報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「日光紀行」 4

2023-06-29 20:57:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日11時16分 天候:晴 栃木県宇都宮市 JR宇都宮駅・在来線ホーム→日光線839M列車先頭車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の5番線の列車は、11時16分発、普通、日光行きです。この列車は、4つドア、3両です〕

 たったの3両である。
 先代の電車は4両編成だったことを考えると、車両減である。
 年末の今はそうでもないが、平日朝のラッシュは大変な混雑になっているという。
 更なる少子高齢化による乗客減を見据えて先に対策を打った形らしいが、今の固定客に嫌われるやり方をしていて、あえて客を逃がすやり方をするのが好きなようである。
 尚、日光方面への観光客輸送は東武鉄道に軍配が上がっている状態である為、JRを利用するのは地元の通勤・通学客、或いは新幹線でアクセスする一部の観光客だけである。

〔まもなく5番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は4つドア、3両です。折り返し、11時22分発、普通、日光行きとなります〕

 列車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。
 しばらく待っていると、真新しい3両編成の電車がやってきた。
 フルカラーLEDで、『ワンマン』という表示がされている。
 日光線は4両編成から3両編成に減車された際、投入された新型車両でもってワンマン化された。
 但し、側面のドアは4ドア、車内もオールロングシートと、けしてローカルな雰囲気ではない。
 そこそこの乗客が乗っており、ぞろぞろと降りて来る。
 座席の色と座り心地は、まるで中央快速線のようだった。
 一応、先頭車にはトイレもある。
 先々代(旧国鉄107系)の頃からそうだったが、座席がロングシートしか無いのは伝統か。
 房総方面に投入された同形式の車両にはボックスシートがあるのとは対照的である。

〔ご乗車ありがとうございます。この電車は日光線、日光行き、ワンマンカーです〕

 電車内で発車を待っていると、高橋からLINEが来た。

 高橋「先生、今どこっスか?」
 愛原「今、宇都宮駅だ。これから日光線に乗る。11時22分発の日光行きだ」
 高橋「マジっスか?!俺達、もう日光口パーキングエリアっスよ!」

 日光口パーキングエリアとは、東北自動車道の宇都宮ジャンクションから分岐した有料道路、日光宇都宮道路上にある唯一のパーキングエリアである。
 名前の通り、観光地・日光の入口辺りに存在する。

 愛原「そうなのか。相変わらず、早いな。俺達が乗る電車、日光には12時5分に到着するんだよ」
 高橋「12時5分っスね。了解です。日光駅で待ち合わせでいいっスか?」
 愛原「いいよ、JR日光駅ね」

 という会話で終了した。

[同日11時22分 天候:晴 JR日光線839M列車・先頭車内]

〔お待たせ致しました。まもなく発車致します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが流れる。
 何やらオリジナルの発車メロディっぽかったが、この時は私は曲名は知らなかった。
 ワンマン運転であるが、宇都宮駅は駅員が扱うタイプなのだろうか?

〔5番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 そして、ドアチャイムを鳴らしながら電車のドアが閉まる。
 ドアチャイムは、首都圏を走る他のJR車両と同じだった。
 一応、始発駅だからか、運転士が直接ホームに顔を出してホームを監視していた。
 ドアが閉まったことを確認すると、運転席に移動してハンドルを操作する。
 すぐに電車が動き出した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、日光線、日光行きワンマンカーです。この先、鶴田、鹿沼、文挾、下野大沢、今市、終点日光に停車致します。次は、鶴田です。……〕

 愛原「高橋達、もう日光にいるらしいぞ」
 リサ「早っ!」
 愛原「今は有料道路のパーキングで休んでいるらしいけどな」
 絵恋「あっちは雪が積もってるのでしょうか?」
 愛原「あー、それは聞いてなかったな。ちょっと聞いてみよう」

 尚、宇都宮市内においてはまだ雪は積もっていない。
 高橋に改めてLINEを送ってみると、次のような答えが返って来た。

 高橋「若干、積もってますよ」

 と。
 なるほど。
 標高が高い町だから、さすがに少しは雪があるのか。
 東武日光線は比較的開けた場所を走るが、JR日光線は鬱蒼とした森の中を走る感じ。
 その中において、一気に標高を稼ぐのだという。
 今の電車なら多少のキツい坂でも軽々と登って行くだろうが、馬力の無いSL時代は大変だっただろう。

 愛原「少し、積もっているらしい」
 リサ「おー、今年初の雪」
 絵恋「私もよ」

 沖縄で雪を見る機会など、全く無いだろう。
 私も微笑ましく思ったが、それに水を差す着信があった。
 善場主任からのメールである。
 善場主任も年末年始休みに入っているはずだが、それを返上しているのだろうか。

 善場「善場です。愛原所長方がこれより出張される日光市の民泊物件ですが、上野医師の実家の住所と一致します。その為、栗原家に対しては、『要調査対象』に指定される見込みです。十分お気を付けください」

 とのことだった。
 どういうこっちゃ?
 私は第2の『鬼の棲む家』……正確には、『鬼の棲んでいた家』に行くはずなのに。
 上野医師の実家の住所って……。
 上野医師って、栃木県出身だったのか。
 上野医師と斉藤玲子とリサの関係ばっかり気にしていたから、そんなの気にしていなかったな。
 私は善場主任に了解の旨返信を送ると、スマホのグーグルマップで例の民泊を調べてみることにした。
 実は先日、グーグルマップのストリートビューで外観だけは見たのだが、まあ、昭和の住宅といった感じの佇まいだった。
 令和の今から見れば、十分古民家だろう。
 私が子供の頃、建て直す前の仙台の実家も、あんな感じだったなぁといった感じで見ていたが……。
 上野医師の生い立ちと年齢からして、確かにその実家が空き家になってしまうのは理解できた。
 それを栗原家の誰かが入手し、改築して民泊として営業していたということになる。
 つまり、栗原家の中に上野医師のことを知っている人間がいるということになる。
 それで、デイライトさんは『要調査対象』に指定しようとしているのだろう。
 指定されると、例え年末年始でも立入調査や聞き取り調査が行われる。
 国家権力の発動なので、これを拒否することはできない。
 何だか……どんどん危険なことを巻き込まれているような……?
 何事も無ければいいのだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「日光紀行」 3

2023-06-29 15:55:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日09時18分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔まもなく大宮、大宮。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間に、広く空いている所がありますので、足元にご注意ください〕

 駅弁を食べてお茶でも飲んでいる頃、大宮駅に到着した。
 もちろん、私達はここでは降りない。
 栃木県までしか行かない中距離電車であるが、それでも帰省客が乗り込んで来たりはした。
 新幹線が止まらない所か、或いは新幹線代の節約か。
 満席になるほどではないので、私の空いている隣の通路側には誰も来なかったが。
 停車時間は1分ほどであり、ホームに発車メロディが鳴り響く。

〔「9番線から宇都宮線の普通列車、宇都宮行き、まもなく発車致します」〕
〔9番線の、宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 上り列車も乗客は多かったが、下り列車もそれなりに乗客を増やして、電車は埼玉県のターミナル駅を発車した。

〔この電車は、宇都宮線、普通電車、宇都宮行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、土呂です〕

 大宮駅を出発する頃、高橋からLINEがあった。

 愛原「あいつら、マジか!早ェな!」
 リサ「どうかしたの?」
 愛原「いや、高橋からLINEが来たんだが……。あいつら、もう蓮田サービスエリアに着いたそうだぞ!」
 リサ「ほおほお」

 もっとも、リサはどこだか分かっていないもよう。
 蓮田サービスエリアは埼玉県蓮田市にある東北自動車道のサービスエリアで、東京側の起点から行くと、1番最初に現れるサービスエリアである。
 当然高橋達は、バイクを預けていた篠崎から出発した。
 篠崎には首都高の出入口があるから、そこから首都高に乗り、首都高を経由して東北道へ向かったのだろう。
 街道レーサーだった2人にとっては、首都高は庭のようなものである。
 篠崎から首都高に乗り、そこからバイクを飛ばして、東北道の蓮田サービスエリアで朝食休憩を取っているという。
 自撮りの写真も添付されていたが、どうやらバイクは1台ずつ乗っているようである。
 そういえば、高橋のバイクってどこにしまってあるんだろうと思っていたが、どうやら篠崎であったようだ。
 私は、ようやく電車が大宮駅を出たと返信した。
 そしたら高橋のヤツ、『電車が蓮田駅を出たら、教えてください』とのことだ。
 もちろん、私は了解した。
 ここから蓮田駅なんて、電車で10分ほどだが、朝食はもう食べ終わったのだろうか。
 ある程度、落ち着いたところで、私にLINEしてきたのかもしれない。

 高橋「それにしても、電車は遅いですね」
 愛原「各駅停車の鈍行なんだ、しょうがない」

 という会話で、一旦は終了した。
 尚、東北自動車道は蓮田を出ると、JR宇都宮線とはお別れとなる。
 しばらくは東武伊勢崎線に近い所を走行することになる。

 グリーンアテンダント「軽食、お飲み物でございまーす」
 リサ「む!」

 グリーンアテンダントが車内販売に来た。
 紙のグリーン券の確認や、そもそもグリーン券を持っていない乗客にグリーン券を販売するのも仕事だが、車内販売も業務の1つである。
 リサが目ざとくそれを見つけた。

 愛原「俺も一杯やらせてもらうか」

 尚、車内販売にはビールなどのアルコールの品目もある。
 それが、需要喚起の大きな理由の1つのようである。

 愛原「すいません。氷結1つと、あたりめ1つ……」
 リサ「ポッキーとジュース」
 絵恋「私もください!」
 グリーンアテンダント「はい、ありがとうございます」
 絵恋「り、リサさん……!こ、これでポ……ポッキーゲームなんか……」
 リサ「ん」

 リサはポッキーを口にくわえた。

 絵恋「も、萌えぇぇえぇえぇぇぇぇえっ!!」
 リサ「……まだ何もしてないけど?」
 愛原「こら、静かにしろ」

 電車で移動しているが、特に今のところ何も無いな。

[同日10時34分 天候:晴 栃木県宇都宮市 JR宇都宮駅]

 電車は何事も無く順調に運転を続けた。
 途中でリサや絵恋は、トイレに行ったり、洗面所に行ったり……。
 高橋からは次の連絡は無い(蓮田駅を出た時に連絡はした)が、多分、高速道路を走行しているのだろう。
 冬は二輪は寒いだろうに、若い者はいいねぇ。

〔まもなく終点、宇都宮、宇都宮。お出口は、左側です。新幹線、日光線、烏山線と宇都宮線、矢板、黒磯方面はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔「宇都宮からの乗り越え列車をご案内致します。東北新幹線下り……【中略】日光線下り、11時22分発、普通列車の日光行きは5番線から発車致します。どなた様もお忘れ物の無いよう、もう1度よくお確かめください。今日もJR東日本、宇都宮線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 リクライニングシート車による旅は、ここまで。
 宇都宮から先は、ロングシート車による旅となる。

 愛原「乗り換え時間、少し空いてるから、駅構内でゆっくりしよう」
 リサ「わたしはいいけど、どこが暖房の効いてる所にいた方がいいよ」
 愛原「そうだな」

〔まもなく、止まります。手すりにお掴まりください〕

 網棚から荷物を下ろしたりしていると、私のスマホに着信があった。
 着信音からして、メール方だ。
 重要な連絡の場合、善場主任はLINEではなく、メールを送ってくることがある。
 それかもしれないとスマホを見ると、果たしてそうであった。
 内容は、川口パーキングエリアでトラックを降りた男の鬼のその後の足取りが掴めたという話であった。
 どうやらそいつは、別のトラックに便乗したとのことである。
 もちろん、便乗されたトラックの運転手は知らない。
 それは栃木県の運送会社のトラックで、埼玉で集荷をした後、栃木県に戻る途中だったとのことである。
 そのトラックの行先は、宇都宮。
 つまり、私達がいる今この町である。
 集荷をした後だから、その荷物に紛れ込んで便乗することは可能だったかもしれない。
 その後の足取りは現在調査中とのこと。

〔「ご乗車ありがとうございました。うつのみや~、宇都宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。10番線の列車は、折り返し、10時45分発、上野東京ライン、東海道線直通、普通列車の熱海行きとなります」〕

 リサ「先生、どうしたの?降りるよ」
 愛原「あ、ああ」
 絵恋「リサさん、あそこにエスカレーターがあるから、それで上に行こう」
 リサ「ん」

 私達は列車を降りた。
 宇都宮市はそんなに寒い地域ではないはずだが、心なしか東京より寒いと思った。
 これから日光市という、もっと寒くて雪のある所に行こうというのに……。

 愛原「1度、コンコースに行こう」

 私達はエスカレーターでコンコースに上がった。
 コンコース内にはNewDaysもあるし、待合室もあるから、そこで暖が取れるはずである。
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“私立探偵 愛原学” 「日光紀行」 2

2023-06-27 21:21:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日08時19分 天候:晴 東京都台東区上野 JR山手線708G電車・最後尾車内→JR上野駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく上野、上野です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 都営新宿線で岩本町。
 そこから徒歩でJR秋葉原駅に移動し、山手線内回りに乗り換えた私達。
 それで、上野駅に到着した。

〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、鶯谷に、停車します〕

 ここで電車を降りて、低いホームに移動する。
 1番線から12番線までは、『高いホーム』と言い、13番線から17番線までは『低いホーム』という。
 私達がこれから乗るのは、宇都宮線の上野始発の列車。
 これは低いホームから出発する。

 愛原「途中で駅弁買って行くぞ」
 リサ「おー!」

 私達は低いホームから最も近い駅弁屋に向かった。

 愛原「リサは何がいいんだ?」
 リサ「肉系統」
 愛原「言うと思った」
 リサ「牛肉弁当、いい?」
 愛原「いいよ。絵恋さんは?」
 絵恋「わ、私は自分で買いますので、大丈夫です」
 愛原「そうかい?」

 私は“銀だら幕の内”弁当にした。
 幕の内は鉄板である。
 絵恋さんは、やわらかヒレカツサンドを購入していた。

 愛原「それじゃ、ホームに行くか」

 列車が出るのは15番線である。
 だが、その前にトイレに行くことにした。
 低いホームの入口にトイレがある。
 そこで、トイレを済ませておくことにした。

[同日08時44分 天候:晴 同駅15番線ホーム→JR宇都宮線533M列車5号車内]

〔おはようございます。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の15番線の列車は、8時51分発、普通、宇都宮行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕
〔まもなく15番線に、当駅始発、普通、宇都宮行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この列車は、15両です。……〕
〔「15番線、お下がりください。当駅始発、宇都宮線の普通列車、宇都宮行き、長い15両で参ります。黄色い線まで、お下がりください」〕

 平日ダイヤなら営業運転でやってくる列車だが、休日ダイヤ(JR東日本では、12月30日~1月3日までは休日ダイヤで運転される)では回送列車でやってくる。
 なので、当駅始発だ。
 私達が並んでいる5号車の所に、2階建てグリーン車が停車する。

 愛原「あ、そうだ、忘れてた。グリーン券を渡しておこう」

 私は2人の少女に紙のグリーン券を渡しておいた。

 愛原「アテンダントが回ってきたら、これを渡すんだぞ」
 絵恋「ありがとうございます。分かってますよ」
 リサ「休日ダイヤの方が、料金が安いんだよね」
 愛原「う、うん……そうだね」

 新幹線の自由席特急料金よりも安いんだなぁ……。

 愛原「あ、そうだ。デカい荷物持ってることだし、2階席じゃなくて、そっちの平屋席にする?」
 絵恋「あー……それもそうですね」
 リサ「私は先生と一緒なら、どこでもいい」
 絵恋「私と一緒に座りましょうよ!」
 愛原「……平屋にしようか」

〔「業務連絡。15(とおご)番、533M車掌、準備できましたら、ドア操作願います」〕

 ドアが開いて、私達は列車に乗り込んだ。
 階段を上らず、車端部の平屋席に行く。
 この車両の1階席と2階席は天井が低い関係で、網棚が無く、また、荷物置き場も無い。
 大きな荷物を持っている場合は、網棚がある平屋席の方が良いかもしれない。

〔この電車は、宇都宮線、普通電車、宇都宮行きです。……〕

 愛原「言うてリサ、網棚に荷物載せられ……るね」

 リサは大きなキャリーバッグを片手でヒョイと持ち上げると、座席の上に乗って、網棚の上に載せた。

 リサ「鬼だから」
 愛原「さすがだ」

 私はリサの頭を撫でた。
 フード越しに、角が生えているのが分かる。

 リサ「エヘヘ……」

 私はそこまで大きな荷物ではないので、普通に旅行鞄を網棚の上に置くだけで良かったが。

 愛原「ああ、そうそう。この電車で行くメリットが1つだけある」
 リサ「なに?」
 愛原「新幹線と違って、この列車、グリーン車だけ車内販売がある」
 リサ「おー!そうか!」

 新幹線には無いのに、在来線の、それも普通列車のグリーン車には車内販売がある不思議。
 しかし、ちゃんと需要があるようだ。
 新幹線は速過ぎて売れないが、在来線は遅いので売れるのかもしれない。

〔「この列車は8時51分発、宇都宮線の普通列車、宇都宮行きです。終点の宇都宮まで、各駅に停車致します。4号車と5号車は、グリーン車です。乗車券、定期券の他にグリーン券が必要です。……」〕

 女性車掌の肉声放送が聞こえて来た。

 愛原「お、女性車掌さんか。20代くらいだな。この分だと、アテンダントも期待できそうだな。うひひひ……」
 リサ「先生……

 バリバリバリバリバリ

 愛原「うぎゃあ!?」

 久しぶりにリサの電撃が響き渡る。

 リサ「先生は終点まで寝てていいからねっ!」
 絵恋「さすがはリサさん、シビれるわぁ……!」

 多少、絵恋にも電流が流れていたようだ。

[同日08時51分 天候:晴 JR宇都宮線533M列車5号車内]

 発車の時間になり、ホームに発車ベルが鳴り響く。
 かつては発車メロディが使用されていた時期もあったが、現在では13番線から15番線はただのベル(電子電鈴)になっている。
 常磐線特急などが発車する16番線、17番線は辛うじて東北地方まで行く列車が出ているからか、井沢八郎の“あゝ上野駅”が流れる。

〔「15番線から、宇都宮線の普通列車、宇都宮行きが発車致します。ベルが鳴り終わりますと、ドアが閉まります。ご利用のお客様は、お近くのドアからご乗車ください。……前オーライです」〕
〔15番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕
〔「15番線、ドアが閉まります」〕

 ドアチャイムが鳴って、ドアが閉まる。
 通勤電車と違い、ガチャンと派手に閉まるのが特徴。
 ドアロックの機構が通勤電車とは違うのかもしれない(その割には、普通車の両開き扉、左右の扉の間に隙間ができることがある)。
 列車は、まるで機関車牽引の客車列車が発車するかのように、ゆっくりと動き出した。
 これ、先頭車に乗っていると分かるのだが、信号が変わる瞬間に加速するようである。
 宇都宮線はATC制御ではないが、動き出して、ホームから飛び出る瞬間、運転席からチーンとベルが鳴り、これを合図にするかのように加速する。
 低いホームから出る場合、普通に速度制限が掛かっているせいか、坂を登り切るまではゆっくりと走る。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は宇都宮線、普通列車、宇都宮行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、尾久です〕

 リサと絵恋は駅弁に箸を付けている。
 私もそうしているのだが、それよりもアテンダントがいつ来るか気になった。

 グリーンアテンダント「失礼します。グリーン券はお持ちではないでしょうか?」
 愛原「……あ、はい」
 リサ「プッwww」
 絵恋「あーあ……w」

 グリーンアテンダントが、車内改札にやってきた。
 しかし、それはパリッとした恰好をした男性アテンダントであった。
 20代の若々しい、高橋とは全く違うタイプの爽やかなイケメンであるが……。

 グリーンアテンダント「終点の宇都宮までですね。ありがとうございます」

 アテンダントは青いインクの改札印を押した。

 愛原「えーと……。キミはどこまで乗務するの?」
 グリーンアテンダント「はい。終点の宇都宮まで、ご案内させて頂きます」
 愛原「あ……そ。よろしく……」
 リサ「よろしくお願いしまーすw」
 絵恋「www」

 ナンパできない私に対し、大喜びのリサと絵恋であった。
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“私立探偵 愛原学” 「日光紀行」

2023-06-27 15:41:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明(恐らく夏) 時刻不明(恐らく夜間以外の時間帯) 天候:晴 場所不明(恐らく古民家)]

 私は変な夢を見た。
 それは、次のような内容だった。
 私はどこか、古い和室にいた。
 それは古い畳が10枚ほど敷かれた和室だった。
 室内には何も無い。
 強いて言えば、窓があるくらい。
 その窓からは、山並みを見ることができる。
 一体、ここはどこだろう?
 ふと気づくと、その和室の片隅に、1人の少年がいることが分かった。
 少年の年齢は不明だが、恐らく10歳くらいだろう。
 体育座りをして、顔を両足に突っ伏しているので、顔は分からない。
 黄土色の半ズボンを穿いて、白い靴下を履いている。
 そして、上はネイビーブルーの半袖Tシャツであった。
 そんな少年がふと顔を上げると、目はリサのように瞳が赤くなり、口を開けると牙が生えている。
 そして、手は普通の爪だったものが、長く鋭く伸びている。
 両耳は丸かったのが、尖り、少年が頭を抱えると、見る見るうちに額から1本角が生える。
 どうやら、鬼に変化する所らしい。
 そして、鬼に変化しきったところで、私と目が合った。
 マズいと思うのだが、体が動かない。
 ようやく辺りを見回した時、この空間には窓が4つしか無いことが分かった。
 即ち、この空間自体が独立した建物である。
 少年が爪を立てて、迫って来る。
 ヤバい!逃げなければ!
 どこに!?
 しかし、この空間にはドアが無い。
 どうして窓しか無いのか?
 何とかして逃げないと、食い殺されてしまう。
 だが、何とか後ろに後ずさった私は、何故か奈落の底へと落ちて行った。

[12月30日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原「わーっ!」

 そこで私は目が覚めた。
 どうやら、夢だったようだ。
 しかし、どうしてあんな夢を?

 愛原「うーん……」

 とにかく私は起きることにした。
 洗面所で顔を洗っていると、リサ達も起きて来た。
 2人の少女は、学校で使用している緑色のブルマと体操服を着ている。
 絵恋はジャージを着ていたが。

 リサ「おはよう、先生」
 絵恋「おはようございます」
 愛原「おー、おはよう」

 起きてきた時、リサは浮かない顔をしていた。

 愛原「どうした、リサ?眠いか?」
 リサ「いや……変な夢見ちゃって……」
 愛原「変な夢?」

 リサが話した夢の内容は、私が見たのと、ほぼ同じ内容だった。
 だが、リサはその少年の正体を知っていた。

 リサ「あれはあの男だよ」
 愛原「あの男って、鬼の男?」
 リサ「そう」
 愛原「え?でも、お前と戦ったのは、お前と同じくらいの歳のヤツだったんだろう?俺が見た夢の少年は、小学生くらいだったぞ?」
 リサ「その男の小さい時だよ、きっと。あいつも、元は人間だったんだ」
 愛原「そこは、やっぱりそうか」

 やっぱり、元から鬼族なんて普通いるわけがない。
 リサのように、何らかの原因で、人間が鬼化したものだと私は思っていた。
 私が見た夢は、正にその瞬間だったのだろうか。

[同日07時56分 天候:晴 同地区 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線771K電車・先頭車内]

 高橋「俺達は次の電車で行きますんで」
 愛原「そうか?」

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 私達はまず岩本町駅に行く必要があるので、上り電車に乗る必要がある。
 一方、高橋とパールは篠崎に行くので、下り電車に乗る。
 つまり、このホームでお別れとなる。
 強風を伴ってやってきた電車は、京王電鉄の車両だった。
 年末休みということもあり、車内は空いている。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 愛原「それじゃ、また向こうでな」
 高橋「はい、お気をつけて」

 私達は先頭車に乗り込み、ローズピンクの座席に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが鳴る。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 そして、車両のドアとホームドアが閉まる。
 駆け込み乗車は無かったが、再開閉することなく、ドアが閉まる。
 運転室から発車合図のブザーが僅かに聞こえたかと思うと、ハンドルをガチャッと操作する音が聞こえ、それからエアーの抜ける音がして電車が動き出した。
 高橋のヤツ、お涙頂戴的に両手を振っていた。
 私が先頭車に乗ったのは、この為。
 リサがいるから、基本的には先頭車または最後尾に乗らないといけないのだが、最後尾に乗ってしまうと、高橋のヤツ、ホームを全力疾走するだろう。
 お見通しである。
 それで、先頭車に乗ったのだ。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 愛原「それにしても……」

 私は2人の少女の荷物を見た。
 2泊3日とはいえ、随分大きな荷物だ。
 男よりも荷物が多くなるのは分かるが、それにしても大きくないか?

 愛原「随分、荷物があるなぁ?」
 リサ「服とか着替えとかが入ってる」
 愛原「別に旅行なんだから、そんな時まで体操服着なくていいんだよ?」
 リサ「それはそんなに嵩張らない。ブルマだったら、既に穿いてるし」

 リサは黒いスカートの下を指さして言った。

 リサ「もっと別のもの。後で着替えて、先生に見せてあげる」
 愛原「一体、何なんだ?」

 私は首を傾げた。
 尚、こんな大きい荷物では重いだろうと思ったが、階段においてはリサが絵恋の荷物までヒョイと軽々しく持った。
 やはり、そこは鬼型BOWである。
 今は角とかは隠しているが、それでもパーカーのフードを被っていた。

 リサ「朝御飯まだ食べてない。お腹空いたんだけど?」
 愛原「もちろん、旅心を演出する為に、上野駅で駅弁買うよ」
 リサ「おー!」

 因みに、変な夢を見たのは私とリサだけ。
 絵恋もパールも高橋も、あのような夢は見ていないとのことだ。
 あの和室は一体何なのだろう?
 これから行く古民家と、何か関係があるのだろうか。
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“私立探偵 愛原学” 「明日の準備」

2023-06-26 20:44:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月29日11時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原「ただいまァ」

 私と高橋は両手にマックのレジ袋を提げて、自宅マンションに帰宅した。

 リサ「お帰り~」
 絵恋「お帰りなさい」
 パール「お帰りなさいませ」

 愛原「ほら、今日の昼飯」
 リサ「わー!ありがとー!」
 絵恋「ありがとうございます」

 パールがメイド服姿なのはともかくとして、リサと絵恋は何故か学校のジャージを着ていた。
 リサはジャージの裾を捲っていたが。

 愛原「どうして2人はジャージなんだ?」

 私はダイニングのテーブルに、マックの袋を置いて言った。

 リサ「やっぱりブルマの方がいいよね?大丈夫。ジャージの下、ブルマ穿いてるから」

 そう言って、リサはジャージのズボンを脱いだ。
 スクールカラーの緑色のジャージの下は、同じ色のブルマを穿いている。

 愛原「いや、別にいいよ。ただ、どうしてわざわざ私服から着替えたんだってこと」
 絵恋「パールが、『せっかくだから、今のうちに大掃除しましょう』と言ったんです」
 パール「引っ越しの荷物を片付けるついでですから」
 愛原「それはいいな。確かに年末年始は、バタバタしそうだ。しかも急に、明日から出かけることになってしまったんだから。暇な今日のうちに、掃除くらいはしといた方がいいかもしれない」
 リサ「そういうこと。だから、ジャージに着替えた」
 絵恋「学校の大掃除も、ジャージに着替えてやったんです。もっとも、リサさんだけブルマでしたけど」
 リサ「皆、薄情」
 絵恋「ごめんなさいぃぃっ!!」
 愛原「いや、こんな真冬じゃ、それが当たり前だって。お前はBOWだからいいだろうが、他の魔王軍メンバーは普通の人間なんだから」
 絵恋「だ、大丈夫ですよ。私も下にブルマを穿いてますから」
 リサ「お前も脱いで、先生に見せてやれ」
 絵恋「ええーっ!?」
 愛原「いや、だからいいって」

 リサも私や自分の事となると、無茶ぶりを発揮するなぁ……。

 愛原「それより、早く昼飯にするぞ」
 リサ「おー、そうだった。メニューは何?」
 愛原「望み通り、ひるマックのビッグマックのセットだろ?ドリンクはコーラのLサイズ、サイドメニューはスパイシーチキンナゲットだ」
 リサ「おー!」
 愛原「絵恋さんはチーズバーガーのセットね」
 絵恋「ありがとうございます」
 リサ「先生は何にしたの?」
 愛原「ん?俺はダブルチーズバーガーのセットだが……」
 高橋「俺も同じ物を。で、パールはフィレオフィッシュな」
 パール「あざまる水産」
 高橋「お、おう」
 愛原「ん?」
 リサ「ん?」
 絵恋「え?」

 今、何が起こった?

 愛原「ま、まあいいや、食べよう」
 リサ「いただきまーす」
 パール「それで先生、契約の方は如何でしたか?」
 愛原「それはもうバッチリだ。いい年末年越しが過ごせそうだよ」
 パール「それは良かったです」
 リサ「それで先生、明日の新幹線のキップは?」

 すると私は、あえて俯いた。

 リサ「先生?」
 絵恋「車で行くのよ。栃木の山奥なんだから。ですよね?」

 しかし、私は俯いたまま。

 高橋「察しが悪いぜ、クソ女共!」
 リサ「えっ?」
 絵恋「何よ!?」
 愛原「すまん。在来線でえっちらおっちらだ。予算が……」
 リサ「でも先生。鬼狩り達から、大金巻き上げたんでしょ?」
 愛原「言い方!……確かに、契約は取れた。だけど、あいにくとこれからの引っ越し費用に、思ったより金が掛かることが判明したので、少し節約させてもらう」
 リサ「えー……」
 愛原「まあ、2階建てグリーン車くらいは乗せてやる」
 リサ「! おー!」
 愛原「だからキップは、明日当日でいいんだ」
 絵恋「交通費くらいは、私が持ちますから」
 高橋「ったりめーだろ。俺も電車代くらいは……ハッ!」

 しかし、高橋の向かい側にいるパールの目がキラリと光る。

 パール「愛原先生、御心配要りません。私とマサはバイクで行きますので、先生方は電車でどうぞ」
 愛原「お、おい、いいのか?」
 パール「私はマサと一緒の方がいいですから」
 高橋「カンベンしてくれよ~。冬の単車はキツいぞ。ましてや、日光だろ?」
 パール「何か文句でも?」

 パールの目が、殺人者のそれに変わる。

 高橋「う……!わ、分かったよ……」
 愛原「あれ?でも、バイクはどこに置いてあるんだ?」
 パール「私の知り合いが篠崎の一軒家に住んでいるので、そこに預かってもらっています」
 愛原「そうなんだ。じゃあ、明日は菊川駅でお別れだな」
 パール「そうですね」
 愛原「じゃあ、気を付けて来いよ」
 高橋「せんせぇ~!」(´;ω;`)
 リサ「先生のことは、わたしが守るから心配しないで」
 高橋「くそっ!」
 リサ「イザとなったら、絵恋も戦える」
 絵恋「わ、私も空手黒帯です」
 愛原「確かに、いつぞやの鳴子温泉の時は、餓鬼(のようなBOW)に1発拳を食らわせて、ピヨらせてたな」
 絵恋「そ、そうです!」
 愛原「てか、何で俺が襲われる流れになってるの?」
 パール「この場で銃以外の自衛能力が弱いのは、愛原先生だからです」
 愛原「ハッキリ言ってくれるなぁ……」

 まあ、そこがパールの良い所なのかもしれないが。

 愛原「食べ終わったら、俺も自分の部屋を掃除するよ」
 リサ「おー、皆でやろう」

[同日15時00分 天候:晴 愛原のマンション]

 パール「お茶の時間でございます。クッキーを焼いたので、どうぞお試しください」
 愛原「さっきからいい匂いがするなと思っていたらそれか!」
 高橋「俺の部屋の掃除は、そっちのけっスよ?」
 愛原「いや、自分の部屋は自分でやれよ」
 高橋「あっ……!」

 少なくとも、パールは風呂やトイレの掃除をしてくれていたぞ。

 パール「お茶が終わりましたら、リビングとダイニングのお掃除もさせて頂きます」
 愛原「何だか悪いね」
 パール「いえ。私はお世話になっている身ですから」
 愛原「ありがとうね」
 パール「事務所のお掃除はいつなさいましょう?」
 愛原「今年はもう無理だから、年明けでいいさ。どうせ、引っ越す事務所なんだから」
 パール「かしこまりました」
 高橋「それにしてもよ、夕食の買い出しに行かないといけねーぜ?」
 愛原「せっかくキッチンを大掃除するんだし、明日から2泊3日で出掛けるんだから、出前でいいよ」
 高橋「いいんスか?」
 愛原「まあ、ファーストフード系以外で頼むわ」

 昼はマックというファーストフードにしてしまったので。

 高橋「じゃあ、スーパーで何か総菜でも買ってきます」
 愛原「よろしく。寿司とか唐揚げとかでいいよ」
 高橋「寿司とか唐揚げっスね」
 リサ「唐揚げは大盛りで!」
 高橋「アホか!」

 大掃除が終わったら、明日からの旅行の準備もしないといけないわけか。
 少し忙しくなったな。
コメント
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