報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

小説の途中ですが、ここで報告事案がございます。

2018-04-30 20:10:56 | 日記
 今日は仕事であったのだが、私の今の派遣先は工場であり、この3連休はただ門前に立っているだけのヒマな1日であった。

 それはさておき、休憩時間には私用スマホの使用が許されているので、これで仙台の友達と色々とやり取りをした。
 具体的には5月のゴールデンウィーク、埼玉に遊びに行くからよろしくとのことだった。
 友達は車とバイクが好きで、今度はバイクで来るという。
 そこで私は駐輪場の確保やら、バイク好きが行って喜ぶ場所とかを考えておくから安心しろと返していたのだが、ここで小鉄さんからのメールが届いた。
 このブログをよく御覧になっておられる方は御存知だろう。
 常連の閲覧者であり、時折コメントも下さる方だ。
 昨年、“あっつぁの顕正会体験記”被害者の会のオフ会の参加者でもある。
 メールの内容は至って簡単なもので、ただ単にメアドが変わったというだけの、まあよくある内容だったのだが、ここで私が早とちりをした。
 小鉄さんはメールでは本名を名乗り、趣味であるバイクの写真も添付して下さったのだが、私はそれをすっかり忘れてしまっていた。

 ああ、分かっている。
 失礼もいい所だ。
 オフ会の際に本名や趣味を聞いておきながら、それをすっかり忘れてしまっていたのだから。
 だから、これは私に非がある。
 何をやらかしたのかというと、私はつい友達の仲間だと思ったのだ。
 私が友達とバイク旅行について盛り上がっていたので、そこで友達の仲間も参戦して来たのだろうと。
 しかし私は、その友達の仲間としての小鉄さんの本名の人物を知らない。
 当たり前だ。
 私は友達に、

「【小鉄さんの本名】の人を知らない?何か、俺に間違ってメールくれたみたいなんだけど?」

 と、メールした。
 当然ながら友達は知らず、

「いや、俺は知らん。もしかしたら、バイク仲間の誰かが知ってるかもしれないから聞いてみるよ」

 とのこと。
 私も友達だけに任せっきりにしてはおけず、私の方でも電話帳の中を当たってみた。
 すると!
 小鉄さんの変更前のアドレスにそっくりなものを見つけた。

 そうか!と、そこで私は全て思い出した。
 小鉄さんの本名と、彼もまたバイクが趣味であったことを!
 私は急いで友達にメールした。

「悪い!【小鉄さんの本名】さんは俺の知り合いだった!お騒がせして申し訳ない!」

 すると友達は、

「だよなぁ。俺の仲間達も全然知らないって言うし。1人今、ちょうど怪奇スポットの所を走ってたらしく、物凄く震え上がったらしいぞ」

 とのこと。
 あらま、申し訳ないことをしてしまった。
 しかし、いくらバイクで1人怪奇スポットったって、真っ昼間だぞ?
 真っ昼間でも幽霊が出るくらい危険な所に行かれてたのか。
 まあ、うちの河合有紗も昼間に霊現象を稲生達に見せていたがな。

 友達には改めて詫びを入れた上、事情を説明したら、思いっ切り笑ってくれていたが。

 もちろん、小鉄さんは悪くない。
 まさか、鉄ヲタ兼バスヲタの私がバイクで盛り上がっていたなんて知る由も無かっただろうしね。

 真に恥ずかしい失態を演じてしまった。
 改めて仙台の友人と小鉄さんには、お詫び申し上げたい。
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“大魔道師の弟子” 「東京からアルカディアへ」

2018-04-29 19:27:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日23:40.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 稲生達を乗せたタクシーは首都高速をひた走った。
 途中の夜景に見惚れたりしたマリアだったが、河合有紗の幽霊がまだ見張っている所を見ると、そんなに油断して楽しめるはずもなかった。
 首都高を降りてしばらく走り、ホテルに近づく。

 稲生:「先生、もう既に他の組は来ているようです」
 イリーナ:「そりゃそうさ。こりゃ、ヘタすると私達が1番最後かもね」
 マリア:「あの黒いゼロクラウン、多分アナスタシア先生の車ですよ」

 ホテルの近くのコインパーキングを黒塗りの車が占拠していた。
 ゼロクラウンの他にアルファードやエルグランドも止まっていたから、アナスタシア組が日本国内移動の際に使用する車で間違い無いだろう。
 アナスタシアは表向き反日家ということになっており、日本国内にも拠点を構えているにも関わらず、それはあくまで中継点と主張し、拠点であることは頑なに否定している。
 しかしその割には日本車を用意したり、イオンで爆買いしたり、観光地を巡ったりしていて、日本を超エンジョイしているのだ。
 中国人か、こいつは!

 稲生:「相変わらず、黒が好きな人達ですね」
 イリーナ:「魔法道は黒くあるべし、がナスちんの言い分だからね」
 マリア:「また仲間を変な呼び方して……」
 稲生:「タクシーとはいえ、僕達も黒い車で移動してますからね」
 イリーナ:「ま、車の色に関しては、私達も他人のことは言えないってか」
 稲生:「あ、すいません、あのホテルです。あのホテルの前で止めてください」
 運転手:「かしこまりました」

 タクシーがワンスターホテルの前で止まる。

 イリーナ:「はいよ、カード」
 稲生:「あ、すいません。カードで払います」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 稲生はイリーナからプラチナカードを受け取った。

 マリア:「師匠、バッグ持ちますよ」

 稲生が支払いをしている間、マリアとイリーナは先に車を降りた。

 イリーナ:「あらー?どういう風の吹き回し?」
 マリア:「師匠のカバン持ちは弟子の役目です」
 イリーナ:「何かで勉強したのかね?まあ、いいわ。持てるものなら持ってみて」
 マリア:「は?」

 マリアはイリーナから旅行カバンを受け取ったのだが……。

 マリア:「重っ!?」
 イリーナ:「そりゃそうよ。中身は中東で稼いだインゴッドだもん」
 マリア:「(空港で軽く持ってなかったか!?)これ、魔界に持って行くんですか?」
 イリーナ:「そうよ。まあ、全部は換金しないけどね。向こうでも金の需要は高いから」
 マリア:「はあ……」
 イリーナ:「大丈夫。留守番してくれたお駄賃と、マリアを泊めてくれた勇太君の家にインゴッドはあげるからね」
 マリア:「魔法具の材料には使えますかね……」

 マリアは首を傾げた。
 インゴッドを見せられても目が眩むことが無いのは、実物を見たことが無かったからだろうか。
 それとも、普通の人間の女を辞めているから感覚が違うのだろうか。

 稲生:「お待たせしました」

 稲生がタクシーから降りて来る。
 そして、イリーナにカードと領収証を渡した。

 イリーナ:「あら?意外と安かったわね」
 稲生:「羽田空港から定額制度を利用しましたからね」
 イリーナ:「あら、そうなの。全然知らなかったわ。マリアは知ってた?」
 マリア:「いいえ」
 イリーナ:「やっぱりこういう時、勇太君は頼りになるわね」
 稲生:「ありがとうございます」
 イリーナ:「さ、早く入りましょう」

 3人はホテルの中に入った。

 オーナー:「いらっしゃいませ」
 イリーナ:「こんばんは」
 稲生:「魔界の入口を使わせてください」
 オーナー:「かしこまりした。エレーナも先に行きましたので……」
 稲生:「ですよね」

 普段は行かない地下1階。
 下のボタンを押してもランプは点灯しないのだが、今回は点灯した。
 そして、エレベーターに乗り込む。

 稲生:「あの……まさかとは思うんですが……」
 イリーナ:「何だい?」
 稲生:「有紗の霊が魔界にまで付いてくるなんて無いですよね?」
 イリーナ:「ハハハハ。どうしてそんなこと聞くの?」
 稲生:「いや、何かそれでも憑いてきそうな気がして……」
 イリーナ:「ま、なるようになるわよ」
 稲生:「そんな……」

 ワンフロア降りるだけなので、エレベーターはすぐに地下1階に到着する。
 ここは機械室兼エレーナの部屋があるフロアである。
 普段は消灯されている機械室も、稲生達の為なのか点灯されていた。
 エレーナの部屋の前を通って、その奥に行く。

 稲生:「この魔法陣ですね」
 イリーナ:「そう。じゃ、すぐに移動するから中に入って」
 稲生:「はい」

 稲生とマリアは魔法陣の中に入った。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。我らを魔界へ誘(いざな)い給え。魔界王国アルカディア、その王都アルカディアシティの中央に聳え立つ魔王城へ、我らを連れ去り給え。ルゥ・ラ!」

 イリーナが魔法を唱えると、魔法陣が光り出した。
 その光に稲生達が包まれる。
 尚、空間移動だけなら聖水を振り掛けるだけのものもあるが、異世界へ移動するという意味では魔法を使うことになるのか。

[魔界時間4月9日00:00.天候:晴 魔界王国アルカディア 王都アルカディアシティ 魔王城]

 人間界から魔界へ行く分には時差が発生しない。
 逆方向へは時差が発生するのに、その理由は定かではない。

 アナスタシア:「遅いわよ、イリーナ!」

 気がつくと稲生は薄暗い部屋にいて、アナスタシアの怒鳴り声が聞こえて来た。

 イリーナ:「ゴメーン、ナスっち」
 アナスタシア:「誰がナスっちだ!」
 マリア:「また変な仇名付けて……。勇太、大丈夫?」
 稲生:「……あ、はい」

 やたら殺風景な部屋である。
 石造りの倉庫の中にいるようだ。
 壁に設置された灯具が白い明かりを灯しているが、電力の弱い照明のように明るく輝いているわけではない。

 アナスタシア:「会場はこっちよ。早く来て」
 イリーナ:「はいはい」
 稲生:(何だ、この部屋が会場じゃなかったのか……)

 稲生はホッとした。

 稲生:「アナスタシア先生、わざわざ迎えに来て下さったんですか?」
 アナスタシア:「ダンテ先生から直々に言われたのよ。私の意思ではないわ」
 稲生:「そうでしたか」

 アナスタシアはイリーナ組に対する負い目があるので、ダンテの命令を拒否できなかったのだろう。
 門内トラブルの際、処分を受けたことがあったからだ。

 稲生:(さすがに魔界までは有紗も追って来れないだろう。しばらくは魔王城に匿ってもらうか……)

 稲生はそう思った。
 恐らくイリーナにもその算段はあったのだろう。
 だが、その算段はものの見事に【お察しください】。
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“大魔道師の弟子” 「夜の東京を往く」

2018-04-29 10:27:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日22:45.天候:晴 東京都大田区羽田空港 羽田空港国際線ターミナル]

 中東からの航空便に乗って来た客達がぞろぞろと到着ロビーに姿を現す。
 そこからやってきただけあって、浅黒い肌をした者達が多い。
 もちろん、日本のビジネスマンと思しき者達も多々見られる。
 その中に、白人のイリーナはいた。

 稲生:「先生、お疲れ様です!」
 マリア:「殺しても死なない方だということは十分分かっていますが一応……よく御無事で」
 イリーナ:「ありがとう。いやー、やっぱり日本はいいねぇ……。“魔の者”もここまでは追って来れないからねぇ……。正にパラダイスだよ」

 イリーナはフードを取って言った。
 赤い髪が目立つ。

 稲生:「……あの、大師匠様は?」
 イリーナ:「ああ。ダンテ先生なら、先に行かれたよ」
 マリア:「ええっ!?」
 イリーナ:「私は後から飛行機で来ればいいって言ってね。ルゥ・ラで軽々と行かれたよ」
 稲生:「す、凄いですね……。ルゥ・ラで魔界まで……」
 イリーナ:「この流派の創始者だからね、何でもできるのよ。何でもね……」

 ふと一瞬、イリーナは遠い目をした。

 マリア:「何でも、ですか……。それじゃ……」
 イリーナ:「ん?」
 マリア:「勇太にストーキングしている悪霊を祓うことはできますか?」
 イリーナ:「あー、何か霊気を感じるなと思ったらそれか。……女の子の幽霊?勇太君、モテモテだねぇ……。うちの流派に入って良かったでしょ?」
 稲生:「は、はあ……」
 マリア:「おい」
 稲生:「あ、もちろん、マリアさんと一緒になれて……という意味ですよ!?」
 イリーナ:「ま、それについては追々何とかしましょう」
 稲生:「先生?」
 イリーナ:「それより早く、ワンスターホテルに行きましょう。そこの魔法陣から行けば、魔王城直行だから」
 稲生:「分かりました。それではハイヤーを……」
 マリア:「師匠しかいないんだから、電車でいいんじゃない?」
 イリーナ:「あのね……。でもまあ、勇太君の好きにしていいよ。お金ならあるし」

 イリーナはローブの中からインゴッドをチラリと見せた。

 稲生:「うわ……そんなに!?」
 イリーナ:「これでもまだほんの一部ね。そうね……今私の持っている大きさだと、今の金相場で500万円ってところかしら」
 稲生:「タクシー代、それで払えと?」
 マリア:「相変わらずの無茶ぶりですね」
 イリーナ:「冗談だお。カードならあるよ?」
 マリア:「最初からそう言ってください」

 3人はタクシー乗り場からタクシーに乗って向かうことにした。

[4月8日23:00.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル タクシー乗り場→タクシー車内]

 意外と賑わうタクシー乗り場。
 もう電車も無くなりつつあるからか。
 あっても、もうそんなに遠くまで行く電車は無いほどだ。
 稲生達がもし電車で行こうとしても、それは事実上の終電車かその1つ前といったところとなる。

 イリーナ:「私はグランドマスターの中でも、タッパだから黄色いタクシーでいいよ」
 稲生:「今のところ、並んでいるタクシーにそれは無いですねぇ……」

 法人タクシーで黒塗りのハイグレード車両だ。

 イリーナ:「黒塗り?何だか、VIPだねぇ……」
 稲生:「僕達にとって、先生はVIPです」
 マリア:「ロンドンタクシーだって黒塗りですけど、別に高級ってわけじゃないでしょう?」

 2人の弟子は呆れてタクシーに乗り込んだ。
 イリーナを運転席の後ろに押し込む。

 イリーナ:「黒って魔女の色だもんね」
 マリア:「いや、だからぶっちゃけ魔女でしょ?私達」

 その時、マリアは僅かにイリーナの体から酒の臭いがしたのに気づいた。
 どうやら機内で飲んだらしい。
 助手席に乗った稲生は……。

 稲生:「えー、江東区森下までお願いします」
 運転手:「高速は通りますか?」
 稲生:「はい、お願いします」

 3人の魔道師を乗せたタクシーが走り出す。

 イリーナ:「あら、やぁねぇ。憑いて来ちゃってるわ」
 マリア:「マジですか?」
 イリーナ:「マジで。困ったねぇ。いくらクラウンセダンが(乗客)4人乗りとはいえ、勝手に便乗されちゃあねぇ……」
 マリア:「師匠、何とかしてくださいよ」
 イリーナ:「大丈夫。まだ何かしてくるわけじゃないよ。それに……私はまだ事情を聞いてないんだけどね」
 稲生:「そ、そうでしたね」

 稲生は振り向いてイリーナに話そうとした。

 イリーナ:「いや、いいよ。マリア。あなたは聞いてるんでしょう?あなたから聞かせてくれない?」
 マリア:「は、はあ……」

 マリアは河合有紗の幽霊について話した。
 尚、途中から嫉妬の感情が混じっていたことだけは話しておく。

 イリーナ:「……うん、なるほど」

 イリーナは右手を顎にやって考えた。
 尚、稲生に説明させなかったのは、稲生にとっては良い思い出があっただろうから、それを込めて話されると、マリアがキレるからだと思ったのである。

 イリーナ:「うーん……。恋愛感情が込み入ると、生きている人間でさえストーカーになるくらいだからね。ましてや、死んだ人間が幽霊化するなんてよくあることだよ」
 稲生:「先生、どうしたら良いものでしょうか?」
 イリーナ:「私がいるうちは、もう安心。だから、心配しなくてもいいのよ」
 稲生:「どうか、よろしくお願いします」
 マリア:「それで師匠、河合有紗の遺骨を盗んだヤツというのに心当たりはありませんか?私はネクロマンサーの類だと思うのですが……」
 イリーナ:「うちの流派にも、ネクロマンサーのジャンルを得意としている組があるね。その人達に当たってみる?」
 稲生:「まさか、その人達が犯人ってんじゃ……?」
 イリーナ:「だったら却って面白いことになるんだけどね。でも、それは無いわ。私の知ってる限り、欧米しか活動していないから。中国のキョンシーとか、研究してみたら面白いものもあるだろうに……。まあ、東アジア魔道団が張ってるから、それは無理か。中東ですらギリだったもんね」
 マリア:「いや、中東って、思いっ切りアジアです」

 とにかくイリーナが警戒していないところをみると、本当に大丈夫なのだろう。
 稲生はホッとして前を向いた。
 タクシーは夜の首都高をひた走る。
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“大魔道師の弟子” 「羽田空港の戦い」

2018-04-28 20:01:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日22:15.天候:晴 東京都大田区羽田空港 羽田空港国際線ターミナル]

 稲生がトイレに行っている間、マリアは1人、ロビーで待っていた。
 座れる所が少し離れた所である。

 マリア:(霊気が相変わらず強い。地縛霊でも浮遊霊でもない。これはきっと……)

 その時、マリアの背後から声を掛ける者がいた。

 警備員:「失礼します!」

 それは男性警備員だった。
 稲生が向かったトイレの方からやってきたようで、ひどく慌てている。

 マリア:「Huh?」
 警備員:「稲生勇太様のお連れのマリア様でいらっしゃいますか!?」
 マリア:「Oh,yes.Do you have any...(あ、はい。あの、何か……)」
 警備員:「稲生様がトイレに閉じ込められて、今救助中なんです!すぐに来てください!」
 マリア:(トイレに閉じ込められた!?)

 マリアは立ち上がって、警備員の後に付いて行った。
 相変わらず強い霊気がロビー内を漂っており、警備員の言っていることが本当なら、稲生をそんな目に遭わせたのは……。

 マリア:「Wait!Wait few minutes!I can not...(待って!ちょっと待って!私は……)」

 トイレの近くまで来た時、マリアは警備員を呼び止めた。
 そして、いつの間にか自動通訳魔法具の効果が切れていたことに気づいた。
 再びそれをONにする。

 マリア:「私は男子トイレに入れません!」
 警備員:「大丈夫です!今、他のお客様は立ち入り禁止にしていますから!お連れ様が……稲生様がマリア様をお呼びなんです!早く行ってあげてください!」
 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」

 マリアは魔法の杖を構えて、ダンテ一門の呪文(というか掛け声に近い)を唱え出した。
 ところが……。

 警備員:「何をなさってるんですか!早く入ってください!」

 何故か警備員はマリアの背中を押した。
 まるで、押し込もうとしているかのようだ。

 マリア:「勇太以外の男が私に触るな!……ヌィ・フ・ラゥム!」

 マリアが魔法の杖を高く掲げると、その杖の頭から眩い光が発生した。

 警備員:「!!!!!」

 その光はまず警備員を包み込んだ。
 警備員は何故か人間とは思えない声で叫ぶと、ドロドロに溶けて行き、ついには消えてしまった。

 河合有紗:「ちっ、くそっ……!」

 そのドロドロになって消えてしまった警備員の中から河合有紗が出て来ると、マリアを睨みつけて再び消えた。

 マリア:「やはりか!」

 河合有紗の消えた方に向かって数歩進むと、バァンとトイレの個室が思いっきり開く音が聞こえた。

 稲生:「わあっ!」

 そして、稲生が男子トイレから飛び出して来た。

 マリア:「勇太!無事だったか!?」
 勇太:「マリアさん……助かりました……ニフラムを唱えてくれたんですね」
 マリア:「一応ね。何があった?」

 勇太がトイレの中に入ると、元々ターミナルの中は空いているということもあって、トイレも誰もいなかったという。
 そう、人間は。
 個室の中から手だけが何本も伸びていて、勇太を捕まえようとしたという。
 その手は霊気を帯びていたから、これもまた幽霊の一種と思われる。
 そしてその手に捕まり、個室の中に引き込まれて閉じ込められた。
 それでも手持ちの魔法の杖や日蓮正宗の開眼済み数珠のおかげで、トイレの便器に開いた異空間への引きずり込まれは何とか免れたらしい。
 そうこうしているうちにマリアがやってきて、『邪悪な魂を一瞬にして堕獄させる』魔法を使用したことで、何とか助かった。
 そのうち、一本の手は稲生が落としたペンを拾い、壁にこう書いたという。

 『助けて……天国に行きたい……』

 勇太:「日蓮正宗の教義では十界論として天界はあっても、死後の世界としての天国はありませんから。その言葉に捕らわれているうちは、成仏はできないでしょう」
 マリア:「そうだな。それに、ヌィ・フ・ラゥムは亡霊を強制的にこの世から退場させる魔法だ。この世に留まっている幽霊は、天国に行けないのだろう?」
 勇太:「もし罪障消滅できた後の臨終でしたら、ちゃんと成仏できるはずですからね、化けて出ること自体があり得ないですよ」
 マリア:「でも、効かなかった。あいつには……」
 勇太:「あいつって?」
 マリア:「河合有紗。セキュリティガード(※)に化けて、私も一緒に連れ込もうとしたんだ」

 ※警備員の正式な英訳。『ガードマン』は和製英語。

 勇太:「何ですって!?」
 マリア:「多分、セキュリティのゴーストか何かを連れて来て、そこに憑依したんだろうな」
 勇太:「幽霊が幽霊に憑依する!?そんなことができるんですか!?」
 マリア:「分からないけど、そうとしか考えられない。で、そいつを盾にしてまんまと逃げたというわけ」
 勇太:「有紗が……そんな……」
 マリア:「実は私もいざとなったら、ヌィ・フ・ラゥムを使おうとは思っていたんだ。だけど、向こうは向こうで、ちゃんと対策を立てていたみたいだな」
 勇太:「そんな……」
 マリア:「ま、手の内を1つ暴いてやったんだから、しばらくは出てこないだろう。……私もトイレに行ってくる」
 勇太:「あ……はい」

 マリアも先ほどのトイレに向かった。
 もちろん、女子トイレだ。
 マリアの魔法が有紗以外には効いたのか、女子トイレに霊気は殆ど感じられなかった。
 だが……。

 マリア:「あんまり私をナメるなよ?私だって、人間を辞めているんだからな……!?」

 洗面台の鏡にはマリアしか映っていなかったはずだ。
 だが、マリアがその鏡を睨みつけると……。

 

 鏡には河合有紗の姿が映し出され、マリアの気迫に気圧されるような反応を取るとスーッと消えていった。
 そして、再び鏡にはマリアだけが映るようになった。

 マリア:(亡霊なんかに勇太は殺させない。私が守るもの……)
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“大魔道師の弟子” 「ネクロファンタジア」

2018-04-26 19:30:27 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日20:35.天候:晴 JR大宮駅西口→京浜急行バス車内]

 大宮駅西口そごう前のバス停でバスを待っていると、赤と白の塗装が特徴の京浜急行バスがやってきた。
 既に何人か乗っているのは、ここより1つ前の西武バス大宮営業所が始発だからだろう。
 メインはこの大宮駅西口である。
 高速バスタイプであり、バス車内の後方にトイレが付いているタイプだ。
 予約なしでも乗れるが、稲生達のように先に予約した者から優先して乗れる方式である。
 羽田空港国際線ターミナル直行バスである為、必然的に客層は外国人が多い。

 稲生:「ここにしますか」
 マリア:「そうだな」

 2人はあえて運転席のすぐ後ろの席に腰掛けた。
 いつもは後ろの席に座る2人だが、今日に限って運転席のすぐ後ろにしたのは、どことなく河合有紗が何を仕掛けて来るか分からなかったからかもしれない。
 ……例え、マリアの契約悪魔や稲生が今後契約するであろう悪魔が一緒に乗っているとはいえ。
 事故が起きた際、1番安全だとされる運転席のすぐ後ろを陣取ったのは偏に不安があったからと言える。
 客層は外国人が多いといっても、その中でアジア系が1番多いようだ。
 白人や黒人も少しは混じっていたが、カップルでいることが多く、稲生達のように日本人と白人の組み合わせは無かった。

 半分ほどの座席が埋まり、バスは2〜3分遅れで大宮駅西口を発車した。
 昼間の便だと、いつもは首都高さいたま新都心線の新都心西出入口から高速に乗るだが、この便はさいたま新都心駅西口にも止まるので、国道17号線(中山道)を南下することになる。

 稲生:「有紗、何か仕掛けて来ますかね?」
 マリア:「大丈夫さ。ヤツに、バスごと何かする力までは持ち合わせていなさそうだ。勇太や私をピンポイントで攻撃するしか能は無いだろう」
 稲生:「そうですね」
 マリア:「1つ、お願いがある」
 稲生:「何ですか?」
 マリア:「河合氏の件が済むということは、もうそいつは勇太の前に現れないということだ。そうなったら……もうそいつのことは忘れて、私だけを……」
 稲生:「え?何ですか?」

 マリアが言い終わらぬうちに、バスのすぐ隣を改造バイクが轟音を立てて通過していったので、よく聞き取れなかった。
 運転手が運転席の窓を開けていたというのもあった。

 稲生:「マリアさん?」
 マリア:「……いや、何でもない。とにかく……亡霊なんかに、勇太を渡すつもりはない。それだけ」
 稲生:「マリアさん……」

 少し離れた後ろの席に座っている悪魔2体は……。

 ベルフェゴール:「んー、惜しい!あともうちょっとで告白完了だったのに!」
 アスモデウス:「ていうかさ、稲生氏がコクりゃ早い話なんじゃないの?全く、意気地無しなんだから」
 ベルフェゴール:「だが、そこがいい」
 アスモデウス:「どうせマリアンナは非処女なんだから、この際押し倒して……」
 ベルフェゴール:「ハハハハ……。それはキミの今後の計画だろう?赤子の魂は多ければ多いほど良い」
 アスモデウス:「まあね」
 ベルフェゴール:「おや、マモンからのLINEだ」

 悪魔がスマホを持っている……。
 しかもLINEやってる悪魔って……。

 ベルフェゴール:「なるほど。マモンの契約者は、『非処女でありながら処女』であるようだ」
 アスモデウス:「でもそれって、見ようによっては『処女でありながら非処女』とも言うよね」
 ベルフェゴール:「なるほど。それが世に言う“処女ビッチ”というものか」
 アスモデウス:「ちょっと違うね」

 キリスト教における七つの大罪の有名悪魔がこんな能天気な会話をしているくらいだから、まあ危険は無いものと思って良いだろう。

[同日21:50.天候:晴 東京都大田区羽田空港 羽田空港国際線ターミナル]

 ところで空港連絡バスなど、首都高を走ったことのある人なら気づくことがあるだろう。
 いや、高い確率で渋滞に巻き込まれるとか、そういうネガティブな話ではない。
 防音壁とかがウザい部分もあるが、それが無い区間においては、結構夜景がきれいだということを。
 今回の場合、バスはレインボーブリッジを渡った。
 ライトアップされたレインボーブリッジ自体もそうなのだが、その橋の上から見える夜景に、外国人旅行者達が感嘆の声を上げていた。

 マリア:「きれい……」

 レインボーブリッジは二層構造になっていて、上層部分は首都高となっており、下層部分の一般道や並行して走る“ゆりかもめ”よりも眺望に優れている。
 走行中はこれ(https://www.youtube.com/watch?v=HPFHnU2qF0w)を聴きながら走ると、ムードが出るかも。
 一時は悪霊からの危険に晒されていることなど、忘れてしまいそうな感じであった。

 東京の夜景を楽しんだ後、バスはほぼ時刻表通りに羽田空港国際線ターミナルに到着した。

 稲生:「安全の為に乗った最前列席でしたけど、眺望は良かったですね」
 マリア:「うん。“魔の者”から逃げる為とはいえ、日本を拠点にして良かったかも……」

 そんなことを言いながらバスを降りる。

 稲生:「まだ少し時間がありますね」
 マリア:「ヘタに動かず、到着ロビーで待とう」
 稲生:「はい」

 イリーナの到着予定時刻は22時30分から40分ほどである。
 稲生はスマホで、ここからワンスターホテルまでのルートを検索した。

 稲生:「何とか電車があるうちに移動できそうだな……」
 マリア:「勇太。大師匠様も御一緒なのに、電車移動は無いだろう。リムジンでも予約しないと」
 稲生:「はあ……まだバスあるかな……」
 マリア:「エアポートリムジンじゃない!」
 稲生:「ああ、ハイヤーのことですか。そうですねぇ……」

 昼間よりは人も少ないターミナル。

 マリア:「私から離れないで。きっとどこかで見てるから」
 稲生:「地縛霊だったら、その場から離れればそれで終了なんですけどねぇ……」

 もっとも、稲生とて知っている。
 東京中央学園の怖い話には、例え地縛霊でも、たまに気に入った人間に憑いて行く者もいることを。
 それに、有紗自身は元々地縛霊などではなかったはずだ。
 それが、どうして悪霊になんかなってしまったのか。
 顕正会で積んだ害毒だと言ってしまえばそれまでだが、それにしたって稲生が日蓮正宗で塔婆供養くらいはしていたのだから、少しは効果があっても良かったはずだ。
 で、普通なら効果はあるのだろう。
 だがそこで誰かが墓暴きをし、遺骨を持ち去ってしまった。
 それが悪霊化となった原因だとしたら……。

 稲生:「あ、あの……すいません」
 マリア:「なに?」
 稲生:「ちょっと……トイレ行ってきていいですか?」
 マリア:「男子トイレなら大丈夫だろう」
 稲生:「そ、そうですか?」
 マリア:「河合有紗は女だ。女が男子トイレには入れない。幽霊になっても、それは同じのはず」
 稲生:「そ、そうか。確かに“トイレの花子さん”も、男子トイレには出ませんもんね」

 稲生はそう言うと、トイレに向かった。
 はてさて……。

 1:やっぱり河合有紗の幽霊が出た。
 2:別の幽霊が現れた。
 3:何も起こらなかった。
 4:見当もつかない。
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