報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「合宿所であった怖い話」 2

2017-09-30 20:15:33 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月13日19:15.天候:晴 栃木県日光市 東京中央学園栃木合宿所]

 稲生達の背後から声を掛けて来た者。
 強い霊気の混じるその声は、明らかに人間のものではない。

 稲生:「わあっ!出たーっ!」

 稲生とて魔道師の端くれ(見習)。
 特に、幽霊船クイーン・アッツァー号で幽霊はお腹一杯になるほど遭遇して来たはずなのに、さすがにまだ慣れるものではなく、飛び上がって驚いた。

 荒田:「ええ……。確かに僕、死んでますよ……」

 それは荒田譲治の幽霊だった。
 意外にもその姿は、生前の状態を辛うじて保ったままだった。
 違うのは、彼だけがまるで白黒映像の人物みたいに白黒だったことだ。
 幽霊に足が無いというのは嘘で、クイーン・アッツァー号でもそうだが、ちゃんと足はある。
 ただ、肉体の無い霊体の為か、やはりどこかふわふわした感じになっている。

 稲生:「ど、どうしてここに?上野高校で殺されたんだろ?」

 稲生は震える声で荒田に問うた。
 その点はまだマリアの方が冷静である。

 マリア:「自分が死んでいるという自覚はあるのか。それだと逆に面倒だな」
 稲生:「面倒?」
 マリア:「アッツァーの時でもそうだったろ?死んだ自覚の無い幽霊に対しては、それを自覚させるだけでも昇天したのに、こいつは自覚してるんだ。並大抵のことでは昇天しないぞ」
 荒田:「大丈夫ですよ……。ここに来る前に……『埼玉アストライアが優勝するまで成仏できねぇぜ!ヒック!』と叫んでいた酔っ払いオジさんの幽霊がいましたが……。それと比べれば、僕を昇天させるのは……楽だと思います……」
 稲生:「あー、そりゃ楽かもw」
 マリア:「何のことだ???」

 荒田の言葉のおかげで、少しは恐怖が薄らいだ稲生だった。

 稲生:「それで荒田君の場合は、どうしたら昇天できるの?まさか僕やマリアさんの体を代わりに寄越せなんて言わないよね?」
 荒田:「そうして頂ければ大変結構ですが……。恐らく無理難題でしょうね……。僕は『3時の魔道師』に殺されました……。だからどうか……僕の仇を取ってください……」
 マリア:「分かった。できるだけそうしよう。それで、あなたの知っている情報を聞きたい。あなたは殺される直前、何を見た?」
 荒田:「何も……見てないんです……」
 マリア:「は!?」
 荒田:「突然後ろから襲われて……。急いで振り向いたんですけど……。何か……バギクロスみたいな魔法で……体をズダズタにされて……」
 稲生:「バギクロス!?」
 マリア:「ヴァギィ・クロ・ゥスだ。確かにその『3時の魔道師』はそれを唱えたのだな?」
 荒田:「はい……。この耳で聞きました……」
 稲生:「マリアさん、バギクロスって相当強い魔法なんですよね?」
 マリア:「ああ。魔法で真空状態を作り、それを敵にぶつける最強魔法だ」

 敵にかまいたち現象を起こして攻撃する魔法では最強のものだという。

 稲生:「それができるのは?」
 マリア:「師匠なら余裕でできるだろう。魔道書によれば、優秀なミドルマスター(Middle Master 中堅魔道師)なら修得できるらしい。普通に修行していれば、ハイマスターから使えるようになるという」
 稲生:「つまり『3時の魔道師』は、ミドルマスター以上の魔道師さんってことですか」
 マリア:「そういうことになる」

 『3時の魔道師』とは荒田が勝手に付けた呼び名だ。
 なので正体の如何によっては、魔道師ではない人外だったかもしれなかったわけだ。
 だが、荒田の証言で、そいつは100%魔道師であることが判明し、しかも階級だって稲生やマリアより上であることが分かった。

 稲生:「僕達、勝てますかね?」
 マリア:「勝負に持ち込む以前に、どうしてこんなことをしたのか問い質してからだな。なあ、ミスター荒田」
 荒田:「何ですか……?」
 マリア:「『3時の魔道師』とやら、最悪私達の知り合いかもしれない」
 荒田:「何ですって……!?」
 マリア:「もしそいつに会って問い質して、それで反省したなら、あなたの前で全力謝罪させる。それではダメか?」
 荒田:「許しません……!僕の人生を何だと思っているんですか……!僕だけでなく、家族も泣いてるんですよ……!」
 稲生:「そりゃそうだ。マリアさん、いざとなったら、先生に言って何とかしてもらうという手もありますよ」
 マリア:「私が師匠なら、そんな面倒なことはしない」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「とにかく、『3時の魔道師』とやらを探そう。ミスター荒田、仇を取りたいのならあなたも手伝ってくれ」
 荒田:「はい……」

 廊下の奥へ進む稲生達。
 マリアはチラッと荒田を見た。

 マリア:(私が師匠なら、この幽霊を強制的に昇天させる。師匠ほどの大魔道師なら、そんな魔法も使えるからな……)

 そして、今度は稲生を見る。

 マリア:(チンタラチンタラお経唱えて成仏させるより、一気に魔法で成仏させる方法があるというのに……。ブッダとやらは、それを弟子達に伝えなかったと見える……。そして、ユウタの宗派の創始者も……)
 荒田:「あそこだけ……」
 稲生:「えっ?」
 荒田:「あの部屋の……中から……光が見えます……」
 稲生:「光!?えっ?」
 荒田:「ええ……。恐らく、先輩方には見えないでしょう……。でも、僕には見えるんです……。きっと、『3時の魔道師』を呼び出す時計は……あそこにあると思うんです……」
 稲生:「行ってみましょう!」

 それは2階の会議室だった。
 10人ほどが入れる部屋に机と椅子が並べられている。
 そこにハク人形とミク人形もいた。

 稲生:「やっぱりこの部屋か。……ん?見つけたのかい?」

 ハク人形とミク人形は、2人で1つの時計を抱えていた。
 それは何の変哲も無いアナログ時計。
 学校の教室には必ずあるタイプのものだ。

 荒田:「これです……!これこそが……『3時の魔道師』を呼び出す時計……!」

 それは2時59分で止まっていた。

 荒田:「本当は……言い出しっぺの僕が……動かしたいところですが……。この通り、僕はもう……物体を持つことができません……。だから、稲生先輩……。先輩に……代わりに針を動かして頂きたいのです……。どうか……お願いします……」

 1:素直に針を動かす。
 2:マリアに動かしてもらう。
 3:本当に荒田にできないのか確かめる。
 4:人形達に動かしてもらう。

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“大魔道師の弟子” 「合宿所であった怖い話」

2017-09-29 18:40:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月13日11:30.天候:曇 栃木県日光市 東京中央学園栃木合宿所]

 稲生:「いえ、やはりこのまま調査を続けましょう」
 マリア:「そうするか」
 稲生:「何か、このまま引き返したら引き返したらで危険な気がするんです」

 というわけで稲生達は、合宿所に向かった。
 駅前からタクシーに乗り、合宿所へ向かう。
 合宿所は公道のバス停から、更に登った所にある。
 タクシーならその道をスイスイ登って行けるというわけだ。

 運転手:「こんな時期に合宿なんてありましたかね?」
 稲生:「あー、いえいえ。僕、OBなんです。観光に来たついでに、ちょっと合宿所を見て行こうかと思いましてね」
 運転手:「そうでしたか」

 タクシーは門の前で止まった。
 もちろん運転手の言う通り、こんな時期に合宿など行われているはずも無く、門は固く閉ざされていた。

 運転手:「お戻りになるまで、待ちましょうか?」
 稲生:「いえ。しばらくゆっくりしていくつもりなので、それは結構です」

 ちゃっちゃっと終わらせられた場合、その選択肢は誤りということになるのだが……。

 運転手:「それなら、領収証を。ここのお電話番号に掛けて頂ければ、お迎えに上がりますので」
 稲生:「ああ、どうもすいません」

 稲生達はタクシーを降りた。

 稲生:「案の定、門が閉まってますね。せめて、大学生がサークル活動でもやっててくれないかなって思ったんですけど……」
 マリア:「大学も普通に講義のある日だろう?任せてくれ」

 マリアは裏門に回ると、そこの通用口に杖を当てた。

 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……ア・ヴァ・カ・ムゥ!」

 杖の先がポウッと光ると、通用口の鍵が開いた。

 稲生:「さすがマリアさん」
 マリア:「これだけ固く閉ざされていれば、中に誰もいないということでいいか?」
 稲生:「そのはずですよ」

 それでもなるべく物音を立てずに入口に進む。

 マリア:「それにしても、この建物も結構古いな」
 稲生:「元々はどこかの小学校だか中学校の分校だった所らしいんですよ。それが廃校になったのを東京中央学園が買い取って、合宿所として改築したものだそうです」
 マリア:「なるほど。上野の校舎ほどじゃないけど、ここもそれなりに霊気が漂っている」
 稲生:「やはりそうですか」
 マリア:「もっとも、魔界の入口にあるってわけじゃないから、別に害のある悪霊や魔族がいるってわけじゃなさそうだな」
 稲生:「それは良かったです。でも『3時の魔道師』は、何でこんな所に出入りしてるんですかね?」
 マリア:「それをこれから調べるんだろう?」
 稲生:「そうでした」

 2人が合宿所の正面玄関に回った時だった。

 マリア:「こ、これは……!」

 まるで正面玄関を塞ぐように、魔法陣が描かれていた。
 これは、あれだ。
 魔法陣の中に入って聖水を振り掛け、どこかへ移動するタイプのものだ。
 大抵、それは魔界へ行くものなのだが……。

 稲生:「魔法陣がどうしてここに!?」
 マリア:「『3時の魔道師』が実在する確率は、これでほぼ100%になったみたいだな」
 稲生:「この魔法陣で、それは出入りしているということですね?」
 マリア:「恐らく」
 稲生:「行ってみましょう。幸い、聖水ならあります」

 稲生は自分のローブの中から聖水の入った瓶を取り出した。

 マリア:「魔法陣の中に入ったら、もう後戻りはできないぞ。準備はいいか?」
 稲生:「はい!」

 稲生とマリアはローブを着込み、杖を手にした。
 そして魔法陣の中に入ると、聖水を振り掛けた。
 案の定、そこから紫色の光が浮かび上がり、稲生達を包み込んだ。

[同日19:00.天候:曇 同合宿所]

 稲生:「着いた!……って、ここは?」

 辺りは真っ暗だった。
 マリアは水晶球を取り出し、位置情報を確認した。

 マリア:「あれ?全然変わって無いぞ」
 稲生:「ええっ!?でも、真っ暗ですよ?」
 マリア:「いや、やっぱり同じ場所だ。ほら……」

 マリアは背後を指さした。

 稲生:「あれ!?」

 そこには合宿所があった。
 そして、正面玄関も……。

 マリア:「時間だけ移動したらしい」
 稲生:「な、何で!?」
 マリア:「分からないが、恐らく罠かもしれないな。その証拠に、あれを」
 稲生:「!」

 マリアが指さすと、正面玄関のドアが半開きになっていた。

 マリア:「『3時の魔道師』が、私達に入って来いって言ってる」
 稲生:「上等でしょう。僕には後輩2人を殺された恨みがあるんですから」
 マリア:「あまり無茶はするなよ。まだ相手の正体が分かってない」
 稲生:「分かってます」

 2人は正面玄関から合宿所の中に入った。

 稲生:「!」
 マリア:「うっ……!」

 そしてやはり案の定、玄関のドアが自動で閉まり、鍵が掛けられた。

 マリア:「さ、どういう歓迎の準備して待っているか……」

 中は当然ながら暗く、非常口誘導灯や消火栓の赤ランプくらいしか点灯していない。

 マリア:「ユウタ。『3時の魔道師』を呼び出す方法とか聞いてない?」
 稲生:「はい。その為の時計がこの合宿所のどこかにあって、その時計を3時に合わせると現れるとのことです」
 マリア:「その時計の場所は?」
 稲生:「そこまでは聞いてません。荒田君も知らないそうで……」
 マリア:「この程度の秘密なら、何も殺すまでも無さそうだな。恐らく、その時計の秘密まで知ってしまったので殺されたんだと思う」
 稲生:「そんな……」
 マリア:「時計の特徴は?」
 稲生:「それもちょっと……」
 マリア:「だけど普通の人間が魔道師を呼び出せるくらいだから、それなりの魔力は帯びていそうだ」

 マリアはローブの中からミク人形とハク人形を出した。

 マリア:「この建物のどこかに、魔力を帯びた時計があるはずだ。それを探して」
 ミク人形:「了解!」
 ハク人形:「了解!」
 稲生:「なるほど。その手がありましたか」
 マリア:「上野高校ほどではないが、元学校ということもあって、結構広い建物だ。闇雲に探しても、時間の無駄だろう。なら、そういう時にこそ使い魔を使う」
 稲生:「なるほど」
 ???:「そんなまだるっこしいことしなくても大丈夫ですよ……」
 稲生:「わっ!?」
 マリア:「誰だ!?」

 いつの間にか2人の背後に回っていた者がいた。
 それは人間ではない。
 一体、誰だろう?

 1:3時の魔道師
 2:荒田譲治(情報提供者)の幽霊
 3:菅原浩太(新聞部部長)の幽霊
 4:想像もつかない

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“大魔道師の弟子” 「無言の圧力」

2017-09-29 10:29:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月13日10:45.天候:晴 栃木県日光市 東武日光駅前バス停→駅構内]

 バスが観光客で賑わう東武日光駅前に停車する。

 稲生:「平日でも結構、人が多いな。景気も持ち直したみたいだし、週末はもっと賑わうのでしょう」

 その為か、ここで下車する乗客も稲生達だけではなかった。

 稲生:「『日光を見ずして結構と言う勿れ』なんですって」
 マリア:「大師匠様の御言葉か?」
 稲生:「いやあ、どうなんでしょう」
 マリア:「? それにしても、ダンテ一門の魔道師がここを訪れるのは私達が初めてじゃない」
 稲生:「そうなんですか。アナスタシア組が先に来てましたかねぇ……」
 マリア:「いや、彼女らよりももっと前」
 稲生:「世界的に有名な観光地ですから、当たり前と言えば当たり前ですが……。誰が最初なんです?」
 マリア:「公称しているのはミセス・ビショップ。もちろん、人前では殆ど魔法は使わなかった。ダンテ一門のアジア進出の調査に乗り出した御方だ」
 稲生:「……本名は?」
 マリア:「イザベラ・バード・ビショップ。もちろん、魔道師の名前はもっと別にあるけど、人間としてはその名前を使って活動していたという」
 稲生:「この人(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%99%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%89)ですか!?」
 マリア:「そう。人間としては死んだことになってるけど、魔道師としては生きてる。多分今、魔界の紀行文でも書かれているだろう」
 稲生:「ええ〜……」
 マリア:「確か従者に、ユウタと似た名前の日本人男を連れていたと聞いてる」
 稲生:「イザベラ・バード……師もイギリス人。マリアさんもイギリス人。そして、日本人の男性連れ。凄い偶然ですね」
 マリア:「全く。本当に日光を観光したくなるよ」
 稲生:「帰りに少し観光して行きます?」
 マリア:「いいのか?」
 稲生:「僕達の目的は、そもそも『3時の魔道師』とやらが本当に実在するのかどうか。そして、実在するのならば呼び出して、その目的を聞き出すことです。そんなに難しいことではないと思います」
 マリア:「さっさと終わらせればいいわけか」
 稲生:「今のうち、どこか宿でも取りましょうか?」
 マリア:「うーん……。まあ、それは終わってからでいいだろう。そんな時に限って、意外に手こずらされたりするものだ」
 稲生:「そうですね。今朝の事件からして、実在している確率はかなり高くなった上、手こずらされる確率も上がりましたからね。……あ、合宿所までは駅から少し離れて山の中にあるので、タクシーで行きましょう。ちょっとその前に……」

 稲生は東武日光駅の中に入った。

 稲生:「せめて、どこの宿がいいかのパンフレットくらいは確保した方がいいかと。あと、観光するにしてもどこがいいかとか……」
 マリア:「フッ……。できれば、イザベラ師の軌跡を辿ってみたいな」
 稲生:「あー、それいいですねー。その日本を旅していた時のイザベラさん、既にマスターだったんですか?」
 マリア:「聞いて驚け。私の同じローマスター(Low Master 一人前に成り立て)だったそうだ」
 稲生:「それまた凄い偶然だ!それなら……ん?」

 その時、稲生の耳に不穏な放送が聞こえて来た。

〔「お客様にお知らせ致します。北千住駅で起きました人身事故の影響で、特急“スペーシア”は運転を見合わせております。……」〕

 稲生:「東京の方は世知辛いなぁ……」
 マリア:「Sechigarai...?」
 稲生:「まあ、人身事故くらいなら、帰り際には復旧してるでしょうがね。一応、見てみますか」

 稲生はスマホを取り出した。

 マリア:「ユウタには水晶球は要らなさそうだな」
 稲生:「あははは……。水晶球は専ら受信用です」

 稲生はそれで事故について検索してみた。

 稲生:「ちょうど僕達が羽生パーキングでゴタゴタに巻き込まれていた頃に事故ったみたいですね。でも、おかしいな。北千住駅ほど大きな駅で事故が起きたなら、すぐに警察がやってきて、すぐに現場検証が終わって運転再開しそうなものなのに……」
 マリア:「そうなの?」
 稲生:「人身事故の復旧が遅いというのは、警察の現場検証が長引くからなんですよ」
 マリア:「ふーん……」
 稲生:「おっ、ニュースやってる」

 稲生はニュース記事を開いた。

 稲生:「ん!?」
 マリア:「どうした?」
 稲生:「これ……」

『……事故に遭ったのは学校法人東京中央学園上野高校に通う菅原浩太さん(18歳。3年生)と見られ、警察では事故と自殺両面で調べを進める方針。尚、上野高校では今朝も校舎内で1年生男子生徒が惨殺死体で見つかるなどの事件も起きている』

 稲生:「!!!」(;゚Д゚)
 マリア:「ユウタの知り合いなのか?」
 稲生:「新聞部の部長ですよ。僕に、『3時の魔道師』についての取材メモや過去記事が無いかどうかを見せてくれたんです」
 マリア:「これで『3時の魔道師』の実在性は99%になった」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「そうだろう?ユウタに『3時の魔道師』について情報提供した人間が連続して殺された。しかも2人目はご丁寧にも、この線路の先で殺されている。無言の、私達への圧力だよ」
 稲生:「マリアさんは、そこまでして僕達に圧力を掛けて来る理由って何だと思いますか?」
 マリア:「そもそも『3時の魔道師』とやらは、どういう風に人間達に伝わっているか、だな」
 稲生:「どういう風にと言っても、そもそも『3時の魔道師』に会った人間はいないというんです。荒田君の話では、それは会った人間が必ず殺されているからではないかと」
 マリア:「『魔道師の正体を知る者には死を!』」
 稲生:「えっ!?」
 マリア:「師匠が“怨嫉者”を抹殺する時の決め台詞の1つだ。中には、魔道師を“怨嫉”する者もいるからね。あの時のキリスト教団みたいにさ」
 稲生:「でも、僕達はキリスト教団じゃありませんよ」
 マリア:「分かってる。私は恐らく、『3時の魔道師』は魔道師じゃないのかもしれない。もっと別の存在か、或いは魔道師であっても、東アジア魔道団などの非協力的な派閥か……。そう思ってる。ただ、こうして私達に無言の圧力を加えて来てるということは、少なくも味方ではないってことだね」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「どうする?帰るなら今のうちだと思う。或いは観光するだけなら、圧力者も見逃すだろう。圧力者は私達に、『3時の魔道師』について調べられるのが困るみたいだから」

 1:「そうですね。このまま帰りましょう」
 2:「それでは、少し観光してから帰りましょうか」
 3:「いえ、やはりこのまま調査を続けましょう」

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“大魔道師の弟子” 「羽生パーキングエリアの戦い」

2017-09-28 23:40:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月14日09:05.天候:曇 埼玉県羽生市 東北自動車道下り 羽生PA]

 バスは首都高速内で多少の渋滞に巻き込まれた。
 しかし、東北自動車道に入ればそこは下り。
 朝ラッシュで都心へ向かう上りと比べればガラ空きであった。

〔「羽生パーキングです。こちらで15分休憩を致します。出発は9時20分です。9時20分に出発致します。それまでにバスにお戻りになるよう、お願い致します」〕

 バスは羽生パーキングエリアに到着した。
 パーキングエリアにしては広いのは、隣の蓮田サービスエリアが混雑しやすい為、そのガス抜きという意味合いがある。
 おかげで蓮田サービスエリアが混雑していても、こちらは年間を通じて満車になることは殆ど無いという。
 その為、駐車場の混雑を嫌う高速バスなどは、こぞってこちらに停車する傾向がある。
 大型の駐車スペースにバスが止まると、大きなエアー音がしてドアが開いた。

 稲生:「ちょっと降りてみましょうか」
 マリア:「そうだな」

 稲生達は他の乗客に混じって、乗降口へ向かった。
 後ろから付いてくるのは、ミク人形とハク人形。

 運転手:(平日でも外国人観光客は多いなぁ……。バックパッカーかな?)
 稲生:「行ってきます」
 マリア:「…………」
 運転手:「お気をつけて。(かわいい白人のコと手を繋いでる……)」
 ミク人形:「ヨ!」
 ハク人形:「ヨ!」
 運転手:「お気をつけ……は!?」

 運転手の帽子がズリッとズレる。
 トントントンとステップを降りて、軽やかにそのフランス人形達は白人と日本人のカップルの後ろに付いて行った。

 運転手:(ま、まあ……最近のAIはかなり発達してるからなぁ……)

 で、建物の中に入る稲生達。

 稲生:「また付いて来ちゃったよ、あのコ達……」
 マリア:「まあ、しょうがない。ああ見えても、私の使い魔なんだ。許してやってよ」
 稲生:「絶対バスの人達、びっくりしてますよ」
 マリア:「ま、今に始まったことじゃない」
 稲生:「こんな所、魔女狩り上等キリスト系カルト教団に見つかりでもしたら……」

〔「こちらは、ヨハン埼玉キリスト教会です。ただいま、このパーキングエリアに、神をも恐れぬ悪質な魔女達が侵入したとの情報が入っております。お騒がせを致しますが、皆様のご協力をお願い致します。……」〕

 何と、ここでキリスト系カルト教団の街宣車が現れた!

 稲生:「やばっ!」
 マリア:「ユウタっ、早く日蓮正宗に連絡を!」
 稲生:「羽生市にもお寺はあると思いますけど、高速のパーキングまで来れないですよ!」

〔「……尚、ご協力者には漏れなく聖母マリアからの慈しみ溢れる愛が注がれることでしょう。魔女共に告ぐ!神に背くお前達は必ずや裁きを受ける!」〕

 稲生:「聖母マリアですって」
 マリア:「冗談!私のフルネームはマリアンナだから違う!」
 稲生:「聖母も含めてマリアって名前の女性、聖書には10人くらいいるらしいですよ」
 マリア:「知ってる!私も人間時代はクリスチャンだったから」
 稲生:「あっ、そうか」

 と、そこへその街宣車を取り囲む者達がいた。

 キリスト信者A:「な、何だお前達は!?」
 顕正会員A:「顕正会だ!邪教を撲滅に来た!」
 顕正会員B:「お前達こそ、浅井先生に背く邪教は必ず滅ぶのだ!」
 顕正会員C:「責任者、降りてこい!法論だ!」

 何と、平日なのにクソヒマな顕正会員数名がキリスト系カルト教団の街宣車を取り囲んだ。

 稲生:「おおっ、やった!」
 マリア:「ユウタ!ミカエラ達のアイスクリームを買ったぞ!」
 稲生:「よし、さっさとバスに戻りましょう!」

 稲生とマリアは大型車駐車スペースへ走った。

 キリスト信者B:「むっ!?あのローブと杖は……!?あいつら怪しいぞ!」
 キリスト信者C:「きっとあいつらが魔女共だ!逃がすな!」
 顕正会員D:「いやいやいや!お前ら、どこに行くんだよ!?まだ法論は終わってないぞ!」
 顕正会員E:「そうだそうだ!キリスト教が正しいという証拠を見せろ!」
 顕正会員F:「今お前達がやってる魔女狩りが正しいという証拠を見せろ!逃げんじゃねぇ!」
 キリスト信者D:「くそっ、邪魔するな!エセ仏教徒共め!」

 バスに乗り込んだ稲生達。

 稲生:「何だか今回に限ってだけ、顕正会が正しいような気がした」
 マリア:「仏教の方がまだ魔女狩りしないからな」

 そんな主人達の汗などどこ吹く風で、使い魔の人形達は美味しそうにハーゲンダッツを食べていたという。

 稲生:「あ、ケーサツ来た」
 マリア:「だろうな。おおかた、連行される際に『宗教弾圧だ!』とか叫ぶと思う」
 稲生:「弾圧されてもいい宗教も存在するんですがねぇ……」

 キリスト信者A:「宗教弾圧だ!裁判に訴えるぞ!」
 キリスト信者B:「埼玉県警本部と埼玉県公安委員会と国家公安委員会にこのことを訴える!」
 キリスト信者C:「ヴァチカンにも訴えるぞ!国際問題になるニダ!」
 顕正会員A:「いや、違う!警察は創価学会の手先だ!公明党の犬だ!」
 顕正会員B:「お巡りさん!悪いのはこいつらですよ!こいつらが邪教の害毒を振り撒いていたんです!」
 顕正会員C:「そうだそうだ!俺達は冨士大石寺顕正会と言って……」

 ザシャアアァァ〜ッ!!(←ポテンヒットさん、ごめんなさい)

 警部補:「ほお?ヨハン埼玉キリスト教会に、顕正会か。それはそれは……」

 警部補、警察手帳によく似た名刺入れから名刺を差し出す。
 そこに書いてあったのは……。

 顕正会員A:「みょ、みょ、妙観講ぉぉぉっ?!」
 キリスト信者A:「何それ?」
 警部補:「行けっ、全員折伏だ!」

 何と、警官隊は全員妙観講員だった!
 更に大騒ぎになるパーキングエリア。

 稲生:「な、何たるちゃあ……」
 マリア:「何か……宗教ってウザいな」
 稲生:「僕、魔道師の門流に入って良かった」

 いつの間にか運転手、人数確認を終えて運転席に戻った。

 運転手:「お待たせ致しました。それでは皆様お揃いになりましたので、出発致します。次は、下今市駅前に止まります」

 バスが出発する。

 キリスト信者B:「ああっ、魔女達が逃げるぞ!」
 顕正会員C:「う、うぬっ!かつて合宿で浅井先生がステテコでお泊りになった恐れ多き地、鬼怒川温泉に勝手にバス路線を開設するとはっ!あれこそが仏敵!」
 警部補:「あー、分かったからまずは全員、署まで来てもらおうか。48時間の勾留が終わった後、折伏はそれからだ」

 尚、取り調べとしての勾留はともかく、妙観講の折伏で早目に解放された信者達は誰もいなかったという。
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“大魔道師の弟子” 「栃木へ向かう」

2017-09-27 19:23:14 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月14日07:00.天候:曇 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 エレーナ:「随分お早いご出発で」
 稲生:「行きのバスが朝なもんでね。早目に行くよ。『3時の魔道師』に会いにね」
 エレーナ:「3時に現れるんだったら……」
 稲生:「いや、特別な時計があるらしい。それを探しに行く必要がある。だから、早い方がいいんだ」
 エレーナ:「色々大変だねぇ……」

 稲生は宿泊料金を払った。

 エレーナ:「それじゃ、気をつけて」
 稲生:「ああ。世話になったよ」

 稲生とマリアはホテルをあとにした。
 呼んでおいたタクシーに乗り込む。

 稲生:「東京駅八重洲南口までお願いします」
 運転手:「はい」

 タクシーが走り出し、新大橋通りに出た。

 マリア:「直接私達には関係の無い話だろうに、どうして行くになったんだ?」
 稲生:「いくら上野高校そのものではないにせよ、東京中央学園の施設を使う後輩達が犠牲になるのは頂けません」
 マリア:「犠牲者が出ているのか?」
 稲生:「直接は聞いてませんが、ただ、話を知る後輩達によれば、『3時の魔道師』に会った人達は皆死んでいるという噂なんですよ」
 マリア:「んん?」

 マリアは怪訝な顔をした。

 マリア:「どういうことだ?」
 稲生:「『3時の魔道師』と会ったという人が、今は健在していないんだそうです。それで、そういう噂が付いたんじゃないかと」
 マリア:「ふーん……。それだけだと、ただの噂っぽいな」
 稲生:「ですから、それを確認しに行きたいんですよ」
 マリア:「まあ、どうせ師匠も帰ってこないし、ヒマだからいいけど」

 その時、タクシーのラジオからニュースが流れて来た。

〔「速報です。今朝6時頃、東京都台東区の学校法人東京中央学園上野高校の校舎内で、男子生徒が血だらけで死んでいるのが見つかりました」〕

 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「なにっ!?」
 運転手:「どうしました、お客様?」
 稲生:「ちょっと、ラジオのボリュームを上げてもらえますか?」
 運転手:「はい」

〔「男子生徒はこの学校に通う1年生の荒田譲治さんと見られ、警察では遺体の状況から殺人事件と見て捜査を開始しました。これを受けて東京中央学園では、今日の授業を全て取り止め……」〕

 マリア:「知り合いか?」
 稲生:「僕に、『3時の魔道師』について詳細な情報を提供してくれた後輩です」
 マリア:「チッ、やっぱり本物の魔道師か。秘密を知られたんで殺したか」
 稲生:「何でそんな血だらけにするような惨い殺し方を?」
 マリア:「そうすればマスコミが騒ぐ。だからこうして、私達はラジオでいち早く知ったわけだろう?……『3時の魔道師の秘密を知った者には死を!』とでも言いたいんだろう」
 稲生:「やっぱり犠牲者が出たか」
 マリア:「どうする?本物の魔道師と分かった以上、一旦やめるか?私達の手に負えない相手かもしれないぞ?」
 稲生:「いや、行きますよ。僕の後輩が殺された以上、OBとして僕も黙っているわけにはいきません」
 マリア:「分かった。それなら私も行く」

[同日07:45.天候:曇 東京駅八重洲南口高速バス乗り場]

 
(写真拝借:バスターミナルなブログ様)

〔「お待たせ致しました。5番乗り場には7時50分発、東北急行バス、東武日光駅経由鬼怒川温泉駅行きが入線致します。お手元の乗車券を準備して、お待ちください。……」〕

 バスタ新宿同様、斜めに入線するタイプのバスターミナル。
 そこに最新型のバスがやってきた。

 マリア:「最近ユウタもバスを使うことが多くなったな?」
 稲生:「そうですか。まあ、こっちの方が便利なんで」
 マリア:「帰りもバス?」
 稲生:「いや、帰りはどのタイミングになるか分からないので、何も予約していません」
 マリア:「そうか」

 乗車券を運転手に渡す。
 チラッと乗客名簿兼座席表を見た稲生は目を丸くした。
 そして、実際に乗り込んでみて更に目を丸くした。

 稲生:「中距離なのに、独立3列シートとは……」

 スーパーハイデッカータイプのせいか、トイレは進行方向右側の真ん中に付いている。

 稲生:「えーと……3Aと3Bって、これ」
 マリア:「そういうことになるな」

 独立3列シートは乗客同士のプライバシーをより重視する設計の為、真ん中席は左右の窓側席よりやや後ろにズレている。

 稲生:「アルピコ交通のイメージがあるだけに、これは意外だ」

 中距離便ならではの狭い座席でマリアと密着することを期待していただけに、これは残念だった。

 稲生:(帰り、電車にしよ……)

 1人旅の乗客なら、嬉しい座席配置なのだろうが。
 平日だから空いているだろうと思ったが、意外と乗客は多かった。
 窓側席が全部埋まるくらいである。
 やはり1人旅が多いように見えた。

〔「5番乗り場から7時50分発、東北急行バス、東武日光駅経由鬼怒川温泉行き、まもなく発車致します」〕

 稲生:「まあ、しょうがないか」

 設備はほとんど夜行と一緒。

 マリア:「師匠なら終点まで寝てる勢いだな」
 稲生:「本来はそういう夜行用のバスですからねぇ……」

 
(稲生達を乗せたバスは、定刻通りに東京駅八重洲南口を発車した。 写真拝借:バスターミナルなブログ様)

〔「皆様、おはようございます。本日も東北急行バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは7時50分発、鬼怒川温泉駅行きです。これから先、下今市駅、東武日光駅、東武ワールドスクウェア、終点の鬼怒川温泉駅の順に止まります。途中、羽生パーキングエリアで10分から15分ほどの休憩がございます。……」〕

 稲生達が降りるのは東武日光駅。
 10時45分着とのことだ。
 昼前に着いて、『3時の魔道師』について調べれば夕方には帰れるだろうとの算段である。
 それに、当の本人が稲生達の探りに気づいてやってきてくれればもっと早いと考えた。

 稲生:「この曇り空が、何だか縁起悪いですね」
 マリア:「雨にならないといいんだけどな」

 バスは八重洲南口を出ると、そのまま八重洲通りに出た。
 他の東北急行バスの路線が出る専用バス停の前を通り過ぎる。
 宝町出入口から首都高に入るらしい。

 マリア:「いくら何でも、このバスを襲うことはないさ。もし『3時の魔道師』が秘密主義者だったら、そんな大騒ぎになるようなことはしない」
 稲生:「はい。でも、学校の事件は……?」
 マリア:「あれは自分に探りを入れようとする者に対しての警告さ。普通の人間には効くかもしれないが、私達だって魔道師だ」
 稲生:「なるほど」

 バスは他の高速バスに混じって、首都高速に入った。
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