報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの異変!」 2

2023-02-27 20:33:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月21日21時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 マンション裏手の駐車場に、救急車が到着する。
 といっても、普通の救急車ではなく、BSAAが保有する軍用の救急車だった。
 自衛隊の野戦用または災害派遣用救急車のそれに似た外観をしている。
 自衛隊のそれと同様、見た目はゴツいトラックの形をしていた。
 くすんだ緑色の車体の横っ腹に、大きく赤十字のマークがペイントされている。
 覆面パトカーに付けられているような赤い回転灯が点灯していた。
 自衛隊と区別する為か、赤十字の下には白地でBSAAともペイントされている。

 善場「お待たせしました!」

 白い防護服に身を包んだ善場主任と、BSAAの隊員数名が駆け付けた。

 善場「リサの状況は!?」
 愛原「あ、はい。何度か嘔吐を繰り返した後、意識を失いました。その時のショックか、第0形態から第1形態へと戻っています」
 BSAA隊員1「直ちに搬送します!」
 善場「よろしくお願いします」

 リサはベッドに寝かせていたが、BSAA隊員達はリサをそこからストレッチャーに乗せた。
 やっていること自体は、普通に消防署から出動してきた救急隊員なのだが……。
 
 BSAA隊員2「あなた達は離れて!」

 ここは日本かと思うほどの銃火器で武装しているところは、やはり軍隊だろう。
 BSAAは国連軍の一派であり、バイオテロある所、BSAAありと呼ばれている。
 これに批准している国家は、国軍と連携または別行動での活動が認められている。
 日本においては、自衛隊や在日米軍がその連携先とされている。
 しかし今回、自衛隊などの姿は見えなかった。
 つまり、BSAA極東支部日本地区本部隊が独自で出動しているのだ。
 もちろん、活動に当たっては、銃火器の使用も認められている。
 彼らは自衛隊とも在日米軍とも違うのだ。

 愛原「善場主任、私達は……」
 善場「そうですね。皆さんにも来て頂いた方がよろしいでしょう。すぐにご支度をお願いします」
 愛原「はい!……高橋、急ぐぞ!」
 高橋「はい!」

 リサは先に救急車まで搬送された。

 善場「今のところ、大きな変化は無いようですね。最悪、制御不能の状態まで変化することも予想されたのですが……」
 愛原「……!」

 私は今まで、制御不能となって化け物と化した日本版リサ・トレヴァー達を思い出した。
 今までが、奇跡だったのだ。
 『2番』のリサは、確かに特別だった。
 だけど、それは当たり前ではない。
 偶然に偶然が重なり、更に偶然が重なった、それこそ宝くじで何億円もの賞金が当選したくらいの奇跡に過ぎない。

 愛原「場所は、浜町の診療所ですね?」
 善場「そうです。救急車とは別に車を用意してあります。それで参りましょう」

[同日22時00分 天候:雨 東京都中央区日本橋浜町 某診療所]

 リサを乗せた軍用救急車と、その後ろを付いていく私達。
 それは何の車だか分からないが、シルバーのクラウンの覆面パトカーだった。
 これもBSAAの車なのか、はたまた警察関係の車なのだろうか?
 運転しているのは、善場主任の部下だと思われる。
 そして主任は助手席に座り、私達はリアシートに座っていた。
 高橋はパトカーのリアシートに乗っているということで、物凄く居心地が悪そうにしていたが……。
 車は例の診療所の入っているビルの、地下駐車場へと入って行く。
 そして荷捌き場に止まり、車はそこに停車した。

 愛原「やっぱりエレベーターに乗せて行くか……」

 大きなビルであり、当然ながら防災センターもある。
 そこには警備員達が詰めているわけだが、搬送されてきたのが化け物とあらば、警備員達も通常の動きはできなかった。

 警備員「7階まで直行で行けるように、設定してあります!」
 BSAA隊員1「了解!」

 確かにこういう時、警備員が同行するのだが、さすがにこれは無理だったようだ。
 何しろ、防護服を着用する事態なのだから。
 因みに私達は、着用していない。
 そして、診療所のある7階まで直行する。

 愛原「!?」

 診療所に入ると、入ったこともない場所へと向かった。
 ドアには小さく、『特別処置室』と書かれていた。
 通常の処置室は別にある。
 これが、リサを受け入れられる大きな理由であった。

 愛原「リサは大丈夫なんでしょうか?」
 善場「分かりません。ですが、制御不能の状態となりますと、殺処分もあり得ます」
 愛原「殺処分……」
 善場「安全の為です。ご理解ください」
 愛原「今はまだ大丈夫なんですよね!?」
 善場「今は……ですね」

[同日22時20分 天候:雨 同診療所]

 医師「特異菌に不確定の反応があります。恐らく、特異菌が彼女にとって、不適合だったのでありましょう。それをTウィルスが抑え込んでいた為、通常通りの生活が送れていたものと思われます。何らかの内外的な要因により、Tウィルスの力が弱まったか、或いは逆に特異菌の力が強まったかして、バランスが崩れ、特異菌が増殖し、彼女の体と精神を蝕んでいるものと思われます」
 愛原「Gウィルスは?Gウィルスでは何とかできないのでしょうか?」
 医師「Gウィルスは、あくまでも遺伝子の変化を起こすもの。よって、特異菌に干渉することはないのでしょう」
 愛原「特異菌を弱らせるか、Tウィルスを強めるかのどっちかか……」
 善場「それで、このままですと、彼女はどうなりますか?」
 医師「良くて植物人間のようになり、悪くて特異菌に支配され、転化が起こるものと思われます」
 愛原「それなら、特異菌の治療薬を投与すればいいのでは?BSAAにあるんですよね?」
 医師「それは危険です。今度はGウィルスが暴走する恐れがあります。Gウィルスもまた制御が困難なウィルスです。それができたのは、Tウィルスがバランス役になっていたに過ぎません。それを今度は特異菌が抑えている状態なのです。特異菌だけ排除したら、今度はGウィルスが暴走する恐れがあります」

 あっちを立てればこっちが立たずか……。

 高橋「万事休す……ですね」
 愛原「うう……」

 何か……何か方法は無いのか!?
 その時、私は公一伯父さんの姿を思い出した。

 愛原「公一伯父さんの薬って……使えませんかね?」
 善場「えっ!?」
 愛原「公一伯父さんの……化学肥料ですよ。どんな枯れた苗でも、立ちどころに復活させるという……」
 善場「な、何を仰ってるんですか?」
 医師「その薬品の名前、何と言いますか?」
 愛原「えっと……」

 私はスマホを取り出した。
 確か、伯父さんとのメールのやり取りの履歴に、薬品の名前が出てきたはずだ。

 愛原「ああ、ありました。『アイコール』です」

 変な名前だが、伯父さんの発明品ということで、愛原の愛と公一の公から取って付けた名前だと聞いた。

 医師「アイコールか……」
 善場「科学肥料なんか投与したって、意味がありませんよ?」

 さすがの善場主任も、表情を変えていた。

 善場「白井の発明品と掛け合わせて、遺骨を蘇らせるなんて、やりましたけど……」
 医師「……いや、実は実験の段階で、あの薬品には別の使い方があることが分かりました」
 善場「別の使い方?」
 医師「Gウィルスを弱らせる方法です。アイコールには、Gウィルスを弱毒化させる効果があるとの実験結果が出ています。それでもってGウィルスの暴走を抑えるのです。そしてTウィルスには既にワクチンがありますし、特異菌にも治療薬があります。それを両方投与するのです。そうすれば、これら3つのどれかでも暴走せずに、彼女を治療することができるでしょう」
 善場「そんな上手い方法が……」
 愛原「いえ、主任!やりましょう!このまま何もしないよりはマシです!」

 私は公一伯父さんに電話した。

 愛原「もしもし、伯父さん!?急な話で申し訳ない。実は……」

 私の話に公一伯父さんは、『本当に急な話じゃのー』と驚いていた。
 だが……。

 公一「分かった。そういうことなら、すぐに譲ろう。お前が来るまで起きているから、すぐに取りに来なさい」

 と、言ってくれた。

 愛原「すぐに行きます!まだ、新幹線の終電に間に合うはずなので……」
 善場「先ほどの車を使ってください。部下には、私から連絡しておきます」
 愛原「分かりました!行くぞ!」
 高橋「はい!」

 私と高橋は、急いでエレベーターに向かった。
 
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“私立探偵 愛原学” 「リサの異変!」

2023-02-27 15:55:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月21日15時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場「特異菌に特化した検査キットが今日届きました。明日、リサを例の診療所までお願いします」
 愛原「分かりました。午前中に伺いますよ」
 善場「よろしくお願いします」
 愛原「クリニックは9時からですかね?」
 善場「そうですね」
 愛原「分かりました」

 リサが虫を食べて体内に寄生虫を有するようになったのは、偏に特異菌に感染したから。
 しかし、通常の人間と違い、体内に有していたGウィルスやTウィルスにより、それを子飼いにすることができた。
 特異菌の感染場所は、恐らく東京中央学園の旧校舎。
 今は教育資料館として使われているが、とある事件により半壊し、現在はリニューアル工事中である。

 愛原「それでは明日、よろしくお願いします」
 善場「こちらこそ」

 私はデイライトの事務所をあとにした。
 因みに、高橋は連れてきていない。
 事務所で留守番させている。
 私はリサにLINEを送った。
 再々検査のことは既に伝えてあるので、学校が休みの土曜日であれば大丈夫だろう。
 予想通り、リサからは了承の旨の返信が来た。
 デイライトの事務所から菊川まで乗り換え無しで戻れるのは、都営バスである。
 本数も多く、都内の道の割には渋滞にハマることもないので、よく利用している。
 いつもの通り、例のバス停に行こうとした時、ふとリサのことが気になった。
 ので、もう1度LINEしてみることにした。

 愛原「もし良かったら、学校まで迎えに行こうか?」

 と。
 いつものリサなら、『おー!一緒に帰ろう!』と、喜びの返信をしてくるのだが……。

 リサ「別にいいよ。先生も忙しいんでしょ?わたし、別に1人で帰れるよ」

 とのことだった。
 これは……リサもそろそろ反抗期かな?いや……。
 すぐに返信できるわけだから、恐らく体調は大丈夫だ。
 しかし……。

 愛原「今、デイライトの事務所にいるんだ。上野までだったら、電車1本で行けるからさ」

 と、返してみた。
 それでも……。

 リサ「だから、大丈夫だって。気を使ってくれなくてもいいよ」

 ということだった。
 これは……。
 心配になった私は、栗原蓮華にLINEを送ってみた。
 学年は違うが、同じく文化祭関係などでまだ学校にいるだろう。

 蓮華「蓮華です。今しがた、リサのクラスを覗いてみましたが、リサは下校してました。『魔王軍』のメンバーに聞いてみますと、他にも『四天王』と一緒らしいです」

 とのことだった。
 『四天王』とは同じクラスの淀橋さんと小島さん、そして1年生の上野凛と桜谷さんだ。
 学年が違うから、『四天王』と一緒に帰ったというのは、淀橋さんや小島さんのことだろう。
 不良グループと違うのは、別にケンカの強弱でヒエラルキーを決めているわけではなく(それでもリサが最強であることは事実だが)、最強のリサに気に入られた順というわけだ。

 愛原「分かった。ありがとう」

 しょうがないので、私はバス停へと向かった。

[同日18時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原「ただいま」

 私は事務所を閉めて帰宅した。
 キッチンからは、香ばしいカレーの匂いがしている。

 高橋「お帰りなさい」
 愛原「今日はカレーか」
 高橋「リサのリクエストで、ビーフたっぷりのカレーですよ」
 愛原「藤野で出されたのはポークカレーだったもんな。……そのリサは?」
 高橋「部屋にいます」
 愛原「そう、か……」

 リサの部屋に近づくと、室内からは何も聞こえなかった。

 愛原「なあ、高橋」
 高橋「何ですか?」
 愛原「リサが帰ってきた時、何か様子がおかしかったとかは無いか?」
 高橋「いや……特にそんなことは無かったと思いますけどねぇ……」
 愛原「そうか……」

 まあ、夕食時になれば、嫌でも出てくるだろう。
 私も自室に行って、私服に着替えることにした。
 そして……。

 高橋「できましたよ」
 愛原「おーう」

 夕食の時間になった。
 すると、待ち構えたかのように、リサが部屋から出てきた。
 体操服に紺色ブルマを穿いている。
 見た目は普通だった。

 リサ「いただきまーす」
 愛原「あ、ああ、食べようか」

 見た目は普通だった。

 愛原「なあ、リサ。もしかして、俺のLINEは余計だったか?」

 と、聞くと……。

 リサ「結果的にはね。わたしも生理が来てるし」
 愛原「そ、そうだったのか。重くないのか?」
 リサ「今のところはね」

 と、素っ気ない返事。
 なるほど。
 生理が来たので、少し機嫌が悪かったのか。
 いや、しかしなぁ……。
 いつも、こんなんだったっけ?

 リサ「ご馳走様でした」

 リサは真っ先にカレーやおかずなど、一通り平らげると、それで夕食を終了にした。

 愛原「もういいのか?」
 リサ「うん」
 愛原「いつもカレー、おかわりしてるだろ?」
 リサ「今日はいいや。また今度ね。それじゃ」

 リサは自分の食器をシンクに持って行くと、再び自室へと引っ込んで行った。

 愛原「……おい、高橋」
 高橋「うーん……確かに、ちょっと変っスねぇ……。このままだと、カレーや米が余って、勿体無いっスよ」
 愛原「カレーは取りあえず、小分けにして冷凍庫に入れておけ。常温だと、細菌が繁殖するから」
 高橋「う、うス」

 一応、代わりに一杯、小盛りでおかわりはしておいた。
 それにしても、だ。

 愛原「明日、再々検査がある。一応、リサの様子は、俺からお医者さんに伝えておこう」
 高橋「その方がいいっスね」

 だが……。

[同日21時00分 天候:雨 愛原のマンション]

 愛原「急に雨が降って来たな……」

 私は先に風呂に入った。

 高橋「そうっスね」
 愛原「次は、リサに入ってもらった方がいいかな?あいつ、俺の残り湯に入りたいとか言ってるだろう?」
 高橋「それは俺も同じ……あー……いや、分かりました。ここは1つ、リサに譲ります」
 愛原「すまんね」

 するとリサが部屋から飛び出してきた。

 愛原「リサ、俺の次に風呂……って!?」

 しかし、リサは風呂ではなく、トイレに飛び込んだ。

 愛原「!?」

 そこでリサは、嘔吐していた。
 生理の症状の1つか?
 いや、しかし……。

 愛原「大丈夫か、リサ?」
 リサ「うぐ……っ!げェ……!!」
 愛原「リサ!?」

 リサはただ単に嘔吐しただけではなかった。
 最初は夕食に食べた物を全部吐き出したといった感じだったが、今度は胃液と一緒に寄生虫も吐き出した。
 リサの体の外から排出された寄生虫達は、殆どが死んでいたり、死にかけているものばかりであったが……。

 リサ「…………」
 愛原「お、おい!」

 何度も穿いた後、リサは意識を失った。

 愛原「大変だ!善場主任に連絡しろ!こいつはヤバいかもしれん!」
 高橋「は、はい!」

 リサは第0形態から、第1形態へと戻っていた。

 高橋は自分のスマホを手に取ると、善場主任に連絡した。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの異変」

2023-02-26 20:51:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月20日06時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原「今日は朝から雨か……」

 目を覚ました私は、窓の外を見て呟いた。

 愛原「おはよう」
 高橋「あっ、先生。おはようございます」

 今日辺り、リサの再検査の結果が来ると善場主任が言っていた。
 その結果をうちの事務所に持って来てくるということなので、事務所はしっかり開けないといけない。

 愛原「リサは?」
 高橋「何だか早くに目が覚めたとかつって、俺より早く起きてアニメ観てました」
 愛原「そうなの!?」

 高橋は6時に起きるはずだ。
 先に起きて顔を洗い、朝食の準備をしてくれる。
 高橋としては、『住み込みの弟子として、これくらい当然っス!』と言ってはいるが……。

 愛原「それでリサは?」
 高橋「今、シャワーを浴びてますよ」
 愛原「あれ?でも昨夜、ちゃんと風呂入ったよな?」
 高橋「本人は『寝汗かいたから』っつってましたけど、きっとオナり過ぎたんスよw」
 愛原「……それくらい、元気ならいいんだがな」

 それが今日だけだというのなら、まあ、たまにはそんな日もあるだろうくらいにしか思わなかっただろう。
 しかし、リサの眠りが浅いのは今日に始まったことではないのだ。

 リサ「おはよう」

 バスルームから出てきたリサは、見た目は普通だった。
 特に顔色が悪いとか、目に隈が出来ているとか、そういう所はない。

 愛原「あ、ああ、おはよう。大丈夫なのか、リサ?」
 リサ「何が?」
 愛原「お前、ここ最近、寝つきが悪くて、眠りが浅いんだって?大丈夫なのか?」
 リサ「う、うん。大丈夫だよ」
 愛原「今日、再検査の結果が出る。それまでは、学校休んだ方がいいんじゃないのか?」
 リサ「別に、どこも悪くないよ。ズル休みはダメだよ」
 愛原「ま、まあ、そうなんだが……」

 そりゃまあ、もう1度言うように、リサの見た目はどこもおかしくない。
 しかし、連日の寝つきの悪さ、そして眠りの浅さは、普通の人間にとってはダメージだ。
 もちろん、リサはただの人間ではないから、同じに考えてはいけないのは分かっている。
 それにしても、それにしても、だ。
 それまでは普通に寝つきが良くて、普通に眠れてたのが、急にダメになったとなったら、それは違和感のあることではないか?

 リサ「もしも検査で悪い結果が出たら、その時は早退するよ」
 愛原「知らず知らずのうちに、ウィルスをばら撒いていたとしてもか?」
 リサ「……いや、そんなことないでしょ。もしそうなら、先生やお兄ちゃんが真っ先にゾンビになってるはずだよ?」
 愛原「だって俺達は抗体があるからさ」

 Tウィルスの短所はいくつかあるが、その1つ、使用する側から見た短所だが、それは『10人に1人の割合で、最初から抗体を持っている者がいる』ということだ。
 BSAAの創設に携わったオリジナル11のメンバーは、全員がバイオハザードを経験しているが、誰もが感染者からの攻撃を受けていたにも関わらず、感染しなかったのは、偏に抗体を持っていたからだとされる。
 幸いにして、私もその1人だった。
 高橋は違ったが、変異前の感染力の弱い方のウィルスに感染していた為、発症する前にワクチンを使用できたことで、事なきを得ている(変異前のTウィルスは、感染してからゾンビ化するまで、数日ないしは1週間強の初期症状がある。変異後の株に感染すると、1日ないしは数日でゾンビ化する)。

 リサ「それもそうか。Gウィルスは……」
 愛原「それは俺も高橋も、ワクチン接種済みだ」

 そして、特異菌に関しても。
 だからリサの体内のウィルスが変異でもしない限りは、私達は感染しない。
 だが、もしかしたら、変異しているのかもしれないのだ。
 リサのその異変は、その信号かもしれない。
 今のところ私達には何の症状も無いが、感染無症状の状態なだけかもしれない。

 リサ「わたしは行く」
 愛原「……どうなっても知らないぞ」

[同日10時00分 天候:雨 同地区 愛原学探偵事務所]

 愛原「……と、いうようなことがありました」
 善場「そうですか」

 私は事務所を訪ねてきた善場主任に、今朝のことを話した。

 善場「愛原所長の危機意識については、素晴らしいことだと思います。ですが、リサの言う事にも一理あります」
 愛原「はあ……」
 善場「本人の具合が悪くなければ、学校を休む必要は無いでしょう」
 愛原「そうですか。それで、再検査の結果は……?」
 善場「『異常無し』です」
 愛原「ええっ!?」
 善場「落ち着いてください。要は、藤野のセンターでの検査と同じ結果が出ただけという意味です。Tウィルスの濃度は下がり、逆に特異菌の濃度が上がり、Gウィルスについては変わらないということです」
 愛原「すると、また再々検査ということですか?」
 善場「いえ、通常の検査は何度やっても、同じ結果が出るだけでしょう。リサの問診を行った医師の所見では、『精神的に不安定さがある』とあります」
 愛原「精神?」
 善場「これには思い当たることがありまして、特異菌感染者は知能や知性の低下はありませんが、精神が不安定になるという傾向があります。もっとも、100%適合したイーサン・ウィンターズ氏は除きます」
 愛原「リサは100%の適合者ではない?」
 善場「全くの不適合者というわけではないでしょうが、100%でもないでしょうね」

 適合率が0だと死亡する。
 低いとモールデッドなどのクリーチャーに転化する。
 中くらいだと、普段は人間の姿を保ってはいられるが、端々にクリーチャーの片鱗が現れる(例、ゾイ・ベイカーを除くベイカー一家)。
 高いとより人間に近いが、それでも狂人となる(例、感染中のミア・ウィンターズ)。
 100%だと、本人も自覚の無いまま人間としての生活が送れる(例、イーサン・ウィンターズ)。

 善場「Tウィルスを排除するほどの強い菌です。特異菌は」
 愛原「な、なるほど……。いずれは、Tウィルスが無くなると」
 善場「可能性はあります。もしかしたら、リサが体内で飼育している寄生虫にも変化があるでしょう」

 も、もしかして、代わりにリサの宿題やったりしたのは……。

 愛原「あ、あの……善場主任……」

 私は気になることを話した。

 善場「そういうことは、もっと早く仰って頂きませんと……」
 愛原「す、すいません。でも、藤野では寄生虫についても調査されたのでは?」
 善場「危険ですので、寄生虫の死骸を調べただけです。恐らく、特異菌の割合が増えたので、蟲達にも変化があったのでしょう」
 愛原「そ、そうなんですか……」
 善場「今度は特異菌に特化した検査をする必要があります」
 愛原「また、藤野ですか……」
 善場「行くのが大変でしょうからね。何とか、浜町の診療所で再検査ができないか、確認してみます」
 愛原「分かりました。取りあえず、リサはどうしますか?早退させますか?」
 善場「本人に何かしら、具合の悪い所が発生したらそうしましょう。本人にも、そのように伝えてください」
 愛原「分かりました」

 この時は、まだ平和だった。
 だが、もう少し、リサの方を注視した方が良かったのかもしれない。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの再検査」

2023-02-26 15:13:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月18日16時30分 天候:曇 東京都中央区日本橋浜町 某診療所]

 問診票を書いたリサは、レントゲン室近くの待合椅子に座った。

 レントゲン技師「愛原リサさん、中へどうぞ」
 愛原「はい。……リサ、呼ばれたぞ」
 リサ「う、うん。……先生は行かないの?」
 愛原「レントゲン室は、基本的に技師さんと患者しか入れないからね」
 リサ「……それもそうか」

 レントゲン室の中に入るリサ。
 放射能でBOWを倒すことは可能なのだろうか?
 恐らくBOWも生物である以上、可能なのだろうが、その後の処理が大変か。
 未だに放射能を除染するには、現代の技術を持ってしても多大な費用と時間を要する。
 BSAAがレールガンなどを装備していたとしても、核兵器を使わないのはそれが理由か。
 高圧電流で動きを止めることはできるので、それで動きを止めた後、集中砲火を浴びせて倒すという些か乱暴なやり方が通っているという。

 リサ「終わった」

 案外早めに撮影は終わった。
 撮影に当たり、上に着ていたニットやブラウスは脱がないといけないので、それをまた着るのに時間が掛かったようだ。
 尚、医師の問診がある為、ニットはまだ着ていない。

 事務員「次は検尿です。この紙コップに、尿を取ってください」
 リサ「はい」

 このフロアにも共用トイレはあるが、診療所内にもトイレはある。
 リサはそこの女子トイレに行った。
 ウィルス濃度を測るには、体液を調べるのが1番だ。
 だからなのか、検尿と採血が最も注視されたような感じであった。

 事務員「次は、採血です」

 もちろんリサの血は赤い。
 しかし、私の健康診断の時でさえ、せいぜい3本分くらいしか採血しないのに、リサは10本くらい採血されていた。
 恐らく、ここ以外にも検査に持って行くつもりなのだろう。
 リサの血液から、抗ウィルス剤が作れるかもしれないのだ。
 何しろ、エボラウィルスでさえ食い殺すGウィルスやTウィルスを保有しているのだから。
 しかもそれを、リサは自分の意志で操作できるのだから。

 検査技師「はい、目を大きく開いて。虹彩を撮ります」

 様々な検査が終わった後、最後は医師の問診。
 リサを診るのは、女性医師。
 だが、ここにいるのは、本当にこのクリニックの医師なのだろうか?
 BSAAから派遣されてきた医官かもしれない。

 医師「何か体に変わったことはないですか?」
 リサ「生理の時、前より重くなった」
 医師「……他には?例えば、手から白い液体が出るようになったとか……」
 リサ「それは無い」

 白い液体が出るというのは、特異菌感染者の初期症状の1つである。
 どうやらBSAAは、リサが特異菌を駆使するようになることを恐れているようだ。
 Gウィルスと特異菌がタッグを組んだら、どうなるのか……。

 医師「幻覚症状のようなものは?」
 リサ「……それも無い」
 愛原「あ、あの……!」

 私は口を挟まずにはいられなかった。

 愛原「彼女は最近、あまり寝つきが良くないようです。あと、このビルに入る前、フラッシュバックと思しき症状が発生しまして……」
 リサ「先生!」
 医師「記憶障害の症状の1つですね。フラッシュバックで、何を見ましたか?」
 リサ「……わたしに似た女の子。小学生の制服と、黄色い帽子を被って……」
 医師「そのコ、1人だけ?」
 リサ「1人だけ……」
 医師「背景は?」
 リサ「背景……」
 医師「ビルの中とか、外とか、海とか山とか……」
 リサ「山……かな?何か、草とか木とか生えていて……」
 医師「そうですか……」

 その女の子が誰なのかは分からない。
 しかし、リサにフラッシュバック現象を起こさせたきっかけとなった女子児童も同じ格好をしていた。
 コロナ禍の昨今、マスクを着けていて顔は分からなかったが、リサの消えた記憶の中に残っていた少女と似た雰囲気だったのだろう。
 もしかしたら、リサと同様に、日本アンブレラに捕まった女の子なのかもしれない。

 愛原「あと、眠りが浅いそうです。そうだな、リサ?」
 リサ「う、うん……」
 医師「眠りが浅いということは、夢を見やすいということですね。どんな夢をよく見ますか?」
 リサ「夢……それは……うっ……!!」

 リサが頭を抱えた。
 椅子から落ちそうになったので、慌てて体を支えてやる。

 医師「……何がしかのトラウマを抱えているようですね」
 愛原「そりゃ、アンブレラで非人道的な実験を受けてきましたからね」

 私はそれを思い出しているのかと思った。

 医師「…………」

[同日17時30分。天候:曇 某診療所の入っているビル]

 再検査が一通り終わり、私とリサは診療所をあとにした。
 リサの疲労が激しかったので、同じフロア内にあるリフレッシュコーナーに行く。
 ここには自販機はあるし、ベンチもある。
 リサに好きなジュースを飲ませて、落ちつかせた。

 愛原「どうだ?少しは落ち着いたか?」
 リサ「うん……」
 愛原「悪かったな。まさか、ここまでキツいとは……」
 リサ「ううん」
 愛原「帰りはタクシーにしよう。この時間だと、帰りの電車も混んでいるしな」

 乗車時間は短いのだが、またもやリサにフラッシュバック現象が発生したりするとマズいので。
 ジュースを飲み終えると、エレベーターホールに向かい、そこからエレベーターに乗って1階に下りた。
 それからバス停のある通りに出て、空車のタクシーを探す。
 平日の日本橋地区のバス通りなので、少し待てば空車のタクシーがやってきた。

 愛原「タクシー!」

 大手のタクシー会社のタクシーが私達の前で止まる。

 愛原「はい、乗って」

 トールワゴンタイプのタクシーだった。
 スライドドアが開くと、先にリサを乗せ、助手席後ろに私が乗った。

 愛原「菊川1丁目……までお願いします」
 運転手「はい、ありがとうございます」

 タクシーが走り出すと、私は高橋にLINEを送った。
 高橋はマンションで夕食の支度をしているはずなので、まもなく帰るという連絡である。
 善場主任には、既にメールで検査終了の報告をしている。
 すると、彼女からこんな返信があった。

 善場「お疲れ様です。あとは再検査の結果待ちですが、リサの動向については、より一層の監視強化をお願いします。できれば結果が出るまで、登校も控えるのが望ましいと思われます」

 とのことだった。
 私はびっくりした。
 確かにここ最近、リサの様子が変だとは思っていたが、デイライトはもっと深刻に捉えているようだ。

 愛原「さすがに不登校には無理があると思います。そこまでリサは、体調不良というわけではありません。再検査の結果次第で、休むかどうかを決めては?」

 と、更に返信すると、

 善場「判断は愛原所長にお任せします」

 とのことだった。

 愛原「善場主任は何かを御存知なのですか?もしそうなら、私にも説明しては頂けませんでしょうか?」

 と、送信した。

 善場「今はまだ憶測の段階です。再検査の結果がこちらに来ましたら、ご説明させて頂きます」

 とのことだった。
 その憶測が何なのかを聞きたいのだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの異変?」 3

2023-02-26 11:18:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月18日15時45分 天候:雨 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅前バス停→都営バス秋26系統車内]

 私は当初の予定の東京中央学園上野高校ではなく、秋葉原駅の中央口で待ち合わせることにした。
 リサからそうしてほしいと言われたのだ。
 恐らく、私と一緒にいると恥ずかしいとか、そういうことなのだろうと思った。
 直接、本人から聞いてはいないのだが。

 リサ「お待たせ」

 リサは単独でやってきた。
 まあ、今回は行く所が行く所だけに、『魔王軍』がぞろぞろ来られても困る部分はある。
 駅の外に出て、駅前ロータリーの外周部にあるバス停に向かう。

 リサ「地下鉄でいかないの?」
 愛原「行きはバスの方が楽なんだよ」
 リサ「ふーん……?」

 

 バス停に到着する。
 バス停の前は、ヨドバシAkibaの建物がそびえ立っている。

 

 愛原「学校はどうだった?」

 私は制服姿のリサに聞いた。

 リサ「特にも何にも無かった。わたしも、いつも通り」
 愛原「そうか。それは良かった」

 今朝は具合が悪そうにしていたが、今は回復したようだ。

 

 バスは既にバス停に停車していたが、まだ乗車は始まっていない。
 始発停留所に相応しく、ヨドバシカメラのラッピングをしたバスだった。
 当然ながら、ヨドバシカメラの店舗がある町でしか、このラッピングを見ることはできない。
 名物は、カメラのレンズ部分にタイヤホイールが来るようになっていること。
 発車の5分前くらいになってから、バスは所定の停車位置に移動し、それから前扉が開いた。

 愛原「大人2人で」

 行きのバス代は、私が2人分払っておいた。
 それから、後ろの2人席に着席する。

 リサ「再検査って、どういうことをやるの?」
 愛原「どうも、やり方は普通の健康診断と大して変わらないみたいだな。行き先は、見た目は普通のクリニックだし、そんなに構えなくてもいいんじゃないかな?」
 リサ「そう……」

 それから発車の時間になって、バスが出発した。
 ロータリーをグルッと回って、公道に出る。
 ロータリーのヨドバシカメラ側にもバス停はあるが、こちらは高速バス用である。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは浜町中の橋、江戸川車庫前経由、葛西駅行きでございます。次は須田町、須田町でございます〕

 愛原「都営バスだと、バスの中でもWi-Fiが使えるよ?」
 リサ「ホントだ。……本当はね、今日も文化祭の打ち合わせがあったんだ」
 愛原「え、そうなの?実行委員会か何か?」
 リサ「わたしは違うんだけど、何か、色んな所から声が掛かっちゃって……。『絵のモデルになって』とか、『写真のモデルに』とか、『リサ・トレヴァーの役で演劇部の支援を!』とか……」
 愛原「最後の依頼、『なに本人に頼んでんだよ』ってツッコミか?」
 リサ「そうだね。まあ、私はオリジナル大先輩とは違うけど」
 愛原「うん」

 何だかんだ言って、学校では人気者か。
 持ち前の能力を良い方向に使うと、『魔王様』か。

[同日16時07分 東京都中央区日本橋浜町 久松町バス停→某診療所]

〔「久松町です」〕

 都営バスを降りる。
 バス停の名前は日本橋久松町から取ったと思われるが、実際は日本橋浜町である。
 神田も『神田○○町』など、神田の名前が付く地区名が多い。
 何を隠そう、明治座の最寄りである。
 地下鉄の浜町駅でも、副駅名に『明治座前』とあるほどだ。
 バスを降りると、通学服に見を包んだ小学生達が代わりにバスに乗り込んで行った。
 この近くに小学校があるのだろう。

 リサ「うっ……!」
 愛原「リサ!?」

 高学年の女子児童と思しき少女がリサとすれ違い、最後にバスに乗り込んだ。
 その少女を見た時、リサが頭を抱えた。

 リサ「うう……」
 愛原「どうした?大丈夫か?」
 リサ「……大丈夫。ちょっと、頭痛がしただけ……」

 リサには人間だつた頃の記憶が殆ど無い。
 しかし、時折その記憶の糸口に触れるようなことがあると、フラッシュバックのように断片的な記憶が蘇り、その際に激しい頭痛を起こすのだ。

 愛原「何か、記憶が……?」
 リサ「思い出せない……」

 リサの記憶は、あまりにも断片的過ぎて、特定するのが困難なのである。
 未だに、人間だった頃はどこに住んでいて、親は?というのは分かっていない。
 上野利恵が実の姉妹ではなく、従姉妹であった所までは分かっている。
 だが当の利恵も、人間だった頃の記憶は殆ど失われている(上野利恵自身も実の姉を失っており、それが最初はリサではないかとされた)。

 愛原「そうか……」

 とにかく、私達はクリニックのあるビルの中に入った。
 複合ビルの中にあるクリニックというのは、大都市では珍しいことではないが、それでも1階とか2階となどの低層部分に入居しているのが普通である。
 このビルからすれば、確かにクリニックが入居しているフロアは低層階になるのだろうが、それでもエレベーターでの移動を余儀無くされる所は珍しいと言えるだろう。
 低層階用のエレベーターに乗り込み、クリニックのあるフロアへと向かう。

 愛原「こんにちは。愛原と申しますが、デイライトさんの指示で参りました」
 受付係「少々お待ちください」

 確かに入ると、内装はクリニックそのものだった。
 待合ロビーがあり、受付がある。

 受付係「それでは、こちらの問診票をお書きになり、書き終わりましたら、あちらのレントゲン受付で、こちらの問診票を出してお待ちください」

 とのことだった。
 まるで本当に、健康診断のようだ。
コメント
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