報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

小説の途中ですが、ここで本年の御挨拶を致します。

2016-12-31 20:51:35 | 日記
 読者の皆様、こんばんは。

 本年も残すところ、あと数時間となりました。
 私は仕事先から帰り、少し早めの年越しそばを食べたところです。

 今年は色々なことがありました。
 世法においては勤務先が変わったことであり、通勤ルートに都営バスが加わったことでしょうか。
 バス好きの私にとっては、全く苦痛でも無く、むしろWi-Fiがタダで使えるというメリットができたということでしょう。
 仏法上においては、その仏法そのものを辞めたことです。
 元々は不良信徒という立場でありましたが、実は武闘派よりもその足場は不安定なものであります。
 で、支えが悪く、ついに転落したというわけでありまして……。
 マイケルさんのコメントのレスでも答えましたけども、私には後悔など無く、むしろ解放感がありましたね。

 顕正会ではダラダラやっていて、法華講員に潰されて嫌々そっちに行ったけど(桜梅桃李さんに潰されたわけではない)、まあ、私が思っていた白蓮華とは程遠い世界だったと。
 ならば楽しんでやればいいとも思ったけども、それも叶わなかった。
 いずれにせよ、私とは全く相容れない宗派だったというのが結論というわけであります。
 ミミさんが同調してくれたけども、合わない宗派に無理している必要は無い。
 法が正しいか否かは、実は些末なこと。
 その組織に合うか合わないかが問題である。
 そう思うわけです。
 山門入り口さんによって、実は日蓮正宗も破折されかねない状況であることが発覚した。
 これは大きなことだ。

 もう1度言いますが、私は日蓮正宗には2度と戻りません。

 というわけで来年は、どこかの神社にでも行こうと思っております。
 きれいどころの無い法華講よりも、まだ巫女さんから手渡しで絵馬でも受け取った方が御利益ありそうだ。
 そこは山門入り口さんの仰る通りかもしれない。

 というわけで、来年もよろしくお願い致します。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の移動」 埼京線編

2016-12-30 20:47:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月29日14:41.天候:晴 JR新宿駅]

 稲生達を乗せた特急列車は何事も無く、定刻通りに中央線の線路の上を走っていた。
 特急は通過する藤野駅周辺に差し掛かると、車窓から以前世話になった合宿所が見える為、その時の話にも花が咲いた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、新宿です。……〕

 稲生:「もうすぐですね。話をしていたら、あっという間だなぁ……」
 マリア:「そうだね」

 マリアは笑みを浮かべて、荷物を下ろした。
 ミク人形やハク人形が入っている荷物だ。

 ミク人形(ミカエラ):「マスターも笑ってくれるようになったねぇ」
 ハク人形(クラリス):「ただのジゴロじゃなくて良かったね」

 少なくとも、人形達からの稲生に対する評価は徐々に上がっているもよう。
 電車はポイントを何度も通過しながら、ゆっくりと中央本線特急ホーム10番線に到着した。

〔しんじゅく〜、新宿〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 2人の魔道師は他の乗客に続いてホームに降り立った。

 稲生:「うーん……。長野みたいに雪があるわけじゃないですけど、こっちもこっちで寒いですねぇ……」
 マリア:「ユウタは寒がりだなぁ……」

 マリアは苦笑に近い笑みを浮かべた。

 マリア:「私の同期が“魔の者”との戦いで、雪の降るロンドンを駆け回ったんだ。ユウタもしっかりしてくれ」
 稲生:「“魔の者”が?」
 マリア:「最近私達の前に現れないのは、どうも他の魔道師に狙いを変えたからみたいなんだ。日本じゃ、魔界からの取り締まりも厳しくなったからな」

 そもそも魔界王国アルカディアのナンバー2である首相が日本人ともあれば、元々取り締まりは強かったのだろう。
 それが更に強化されたということか。
 魔女達にボコられてばっかの横田理事も、何気に実は取り締まりと警戒強化の為に人間界に出入りしていると聞く。

 稲生:「日本から出て行って、外国で活動する魔道師に狙いを変えましたか。懲りないヤツだなぁ……」
 マリア:「まだ分かんないよ。何しろ、悪魔の考えることだ。私達には想像も付かないことを考えているかもだ。そう見せかけておいて、いつまた日本に戻ってくるか分かんないから」
 稲生:「困りましたねぇ……」

[同日14:57.天候:晴 JR埼京線各駅停車10号車内]

 稲生:「久しぶりのE233系だ」
 マリア:「悪いね。トイレ行ってたせいで乗り遅れて……」
 稲生:「いやいや。別に、本数は多いから大丈夫ですよ」

 緑色の座席に隣り合って座る稲生達。

〔この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Omiya.〕
〔「お待たせ致しました。埼京線、各駅停車の大宮行き、まもなく発車致します」〕

 稲生:「このまま学校に向かっても良かったのに、いいんですか?僕の家に行っちゃって……」
 マリア:「ああ。ご両親には今日帰ると伝えてあるんだろう?だったら、先に帰った方がいい。滞在期間は何日もあるんだ。1日もあれば十分さ」
 稲生:「なるほど」

 ホームに発車メロディが鳴り響く。

〔2番線の埼京線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車は1度再開閉してドアを閉めた後、走り出した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです。次は、池袋です。……〕

 稲生:「そういえばさっきの話、“魔の者”がロンドンに出たって話のことなんですが……」
 マリア:「だから、今回のクリスマスパーティには出てこなかったな。ハミルトン組のアリッサってヤツだ。ああ、他にもアリッサってヤツがいたけど、そいつとは別だから」
 稲生:「名前被りしているんですねぇ……」
 マリア:「よくある名前だからね。ユウタや師匠は私をマリアと呼ぶけど、他の魔女はマリアンナと呼ぶでしょ?他の組にも、別にマリアって名前のヤツがいるからだよ」
 稲生:「ありゃ、そうでしたか」
 マリア:「まあ、幸いにも普段日本に来ない組だから、ユウタと会うことは無いと思うから」
 稲生:「はあ……」
 マリア:「その、普段からイギリスにいるハミルトン組のアリッサは、ローブを着ていない状態で“魔の者”に立ち向かったって話だよ」
 稲生:「そうなんですか!」
 マリア:「魔女には珍しく、カレッジ(学院)通いしてたヤツだから、学校にそんなものは普段から持ち込めないでしょ?そこを突かれたらしい」

 稲生やマリアのように、学校を卒業するか退学してから入門するのが普通だ。
 ただ、年齢によっては……或いは、状況によっては例外的に学校(魔法学校などではなく、普通の)に通う者もいるという。

 稲生:「あ……!」
 マリア:「なに?」

 稲生の脳裏に昔の記憶が蘇った。
 それはまだ、稲生が東京中央学園の現役生だった頃。
 学校が魔界の入口に面してしまい、そこからダダ漏れする妖気に晒されていた頃の話だ。
 怪奇現象が多発して、七不思議どころか百不思議くらいあった頃である。
 稲生は有り余る霊気を威吹に認められ、盟約を結んだのであるが、当然それは他の妖怪達からも狙われるということであった。
 当時の霊力の強い同窓生達と組んで、悪質な怪奇現象を引き起こす妖怪達を威吹と共に倒していたことがあった。
 今でも在校生達の語り草となっており、新聞部の取材を受けたこともある。
 そんな稲生の前に、比較的強い妖怪が現れた。
 最後には魔界に逃げられてしまい、それ以来会っていない。
 変なやり取りをしたことがある。

 稲生:「確か……。『お前はただの人間か?』なんてその妖怪が聞いてきました」
 マリア:「だたの人間とは明らかに違う魔力を当時からユウタは持ってた。ザコ妖怪から見れば、信じ難いことだろうな」
 稲生:「僕は、『何のことだ?』と聞きました。意味が分からなかったからです。そしたら妖怪が、『何かの修行を積んでいる最中ではないのか?』と聞いてきたんです。結局その後、威吹が自慢の妖刀を振りかざして斬り掛かって行ったんで、そこで会話は終了しましたが」
 マリア:「なるほど」
 稲生:「当時の僕は顕正会員だったもので、仏道修行のことを言ってたんだろうと思っていたんです。もしかしたら、違う意味のことを聞いてきてたのかなぁって……」
 マリア:「そのモンスターがどんなヤツかは知らないけど、多分その宗教に基づいた修行のことも含めて聞いたんだと思う。ただ、強い妖怪を盟約でもって手懐けるという方法は、実は魔道師が悪魔と契約するのと同じことなんだ。高等妖怪である妖狐のイブキが、ユウタの言う事を聞いていたんで、その妖怪も驚いたんだろうね」
 稲生:「威吹がいてくれたおかげで、だいぶ事が進みました。今でも彼には感謝しています」
 マリア:「そうか」

 マリアは頷いた後で、こう思った。

 マリア:(師匠がユウタに目を付けたのは、偏にその部分なんだけどな)

 ただ単に霊感が強い、霊力が強いというだけでは新弟子勧誘の理由にはならない。
 それが素質とイコールかというと、そうとは限らないからだ。
 また、例え素質を持っていたとしても、魔道師の修行に耐えられるかどうも問題視される。
 人間時代に虐げられた者が多いのは、辛い人間時代と比べれば、まだ魔道師の修行の方が楽だからである。
 稲生はその辺例外だが、イリーナだからこその人材発掘だったわけだ。

 稲生:「再び、あの旧校舎に向かうことになるとは……。今からまた威吹を呼びましょうか?」
 マリア:「心配無い。魔界の入口からホイホイ出てくるようなヤツはザコに決まってる」
 稲生:「そうなんですか?」
 マリア:「本当に強いヤツほど慎重なんだ。もしかしたら、罠かもしれないなんてね。だからザコ妖怪共がホイホイ出て行く様子を、高見で見物してるんだよ。そんなザコ達を私達で倒してやれば、強い妖怪達も諦めるよ。『ちっ、やっぱり取り締まる側の罠だったか』ってね」
 稲生:「なるほど。だったら、早い方がいいんじゃないでしょうか?」
 マリア:「もちろん、のんびりやるつもりは無いよ。でも、今日は先に家に帰っても大丈夫だと思うから」
 稲生:「はあ……」
 マリア:「急ぎでやらないといけないんだったら、とっくに師匠が動いてるさ」
 稲生:「あ、それもそうですね」

 稲生は納得した。
 最後の乗り換え電車は、北に向かって進む。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の移動」 中央本線編

2016-12-29 20:57:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月29日12:00.天候:晴 JR松本駅→特急“あずさ”16号1号車内]

 稲生とマリアは停車中の列車に乗り込んだ。
 寒風吹きすさぶホームと比べ、車内は別世界のような暖かさだ。
 イリーナと一緒の場合はそのお供としてグリーン車に乗ることもあったが(例外あり)、弟子達だけの場合は普通車である。
 マリアはローマスター(一人前に成り立て)であり、まだ大金を稼ぐほど政財界と繋がりを持っていない為、贅沢はできない。
 クレカも自分の物ではなく、イリーナから貸与されている、ゴールドカードのうちの1枚だ(イリーナ自身はプラチナカードやブラックカードを所持している)。

 稲生:「この席ですね」
 マリア:「うん」

 稲生は指定席特急券の座席番号を見ながら座席に座った。
 普通車と言えど、指定席には乗れる。
 稲生は座席番号の時点で、だいたいどのあたりの場所か把握できた。
 人形達の入っている大きなキャリーバッグは網棚に起き、座席に座る。
 学生は冬休みに入っているのと、世間は仕事納めの時期で既に満席に近い状態となっている。

〔♪♪♪♪。この電車は篠ノ井線、中央本線直通、特別急行“あずさ”16号、新宿行きです。……〕

 座席に座るとテーブルを出して、弁当とお茶を置いた。
 マリアはローブを脱いで、それも荷棚の上に置いている。
 イギリス人(白人)も早熟なイメージがある稲生だが、マリアは例外なのか、童顔で小柄な体型である。
 人間時代の写真などは見たことが無いので分からないのだが、魔道師になったことで退行していないかと思ったものだ。
 だが、クリスマスパーティで早熟なリリィや年齢不詳のエレーナ(自称、稲生やマリアより年下)を見て、もしエレーナの自己申告が本当だとしたら、エレーナもかなり早熟と言える。
 なので、魔女だから幼く見えるということではないようだ。
 マリアが例外なのだろう。
 で、座席の上には『アルカディア・タイムス日本語版』が置かれていた。
 折り返し列車で車内整備もしてから乗車開始となっているはずなので、乗客の忘れ物だとは思えない。
 何より、きちんと畳まれた状態になっており、誰かが読み終えた後の古新聞という状態ではなかった。
 アルカディア・タイムスというのは、主に魔界王国アルカディア国内のニュースが載っている新聞だ。
 論調は沖縄タイムスや朝日新聞と違い、左翼偏重ではない。
 で、この新聞の特徴は国内のニュースに留まらず、人間界のニュースも載っていることだった。

『東アジア魔道団、報復であることを正式に表明』『パク大統領よりチェ・スンシル師に対する報奨金が支払われず。契約不履行に対する報復手段として、韓国検察庁を動かしたもよう』『チェ師に対しても規則違反過多の廉で、尻尾切りか!?』

 稲生:「この、東アジア魔道団の人達とは会ったことが無いですね」
 マリア:「私達とは接点が無い。もしもうちの師匠があなたを見つけなかったら、ユウタはこの魔道団に勧誘されていたかもね」
 稲生:「へえ、そうなんですか!」
 マリア:「何しろ、素質のある人間は引っ張りだこだから。ダンテ一門では日本人はあなた1人だけだけど、この東アジア魔道団には日本人もいるって話だよ」
 稲生:「そうなんですか」

 いつの間にか列車は発車しており、車内に自動放送が響き渡っていた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は篠ノ井線、中央本線、特別急行“あずさ”16号、新宿行きです。これから先、塩尻、岡谷、上諏訪、下諏訪、茅野、富士見、小淵沢、韮崎、甲府、八王子、立川、終点新宿の順に止まります。……〕

 稲生達は駅弁の蓋を開けて、昼食を取ることにした。
 ちょうど良い時間である。

 マリア:「ユウタはあの魔道団に入らなくて良かったと思う。中国共産党の腐敗も、南北コリアのあの情勢も、みんな裏ではこいつらが引っ張ってるんだ」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「やり過ぎなんだよ、あいつら。だからヘマすると、こうして表に出てきてしまう。本当は魔道師なんて、表に出ちゃいけないんだよ。私達がこうしてローブを羽織ってフードを深く被るというのは、そういう意味なんだ」
 稲生:「そうでしたか」

 自分では似合わないという下らない理由であまりローブを着用しない稲生は、まだまだ心構えが足りないということだ。

 稲生:「! まさか、北朝鮮の拉致って……?」
 マリア:「【お察しください】。てか、ここでそういう話はやめた方がいい。電車が終点まで着けなくなる」
 稲生:「そ、そうですね」
 マリア:「あなたもマスターになる頃には、色々分かって来ると思うから」
 稲生:「はい……」

 そこで思い出した。
 イリーナが先日、深夜に行っていた儀式。
 あれは明らかに、粛清の儀式だった。
 稲生が思わず東アジア魔道団の秘密に迫ろうとしてしまったのと同じく、ダンテ一門の秘密について探ろうとした者がいたのだろう。
 それをイリーナが見つけて粛清したというわけか。

 稲生:「そういえば確かに、ダンテ一門は日本人どころか、アジア人自体が他にいませんね」
 マリア:「昔はいたらしいけど、どうして今はいないんだか……」
 稲生:「ダンテ先生はどうも黒人みたいです。ただ、黒人と言ってもその肌の黒さは千差万別で、アフリカ系のように真っ黒だったり、中東系みたいな褐色だったり、東南アジアみたいに茶色に近いパターンもありまして……」
 マリア:「ユウタの見立てでは、大師匠様はどの辺のタイプだと思う?」
 稲生:「ほとんどローブに隠れていますので、何とも……。ただ、アフリカ系ほどの黒さでは無さそうです」
 マリア:「答えは……大師匠様御本人しか知らないだろうな」
 稲生:「直弟子のイリーナ先生とかは?」
 マリア:「知らないだろう。師匠も大師匠様の素顔をはっきり見たことは無いそうだ。だけども、確かに私ら白人のような白い肌ではなかったというよ」
 稲生:「謎ですね」
 マリア:「ユウタはあまり違和感無く受け入れたみたいだけど、私も師匠も大師匠様が黒人だったなんて違和感が大きかったね」
 稲生:「そうなんですか?」

 やはり、白人のDNAに染み付いた黒人差別からだろうか。

 稲生:「僕にはよく分かりませんが……」
 マリア:「例えばユウタはイエス・キリストの姿を思い浮かべる時、どんな姿を思い浮かべる?」
 稲生:「どんなって……ベタな宗教画の法則にある、十字架に磔にされた姿ですが……」
 マリア:「ああ、いや、そうじゃなくて。その磔にされているイエスは、どんな人種?」
 稲生:「あー……まあ、白人かな。でもそれにしては、絵に描いているキリストの髪とか髭は黒っぽいですね」
 マリア:「現在においては正解。でも、当時は分からないよ」
 稲生:「?」
 マリア:「エルサレムだのベツレヘムだの、あそこには2000年以上前から黒人も多く住んでいたそうだ」
 稲生:「えっ?も、もしかして……?」
 マリア:「イエス・キリストは黒人だったかもしれないってことさ。もっとも、こんなこと言ったら、白人のクリスチャン全員を敵に回すことになるだろう」
 稲生:「それ、本当なんですか?」
 マリア:「分からん。師匠だって、1000年そこらの年齢でしょ?イエス・キリストが活動していた時代は知らないけど、大師匠様が黒人であることを知って、そういう与太話ももしかしたらあるかもって言ってたんだ」
 稲生:「なるほどねぇ……」
 マリア:「大昔にあった魔女狩り。今でもどうしてあんなことが行われたのか、クリスチャン側からは分からないなんて無責任なこと言ってるけど、もしかしたら、当時の魔女が『イエス・キリストは黒人である!』なんて言ったのかもしれないな」
 稲生:「な、なるほど……」
 マリア:「このように、魔道師というのは、本当に表沙汰にされたら困るような人間達を相手にすることが多々ある。秘密を知った場合の取り扱いは、十分に注意しなよ?」
 稲生:「わ、分かりました」

 稲生は震えながら頷いて、再び弁当に箸をつけた。
 マリアは紅茶を口にしながら、

 マリア:(本当はこういうこと、師匠が教えるべきなのに……。ものぐさBBAめ)

 と、思った。
 列車は降り積もった雪の中から顔を出したレールの上を軽やかに進む。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の移動」 大糸線編

2016-12-28 19:43:27 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月29日10:00.天候:雪 JR白馬駅]

 小雪の舞う駅前に、1台の車が停車する。
 黒塗りの車だが、車種はロンドンタクシーのようだ。
 マリアが主導で魔法を使ったというのが分かる。
 降りた2人は荷物も降ろして、足元の悪い中を駅の中に入った。

 稲生:「寒いですねぇ……」
 マリア:「冬だから当たり前だよ」

 駅の中に入る。
 首都圏までの電車は直通ではなく、途中で乗り換えがある。
 乗車券は既に用意してるので、あとは改札口からホームに入れば良い。

 稲生:「何だか温かい飲み物でも欲しくなりましたよ。ちょっと買ってきます」
 マリア:「ああ」

 自動販売機でホットレモンを買ってきた。

 マリア:「うん、確かに温かい」

 そんなことして過ごすうちに、駅構内に放送が流れた。

〔「今度の上り列車は、1番線から10時13分発の普通列車、松本行きが2両編成で参ります。ご利用のお客様は、1番線へお越しください」〕

 1番線は改札口を通ってすぐ目の前にあるホームである。
 なので、階段の昇り降りはしなくて良い。
 稲生は飲み干したホットレモンのペットボトルをゴミ箱に捨てた。
 小雪の舞う線路の向こうから、ヘッドライトが近づいてくる。
 E127系だが、大糸線で運用されている型式はセミクロスシートと呼ばれる座席配置になっている。
 ロングシートが主体だが、一部にボックスシートも備わっているということだ。

〔「ご乗車の際、ドア横のボタンを押してドアを開けてください。白馬、白馬です。ご乗車ありがとうございました。1番線の電車は10時13分発、普通列車の松本行きです。ご乗車になりますと、すぐの発車となります。お近くのドアからご乗車ください」〕

 稲生達は前の車両に乗り込んだ。
 車内はさすがに暖房が効いて暖かい。
 ボックスシートではなく、ドア横の2人席に並んで座った。
 この方が『魔女』のマリアが落ち着くからである。
 都会の通勤電車みたいな座り方で旅情は薄れるが、致し方無いし、考えようによっては、この方がマリアと密着できるという稲生にとってはメリットな部分もある。

〔「お待たせ致しました。普通列車の松本行き、まもなく発車致します」〕

 通常はワンマン運転なのだが、冬期はスキー客などで需要がある為か、ツーマン運転になることもある。
 スキー客が押し寄せるのは、この時間ならむしろ松本から(引いては東京方面から)の下り列車だと思うのだが、そこは乗務行路の都合もあるのだろう。
 電車はVVVFインバータの音を響かせて、白馬駅を出発した。

〔「JR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は信濃大町方面、普通列車の松本行きです。飯森、神城、南神城、簗場の順に、終点松本までの各駅に停車致します。途中、信濃大町には10時50分、【中略】終点松本には11時46分の到着です。電車は終点まで2両編成での運転です。お手洗いは後ろの車両にございます。【中略】次は飯森、飯森です」〕

 マリアはバッグの中からB5版サイズほどの魔道書を取り出して、それを読み出した。
 尚、網棚に置いた大きめの荷物の中には前回と同様、ミク人形とハク人形が入っている。
 普通列車には車内販売が無いと知っているのか、今はおとなしく鞄の中に入っていた。
 魔道書を読む時、マリアは赤い縁の眼鏡を掛けるが、これはダンテが書いたラテン語を英語に翻訳する為である。
 稲生が取り出したのも魔道書だが、マリアが読んでいるものと比べると難易度は低い。
 これはマリアが一人前になっているのに対し、稲生はまだ見習だからという差である。
 因みにこの魔道書、ただの本ではない。
 稲生が読める魔道書では、ダンテ一門に所属する魔道師全てのプロフィールを読むことができるのだ。
 クリスマスパーティ期間中の夜中に襲って来たリリィのもある。
 本に映し出される姿は、コミュ障の地味な少女の時のものであり、覚醒したパンクな姿を見ることはできない。
 何気に更新されており、『諸事情により、無期限の禁酒令が下されている』とあった。
 少女とはいえ、フランス人で酒が禁止されたか。
 まあ、これも自業自得の修行であろう。

[同日11:46.天候:晴 JR松本駅]

 電車が大糸線の終点駅に近づく。
 だいぶ車内は混んで来た。
 スキー板やスノーボードを抱えた乗客も散見されることから、これから滑りに行くというよりも、昨日から滑っていてこれから帰るパターンだろうか。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、松本、松本です。到着ホームは6番線、お出口は右側です。どなた様もお忘れ物の無いよう、よくお確かめの上、お降りの準備をお願い致します。松本駅からのお乗り換えのご案内です。今度の篠ノ井線、中央本線直通、特急“あずさ”16号、新宿行きは、2番線から12時ちょうどの発車です。【中略】本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 運転席からATSの警報音が聞こえてくる。
 信号を冒進しているわけではなく、単に場内信号が注意(黄色)を現示しているだけである。
 道路の信号機ではブレーキを踏まなければならないが(なに?名古屋では逆にアクセルを踏むって!?)、鉄道の信号機は速度制限が付いているだけで停止の義務は無い。

 電車はゆっくりとホームに入り、そして停止した。
 終点駅であってもドアは自動では開かず、ドア横のボタンを押さなくてはならない。
 尚、6番線の隣の7番線はアルピコ交通(松本電鉄)のホームになっており、そこへの乗り換えは便利である。
 特急に乗り換える稲生達は、荷物を持って階段を登らなくてはならない。

 稲生:「マリアさん、お弁当買って行きましょうよ」
 マリア:「おっ、そうだな」
 稲生:「車内販売もあるでしょうけど、もうお昼ですから」
 マリア:「分かった」

 車内販売有りの言葉に反応し、ゴソゴソのキャリーバッグから顔を出すハク人形とミク人形。

 稲生:「今はダメだよ、出て来ちゃ!」

 稲生が注意すると、すごすごとバッグの中に戻る人形2体。
 最近は稲生の言う事も聞くようになったか。

 稲生:「牛肉弁当ください。あと、温かいお茶も」
 マリア:「ん?確かに美味しそうだ。私もそれ」
 稲生:「2つください」

 だが、お茶に稲生はほうじ茶を買ったのに、マリアはストレートティーを求める辺りがちょっと違う。

〔ご案内致します。今度の2番線の列車は、12時ちょうど発、特急“あずさ”16号、新宿行きです。……〕

 ホームから沢田敏子氏の案内放送が聞こえた。
 有名な声優で、ラジオライブラリー“新・人間革命”の朗読もしている。
 稲生達は駅弁とお茶を買い込むと、特急の発車する2番線へと向かった。
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“大魔道師の弟子” 「出発前の大掃除」

2016-12-28 16:44:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月28日09:00.天候:晴 長野県北部某所 マリアの屋敷]

 イリーナ:「出発前に、部屋をきれいにしてからにしましょうね」
 稲生:「分かりました」
 マリア:「人形達がやってくれますよ?」
 イリーナ:「たまには自分でやりなさい」
 マリア:「ちっ……」
 稲生:「ははは……」

 稲生は自分の部屋に戻った。

 稲生:「ダニエラさん、掃除機貸して」
 ダニエラ:「ダイソンの吸引力の変わらない掃除機と、ダイマオンの吸ったゴミを魔界のどこかへ送る魔法の掃除機とどちらになさいますか?」
 稲生:「何ですか、ダイマオンって!?大魔王のもじりですか!?普通のでいいですから!」
 ダニエラ:「かしこまりました……」

 それでも稲生の場合、そんなに部屋に物は置いていない。
 掃除機で埃を吸い取ったり、バスルームを掃除するだけで終わった。

 稲生:「うーん……こんなものかな?ダニエラさんがいつも掃除してくれてるから楽ですよ」

 稲生は机の上を拭いた。
 その後で水晶球を見る。

 稲生:「マリアさん達はまだやってるのか……。そうだ。僕は他の部屋を掃除してこよう」

 稲生は部屋の外に出た。

 稲生:「僕の部屋だけ鍵が別だけど、他の鍵はそのエリアの担当メイドが持ってるんだよね?」
 ダニエラ:「さようでございます……」
 稲生:「このエリアの鍵は剣の鍵か」

 要はタグに剣の絵が描いてある鍵のことである。

 稲生:「ダニエラさんが持っていたりしない?」
 ダニエラ:「…………」(←ニヤリと笑って、エプロンのポケットから剣の鍵を取り出す)
 稲生:「ありがとう」

 稲生が住んでいる部屋はゲストルームのうちの1つである。
 要は剣の鍵というのは、このゲストルームの鍵のことなのである。
 稲生の部屋だけ鍵を変えてもらい、それは矢の鍵となった。
 弓の鍵はマリアの部屋の鍵である。
 因みに、VIPルームだけは鍵で開かず、魔法でないと開けられない。
 先日はダンテが宿泊したが、それ以外の日はイリーナが使っている。
 そのイリーナもこの屋敷に常駐しているわけではないので、空室であることが多い。

[同日11:00.天候:晴 マリアの屋敷2F東側]

 稲生:「いやあ、全部の部屋を掃除すると、さすがにいい運動になるねぇ……。ダニエラさん、次は西側に行こう。向こうの鍵は誰が持ってるの?」
 ダニエラ:「稲生様……恐れ入りますが、稲生様はもうこの辺でよろしいかと……」
 稲生:「え?どうして?」
 ダニエラ:「イリーナ様は『自分の部屋を掃除せよ』と仰せでした。稲生様は既にそれを達成しておられ、且つ周辺の部屋も掃除しておられます。もう十分なのではないかと……」
 稲生:「いや、そんなことは無いよ」
 ダニエラ:「それに……本日の食事当番は私ですので、そろそろ昼食の準備をしなくてはなりません」
 稲生:「そうか。分かったよ。それじゃ、僕は鍵の開いている部屋を掃除することにしよう」

 稲生は西側の2Fエリアに向かった。
 夜になれば……昼であっても不慣れだと不気味なホラー屋敷。
 さすがは魔女が居住しているだけのことはある。

 稲生:「えーと、ここは渉外室だな。普段使ってないだけに、埃っぽいや」

 何故か壁に、暴対法の条文が書かれた紙が貼られている。
 企業ゴロが現れた時に通す、特別な応接室のようだ。

 稲生:「えーと、この部屋の注意点は……。奥の控室の壁に掛かっているショットガンを取らないように、か……」

 稲生は手帳を見ながら、部屋のトラップに引っ掛からないようにした。
 この屋敷自体がダンジョンである為、謎解きの書かれたメモを手帳に書きつけていた。

 稲生:「ショットガンを取ると、天井が実は吊り天井になっていて、ドアがロックされ、落ちてくる天井に押し潰されてバッドエンド直行か……。凄い仕掛けだな」

 あまり余計な物が置かれていない為、稲生は掃除機を掛けて埃を吸い出したり、テーブルの上を拭くだけで良かった。
 渉外室の掃除はすぐに終わる。
 今度は別の部屋に向かった。

 モンスターA:「我を見た者……殺す……!」
 稲生:「僕だよ!部屋の掃除に来ただけだ!」

 屋敷内を警備しているのはメイド人形だけではない。
 イリーナが魔界から連れて来た番犬もいたりする。
 もちろん、丸腰では即死エンドとなる。

 モンスター:「ちっ……」
 稲生:「ちって何だよ、ちって!」

 また、ある部屋では……。

 モンスターB:「ガウウウッ!!」
 稲生:「ちょっと待った!部屋の掃除に来ただけだから!」

 大きな口を開けて稲生に飛び掛かって来る猛獣モンスターがいたが、稲生は木の棒で口の中につっかえ棒をした。

 モンスターB:「あがががががが!?」(←口を開けた状態でつっかえ棒がされて、口を閉じれない)
 稲生:「多分この屋敷……ステージ1辺りに持って来られそうな雰囲気なんだけど、いきなりハードモードな造りとトラップだもんなぁ……」

 更に別の部屋では……。

 稲生:「えーと、なに?ドアを開けるのに数字を『58』にしないといけない?キハ58系かよ」

 ダイヤルを左に回したり、右に回したり……。

 稲生:「ゲームと同じで、何とかなる精神でやってますw」

 ピーン♪ガチャ……。

 稲生:「よし、開いた」

[同日12:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側 大食堂]

 イリーナ:「そろそろお昼にしましょう。お?今日のお昼はパスタね。おーい、ユウタ君!あなたのはミートソースだお!」

 イリーナはボンゴレ、マリアはペペロンチーノという細かさ。

 イリーナ:「あれ?ユウタ君、部屋にいないの?」
 マリア:「他の部屋を掃除しているらしいです。……まさか、トラップに引っ掛かって!?」
 イリーナ:「うそ……!?大至急、各部屋を捜索して!」

 イリーナがメイド人形達に命令を出した直後だった。
 大食堂の床は、白とグレーのチェック柄タイルが敷かれている。
 マリアの座っている椅子のすぐ前のタイルが持ち上げられて……。

 稲生:「やっと出られた!さすが地下室は難易度が高……あれ!?」

 稲生がタイルの中から出てきた時、目の前にはマリアの下半身があった。

 マリア:「!!!」

 マリア、慌ててパッとスカートを押さえた。

 稲生:「うあっ!?」

 テーブルの中から這い出てくる稲生。

 イリーナ:「お帰り。ご苦労さんだったね」
 稲生:「まだ2階の一部と地下室の一部しか掃除できてません。盾の鍵が見つからなくて……」
 イリーナ:「ゴメーン。アタシが持ってた。てへてへw」
 稲生:「なーんだ、勘弁してくださいよ、先生」
 イリーナ:「ま、御褒美はさっき見たマリアのパンツでいいでしょ。早いとこ食べよう」
 マリア:「……!!」
 稲生:「いや、マリアさん、僕見てませんから!」
 マリア:「大掃除はもう終了でいいですよね、師匠?」

 こめかみに怒筋を浮かべるマリアだった。

 イリーナ:「そ、そうね。後は人形達に任せましょう」

 昼食が喉を通りにくい3人だった。
 住人の稲生ですら脱出困難な屋敷ということが露呈されてしまった。
 もしこれが侵入者だったとしたら、盾の鍵を手に入れるのにイリーナを倒さなければならないという、ベリーハードという言葉ですら手ぬるい難易度だったわけである。
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