ、着いたのね」
稲生:「はい。乗り換えがありますので」
イリーナ:「んー、分かったよ」
イリーナが大きく体を伸ばすと、バスは停車し、大きなエアー音と共にドアが開いた。
マリア:「ここで乗り換えか?」
稲生:「はい。この上から出発します」
マリア:「分かった」
マリアはローブを羽織ると、荷棚からバッグを下ろした。
この中にはファミリア(使い魔)の人形が入っている。
稲生が先に降りて、荷物室に預けていた荷物を取り出した。
稲生:「よし。あとは……」
稲生はゴロゴロとキャリーバッグを引っ張る。
マリア:「ほら、師匠!早く降りてください!」
マリアがイリーナをバスから引きずり降ろす。
運転手:「ありがとうございました」
イリーナ:「Спасибо……」
マリア:「Thank you.」
稲生:(ものの見事に、自動翻訳切れてる。性能の悪いWi-Fiみたい)
そう心の中で思うと、2人のイギリス人とロシア人に言った。
稲生:「乗り換え先のバス乗り場を確認してきますので、ちょっと待っててください」
イリーナ:「いいよ。アタシゃ、ちょっとトイレ行ってこようかねぇ……」
マリア:「私も。乗り換えの時間、まだあるか?」
稲生:「はい。およそ30分くらいあります」
マリア:「よし。師匠、行きましょう」
マリアはイリーナの手を引っ張って行った。
稲生:(あー、良かった。『30分もあるのか!?』なんて言われなくて……)
お国柄の違いだろうか。
そもそも外国人から見て、日本のバスの定時性も優れモノであるという。
中には、事故らないだけマシという国もあるようだ。
稲生はバッグを引っ張りながら、発券カウンターに向かった。
そこには空席状況もさることながら、乗りたいバスがどこのブースから出るのかも表示されている。
稲生達が乗る予定なのは12時50分発。
その1本前が12時30分発だったが、接続時間に余裕を持ち、1本ずらした次第。
ダンテの飛行機は14時40分に到着する予定なので、十分に間に合う。
[同日12:45.天候:晴 バスタ新宿4F]
A1乗り場に『Airport Limousine』と書かれたバスがやってくる。
だいたい発車5分前に入線してくるようだ。
因みに塗装やバス会社は違えど、車種は白馬から乗ったアルピコ交通と同じ三菱ふそう・エアロエースだった。
このくらい大きなバスターミナルになると係員が常駐しているので、預ける荷物に関しても係員に任せることができる。
アルピコ交通と違って全席自由席なのだが、座った席は全く同じ位置という……。
マリア:「何だかお腹空いたな……」
稲生:「ああ、そうですね。羽田空港に着いたら、何か食べましょう。まだ、大師匠様が到着されるまで時間がありますから。いいですよね、先生?」
稲生はすぐ前の席に座るイリーナに聞いてみた。
因みに、バスはほぼ満席状態になっているにも関わらず、やはりイリーナの隣には誰も座ってこない。
イリーナ:「クカー……」
稲生:「えっ!?」
マリア:「まあ、そういう人だから」
イリーナの寝入りの速さに驚いた稲生だったが、稲生よりも先にイリーナの弟子をやっているマリアからすれば想定内だったようだ。
因みにアルピコ交通よりはシートピッチの狭いエアポートリムジンだが(もちろんこれは乗車時間が短いことと、少しでも定員確保の為である)、イリーナはしっかりリクライニングしている。
すぐ後ろにいるのがマリアだからだろう。
出発の時間になると、バスは複数の係員に見送られながら出発した。
尚、出発時間がほぼ定刻でいられるのも、日本ならではらしい。
〔「……終点、羽田空港国際線ターミナルには13時45分の到着予定です。……」〕
稲生:「でも、いいですよね?空港で昼食って……」
マリア:「いいと思うよ。多分、師匠もバス降りたら、似たようなことを言うと思う」
稲生:「なるほど……」
バスがバスタ新宿を出て、再び首都高速へ向かう。
もちろん、首都高速から乗った先のルートは違う。
後ろの方に座っていると、車内の暖房がよく効いている。
だからイリーナも寝やすいのだろうし、マリアもローブを脱いで膝掛け代わりにしている。
ローブの下には、いつもの緑色のブレザーを着ていた。
モスグリーンなのだが、これってJR東日本のコーポレートカラーに近い色である。
契約悪魔である“怠惰の悪魔”エルフェゴールが緑色好きな為、それに影響されていると思われる。
表向きは、稲生が卒業した高校(学校法人東京中央学園・上野高校)の制服にインスパイアされたので、それをモチーフにした服を作ったらこうなったということになっている。
その制服も、他校の生徒からはよく東京無線タクシー運転手の制服に似ているとよく言われたのだが。
マリア:「師匠が丸投げしてくれたせいで、余計な苦労を掛けてしまって申し訳ない」
稲生:「いや、いいんですよ。日本国内でのことですからね、そうなると日本人の僕に任されてしまうというのは人情だと思います」
マリア:「費用は全部、師匠のカード使っていいから。何だったら、宿泊先のホテルのルームサービス使いまくっていいぞ」
稲生:「“ホームアローン2”の最後みたいになると思われるので、遠慮しておきます」
主人公のルームサービスの使い過ぎが父親にバレて、思いっ切り怒られるところでエンディングを迎える。
稲生:「国際線ターミナルだと、どういう店があるかな?」
稲生は着くまでの間、スマホで店の検索を行うことにした。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、バスタ新宿に到着致します。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
稲生達を乗せた高速バスは大きな渋滞にハマることもなく、無事にバスタ新宿の中に進入した。
乗り場は4階だが、降車場は3階になる。
稲生:「先生、先生。到着ですよ」
稲生は前の席に座るイリーナを起こした。
イリーナ:「……んあ?……ああ、着いたのね」
稲生:「はい。乗り換えがありますので」
イリーナ:「んー、分かったよ」
イリーナが大きく体を伸ばすと、バスは停車し、大きなエアー音と共にドアが開いた。
マリア:「ここで乗り換えか?」
稲生:「はい。この上から出発します」
マリア:「分かった」
マリアはローブを羽織ると、荷棚からバッグを下ろした。
この中にはファミリア(使い魔)の人形が入っている。
稲生が先に降りて、荷物室に預けていた荷物を取り出した。
稲生:「よし。あとは……」
稲生はゴロゴロとキャリーバッグを引っ張る。
マリア:「ほら、師匠!早く降りてください!」
マリアがイリーナをバスから引きずり降ろす。
運転手:「ありがとうございました」
イリーナ:「Спасибо……」
マリア:「Thank you.」
稲生:(ものの見事に、自動翻訳切れてる。性能の悪いWi-Fiみたい)
そう心の中で思うと、2人のイギリス人とロシア人に言った。
稲生:「乗り換え先のバス乗り場を確認してきますので、ちょっと待っててください」
イリーナ:「いいよ。アタシゃ、ちょっとトイレ行ってこようかねぇ……」
マリア:「私も。乗り換えの時間、まだあるか?」
稲生:「はい。およそ30分くらいあります」
マリア:「よし。師匠、行きましょう」
マリアはイリーナの手を引っ張って行った。
稲生:(あー、良かった。『30分もあるのか!?』なんて言われなくて……)
お国柄の違いだろうか。
そもそも外国人から見て、日本のバスの定時性も優れモノであるという。
中には、事故らないだけマシという国もあるようだ。
稲生はバッグを引っ張りながら、発券カウンターに向かった。
そこには空席状況もさることながら、乗りたいバスがどこのブースから出るのかも表示されている。
稲生達が乗る予定なのは12時50分発。
その1本前が12時30分発だったが、接続時間に余裕を持ち、1本ずらした次第。
ダンテの飛行機は14時40分に到着する予定なので、十分に間に合う。
[同日12:45.天候:晴 バスタ新宿4F]
A1乗り場に『Airport Limousine』と書かれたバスがやってくる。
だいたい発車5分前に入線してくるようだ。
因みに塗装やバス会社は違えど、車種は白馬から乗ったアルピコ交通と同じ三菱ふそう・エアロエースだった。
このくらい大きなバスターミナルになると係員が常駐しているので、預ける荷物に関しても係員に任せることができる。
アルピコ交通と違って全席自由席なのだが、座った席は全く同じ位置という……。
マリア:「何だかお腹空いたな……」
稲生:「ああ、そうですね。羽田空港に着いたら、何か食べましょう。まだ、大師匠様が到着されるまで時間がありますから。いいですよね、先生?」
稲生はすぐ前の席に座るイリーナに聞いてみた。
因みに、バスはほぼ満席状態になっているにも関わらず、やはりイリーナの隣には誰も座ってこない。
イリーナ:「クカー……」
稲生:「えっ!?」
マリア:「まあ、そういう人だから」
イリーナの寝入りの速さに驚いた稲生だったが、稲生よりも先にイリーナの弟子をやっているマリアからすれば想定内だったようだ。
因みにアルピコ交通よりはシートピッチの狭いエアポートリムジンだが(もちろんこれは乗車時間が短いことと、少しでも定員確保の為である)、イリーナはしっかりリクライニングしている。
すぐ後ろにいるのがマリアだからだろう。
出発の時間になると、バスは複数の係員に見送られながら出発した。
尚、出発時間がほぼ定刻でいられるのも、日本ならではらしい。
〔「……終点、羽田空港国際線ターミナルには13時45分の到着予定です。……」〕
稲生:「でも、いいですよね?空港で昼食って……」
マリア:「いいと思うよ。多分、師匠もバス降りたら、似たようなことを言うと思う」
稲生:「なるほど……」
バスがバスタ新宿を出て、再び首都高速へ向かう。
もちろん、首都高速から乗った先のルートは違う。
後ろの方に座っていると、車内の暖房がよく効いている。
だからイリーナも寝やすいのだろうし、マリアもローブを脱いで膝掛け代わりにしている。
ローブの下には、いつもの緑色のブレザーを着ていた。
モスグリーンなのだが、これってJR東日本のコーポレートカラーに近い色である。
契約悪魔である“怠惰の悪魔”エルフェゴールが緑色好きな為、それに影響されていると思われる。
表向きは、稲生が卒業した高校(学校法人東京中央学園・上野高校)の制服にインスパイアされたので、それをモチーフにした服を作ったらこうなったということになっている。
その制服も、他校の生徒からはよく東京無線タクシー運転手の制服に似ているとよく言われたのだが。
マリア:「師匠が丸投げしてくれたせいで、余計な苦労を掛けてしまって申し訳ない」
稲生:「いや、いいんですよ。日本国内でのことですからね、そうなると日本人の僕に任されてしまうというのは人情だと思います」
マリア:「費用は全部、師匠のカード使っていいから。何だったら、宿泊先のホテルのルームサービス使いまくっていいぞ」
稲生:「“ホームアローン2”の最後みたいになると思われるので、遠慮しておきます」
主人公のルームサービスの使い過ぎが父親にバレて、思いっ切り怒られるところでエンディングを迎える。
稲生:「国際線ターミナルだと、どういう店があるかな?」
稲生は着くまでの間、スマホで店の検索を行うことにした。