ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

小説の途中ですが、ここで普通の日記をお送りします。 0929

2014-09-29 21:44:16 | 日記
 三つ子の魂百までとは良く言うもので、私の生来の不器用さ、要領の悪さは子供の頃からである。
 そして今でも、それは変わらない。
 恐らく一生ものであろう。
 だからこそ、早くこの損な人生を終わらせたいのだが、なかなか事故死・病死できずにいる。
 自殺はしない。
 地獄界でキノのような獄卒に拷問されるのが目に見えている。
 私のような人間こそ、御嶽山にて火砕流に巻き込まれるべきだったのだろうが、こういう人間に限って何も無いものだ。
 実に余の中、理不尽にできているものである。

 さて、不器用さ、要領の悪さが露呈しているのは何も世法だけではない。
 仏法においても同じこと。
 よくよく考えたら、御指南の中に、
「社会的に信用される人間になりなさい」
 とある。
 それをよく考えず、
「普段着の折伏ならいいだろう」
 と、安易に仏法の話を周囲にしてしまったのが運の尽きだったようだ。
 私の今の立場は、はっきり言って悪過ぎる。
 そんな状態で仏法の話をしても信用されないばかりか、却って逆縁者を増やすだけだということに何故気づけなかったか。
 誓願という数字を目の前にぶら下げられたからと、宗門のせいにするのは簡単だが、それに安易に踊らされた私にも非はある。

 未だ社会的地位や信用を確立していない方、且つ器用性・要領性に自信の無い方におかれては、私を反面教師にして頂き、更なる立場の悪化を防いで頂きたい。
 それは顕正会にも言えること。
 顕正会は団体そのものが信用の無い状態であり、新規入信者を増やすことよりも、信用の回復を急ぎ、脱会者を防ぐ方を優先した方が良いと思う。

 取りあえず、今日はそれだけ訴えたい。

「折伏を しても仏罰 顕れる 罪障消滅 その名を借りて」
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“ユタと愉快な仲間たち” 「エルダー・ツリー」

2014-09-28 19:40:19 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月29日12:00.富士山の麓の森(静岡県側) 稲生ユウタ、威吹邪甲、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット]

 洞窟を抜けると、そこにも森は広がっていた。
「獣の気配はしないな……」
 威吹は鼻をフンフンとヒクつかせた。
 俗にエルフ耳と呼ばれる長く尖った耳を済ましてみても、鳥の鳴き声や風によって揺れる木々の枝の音しかしない。
「もう少しで着くからね」
 イリーナがユタに微笑みかけた。
「威吹、もうすぐだって」
「おう」
「……というか、もう着いた」
 先頭を歩いていたマリアが足を止めた。
「これですか。でっかいですねぇ……」
 ユタはその木の根元からてっぺんまで見上げた。
「樹齢は約1000年。まあ、私と同じだね」
 と、イリーナ。
「樫の木がこんなに大きくなるなんて……」
「枝切りくらいなら手伝うぞ?」
 威吹はスラッと脇差を抜いた。
 先ほど野犬達を何頭も斬って血と脂に塗れたが、けして安物のナマクラではないらしく、持参した手ぬぐいで拭き取ると、また使用前の刃の輝きを放つのだった。
「大丈夫よ。私が絶妙の話術で“交渉”するから」
「は?交渉?」
「さっきからうるさいババァじゃの……」
「うわっ!木が喋った!?」
 ユタは飛び上がらんばかりに驚いた。
「だから、ただの木じゃないんだって。これは“エルダー・ツリー”。魔界から苗が移植されて育った木よ」
「魔界!?それで樫の木がこんなに……って、人間界に移植して大丈夫なんですか?」
「この木だけじゃないから。他にもそういう木があるわ。“となりのトトロ”見た時、あの木が生えている場所に向かってみたけどね。ただのフィクションだったみたい」
「当たり前ですよ!(……ってか、“となりのトトロ”の大木って、何だったっけ?樫じゃないよな???)」
「新しい弟子を紹介するわ。マリアンナ・スカーレットよ。かわいいでしょう?」
「は~い」
「ユタは返事しなくていいの!てか、かわいさは関係無いだろ!」
 威吹はツッコまずにはいられなかったようだ。
「相変わらず、ぶっ飛んだババァよの。お嬢さん、わしに手を当ててごらん」
「はい」
 マリアは木の幹に手を当てた。
「ふむ……。まだ未熟な所が多々あれど、将来的有望性を感じる。お前さんにしては、良い目利きじゃ」
「そりゃ1000年も魔道師やってりゃ、目も肥えるわよ」
「違いない。良かろう。この娘には資格ありと見た。わしの枝をくれてやろう」
「さすが、エルダーね。どう?巧みな話術で交渉成立」
「はい」
 ユタは頷いたが、
「……どこに話術があったんだ?」
 威吹は訝し気な顔をした。
「お前の弟子が実力試験に合格しただけの話だろう?……とにかく、交渉成立したってんなら、枝切るぞ」
「妖狐よ、それには及ばん」
「む?」
 エルダー・ツリーは自ら枝を折り、それをマリア達の前に落とした。
「持って行くが良い。将来有望の魔道師よ」
「ありがとうございます」
 マリアは枝を拾い上げた。
「……あの、蜘蛛が網を張り掛けだったようなんですけど?」
 枝の先にはびっくりして、手足を縮めているジョロウグモがいた。
「初回特典付きぢゃ!」
「誤魔化してんじゃないわよ、ジジィ!」
「かつては妖力を持って人間を食らっていた蜘蛛妖怪も、今ではただの蜘蛛か……」
 威吹は慌てて逃げ出すジョロウグモを哀れな目つきで見送った。
「妖怪だったの?」
 ユタは目を丸くした。
「ああ。オニグモとジョロウグモはボクが封印される前、夜は妖力を解放して人間を捕食していたヤツがいた。富士の山裾ですら、もう妖気を持つことはできないようだな」
「“まんが日本昔ばなし”にも、蜘蛛の妖怪が襲ってきたのを旅の僧侶だか侍だかが倒した話が出て来るけど、それか」
「それは妖狐よ、お前も同じことだぞ」
 エルダー・ツリーが言った。
「妖狐族の殆どは人間界を引き払い、魔境や魔界に移住しておる。住む場所が無いのは、お前も同じことじゃぞ?」
「そんなことはないさ。オレは下等な虫妖怪とは違う。それより、この近くに朴の木があると聞いた。オレの刀の鞘にしたいのだが、何処だ?」
「ああ。それなら、向こうにあるよ」
「ワシが朴の者共に申し伝えておく。ちょうど、枝切りをしてもらいたかったところのようじゃ。何本でも持って行くが良い」
「かたじけない」
 威吹はすぐに現地に向かった。
「それと、そこの青年」
「はい?」
「汝も、我が幹に手を当ててごらん」
「ええっ?僕は枝いらないです」
「いいから、ユウタ君。エルダーのジジィの言う通りにしてみて。そこは木だから、取って食うことはないから」
「は、はあ……」
 ユタは幹に手を当てて見た。
「ふむ……。これもイリーナ、お主の見立てか?」
「そうなんたけど、先約があるみたいでね、首を縦に振ってくれないのよ」
「巧みな話術で勧誘成功させると前に言っていたではないか」
「は!?」
 ユタはイリーナを見た。
「余計なこと抜かすと、根元から切り倒すわよ!」
 イリーナはエルダー・ツリーを睨みつけた。
「青年よ。お主には見所がある。もし魔道師を志す運命に従い、ある程度の修行を積んだら、わしの枝を譲ろう」
「は、はあ……」
「そこの魔道師見習とお揃いぢゃ」
「え?」
「な……」
 マリアは顔を赤くした。
「うちの弟子をからかうのはやめてちょうだい!」
 イリーナは同世代の巨木に強く抗議したが、老木は、
「では、さらばだ」
 と、逃げた。
「ったく。このジジィは……」
「ははは……」
 ユタは苦笑い。
「でも、枝だけもらってどうするんですか?ちゃんとした杖に作らないとダメなんですよね?」
「ああ、それは心配無いわ。ちゃんと職人にあてがあるから」
「へえ……」
「威吹君が戻ってきたら、引き上げましょう」

[同日14:00.静岡県富士宮市某所 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

 威吹は朴の木から枝を10本も切ってきたらしい。
 上質な枝だと喜んでいたが、そんなに一体どうするのか。
 というか、どこにしまったのか気になったが、聞く気になれなかったユタだった。
 富士宮市某所とはしたが、場所的にはバスの営業所に近い所にあった。
「意外な場所に職人さんがいるんですね」
「そうだね」
 意外なことに職人は女性。
 見た目はイリーナと同じくらい。
 イリーナやポーリンの師匠系統の魔法使いではないとのこと。
 それでも交流があるようだ。
「魔法使いほど変人はいないんだから、いつまでも仲違いしてちゃ窮屈なんじゃないの?」
 と、イリーナからマリア用の杖の製作を依頼された女性職人はイリーナに言った。
 どうやら、イリーナとポーリンの仲の悪さは、他の魔法使いにも有名らしい。
「もっとも、『ケンカするほど仲がいい』ってヤツ?」
「ご想像にお任せするわ」
 イリーナは職人の言葉を上手くかわした。
「それじゃ、9月にまた来るわ」
「意外と普通の工期なんですね」
 と、ユタは思った。
「まあね」
 職人はマリアの両手を見ていた。
「妖刀作りと似ているな」
 と、威吹。
「そうなの?」
「ああ。ボクもこの刀を作ってもらう時、鍛冶師に『手を見せろ』って言われたね」
「へえ……」
「ま、こっちは作ってもらう身。納得が行くまで見せたさ」

 製作に入ると、あとは素人の4人に出る幕は無い。
 完成後の9月にまた来ることにし、4人は職人の工房をあとにした。
 そして、ここからは普通にタクシーを拾い、予約していた宿泊先へと向かった。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「彼岸帰航」

2014-09-27 19:27:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月29日09:40.東名高速下り線・足柄SA 稲生ユウタ、威吹邪甲、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット]

 バスは東名高速でも大規模で有名な足柄サービスエリアに入った。

〔「足柄サービスエリアに到着です。こちらで10分間の休憩を取らせて頂きます。発車は9時50分です。時間までにお戻りくださいますよう、よろしくお願い致します」〕

 バスが専用駐車スペースに止まると、大きなエアー音がしてドアが開いた。
「ちょっと降りてみましょうか」
「ええ」
 ユタとマリアはバスを降りた。
「うーん……ここまで来るとさすがに雨は降ってないけど、まだ曇ってるなぁ……」
 その為、天気が良ければ記念撮影をする人を必ず見かけるほど富士山がよく見える場所だが、今現在は雲に隠れてしまっている。
「お前の師匠、寝言言いながら寝てたんで置いてきたぞ」
 後から威吹が眉を潜めて言った。
「ああ。別にいいぞ。何か言ってたか?」
「火山が爆発するって言ってたな」
「それ、富士山かい!?」
「いや、おおかた魔界のスーパーグレート火山だろう。ていうか、しょっちゅう噴火しているんだが、あそこ」
 アルカディア王国に地熱エネルギーを供給している火山で、王国全体が常春の陽気なのもその火山の活動が理由。
 富士山の活動と連動しているという噂が……?

[同日09:50.東名高速下り線“やきそばエクスプレス”1号、車内。 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

〔……次は東名富士、富士です〕

 バスが再び東名高速の本線に入る。
 10分程度の休憩では、せいぜいトイレの利用で終わる。
「長野の……御嶽山……」
「あ?」
 威吹は隣に座るイリーナの寝言が耳に入って、訝し気な顔をした。
「藤谷班長も前乗り目的で、富士宮に向かっているみたいですね」
 1つ前の席にユタは自分のスマホを見ながら言った。
「班長だけじゃなく、栗原さん達も一緒か。熱心だなぁ……」
「観光目的とかじゃないの?」
「それもあるのかな?まあ、いいや。『こちらは足柄SAを出たところです。お気をつけて』と返しておこう」
「昔は魔法の1つだったものが、今では科学でできる」
「そうですね」
「『魔法は今や絶滅寸前、時代遅れだが、無いと困るもの』だそうだよ」
「誰の受け売りですか?」
「師匠。引いては大師匠」
「無いと困るもの……」
「鉄道で言うならSL、バスならボンネットバスじゃないか。絶滅寸前、時代遅れの乗り物なのに、何故か今でも存在する。それはどうしてだろう?」
「確かに無いと困るわけではないですどね……」
 だからこそ、JR東海ではSLを全廃してしまった。
「魔法は『無いと困るもの』なんだそうだ」
「そうなんですか」
「何が、無いと困るのかは私も分からない。でも、私にはこれしかない。だからユウタ君が羨ましい」
「えっ?」
「私には……師匠もだけど、魔道師になるに当たって、捨てる物なんて無かった。だけど、ユウタ君には捨てるものがある。それがあるのは羨ましい」
「なるほど……」
「師匠は急いでほしいみたいだけど、私は焦らせるつもりは無い。だから、よく考えて」
「分かりました」

[同日10:50.静岡県富士宮市ひばりヶ丘 富士急静岡バス富士宮営業所 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、富士宮営業所です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

「御開扉のある日なら、大石寺の第2ターミナルまで行ってくれるんですけどね。今日は金曜日で、違うからなぁ……」
 但し、その後運行される“やきそばエクスプレス”3号は御開扉の有無に関わらず、大石寺を経由する。
 終点が白糸の滝の為。日蓮宗・本門寺入口バス停も通る。
 営業所建物の脇にバスが止まる。
「お世話様でしたー」
 バスを降りて、今度は荷物室から荷物を下ろす。
「随分大きい荷物だが、一月分か」
 威吹が両手にキャスター付きバッグを抱えた。
「おー、ありがとー。さすが威吹君は力持ちだねぃ……」
 イリーナは感心した様子で言った。
「で、この後はどう行くんですか?バス?タクシー?」
「いや、魔法で行くよ。ここからなら、私も魔力の消費が少なくて済むからね」
「え?」
 マリアは件のバッグの蓋を開けた。
 意外にも、そこには何も入っていない。
「はい、ユウタ君。この中に入って」
「へ!?」
「ほーら、威吹君も」
 イリーナはもう1つのバッグを開けて、そこに威吹を誘導した。
「な、何を企んでいる!?」
「だから、魔法で現地に移動するんだって」
「何がだ!」
 ほぼ強制的に押し込められる2人だった。

[同日だと思うが時刻不明。多分、昼。青木ヶ原樹海ではないと思うが、どこかの森の中 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

「はい、到着ぅ!」
 しばらく真っ暗な中を漂ったと思ったユタだったが、外からイリーナの陽気な声が聞こえて来た。
 そして、バッグの蓋が開けられ、
「!」
 鞄の中から這い出たユタの目の前に広がっていたのは、鬱蒼とした森の中だった。
「ここはどこですか!?」
「富士山の麓の森の中よ」
「青木ヶ原樹海!?」
「……ではないね。まだ静岡県内だし」
 イリーナは上空を見上げて言った。
「ここがそうなんですか?」
「実は、もうちょっと先なのよ。でも大丈夫。近いからね」
「それより早く出せ!」
 もう1つの鞄が、まるでディズニーのアニメのように暴れ回った。
「この先に天然のトンネルがあるから、そこを通って行くと近いのよ」
「トンネル?通って大丈夫なんですか?」
「天然の洞窟みたいなものでね。大丈夫。この森に棲む動物達くらいしか通らないから」
「なるほど……」
「外よりも涼しいと思うわ」
「それはいいですね」

 ようやく鞄から出た威吹。
「おい、荷物はここに置いて行くのか?」
「大丈夫。取られたりしないから。こういう森に好き好んで入って来るお間抜けさんはいないと思うわ」
(それ、僕達のことじゃ……?)
 という素朴な疑問をユタは打ち消した。
 少し行くと、まるでファンタジーゲームのダンジョンのような洞窟の入口が現れた。
「ここ、ですか?」
「そう。ここ」
「何か出そうですね」
「動物くらいしか出ないわよ」
(その中にはコウモリとかゲジゲジとかいるんだろうなぁ……)
 そう思いつつ、ユタは魔道師達の後をついて洞窟の中に入った。
「そんなに足場は悪くないと思うよ」
 と、マリア。
「ああ、そうですね」
 とはいうものの、時折段差があって、そこを飛び降りたり、逆によじ登ったりする箇所があった。
 なるほど。これなら確かに大きな荷物を持っては通れない。
「獣の臭いがする」
 威吹が鼻をヒクつかせた。
「アオオオオン!」
「い、犬の鳴き声!?」
「野犬がいるのか?」
 だがその犬は1頭や2頭ではなく、
「群れかよ!」
 しかも何故か威吹は脇差を抜いた。
「! 気をつけて!このコ達、魔法で操られてる!」
「なにっ!?」
 襲い掛かって来る野犬達。
 威吹は脇差を振って、野犬達をバッタバッタと切り倒した。
 本差は妖刀で、妖気を孕む妖怪しか斬れないため、それ以外の敵を倒す場合は脇差を使用する。
 脇差は妖刀ではなく、真剣だからだ。
「師匠、これは一体……!?まさか、ポーリン師が!?」
「いいえ。ポーリンは動物を操る魔法はできないはず……」
「ガアアアッ!」
 数が多くて威吹でも掃い切れない個体が、魔道師達に向かってくる。
 イリーナはポケットの中から、少し大きめのビー玉のようなものを野犬達に投げた。

 ピコーン!ピコーン!ピコーン!

「何ですか、あれ!?」
 ユタがイリーナに聞いた。
「試作品のデコイよ。獰猛な動物達に襲われて、魔法を使うヒマも無い場合に使うんだけど……」
「何だ、これは!?」
「あ、動物って、もしかして威吹君も?」

 ドカーン!

「あ……」
「威吹!?」
 デコイが爆発した。
 特殊なアラームと光に吸い寄せられた野犬達が集まるが、妖狐(狐の妖怪)である威吹も吸い寄せられたのか?
 で、爆発した。
 野犬達は爆風に吹き飛ばされ、これでユタ達に襲い掛かって来る野犬の群れは一掃できたが、
「お……お前らなァ……!」
 さすがに威吹は無事だった。
 まあ、それなりのケガはしていたが。
「あー、ゴメンゴメン。マリア、回復魔法掛けてあげて」
「はい」
「一体、何なんですか、これは?」
 ユタが困惑した様子で言った。
「ちょっと、洞窟を出てみないと分からないねー」
 イリーナも肩を竦めて答える。
「早く出た方がいいと思うぞ。これは後で新手が来るかもだ」
 威吹はマリアに回復魔法を掛けてもらいながら言った。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「一方その頃……」

2014-09-27 15:29:09 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月28日13:00.埼玉県さいたま市大宮区 栗原江蓮の家 蓬莱山鬼之助&栗原江蓮]

{「キノ兄ィ、ツアコンさん達、明日、前乗りするってよ」}
「ご苦労さん」
 キノは自分のケータイで話していた。
 通話の相手は妹の蓬莱山魔鬼である。
「江蓮、次一緒に行ける場所見つけたぜ?」
「何がだよ?」
 江蓮は半袖を更に捲ったTシャツの上から、団扇をパタパタ扇いでいる。
「明後日、お寺行くんだろ?前乗りしようぜって」
「そんな金、どこにあるんだよ?」
「オレの作戦が成功すればよ、民宿代だけ捻出できりゃ、あとはタダだぜ」
「はあ?」
 キノはニヤッと笑った。
 口元からは鬼族ならではの牙が覗く。
「そういうわけだから、出発の準備しろ」
「何か心配だなー」
「あー?……ああ、そうか。もうそろそろだもんな」
「何が?」
「タンポンとナプキンとアレ用の下着は忘れるな」
「何で知ってんだよ、てめっ!」

[8月29日09:00.東京都区内某所 藤谷春人]

(稲生君達が前乗りするっつー熱心さを見せてくれた以上、上長の俺も見本を示さねーとな)
 藤谷は少し大きめのバッグを手に、自分の車が駐車されている駐車場にやってきた。
 シルバーのベンツEクラスである。
 但し、型落ちの中古車ではあるが。
「む?何か、妖怪の気配が……」
 さすが藤谷。ユタ達と付き合っていくうちに、自分も霊力が備わったか。
(……気のせいか。まあ、俺には氷奈がいるしな。いざとなりゃ、雪女郎連合会に泣きついて……)
 既に泣きつく先に指定していた。
 藤谷は左ハンドルの運転席のドアを開けた。
「!!!」
 そして分かる。けしてさっきの気配が、気のせいではなかったことに。
 一旦は現実逃避してドアを閉める藤谷だったが、パワーウインドーが開けられた。
 運転席にいたのはキノ、助手席には江蓮、リアシートには魔鬼がいた。
「藤谷、オレ達も連れて行ってくれよ?」
「お前ら!何で俺の車に勝手に乗ってんだっ、ああっ!?」
「はーい!」
 魔鬼は無邪気に笑って、金属片で作り上げた、車のキーを取り出した。
「鬼族をナメんなよ?」
「ぐぐぐ……!」
 危うくブチギレそうになる藤谷だったが、
(はっ!いかんいかん!俺はこれから、大聖人様の御元に向かう身。ここでこんな邪な妖怪達のペースに乗られては、俺の漢が廃る!)
 藤谷は冷静に深呼吸をした。
「とにかくだ。俺は“慧妙”にあるようなアポ無し折伏は嫌いだ。藤谷組も基本、アポ無し営業はやらねぇ主義だ。だから、キミ達のアポ無しはちょっと感心できんな」
「と、言うと?」
「キミ達の要望には応えられんということだよ。さーさー、降りてくれたまえ」
 しっしっといった感じで、藤谷は3人を車から降ろそうとした。
 一応は素直に車から降りる3人だったが、
「ほー。藤谷さん、あんた、そういう態度取っていいのかね?」
 キノは着物姿ではなく、私服を着ていた。
 藤谷に凄みながら、サングラスを掛ける。
「何がだ?」
「藤谷さん、あんたさぁ、あれだけ女嫌いを豪語していた割には、今はすっかり雪女とよろしくヤっているそうだな?」
「ふん。だから何だ?人生は変わる。宿命転換だ。仏法者として、当たり前の現証だ」
「無論、それに関してインネン付けようって話じゃねぇ。俺が言いてぇのは、こっちにはアンタの恥ずかしい情報があるもんで、それを読者の皆様方に公表すれば、あんたは一気に『ミスター行方不明』だ。それでもいいのかね?」
「読者って何だよ!?」
「魔鬼」
「はーい」
 キノは後ろに控えている妹の魔鬼を促した。
 魔鬼は相変わらず無邪気な笑顔で、キノにあるものを渡した。
 それはレコーダーだった。
「ダイジェストですら流せねぇくれぇの恥ずかしい内容だ。流してもいいのかね?」
「藤谷組には、やましい所なんて1つも無ェぜ!業務に関わる一切の法律には一分たりとも触れちゃいねぇ!」
「誰があんたの会社だと言った?」
「あ?」
「あんた自身のことだよ。……しょうがない。ここまでシラを切るってんなら、ダイジェストで流してやろう」

 ピッ。(レコーダーの電源を入れた音)
 ピッ。(そして再生)

〔(藤谷)「氷奈、昨夜は悪かったな?」
(氷奈)「いえ。人間の男の精を搾り取る雪女の私に、あそこまで女の悦びを教えてくれた人、初めてよ……」〕

「ほお。オレの知ってる雪女ってなぁ、白ギャル・ビッチの集団なんだが、そいつらに更なる女の悦びを感じ与えたと?意外に凄いヤリ【ぴー】ですなぁ?」

〔(氷奈)「激し過ぎて着物がビリビリになっちゃった……。後でまた新しい着物、取り寄せなきゃ」
(藤谷)「はっはっはっ!さすがにヤり過ぎたかな。潮だけでなく、オシッコも漏らしてたもんな。悪い悪い」〕

「ほおほお。雪女の着物がビリビリ?一体全体、どういうプレイをしたらそうなるのやら?あの加藤鷹監督も首を捻りそうですな?」
「ぐぐぐ……!」
 どうやら藤谷、やっと理解できたらしい。

〔(藤谷)「じゃあ、今日はお詫びに俺が……お前に浣腸してやろう❤」
(氷奈)「キャアアア!」
(藤谷)「いいじゃないか、いいじゃないか!早くパンツ脱げ」〕

「分かった分かった!連れてってやる!横浜でも小田原でも!」
「浣腸した後は、どうなさるおつもりだったのですかな?その場で脱糞?それとも再びパンティをはかせて、そのままお漏らしプレイですかな?この続きはレコーダーの中に……」
「わーっ!分かった分かった!一緒に参りましょう!大聖人様の御元へ!」
「全く。手こずらせてくれましたなぁ?」
「乗せてってやるから、せめて高速代かガソリン代くらいは……」

 ピッ。

〔(氷奈)「お、お腹が……。お願い……おトイレに行かせてぇ……」
(藤谷)「あー、よく聞こえないなぁ?」〕

「わーっ!わーっ!分かりました!タダで御奉仕させて頂きます!」
「これ以上、余計なこと言うと、それだけ恥を晒すことになるというとだけ伝えておく」
「は、はいっ!」
「因みにこの後、藤谷班長は村西とおる監督もビックリ仰天のセリフを……」
「しゅ、出発しまーっす!」

 車は駐車場を出発した。
「江蓮さん、どうして今の雪女さんは浣腸されてたの?」
 魔鬼が無邪気に聞いて来た。
 江蓮は顔を真っ赤にしながら、
「き、きっと便秘で大変だったんだよ。はは……ははははははは……」
「なーんだ!じゃあ、江蓮さんもキノ兄ィにやってもらうんだね?」
「え?」
「あ?」
 すると魔鬼は急に無邪気な顔から、悪鬼というか……つまりは牙を覗かせ、耳元で囁いた。
「だって、ここ2日間出てないんでしょ?浣腸なら家から持って来てるからね?」
(鬼族、怖ぇ……!)

 ユタ達の後を追う1台の車の中では、そんなやり取りがあったようである。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「いざ、富士宮へ」

2014-09-27 00:09:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月29日06:20.JR大宮駅・京浜東北線ホーム 稲生ユウタ、威吹邪甲、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の電車は、6時27分発、各駅停車、大船行きです。……〕

 平日朝の京浜東北線ホーム。
 普段の平日ならこの時間から多くの乗客で賑わうホームも、今日は比較的静かだった。
 ユタを含む学生が夏休みということもあるだろう。
 4人はブルーのシートに腰掛けていた。
 イリーナとマリアの荷物は大きい物で、人が丸まれば入れそうなキャスター付きバッグが2個だった。
「じゃ、着いたら起こしてねー」
 早起きが苦になりつつあるイリーナは、弟子達にそう言い残して仮眠モード。
「よく寝れますねぇ……」
 ユタは呆れるやら感心するやらであった。
「まあ、長年魔道師やってると……ね」
 そういうマリアは寝落ちすることなく、魔道書を広げている。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、大船行きです〕

「マリアさんは朝から熱心ですね」
「再び修行中の身となったからには、当然だろう?早くまた一人前に戻りたい」
「その意気です」
(マリアもユウタ君が近くにいるようになってから、頑張るようになったねぇ……)
 威吹を挟んで寝落ちしているはずのイリーナは、弟子とその彼氏のやり取りを聞いてそう思った。

[同日07:18.神田駅→東京駅、JR京浜東北線1号車内 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

 乗り換え無しで東京駅まで行けるとはいえ、かなりのんびりとした足取りだ。
 さすがに夏休み期間中といえど、そこは平日。
 山手線と並行して走る頃には、車内も立ち客が目立っていた。
 吊り革を掴む客の、電車が揺れる度に鳴る革ベルトの軋み音が聞こえて来る。

〔次は東京、東京。お出口は、右側です〕

「マリアさん、そろそろイリーナさんを起こした方がいいんじゃ……」
「そうだな」
 ユタの声にマリアは頷き、
「師匠、もうすぐ着きますよ。起きて下さい」
 イリーナを揺り動かした。
 しかし、
「うーん……。あと5分……」
「アホか」
「5分も経ったら、新橋か浜松町ですよ~」
 ユタは苦笑いした。
「師匠、早く起きないと、お醤油飲ませますよ?」
「!!!」
 弟子の声に、慌てて起きるイリーナだった。
(醤油が苦手なんだろうか?この人は……)
 とユタは思ったが、真偽の程は不明だ。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。お降りの際、車内にお忘れものなさいませんよう、ご注意ください」〕

 電車は東京駅のホームに滑り込んだ。
 ここで正式な意味での東北本線は終わり。
 ここからは横浜駅まで、正式な意味での東海道本線に入る。
 その境目の駅で、ユタ達は電車を降りた。

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます〕

 多くの通勤客や行楽客が行き交うホーム。
 ユタが1号車への乗車を強く勧めたのは、何も趣味なだけではない。
 大宮駅や東京駅ではエレベータに最も近く、且つJRバス乗り場である八重洲南口に最も近い車両だからである。
 大きな荷物を持っているだけに、エレベータはありがたい。
「まだだいぶ時間がありますが、どうします?」
「もちろん、朝食はちゃんと取らないとね」
 ユタの質問に、イリーナが片目を瞑って答えた。
「何でそこで、オレの方を向く?」
 威吹は含み笑いをする魔道師の師匠に、眉を潜めた。
「気にしない、気にしない」
「気になるっての!」
「ま、まあまあ。取りあえず、八重洲地下街に行ってみましょう」
 ユタは取り繕うように言った。

[同日同時刻 東京都江東区森下 ワン・スター・ホテル エレーナ・マーロン]

「ご利用ありがとうございましたぁ!」
 エレーナは住み込みで働いているホテルで、フロントの仕事をしていた。
 朝早くからチェック・アウトする宿泊客もいる。
 で、格安の宿泊料金と場所柄、外国人客も多く、魔法で語学堪能なエレーナは重宝されていた。
 宿泊客の姿が無くなると、机の上に置いてある水晶玉に手をかざす。
(マリアンナは、新しい杖を作りにお出かけか。私は魔界から持ってきたのがあるからなぁ……)
 週末は忙しくなるので、エレーナはしばらく出かけられそうに無さそうである。

[同日08:05.JR東京駅・JRバス乗り場 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

「うーん……。今日は絶好の行楽日和……」
 イリーナが呑気に空を仰いだ。
「……なワケねーだろ!」
 それにツッコミを入れる威吹。
 そう。東京駅周辺は雨が降っていた。
「関東地方は大気の状態が不安定で、1日中、降ったり止んだりの天気だそうです」
 ユタはスマホを見ながら言った。
「東海地方は晴れるみたいですよ」
「おー、それは良かった」

〔「今度の8番乗り場は8時10分発、“やきそばエクスプレス”1号、富士宮行きが発車致します。ご利用のお客様は、8番乗り場にお越しください」〕

「金曜日だから大石寺行きじゃないや」
 と、ユタ。
 頭端式のバスターミナルにやってきたJRバスは最新の年式のもので、大きなワイパーを規則正しく動かしていた。
 ここでは荷物室への荷物の積み込みは、ターミナルの係員がやってくれることが多い。
 LED表示板に『大石寺』ではなく、『富士宮営業所』と表示されている横のドアから乗り込んだ。
「ユウタ君。師匠が前」
 ユタが手持ちの乗車券に指定されている前の席に座ろうとすると、マリアが止めた。
「えっ?」
「こういう乗り物では、上位者が前。下位者は後ろ。師匠は師匠だし、年長。だから師匠が前で、私達は後ろ」
 するとイリーナは困惑と苦笑の交じった顔で言った。
「あちゃー……。こりゃまた高度なビジネスマナー覚えちゃったねぇ……。いいよ。アタシはそんなの気にしないし、ユウタ君と展望席で眺めを楽しみなー」
「それなら、オレがユタの隣に座る」
 威吹が1B席に座ろうとすると、マリアがサッと手持ちの魔法の杖で威吹をブロック。
 首に杖の柄を押し当てて、更に押し返した。
「師匠がそのように仰るのなら、それに従う。それが弟子というもの」
「何がだ、このアホ女!」
 威吹きは首を押さえながら抗議した。
 マリアがホッとしたような、それでいて顔を少し赤らめているのを見たイリーナは、
(無理しちゃって……)
 微笑を浮かべた。
「弟子の躾がなってないな!」
「はいはい。悪かったね~」
 威吹の抗議をさらっとかわすイリーナ。
 さすがにそこは、年の功である。
「年の功?」(←急に冷たい目つきになるイリーナ)
 あんたのことだよ。
「『地に潜む我が僕よ。今こそ魔の封印を解放せん』アペ、サタン、アペ、サタン、アレッペ。我に無礼なる発言せし者に我が魔法の裁きを……」
 わーっ!前言撤回します!さすがは、クール&ビューティーの大魔道師様でありまする!
「ふふっ、そうよね」
「さっきから何を独り言言ってるんだ???」
 威吹の首が傾げられたと同時に、バスは定刻通りに出発した。
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