報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

本日の雑感 0229

2016-02-29 20:45:48 | 日記
「ロボットタクシー」実証実験

 “Gynoid Multitype Cindy”で取り上げてみようと思ったのだが、先を越されてしまった。
 この後で書くと二番煎じ的な感じが否めないので、しばらくほとぼりが冷めてからにしよう。
 尚、最近になって自動運転の自動車が取り上げられているが、鉄道の世界においては既に実現されている。
 関東では東京の“ゆりかもめ”と日暮里・舎人ライナー、横浜のシーサイドラインであり、関西では大阪のニュートラムと神戸ポートライナー、それに六甲ライナーである。
 既に無人運転が実現しているので、これもまた広義のロボットと言える。
 敷島エージェンシーの新事務所が豊洲に移転するというくだりは、この“ゆりかもめ”を使って何かネタができないかなと思った次第である。
 が、多少見切り発車感があったかもしれない。
 それはひとえに、作者の未取材があるからである。
 私が子供の頃だが、確かポートライナーって、電車が暴走して終点駅に突っ込んだ事故が無かったかな?
 先頭車の前半分が高架橋から半分はみ出して、落ちそうになっていた映像を見たことがある。
 尚、ググってみたら、1993年10月5日に発生していた。
 『その当時、乗客に学会員が多かったから罰で暴走事故を起こした』なんて、武闘派なら言いそうだなぁ……。
 何しろ、阪神大震災に対してもそんなことを言っている始末だ。
 破門されてから4年も経って、あんな罰が起こるとでも言うのだろうか。
 私には理解のできないことだ。

 今日は休みだったので、大宮駅まで散髪に行ってきた。
 私がそういう時、利用している西武バスは1日に3往復しか走っていない『免許維持路線』というもので、もはや廃止まで風前の灯火という路線なので、今のうちに乗るようにしている。
 何故廃止にしないかというと、西武バスが唯一、大宮駅東口に乗り入れる路線の為、それを廃止してしまうと、西武バスが東口に乗り入れる権利を失うからだと思われる。
 あんな閑散路線でも、取っておけば何かの役に立つだろうと考えているらしい。
 ただ、ポテンヒットさんならご存知だと思うが、大宮駅東口のカオスぶりは西口よりも凄まじく、バスが定時運転できないボトルネックとなっている。
 私の出身は仙台市なのだが、さいたま市は埼玉県で1番デカい町で、首都圏でも指折りの大都市なのに、何故か東口のローカルさといったら……。
 だけど、大都市である為に、人も車も多く、明らかな飽和状態と。
 浦和偏重の市長と再開発に反対している老害共の仕業ということにしておく。

 さて、その大宮駅東口だが、御多聞に漏れず、ここにもエホバが“立哨”している。
 その位置は交番の真ん前なので、茜オバハンの赤羽駅事件のようなものは発生しにくいと思われる。
 是非とも赤羽駅事件のことについて何か知っているか聞いてみたかったが、散髪の後で最終バスの時間(14時16分!)が迫っていたので、聞くことはできなかった。
 バスが発車する直前に立哨者の交替が行われたが、交替者は年配の男性であった。
 白髪に眼鏡を掛けていたが、何だか老執事みたいな感じだ。

「お嬢様、ご出発の時間でございます」

 なーんてなw
 うちの作品で執事ロイドも若い男ばっかりだから、たまには老執事みたいのもいいかな?……没になりそうだ。
 老執事風のエホバさん、もし茜オバハンが来たら、上記のセリフ言ってみな。
 きっと喜んで入信してくれるよw
 で、相変わらず統一教会の元彼(自称)の悪口は書く、と……。

 使えるかどうかは別として、このように大宮駅周辺に出るだけでも、ネタはよく転がっているものだ。
 私が電車ではなく、バスにあえて乗るのは趣味というもあるが、小説のネタを出しやすいというのも多分にあるわけである。

 車のロボットのネタについては、しばらく温めておこう。
 シンディや敷島と絡ませると、物凄く面白いのができそうな気がする。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「アルエットの再起動」

2016-02-29 15:10:40 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月1日10:00.天候:曇 埼玉県さいたま市西区・デイライトコーポレーション・ジャパン 3号機のシンディ&敷島孝夫]

 大宮駅西口からバスに乗り、さいたま市の郊外へ向かう人間1人とマルチタイプ1機。

 敷島:「駅からのアクセスがあまり良くないみたいだって思っていたら……」

 敷島、バス車内に掲げられたお知らせを見る。

 敷島:「科学館がオープンしたら、駅からそこまでの新路線がオープンするとは……。デイライトさんの力の入れようが分かるなぁ……」

 といっても、既存の路線を本線とし、科学館までの路線はそこから分岐した支線という扱いらしいが。
 そこを終点とするからには、バスも構内ロータリーまで乗り入れて行くという感じにするらしい。
 レイチェル戦を繰り広げた、荒れ地の中を通る1本の道路。
 さすがに今は、あの時のバージョン・シリーズの残骸はほとんど撤去されている。
 一括制御を行っていたレイチェルがシンディとの戦いで大破し、それでも動いて敷島を殺そうしたところ、やはり満身創痍のアルエットからレーザービームによるトドメを刺されたことで、レイチェルが動かしていたバージョン・シリーズの全てが機能を停止した。

 バスを降りて研究所まで歩く。
 デイライト・コーポレーション前というバス停名にはなっているが、実際はデイライト・コーポレーション入口ではないかと思う距離だ。
 それでやっと着いて、受付でセキュリティカードを受け取る。

 敷島:「仮設の建物とはいえ、あの時の戦いで無事だったロボットは稼働してるんだ」
 シンディ:「そうみたいね」

 というのは、敷島が受付で記入していると、背後からクワを担いだ芋掘りロボット、ゴンスケが通過していったからである。
 尚、ゴンスケとイモ畑はレイチェル達にとってはアウト・オブ眼中であったため、無事であったもよう。

 敷島:「マリオとルイージのキノコ作りといい、農業ロボットとしての研究が進んでるのか、ここは……」
 アリス:「そのうちゴンスケのサツマイモは、科学館のお土産で売れるかもね。キノコと一緒に」
 敷島:「直売所作るってかぁ……。面白い科学館になりそうだ」

 アリスがやってきたので、シンディは深々とお辞儀をした。

 敷島:「それより、アルエットは?」
 アリス:「もちろん、これから起動させるわよ」
 敷島:「そうか」

 敷島、シンディ、アリスと研究所の奥へ向かっていく。

 アルエットが修理を受けているスペースはレイチェル戦でも無事だった部分にあり、そこは従来からのセキュリティが生きている所だ。
 科学館としては新設し、一般公開するが、既存の部分は関係者以外立ち入り禁止にするという。
 途中にバージョン4.0を再利用したセキュリティロボットがいて、当然関係者のアリス、正規の入館受付を行った敷島には4.0は何もしてこない。
 上位機種のシンディには、右腕を曲げて敬礼のポーズを取った。
 腕にペイントされた数字は122だから、122号機か。

 シンディ:「ご苦労様。122号」
 ゴンスケ:「ゴ苦労様。122号」
 122号:ピー!(警報音)「不正侵入者発見!直チニ排除スル!」

 122号機の両目がギラリと光り、右手をシンディのようにマシンガンに変形させる。
 と、同時に付近を巡回中の56号機と72号機もダダダッとやってきて、

 ゴンスケ:「ギョエエエエッ!ヘルプ・ミー!」

 ズルズルと両脇を抱えられて引きずられ、セキュリティエリア外へ連れ出されるゴンスケだった。

 敷島:「ここの4.0は、ちゃんと仕事してるんだな?」

 敷島は意外そうな顔をした。

 アリス:「アタシがちゃんと整備してるからね。財団にいたセキュリティロボットよりも優秀よ」
 敷島:「なのに、何で街中にいるヤツらはおバカなんだ?」
 アリス:「使う人間がバカだと、ロボットもバカになるわよ」
 敷島:「身も蓋も無いこと言うなぁ……。KR団だったら、絶対に逆のこと言いそうだ。てか、ゴンスケのヤツ、イモ畑に行くのに、何でここ通るんだ?」
 シンディ:「ああ。前は、あっちにイモ畑があったからね」

 シンディは科学館建設現場の方を指さした。

 シンディ:「旧データとごっちゃになってるんでしょう」
 敷島:「性能がいいんだか悪いんだか分からんなー」

 そんなこんなで3人(2人プラス1機)は、アルエットが修理されている部屋に着いた。
 アルエットは椅子に座っており、目を閉じている。
 室内にはデイライト・コーポレーションの関係者が所狭しと並んでいた

 シンディ:「アル……」
 敷島:「だいぶ、きれいに元通りじゃないか」
 アリス:「当然よ。それじゃ皆さん、お集まりになったようなので、早速、ガイノイド・マルチイプ8号機のアルエットを再起動したいと思います」
 アリスはノート型PCのキーボードを叩いた。
 背後のスクリーンには、そのPCの画面が映し出されている。

『アルエット の起動 承認待機中です。起動を行いますか?』

 そのような表示が出たので、アリスはエンターキーを押した。

 アルエット:「……?」
 シンディ:「アル……分かる?」
 アルエット:「シンディ……お姉ちゃん……」
 アリス:「◯◯の起動値クリア、××の起動値は上昇中……」
 研究員:「ウィルス検知を始めています」

 アリスを含む研究員達がPCの方の表示を気にしている中、シンディはアルエットを抱きしめた。

 シンディ:「アル……ごめんね……」
 アルエット:「何が?」
 敷島:「シンディ、お前の力で抱きしめると、せっかく直したアルエットがまた壊れるぞ」
 シンディ:「あっ!」

 シンディは慌てて放した。
 だが、それだけで壊れるほどマルチタイプはヤワではない。

 アルエット:「覚えてるよ。お姉ちゃんが、わたしに取り付けたられた変な装置を取り外してくれたこと……。ありがとう。お姉ちゃん……」
 研究員:「全ての数値、クリアしました。ウィルスも検知されてません」
 アリス:「OK.それじゃ皆さん、明日から本格的にこのアルエットのテストを行って参りますので、よろしくお願いします。アルエットは……って!」
 敷島:「……というわけで、是非とも敷島エージェンシーをよろしくお願いします。……あ、せめて名刺だけでも」

 アルエットの再起動そっちのけで、デイライト・コーポレーションの役員に営業する敷島がいた。

 アリス:「シンディ。あのバカに電流お願い」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「うちには優秀なボーカロイドが……アッー!」

 シンディ、左手で敷島を掴むと電気を流した。

 アリスはコメカミに怒筋を浮かべながら、しかし顔は笑顔で、

 アリス:「シンディは左手から高圧電流が流せますが、その強さは自由に変えることができます。静電気程度の強さから、黒焦げになるほどの強さまでね!」

 但し、最大電圧まで行うと、バッテリー1つをオシャカにするどころか、電気が逆流して自分も感電する恐れがあるというメガンテぶりである。

 アリス:「それじゃ皆さん、よろしくお願いします」
 アルエット:「社長さん、どうしたのー?」
 シンディ:「いいのよ。マスターの命令だから」
 アルエット:「?」
 敷島:「…………」(既に意識が無い。周辺には焦げた名刺が散乱している)
 研究員:「あの、せめて医務室に運んで差し上げた方が……」(見かねたアリスの部下が進言する)
 アリス:「いいのよ。放っときなさい。アルエットとシンディは私についてきて。場所移動するから」
 シンディ:「はーい」
 アルエット:「は、はい」

 無人になった研究室、意識の無い敷島だけが取り残されて電気も消されてしまったという。合掌。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「敷島エージェンシーの移転前作業」

2016-02-29 10:26:14 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月29日18:00.天候:雨 東京都江東区豊洲・敷島エージェンシー 3号機のシンディ、敷島孝夫、井辺翔太]

 旧事務所の墨田区菊川から新事務所の江東区豊洲に事務所が移転する。
 前の小さなビルを全部借り上げたとしても、ワンフロアの面積が広いビルだ。
 契約した後で、すぐに移転するわけではない。
 移転先を自分達が使いやすいように内装工事をしなくてはならない。
 今回、敷島達はそれの最終確認に来ていた。

 敷島:「ボカロの声出しとかで騒音にならないよう、防音加工はしっかりしてもらわないとな」
 井辺:「このビルの機械室などにはそういった加工がされておりますので、それと同様にしてもらいます」
 敷島:「うん、その方がいい。あと整備室だけど、整備にはアリスに頼んでデイライトさんから派遣してもらうように手配した」
 井辺:「奥様ご本人は来られないのでしょうか?」
 敷島:「ん?」
 井辺:「デイライトさんの旧・埼玉研究所が科学館としてリニューアルされるまでの間、奥様のお仕事がアルエットさんの修理しか無いという話ですが……」
 敷島:「ああ、それなんだけど、『ヒマならボカロの整備やってくれよ』って頼んだら、『トニーの世話はどうすんのよ!』って、バールで叩かれた」

 未だに残る敷島の顔、右半分の痣。

 井辺:「バールで叩かれて、その程度の痣で済む社長には敬服致します」
 敷島:「キミもバージョン軍団の攻撃をかい潜れた猛者じゃないか」
 井辺:「いえ、あの時は無我夢中で……。萌のサポートもありましたし、何より土壇場でシンディさんが助けてくれましたから」

 井辺を吊るし上げていたバージョン3.0。
 萌の必死の救助要請を受信したシンディが、強化カスタマイズしたライフルでそのバージョンの頭部を撃ち抜いて助け出した。

 井辺:「新人達の方はどうですか?」
 敷島:「ああ。既に本採用前の事前研修を明日から、四季エンタープライズさんの所で行う予定だよ」
 井辺:「電機メーカーの社員だった社長が、全く業種の異なる芸能事務所の経営ができるのはそちら様のおかげですか」
 敷島:「四季エンタープライズの四季は、敷島のシキ。俺の伯父さんが芸能事務所やってて良かったよ。で、『伯父さんの所でボカロを本格プロデュースさせてください』って頼んたら、笑われて断られたからね。『じゃあ、いいです。自分で売り出しますから!』って少しキレ気味に言ったら、開業資金からノウハウやら意外と面倒見てくれた」
 井辺:「いい人なんですね」
 敷島:「どうだかな」

 敷島は首を傾げた。
 敷島エージェンシーの資本金は、つまり親族の会社から出ているということが露呈したわけだ。
 もちろん、初期に借り受けた開業資金などは既に返済している。

 敷島:「今週末には宮城に行くよ」
 井辺:「鏡音さん達のライブですね。あ、そうだ。社長、MEIKOさんとイメージキャラクター契約をしている酒造メーカーさんからで、今週末MEIKOさんをお願いできないかと頼まれまして……」
 敷島:「また?結構急に頼んでくるよな、あそこ」
 井辺:「ええ。幸い土曜日だけでしたら、MEIKOさんは空いているようですが……」
 敷島:「分かった。じゃあ、MEIKOはついでに土曜日俺が見て来るよ。イベントの内容、教えて」
 井辺:「はい。事務所に戻りましたら、すぐに資料を」

 シンディのセリフが無いが、これは2人の人間のやり取りをシンディ目線で見ているからである。

[同日19:30.天候:曇 豊洲駅前バス停→都営バス東15系統 3号機のシンディ&敷島孝夫]

 今日は敷島達、森下のマンションではなく、大宮の家に帰ることにした。
 アルエットの修理は4月にオープンのロボット科学館に合わせて終了することになっているが、ただ直して終わりというわけではない。
 当然、起動テストなど行わなければならない。
 設計図は手に入っていたとはいえ、最新モデルの機種だけに、アリスは口では自信満々だが、結構冷や汗モノだったらしい。
 そんな修理も今日で終わり。
 明日から起動テストに入るということで、敷島も立ち会うことにしたのである。
 それはシンディも同行する。

 敷島:「何だか、降り出しそうだなぁ……」

 夕方ラッシュで賑わうのは地下鉄やゆりかめの方で、バスはそうでもない。
 乗り場によっては長蛇の列ができているのだが、これから東京駅に向かうバス停の方は疎らだ。

 シンディ:「明日は雨らしいよ」
 敷島:「外に出る時に限って雨か。俺もついてないなぁ……」
 シンディ:「でも土壇場で運がいいからいいじゃない」
 敷島:「まあな」

 そうしているうちに、バスが豊洲駅前のロータリーに入ってくる。

〔「勝どき経由、東京駅行きです」〕

 バスは空いていた。
 敷島は着席したが、シンディはそれをせず、敷島の横に立つ。

 シンディ:「社長も車通勤したら?」
 敷島:「自分で運転するの面倒だしなぁ……。ボカロの送迎だったらいいんだけど、俺は電車でもバスでも平気で乗っちゃうからなぁ……。お前、運転してくれよ?」
 シンディ:「ロイドが免許持てるわけないでしょ」

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスが走り出した。

〔毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは勝どき橋南詰、聖路加病院前経由、東京駅八重洲口行きです。次は豊洲二丁目、豊洲二丁目。……〕

 敷島:「せめて、俺の伯父さんの会社くらいまででっかくなったら、俺も運転手付きのでっかい車で通勤するよ」
 シンディ:「だといいねぇ……」

 車内の広告には、四季エンタープライズに所属する有名タレントのポスターが掲示されていた。
 もちろん、人間のタレントである。
 敷島の伯父は、しっかりと役員車で通勤しているという。
 車種はレクサスの何とかと言ったか。

 敷島:「伯父さんがレクサスなら、俺は都営バス1台貸切で通勤してやるw」
 シンディ:「そこ!?」
 敷島:「新事務所のビルの真ん前は、どこかの企業さんの送迎バス発着場になってるから、俺のバスも横づけOKだろ?」
 シンディ:「いや、そういう問題じゃないと思うけどねぇ……」

 シンディは呆れてしまい、後でダンナの行動をモニタする為にシンディのメモリーをチェックしたアリスも、さすがに紅茶を吹いたという。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「ガイノイドの週末」 3

2016-02-28 22:34:34 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月28日18:15.天候:晴 東京都内某所・とあるライブハウス 3号機のシンディ、初音ミク、井辺翔太]

 初音ミク:「……いつまでも待ってるから♪私だけの王子様ー♪」

 今日はミクのソロライブが行われている。
 ボーカロイドの中でもトップアイドルを誇るミクは、1曲歌い終わる事に大歓声が沸き起こる。
 ただ、ボーカロイドならではの悩みもあった。
 それは精密機械の塊であるが故、熱は大敵である。
 その為、ダンサブルな曲の後は体の冷却が必要になるので、連続での歌唱ができないというものだった。
 とはいうものの、技術開発部門も手をこまねいてるわけではなく、今では連続歌唱は無理でも、いちいち舞台裏に引っ込んで冷却する必要は無く、トークで繋ぐなどして、その間、冷やすということが可能になった。

 ミク:「皆さーん、こんばんはー!改めまして、今日はわたしのライブに来て頂いてありがとうございまーす!今日は……」

 舞台裏ではライブに付き添っている井辺と、護衛のシンディがいた。

 シンディ:「さすがはミクだね。これだけ売れれば十分なんじゃない?」
 井辺:「初音さんは社長が最初に手掛けたボーカロイドです。当然ですよ」

 シンディの言葉に井辺は大きく頷いた。

 井辺:「ボーカロイドの人気は確立されました。証拠に今、色々なメーカーからボーカロイドが生産されています。ですが、うちはベテラン勢として常に先を独走するつもりです」
 シンディ:「さすがだね」

[同日19:00.同ライブハウス・バックヤード 上記メンバー]

 ミク:「今日はありがとうございましたー!わたし、まだまだこれからも頑張りますから、応援よろしくお願いしまーす!」

 ミク、ファンの歓声をあとに舞台裏に戻って来る。

 井辺:「お疲れさまでした」
 ミク:「ありがとうございます!」
 シンディ:「ミク、ご苦労様」
 ミク:「シンディさん、ありがとうございます」
 井辺:「控室に氷とラジエーターを用意してあります。それでまずは体を冷却してください」
 ミク:「はい!」
 シンディ:「社長には、ミクはよく頑張ったって伝えておくわ」
 ミク:「ありがとうございます!」

 シンディがまだドクター・ウィリーのロボットだった頃、ボーカロイドは当然ウィリーの目につき、シンディに潰し命令が出されたことがある。
 南里研究所(当時)の既に看板アイドルだったミクを破壊すれば手っ取り早いと判断したシンディは、すぐにミクを襲った。
 しかしすぐにエミリーの妨害に遭い、悉く失敗した。
 そこで小柄な鏡音リンやレンを誘拐したが、やっぱりエミリーの方が1枚上手だった。

 シンディ:「今は私がエミリーの代わりだから。昔の私とは違う」
 ミク:「ハイ。『鬼軍曹』ですものね」
 シンディ:「え?……いや、そんなことはないよ。『鬼軍曹』は、エミリーだよ。とても、あの姉機にガチバトルで勝てる気がしない」

[同日19:30.都内某所の道路 上記メンバー]

 井辺運転の車でライブハウスを出る。
 出口には出待ちのファンが集っていて、ミクに応援メッセージを向けたりしていた。
 助手席にはシンディがいた。
 護衛として同乗しているのだから当然の乗車位置であるが、何故か応援メッセージの中にシンディの名前が書かれたものもあったような気がした。
 人間なら『気のせい』扱いできるが、ロイドの宿命で、既に自分のメモリーに録画されている。
 で、それを井辺がスルーしない。

 井辺:「シンディさんも、人気が出てきましたよ」
 シンディ:「私は何もしてないし。私はあくまでボーカロイドの護衛だし」
 井辺:「私はプロデューサーとして、シンディさんもプロデュースしたいくらいです」
 シンディ:「だから用途外だし、そもそも歌えないし」
 ミク:「大丈夫ですよ、シンディさん。弱音ハクさんも歌唱機能テストに不合格にはなったそうですが、それ以外のテストには合格しています」
 シンディ:「……知ってるよ。それで、今では女優やってるんだろ?」
 ミク:「だいぶ前、ミュージカル“悪ノ娘と召使”で共演させてもらったんですけど、ハクさんの演技凄かったです」
 井辺:「ええ。人間の女優さんに負けず劣らずでした」

 ミュージカルというと、演技をしながら歌も歌う歌劇であるわけだが、歌を歌えない機種はどうするのかというと、やっぱり歌わない。
 歌うのはミクなどのボーカロイドで、弱音ハクなどは他のボーカロイドの歌に合わせて踊るだけであった。

 ミク:「またわたし、ミュージカルとかやってみたいです」
 井辺:「いいと思います。私もその仕事が取れるように頑張りますし、社長にも伝えておきます」
 シンディ:「映画の仕事はどうなの?“初音ミクの消失”も、かなり人気が出たよね?」
 井辺:「実は今度、ドラマ出演の話は出ているのですよ」
 シンディ:「へえ!」
 井辺:「ただ、あまりシンディさんの前では話せない内容なのです」
 シンディ:「何で?」
 井辺:「実はその……社長が大活躍された“東京決戦”をモチーフにしたストーリーなのです」
 シンディ:「あー……」

 ドクター・ウィリーが都内の高層ビルに潜伏していることを突き止めた敷島達。
 しかし、それを感知したウィリーは迎撃態勢を取る。
 それはつまり、シンディもまた中ボスとして立ちはだかることを意味していた。
 敷島達にとっては、中ボスどころか大ボス並みの力を持ったシンディ。
 しかし既にウィルスの実験台にもされていたシンディの人工知能は既に冒され尽くし、最後には敷島の見ている前で、製作者であるウィリーを手持ちの大型ナイフで惨殺するという暴走に至った。
 

 井辺:「あくまで企画です。あれには公安委員会からの待ったが掛かっているので、多少難しいところです」
 シンディ:「だろうねぇ……。あ、そうだ、プロデューサー」
 井辺:「何でしょう?」
 シンディ:「私、来週、社長に同行して東北まで行くんだけど、プロデューサーはどうするの?」
 井辺:「私は通常通りの業務をさせて頂きます。ただ、事務所の移転などもありますので、そちらに立ち会うことになるかと」
 シンディ:「サーバーがどうのって言ってる場合じゃないよねぇ……」
 井辺:「バージョン4.0以前の機種は全て破壊するべきだった、と私は思っています」
 シンディ:「だよねぇ……。よく私も姉さんも、あんな使えない連中使ってたと思うよ」
 ミク:「あの、わたしも……」
 井辺:「はい?」
 ミク:「わたしも、使えなくなったら破壊されますか?」
 井辺:「心配要りませんよ。初音さんは十分、人間の役に立っています。現に、ファンの人達に夢を与えているではありませんか」
 シンディ:「そうだよ。今ここでミクを廃棄処分になんかしたら、ファンの人達がブチギレてプロデューサー、殺されちゃうよ」

 シンディは笑みを浮かべた。
 だが、

 シンディ:(1度は廃棄処分されただけに、私は何か実感あるなぁ……」

 とも思ったのだった。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「ガイノイドの週末」 2

2016-02-27 20:53:12 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月26日20:45.天候:晴 JR上野駅・低いホーム 3号機のシンディ&敷島孝夫]

〔「13番線、お下がりください。20時50分、当駅始発の高崎線普通列車、籠原行きが長い15両編成で参ります。黄色い線まで、お下がりください」〕

 下り方向から行き止まりのホームに向かって、E231系電車が入線してくる。
 眩いHIDヘッドランプを照らしてやってくるのを見たシンディは、

 敷島:「対抗しなくていいから!」
 シンディ:「はーい」(自分もまた両目をハイビームに光らせた)

〔「業務連絡、13番857M、準備できましたら、ドア操作願います」〕

 入線してきた中距離電車、グリーン車の座席は既に下り方向に向けられていた。
 停車してしばらくすると、駅員の業務放送があり、それでドアが開く。

〔「前の方に続いてご乗車ください。20時50分発、高崎線普通列車、籠原行きです」〕

 5号車に乗り込んだ2人、2階席へ行く。

 敷島:「シンディ、寝ちゃったら起こしてくれよ」
 シンディ:「ええ」
 敷島:「アリス、何か言ってた?」
 シンディ:「いえ、別に。お坊ちゃんのお世話で忙しいんじゃない?」
 敷島:「トニーか。まあ、そうだな」
 シンディ:「二海も頑張ってると思うけど……」

 二海とは平賀がトニーの誕生を祝って製造したメイドロイドである。
 一海や七海と同じ“海組”とされ、かつてのメイドの仕事の1つであったベビーシッターに特化した機能を持つ。
 メイドロイドにはマルチタイプやバージョン5.0のように、同型機を兄弟・姉妹とする概念が無い。

 敷島:「二海がいなかったら、大変なことになってたなぁ……」
 シンディ:「週末は私がいるからいいけどね」

 メイドロイドにもメンテの時間は必要であり、この間はシンディが二海の仕事を引き継ぐ。
 マルチタイプはその名の通り、何でもできるから、メイドロイドの仕事もできる。
 平賀夫妻の2人の子供もまだ幼いが、こちらはエミリーが面倒を見ることはなかった。
 アリスと違い、平賀奈津子は仕事を休むことができたし、実家の援助にも期待できたからである。

 20時50分。13番線ホームに、発車メロディが鳴り響く。(https://www.youtube.com/watch?v=AhMK940sSZk)
 井沢八郎の“あゝ上野駅”である。

 シンディ:「ミクが聴いたら、歌い出しそうね」
 敷島:「ああ、そうだな」

 電車は旅愁漂う発車メロディの後、ドアを閉めてゆっくりと発車した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は高崎線、普通電車、籠原行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。……次は、尾久です〕

 シンディ:「『メインバッテリーが20%以下になりました。サブバッテリーに切り替えます。サブ残量、98%……』」
 敷島:「メインが1日持たないって、どういうことだ?」
 シンディ:「バッテリーパックが古くなったかなぁ……」
 敷島:「バッテリーも新しいものに変えた方がいいかもな。アルエットみたいに燃料電池にしてもらうか?あれなら2〜3日持つぞ?」
 シンディ:「アルとは体内の構造がそもそも違うからダメだと思うよ」
 敷島:「バージョンシリーズの燃料は、ガスだしなぁ……」
 シンディ:「歩くガスボンベだから嫌よ」
 敷島:「……だな。マリオとルイージだって、何気に燃料電池だぞ?」

 因みに発電に使用するガスは、しっかりタクシー会社御用達のガススタンドで手に入れているという。
 タクシーの燃料もLPガスであるため。
 アルエットはCNGガスである。
 バージョン4.0以前の型式は本当に燃料がガスであるため、背中にガスボンベを背負ったようなデザインになっている。

 シンディ:「LPガスじゃ大したパワーは出ないと思ってたけど、そうでもないみたいね」
 敷島:「そことはアリスも、考えて作ったんだろう」

[同日21:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区桜木町・敷島の賃貸マンション シンディ、敷島、アリス]

 敷島:「ただいまァ」
 シンディ:「只今、帰りました」
 アリス:「おそーい!特急で帰って来なさいよ」
 敷島:「アホか!大宮までなら、上野駅を先に出発した電車が先に到着するんだ。それより、来週の件なんだけど……」
 アリス:「先にお風呂に入って来てからにして。トニーにインフルエンザが移ったら大変でしょ!」
 敷島:「俺は感染者か!」
 シンディ:「まあまあ、社長。ウィルスには潜伏期間があります。万が一、感染しているにも関わらず、まだ発症していないだけかもしれません。健康保菌者ってヤツですね」
 敷島:「む、そうか……」
 アリス:「シンディの言う通りよ。症状が出ていなくても、他人に感染させることはできるんだから」
 敷島:「まあ、可能性も無くは無いが……。(何気に俺、感染者扱いされてねぇ?)まあいや。とにかく、着替えてくる」

 夫婦がそんなやり取りをしている間、

 シンディ:「二海、ご苦労さん。あとは私が引き継ぐ」
 二海:「シンディさん。トニーお坊ちゃまは、寝入られたところです」
 シンディ:「了解。じゃあ、あとは充電していいよ。明日からメンテだったね」
 二海:「はい。よろしくお願いします」

 二海はシンディに引き継ぐと、自分は納戸(サービスルーム)に向かった。
 このマンションの間取りは2LDK+Sである。
 日本語では納戸と呼ばれる3畳ほどの広さのサービスルームが、ロイドの控室として使われている。

 シンディ:「お坊ちゃま、こんばんはー」

 シンディはベビーベッドで眠るトニーに微笑んだ。
 もし仮にトニーが成長した時、回顧で、『自分が幼い頃、胸の大きいメイドロボ2機に面倒見てもらった』とでも言うかもしれない。

[同日22:00.同場所 シンディ]

 敷島:「シンディ、お前も体洗ってこいよ」
 シンディ:「いいんですか?」
 アリス:「接待の時、タバコの煙とか浴びたでしょ?臭いとかついてるわよ」
 シンディ:「も、申し訳ありません!」

 シンディらロイドの短所として、嗅覚が無いことである。
 味覚も無いが、料理は全てデータ通りに作る為、ハズレは無い。
 シンディはバスルームに入ると、着ていたコスチュームを脱いでシャワーを浴びた。
 基本的にお湯は使わず、水である。

 アリス:「服は洗っておくから、別なの着なさい」
 シンディ:「ありがとうございます」

 シャワーで汚れを落とした後、アリスにそう言われた。
 別の服といっても、同じデザインの服である。

 アリス:「ぷっ……」(アリス、思い出し笑いをする)
 シンディ:「どうかなさいましたか?」
 アリス:「あなたのメモリーを見たんだけど、バージョン4.0の対応で面白いのがあったね。あなたがシャワー使っているのを見て、思い出しちゃった」
 シンディ:キュルキュルキュルキュルキュル……。(アリスの言わんとしていることと、自分のメモリーの中で最適な物を探している)「ああ!もしかして、4.0がガソリンスタンドの洗車機で自分の体を洗ってたヤツですか?」
 アリス:「そう!それ」
 シンディ:「ガソリンスタンドから、『ロボットが洗車機で自分の体を洗っていて困る』という知らせがあったので、駆け付けてみたら、シャワーのつもりで使っていましたね。『シンディ様モ、御一緒ニドウデスカ?』なんていけしゃあしゃあと言ってきました。『営業妨害だからやめろ!』と注意したんですが、『金ナラ払ウ!』ってな始末で」
 アリス:「万引き犯が捕まった後に言うセリフじゃないんだから……」
 シンディ:「バッテリーの蓋開けて、『ここも洗いな!』ってショートさせましたけどね」
 アリス:「あなたもやることエグいねぇ……」
 シンディ:「人間に迷惑を掛ける奴らに、情けは必要ありません」
 アリス:「分かったわ。トニーのことは、あとは私に任せなさい」
 シンディ:「よろしいのですか?」
 アリス:「母親として息子の面倒を見るのは当然よ。あなたも充電していなさい。メインバッテリーが切れたんでしょう?」
 シンディ:「はい。……アリスお嬢様も、御立派になられましたね」

 シンディとアリスとは、アリスが子供の頃からの付き合いである。
 ウィリーにその才能を見出されたアリスは児童養護施設から引き取られ、後継者として育てられた。
 その頃からシンディとは付き合いがある。
 もっとも、当時のシンディは前期型のテロリズムロイドで、既に主のウィリーを守る為と称していくつもの治安機関(主に地方警察)を壊滅させていた。

 アリス:「あなたも変わった。目つきが優しくなったよ」
 シンディ:「私は人間ではありません。そのようなことがあるのでしょうか?」
 アリス:「後期型だから、かもね」

 もっとも、後期型といっても、前期型の予備機として用意されていただけで、特に外観上……どころか内部の違いがあるわけではない。

 シンディ:「では、お言葉に甘えて、充電させて頂きます」
 アリス:「うん」
 シンディ:「何かありましたら、いつでもお呼びください」

 シンディは既に二海が充電している納戸に向かった。
 尚、深夜電力での充電になるので、実際は23時以降に自動で充電されるように設定されている。
 こうして、少しでも維持費を安くしようとしているわけである。
コメント (4)
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