[3月3日11:30.天候:晴 長野県大町市 某旅行会社支店]
旅行会社社員:「……と、JRのチケットですね」
稲生:「はい。何とか、お願いします」
社員:「少々お待ちください」
稲生は白馬村を出て、県内最寄りの市域である大町市に来ていた。
社員が稲生の依頼を受けて、何やら旅行商品を検索している。
その間、稲生は手持ちの鞄の中から、1枚の紙を取り出した。
それは原本ではなく、コピーであったが、そこにはこう書かれていた。
『イリーナ・レヴィア・ブリジッドへ。
此度、東アジア魔道団日本拠点リーダーとの会談があることは既知の通り。今回その随行員として任命する。尚、その直弟子2名についても随行を認める故、準備を怠ることのないように。
尚、羽田空港から現地へのアクセスについては全て任せる』
と。
こう書かれていることから、ついダンテは国内線で来るのかと思うだろうが、そうではない。
イリーナに言わせると、どうもイギリスから国際線で来るらしいのだ。
羽田空港は国際路線の数が増えたので、それで来るとのこと。
ダンテともあろう者なら、外国からでも魔法で瞬間移動できそうなものだが、いつもいつもそうするわけではないらしい。
社員:「お待たせ致しました。御希望のホテルと列車などがお取りできましたので、ご確認の方お願い致します」
稲生:「取れましたか!ありがとうございます」
社員:「それではまず、最初の列車が……」
[同日15:08.天候:晴 信濃大町駅→大糸線普通列車内]
稲生:「もしもし。あ、マリアさんですか?……ええ、僕です。何とか、予定通りの列車とホテルが取れました。……はい、支払いは全て先生からお借りしたカードを使わせて頂きました。……そうですね。今から電車に乗って帰ります。夕食までには戻りますから。……いや、大丈夫ですよ」
稲生はスマホ片手にチラッと、電車の中を見た。
ボックスシートには、既に稲生専属の随行員としてダニエラが着席していた。
稲生:「ダニエラさんという、最強のメイドさんがいますので。……ええ、それじゃ失礼します」
稲生は電話を切って、電車の中に戻った。
乗降ドアは半自動扱いなので、ドアボタンを押して自分でドアを開けることになる。
もちろん、乗ったら閉めるのがマナー。
〔「お待たせ致しました。15時8分発、普通列車、白馬方面、南小谷行き、まもなく発車致します」〕
2両編成のワンマン列車なので、肉声放送は運転士が行う。
あとは自動放送が流れるだけだ。
〔「4番線から、普通列車の南小谷行きが発車致します」〕
車掌の代わりに運転士が顔を出して、ホームの安全確認を行う。
各駅いつもそうするわけではなく、始発駅などで行うだけで、あとはホームに設置されているミラーや目視による確認だけだ。
地方の駅ではあまり駆け込み乗車してくる乗客もおらず、列車は静かに発車した。
〔今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は大糸線下り、白馬方面、各駅停車の南小谷行きワンマンカーです。これから先、北大町、信濃木崎、稲尾、海ノ口の順に、終点南小谷まで各駅に停車致します。【中略】次は、北大町です〕
車窓には雪景色が広がっているが、車内は暖房が効いて温かい。
稲生:「幸いにして予定通りの列車とホテルが取れたわけだけども、もしかして、これも魔法か何かなのかな?」
稲生がボックスシートに向かい合って座るダニエラに聞いたが、寡黙なメイドは無言で大きく頷くだけだった。
必要があれば喋るのだが、それ以外は無言そして無表情である。
このダニエラ、もしマリアの屋敷に侵入者があった場合、他のメイド人形達のようなザコキャラではなく、ちゃんと中ボスを張れるものと思われる。
稲生よりも強いはずだ。
だが、ダニエラはどういうわけだか、恐らくは自分より弱いはずの稲生の命令はしっかり聞く。
無表情でいることが多いが、たまに微笑を浮かべる時があるし、侵入者を追跡する際には銃火器片手に狂気の笑いを放ちながら追い回していた。
笑ってはいないものの、銃火器片手に敵を追い回す様は、某ロアナプラの某メイドさんそのものである。
これなら安心して留守を任せられるというもの。
[同日16:30.天候:晴 長野県白馬村郊外山中 マリアの屋敷]
電車は時刻表通りに白馬駅に着いた。
そこで電車を降り、駅前広場に行くと迎えの車が来ている。
ロンドンタクシーのような車で、マリアが送って寄越した迎えだというのが分かる。
今のマリアの魔力ではロンドンタクシーがせいぜいだが、イリーナくらいの力を付ければ、ベントレーにすることが可能となるだろう。
そんな車に乗り込み、ようやく屋敷へ帰り着く。
稲生:「ただいま、帰りました」
マリア:「おっ、お帰り。首尾は完璧だったようだね」
稲生:「ええ、おかげさまで」
マリア:「夕食までまだ時間があるから、部屋で休んでるといい」
稲生:「ありがとうございます。実はさっき、車の中で、誰かが待ち伏せしているような予想をしていたんですよ」
マリア:「ほお……?」
稲生:「大師匠様の随行員役に、イリーナ先生が選ばれたことを不満に思った他の魔女さんが文句を言いにやってきたという予想で……」
マリア:「その予想、半分当たったよ」
稲生:「半分だけ……ですか?それはどういう……?」
マリア:「こういう意味だ」
マリアはエントランスホールの隅にある納戸を開けた。
エレーナ:「んー!んー!」
グルグル巻きに縛られて、猿ぐつわをされているエレーナの姿があった。
稲生:「ありゃ!?エレーナが!?」
マリア:「そうだ。『落ちこぼれ組が大師匠様の付き人を務めるなんて納得いかない!』なんて言って来たので、このようにした」
稲生:「で、この後どうするんです?」
マリア:「ケンショーレンジャーの1人、ケンショーブルーへのギフトにしようか?」
稲生:「処女喪失させる気ですか!?それはヒドい!せめて、横田理事に任せるべきです!横田理事ならスカートめくりだけで満足するオッサンですから!」
マリア:「いや、下着強奪くらいはするだろう。どうだ、エレーナ?これ以上フザけたこと抜かすなら、本当にケンショーレンジャーへの生け贄にしてもいいんだぞ?あ?」
エレーナ:「んー!んー!(だったら猿ぐつわ外せっての!喋れねぇっての!)」
稲生:「全裸でホウキ飛行の刑っての、横田理事が考えたらしいですよ?」
マリア:「ゲスだな。他門の傀儡師の話だが、生意気な女戦士にノーパン浣腸の刑で公開脱糞の憂き目に遭わせたというのがある」
稲生:「それもそれでヒドいですし、マリアさんは傀儡師じゃないし、エレーナは女戦士じゃないからダメですよ」
エレーナ:(こいつら、こんな奴らだったっけ……!?)
真顔で様々な拷問内容を相談する大魔道師の弟子達に、顔面蒼白のエレーナだった。
旅行会社社員:「……と、JRのチケットですね」
稲生:「はい。何とか、お願いします」
社員:「少々お待ちください」
稲生は白馬村を出て、県内最寄りの市域である大町市に来ていた。
社員が稲生の依頼を受けて、何やら旅行商品を検索している。
その間、稲生は手持ちの鞄の中から、1枚の紙を取り出した。
それは原本ではなく、コピーであったが、そこにはこう書かれていた。
『イリーナ・レヴィア・ブリジッドへ。
此度、東アジア魔道団日本拠点リーダーとの会談があることは既知の通り。今回その随行員として任命する。尚、その直弟子2名についても随行を認める故、準備を怠ることのないように。
尚、羽田空港から現地へのアクセスについては全て任せる』
と。
こう書かれていることから、ついダンテは国内線で来るのかと思うだろうが、そうではない。
イリーナに言わせると、どうもイギリスから国際線で来るらしいのだ。
羽田空港は国際路線の数が増えたので、それで来るとのこと。
ダンテともあろう者なら、外国からでも魔法で瞬間移動できそうなものだが、いつもいつもそうするわけではないらしい。
社員:「お待たせ致しました。御希望のホテルと列車などがお取りできましたので、ご確認の方お願い致します」
稲生:「取れましたか!ありがとうございます」
社員:「それではまず、最初の列車が……」
[同日15:08.天候:晴 信濃大町駅→大糸線普通列車内]
稲生:「もしもし。あ、マリアさんですか?……ええ、僕です。何とか、予定通りの列車とホテルが取れました。……はい、支払いは全て先生からお借りしたカードを使わせて頂きました。……そうですね。今から電車に乗って帰ります。夕食までには戻りますから。……いや、大丈夫ですよ」
稲生はスマホ片手にチラッと、電車の中を見た。
ボックスシートには、既に稲生専属の随行員としてダニエラが着席していた。
稲生:「ダニエラさんという、最強のメイドさんがいますので。……ええ、それじゃ失礼します」
稲生は電話を切って、電車の中に戻った。
乗降ドアは半自動扱いなので、ドアボタンを押して自分でドアを開けることになる。
もちろん、乗ったら閉めるのがマナー。
〔「お待たせ致しました。15時8分発、普通列車、白馬方面、南小谷行き、まもなく発車致します」〕
2両編成のワンマン列車なので、肉声放送は運転士が行う。
あとは自動放送が流れるだけだ。
〔「4番線から、普通列車の南小谷行きが発車致します」〕
車掌の代わりに運転士が顔を出して、ホームの安全確認を行う。
各駅いつもそうするわけではなく、始発駅などで行うだけで、あとはホームに設置されているミラーや目視による確認だけだ。
地方の駅ではあまり駆け込み乗車してくる乗客もおらず、列車は静かに発車した。
〔今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は大糸線下り、白馬方面、各駅停車の南小谷行きワンマンカーです。これから先、北大町、信濃木崎、稲尾、海ノ口の順に、終点南小谷まで各駅に停車致します。【中略】次は、北大町です〕
車窓には雪景色が広がっているが、車内は暖房が効いて温かい。
稲生:「幸いにして予定通りの列車とホテルが取れたわけだけども、もしかして、これも魔法か何かなのかな?」
稲生がボックスシートに向かい合って座るダニエラに聞いたが、寡黙なメイドは無言で大きく頷くだけだった。
必要があれば喋るのだが、それ以外は無言そして無表情である。
このダニエラ、もしマリアの屋敷に侵入者があった場合、他のメイド人形達のようなザコキャラではなく、ちゃんと中ボスを張れるものと思われる。
稲生よりも強いはずだ。
だが、ダニエラはどういうわけだか、恐らくは自分より弱いはずの稲生の命令はしっかり聞く。
無表情でいることが多いが、たまに微笑を浮かべる時があるし、侵入者を追跡する際には銃火器片手に狂気の笑いを放ちながら追い回していた。
笑ってはいないものの、銃火器片手に敵を追い回す様は、某ロアナプラの某メイドさんそのものである。
これなら安心して留守を任せられるというもの。
[同日16:30.天候:晴 長野県白馬村郊外山中 マリアの屋敷]
電車は時刻表通りに白馬駅に着いた。
そこで電車を降り、駅前広場に行くと迎えの車が来ている。
ロンドンタクシーのような車で、マリアが送って寄越した迎えだというのが分かる。
今のマリアの魔力ではロンドンタクシーがせいぜいだが、イリーナくらいの力を付ければ、ベントレーにすることが可能となるだろう。
そんな車に乗り込み、ようやく屋敷へ帰り着く。
稲生:「ただいま、帰りました」
マリア:「おっ、お帰り。首尾は完璧だったようだね」
稲生:「ええ、おかげさまで」
マリア:「夕食までまだ時間があるから、部屋で休んでるといい」
稲生:「ありがとうございます。実はさっき、車の中で、誰かが待ち伏せしているような予想をしていたんですよ」
マリア:「ほお……?」
稲生:「大師匠様の随行員役に、イリーナ先生が選ばれたことを不満に思った他の魔女さんが文句を言いにやってきたという予想で……」
マリア:「その予想、半分当たったよ」
稲生:「半分だけ……ですか?それはどういう……?」
マリア:「こういう意味だ」
マリアはエントランスホールの隅にある納戸を開けた。
エレーナ:「んー!んー!」
グルグル巻きに縛られて、猿ぐつわをされているエレーナの姿があった。
稲生:「ありゃ!?エレーナが!?」
マリア:「そうだ。『落ちこぼれ組が大師匠様の付き人を務めるなんて納得いかない!』なんて言って来たので、このようにした」
稲生:「で、この後どうするんです?」
マリア:「ケンショーレンジャーの1人、ケンショーブルーへのギフトにしようか?」
稲生:「処女喪失させる気ですか!?それはヒドい!せめて、横田理事に任せるべきです!横田理事ならスカートめくりだけで満足するオッサンですから!」
マリア:「いや、下着強奪くらいはするだろう。どうだ、エレーナ?これ以上フザけたこと抜かすなら、本当にケンショーレンジャーへの生け贄にしてもいいんだぞ?あ?」
エレーナ:「んー!んー!(だったら猿ぐつわ外せっての!喋れねぇっての!)」
稲生:「全裸でホウキ飛行の刑っての、横田理事が考えたらしいですよ?」
マリア:「ゲスだな。他門の傀儡師の話だが、生意気な女戦士にノーパン浣腸の刑で公開脱糞の憂き目に遭わせたというのがある」
稲生:「それもそれでヒドいですし、マリアさんは傀儡師じゃないし、エレーナは女戦士じゃないからダメですよ」
エレーナ:(こいつら、こんな奴らだったっけ……!?)
真顔で様々な拷問内容を相談する大魔道師の弟子達に、顔面蒼白のエレーナだった。