ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

本日2本立て

2013-10-30 19:35:59 | 日記
[16:30.東京都江東区菊川のマンション 敷島孝夫&十条伝助]

 この2人は、ある話題で持ち切りになった。実は、十条も鉄道好きだったのである。但し、十条は模型派であった。
「手持ち無沙汰から始めた模型だが、なかなか面白いものだぞ」
 実家では、既に一室が完全に鉄道模型のレイアウトと化していたそうである。
「敷島君は模型はやらんのかね?」
「はあ……。私は専ら“乗り鉄”でして……。でも、よく外国の鉄道の模型とか手に入りますね」
「中には自作したものもあるよ」
「ええっ!?」
「私は仕事柄、よく海外へ行く。この前も学会でアメリカに行ったからね。その時乗ったアムトラックの“カリフォルニア・ゼファ”がこれだ」
「あの大陸横断列車の!?」
「ここにあるのはほんの一部だ。実家には、フル編成で展示してある」
「いいですねぇ。おっ、これが“アセラ・エクスプレス”ですか」
「その通り。この車内販売で売っているサンドイッチが、また最高だったね」
「ん?ニューヨークの地下鉄まで?」
「これはR143だな。閑散とした時間帯に乗っていたら、いきなりギャングが撃ってきたのでびっくりしたよー。はっはっはっ」
「いや、笑い事じゃないっス」
「それと比べると、ほんと日本の地下鉄は平和だ。キールが体を張ってくれたおかげで、私は全くの無傷だったんだがね」
「そうでしょうとも」
 キールも頑丈な体で、ギャングが持っているハンドガンなんかで壊れるタマじゃないことは知っていた。
 何しろシンディの機銃掃射でさえ“軽傷”、バズーカでも“重傷”だったのだから。
「アジア方面だと、ほれ。最近話題の中国高速鉄道CRH2」
「……これ、(JR東日本)E2系の色、塗り替えただけじゃないっスか?」

[17:00.菊川一丁目バス停 敷島、エミリー、十条、キール]

「どうせ、最終の新幹線で帰るのじゃろ?ついでに錦糸町で晩餐を共にしよう」
「ありがとうございます」
 出欠を聞きに行くのに、随分と大掛かりになってしまった。
 数分遅れで、都営バスがやってきた。
「敷島さん。お約束は……」
 エミリーが先に釘を刺してきた。
「分かってるって」
「? 約束?何の約束かね?」
 十条が聞いてくる。
「いえ。“ベタなおのぼりさんの法則”です」
「?(最近の若い者は分からん)」
 前扉からバスに乗り込んだ。
「理事はこちらに」
 と、優先席に座らせる敷島。その前の吊り革を掴む。
〔「発車します。お掴まりください」〕
 バスが走り出した。
〔「次は菊川駅前、菊川駅前。都営新宿線をご利用のお客様は、お乗り換えです」〕
「理事はどの路線で、金沢まで行かれるんですか?」
 敷島が聞いた。
「いつも、東京駅から発車する便に乗っておるよ。あの路線、金沢の駅が終点ではないからな。その少し先まで行ってくれるのだが、ちょうど実家に近い場所なんだ」
「へえ……」
「マンションからタクシーで行けば、20分程度で東京駅に着けるしな」
「確かに」
 今日の場合は、錦糸町駅から総武快速に乗ることになりそうだ。
「最終の新幹線は予約したかね?」
「ええ。今日が金曜日なので、最終も最終です」
 敷島はスマホを取り出して頷いた。
「では、ゆっくりできるな」
「ええ」

[21:00.錦糸町駅ビル“テルミナ”飲食店内 敷島孝夫&十条伝助]

 ほろ酔い加減の2人。
「なぁに。人間、若い頃には色々あるもんだ。それに、結婚が早けりゃいいってもんでもないぞ」
 十条はクイッとウィスキーのグラスを煽って、敷島に言った。
「私なんざ、結婚して35年経つが、キールを作ってる時には既に粗大ゴミ扱いだよ。はっはっはっ!」
「そうですか」
「敷島君は今、いくつかね?」
「今年35です。作者より年上です」
「はっはっはっ。といっても、3つしか違わんだろう。ん?ということはキミが生まれた時に、私は結婚したことになるのか」
「そうっスね」
 敷島は梅酒を口に運んだ。これだけで、もう顔が赤い。といっても、何杯か飲んだが。
「いやー、人生はあっという間だよ。1日1日を大事に生きるといい」
「そのつもりなんですけどね」
「今すぐの結婚相手はいないにせよ、気になる相手はいるのかね?」
「え?……あ、いやー、それが……」
 敷島は一瞬、ある女性の顔を思い浮かべたが、すぐに打ち消した。
「私としては赤月君。まあ、平賀君と結婚して、平賀夫人になったがね。彼女がキミに相応しいと思っていたのだが……」
「うーん……」
「プロデューサー業務で、意気投合もしていたことだし……」
「その仕事も、リストラされちゃいましたからね」
「何を弱気になっている?少なくとも、キミが希望すればまたボーロカイド・プロデューサーの仕事が回ってきそうな気がするんだけどね」
 その時、キールから十条に電話が入った。
「……ん?なに?もうそんな時間かね?……分かった。すぐ行く」
 電話を切って、敷島を促す。
「せっかくの人生相談中に申し訳ないが、そろそろ出発の時間だ。飲食代は私が持つから、準備をしてくれ」
「ありがとうございます。ごちそうさまです……」
 敷島は重い腰を上げた。
 
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まだ続く。

2013-10-30 15:21:27 | 日記
 [14:20.東京都江東区菊川のマンション 十条伝助&キール・ブルー]

「財団仙台支部の敷島孝夫参事と、エミリーがまもなく到着します」
 長身に清潔感のあるスーツを着たキールが、書斎として使用している部屋に恭しく入って来た。
 十条はパソコンの画面から目を離すと、丸いレンズの老眼鏡を掛け直して意外そうにキールの方を向いた。
「はて?バスで向かってきた割には、随分と早いな」
「先ほど菊川駅前のバス停を降りたので、まもなく到着すると」
 キールが頭を下げる度に、前髪で顔が隠れてしまう。縁の無い丸いレンズの眼鏡を掛けているが、これは理知的さをアピールする為のもので、度の無いものである。
「私の仕事が終わるまで、待ってはもらえんのかね?」
「はい。そう申し上げたのですが、『こちらは仙台からわざわざ来たんですから、お願いしますよ』と……」
「それで言い返せなかったのか?」
「申し訳ありません……」
 この対応はキールらしくないなと十条は思った。いくら相手が財団職員とはいえ、十条の方が理事で立場は上だ。敷島が来るという話を聞いた時、まるで締め切り間近の作家と、その原稿を取りに来る編集者のようだと思った。
 確かに今日まで返事をしなければならぬアンケートがあるにはあったが、無回答はイコール欠席なので、それを決め込んだつもりだった。おおかた、キールが目的だろう。
(キールはあくまで執事ロボットしての存在であり、ボーカロイドみたいな売り方は絶対にお断りだと言ったのだが……。違うのか?)
 いや、それにしても……。
「キールよ。敷島君が来ることといい、お前はどうも敷島君に対して弱気なような気がする」
「は?そんなことは、無いと思いますが……」
「いやいや、そんなことはある。もしかしてお前、何か敷島君に弱味でも握られているのか?ドクター・ウィリーとの決戦の時、敷島君が真っ先にあいつの元へ到着できたのも……」
 しかしキールは十条の言葉が終わらぬうちに、否定する発言を始めた。
「いえ、そんなことはないのですが。そもそも、敷島プロデューサー……いえ、敷島参事とはそんなに面識もありませんし」
「ならば、何故そんなに敷島君に従順なのかね?南里さんの威光なら、もう気にすることはないんだぞ?もう、この世の人ではないんだし
「いや、その……敷島参事というよりは……その……」
「まあ良い。私だけアンケートを無視したことにも責任はあるからな。会おう」
 十条はパソコンを“スタンバイ”の状態にしておくと、書斎を後にした。

[14:30.同場所 敷島、エミリー、十条、キール]

「いやあ、都心とはいえ、仙台からは遠いですなぁ……。それはさておき、懇親会の出欠についてお話を伺いましょうか」
 敷島は嫌味ったらしく言った。
「何が遠路遥々だ。それに、懇親会と言ったって、実態はメイドロボット達をコンパニオンにしただけのドンチャン騒ぎだろうが。うちのキールは出さんぞ」
「あらま、こりゃ帰りの電車は最終になりそうですかねぇ?」
 敷島はちらっとロボット2機を見た。
「御回答を頂けたら、すぐにでもお暇するつもりでしたが……」
「何がだ?」
「じゃあ理事、我々と2人でゆっくり話し合いましょうか。てなわけで、この2人には外に出てもらってもいいですかね?」
「それは構わんが……。何をニヤけておる?」
 敷島はそれには答えず、2人の方を振り向いて言った。
「そういうわけだ。話が終わったら呼ぶから、一緒にその辺歩いてきなよ。お前ら、久しぶりに会ったんだろ?特に、エミリー。せっかくだから、彼に思いっきり甘えちゃいなよ」
「なっ!?」
 エミリーとキールは、同時に顔を赤らめた。
「い、行きましょう」
 キールはエミリーの手を取って、そそくさと部屋を出て行った。
「??? 一体、あの2人は何なんだ???」
「あれ?理事、御存知無かったんですか?」
「は?」
「あの2人は今、財団内で有名な関係なんですよ」
「……親子の設定をした覚えは無いが……?」
「はい、ブブーッ!財団所属のロボットなら、全員知ってますよ。今話題のアツアツ歳の差カップルです」
「…………」
 敷島の言葉に、十条は開いた口が塞がらなかった。
「キールの奴、製造5年であんな……」
「いやあ、理事発明の感情レイヤーは随分と優秀ですねー!その10倍以上もの長い期間稼動しているエミリーを振り向かせたんですからねぇ!」
「……少し、改良が必要かもな」
「またまたぁ……。それより、本題に入りましょうか」
「ここで私が即答したら、せっかくデート中のあの2人を呼び戻すことになるんだろう?」
「ええ、まあ……」
「だったらもう、この時点で最終の新幹線でも予約しておきたまえ。私も今夜は出かけるからな」
「えっ、どちらに?」
「今日は何曜日だ?」
「金曜日です」
「金曜の夜に夜行バスないしは列車で実家に帰省し、土日は実家で過ごす。これが私のライフスタイルだ」
「へえ……で、日曜の夜にまた夜行バスで東京へ?」
「そうだ。本当は列車がいいのだが、廃止になってしまった」
「寝台特急“北陸”、需要はあったのにねぇ……。分割民営化の弊害ですかな」
「よく見ているな?」
「こう見えましても、鉄道好きなもんで」
「それがどうして、東京駅から都バスで?」
「何ででしょうねぇ……」
 敷島は腕組みをして首を傾げた。
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前回の更に続き

2013-10-30 00:34:37 | 日記
 [13:40.JR東京駅丸の内北口~都営バス東20系統車内 敷島孝夫&エミリー]

 敷島達の姿は、鮮やかな赤レンガの見える丸の内にあった。
「十条理事の御実家は北陸だが、東京の大学で客員教授をされている間、深川のマンションを借りて住んでおられる。ここから出ているバスなら、乗り換え無しで行ける」
 敷島が誰ともなく説明するように言うと、都バスのバス停の前に立った。
「敷島さん。総武快速線で・馬喰町へ行き・そこから・都営新宿線に・乗り換えた方が・早いですが?」
「いいんだよ。あえてここから、ゆっくり行ってやろう」
「…………」
 敷島の言葉に、エミリーは同調する反応もしなければ、口答えもしなかった。あくまで今の“ユーザー”は敷島なので、その意向には従わなくてはならない。
 と、そこへ都バスがやってくる。
〔「東京都現代美術館回り、錦糸町駅前行きです」〕
 プシューと大きなエアー音がして、前扉が開く。と!
「敷島さん。お約束は・結構です」
「今日はツッコミが早いな」
 中扉から乗ろうとする敷島の腕を掴み、かまそうとしていたボケを阻止した。
 すぐに車中の人となる。1番後ろの席に座った。
「所要時間、40分くらいだろ?」
「イエス」
「今からキールに連絡入れといて。バスで向かうから。到着予定時刻は、お察しくださいって」
「イエス」

 しばらくして、バスは定刻に発車した。
〔ピンポーン♪「毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは、東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きです。次は呉服橋、呉服橋。……」〕
「キールと・連絡が・取れました」
「で、何だって?」
「すぐに・ドクター十条に・伝えるそうです」
「よーし。ちゃんとアポ取ったんだからな。バックレは無しにしてもらわないと」
「イエス」
 バスはしばらくの間、永代通りを東に向かって走る。敷島の古巣であった大日本電機も、この界隈にあった。しかし突然の外資系企業によるM&Aを受け、消滅してしまった。よもや3期連続で、赤字決算だったとは……。
 その旧社屋は取り壊され、大手の不動産会社によって超高層のテナントビルが建築されている。
「住所は分かるけど、実際行ったことないからなぁ……。エミリー、最悪はお前のナビよろしくな」
「イエス。お任せ・ください」
「あー、ていうか、アレか。俺のタブレットに、お前のナビ機能を移せばいいのか。ちょっとこっちに移してくれよ」
「移す……?」
「どうした?」
「笑いませんか?」
「何で笑うんだよ?」
「笑わないで・ください」
「はあ???」
 敷島が変な顔をして首を傾げつつも、タブレットにナビ画面を移す。現在位置、永代通りをスムーズに東進するバス。目的地をスクロールさせると……。
「あ?何だこれ?」
「…………」
 敷島が画面に何かを発見した。エミリーが恥ずかしげに、窓の方を向く。
「お、お前……これなぁ……」
 幸い敷島の笑いのツボに入ることは無かったが、目的地の印は大きなハートマークになっていた。

 その頃、バスの最前部。つまり運転手(30代男性)と、前扉のすぐ後ろの展望席(?)に座る常連客の佐藤さん(62歳。男性)は、いつもと違う異変を感じていた。
(今日はやたら青信号のタイミングがいいな……)
(つーか、ずっと先まで青のまんまになってねー?)
 後に、永代通りの殆どの信号機が変わらないというトラブルで、警察が出動する騒ぎになったそうである。
「エミリーの願望、富岡八幡が聞いているのかね?何か、赤信号で止まんないな」
「イエス。強く・願っています
 信号機トラブルの原因、並びに犯人は【お察しください】。
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前回の続き 

2013-10-28 19:56:00 | 日記
[11:00.JR仙台駅 敷島孝夫&エミリー]

「“はやて”だって?よく直前で予約できたな。いくら閑散期だからって……」
「イエス。敷島さん」
 エミリーの愛の力は凄い。というか、ただの偶然だろう。敷島達は東京駅までの新幹線特急券と乗車券が1枚になったキップを手に、新幹線改札口へ向かった。
「11時26分発じゃ、昼過ぎに東京着だ。全く。マイペースな爺さんのせいで、東京くんだりだよ」
 敷島がぶつくさ文句を言っていると、エミリーがビニール袋に入った駅弁を買ってきた。
「昼食です」
「ああ。弁当かよ。寂しいなー」
 それでもこういう所を見ると、昔、初音ミクと行動していた頃を思い出す。ミクもこういう時には、よく弁当を買いに行ってくれた。
「あっ、おにい……敷島さん!」
「ん?」
 仙台駅2階から3階へのエスカレータを昇ろうとすると、若い女性の声がした。聞き覚えのある声だ。
「おっ、由紀奈ちゃんか。久しぶりだなー」
 エミリーはメモリーを検索した。20歳前後の黒いロングが特徴の女性。名前が由紀奈……。
(池波由紀奈。初見201×年10月○×日。当時14歳。仙台市泉区中吉台団地……)
 エミリーが自身のメモリーから掘り起こしたものは、紺色のブレザーの制服を着たショートの少女だった。
(鏡音レンにより、衝動的自殺を阻止する。その後、鏡音リンと友好関係を築く)
「これからどこ行くの?」
「急に東京出張が決まってさー。しかも、行ってすぐ帰ってくるムチャぶりプランだよ」
「へー。エミリーさんも気をつけて」
「サンキュー。ミズ池波」
 受け答えしている間でも、エミリーのデータのダウンロードは続く。
(その後、敷島さんとも交遊あり……)
 由紀奈が親しく敷島と接しているのは、そこに理由があるようだ。
「敷島さん。急がないと・列車の・到着する・時間です」
 エミリーが促した。
「おっ、そうか。それじゃまた」
「気をつけてね」

[11:30.東北新幹線“はやて”28号、8号車車内 敷島孝夫&エミリー]

「いやー、びっくりしたなー。まさかあそこで、由紀奈と会うなんて」
「イエス」
「もっとびっくりしたのは、“はやて”、直前の予約で2人席が確保できたことだ。どういう功徳だ?」
「イエス」
「……キールのことで頭がいっぱいか、お前は」
「の、ノー……」
 敷島は紐を引っ張ると温まる牛タン弁当に箸をつけていた。
「それにしても、平和になったなぁ……。ウィリーがいなくなって、シンディもいなくなった。ベタな法則だとそれに変わる悪役が出てきそうなものだけど、そういうこともないし」
「イエス」
「悪は栄えず。必ず最後に正義は勝つ、だな」
「イエス」

 列車が東京駅に着くまでの間、敷島とエミリーの関係について軽く説明しよう。
 南里志郎亡き後、遺言に従って遺産を相続した弟子の平賀太一。当然、南里の私有物であるエミリーも相続することになった。しかし、あまり広くない家で、平賀には既にメイドロボットの七海がいる。そしてそれから2年後、平賀はめでたく赤月と結婚した。既に長男がいて、今年中には長女も産まれる予定とのことである。
 エミリーをベビーシッター代わりにする案もあったが、実際問題それ以前に、整備に手が回らなくなる(更にその前に、維持費も掛かる)ことが判明した。そこで、オーナーはあくまで平賀とした上で、財団にエミリーを管理してもらうことにした。しかし事務所内にも置き場所が無い為、敷島が管理者という名目で預かっているわけである。無論、維持費は全て財団持ちで。
 幸い学会(創価ではない)からも注目されているエミリーは“お荷物”になることもなく、ここ最近は科学技術省や防衛省からも目を向けられている。
 従って今は、敷島と生活を共にしている状態である。

[13:05.東北新幹線“はやて”28号、8号車車内 敷島孝夫&エミリー]

〔♪(あのチャイム)♪。「まもなく終点、東京です。東海道新幹線は、14番ホームから19番ホーム。……」〕
「やけに展開が早いな」
「作者の・都合と・思われます」
 そうそう。って、コラ!……あ、いや、失礼。列車は定刻通りに、都内の都心部を走行していた。出迎えるかのように、車窓には山手線や京浜東北線が並走している。
「そういや東京来たの、5年振りだな。向こうで事務職してると、フケッぱなしだもんなー」
「イエス」
「ボーカロイド・プロデューサーやってた頃は、それこそ回数券使うくらい新幹線乗ってたのになー」
「イエス」
「東京も5年経てば、相当変わってるだろーなー。もはや右や左も分からないくらい……」
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、東京、東京です。到着ホーム20番線、お出口は同じく左側です。……」〕
「……取りあえず、右か左かは分かったわ」
「イエス」
 列車は東京駅新幹線ホームに滑り込んだ。
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冨士参詣深夜便

2013-10-28 02:20:16 | 日記
 ポテンヒット氏の競輪予想は、残念ながら外れたらしい。それにしても、新田という名字。どこかの新宗教の偉い人で、聞いたことがあるような……?まあ、気のせいか。とにかく、次なる戦いに期待したい。

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 “アンドロイドマスター”より。ボツネタ公開。尚、前作“ボーカロイドマスター”より、5年後の世界。

「今度の財団懇親会なんだけど、十条理事だけ、まだ返信無いんだよな……」
 財団事務所の事務室の中でボヤくのは敷島。
「相変わらず、マイペースな博士ですね」
 部下の青年が苦笑いをして、敷島のボヤきに応えた。今、ここでの敷島の肩書は参事という、あまり聞き慣れないものである。一般企業で言う課長クラスになるらしいが、この事務室には敷島を入れて5人しかいない。ここでは南里研究所時代と同じく、総務の仕事をしている。
「ボーカロイド・プロデューサーやってた頃が懐かしいよ」
「今じゃ、あのコ達も各研究機関に引き取られましたからね」
 南里研究所無き後、初音ミク達は他の研究所などに引き取られ、散り散りになってしまった。それでもたまに、関係者が財団を訪れた時などに再会する機会はあるので、完全にお別れになったわけではない。
 最近は巡音ルカが、海外レコーディングに成功したと風の噂で聞いた。
「皆、元気にやってるみたいで、良かったじゃないですか」
「まあね。それにしても十条理事、今日が返信締め切りだって分かってんのかな……」
「そんなに御心配なら、もう1度メールを送信してみては?理事もお歳ですから、体調不良かも……」
「うーん……。十条教授か……。キールの整備は終わってるんだよな?」
「確か、3日前に終わっているはずですよ」
 キール。フルネームはキール・ブルーと言い、十条が試作した執事ロボットである。20代の知的な青年をイメージして作られ、5年前に南里研究所に初お目見えした。
 今では、最も量産化に近いと目されているほどである。
「よーし。エミリーを呼んでくれないか」
「はい」
 部下は内線電話を取ると、受付嬢をやっているエミリーを呼んだ。

 すぐにエミリーはやってくる。5年前との違いはほとんど無い。表情がだいぶ豊かになったくらいか。南里との辛い別れを乗り越えたようだ。
「何か・御用ですか?」
「今すぐ十条理事と面会したい。大至急、アポを取ってくれ」
 敷島が言うと、
「? かしこまりました。ですが・総務部長を・通して・連絡するのが・本筋だと・思われますが?」
 悪く言えば、『口答え』してきた。しかし、これは敷島の想定内である。エミリーは本来、自分で考えて行動する人工知能を搭載している。与えられた命令も、よく自分で精査して最適なプランを考え出す。場合によっては、今のように提案することもある。
 なのに、どうして南里の時は、ただ与えられた命令を愚直にこなすことしかできないロボットであり続けたのかは今でも不明だ。エミリーが自分で封印していたことだけは分かっている。
「超A級の急ぎでね。正攻法だと、またスルーされる恐れがある。そこで、お前の出番だ。お前が十条理事と連絡する場合、直接理事にはしないだろう?間違いなく、“彼氏”に連絡するはずだ。当たりだろ?」
 すると、エミリーはカッと顔を赤らめた。そして、
「すぐに・御連絡致します」
 と、慌てて踵を返した。その際、使役しているメイドロボに、
「今度の・新しいマスターは・随分と・ロボット使いが荒い」
 と、ボヤいたという。この辺も、5年前と変わった。
「なに?エミリーに、彼氏なんていたんですか?」
 今のやり取りを見ていた敷島の部下が意外そうな顔をした。
「まあ、この数年、色々あったんだよ」
 敷島は自分でコーヒーを入れながら答えた。
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