報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 5

2022-11-30 20:24:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日18:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 学校から戻ると、リサはまた体操服と緑ブルマに着替えた。
 もはや部屋着同然である。
 夕食を作る時も、その上からエプロンをした。

 愛原:「おお、上手く焼けてるな」
 リサ:「でしょ?お兄ちゃんに教わったんだー」

 高橋、そこは役に立ったな。
 いや、教えたのはジェイク・コピーの偽高橋か?
 私も手伝ったが、手伝いと言えることなのか……。
 リサがハンバーグを焼いている間、私は冷凍のカレーを温め直したり、カット野菜を袋から出して分けたり、即席コンソメスープを入れたりするくらいだった。

 リサ:「あっ、お米炊いてない!」
 愛原:「いいんだ、リサ。明日の朝の為に、ちょっと考えていることがある。悪いが、今日は“サトーのごはん”でよろしく」
 リサ:「えっ?」

 お米は無洗米があるのだが、非常食としてパック飯も買い置きしてある。
 元々そろそろ賞味期限も迫ってきていることだし、明日、そのパックを使う目的があるので、あえて今夜使用しようと思う。

 愛原:「リサは2人分くらい食うよな?」
 リサ:「う、うん。まあね」

 私は私で大盛り(300g)を1パック分といったところだが、リサは【お察しください】。
 まあ、賞味期限まもなくのパックは何個もあるから、リサが消費してくれるのはいい。
 因みに新しいパックは、通販で注文しておいた。

 リサ:「あとはデミグラスソースを温めて……」
 愛原:「カレーの方は、もうすぐできるぞ」
 リサ:「分かったー」

 こうして、夕食のビーフカレーとハンバーグ(デミグラスソース)、野菜サラダとコンソメスープが出来た。

 愛原:「パックは洗って、明日また使う」
 リサ:「ふーん……?」

[同日21:00.天候:晴 同マンション]

 ゲリラ豪雨も止み、再び蒸し暑い熱帯夜がやってきた。
 私は自分の部屋で、事務所で使う書類作りをしていた。
 役所へ提出する何とか申請やら、自営業は色々と大変だ。
 と、その時、私のスマホに電話が掛かって来た。
 画面を見ると、善場主任だった。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「愛原所長、夜分に申し訳ありません」
 愛原:「いえいえ。どうしました?」
 善場:「何ぶん、人命が掛かっている緊急事態です。今から動けますか?」
 愛原:「えっ、今からですか!?」
 善場:「はい。しかも、リサも一緒にです。というか、恐らくリサが一緒でないとダメな案件です」
 愛原:「そ、そうなんですか!?でも、明日は、リサは学校ですが……」
 善場:「学校には行けるように調整します。もしかしたら、現地に泊まって頂くことになるかもしれないので、リサには制服と学校に行く準備をして来るように言ってください」
 愛原:「わ、分かりました」

 私が電話を切ると、ちょうどリサが風呂から出て来る所だった。
 今度は白い丸首Tシャツに紺色の縁が入ったものを着用し、下は紺色のブルマを穿いている。

 リサ:「先生、お風呂上がったよー」
 愛原:「リサ、申し訳ない!急に仕事が入った。しかも、オマエも一緒に来てもらわないといけない事案だそうだ!」
 リサ:「ええーっ!?明日、学校だよ!?」
 愛原:「分かってる!だから、学校に行く準備をして来るようにとのことだ。もう制服に着替えてさ……」
 リサ:「わ、分かった……。先生、お風呂は?」
 愛原:「入っているヒマは無いだろうな。仕事が終わったら入るよ」
 リサ:「分かったよ。着替えて来る」

 リサはそう言うと、自分の部屋に入って行った。
 すると、私も一泊の準備をしなきゃいけないということだな。

[同日22:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家]

 愛原:「あっ、そこです!そこで降ろしてください」
 運転手:「分かりました」

 あれから準備をした後、迎えに来たのはタクシーだった。
 料金については、既にデイライトの方に請求が行くようになっているという。
 高速代についても、同じだった。
 で、それで現地に向かうと、斉藤家の前にはパトカーなどが停車していた。
 警察関係者達が慌ただしく出入りしている。

 善場:「愛原所長、いきなりで申し訳ありません!」
 愛原:「人命が掛かっているんだから、しょうがないです。その人命とは、本物の高橋ですね?」
 善場:「その可能性が大いにあります」
 愛原:「分かりました。本物の高橋が助け出せるのなら、いくらでも協力します。な、リサ?」
 リサ:「もちろん」
 善場:「ありがとうございます。それでは、中へ……」

 善場主任が、警察が張った規制線の中に入ろうとした時だった。

 警察官A:「はい、ちょっと通してー!」
 警察官B:「ちょっと道を開けてくださーい!」

 家の中から警察官達が出て来た。
 間に、1人の女性を挟んで。
 それはつまり、その女性に手錠を掛けて、連行するところであった。
 その女性というのが……。

 愛原:「パール!」

 パールこと、霧崎真珠であった。
 高橋とは結婚の誓いまでしていたが、私が保証人になるのを渋っていた。
 そのパールは斉藤家のメイドをしていたが、空き家となった現在、何をしているのかは不明だったが……。
 まさか、まだメイドをやっていたのだろうか?
 しかし、服装はメイド服ではなく、上半身は迷彩柄のタンクトップ。
 下半身はくすんだ緑色のズボンであった。

 愛原:「オマエ、何をしたんだ!?」

 するとパールは私の方を向いて、ニイッと笑った。
 それは第1形態のリサの笑みよりも不気味に見えた。

 パール:「先生が悪いんだよ。先生が、いつまで経っても、ボク達の結婚を認めてくれなかったから……」
 愛原:「な、何だって!?」
 警察官A:「すいません。お話は、後で」

 パールは警察官達に連行されると、停車していたパトカーのリアシートに乗せられた。

 愛原:「主任、パールは何の罪で逮捕されたんですか?」
 善場:「その、高橋助手に対する監禁の疑いです」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「しかし、本人は『ボクじゃ助けられない。愛原先生とリサお嬢様を呼ばないと』の一点張りで……」
 愛原:「でも、私達がどうしろと言うのでしょうか?」
 善場:「多分、こういうことだと思います。口で説明するよりも、実際に現地に行って、見ながら説明した方が早いと思います。一緒に来てください。警察には許可を取っています」
 愛原:「分かりました」

 実際、善場主任は規制線の向こう側から来たわけだし、善場主任と一緒だからか、規制線の前に立っていた警察官からは何も言われなかった。
 こんな所に本物の高橋がいるのか?
 そして、私とリサが、どう役に立つというのだろう?
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 4

2022-11-30 15:03:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日15:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 私とリサは突然、善場主任に呼ばれて東京中央学園に向かった。
 さすがのリサも、体操服は着替えている。
 但し、スカートの下にブルマは穿いているようだ。
 それはそれとして……。

 愛原:「あ、そこでお願いします」
 運転手:「はい」

 私達はタクシーに飛び乗って、学園に向かった。
 相変わらず警察車両が見えるが、通用門の所には既に善場主任がいた。
 私がタクシーチケットで料金を払い、後からタクシーを降りると……。

 善場:「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原:「善場主任こそ、お疲れさまです。こんな日曜日に……」
 善場:「人命が掛かってますからね、そんなことは言ってられません」
 愛原:「もしかして、本当に高橋が見つかったのですか?」
 善場:「いえ、まだです。ですが、愛原公一氏の関係者として、所長にも協力して頂きたいと思いました」
 愛原:「なるほど。あの年寄りは、おどけているように見えて、無意味なことは喋らないタイプです。それがああして、わざわざ大掛かりなことをしてきたわけですから、やはり意味のある内容なんだと思います。因みに、これが件のUSBメモリーです」

 私は高橋が残して行ったUSBメモリーと、公一伯父さんが送って寄越したUSBメモリーを渡した。

 善場:「お預かりします。内容は、こちらでも精査致します」
 愛原:「お願いします」

 学校の敷地内に入り、教育資料館へと向かう。
 そこは警察官が立っていて、完全に立入禁止となっていた。
 爆弾が爆発した所のトイレには、ブルーシートが掛かっている。

 愛原:「BSAAが防空壕跡を調べた時、何も無かったんですよね?」
 善場:「そうです。公一氏は、明らかに旧校舎だと言ったのですね?新校舎にも地下室はありますが、そこではないと?」

 確かに、新校舎の地下室も怪しい。
 何しろ、白井伝三郎がここの講師だった時に使用していた科学準備室があるのだから。

 愛原:「ええ。『古い校舎』と言ってましたから、旧校舎のことだと思います」
 善場:「分かりました。それでは、これを着用してください」

 主任は防護服を渡してきた。
 夏場にこんなものを着けるのは、正直しんどい。

 リサ:「わたしも着なきゃダメ?」
 善場:「これ以上、化け物になりたくなかったらね」
 リサ:「むー……」

 防護服を着用し、私達は旧校舎内に入った。

 愛原:「何か、霧が立ち込めている」
 善場:「これが特異菌の胞子ですよ。入った瞬間に感染して、それが怪奇現象を見せるわけです」
 リサ:「すると、旧校舎の怪談話の正体は特異菌!?」
 善場:「……による幻覚ですね」
 リサ:「新校舎でも怪談話はあるけど……」
 善場:「それは旧校舎に入って感染した人達が見た幻覚ではないでしょうか?」
 リサ:「なるほど……」
 愛原:「すると、“トイレの花子さん”も幻覚だったというわけか……。とんでもない話だ」
 善場:「そうですよ。だから、特異菌はトンデモナイのです」

 私達は件の壁まで向かった。
 尚、隣の男子トイレにはブルーシートが張られている。
 防護マスク越しに見ると、確かに壁から定期的に胞子の煙が出ていることが分かった。

 リサ:「やっぱり、この壁を壊さないことには何も分からないのかもしれない」
 善場:「分かりました。リサ、あなたがやりなさい」
 リサ:「え?」
 善場:「あなたの力なら、この壁を破壊できるでしょ?早くやりなさい」
 リサ:「って、言われても……」
 愛原:「リサ。オマエが発情した時、俺がこの壁の向こうにいると思えばいいんだよ」
 リサ:「おーっ!」

 するとリサ、第1形態に戻ると、壁に体当たり。
 壁には大きなヒビが入った。
 そして、ブワッと飛び出る特異菌の胞子。
 なるほど。
 これを吸い込んだ暁には、怪奇現象の幻覚を見せられて、錯乱するというわけか。
 尚、私達はBSAAで開発された対特異菌用の防護服と防護マスクを着用している為、感染する危険は無い。

 リサ:「ガァァァッ!!」

 リサは第2形態まで変化すると、壁にパンチを食らわせた。
 バラバラと崩れて穴を開ける壁。

 善場:「人、1人通れる分の穴で十分ですからね」

 そして実際、リサがそれくらいの穴を開けると、善場主任は手持ちのマグライトで中を照らした。

 善場:「おっと!」

 と、善場主任が後ろへ飛び退く。
 中からは……。

 モールデッド:「ギャアアッ!!」

 黒カビに覆われた2足歩行のクリーチャーが現れた。
 確か特異菌に感染して、適応できなかった人間の成れの果てだと聞く。

 愛原:「このっ!」

 私は手持ちのハンドガンを向けて、モールデッドに発砲した。
 それは善場主任も同じ。

 リサ:「ガァァァッ!!」

 しかし、リサの方が圧倒的に強かった。
 身長2メートルくらいあるモールデッドに飛び蹴りを食らわせて転倒させた後、首を掴んで捩じり切ってしまったのだ。
 さすがのモールデッドも、首を千切られれば死ぬ。
 モールデッドは真っ黒な血を噴き出して絶命した。

 愛原:「リサ、よくやった!」
 リサ:「エヘヘ……」

 映画では、オリジナルのリサ・トレヴァーがリッカーの首を捩じり切って倒すシーンがある。
 そのウィルスを受け継いでいる日本版リサ・トレヴァーも、こういう倒し方を好むのかもしれない。

 善場:「……うん。今のところ、モールデッドはこの一匹だけのようですね。見てください。BSAAは騙されたようです」
 愛原:「えっ?」

 私も壁の中を覗くと、奥行きは2メートルも無かった。
 しかし、黒カビに覆われており、これならモールデッドがいてもおかしくはない。
 ……そう、2メートルしかない。
 つまり、この壁の向こうは、例の防空壕がある教室なのだろう。
 BSAAは、この狭い空間に気づけなかったのだ。
 では、この小部屋みたいな空間には何があるのかというと……。

 善場:「やっぱり!ここにも下への扉があるようです!」

 床には跳ね上げ式の扉があった。
 鍵は掛かっておらず、それを開けると、下に下りる梯子があった。
 明らかに防空壕とは、違う所へ繋がっていそうな感じだった。

 愛原:「どうします?」
 善場:「もちろん、下りてみます。もしもモールデッドの巣窟だったら、引き上げましょう」

 数匹程度なら私達のハンドガンや、リサの攻撃で何とかなるかもしれないが、更に多いとキツいかもしれない。

 リサ:「私が先に下りようか?」
 善場:「お願いします」

 リサが先に梯子を下りて行った。
 その後に私、そして主任と続く。
 下りてみると、防空壕跡のような素掘りの空間が広がっていた。
 いや、防空壕だったのかもしれない。
 学校は当時から避難場所になっていたから、防空壕が1つだけということは無かっただろう。
 学校によっては、複数用意していた所もあったのかもしれない。
 しかし、特に何も無かった。

 リサ:「……あそこ!」

 夜目の利くリサが、目ざとく何かを見つけた。
 それは、卒業証書とかを入れる筒である。
 私がそれを拾って、中を開けた。
 すると、中には鍵が1つと、紙が入っていた。

 愛原:「住所が書いてあります。埼玉県さいたま市中央区……って、これ!斉藤社長の家の住所じゃ!?」
 善場:「この鍵は何だと思いますか?」

 家の鍵にしては小さい。
 あとは……。

 愛原:「金庫の鍵とか、キーボックスの鍵とかに似てますね」

 斉藤家なら金庫くらいあるかもしれない。
 本物の高橋を捜しにここに来たのに、何かミスリードされてないか?
 本当にこれで大丈夫なのか?
 最後に私達は、この地下空間を調べ、再び梯子を上って小部屋を確認したが、やっぱり他には何も無かった。
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 3

2022-11-30 10:59:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[同日13:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私は咄嗟に電話を取ると、すぐに公一伯父さんのケータイに電話を掛けた。
 だが……。

〔お掛けになった番号は、電源が入っていないか、電波が届かない為、掛かりません〕

 愛原:「くそ!」

 それならと、今度は伯母さんの所に掛けてみることにした。

 伯母:「お電話ありがとうございます。旅館さのやです」
 愛原:「あっ、伯母さん!東京の愛原学です」

 静岡で民宿を営んでいる伯母さんの所に掛けた。

 伯母:「あら、学~。この前はありがとね~」
 愛原:「いえいえ。また連休があったら、お願いしますよ」
 伯母:「ええ、ええ。いつでも来てちょうだいね~」
 愛原:「ところで、公一伯父さん、います?」

 すると伯母さん、声のトーンを少し落として言った。

 伯母:「ああ、あのヤドロクね。まだ夏休み期間中でクソ忙しいってのに、『農業の研究に行って来る』っていう書置きを残して、どこかに旅立って行ったのよ。夜中にコッソリとね。そりゃもう、まるで夜逃げみたいで……」
 愛原:「やっぱりか!クソッ!!」

 私が地団太踏んでいると、部屋のインターホンが鳴った。

 リサ:「はい、愛原です」
 配達員:「郵便です。書留です」
 リサ:「はい、どうぞー」

 リビングにいたリサが応対に当たる。
 てか、体操服にブルマのまま応対しちゃダメだろー。

 伯母:「やっぱりって何!?学は何か知ってるの!?」
 愛原:「いや、どこに行ったかまでは知らないけど、どうも公一伯父さん、何か怪しいみたいで……」
 伯母:「ええっ!?」
 愛原:「と、とにかく、何か分かったら連絡するし、伯母さんも何か分かったら教えてよ」
 伯母:「分かったわ。お願いね」

 私は電話を切った。

 愛原:「おい、リサ!」
 リサ:「はい。先生宛て」

 リサは相変わらず緑色の縁の入った丸首体操服と、緑色のブルマを穿いた状態であった。
 多分、配達員もびっくりしただろうな。

 愛原:「ありがとう。オマエなぁ……」
 リサ:「ん?外に出る時は着替えるよ?」
 愛原:「ああ……まあ、いいや」

 リサが気にしないのではあれば……。

 愛原:「って、これ……!」

 今の郵便局は、普通郵便の土休日配達はしない。
 しかし、書留に関しては引き続き土休日も配達してくれる。
 だから、それ自体は特に怪しい所は無い。
 私が反応したのは、差出人の所であった。
 『静岡県富士宮市【中略】 旅館さのや一従業員』とある。
 一従業員って、明らかに公一伯父さんしかいないじゃないか。
 しかも封筒を触ってみると、内側にプチプチの緩衝材が入っているのが分かる。
 開けてみると、そのプチプチに挟まれる形で、USBメモリーが入っていた。

 愛原:「またUSBメモリーだ」

 私は早速、USBメモリーをPCに差した。
 高橋のと同様、何か動画が保存されているようだった。

〔「めでた♪め~でぇた~の♪祭りの夜♪キミと2人きり♪ハイッ!」〕

 愛原:「な、何だこりゃ!?」

 何故か“さのや”の大広間が映し出され、そこで宴会を楽しむ公一伯父さん達の姿があった。
 他の人達は……地元の町内会の人達か何かか?

 愛原:「あれ?他の動画か?あれ?」

 私は違う動画を開いてしまったのかと思い、もう1度確認する。
 しかし、どうしてもこのメモリーに入っているのは、この宴会動画だけのようだ。
 ん?この宴会動画が何だというのだ?
 ……宴会動画は1時間ほど入っていた。
 だが結局、それだけだった。

 愛原:「……いや、待て待て待て」

 私は伯父さんが意味も無く、こんなことをするとは思えなかった。
 そこで、もう1度、宴会動画を観てみることにした。

 愛原:「……これは……?」

 すると、ふと、たまに公一伯父さんが変なことを言うのが分かった。
 他の宴会参加者と談笑しているのだが、たまに噛み合わないことを言っては、他の参加者がツッコまれている。
 その度に公一伯父さんはおどけて、『酔っ払ったかの?』とか、『ボケがきたわい』とか言って誤魔化しているのだが……。
 それすらも違う?

 愛原:「……ん?」

 その時、伯父さん達が子供の頃の話を始めた。
 最初に振ったのは、伯父さんだが……。
 この団塊世代達が小学生だった頃、地方で木造校舎というのも珍しくはなかっただろう。

〔「東京の方では、鉄筋コンクリートも珍しくは無かったそうじゃよ」「おいおい、愛原さん。今、東京の話はしてないぞ?」〕

 愛原:「東京の……」

〔「中央じゃろ?グラウンドの中央」「おいおい、愛原さん。普通、校庭の演台は校舎の前とかだろ?」〕

 愛原:「中央……」

〔「ワシらの学園では……」「学園って、あれ?愛原さん、私立の小学校だったの?」「おっと!」〕

 愛原:「学園……」

〔「しかし、あれは古い校舎じゃった。木造だもんなー」「昔の田舎の小学校は、皆そうだったよ」〕

 愛原:「古い校舎……旧校舎!」

〔「あそこの地下室が物凄く不気味でな!あれは行きたくなかったのー」「愛原さんの所は、地下室があったのかい?」〕

 愛原:「地下室……」

〔「ワシの古い友人に高橋という者がおってな。そいつが肝試しと称して、地下室に忍び込んだんじゃよ」〕

 愛原:「高橋……」

〔「するとな、そこにおったんじゃよ」「何が?何が?」「お化けか!?」〕

 そこで、宴会の映像は切れた。
 まとめると、こうなる。
 『東京中央学園上野高校の旧校舎の地下室に、高橋はいる』と。
 こ、こうしてはおれん!
 私は善場主任に電話を掛けた。

 善場:「愛原所長、どうかなさいましたか?」
 愛原:「た、大変なんです!」

 私は高橋のUSBメモリーが見つかったことから話した。
 もちろん、ホテルで見つけたのではなく、家で見つけたことにした。

 善場:「『本物の』高橋助手は、東京中央学園上野高校の地下にいるということなのですね?」
 愛原:「そうです!」
 善場:「しかし、地下室というのは、あの壁の向こうの封鎖された教室の地下の防空壕跡と思われますが、BSAAが調べたのに、何も見つからなかったそうですよ」
 愛原:「もしかしたら、他にもあるのかもしれません!」
 善場:「! なるほど。これは思いつきませんでした。こちらでも調査しますが、リサの方が詳しいかもしれませんね」
 愛原:「リサにも聞いてみます!」

 私は電話を切った。

 愛原:「リサ!」
 リサ:「なぁに?」
 愛原:「東京中央学園の旧校舎の地下、あの防空壕跡以外にあるか?」
 リサ:「そんなの知らないよ」

 ……現実は甘くなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 2

2022-11-29 20:27:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日12:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 吉野家→愛原のマンション]

 都営バスを菊川駅前バス停で降り、そこから新大橋通り沿いの吉野家で昼食を取った。
 リサの奴、当たり前のように牛丼特盛を注文した。

 愛原:「オマエ、よく食うなぁ……」
 リサ:「肉を食べないと、頭がおかしくなる」

 BOWだからだろう。
 リサの場合は何とか持ち直した。
 他のBOWやクリーチャーが空腹になると、人間の血肉を求めるのは、偏に栄養価が高いからである。
 あと、味覚にも変化が現れて、通常の食事を受け付けられなくなるからだという。
 日本版リサ・トレヴァーの中では、『1番』が最後まで持ったが、ついに味覚崩壊が起きて、人肉を食らうことになった。
 『2番』のリサも危うくといった所に陥ったことはあったものの、何とか持ち直している。
 どうして他のリサ・トレヴァーと違い、リサは正気と通常の味覚を保ち続けていられるのかは定かではない。
 但し、時折食人衝動に駆られるところがあるのを見ると、けして危険性が無くなっているというわけでもないようだ。
 私は東京中央学園上野高校に、その秘密が隠されているのではないかと思っている。
 食べ終わった後で、会計をする。

 店員:「ポイントカードはお持ちですか?」
 愛原:「あ、はい」

 私はTポイントカードを取り出した。
 高橋のはENEOSのカードだったが、私のはファミマのカードである。
 それで少しでもポイントを溜める上、支払いもそのカードについたクレカにする。
 すると、クレカにもポイントが付くというシステムだ。

 店員:「ありがとうございます。クーポンが出ました」
 愛原:「あ、そう」

 ツタヤのクーポンでも出たか。

 店員:「牛角さんのクーポンです」
 愛原:「ありがとう」

 こういうのも平日限定なので、家の近所か通勤経路にでも無いと、なかなか使用する機会が無い。

 リサ:「ほおほお。焼肉のクーポン……」

 リサの目が一瞬、金色にキラリと光る。

 愛原:「あー、今日はダメだぞ」
 リサ:「有効期限、来月くらいまであるよね?」
 愛原:「あっ、あー……まあな」
 リサ:「しかも通常、10%くらい割引なのに、20%になってるよ!?」
 愛原:「そ、そうなのか。20%はデカいな……」
 リサ:「使わないと損だよ!」

 これ絶対、リサが焼肉食べたいだけだろ!

 リサ:「この前は宴会コースだったんだから、今度は食べ放題コースで!」
 愛原:「あー、また今度な」
 リサ:「今度っていつ!?」
 愛原:「だから、その……このクーポンの期限内……」
 リサ:「忘れちゃダメだよ!?何なら、わたしが預かる!」
 愛原:「いや、いいよ。俺が持っとく」

 こんなことを話ながら、マンションに戻った。

 リサ:「うわ、暑……!」

 防犯の為に締め切っていたとはいえ、室内は灼熱の地獄だ。
 すぐにエアコンの冷房を入れて、部屋を冷やすことにする。

 愛原:「リサ、水着とか洗うから洗濯機に入れてくれ」
 リサ:「分かったー」

 その間、私は本当に今日明日の食料があるのかチェックした。
 何とか食パンと玉子、ベーコンやカット野菜はあった。
 ……うん、まあ、明日の朝までは何とかなるだろう。
 冷凍庫を見ると、確かにタッパに入ったカレーと、既に小判型に成形されたハンバーグがあった。
 これを焼け、と……。

 リサ:「ハンバーグの焼き方なら、お兄ちゃんから教わったから大丈夫だよ」

 いつの間にか、後ろからリサが覗き込んだ。

 愛原:「そ、そうなのか。それじゃ、よろしく頼む」
 リサ:「先生の服も洗うから着替えて」
 愛原:「オマエがやってくれるのか?」
 リサ:「うん!」
 愛原:「そうか。それは助かる」
 リサ:「わたしも着替えて来るから」

 そう言ってリサが着替えて来たのが……。

 愛原:「また体操服とブルマ……」
 リサ:「先生の好みだもんねw」
 愛原:「あんまり大声で言うな」
 リサ:「否定しないんだw」

 東京中央学園でかつて採用されていた緑色のブルマと、体操服だった。
 こちらはサイズがピッタリの為か、ハミパンしたりすることはない。

 愛原:「洗濯の仕方も高橋に?」
 リサ:「うん。これは先生のパンツ~。下着はネットに入れて洗う~」
 愛原:「男の下着なんて、そのまんま洗濯機にブチ込んでいいんだよ。むしろリサの下着をそうしろ」
 リサ:「もうしてる。先生のパンツと一緒に
 愛原:「をい!」

 とにかく、洗濯と夕食はリサに任せ、私は部屋に入った。
 エアコンを入れていたせいか、少しずつ部屋が涼しくなっていく。
 私はPCの電源を入れて、高橋が残したUSBメモリーの中身を確認することにした。

 リサ:「はい、先生。アイスコーヒー」
 愛原:「おっ、気が利くなー!」
 リサ:「エヘヘ……。ナデナデして~」
 愛原:「はい、なでなで」
 リサ:「エヘヘ……」

 アイスコーヒーは冷蔵庫に入っていた、パック入りのものだ。
 ブラック微糖は、私の飲み方なので。
 さすがに無糖は苦くて飲みにくい。
 PCを立ち上げると、早速USBメモリーの中身を確認した。

 リサ:「あっ、お兄ちゃんだ!」

 PCの画面に高橋が映し出された。

 愛原:「何だ、リサ。まだ部屋にいたのか?洗濯は?」
 リサ:「今、洗濯機回してるところ。終わるまで、あと30分ある」
 愛原:「そういうことか」

 高橋はとうやら自分の部屋で、自撮りをしているようだった。

 高橋:「先生、突然サーセン。いや、すいません。俺は今から、自分の正体について話します」
 愛原:「やはり、偽者だったのか……」
 高橋:「俺は本物の高橋正義ではありません。善場の姉ちゃんは、アネゴの事をエイダ・ウォンじゃないかと思っているようですが、俺もまた別の人間をコピーして整形されたものです」
 愛原:「一体、誰だ?」
 高橋:「ジェイク・ミュラーまたの名をジェイク・ウェスカーという男がいました。俺はそのクローンで造られ、顔を高橋正義に整形して入れ替わった者です」
 愛原:「そうか、ジェイクか!2013年に東欧イドニア紛争と、香港のバイオハザードで活躍したっていう……」
 高橋:「本物の高橋正義は、八丈島で入れ替わりました」
 愛原:「あっ、なるほど!あの時か!」

 確かにあの時の高橋、怪しい動きをしていた。
 私達が八丈島に向かったのも、高橋を追ってのことだった。
 あの理由について、高橋は詳しくは話してくれなかったのだが、入れ替わったのなら、そりゃそうだと思う。
 すると、本物の高橋は八丈島にいるということなのか?

 高橋:「本物はどうなったのかは、俺には分かりません。ですが、愛原公一博士なら知っています」
 愛原:「はあ!?」
 高橋:「この前、静岡に行った時、俺の正体に気づいたようです。どうしてあの爺さんが分かったのかは、分かりませんが」
 愛原:「あの爺さん、何なんだろうな」
 高橋:「俺が話せるのはここまでです。あと、いつまで一緒にいられるのかは分かりませんが……」
 愛原:「ちょっと待って、ちょっと待って!」

 だが、映像はここで終わっていた。
 そもそもが、誰がどうして高野君や高橋のコピーを造ってまで、私の事務所に送り込んだのかが分からなかった。

 リサ:「どうするの?」
 愛原:「取りあえず、連絡しよう!」
 リサ:「誰に?」
 愛原:「そりゃもちろん、善場主任と公一伯父さんだ!」
 リサ:「どっちから先に電話する?」
 愛原:「えっ、えーと……」

 ①善場優菜
 ②愛原公一
 ③他の誰か
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」

2022-11-29 17:39:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日10:00.天候:晴 東京都中央区銀座8丁目 銀座グランドホテル]

 私は朝食の後で部屋に戻ると、リサに私が見た夢の話をした。

 リサ:「うーん……。夢の中のわたしが何を言おうとしたのか、分かんないねー」

 リサは腕組みをして、首を傾げた。
 白いTシャツの下に隠れた、成長段階の胸が少し浮いたように見えた。

 愛原:「だろ?まあ、俺がBOW設定で、リサが人間設定だったら、分かる内容かな」
 リサ:「先生がBOW?」
 愛原:「そう。それなら、皆が俺に銃を向ける理由も納得行くだろ?そしてリサは人間だから、向こう側ってことだ」
 リサ:「どうしてそんな夢を?」
 愛原:「俺が聞きたいよ」
 リサ:「先生こんなに頑張ってるのに、撃つなんてねぇ……」
 愛原:「もしかしたら夢の中の俺は、人食いをしたのかもしれないな。それだったら分かる」
 リサ:「うえ……。だったら、わたしも人間に戻らないから、一緒にBOWになろうよお?」

 リサはGウィルスまみれの寄生虫を口から出そうとした。

 愛原:「なにさり気なく感染させようとしてんだw」
 リサ:「お兄ちゃん、どこに行ったんだろう?」
 愛原:「まさか、高野君と同じ“青いアンブレラ”のメンバーだったりしてな」
 リサ:「ええっ?」

 国によっては“青いアンブレラ”の存在や活動は合法である。
 だが、自衛隊以外の軍事組織の存在を認めない日本政府は、“青いアンブレラ”を非合法組織とした。
 BSAAは国連組織の1つなので、国連軍の一派という見方である為、国連加盟国である日本も、その国内活動を認めざるを得なかった(時の政権が弱腰外交で有名であった為、他の先進国の圧力に屈して批准した)。

 愛原:「参ったなぁ……」
 リサ:「ご、御飯くらいならわたしが作るから、心配要らないよ。お兄ちゃんに、色々教わったから」
 愛原:「ああ、それは助かる」

 今日の昼くらいまでなら外食で何とかなるだろうが、その後は……。

 リサ:「確かお兄ちゃん、ハンバーグを冷凍してたはずだから」
 愛原:「そ、そうなのか」

[同日10:59.天候:晴 東京都港区新橋 東京都交通局『新橋』バス停→都営バス業10系統車内]

 ホテルをチェックアウトした後はデイライトの事務所に寄らず、最寄りのバス停に行って、バスに乗ることにした。
 やってきたバスは、全国的にある普通のノンステップバス。
 折り戸式の前扉が開くと、バスに乗り込んだ。

 愛原:「大人2人」
 運転手:「大人2人ですね。はい、どうぞ」

 運賃は私のSuicaで払っておいた。

 リサ:「いいの?」
 愛原:「ああ」
 リサ:「ありがとう」

 バスに乗り込むと、後ろの2人席に座った。
 高橋がいないので、3人横並びに座る為、1番後ろの席に座る必要は、必ずしもない。
 むしろ2人席の方が狭い分、リサと密着する感じになる。
 リサが2人席を希望したのは、そこに理由があるのかもしれない。
 日曜日ということもあり、勤め人の姿は殆ど無かったが、代わりに観光客らしいのが見受けられた。
 もんじゃ焼きで有名な月島地区を通り、豊洲市場で有名な豊洲地区を通り、東京都現代美術館前を通り、終点が東京スカイツリーの前だからだろう。
 その為、この系統は本数が多い路線となる。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは前扉を閉めて、発車した。
 車内はクーラーの風が強く吹く音が響いている。
 窓はUVカットのシートが貼られているが、それでも換気の為に開けられた上部の小窓からは、日差しが入り込んで熱風も入り込んでいる。
 それを補う為に、冷房の風が強く吹いているのだろう。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗常泉寺と本行寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前で、お降りください。次は、銀座西六丁目でございます〕

 リサ:「そういえば今日、リンとリコが戻って来る」
 愛原:「おー、そうか。やっぱり夏休みギリギリまでいたか」

 白井伝三郎の実験によって、本当に人食い鬼と化した母親の上野利恵から生まれた2人の娘。
 父親は人間である為、この2人の娘は半分人間の血が入っていることになる。
 尚、実験内容と投与されたウィルスはリサと全く違う為、BOW(生物兵器)のカテゴリーには入っていない。
 ハーフである為、殆ど変化はできず、その代わりに、『半化け』状態となっている(具体的には牙が短く生えていたり、耳の先端がやや尖ったり、頭に短い角が生える程度。ほぼ誤魔化しは可能)。

 リサ:「夜に帰って来るんだって」
 愛原:「寮の門限、大丈夫なのか?」
 リサ:「うん。許可は取ってあるみたい」
 愛原:「そうか。それならまあいいか。ところで、今日の昼は途中で食べて行こう」
 リサ:「おー!」
 愛原:「どうせこのバスで行けば、菊川に着く頃には昼だし」
 リサ:「確かに」
 愛原:「で、夜は高橋が作ってくれたハンバーグとか、あるんだっけ?」
 リサ:「うん。あと、冷凍していたものにカレーとかもあったよ」
 愛原:「カレーか。……うん、そういえば高橋、作ってたな……」

 今夜はハンバーグカレーで決まりだな。
 あと、明日の朝が……。

 愛原:「明日の朝、どうしよう……?」
 リサ:「今夜の分、食べたら、何も無くなるね」
 愛原:「マジか……」
 リサ:「朝はパンとかでいいんじゃない?」
 愛原:「そ、それもそうだな……。まあ、何とかしよう」

 取りあえず帰って、今家にある食料の状況から確認しなければ……。
 いかに高橋に任せっきりにしていて、それがいなくなったら大変なことになるか思い知らされた。
 これはやはり……昔みたいに、事務所と住居を統合させた方がいいのかもしれない……。
コメント
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