報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

小説の途中ですが、ここでコメントレス&雑記を掲載します。

2015-04-30 20:34:36 | 日記
 先ほど、仙台から無事に帰って来た所だ。
 信仰のことなど忘れて、それなりにパーッとできたと思う。
 途中で多摩準急先生とも合流できて、色々と話も聞いてもらったし。
 さて、山門入り口さんから定期的にコメントを頂戴している。
 こんな拙いブログに興味を持って頂き、誠にありがたい。

>>日曜・祝日は運休の為、顕正会員の利用が無いばかりか、バスの存在すら知られていないものと思われる。

>どんだけ過疎地なのかと思ってしまう。
>仙台市とは名ばかりの場所なんでしょうね。(^^;

 私が乗った10時台の便は満席ではないにせよ、コミュニティバスにしてはそこそこ賑わっていた方だと思う。
 見ていると病院通いのお年寄りと、小さな子供を連れた母親の利用客が多かったところを見ると、正にそうなのだろう。
 いかに私が場違いな乗客かが分かった。
 だからといって、別に不審顔で見られたわけではないが。
 件のバス路線の沿線には病院や診療所がいくつかあり、そこへの需要を見出したようである。
 私は地下鉄富沢駅前で下車したが、そこでの下車客は私だけだったくらいだ。
 だから、医療機関が休みの日祝日は全便運休なのだろう。
 顕正会員が利用すれば、特に日曜勤行や夕勤行などの時間に合わせたダイヤを組んでくれると思われるが、当然実態は【お察しください】。
 仙台市東部の創価学会若林平和会館と比べれば、その賑わい方は雲泥の差である。

>>バスは満席だったので、予約のタイミングが遅れたら、やっぱり乗れなかったでしょう。

>顕正会員風にピジティブに功徳だ!ご守護だ!と思いこみましょう。

 東北新幹線が停電で関係者や利用者が右往左往している中、高速バスは渋滞に巻き込まれることもなく、ほぼダイヤ通りに運行できたのだから、確かに素直にラッキーだったと思う事にしよう。
 今日だってタクシーの運ちゃんにそんな話をしたら、
「お客さん、ラッキーだったねぇ……」
 なんて言ってたもの。

>>どうやら、メーデーに私が「本当に」行動すると思って、ようやっと御本尊も動いてくれたようです。

>やはり、思いこみの功徳より、もっと実感できる功徳を~と、要求しましょう。
例えば、御山に毎月行ってるのだから、げ、げ~ゴボゴボ。。。。
げ~ゴボゴボ、の祈りが足りないから、ユタに彼女が出来るような奇跡(功徳)がないんだと!
きっと、拡声器を以て三門前で訴えれば、お聞き届けされるかも。

 大石寺三門前で拡声器を持っているだけで、妙観講員さんに取り押さえられそうですねぇ……。
 いや、ポリ銀さんのブログに、何か私に言ってるのかと思うような記事がありますけども、確かに月イチ登山して、功徳ゼロかよとなったら、文句の1つでも言いたいですからね。
「入信したらすぐに功徳がウハウハなワケありません」
 とか、誰かが言ってまして、そりゃそうだろうとは思います。
 しかし、さすがにここまで回数を重ねて来ているのに何も無いというのは、少し筋が通らないのではないかと。
 権兵衛さんが仰ってましたが、功徳の無い本尊は廃仏毀釈されてしかるべきだと思います。

>ユタに彼女が出来るような奇跡(功徳)

 多分、今の宗門に私に合う人がいないんだと思います。
 他宗にはいるけども、当然私の信心では、その為に他宗に移籍することになるでしょう。
 御本尊としては、それは阻止しないといけない。
 だが、しかし……というわけで、現状が維持されている状態なんでしょうね。

>>あともしくは手を出したら犯罪者扱い間違い無しの少年部員か……(もちろん家族連れ)。

>大丈夫です。
光源氏計画があります。
今のうちに手なずけて「大きくなったら、ユタお兄ちゃんのお嫁さんになってあげる」と言う、子供を育成しましょう。

 その前に通報されると思いますw

>>私のような年代の新規入信者は、なかなかいないようです。

>顕正会本部会館、東京会館側の公園にたむろしてる、顕正会員を折伏してたくさん引き入れて貰えば、同年代の人も増えますよ。
ぜひ、メーデーには、顕正会員を折伏に行け~と、声を上げて、御講に出会いをと訴えてください。

 顕正会員は罪障強いから、あんまり気が進みませんな〜。
 うちの支部も、恐らく見放していると思います。
 だから、一般人に対する街折やベトナム人の入信で茶を濁しているものと思われます。

>追伸。
冬コミまでに可愛いレーヤーさんの彼女を見つけて、その友達を紹介して下さい。
わたしは、広宣流布より大事だと心より思ってます。
夢の実現に向けて、メーデーを頑張ってくださいね。

 やはり、行き着く所は宗外ですか。
 もし仮に山門入り口さんの通りに夢が実現したら、エンディングは私の脱講になるのではないかと。
 無宗教に戻るか、できた相手が特定の宗教人であれば、そちらに私が入信することになるかのどちらかになるでしょう。
 ただ、さすがにアレフや朝鮮半島がルーツの統一教会やその他在日系キリスト教団などとは異体同心できないので、さすがにその時は折伏することになりそうです。
 まあ、メーデーがどれだけ効果があるのか、おかげさまで給与水準が低い警備業界の中において、年2回のボーナス支給は維持されてますがね。
 御本尊に対するメーデーは、どれだけ効果があるのやら……。

 顕正会では、逆に独り者でいることが喜ばれる。
 無論家族を持っていても、活動に何の支障も来たさなければ、少なくとも男子部内では英雄扱いである。
 これは浅井会長やその他大幹部が言っているのではなく、会内で流れている空気だ。
 うだつの上がらない男ばかりの組織にいたせいか、私が冗談で、
「貞操だけなら、我々高僧になれますよ」
 と言ったら、皆で笑っていた記憶がある。
 昔の話だ。
 昔の顕正会はヒドかったと言う人もいるが、少なくとも私がいた組織では、ああやって肩や背中を叩き合って笑い合えた余裕があった。
 それが楽しくて、足掛け10年いられたんだと思う。
 対して今の法華講はどうだろう。
 全然楽しくない。
 楽しくなかったから、たかだかちょっとした魔くらいで塔中坊を辞めたんだと思う。

 これを先代のブログで愚痴ったところ、どこかの信徒が、
「法華講は楽しむ為の組織ではない!」
 と指摘してきたため、こりゃダメだと思ったものだ。
 人との和を円滑に図る為に、楽しみも必要だということを知らないのだろうか?
 それとも、根本的に私が間違っているか?
 それが無くてつまらぬ組織だと言うだけで謗法か。

 いずれにせよ、何か転機でも無いことには、私のストライキはまだ続きそうである。
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“大魔道師の弟子” 「旭川滞在」 8

2015-04-30 08:24:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月23日10:00.天候:曇 JR旭川駅 稲生ユウタ&マリアンナ・スカーレット]

「この駅、2回目だ」
「そうですね。最初に来た時は、まさかあんなことになるとは思いませんでした」
「ああ……」
 2人は駅構内にある“みどりの窓口”へ向かった。
 そこには書店でも一般販売されている大型の時刻表が置いてあるのだが、背表紙には『北海道旅客鉄道』と書かれている。
 これがユタの実家の最寄りである大宮駅や北与野駅、マリアの屋敷の最寄りである白馬駅なら『東日本旅客鉄道』と書かれているわけだが、一般販売用の物にはその時刻表の目玉となるキャッチフレーズや、交通新聞社としか書かれていない。
 パッと見、一般用と同じように見えるのだが、大きな違いはホテルなどの広告が掲載されていないことである。
「早く出ましょうか?」
「師匠のことだから、それは難しいと思うよ」
「……ですよねぇ。じゃあ、チェック・アウトぎりぎりの電車で、尚且つ新千歳空港まで直通で行く電車……が、ちゃんとある」
「それで行こう」
「はい」
 ユタは申し込み用紙に書き込んだ。
 そこでユタ、あることを思いつく。
「あー、そうか。“スーパーカムイ”はグリーン車無いんだよなぁ……」
「は?」
「グリーン車にしようと思ったのに、残念だったなぁ……」
 ユタは藤谷のセリフの真似をした。
 しかしマリアは額面通りに捉えたのか、
「確かに師匠はそれくらいの金は持っているけど、そんなの拘らない人だから心配無いよ」
 と、普通に返してきた。
 空いてる席ならどこでもいいという性格なのはユタも知っている。
 だからこそ、今宿泊しているホテルもごく普通のビジネスホテルなのだ。
 もし自分の地位に合わせたレベルを求めるのなら、もっと高いシティホテルに泊まっていることだろう。
 あまり地位には拘らない性格、アルカディア王国の宮廷魔導師の話を蹴ったのもその一環だ。
「どうせその先の飛行機も、マイナーなローカル線だから、エコノミークラスしか無いんだろう?」
「まあ、そうでしょうね。航空会社も初めて聞くなぁ……」
「だったら尚更だよ。それでも心配なら、その列車、飛行機で1番高いのを取ればいい」
「じゃあ、指定席にしましょう。指定席料金は……ゴールデンウィーク前だから、1番安い金額だったはずです」
 ユタはチョイチョイと用紙に書き込んで、
「じゃ、ちょっと行ってきます」
「ああ」
 窓口の列に並んだ。
 その間、マリアは整然と並べられたパンフレットに目を通していた。

 しばらくして、
「取れました。3人分」
 意気揚々と引き揚げて来るユタ。
「早いな」
「ゴールデンウィーク前の静けさかもしれませんね。あとは、785系が来るか、789系が来るか……」
「……そこはユウタの運に任す。どっちが当たり外れかあるの?」
「特に無いです。どっちも一長一短って感じ」
 ユタはあっけらかんと答えた。
「じゃあ、戻ろう。洗濯も終わってるだろう」
「あ、そうか」

[同日10:15.ユタ達の宿泊しているビジネスホテル ユタ、マリア、エレーナ・マーロン]

 ホテルに戻ると、フロントに見覚えのある人物がいた。
「エレーナ!」
 マリアよりはもう少し赤に近い色の金髪にウェーブを掛けて、背中まで伸ばしている。
「ん?おー、マリアンナ。……と、ユウタレスカ」
「は?え?」
「こら。私の弟弟子を悪魔名で呼ぶな」
 マリアは眉を潜めて、ダンテ一門の別の弟子に文句を言った。
「はははっ(笑)、冗談冗談。で、なに?デートしてたの?」
「なっ……」
 マリアは同僚(?)にからかわれて顔を赤らめた。
「あ、いや……帰りの電車のキップを買いに行ってたんです」
 代わりにユタが答えた。
「ふーん……。買う物によっちゃ、デートだよね。つい、カチューシャでも買いに行ったのかと思ったよ」
「まあ……確かに、僕が買ってあげたものですけど……」
「マジで!?いいなぁ!アタシもこういう弟弟子が欲しいなぁ!」
「だったら、ポーリン師に頼めよ。薬師系は人手不足なんだろう?」
「この業界、どこも人手不足だよ」
「業界……。あ、マリアさん、あれを……」
 ユタはコインランドリーの方を指さした。
「ん?なに?」
「僕が行ってきますよ」
「ああ。こいつの相手は私がしとくから」
「コイツ……」
 ユタはコインランドリーの方に行き、マリアは、
「そっちで話そう」
 モーニングタイムが終わり、普通のカフェとして営業している朝食会場へ促した。
「わーい!マリアンナの貢ぎー!」
「アホか!奢りと言え!」
「ゴチっス!」
「あ……!」
 見事にはめられたマリアだった。
 魔道師同士にも、色々とあるようで……。

 で、
「アールグレイのストレートを1つと……。エレーナは?」
「ブルーマウンテン」
「ブルーマ……って、こら!私にタカっておいて、私より高いの頼む気か?」
「じゃ、モカ」
「モカ1つ」
「かしこまりました」
 注文をし終えた後で、
「さっきのコ、どこへ?」
「まさかの長期滞在になったもんだから、溜まった洗濯物を洗ってたんだ。ここ、洗濯機あるし……」
「最近のビジネスホテルにはよくあるよねー。マリアンナと一緒に?」
「ああ。別に、変な意味は無いぞ!」
「後で下着の数、数えておいた方がいいかもね」
「アホか!……だいたい、エレーナは何の用で来たんだ?師匠なら多分、今日1日いないぞ?」
「ああ、違うよ。今日はマリアンナ……というか、あのコに用があって来たから」
「なに!?」
 マリアは思わず、魔道師の杖を握った。
「違う違う。変な意味じゃないって、“宅急便”の仕事だから」
「え?」
 エレーナは椅子に掛けていた自分のローブの中から、1枚の封筒を出した。
「メール便みたいだけど、ちゃんとサインはもらうからね」
「ユウタ君宛てか。差出人は誰だ?」
「“宅急便”なんだから、荷主さんって言ってよ。裏に書いてある」
 マリアが言われた通りひっくり返すと、そこには藤谷春人と書かれていた。
「あの人か」
「稲生君に頼まれていた航空券が中に入ってるんだって」
「藤谷さん、わざわざエレーナに頼んだのか……」
 マリアは意味が分からないといった感じで首を傾げた。
「うちの先生やマリアンナの先生みたいに、政財界との太いパイプは自然にできるものじゃないからね。こういう、下積みの時から築き上げて行くものなんだって。藤谷組はまだまだ伸びそうだから、今のうちにパイプをね……」
「なるほど……。じゃ、営業掛けたのか」
「まあね」
「オマエのことだから、相当吹っ掛けたんじゃないのか?」
「いや、全然。相場通りの運賃をもらったよ」
「相場?宅急便のか?」
 ホテルのサービスの1つに宅配便の送受もある。
「ううん。バイク便とメッセンジャー」
「何その1番高い水準の相場は……!」
 マリアは、エレーナには既に“強欲の悪魔”マモンが憑いているのではないかと思ったそうだ。
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“大魔道師の弟子” 「旭川滞在」 7

2015-04-29 22:13:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月23日08:00.天候:曇 旭川市内ビジネスホテル 稲生ユウタ]

「おはようございます。具合はどうですか?」
 ユタはイリーナとマリアの部屋を訪れた。
「おはよう。ユウタ」
 マリアが笑みを浮かべてやってきた。
「マリアさん!」
「おかげで、今日は体調もいい」
「おおっ!それじゃ……」
「ああ。朝ご飯でしょ?一緒に行こう」
「は、はい!イリーナ先生は……?」
「夢の中でご馳走をたらふく食べているようだから、別にいいだろう」
 マリアが小さく溜め息をついて、右手の親指で自分の後ろを指さした。
「クカー……もう食べれましぇん……」
「たははは……」
 ユタは苦笑いした。
「先生が契約しているのは、“嫉妬の悪魔”ですよね?“暴食の悪魔”じゃないですよね?」
「そのはずだ……けど」
「まあ、いいや。行きましょう行きましょう」
 ユタがマリアを促すと、
「ちょっと待ってて」
 マリアが部屋着から私服に着替えようとした。
 ショーツが一瞬モロ見えした気がした。
「たっ!?ちょっ……ちょっと待ってください!外に出てますんで!」
「行くのか待つのか、はっきりしてくれよ」
 マリア呆れた。
 ユタが慌てて出た後で、
「あはははははっ!」
 笑いを堪え切れずに笑い出したマリアだった。
 それはいつかの、敵を惨殺した際に見せていた快楽殺人的な笑いとは全く違っていた。
 その後、上機嫌で鼻歌混じりに着替えて部屋を出たマリア。
(あー……やっと、マリアもあんな顔してくれるようになったか……)
 布団を被って寝言を言っていたはずのイリーナは、チラッと部屋のドアを見て、そう思った。
(うーん……あと5分……)
 既にベッド脇のアラームが鳴ってから、1時間が経過していた。
 今は止まっている。
 マリアは自分が起きる為にセットしていただけで、ハナから師匠がそれで起きるとは思っていなかったようである。

[同日09:00.同ホテル1F 朝食会場 ユタ&マリアンナ・スカーレット]

 まもなくモーニングも終了しようという時、ユタは食後のコーヒー、マリアは紅茶を啜っていた。
 今日の予定のようなことを話している。
「……というわけで、そろそろ藤谷班長から航空券が届くはずです」
「なるほど」
「それを受け取ったら、どこか行きましょうか?」
「そうだねぇ……。あ、でも師匠から言い付けられてたことがあったんだ」
「何ですか?」
「こーれ」
 マリアは自分が着ている服をつまんだ。
「ん?」
「まさかの長期滞在になったものだから、着替えが無くなってね。溜まっている服は今日中に洗濯しておけって」
「あー、そういえば僕もだ!今着てるので最後です」
「意外と師匠、大ざっぱなようでそういう所見ているからなぁ……」
「ん?あれ?でもその服……」
 ユタはふと気づいた。
「ああ、気づいた?これはあの戦いの時に着てたもの。ブラウスは破かれるし、ブレザーもスカートも綻んだりで大変だった」
 下着は完全に引ん剝かれたのでダメだったが、その上の服は人形達が直してくれたという。
「へえ、何でもできるんですね。あのコ達……」
「私の魔力に応じて、ね……。昨日とかは師匠が魔力をカンパしてくれたから、尚更細かい作業ができたみたい」
「そうでしたか。じゃあ、洗濯からしないと……ですね」
「洗剤が無いんだ」
「それなら、コインランドリーの所で売ってますよ」
「そうか」

[同日09:30.同ホテル1F コインランドリー ユタ&マリア]

「どうした?まだ余裕あるぞ?一緒に入れなよ」
「あ、はい……」
 マリアとは別の洗濯機を使おうとしたユタに対し、マリアは苦笑いを浮かべて言った。
「別に知らない仲じゃないんだし、それに、家じゃ一緒に洗ってるじゃない。何を今さら……」
「そうなんですか!」
 そういうのも人形達がやっていたので、ユタは全く気が付かなかった。
 ユタに与えられた部屋は風呂とトイレは付いていなかったが、風呂に入っている間に人形達がそれまで来ていた服を持って行ってしまうのである。
 そして洗濯されて、自分の部屋に畳まれて置かれているといった感じだ。
 マリアが魔道師の“人形使い”になった所以は、人を動かして自分は手を汚さない怠惰の悪魔と契約したからであるが、それが離れた今でもその魔法を使用している。
 言われた通り、一緒の洗濯機を使う。
 お金を入れると、終了時間がカウントダウンされる。
「38分後?中途半端だな……」
「まあ、そうですね。終わるまで待ってましょう。それとも……やっぱり買ってこようかなぁ……」
「何が?」
「明日の電車のキップですよ」
「あー。じゃあ、師匠からカード借りよう」
「部屋に戻るんですか?」
「多分、カフェテリアだと思うよ」
 マリアがそう言うと、さっきユタ達が朝食を取っていた会場に向かった。

 案の定そこにイリーナが遅い朝食を取っていて、事情を話すと、クレジットカードを貸してくれた。
 あのプラチナカードだ。
「さすがマリアさん」
「まあ、師匠とは長い付き合いだから……」
「このカード……。イリーナさんは、どうやって……」
「師匠ともなると、表から裏から色々なパイプができる。中には、カード会社の重役と繋がるパイプもあるのだろう。請求先の口座もそうだ。ちょっと師匠が予知したり、占うだけで大金が入金されてくる」
「凄いですねぇ……。それなのに、飛行機は墜落させられたんですね?」
「それだけ“魔の者”は凄かったというべきかな」
「うーん……」
 ホテルを出て旭川駅に向かう時、ユタはさっきから気づいてはいたのだが、やっと口に出せた。
「あ、あの、それより……その……」
「ん?ああ、これ?」
 マリアはユタの視線の先に気づき、自分も視線を上に向けた。
 そこにあるのはカチューシャ。
「早速、使わせてもらってるよ。いい着け心地だ」
「よく似合ってますよ」
「ありがとう。まあ、師匠から、『10代の魔法使いが着けてそうなデザインだねぃ……。まあ、それが似合うんだからいいんじゃない』って言われたんだけど?」
「ええっ!?」
 若く見られるのはいいことだという意味でイリーナは言ったのだと思うが、マリアには、『子供っぽい』と言われたような気がして、一瞬ムカッときたそうである。
「ぼ、僕はいい意味で選んだつもりですけどぉ……!」
「それを信じるよ」
 実際、金髪碧眼で、緑系や青系の服を着ることが多いマリアにとって、コントラスト的にマゼンタのカチューシャは合っていた。
(もう少し、赤っぽい方が良かったかなぁ……)
 と、ユタは思ったのだが……。

 昨日の雨で路面が濡れている中、取りあえず駅に向かって歩く2人だった。
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“大魔道師の弟子” 「旭川滞在」 6

2015-04-29 15:47:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月22日10:30.天候:雨 北海道某所・ヤノフ城跡 イリーナ・レヴィア・ブリジッド&大師匠ダンテ・アリギエーリ]

「あー、こりゃまた随分ハデにやったねぇ……」
 黒いローブにフードを深く被ったダンテが苦笑いした。
「ワザとじゃないですよ」
 イリーナは言い訳するように言った。
「それで、どうなの?これは私達の勝利ってことでいいのかしら?」
「そうだねぇ……」
 城の裏手にある断崖絶壁。
 2人の大魔道師は無重力空間のように、下に舞い降りた。
「あー、こりゃ見事に逃げられた感じだ……」
「マジで!?」
 ダンテは川底から魔法の杖で、白骨死体を引き上げた。
「これが、あのヤノフ?」
「……に、取り憑かれたマリアンナ君のお祖父さん、セイカー氏だ。もっとも、取り憑かれて数年で死亡したようなものだから、結局キミ達が会った時点で、完全にヤノフ侯爵に取り込まれていただろうね」
「崖から死体が落ちる瞬間に抜け出して逃げた?」
「はい、正解。そしてまた新たな拠り所を探している」
「ユウタ君……!」
「といっても、相当消耗したと見える。しばらくは襲ってこないと思うね」
「余裕で抜けたのなら、死体すら残さないものね」
「そういうことだ」
「眷属達はどうなったのかしら?」
「この瓦礫の下敷きか、生き霊として引っ張ってこられただけなのなら、消えただけかのどっちかだね」
「なーんか、してやられたって感じだねぇ……」
「まあ、マリアンナ君を諦めさせたんだから、そこは良しとしようじゃないか。……子宮が使えないことがバレたのは、ちょっと痛かったがね」
「生け贄として使えなくなってるだけで、普通に産めるはずだよー」
「だからさ……」
「ユウタ君も狙われないように、早くマリアと一緒になって、貞操を手放してもらって……」
 イリーナが焦るように言ったものだから、ダンテは呆れたような顔になってツッコんだ。
「別に、男の童貞は悪魔も狙って来ないと思うよ?」

[同日同時刻 旭川市内ビジネスホテル 稲生ユウタ]

「色々買って来ちゃったなー……」
 ユタはビニール袋を手にホテルに戻り、マリアの部屋に向かった。
 他の客室は清掃作業が行われていたが、マリア達の部屋は『起こさないでください』表示でやっぱりスルーされている。
 ユタは部屋をノックした。
「せめて、ドアくらい開けてくれないかなー……」
 と思っていたのだが、ドアを開けてくれた。
 ジッとユタを見据えるミク人形(人間形態)。
「あっ、あーっと……。これ、マリアさんに……渡してくれる?」
 すると、ミク人形はドアを大きく開けた。
「だ、大丈夫。僕は入らないから……あっ!?」
 だが、意外にもミカエラに腕を掴まれて引っ張られ、後ろからミカエラに背中を押される形で部屋に強制入室させられた。
「えっえっえっ?いいの?」
 そして両脇を抱えられ(人間形態の人形達は概ねユタより身長が高い)、マリアの前に引き立てられた。
 マリアは上半身を起こした。
「あ、あの……具合、大丈夫ですか?」
「ああ……少し、熱っぽいだけ」
 その割には、随分と顔が赤い。
「これ、冷却シートです。濡らしたタオルより、使い勝手がいいと思います」
 ユタは箱から冷却シートを1枚出すと、
「じゃあ、ちょっと貼りますんで」
 そう言って、マリアのおでこにシートを貼った。
「……うん、冷たい」
「あと、これが薬です。何か、食べられますか?」
「……その果物がいい」
「あ、はい」
 ユタが袋から取り出すと、
「あっ?」
 ヒョイとミカエラがリンゴを取った。
 そして、手持ちの(……!?)果物ナイフで器用に皮を剝いた。
「ユウタ……」
「はい?」
「その……ありがとう」
「えっ?」
「城で捕まった時、助けに来てくれたでしょ?」
「あ、ああ……何か、最初に着いたの、僕でしたねぇ……。でも、殆ど攻撃できた感が無いんですけど……」
「いや、そんなことない。きっと、“魔の者”も思い知ったはずだ」
「そう……ですかね」
「うん。師匠から概要は聞いたけど、ここは旭川市のホテルなんだな?」
「そうです。ヤノフ城が崩れる直前に、藤谷地区長がヘリで迎えに来てくれて、それで脱出しました。ここの市内にヘリポートがあって、そこに着陸した後、藤谷組の事務所で休ませてもらって、このホテルに入ったわけです」
「なるほど……」
「明後日の飛行機で帰りますから、それまでゆっくりできます」
「また羽田経由?」
「いえ。もう松本空港が再開されたんで、そのまま松本空港行きの飛行機です」
「そうなんだ」
 クラリスが切ったリンゴを差し出した。
「これを食べて、その後で薬を飲んでください」
「ああ。聖水を飲んだから、もう少しで魔力が回復すると思う。そしたら、すぐに治るはずだ」
「無理はしないでくださいね」
「ああ」
「あっ、そうだ。ちょっと待っててください」
「?」
 ユタは何か思い出したように、一旦マリアの部屋を出た。
 そして自分の部屋に取って返すと、何かを持ってまたマリアの部屋に戻った。
「なに?」
「もうだいぶ過ぎてしまいましたけど、これ、誕生日プレゼントです」
 マリアは目を見開いた。
「大したものじゃありませんけど……」
「な……」
 マリアが受け取った紙袋を開けると、中に入っていたのはカチューシャだった。
「マリアさん、よく着けてるので、これでいいのかなぁと……」
 マゼンタ色で頭に装着すると、自分から向かって左上辺りに小さなリボンがあしらわれている。
「! そういえば、いつの間にか、いつものカチューシャが無くなりましたね」
「どうやら、あの戦いで無くしてしまったらしい。だから……ちょうど良かった。ありがとう……」
 マリアはユタからもらったカチューシャを抱きしめた。
「早速、明日から着けさせてもらうね」
「明日?」
「見ての通り、ずっと寝てたせいか髪がボサボサで……。シャンプーもしてないし……」
「あー……そうですよね」
「ゴメン」
「いえ、いいんですよ」
「師匠とは会った?」
「何か今日と明日は、お客さんと会うからって……」
「……ああ、そうか」
「じゃあ、僕はこれで……。あ、もちろん、ホテルに基本いますけどね。何かあったら、呼んでください」
 ユタは椅子から立ち上がった。
「あの……ユウタ君」
「はい?」
「おかげで、元気が出てきそう。明日には治すから……」
「ムリはしないでくださいね」
「ありがとう……」

[同日18:00.旭川市内の某レストラン ユタ、イリーナ、ダンテ]

「マリアねぇ、泣いて喜んでたよー。『初めて男の人からプレゼントもらった』って」
「ほぉ……。稲生君も隅に置けないようだねぇ……」
 2人の大魔道師、イリーナはニヤニヤ笑って言い、ダンテはほっこりした顔で反応した。
「い、いえっ、僕はその……!」
「いいんだよ。これからもこの調子で、仲良くやりなさい。『仲良きことは美しき哉』、ダンテ一門の訓辞だよ」
 さすがに食事時はフードを取るダンテ。
 その下の顔は、50代前半くらいの白人男性といった感じだった。
 これとて変身中の顔で、素顔ではないという。
「これで、しばらく“魔の者”が姿を現すことはないだろう。今のうちに長野に戻り、奴らが手出しできないくらいに修行を積みなさい」
「はい」
「頑張りますわ」
「……イリーナは、魔の者に後ろを取られた説教を後でしようか」
「ええっ!?だからぁ、あれは想定外だって……!」
「弟子連れというわけでもあるまいに、のんきに飛行機で帰ろうとするからだよ」
(1人前になっても、師匠からのお説教ってまだあるんだなぁ……)
 ユタは2人の大魔道師のやり取りを見ながら苦笑いをした。
コメント (3)
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“大魔道師の弟子” 「旭川滞在」 5

2015-04-28 19:33:34 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月22日07:00.天候:雨 旭川市内のビジネスホテル マリアンナ・スカーレット]

 25年間の人生が走馬灯のように駆け巡る夢。
 10代後半は地獄のような内容だったが。
 しかし最後に現れたのは、ユタの笑顔だった。
「……!」
 そこで目が覚めた。
「……?……?」
 マリアは今一瞬、自分がどこにいるかが分からなかった。
 頭と体が重い。
 やっとこさ重い頭を動かして右を見ると、そこには師匠のイリーナが寝ていた。
「……へへ……さすがにそれは食べれないよ……」
 何か、ご馳走をたらふく食べている夢を見ているようだ。
「くっ……は……!」
 マリアは重い体をよじらせて、何とか起き上がった。
 まるで地球の引力がメチャクチャになったかのような感覚が襲う。
 部屋が薄暗いのはカーテンが閉まっているからなのと、外の天気が悪いからだろう。
 時計を見ると、もう朝の7時を過ぎていた。
「師匠……朝ですよ……。起きてください……」
 マリアがボーッとする頭を抱えながら、イリーナを揺り動かした。
「……ご馳走いっぱい……お金もいっぱい……こんなに沢山……困っちゃう……」
 しかし、相変わらずヘラヘラした顔で寝言を言うイリーナにイラッと来たマリア。
「師匠!」
 イリーナの赤いセミロングの髪を引っ張った。
「いい加減起きろ!」 
「いででででっ!?……てことは、夢じゃ……なひ……」
「…………」
 マリアは目を開けているのに、まるで閉じているかのような闇に襲われ、再び自分が寝ていたベッドに倒れ込んだ。

[同日同時刻 ホテル最上階・大浴場 稲生ユウタ]

 最近のビジネスホテルには、温泉を引いて大浴場を設けている所が散見される。
 人工温泉でもってそういった施設を設けているホテルがある昨今、天然温泉を引いて、それを公式サイトなどでPRするホテルも見受けられるようになった。
 ユタは大浴場の湯船に浸かりながら、
(たまにはこういう朝風呂に浸るのもいいだろう。うちの魔道師さん達、意外と温泉好きだから、後で教えてあげよう)
 昨夜、イリーナにも教えてあげたかったのだが、ほろ酔い加減でホテルに戻ったこともあり、そんなヒマは無かった。
 それどころか、
『マリア、いい感じに寝てるよー?今のうちにヤッちゃえ、ヤッちゃえ(≧▽≦)! 夜這いプレイだお♪』
 などと焚き付ける始末。
 何故か一緒に盛り上がっていた“色欲の悪魔”アスモデウスがいたような気がするが、気のせいだったということにしておく。
『あなたは本当に師匠ですか!』
 と、ツッコんでおいたが。
「しっかし……」
 湯舟から窓越しに外が見えるのだが、今日も天気は悪いようだ。
(今日、マリアさんが目を覚ましたら、色々歩きたかったのになぁ……。残念だ)
 ユタは湯舟から出ると、軽くシャワーで流して、それから脱衣所に出た。
 昨日の夜だが藤谷からメールがあって、例の航空チケットをこのホテルに送ってくれたらしい。
 昨夜の今日だから、今日の午後にでも着くか。それとも、明日だろうか。

 朝風呂を楽しんだ後は、そのまま朝食会場に向かう。
 どうせイリーナもマリアも、まだ起きていないだろうからと……。

[同日09:00.ホテル12F ユタ&イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 自分の部屋に戻ろうとすると、そこでイリーナと会った。
「あっ、先生。おはようございます」
「うん、おはよ。……あのね、マリア起きたよ」
「えっ、本当ですか!?」
 ユタはパッと顔を明るくした。
「でもまだ具合が悪いみたい」
「やっぱり、魔力が回復していないと?」
「それもあるんだけど、普通に風邪とかそんな所かもね」
「ええっ?」
「熱もあるから、ちょっと薬を調達して来るわ。あの商店街に行けば、ドラッグストアくらいあるでしょ」
「それこそ、病院の方がいいんじゃないですか?」
「魔力が回復すれば、あのくらいの体調不良すぐに治るんだけどね。今からポーリンに頼んだんじゃ時間掛かるし、ふんだくられる結構高いから、ドラッグストアで売ってるヤツでいいと思うよ」
「魔力が回復する見込みはあるんですか?」
「うん。それこそ、あの聖水よ」
「聖水……?ああ!」
「もう目は覚めてるんだから、飲むこともできるでしょ」
「た、確かに……。だったら、僕が買ってきますよ」
「そう?じゃあ、お願いね」
「食事は……できそうに無いですか?」
「そうねぇ……。ユウタ君だったら、風邪引いて熱が出た時、何が食べたいかを考えて、それを買ってきてくれればいいと思う」
「なるほど!」
 ユタはイリーナからEdyを借りると、それを持ってエレベーターに乗り込んだ。
 しかしアメックスといい、Edyといい、一体イリーナは何枚のカードを持っているのだろうと思う。
 1つ言えることは、それのおかげで現金をあまり持ち歩いていないということだ。
 昨夜のジンギスカン鍋も、イリーナがカードで支払っていた。
「ん?先生?」
 イリーナも一緒にエレベーターに乗り込んだ。
「ああ。今日と明日は多分、私宛てに来訪者が何人か来ると思うの。マリアはあの調子だから部屋には入れないし、ロビーで待つことにするわ」
「そうなんですか」
「マリアは人形達が見てくれてるから大丈夫よ」
 魔力はイリーナがカンパした。
 それで人間形態になったミク人形とハク人形が、付きっ切りで看病することになった。
(……てことは、僕はまた部屋にすら入れてもらえない、か……)
 ユタは苦笑した。

 ロビーに下りてフロントに向かい、そこで近隣のドラッグストアーとスーパーの場所を聞いた。
 コンビニの場所は把握していたが、そこよりもスーパーの方がいいと思ったのだ。
 ついでに傘を借りて、ユタは何度目かの市街地に繰り出した。

 雨がざんざか降っているわけだから、さすがの北海道にも春が訪れたと見るべきだろう。
 気候だけなら、まるでアルカディアシティにいるかのような雰囲気だった。
 そういえばアルカディアシティも札幌や旭川のように、碁盤の目に街が作られている。
 そこを縦横無尽に路面電車が走り、地下鉄も走行している。
 まっすぐ走っていると思ったら、急なカーブを曲がったりしているのは碁盤の目を走る地下鉄ならではだった。
 昔はここも路面電車が走っていただろうに、今はその名前を冠しただけのバスが通りを走っている。

 この町を離れるまで、あと2日。
コメント (9)
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