報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「本州上陸」

2017-03-13 20:59:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月7日12:00.天候:晴 商船三井フェリー“さんふらわあ さっぽろ”Aデッキ・レストラン]

 敷島:「船旅最後の飯だ。ゆっくり味わって……って、聞いちゃいねぇ……」
 アリス:(´~`)モグモグ

 敷島はビーフカレーを食べ、アリスはそれにプラスしてハヤシライスも食べていた。

 敷島:「明日から忙しくなるから、エミリー、頼むな?」
 エミリー:「はい、お任せください」
 アリス:「じゃあ、シンディが先に検査した方がいいね」
 敷島:「ん?」
 アリス:「北海道じゃ、簡易的な点検しかできなかったんだから」
 敷島:「それもそうか。エミリーも受けた方がいいな。シンディの後で」
 エミリー:「かしこまりました。最高顧問へのご挨拶は……私よりシンディが行った方がいいでしょう」
 シンディ:「私が?」
 エミリー:「最高顧問は、シンディがお気に入りだと聞きます」
 敷島:「いや、シンディだけじゃないだろ。マルチタイプそのものが気に入ったんだよ。その時、たまたまシンディがいただけだ。少しの間だけならレンタルしてもいいって言ってんのに、新品じゃなきゃ嫌だってさ」
 アリス:「映画のブルーレイもレンタルじゃなくて、新品で購入するタイプか……」
 敷島:「まあ、そういうことだから。今月中に9号機を完成させれば、最高顧問の爺さんも何も言わないだろう」

 因みに容貌はシンディのような感じを希望していたから、やはり見た目で選んだのではないかと思われる。
 エミリーもそれを知っていて、「最高顧問はシンディがお気に入り」だと言ったのだ。
 しかし、性能はだいぶメイドロイドに近いものになるから、素直にナンバリングにしていいのか迷うところ。

 アリス:「製作費は25億円だって」
 敷島:「エミリー達の半額か。それなら、性能も簡素化されて当然だな」

 敷島はコンソメスープを啜りながら言った。

[同日14:15.天候:晴 大洗港フェリーターミナル]

 フェリーは途中、大きな事件に巻き込まれることもなく、無事に茨城県の大洗港に接岸した。
 そこからぞろぞろと下船する乗客達。

 敷島:「久しぶりに本州の地を踏んだって感じだなぁ……」
 アリス:「そうだね」
 敷島:「ここからの交通手段は?」
 エミリー:「水戸駅までバスがありますが、バスは14時57分発です」
 敷島:「なに?随分、待ち時間があるな」
 シンディ:「恐らく、遅着した場合も考慮しているのでしょう。今日はオンタイムでしたが」
 敷島:「しょうがない。タクシーで向かうか。荷物も多いしな。そこから電車で帰ればいいだろう」
 アリス:「そこは任せるよ」

 フェリーターミナルの外に出て、客待ちしていたタクシーに乗り換える。
 大きな荷物はトランクに乗せた。

 萌:「ボクもトランクですか?」
 シンディ:「遠慮しないで、一緒に乗りな」
 エミリー:「水戸駅までお願いします」
 運転手:「南口でいいですか?」
 エミリー:「はい」

 エミリーが助手席に座ってシートベルトを締めながら運転手に行き先を告げた。
 助手席の後ろに座っている敷島がスマホを手にしている。

 敷島:「ああ、井辺君、俺だ。今さっき、フェリーを降りたところだ。今、タクシーで水戸駅に向かってる。そこから常磐線の特急にでも乗れば、夕方には着けるだろう。ミクにも礼を言っておかないといけないしな。あと、矢沢専務に挨拶しておかないと……」
 井辺:「明日でも大丈夫ですよ、社長?皆さん、そのつもりでいますから」
 敷島:「でもなぁ、早く皆に顔を見せたいし……」
 井辺:「社長は御子息と再会してくださいと、最高顧問が仰ってましたよ」
 敷島:「えっ、あの爺さんが来てたの?」
 井辺:「専務と打ち合わせをされていましたが……」
 敷島:「そうか。じゃあ、申し訳無い。明日、早めに出勤するから」
 井辺:「ボーカロイドの皆にも伝えておきます」

[同日同時刻 天候:曇 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 井辺:「……ですので、社長は今日までごゆっくりお休みください。皆さんと専務には、私から伝えておきますので。……はい、失礼します」

 井辺は電話を切った。

 井辺:「ふう……」

 そして事務室内の自分の席を立って、ボーロカイドが控えている部屋に向かった。

 井辺:「失礼します」
 鏡音レン:「どうしました、プロデューサー?」
 KAITO:「急な仕事の依頼ですか?」
 井辺:「この時間帯、待機中なのはレン君とKAITOさんだけですか」
 KAITO:「ええ、そうですが、何かありましたか?」
 井辺:「先ほど社長から連絡がありました。先ほど下船されたそうです」
 レン:「社長がですか!?」
 KAITO:「どうやら無事だったようですね。何よりです」
 レン:「社長のことだから、フェリーの中でも何か戦いでもするのかと思った」
 KAITO:「さもありなんだね」
 井辺:「えー……ま、お二方は私よりも社長とのお付き合いが長いわけですが……取りあえず、期待外れのようです。明日にはこちらに顔を出されるとのことです」
 レン:「ミクやリンが喜びますよ」
 KAITO:「何だかんだ言って、あの2人も寂しがり屋だもんね」
 井辺:「そういうことですので、他のボーカロイドにも伝えておいてください」
 レン:「分かりました。……あの、プロデューサー」
 井辺:「何でしょう?」
 レン:「ボク、リンとは次、いつ一緒に仕事できますか?」
 井辺:「少々お待ちください」
 KAITO:「2人とも売れてから、ソロでの仕事が増えてきたよね」
 レン:「まあね。でもやっぱりボク、リンと一緒に仕事がしたい」
 KAITO:「ボクも昔はよくMEIKOと組んでたなぁ……」

 リンとレンは双子機であるが、KAITOとMEIKOはボーカロイド男性型の試作機、女性型の試作機という位置付けである為、姉弟とか兄妹という設定は無い。
 試作機である為、ナンバリングは元々無かったが、便宜上、MEIKOが0号機、KAITOが00号機ということになっている。
 試作機であっても、量産型(を意識した先行機)の初音ミク達とは何ら遜色の無い活躍をしている。

 井辺:「来週の日曜、旅番組のゲストとして出演する際と、グラビア撮影の際に一緒ということになってますね」
 レン:「ありがとうございます」
 井辺:「明日を楽しみに待ちましょう。社長も早くあなた達の顔を見たいそうです」
 KAITO:「実に光栄ですね」

 と、そこへKAITOの専属マネージャーがやってくる。

 マネージャー:「KAITO、そろそろラジオの収録に行くぞ」
 KAITO:「おっ、了解です。それじゃ、ボクはこれで」
 井辺:「よろしくお願いします」
 レン:「頑張ってー!」

 敷島がいなくても、取りあえず会社は上手く回っているようだ。
コメント (5)
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