報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の探検」

2020-08-30 20:48:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日01:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区○○ 愛原家]

 昼間は家の片付けや被害状況の調査に時間が掛かり、または買い物に付き合わされたりして、とても穴を探検するどころではなかった。
 何しろ車が壊れてしまった為、買い物はわざわざ地下鉄に乗って隣の駅まで行かないといけないようになってしまったのだ。
 私の子供の頃には徒歩圏内にスーパーがあったりしたものだが、いつの間にか廃業してしまっていた。
 車なら大量に買ってもそこに積み込んで帰れるが、徒歩や電車だとそうはいかない。
 つまり、私や高橋、リサも買い物要員として動員されてしまったのである。
 イオンに行ったから、食料品だけでなく、他にも色々なものを買ったり、買ってくれたりしたら夕方になってしまったわけだ。
 リサなんかいいコにしていたもんだから、うちの両親に服とか何やら色々買ってもらっていたりしたが……。

 愛原:「高橋、起きてるか?」
 高橋:「うっス」

 私達は1階の客間で寝ていた。
 2階には私の部屋があり、高橋やリサは興味津々に入りたがったのだが、私はしっかり鍵を掛けていた。
 そしたら高橋はピッキングしようとするし、リサはBOWの力でドアをこじ開けようとするので、ゲンコツしておいた。
 襖を挟んで隣の和室にはリサが寝ている。

 愛原:「両親も寝静まった。今のうちに、例の穴の探索に行くぞ」
 高橋:「了解っス」

 するとリサが髪の毛をシュルシュルと伸ばして、襖を開けた。

 リサ:「私も行く……」
 愛原:「リサ、不気味だから髪の毛を伸ばして襖開けるのやめれ」

 リサの寝ぼけた奇行にもすっかり慣れてしまった。

 愛原:「両親にバレないよう、静かに着替えるんだ」
 高橋:「ういっス」

 私達は寝巻から私服に着替えた。

 愛原:「探偵の7つ道具、忘れるな」
 高橋:「アイアイサー」

 探検の準備ができると、私達はそっと玄関のドアを開けた。
 そして、裏庭に回る。
 室内はエアコンが効いて涼しかったが、外は熱帯夜でムワッとした熱気が私達を襲う。
 例の裏庭の穴は応急策として、板を数枚置いて塞がれていた。
 すると、リサが……。

 リサ:「ねえ、何だか血の臭いがする」
 愛原:「なにっ!?」

 リサが穴の方を指さして言った。

 愛原:「マジか!?」

 私は板を退かした。
 するとリサが穴を覗き込んで、フンフンと鼻を鳴らす。

 リサ:「やっぱりここから血の臭いがする。それも人間のじゃなくて、化け物の……」
 愛原:「何だって!?」

 この下、何がいるんだ?
 てか、何があるんだ。
 どうやら、ただの下水道があるわけではないようだ。

 愛原:「ちょっと作戦変更。リサ、オマエは第一形態に変化してくれ」
 リサ:「うん、分かった」

 リサは大きく息を吸い込み、そして吐いた。
 すると見る見るうちにリサの容貌が変化して行き、その見た目は鬼のような姿になった。
 顔かたちは変わらないのだが、頭の上に一本角が生え、両耳は長く尖り、両手の爪も長く尖る。
 そして、瞳の色も黒から金色へと変わる。
 少し前までは肌の色も赤銅色に変わって、まるで赤鬼のような姿になっていたのだが、ここ最近は肌の色の変色は弱くなっている。
 現在進行形で、リサは尚も変異しているのだ。

 高橋:「先生、俺も武器を取って来ます」
 愛原:「え?おい……」

 高橋は一旦家に戻ると、何と愛用のマグナムを持って来た。

 愛原:「おま……こんな物持って来てたのか……」

 警察に見つからなくて良かった。
 いや、私達は善場主任の機関から特別に所持が許可されてはいるのだが、警察が確認するまで時間は掛かる。
 その間、間違いなく拘束されるだろう。

 高橋:「先生のもありますよ」
 愛原:「ええっ?」

 高橋は私にハンドガンを渡した。
 びっくりした。
 ショットガンでも持って来たのか思った。
 さすがにそれは無理だったようだ。

 高橋:「これで準備は万端ですね」
 愛原:「万端過ぎるだろ……」

 私は呆れつつも、予め物置から出しておいた縄梯子を出した。
 これをもう1つの庭石に括りつける。
 重さ数百キロはある庭石だから、私達の体を十分に支えてくれるはずだ。

 リサ:「私が先に行く」
 愛原:「大丈夫なのか?」
 リサ:「うん。もし下に化け物がいても、私なら大丈夫」
 愛原:「まあ、それはそうか。気をつけろよ」
 リサ:「心配無い」

 リサは縄梯子を下りて行った。
 そして下まで下りた後、私達に手招きする。
 どうやら下は今のところ安全のようだ。
 私達も梯子を下りた。

 愛原:「あった庭石!ここに落ちたのか!」

 で、しかも……。

 リサ:「血の臭い、これだよ」

 庭石の下に、ある化け物が倒れていた。
 既に周囲には固まった血の池ができていたから、死んでいるのは明らかだった。
 たまたまここにいたところ、落ちて来た庭石が直撃して死んでしまったらしい。
 何ともはや、哀れなことだが、化け物に同情はできない。
 しかもこの化け物、私達には見覚えがあった。

 高橋:「先生、こいつハンターじゃないスか?」
 愛原:「……かもな」

 頭が潰れてしまっているので、ハンターシリーズのどれかまでは分からない。
 しかし体表が鱗に覆われており、2足歩行をしていたであろう体躯からして、ハンターである可能性は高かった。
 周りを見渡すと、コンクリートの壁に覆われた通路であった。
 こんなものが実家の下に?
 もちろんこれは実家の施設であるわけがない。

 高橋:「何でこんな所にハンターが?」
 愛原:「分からん。……あ、いや……」

 私は1つの可能性を見出した。
 しかし、それを口にすることはできなかった。

 ハンターα1:「ガァァァッ!」
 ハンターα2:「ウォォォッ!」

 新手のハンターが2匹現れたからである。

 愛原:「マジかよ!?」
 高橋:「先生、伏せて!」

 高橋が咄嗟にマグナムを2発放ち、それが2匹に1発ずつ当たった。
 しかしいくら大型拳銃とはいえ、1発当たっただけではハンターは倒れない。
 私もハンドガンを構えたが、手負いのハンターの動きは素早かった。

 リサ:「はーっ!」

 しかし、リサの方がもっと素早く、ハンターα1の顔を爪で引っかいた。

 ハンターα1:「ギャアアアッ!」

 ハンターα1は両手を顔で覆って、思いっ切り痛がった。

 高橋:「今だ!」

 高橋はそんなハンターα1にマグナムを更に2発撃ち込み、そいつは被弾した場所から大量の血を噴き出して絶命した。

 リサ:「でやーっ!」

 その間、リサはもう1匹を蹴り飛ばし、その勢いでハンターα2は壁にめり込んだ。
 そこを拳でハンターの頭を叩き潰してしまった。
 凄い!これが鬼の力……もとい、上級BOWの力!

 高橋:「先生、取りあえず殺しました」
 リサ:「ハンターなんて余裕余裕!」
 愛原:「2人ともよくやった。しかし、こんなのが家の地下にいたとは……。もしかしたらこの通路、あの『お化け屋敷』と繋がってたりしてな?ハンターと言えば、旧アンブレラだ。そしてこの近くでそれと関係する場所といったら、あの『お化け屋敷』以外にあり得ない」
 高橋:「さすが先生、名推理です!」
 愛原:「リサ、この通路に覚えはないか?」
 リサ:「分かんない。全然分かんない」
 愛原:「そうか。とにかく、奥へ行ってみよう。肝心の屋敷は爆発して消えてしまったから、多分この通路もどこかで崩れてしまっているはずだ。しかし、せめてこの辺りの化け物の掃除くらいはしておいた方がいいな。何かの拍子に地上に上がって来られたら、大変なことになる」
 高橋:「そうですね。どっちに行けばいいでしょう?」
 愛原:「そうだな……」

 穴と通路の位置関係からして、片方はあの『お化け屋敷』の方に向かっているみたいだ。
 しかし反対方向を見ても、それなりの長さがある。
 逆に反対方向はどこに繋がっているのかも気になった。
 さて、どっちから先に行こう?

 1:『お化け屋敷』の方向
 2:『お化け屋敷』とは反対方向
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家の片付け」

2020-08-29 19:55:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月23日07:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 ホテル東横イン仙台駅西口中央]

 高橋:「先生、先生。起きてください。7時ですよ」

 私は珍しく高橋に起こされて目が覚めた。

 愛原:「あれ?目覚まし鳴らなかったか?」
 高橋:「バイブになってましたよ。俺はそれでも起きれましたけど」
 愛原:「そりゃ偉い」
 高橋:「少年刑務所じゃ、6時半が起床時刻でしたが」
 愛原:「なるほど」

 私はベッドから起き上がった。

 高橋:「それにしても先生、変な夢でも見たんですか?起こす直前、うなされてましたよ?」
 愛原:「マジか。いや、実はな、リサに襲われる夢を見たんだ」
 高橋:「ほお。夢の中で先生を襲うとは、とんでもないヤツですね。お任せください、先生。そのようなナマなヤツぁ、俺がその頭にマグナム撃ち込んでみせましょう!」
 愛原:「だからリサには効かないって。あ、いや、リサって言っても、うちのリサじゃないんだ」
 高橋:「は?」
 愛原:「多分、あれがアメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーだったんだろうな。いやな、俺が子供の頃の夢を見たんだよ。で、あの『お化け屋敷』を探検してた。現実は呻き声を聞きながら屋敷を脱出したわけだけど、夢の中ではその呻き声の主はオリジナル版リサ・トレヴァーで、俺達は逃げ切れずに襲われるというものだ」
 高橋:「そうなんですか。あの、変な被り物をして、手枷と足枷を付けた化け物のことですよね?」
 愛原:「そうだ。タイラントと同様、マグナムを何発も撃ち込んでも倒れず、ようやく舞台となった屋敷の自爆装置に巻き込まれて、そこでやっと非業の死を遂げたという……ん?」
 高橋:「何ですか?」
 愛原:「何か、あの屋敷に似てないか?もしも爆発の原因が自爆装置によるものなんだとしたら……」
 高橋:「さすが先生!名推理です!」
 愛原:「いや、分かんないよ。とにかく、ちょっと顔を洗ってくる」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「せんでいい」

[同日09:01.天候:晴 同地区内 仙台市地下鉄仙台駅・東西線ホーム]

 ホテルの朝食会場で朝食を食べた後、私達はホテルをチェックアウトして地下鉄の駅に向かった。
 尚、リサが1番朝食をバクバク食べていた。
 BOWで人肉食優先ではなく、普通の食事で栄養補給可というのは珍しいことなのだそうだ。
 それもまた、ここにいるリサが完成版と称される所以である。
 が、しかしそれでも人肉食への欲望は強い為、あまり空腹になると理性が切れて人を襲う恐れは十分にある。

〔3番線に、荒井行き電車が到着します〕

 今日は家の片付けを手伝うので、さすがに高橋はスーツではなくラフなTシャツ姿だったし、リサも同じようにTシャツに黒いミニスカートを穿いていた。
 多分その下にはちゃんとオーバーパンツを穿いていることを信じたい。

 やってきた電車には、一応そこそこに乗客がいる感じがしたが……。

〔仙台、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 

 ぞろぞろと降りて行き、車内はガラ空きになった。
 日曜日の朝だからしょうがないが。
 ブルーの座席に腰かける。

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車サイン音が鳴る。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 2点チャイムが4回鳴ってドアが閉まった。
 もちろん、外側のホームドアが閉まってから電車が走り出す。
 4両編成という短さ、そして全駅にホームドアが設置されていることもあり、仙台市地下鉄は全列車においてワンマン運転が行われている。

〔次は宮城野通、宮城野通。ユアテック本社前です〕

 愛原薫:「停電も復旧したみたいだし、あとは家の片付けをするだけだな」
 愛原節子:「1日で終わるといいけどねぇ……」
 愛原学:「被害はそんなにヒドいわけじゃないんでしょ?」
 薫:「ざっと見た限り、雨戸が壊れていたり、外壁に傷が付いたりしてたくらいだな。ああ、あと、あれだ。駐車場に瓦礫が飛んで来たもんで、車は修理に出さないとダメだな」
 学:「マジか」

[同日09:15.仙台市若林区某所 愛原家]

 最寄りの地下鉄駅で電車を降り、その足で家に向かった。
 昨日来た時は警察による交通規制が敷かれていた場所も、今は簡単に入ることができた。

 学:「ちょっと待って!」

 私は途中にあったコンビニに立ち寄り、そこでスポーツドリンクやノンカフェインのお茶などを買い求めた。

 学:「今日も暑くなるから、水分補給はこまめにね」
 薫:「さすが学だ」
 高橋:「メモっておきます!これも名探偵の心得ですね!」
 学:「いや、基本中の基本なんだが……」

 家に着いて、まずは被害状況を確認する。

 学:「高橋、被害が出ている所は写真撮っていてくれ。保険なり補償なり、もらう時の証明になるから」
 高橋:「了解っス!」
 薫:「まずは車だな。ダメだ。爆風で飛んで来た色々な物が当たって傷だらけだ」

 屋根やボンネットはボコッと凹んでおり、窓ガラスも何枚か割れて、ヒビが入っている窓もあった。

 高橋:「写真撮っときますね」
 学:「頼む」

 家の被害としては、『お化け屋敷』の方を向いている窓のシャッター式の雨戸が歪んで壊れていた。
 爆発発生時刻が早朝だったということもあり、我が家ではまだシャッター式の雨戸を閉めていたのだ。
 それもまた被害が少なく済んだ理由でもあった。
 ただ、歪んだシャッターが内側に押されたこともあって、外側の窓ガラスにヒビが入ったり、最悪割れている窓もあった。
 我が家は冬季の寒さ対策と騒音対策の為、二重サッシになっている。
 その外側のサッシが壊れていた。
 一応、見た限りでは窓の被害はそんな感じ。
 あとは1階の窓の外にある防犯用の鉄格子が外れて下に落ちていたとか、外壁が爆風で飛んで来た物が当たって傷ついたりとかであった。

 リサ:「これならゾンビが来ても、侵入できないね」

 リサは壊れずに済んだ鉄格子を見て言った。

 薫:「ゾンビ?」
 学:「な、何でも無い!何でもないんだ!」

 幸い停電は復旧していたので、家の中はエアコンを点けて暑さ防止を図った。

 節子:「でも冷蔵庫の中は換えた方がいいわよね?」
 薫:「そうだな。冬だったらまだ良かったんだが……。後で買い物に行くか」

 真空パックで保存の利く食料品とか以外の生鮮食品は廃棄しないといけなくなった。
 こういうのも補償されるのだろうか。

 高橋:「先生、ちょっといいっスか?」
 学:「何だ?」

 高橋が手招きしてくる。
 私が彼に付いて行くと、そこは裏庭だった。
 裏庭にも爆風で飛んで来た物が散乱している。
 これも片付けないといけない。

 高橋:「これなんですけど……」
 学:「ん!?」

 高橋が指さした先には穴があった。
 確かここには大きな庭石があったはずだが、それが転がってどこかに行ってしまったようである。
 で、代わりにそれと同じ大きさの穴が開いていた。
 庭石は転がったのではなく、ここに落ちたのかもしれない。

 学:「何だこれ?」

 私は穴を覗き込んだ。
 昼間の日差しが差し込んでいるにも関わらず、穴の下は真っ暗で何も見えなかった。

 学:「んん!?」

 私は探偵の7つ道具の1つであるマグライトを持ってくると、それで穴に向かって照らした。

 学:「何かあるな……」
 薫:「なに?どうしたの?」
 学:「いや、お父さん、実はね……」

 私は父に穴を見せた。

 薫:「下水管に穴でも開いたんか?」
 学:「下水道?でも、下水の臭いなんてしないけど……」
 薫:「これも被害の1つだな。爆発の時、すんごい揺れたから、それで開いた下水道の穴かもしれない。高橋君、これも写真に撮っておいてくれないか」
 高橋:「わ、分かりました」

 いやー、下水道の穴には見えないんだが……。
 よし、後で探検してみよう。
 確か物置に縄梯子があったはずだ。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台初日の夜」

2020-08-29 15:13:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日19:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 たんや善次郎別館]

 私は高橋とリサを連れ、両親や公一伯父さんと共に夕食を取ることにした。
 ホテルのすぐ近くに“五橋横丁”というのがあり、そこの一画にある牛タン店に入った。
 しっかり予約しているらしく、個室に通された。

 愛原公一:「弟夫婦の無事を喜んで乾杯だべ!」
 愛原薫:「兄さん、俺達の無事ば喜んでけるのは嬉しいけど、死傷者ば多ぐ出てる事故だで、あんま盛り上がんねー方がいいんでねぇが?」
 公一:「んだから、身内だけでやるんでねーの」
 愛原学:「いや、外部の人間もしれっといますけど?」

 私は高橋とリサを指さした。

 高橋:「や、やっぱ俺達は別行動で……」
 公一:「いいがらいいがら!明日、家の片付け手伝ってくれるんたべ?んだったら、今から礼ばさせてもらっから」
 高橋:「さ、サーセン」
 薫:「兄さんはこれから小牛田さ帰ェるんだから、アルコールばダメだど?」
 公一:「分がってるって。俺はノンアルビールだっちゃ」

 リサもジュースである。

 公一:「んで、カンパーイ!」

 乾杯が始まり、愛原家の夕食会が始まった。
 尚、宴会プランではあるが、内容からして1番安いものであるようだ。
 それでも……。

 リサ:「食べ放題じゃないの?」
 学:「違うよ」
 公一:「はっはっは!ほりェ、わしのも食え!」

 孫に料理を分け与えるお祖父ちゃんの役をしっかりやる公一伯父さん。

 高橋:「何だか羨ましいっスね」
 愛原:「そうか?」
 高橋:「俺は家庭に恵まれなかったもんでェ……」
 リサ:「私はもっと恵まれなかったよ?」
 高橋:「いや、オメーの場合は仲睦まじい家族だったのに、それを外から来たアンブレラの連中にブッ壊されたって話だろ?俺は違ェんだよ」
 公一:「学は時々ブッ飛ぶヤツだけんど、よろしくやってくれな?」
 高橋:「ははっ、お任せを!教授!」
 愛原:「だから、元教授だって」
 薫:「でも兄さん、名誉教授としての籍はあるんでしょ?」
 公一:「名ばかりで、大したこと無ェよ」
 薫:「『枯れた苗を元の苗に戻す化学肥料』なんて作っといて?」
 公一:「したっけ、変な製薬会社が買い付けに来て大変だったんだァ。あれは俺が墓場まで持ってくからや」
 愛原:「『枯れた苗を元の苗に戻す』!?そんなことができるの!?」
 高橋:「教授……いや、名誉教授!パネェっすね!?」
 公一:「居眠りしながら農薬ば合成する実験したっけ、何かいつの間にかできてたんだなや」

 とんでもない教授である。
 もしも毒ガスが発生したり、爆発なんかしたらどうしたのだろう?
 でも……。

 愛原:「伯父さん、もしかして、『実験で造られた化け物を元の人間に戻す』なんてのも可能?」
 公一:「モノにもよっけど、理屈の上なら可能だべ」

 そうか、可能なのか。
 農学部の元教授とはいえ、理系の科学者がそう言っているのならそうなのだろう。
 善場主任達は、そのアテを見つけたらしいのだ。

 公一:「映画の話だど」
 愛原:「ああ、だよね」

[同日21:00.天候:晴 同地区内 ホテル東横イン仙台駅西口中央]

 夕食会が終わった私達は伯父さんと別れ、ホテルに戻った。

 高橋:「先生、お風呂にお湯入れてますんで」
 愛原:「悪いな」

 私はテレビのチャンネルを回した。

 愛原:「おっ、ニュースをやっている」

〔「……仙台市若林区○○で起きました爆発事故ですが、現場となった空き家の調査に入った警察官や消防職員が行方不明になっています」〕

 愛原:「は?」
 高橋:「えっ?」

〔「現場となった空き家には地下室があり、そこに放置されていた爆発物が何らかの理由により爆発したのが原因と見られ、詳しい調査に入った警察官や消防職員が行方不明になりました。現場からは人骨らしき物も多数発見されており、警察では……」〕

 高橋:「旧アンブレラの関係者の屋敷跡っスよね?」
 愛原:「らしいな」
 高橋:「爆発したらそれで終わりってわけじゃないんスね」
 愛原:「そのようだな」

 何らかのブービートラップがまだ稼働していて、それに引っ掛かったか、あるいは……BOWはいないものと信じたい。

 愛原:「変わった仕掛けはあの屋敷にはあったんだ。もしかしたら、中にはデストラップなんかもあったのかもしれないな」
 高橋:「何しろ旧アンブレラに追われてた一家でしょう?その可能性は大っスね。てか先生、あの屋敷を探検したことがあるんですよね?」
 愛原:「ああ。確かに変わった仕掛けがあったよ。トラップじゃなくて良かった」
 高橋:「どんなのですか?」
 愛原:「暖炉の中に変な取っ手があって、それを引っ張ると、隠し部屋のドアが開いたんだ。そこは納戸になっていて、中には何も無かったけど、地下へ下りる梯子はあったな」
 高橋:「下りたんですか?」
 愛原:「下りたね。……ああ!確かに、何かガスボンベみたいなのがあったな!それが爆発したのか!?」
 高橋:「下りた先にはボンベ以外に何があったんですか?」
 愛原:「更に奥に向かう通路があったんだけど、水が溜まってて行けなかった。そもそも真っ暗だったし」

 なので私と他の友人達はそこで探検を断念して、屋敷をあとにしたというわけだ。

 愛原:「あっ、そうだ」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「いや、梯子を登って、またリビングに戻ろうとした時、水路の奥から変な音が聞こえたんだ。不気味な音だったから、皆して急いで出たな。今から思えば……あれはBOWの唸り声だったのかもしれない」

 私はそこまで言って背筋が寒くなるのを感じた。
 あの時、水路を無理を進もうとしたならば、もしかしたら私はここにいなかったかもしれない。
 水路があったから助かったのか、或いは水路を唸り声の主が進んで来ていたのか、それはさすがに分からない。
 しかし、それからもう30年近く経っているはずなのだ。
 もし仮にBOWがいたとしても、もう生きているはずがない。

 高橋:「テレビで言ってた行方不明者は、BOWに食われたと?」
 愛原:「だってあれから30年近くだで?生きてるわけねーだろ」

 誰かが定期的に食料を提供していなければな。
 だからBOWとかではなく、トレヴァー家の御家芸とされる仕掛けに引っ掛かってしまったのかもしれない。

 愛原:「あくまでも立入禁止が続行されるのは、あの『お化け屋敷』の近辺だけだ。明日には実家も含めて、大部分が規制解除になる。取りあえず『お化け屋敷』のことは置いといて、家の片付けに専念しよう」
 高橋:「了解っス」
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新型コロナウィルスによる添書登山中止のお知らせ。

2020-08-28 23:27:58 | その他
 https://www.nichirenshoshu.or.jp/jpn/taisekiji.html#ht-announce

 取りあえず明日、高速バスと新幹線のキップの払い戻しに行ってきます。
 うちの愛原リサの抗体、何の役にも立ちませんでしたなぁ……。
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“私立探偵 愛原学” 「政府機関、動く」

2020-08-28 20:07:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日15:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 ホテル東横イン仙台駅西口中央]

 今日宿泊するホテルに到着した私達。

 高橋:「先生!『走る死亡フラグ』がフラグ折りました!」
 愛原:「良かったじゃないか」

 公一伯父さんは御年70代だ。
 高齢者マークのステッカーを貼り、白いプリウスを駆っている。
 高橋はそれを、『ブレーキとアクセル踏み間違えて突っ込むこと上等の死亡フラグ』だと言うんだな。
 ま、否定はすまい。
 そんな伯父さんの運転するプリウスで到着した私達の両親。

 愛原学:「いいかな?チェックインの手続きするよ?」
 愛原公一:「待てい」
 学:「なに?」
 公一:「お祖父ちゃんからのお小遣いぢゃw」
 リサ:「わぁい。ありがとうございます~」
 学:「『孫にお小遣いをあげるお祖父ちゃん』の役やりたかっただけでしょ!」
 公一:「肝心の甥っ子がいつまでも結婚しないので、痺れを切らしたのだ」
 学:「すいませんね!愛原家は私の代で強制終了ですよ!」
 リサ:「私で良かったら、法統相続協力する」
 公一:「うむ。実に頼もしい」
 学:「とにかく、フロントに行って来ますから」

 私はフロントに行った。

 学:「今日から一泊で予約している愛原です」
 フロント係:「はい、愛原様でございますね」

 私はツインの鍵2つとシングルの鍵を1つもらった。

 学:「それじゃ行きましょう。伯父さんもありがとうございました」
 公一:「うむ。いつでも遊びに来ていいぞ。小牛田の駅まで迎えに行ってやる」
 学:「そりゃどうも」

 エレベーターで客室フロアに向かう。

 学:「でも公一伯父さんと夕食だよね?」
 愛原薫:「この時間、大学の研究室に顔を出しに行くんだろう」
 愛原節子:「大学の人達と食事をするから、こっちはキャンセルして来たりしてね」
 薫:「十分あり得る。昔から兄さんは自由人だったからなぁ……」

 エレベーターを降りると、私達はそれぞれの部屋に入った。

 学:「夕食までゆっくりしてるか」
 高橋:「先生の伯父さん、太っ腹っスね。先生がフロントに行ってる間、俺にも小遣いくれたんスよ」
 学:「マジか。若いっていいなぁ!」

 ま、私も昔はよく伯父さんからお年玉だの、色々と買ってもらったりだのしたものだ。
 伯父さんこそ天涯孤独な人だからな。

 高橋:「リサも諭吉先生1人分もらってた感ありますよ?」
 学:「当人にとってはお年玉あげるような感覚だろう」
 高橋:「お正月に会ったら、ガチでお年玉くれそうですね」
 学:「かもしれないな」

 高橋は湯沸かしサーバーに水を入れて、それでお湯を沸かした。

 高橋:「今、お茶入れますんで」
 学:「ああ、悪いな。俺は自分の事務仕事でもしてるよ」

 私はそう言って荷物の中からノートPCを出し、それをライティングデスクの上に置いた。

 学:「おっ、窓の外は新幹線の線路かぁ」

 窓の下を見ると、新幹線が通過して行った。
 シンカリオン好きの子供なら、大喜びだろうな。

 学:「ん?メールが来てるな……」

 このホテルにはWi-Fiが飛んでいるので、それでインターネットは簡単に使える。
 それでメールチェックすると、善場主任からメールが来ていた。

 善場:『高野事務員から、愛原所長が仙台市内に向かったと伺いましたのでちょうど良かったです』

 とのこと。
 落ち着いたら電話が欲しいとのことだった。

 学:「何だろう?」

 私は自分のスマホを取り出し、それで善場主任に掛けてみた。

 善場:「愛原所長ですか?」
 学:「はい、愛原です。確かに私は今、仙台市内にいますが、ちょうど良かったというのは、どういうことですか?」
 善場:「仙台市若林区で起きた爆発事故については御存知ですね?」
 学:「知ってるも何も、実家が少し巻き込まれてしまって、それで両親の安否を確認しに向かったわけです」
 善場:「そうだったのですか。それで御両親は御無事だったのですか?」
 学:「おかげさまで。ただ、現場周辺はまだ停電中かつ立入規制中なので、家に入れないので、今日は市内のホテルに泊まります。実家の片付けとかを手伝わないといけないので……」
 善場:「そうですか。その爆発現場がどういった場所なのかは御存知ですか?」
 学:「さっき知りましたよ。旧アンブレラと因縁のある家系、トレヴァー家の屋敷があったらしいですね。もっとも、私が生まれる前に行方不明になったらしいですが」
 善場:「日本国内に旧アンブレラ本体の関係者が潜伏しているという情報は得ていました。ただ、行方が掴めなくなっていたので、死亡説も組織内にあったのは事実です」
 学:「その屋敷の地下室から人骨が見つかったらしいですよ。もしかしたら、そこに住んでたトレヴァーさんの人骨かもしれませんね」
 善場:「それをこれからうちの組織が調査します。月曜日にそちらに向かいますが、所長は立ち会えますか?」

 高野君、事務所はよろしく頼む!

 学:「前向きに善処します」
 善場:「よろしくお願いしますよ。できれば、そちらのリサ・トレヴァーにも来て頂きたいものですね」
 学:「えっ?」
 善場:「もしかしたら、『愛原リサ』として暮らしている、そちらの日本版リサ・トレヴァーは、本当にそこの家の子であった可能性がありますので」

 やっぱりか!

 学:「分かりました。ますます可及的速やかに事務所に連絡致します」
 善場:「よろしくお願いします」
 学:「……善場主任」
 善場:「何ですか?」
 学:「善場主任の所属する組織は、リサを将来の政府エージェントとして使いたいんですよね?」
 善場:「最初に御説明申し上げたと思いますが?」
 学:「BOWのままで本当に大丈夫なのでしょうか?」
 善場:「ああ、そういうことですか。……詳しい真意は時が来たらお話しさせて頂こうと思っていましたが、結論から先に申しますと、愛原リサはアメリカの政府エージェント、シェリー・バーキン氏のような者にするつもりです」
 学:「でも、シェリー氏は人間ですよ?まあ、幼少時に一時BOW化しかかったようですが……」
 善場:「はい。有名な話ですね。それですよ」
 学:「?」
 善場:「私達は愛原リサを人間に戻す方法を考えています」
 学:「な、何ですって!?」

 リサを人間に戻す!?
 そんなことができるのか!?

 善場:「あくまでも計画です。しかし、その計画は既に上からの承認を得ております。アメリカのシェリー・バーキン氏にできたのです。こちらのリサ・トレヴァーにできないことはないと考えております。ですので、愛原所長にはその計画の推進の為に、尚一層の御協力を頂きたいのです」

 私は開いた口が塞がらなかった。
 善場主任達、陰でそんな計画を立てていたとは……。

 善場:「確かに今のリサ・トレヴァーは危険です。いつ暴走するか分かりません。しかしバーキン氏のように超人的な能力は残しつつ、且つ人間の姿のまま絶対に変化することはないのであれば……とても安全だと思いませんか?バーキン氏は人間です。私達は愛原リサをそのような存在にし、それから私達の組織に迎え入れたいのです」
 学:「……その計画、成功できるアテはあるんですか?」
 善場:「これ以上は機密事項ですので、まだ申し上げられません。しかし、全くアテが無ければ、そもそも承認など得られませんよ」

 善場主任はそう言って電話を切った。

 高橋:「大丈夫ですか、先生?お茶です」
 学:「リサを人間に戻す……」
 高橋:「えっ?」
 学:「リサを人間に戻すという計画を、善場主任達は進めようとしているんだってさ」
 高橋:「ええっ、マジっすか!?パネェっすね、あの姉ちゃん達!?」

 高橋が驚くのも無理はない。
 だが、リサにはまだ内緒にしておいた方がいいだろう。
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