報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼の影」 2

2024-03-31 21:15:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月13日10時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 善場「お疲れ様です、愛原所長」

 月曜日の午前中、善場主任が訪ねて来た。
 当然、用件は先日の私の電話の件についてだ。
 ヨドバシAkiba店内のカフェにて、蓮華から電話が掛かって来た件についてだ。

 愛原「お疲れ様です、善場主任」

 私と主任は、応接コーナーのソファに向かい合って座った。
 すかさずパールが、紅茶を持って来る。

 善場「おかまいなく。用件は先日の電話のことです」
 愛原「はい。状況を説明致しますと……」

 私は店内の見取り図を主任に見せながら、説明した。

 愛原「……というわけで、私達の会話に横から入るかのようなタイミングで、私のスマホに着信があったのです。まさか蓮華からだと思いませんでしたので、あいにく録音するのを忘れてしまいました」
 善場「着信履歴はありますね?」
 愛原「はい」

 私は自分のスマホを見せた。

 善場「なるほど、公衆電話からですか」
 愛原「はい。調べたところ、ヨドバシAkiba店内には、1階にしか公衆電話がありません。その電話も、入口近くにあるということもあり、昼間は日光に当たってしまうかもしれません」
 善場「詳しく調べてみないと分かりませんが、私は蓮華はその公衆電話を使ったわけではないと思っています」
 愛原「えっ!?」
 善場「私も私用で、ヨドバシAkibaには訪店したことがあります。その時、確かに公衆電話があったのを覚えています。所長が仰る公衆電話とは、それのことでしょう」
 愛原「無いと断言されますか」
 善場「断言はできませんが、ただ、使用していない確率は高いという推理です。私も元BOWですが、少なくとも私ならあの公衆電話は使いません」
 愛原「何故ですか?」
 善場「リスクが大きいからです。確かにあの電話は入口に近いので、日光に当たれない栗原蓮華にとっては、綱渡りの状態です。そもそも、外からは来れないわけですしね」
 愛原「なるほど……」
 善場「日光の当たらない場所……。例えば地下鉄の駅とか、窓やドアが近くに無く、日光が差し込む心配の無い屋内にある公衆電話とか、そこから掛けたものと思われます」
 愛原「では、蓮華はどうやって私達の会話を聞いていたのでしょう?」
 善場「……愛原所長は、“鬼滅の刃”は御覧になったことはありますか?」
 愛原「あ、はい。リサとか、高橋が観ていましたが……。まあ、私も、アニメのDVDとかは、リサが借りて来たのを一緒に観たりとかはしたことがあります。原作は、高橋がタブレットで読んでいたくらいですかね」

 私はチラッと高橋を見た。
 高橋は肯定するように頷いた。

 愛原「それが何か?」

 まあ、日光に弱い人食い鬼という蓮華の体質、“鬼滅の刃”の鬼と共通してはいるが……。
 電話を掛けるような鬼なんていたか?

 善場「“無限列車編”は御覧になったことは?」
 愛原「あ、はい。それもリサがDVDを借りてきたので、一緒に観たことがあります」

 実際には、DMMで郵送されてくるレンタルDVDのことだが。

 善場「あの話、人間でありながら、鬼に協力する人達が登場しますね?」
 愛原「あー……そういえば……って、ええっ!?」
 善場「お気づきになりましたか?」
 愛原「それって……?」
 善場「推測ですが、カフェの中で、所長達の話を盗聴していた人間がいたのかもしれません。そして、その人間が蓮華に、会話の内容を逐一報告していたとしたら?例えば、スマホを常に通話状態にして、所長達の会話を蓮華に聞かせるとか」
 愛原「その手がありましたか!」
 善場「近くに怪しい人間はいませんでしたか?」
 愛原「いやぁ……」

 まさかそんな人間がいるとは思わなかったので、気にもしていなかった。
 もちろん、あからさまに怪しいのがいたら、気づくとは思うが。
 あの場にいた高橋やパールにも聞いてみたが、気が付かなかったという。

 高橋「もう皆、スマホとか使っているから、誰かがそれで盗聴してたとしても分かんねーよ」
 パール「盗撮なら気づける自信はありますけど、盗聴はねぇ……」
 愛原「でも、よくそんな人間がいるという推理ができましたね。私より凄いです」
 高橋「せ、先生は名探偵ですよ!」
 善場「大したことないですよ。東北自動車道で、郵便局のトラックなどを事故らせた鬼達のことは御存知ですね?」
 高橋「はい」
 善場「BSAAにリークしたのは、上野利恵一派なんですよ」
 愛原「えっ!?」
 高橋「一派って、チームでも作ったのか?」
 善場「ええ。天長会の信者達ですね。……これは公になっていないのですが、上野利恵が鬼にした人間も何人かいるんですよ」
 愛原「ええっ!?」
 高橋「ヤベェだろ、それ!?」
 善場「殆どが娘の上野凛や上野理子のような『半鬼』ですが、人食いはしていません。全員が上野利恵に追従しているので、今のところは様子見としています。実際、BSAAにいち早く通報して、しかもその鬼達を追い詰める協力までしましたからね」
 愛原「天長会の信者に、鬼もいるのかよ……」
 高橋「“鬼滅の刃”の珠代一派みたいな感じっスかね?」
 愛原「そういうことか!」

 と、そこへエントランスのインターホンが鳴る。
 パールが応答した。

 パール「はい。愛原学探偵事務所でございます」
 配達員「こんにちはー!郵便局でーす!」
 パール「はい、少々お待ちください」

 パールはハンコを持って、1階に向かった。

 愛原「私が知らない間に、栃木ではそんなことになってたんですね」
 善場「今のところ害は無いですし、何より、人間の血が混じった『半鬼』という人権がある状態なので、BSAAも問答無用で射殺ということができないようです。もっとも、人食いをしたらBSAAがそうするという警告はしていますが」
 愛原「なるほど……」
 高橋「栃木は危険地帯っスね」
 愛原「そんな所に、蓮華がいるわけないですね。とにかく、上野利恵に人間の協力者がいるのと同様、栗原蓮華にも人間の協力者がいるということですか」
 善場「そう見るのが自然かと思われます。上野利恵一派という前例があるので」
 愛原「うーむ……」

 パールが戻って来た。
 普通郵便の他に、赤いレターパックがあった。
 それで、郵便局員が受領印を求めたのだろう。
 もちろんそれは、私の実家からではない。

 パール「先生。ホテル天長園の上野利恵副支配人からです」
 愛原「なっにー!?」

 噂をすれば何とやらだ。
 どうして鬼達は、こうタイムリーに影を晒すのが得意なんだ?

 高橋「中身は何スか?」
 愛原「品名は、『宿泊招待券』とあるな」
 高橋「先生を食う気ですか!?」
 愛原「いや、そんなことはないと思うけど……」

 開けると、中には挨拶状と、宿泊券が同封されていた。
 私だけではなく、4人分ある。
 恐らく、この事務所の人数分用意してくれたのだろう。

 愛原「『春休み、是非起こしください』みたいなことが書いてある」
 高橋「春休みはリサ、藤野ですぜ?」
 パール「仮に皆で行くにしても、1人余ってしまいますね」
 愛原「善場主任、来られます?」
 善場「これでも国家公務員ですので、利益供与を受けるわけには参りませんので」

 宿泊券については、取りあえず保留とすることにした。
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“愛原リサの日常” 「寝坊の愛原リサ」

2024-03-30 20:45:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日22時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 夕食後、リサは愛原とホラー邦画のDVDを観ていた。
 3時間もある大長編で、ようやくクライマックスになろうとしていた時だった。

 〔「阪上ィ!お前も殺人俱楽部に入らないかぁ?嫌なヤツを殺せて、楽しいぞォ~?」「お断りだよ、樋野。僕はお前達のような殺人鬼になるつもりはない」「ヒャーッハハハハッ!そいつァ残念だ!残念ながら、殺人倶楽部は俺の代で終わりだな!それじゃ、早速死んでくれ!先に死んだ6人のメンバーと、とばっちりで死んだ宿直の先生殺しの犯人になってくれ!」〕

 燃え盛る木造の旧校舎。
 殺人倶楽部の部長、樋野隆夫が放火したのだ。
 主人公の阪上に向かって血染めのナイフを振りかざして行くが、旧校舎が崩れ落ちて、樋野の上に落ちてくる。

〔「さようなら、樋野。地獄で皆に詫びるんだな」〕

 主人公、非常口から外に脱出。
 近所の住民が通報したか、けたたましい消防車のサイレンが鳴り響く中、主人公は満点の星空の下、校庭に倒れ込む。

〔「終わった。これで僕の、恐怖の一夜は終わったんだ。この学校には、お化けも幽霊もいなかった。いたのは、7人の殺人鬼だけだった。僕は……勝ったんだ。あの、殺人倶楽部という狂気の殺人鬼集団に」〕

 リサ「おー……」

 リサはパチパチと拍手をした。

 愛原「東京中央学園は白井伝三郎によるバイオハザードだったが、映画の成神学園は殺人倶楽部だったか……」

 幽霊やお化けが登場する“学校の怪談”と違い、あえてそれらの存在を否定し、本当に恐ろしいのは狂気に満ちた生きている人間だということである。

 リサ「わたしなら、1人で殺人倶楽部潰せる」
 愛原「そりゃそうだろうな。ややもすると、『魔王軍』が既に殺人倶楽部……」
 リサ「先生が命令してくれたら、そうするよ?」
 愛原「『殺人、ダメ!ゼッタイ!』」
 リサ「はーい」
 愛原「さて、そろそろ深夜帯に入る頃だし、風呂に入るか」
 リサ「一緒に入ろー」
 愛原「何でそうなる?お前、明日学校なんだからさっさと1人で入ってもう寝ろ」
 リサ「ちぇっ……」

 

 体操服にブルマ姿のリサは、ソファから立ち上がった。

 

 そして、ブルマのお尻の食い込みを直して、まずは自分の部屋に向かったのだった。
 そういえば映画は、90年代の首都圏にある私立高校が舞台なのだった。
 そこでも体育のシーンでは、体操服にブルマを穿いた女子生徒が出て来たし、プールであった怖い話では、旧型スク水を着た女子生徒も出て来ていた。
 ホラー映画にお色気は付き物であるからして、この映画ではスク水とブルマがそうだったのだろう。

[期日不明 時刻不明(深夜帯) 天候:雨ではない リサの部屋]

 リサが部屋で寝ていると、誰かが部屋に入って来るのが分かった。
 そして、真っ直ぐにリサのベッドに向かって来る。
 鬼型BOWのリサは、既にそれが誰かが分かった。
 匂いで分かる。
 この体臭は、愛原だ。
 きっと、自分の所に夜這いに来てくれたのだろう。
 リサの実父と思われる上野医師が生前、旅日記を付けていて、それがどんな内容なのか、リサは知ることができた。
 1970年代、リサの母親と別れた上野医師は、夜這いの習慣の残る南東北の山奥の村に落ち延びた。
 そこで夜這いを通じ、村の女性と束の間の夫婦生活を送ることになる(無医村だったので、例えワケありで旅をしている状態であっても、村に医者を居着かせたいという村長の思惑があったらしい)。
 その村で夜這いを行う時、どのようにするのかも上野医師は詳しく書き残している。
 もっとも、それから半世紀も経った現在、とっくにその夜這いの習慣は廃れているようだが。

[3月13日07時00分 天候:晴 愛原家4階リサの部屋]

 リサ「デヘヘヘ……。ブルマも体操服も切り裂いちゃうのォ……?先生、ヘンタイ……
 愛原「何言ってるんだ!早く起きろ!!」

 スパーン!(愛原、丸めた新聞紙でリサの頭を引っ叩く)

 リサ「あたぁ!?」
 愛原「遅刻するぞ!早く起きろ!」
 リサ「わあっ!」

 リサは飛び起きた。

[同日08時25分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・正門]

 予鈴のチャイムが鳴り響く。
 生活指導の学年主任は、警備員と一緒に、正門の扉を閉めた。

 学年主任「お前達は遅刻だ!」
 男子生徒A「えーっ!まだ30秒過ぎただけっスよ!?」
 女子生徒「横暴だ!オーボー!」
 学年主任「またお前らか!さっさと生徒手帳出せ!」
 男子生徒B「あのバカップル、また遅刻かよw」

 ところが、その校門をバッと跳び越える者がいた。
 門外の男女生徒、そして門内の学年主任が上を見上げると、ちょうどリサが真上を跳び越えるところであった。
 グレーのスカートの下に穿いている、緑色のブルマがよく見えた。
 そして、リサとスタッと門内に着地する。

 リサ「おはよーございまーす!!」
 学年主任「待たんか、こら!校門を跳び越えるなと、前にも言っただろうが!!」
 リサ「ゴメンナサーイ!」
 体育教師(女子陸上部顧問)「うーむ……うちの部員に欲しい」
 上野凛「NPO法人デイライトからの通達で、リサ先輩は特定の部に所属してはいけないことになっています、先生」
 女子生徒「さすがは魔王様……」
 男子生徒A「あれがウワサの『魔王軍』の魔王様なの!?スッゲェ……!」
 学年主任「いいから出せ、生徒手帳!」
 男子生徒A「先生!魔王様?はいいんですか!?」
 学年主任「見逃して欲しかったら、お前達も校門跳び越えてみろ!」
 女子生徒「いや……無理っス」

[同日08時30分 天候:晴 同高校2階・2年5組]

 坂上「おっ、愛原!」
 リサ「あっ、先生……!」

 教室の前で、担任の坂上修一と鉢合わせになる。

 リサ「お、オハヨーゴザイマス……」
 坂上「今日は遅いな?」
 リサ「ちょっと寝坊しちゃって……。廊下に立ってた方がいいですか?」
 坂上「昭和か!w いいから、俺より先に教室に入れ。今日だけは大目に見てやる!」
 リサ「さすがは坂上先生!」

 リサは急いで教室に入った。

 淀橋「あれ?魔王様?」
 リサ「ギリ間に合ったー!」
 小島「今日は遅いねー?」
 リサ「ちょっと、寝坊しちゃって……」
 小島「あらま、珍しい!」

 そこへ坂上も入る。

 坂上「おはよう!ホームルーム始めるぞ!」
 日直「きりーつ!」

 こうして、今日もリサの学校生活が始まる。
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“私立探偵 愛原学” 「帰宅後の過ごし方」

2024-03-28 20:20:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日14時30分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階リビング]

 リサ「先生、見て見て!」
 愛原「おー、リサ!似合うな!」

 リサは新しく買った服に着替えて、私に見せて来た。
 ピンク色のフード付きパーカーと、新しいデニムのショートパンツである。
 動きやすい服なので、泊まり掛けの旅行にはちょうど良いだろう。
 これだと靴も新調したくなるところだが、それはリサは望まなかった。
 特に、古くなっているわけではないからだろうか。
 尚、パーカーの下は黒いTシャツである。
 黒無地に高橋がシルクスクリーンで、赤く『biohazard』の血文字を入れている。

 愛原「これで寒くないか?」
 リサ「わたしはBOWだからね、これくらいでいいんだよ」
 愛原「それもそうか」

 BOWは概して体温が高い為。

 高橋「先生!ちょっとコンビニに、出しに行ってきます」

 高橋は宅急便コンパクトを持っていた。

 愛原「ああ、行ってこい。父さんにも連絡しておくから」
 高橋「あざっス!」

 父親には、同じく宅急便コンパクトで送ってもらう。
 但し、運賃は着払いだ。
 高橋が出て行くと、私は自分のスマホを取り出し、父にLINEを送った。
 父は、本当に大丈夫かと心配していた。
 まあ、3度目の正直で大丈夫だろうと答えておいた。

 愛原学「宅急便コンパクトで届くから、父さんもそれでこっちに送り返してよ。で、運賃は着払いにしてくれていいから」
 愛原父「分かった」

 とのことだった。

 リサ「荷物も詰めてみたけど、帰りのお土産に入りそうだよ」
 愛原「もう荷造りしたのか!?」
 リサ「あくまで練習だよ、練習」
 愛原「それにしたってだなぁ……」
 リサ「ちゃんと、またしまうよ」
 愛原「しまうのも、大変だよ?」
 リサ「大丈夫、大丈夫。ついでに着替えて来る」
 愛原「ああ」

 リサはそう言うと、リビングから出て行った。
 4階の自室へと向かって行く。
 因みに私は、家の中にら盗聴器や隠しカメラが無いかどうかを調べている。
 今のところは、何も見つかっていない。
 そしたら蓮華は、どうやって私達の会話を聴いていたのだろうか?
 リサでさえ分からないくらいの盗聴法……。

 パール「先生。私、スーパーに買い物に行ってきますが、よろしいでしょうか?」
 愛原「ああ、行ってらっしゃい」

 パールが出て行くと、私は道具を片付けに事務所に下りることにした。
 蓮華がどうやって盗聴したのかは、本人を捕まえて聴くしかないのか……。

 リサ「おっ、先生。帰って来た」

 

 2階の事務所から、また3階のリビングに戻ると、リサが体操服にブルマに着替えていた。
 今日はもう出かけないということだろう。

 愛原「どこにも出かけてないよ。ちょっと事務所に、道具を置きに行っただけだ」
 リサ「ふーん……。まあ、いいや。先生、ゲームでもやろ」
 愛原「リサは自由だな」
 リサ「もうすぐ春休みだから、そんなに宿題も無いし、学年末テストも終わったしね」
 愛原「春休みは宿題あるのか?」
 リサ「無いよ」
 愛原「そうか」

 私の時も、春休みの宿題は無かった気がする。

 リサ「今度は負けないよ」
 愛原「もちろんだとも」

[同日18時00分 天候:晴 同地区 愛原家3階ダイニング]

 今日の夕食はチキンステーキが出て来た。
 どうやら今日は、鶏肉が安かったらしい。
 肉なら何でもいいリサは、満足そうに鶏の胸肉1枚を平らげていた。
 他にも、カレイの煮付けなんかもある。

 高橋「明日の朝食当番は俺ッスね。明日は和食でいいんスか?」
 愛原「平日は御飯食だからな。魚でも焼いてくれるのか?」
 パール「サバを買ってきましたよ」
 愛原「じゃあ、明日は焼きサバだな」
 高橋「うっス!」
 愛原「それで、宅急便の控えは?」
 高橋「あっ、ポケットの中っス。サーセン、何か先生達、ゲームに夢中だったもんで……」
 愛原「いや、しょうがないよ。あとで伝票に書かれてる追跡番号を登録しておこう。あとは、父さんにも教えておく」
 高橋「サーセン」
 リサ「先生、御飯食べたら映画見よ!DMMからDVD届いたから!」
 愛原「ああ、分かった。タイトルは何だったっけ?」
 リサ「“学校であった怖い話”。レビュー見たら、東京中央学園の怖い話みたいなのがいっぱい!」
 愛原「そ、そうなのか。ガチの和風ホラーっぽいな」

 今、東京中央学園において、現在進行形で起きている怪奇現象は、全てリサが起こしているものだ。
 それまでに起きていた怪奇現象は、登場人物が人間のみの話を除き、全て特異菌が起こしていた幻覚や幻聴によるものだったことが判明している。
 白井伝三郎が旧校舎(現・教育資料館。半壊により、修復工事中)の隠し空間に特異菌の菌塊を隠匿したものの、胞子が壁をすり抜けて建物全体を覆った。
 当時から旧校舎は立入禁止だったものの、好奇心から侵入した生徒達や見回りの宿直教職員が感染。
 そこから新校舎にも拡がり、東京中央学園は怪奇現象の宝庫となってしまった。
 現在、菌塊はBSAAにより撤去され、滅菌・消毒作業が行われたことにより、怪奇現象はナリを潜めている。
 現在はBOWたるリサの独壇場となり、現在進行形で発生している“学校の七不思議”の全てを掌握した。
 例として、『逢魔が時、人けの無い廊下を歩いていると、吸血鬼に捕まって血を抜かれる』→『リサが血液や血中老廃物を摂取する為、“獲物”を捕まえる』など。
 他にも、『技術室から化け物が爪を研ぐ音が聞こえる。聞いた者は死ぬ』→『リサが長く鋭く尖った爪を研ぐ為に、技術室のヤスリで爪を研いでいるだけ。最後の一文はガセ』もある。

 リサ「大丈夫だよ。怖かったら、わたしが守ってあげるからね。わたしに抱き着いていいよ?
 愛原「ああ。ガチの恐怖だったら、そうさせてもらうよ」

 リサを打ち負かす化け物や亡霊が、到底登場するとは思えなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「鬼の影」

2024-03-28 14:39:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日13時52分 天候:曇 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1310T電車・最後尾車]

 私達はヨドバシAkibaを出ると、昭和通りに出て地下鉄の岩本町駅に向かった。
 日曜日ではあるが、善場主任にメールで報告はしておく。
 また、レイチェルも自分もスマホで報告していた。
 まさかということもあり、残念ながら先ほどの通話内容は録音していない。
 だが、明らかに着信履歴は残っているから、けして気のせいではない。

 レイチェル「私は部隊に報告しておきます。もしかしたら、愛原センセイのスマートフォンを確認させて頂くかもしれません」
 愛原「分かったよ」
 リサ「じゃあ、BSAAに調べられる前に、わたしのエロ画像消しとかないと」
 愛原「んなわけないだろ!」
 レイチェル「Huh?」
 愛原「何でもない!何でもないんだ!」
 レイチェル「そうですか」

 秋葉原駅前で、レイチェルと別れる。
 私達は徒歩で岩本町駅に向かった。

 愛原「それにしてもこのご時世、公衆電話なんてそうそう無いと思うんだ。辛うじて、駅とかにあるくらいだな」
 リサ「さっきのヨドバシには?」
 愛原「見当たらなかったなぁ……。まあ、フロアガイドを見ると、1階に辛うじてある程度らしい」
 リサ「そこから掛けたんじゃない?」
 愛原「真っ昼間だぞ?」
 リサ「あ、そうか……」

 いくら窓が殆ど無いヨドバシAkibaでも、1階のエントランスは開放されており、そこから日光が差し込むくらいはしている。
 まあ、今は何だか曇って来たが……。
 地下鉄の駅に入る。

 愛原「大丈夫か?いくら中身はまだ何も入ってないとはいえ、少し重いだろ?」
 リサ「わたしの力なら大丈夫だよ」

 リサはヨドバシAkibaで購入した、真新しいキャリーバッグを持っている。
 ダークレッド1色の重厚感あるバッグだが、血のような色がリサの鬼型BOWとしての琴線に触れ、1発でそれに決めた次第。

 リサ「帰ったら、早速荷造りする」
 愛原「まだ1週間あるぞ?」

 買ってあげた新しい下着なんかは、何着も持って行く必要があるだろう。
 リサがどういう所に泊まって、しかも洗濯もできるかどうか不明だからだ。
 国家機密の場所ということもあり、善場主任は機密漏洩防止の為として、直前にならないと教えてくれない。
 重そうなバッグだが、リサはそれを片手でヒョイと持ち上げ、階段を下りている。
 ホームで電車を待っていると、善場主任からメールの返信が来た。

 善場「デイライトから調査を行います。電話の着信履歴は切らないよう、お願いします。明日、事務所にお伺いして、事情を聴かせて頂きます」

 とのことだった。
 BSAAのレイチェルも知っている旨を報告したのだが、デイライトはデイライトで独自に動くようである。

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 中線ではなく、外側の本線ホームで電車を待っていると、強風と共に轟音が近づいて来た。
 そして、強風と共に入線してきたのは都営の車両。
 京王電車と違い、東京都のマークであるイチョウの葉が車体にペイントされている。

〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町。秋葉原〕

 最後尾の電車に乗り込む。
 私とリサは空いている座席に腰かけたが、高橋とパールはドアの前に立っている。
 短い発車メロディが鳴る。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 ドアが閉まる。
 ドアチャイムが鳴るが、こちらの音色はJR東日本の首都圏在来線車両と同じ。
 リサは自分の前に、キャリーバッグを置いた。
 電車が走り出す。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 愛原「なあ、リサ」
 リサ「なに?」
 愛原「この電話に掛けて来たのが蓮華だったとして、どうやって俺達の会話はピンポイントで聞いてたんだろうな?」
 リサ「わたしも、それはできる。ただ、蓮華にそれができるかどうかは分かんないね」
 愛原「お前もできるのか?」
 リサ「うん、わたしの寄生虫を使う。わたしの寄生虫、盗聴できるから。わたしの耳とリンクして。もちろん、『目』もね。それで生徒会室のブルマ復活反対の連中の会話、盗み聞きしたりしたなぁ……」
 愛原「そういうことか。でも、蓮華は寄生虫使いじゃないだろう?」
 リサ「だからねぇ……。でもあいつも鬼なら、盗聴できる何かの力は持ってるかもしれない」
 愛原「マジか……」

 仮にそうだとしたら、ちょっとマズいかもしれない。
 何せ、リサが気づかないほどの高精度だということになるからだ。
 一応、返ったら盗聴器仕掛けられてないか確認しようと思った。

[同日13時59分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 都営地下鉄菊川駅→愛原学探偵事務所]

 電車は特にトラブル無く走行した。

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 そして電車を降りてから、高橋とパールに……。

 愛原「ちょっと事務所に寄るぞ。盗聴器が仕掛けられてないか、確認するんだ」

 と言うと、この2人は少し驚いた顔をした。
 そう簡単に、盗聴器の有無を調べられるのかと思うだろうが、幸い私の稼業は探偵。
 探偵事務所には、盗聴や盗撮に関しての依頼もあるものだ。
 だから、事務所には盗聴器を発見する為の道具も置いてある。
 金属探知機とか、あるいは盗聴器が発する特殊な電波を探知する機械とか。
 急ぎ足で帰宅した後、早速それを使って、私を含む全員の服や荷物を調べた。
 服にいつの間にか小型の盗聴器が付けられている場合もあるからだ。
 しかし、いくら調べても、盗聴器の類は見つからなかった。

 愛原「これは一体、どういうことなんだ???」
 リサ「やっぱり、血鬼術か何かかなぁ……?」

 リサでさえ、首を傾げるほどだった。
 明日になって、善場主任が来てから相談するしかなさそうだ。
 或いは、BSAAの調査だな。
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“私立探偵” 愛原学” 「秋葉原で過ごす」

2024-03-27 20:46:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日12時00分 天候:晴 東京都千代田区神田花岡町 ヨドバシAkiba8階・こだわり廻転寿司まぐろ人]

 リサがチョイスしたキャリーバッグは、赤黒いモノトーンのものだった。
 サイズ的には1~2週間の海外旅行向きの物であったが、もう少し可愛らしいのを買ってはどうかと言ったのだが、リサはこれでいいと言った。

 リサ「血みたいな色が気に入った!」

 とのこと。
 この時、鼻息を荒くしていたから、やや食人衝動が出掛かっていたのかもしれない。
 それはそれとして……。

 愛原「今日は寿司にしよう。レイチェル、日本文化の体験だ」
 レイチェル「大都市にはこういうお店あるんですけど、高いんですよね。学生では手が出なくて……。ここはおいくらですか?」
 愛原「1皿1ドルって所だな」
 レイチェル「本場の日本は安いですね!」
 愛原「はは、は……」
 リサ「アメリカだと、1皿1000円以上だって」

 アメリカの物価、とんでもねぇ!
 いや、今や日本が安過ぎるのだろう。
 高橋やパールとも合流し、回転寿司に入る。

 愛原「お前達も色々買ったのか?」
 高橋「うっス!ミリタリーショップで、色々と買い込みました。これでバイオハザード、BOWどんとこいです!」
 リサ「じゃあ、わたしと勝負しようか?」
 高橋「望むところだ!」
 愛原「ここでやるな!」
 高橋「サーセン」
 リサ「はーい」

 テーブル席に案内される。

 高橋「先生、仰って下さったら、お好きなお寿司、お取りしますから!」
 愛原「ああ、悪いな」

 私は通路側に座っている為。

 レイチェル「カラフルなお皿の上に、色々なお寿司が回ってきますね」
 リサ「先生!これって、どのお皿を取ってもいいの!?」
 愛原「ああ、好きなだけ取っていいよ」

 肉より魚に関しては食欲があまり進まないリサ。
 なので、実は回転寿司とラーメン屋の方が安上がりなのである。
 ラーメンに関しては先日食べたので、今日は回る寿司にした次第。

 高橋「その前に、そこの蛇口で手を消毒するんだぜ?」
 リサ「はーい」
 愛原「こらこらこら!レイチェルが真似したらどうする!?」
 レイチェル「これって、ティー・サーバーでは?」
 愛原「そうだよ!正確には、そこでお茶の粉を入れて、沸かす為の熱湯が出て来る蛇口だ」
 リサ「お兄ちゃん!」
 高橋「オメーなら、熱湯消毒しても大丈夫だろ」
 リサ「熱いモンは熱いの!」

 火傷はBOWの力ですぐに治るが、それでも熱湯が当たった所は熱いと感じるらしい。
 それはさすがに地獄だ。

 愛原「それで、区役所の方はどうだった?」
 高橋「バッチリっス!俺らで書ける所は書いて来たっスよ!」
 愛原「オッケーだ。あとは俺がサインして、もう1つの署名欄については父さんに書いてもらう」
 高橋「あざっス!」

[同日13時00分 天候:晴 同地区 ヨドバシAkiba4階・丸福珈琲店]

 昼食の後は食後のコーヒーとデザートを堪能する為に、同じ建物内にあるカフェに移動する。

 愛原「俺も筆記用具は持ってきてるからな、ここで先にサインしちゃおう」
 高橋「あざっス!……いや、ありがとうございます!」

 私はここで高橋とパールの婚姻届の保証人の欄にサインした。
 隣には、もう1人のサインを記入する所がある。
 ここには、私の父にサインしてもらうことになっている。
 リサは無関心とばかりに、食後のドーナツを頬張っている。

 リサ「んー!甘くて美味しい!」
 レイチェル「このドーナツも美味しいですよ」

 私はサインをすると、それを丁寧に封筒に入れた。

 愛原「あとはこれを宅急便で送るだけだ。丁寧に持ってろよ?」
 高橋「もちろんです」
 レイチェル「教会なら、私が紹介しますよ?」
 愛原「さすがはアメリカ人だ」
 高橋「いや、俺達はいいんだ。俺達はナシ婚で決めてるからよ」
 リサ「はいはい!じゃあ、わたし!わたしと先生!」
 レイチェル「リサと愛原センセイですか。BOWの結婚は、神がお許しにならないかもしれませんねぇ……」
 高橋「先生を地獄に連れて行く気か?」
 リサ「むー……!」

 その時、私のスマホに着信があった。
 音声着信だった。
 誰からだろうと思ってスマホの画面を見ると、公衆電話からだった。

 愛原「何だこれ?公衆電話?もしもし?」
 ???「愛原先生……。神に見放されてもいい。でも、仏様は見放されない。仏前式の結婚式を挙げるといいよ……私と……」

 少し電話が遠い。
 だが、聞き覚えのある声だった。

 愛原「……蓮華か!」
 リサ「!!!」
 高橋「なにっ!?」
 パール「先生?」
 レイチェル「ちょっと変わってください!」

 リサが私のスマホを取る前に、レイチェルが取った。

 レイチェル「Hello!Hello!……切れてしまいました」
 高橋「先生、マジで栗原蓮華だったんですか!?」
 愛原「そ、その声だった……」
 リサ「公衆電話で掛けてくるなんて、スマホは無いの!?」
 愛原「無いだろう。奥日光でBSAAが回収したらしい。だけどあいつ、俺のスマホの番号、覚えてたんだな?」

 今はもう電話帳からすぐに掛けられるから、相手の電話番号を憶えているなんてなかなか無いだろう。

 リサ「なーにが仏前式だよっ!ホトケ様にも見放されてるっつーの!!」

 リサは憤慨して、鬼の姿に戻ってしまった。
 すぐにパーカーのフードを被せて、角や尖った耳を隠す。

 愛原「日蓮正宗なら、鬼でも救われるんだろう。何せ、向こうの曼陀羅本尊には、鬼子母神の名前が書かれているというからな」

 その為なのか、日蓮宗の寺院だと鬼子母神の神社が併設されている場合もある。

 レイチェル「愛原先生!そのスマートフォンを貸してください。どこから掛けてきたのか、調査します!」
 愛原「あ、ああ。こ、コーヒーを飲んだら出よう。もしかしたら、どこかで見張ってるかもしれん」
 リサ「だとしたら、わたしも気づくと思うんだけどね」
 高橋「アプリが反応しないのが不思議っスね」
 パール「でもまあ、用心するに越したことはありません。意外とこういう場所は日光が入りませんから、安全な場所なのかもしれませんし」
 愛原「そうか!そうだよな!」

 それは油断してしまった。
 私達は早めに退店することにした。
コメント
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