報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「羽田空港で過ごす」

2024-09-20 20:36:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日18時30分 天候:雨 東京都大田区羽田空港・第2ターミナル1階→4階レストラン]

 ベルトコンベアから荷物を受け取った後、私達は迎えに来たパールと合流した。

 愛原「悪いな。わざわざ迎えに来てもらって……」
 パール「いいえ。沖縄の事件、テレビなどで知ってます。先生達、大変でしたね」
 愛原「まあ、これも仕事だ。それより、ちょうど夕食時だから、ここのレストランで夕食でも食べてから帰ろうと思うんだが、いいかい?」
 パール「はい、それはもう」
 愛原「パールも留守番頑張ってくれたし、キミにも奢るよ」
 パール「ありがとうございます。御馳走様です」
 愛原「リサがステーキを所望してるから、そういう店でいいかい?」
 パール「はい、結構です」

 高橋も頷いた。
 本当はリサに対して何か言いたいのだろうが、私の言葉であることと、結婚相手のパールが同意したことで、何も言えなくなったのだろう。

 愛原「駐車場、空いてた?」
 パール「はい。空いてました。第3ターミナルの方は混んでいたようですが」
 愛原「第3ターミナルか。国際線の方だな。インバウンド政策で外国人が多いからそうなんだろう」
 高橋「中国人の白タクだったりしてw」
 愛原「ハハハ、どうだろうな……」

 そんなことを話しながら、第2ターミナルの4階に上がる。
 店のショーウィンドウを見ると、リサが……。

 リサ「ハンバーグが多い」
 愛原「ステーキもあるだろう?」
 リサ「生でもいいんだけどな……」
 愛原「そんなことしたら、本当の鬼になるぞ?」
 リサ「むー……。わたしも臭くなるかなぁ……」
 愛原「獣臭ってヤツか?そうかもな」
 リサ「なるほど……」

 リサは私の話を聞いて、少し考え込んだが……。

 リサ「でも、レアは対応してくれるよね?」
 愛原「た、多分な……」

 そんなことを話しながら、ボックス席に座る。
 滑走路に面した店舗であるが、あいにくとそちら側の席は塞がっていた。

 高橋「先生、お疲れでしょう。ビールで一杯やりませんか?」
 愛原「俺はいいが、お前は運転があるだろ?」
 パール「帰りも私が運転しますから、先生もマサも飲んでください」
 愛原「いいのか?」
 パール「沖縄では、色々大変だったでしょうから」
 リサ「じゃあわたしも飲むー」
 愛原「お前はソフトドリンクな?」
 リサ「……はーい」
 愛原「飲み物が決まったところで、次は料理だ」
 リサ「サーロインステーキ……200グラムしか無いのか……」
 愛原「レストランのステーキ肉じゃ、それが普通だろ?」
 リサ「2枚分は食べたいねぇ……」
 愛原「おい!w」

 さすがにそれは窘めた。
 そりゃまあ、ステーキハウスとかにそういうのがあれば、選ばせるのもアリだが、ここではな……。
 それとも空港から出て、焼肉食べ放題の店とかの方が良かったかな?
 まあ、リサはステーキが食べたいと言っていたからこれでいいか。
 私達は主にハンバーグを注文した。
 注文を終えると、まず先に飲み物が運ばれてくる。

 高橋「さあ、先生。まずは一献」
 愛原「ありがとう。お前も飲め」
 高橋「あざっす!」
 愛原「パールはノンアルビールで悪いな」
 パール「いいえ。ありがとうございます」

 私はパールに、アサヒのドライゼロを注いであげた。

 パール「あ、あの……先生」
 愛原「何だ?」
 パール「本当は先生方が無事に帰って来られたということで『乾杯』にしたいのですが、私としましては、御嬢様がお亡くなりになったので、『献杯』にしたいのです」
 愛原「ああ、そうか……。そうだな」
 高橋「まさか、あのレズガキが死ぬなんてよ……」
 リサ「斉藤早苗……許すまじ!」
 パール「奥様は御無事だったのですか?」
 愛原「……ん!?」
 高橋「あっ?」
 リサ「えっ?」

 そういえば、絵恋さんの母親はどうしたんだ?
 まあ、斉藤早苗がそのままにしておくとは思えないから、もしかしたらもうこの世にいない可能性は考えられるが……。

 愛原「ご、ゴメン。今気づいた。そういえば、どうしたんだろ?」
 高橋「ニュースじゃ、何も言ってなかったっスね?」
 愛原「う、うん。ま、まあ、後で……明日にでも、善場係長に聞いてみるよ」
 パール「かしこまりました。それでは、まずは絵恋お嬢様に対する献杯ということで……」
 愛原「そ、そうしよう。『献杯』!」
 高橋「献杯」
 パール「献杯」
 リサ「ケンパーイ」

 それから料理が運ばれてくる。
 ハンバーグは焼くのに少し時間が掛かるせいか、リサのレアステーキの方が早く来た。

 リサ「わーい!いただきまーす!……あ」
 愛原「ん?」
 リサ「その前に……」

 リサは自分のスマホを取り出すと、それでステーキやセットのライス、サラダを撮影した。

 高橋「何だァ?インスタ蝿か?」
 リサ「違うよ。ミキに送ってあげるの」
 愛原「なるほど、そうか……」
 高橋「何だか知らんが、リサがいつの間にか新しく作った友達だよ」

 高橋が妻のパールに説明した。

 パール「そうですか。さすがリサさんは、陽キャですね」
 リサ「うーん……。陽キャは、むしろミキの方かも。だって、ミキの方が加勢に来たからね」
 愛原「あ、なるほど。美樹の方は、明日帰るんだろ?」
 リサ「らしい。飛行機乗り継ぎだから大変だ」
 愛原「秋田空港とかから、那覇空港への直行便も無いんだな」

 よくよく考えてみたら、仙台空港でさえ、那覇空港との直行便は1往復しか無いのだ。
 東北地方で最も賑わう仙台空港ですらそのザマなのだから……秋田では無いのも仕方が無いか。

 パール「明日は学校はお休みなんですね」
 愛原「ああ。緊急の保護者会をやるんで、臨時休校だ。リサには朝飯だけじゃなく、昼飯も用意してやってくれ」
 パール「かしこまりました」
 リサ「土曜日は、学校に行けるといいねぇ……」
 愛原「そうだな。あと、俺にはもう1つやることがある」
 高橋「何スか?」

 私は自分の頭を指さした。

 愛原「脳の検査だよ。俺にたまに起こるフラッシュバックと激しい頭痛の原因、突き止めておきたい。多分、明日には善場係長からクリニックを紹介されるはずだ」
 高橋「……そうですか」

 何故か高橋は浮かない顔をしていた。

 愛原「どうしたんだ?」
 高橋「いえ……。もしも先生が、実は重い病気でしたなんてなったら、どうしようと今から心配です」 
 愛原「おいおい、縁起でも無いこと言うなよ。……と言いたいところだが、何しろ脳だからな。確かに、最悪の事態を想定した方がいいのかもしれない」
 リサ「私のGウィルス、少し分けてあげようか?Gウィルスなら、脳の病気なんか関係無いよ?」
 愛原「いらんっちゅーに!」
 高橋「なに先生をしれっと化け物にしようとしてんだ、コラ!」
 リサ「ぴえん」
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“私立探偵 愛原学” 「沖縄より帰京の旅」

2024-09-20 13:38:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日15時50分 天候:晴 沖縄県那覇市上空 ソラシドエア24便機内]

 私達を乗せた飛行機は、10分ほど遅れて那覇空港を離陸した。
 ソラシドエアは、かつてスカイネットアジア航空と呼ばれた航空会社で、今ではLCCの仲間と思われがちだが、実はスカイマークと同様、厳密にはLCCではない。
 飛行機が水平飛行に入ると、ポーン♪というチャイムが鳴って、シートベルト着用サインが消える。

〔「シートベルト着用サインが消えましたが、フライト中、急な乱気流などで、飛行機が大きく揺れる場合がございます。お座席に着席の際、シートベルトの着用をお願い致します。只今より、キャビンアテンダントが、シートサービスにお伺い致します。……」〕

 スカイマークと同様、飲み物のサービスはある。

 愛原「ホットコーヒーを」
 CA「かしこまりました」

 私と高橋はコーヒーを希望し、リサはいつもの通り、アップルジュースを希望した。
 ようやく空弁に有りつけたリサが、夢中でそれを頬張っている。
 人間の食いもんガバガバ食いやがって。

 リサ「ふー……少しは満足」
 愛原「そうか。……少しだけ満足か」
 リサ「ステーキは絶対食べるからね?」
 愛原「う、うむ……。わ、分かってるよ」

 ステーキに有りつけなくなってしまったら、リサは暴走を起こすだろう。
 羽田空港第2ターミナル……いや、第1ターミナルも含めてゾンビパラダイスとなるかもしれない。
 結局私達は、斉藤早苗に遭遇することは1度も無かった。
 遭ったのは、早苗に化け物にさせられた我那覇絵恋である。
 絵恋が持って来たクッキーとジュースには、特異菌の成分が検出された。
 リサはともかく、他のコ達が飲んでいたら、あっという間にモールデッドになっていただろう。
 特異菌には予防薬が無く、対症療法としての投薬治療しか無い。
 水虫に予防薬が無いのと同じである。

 リサ「先生、どうするの?今後のこと……」
 愛原「明日は緊急の保護者会に専念させてもらうさ。リサはリサで、家でゆっくりしてるといい」
 リサ「土曜日は授業あるんだろうか……」
 愛原「それも含めて明日、学校と相談するよ」

 分かっていることは、明日は臨時休校、そして緊急の保護者会が行われるということ。
 そして、スクールカウンセラーの数を増やし、事件のことで精神的ダメージを受けた生徒達のケアに当たるということである。
 なので、臨時休校でも、カウンセラーとの相談を希望する生徒は登校することになる。

 愛原「リサは怒ってるんだよな?昨夜の事件のこと……」
 リサ「うん!わたしから『デザート』を奪った!斉藤早苗、許すまじ!」

 リサにとっては、私が『メインディッシュ』で、我那覇絵恋は『デザート』という認識である。
 この辺は、まだ人食い鬼としての感覚だということが分かる。

[同日18時10分 天候:雨 東京都大田区羽田空港 羽田空港第2ターミナル]

 飛行機は途中で乱気流などに巻き込まれるわけでもなく、順調に航行した。
 往路と同様、富士山を見ることができた。
 上から富士山を見下ろすことができるのは、飛行機ならではであろう。
 しかしながら、関東地方に入ると、視界が悪くなった。
 どうやら、関東地方は雨とのこと。

 愛原「天気がコロコロ変わるのも、日本の気候だねぇ……」
 リサ「傘持って来てないよ?」
 愛原「パールが迎えに来てくれることになってる」
 リサ「おー!」

 本当は電車で帰るつもりだったのだが、さすがに事件に巻き込まれたこともあって、非常に疲れた。
 高橋からパールに頼んで、事務所の車で迎えに来てくれることとなった。

 愛原「ついでに夕食を食べて帰ろう」

 私は後ろを振り向いた。
 後ろにはレイチェル、淀橋さん、小島さんがいる。

 愛原「3人とも。私達は羽田に着いたら夕食を食べるつもりだけど、キミ達はどうする?」

 と、聞くと……。

 レイチェル「私はすぐ兵舎に戻らないといけませン。こちらのHQにも報告に行くよう命令が出ています」
 淀橋「親が車で迎えに来てくれることになっているので……」
 小島「同じく」

 とのことだった。
 事件のこともあり、生徒達の親はとても心配で、学校に問い合わせが殺到したのこと。
 かくいう私も、PTA役員達から問い合わせの電話に対応しなければならなかった(その間、リサに主人公を任せたのはこの為)。

 愛原「そうか。気をつけて帰るんだよ」
 淀橋「はい」
 小島「はい」
 レイチェル「Yes,sir.」

 晴れていれば西日が眩しい羽田空港だろうが、今は雨天の為に薄暗い。
 JALやANAだったら、モニタやスクリーンに機体前方のカメラ映像が観られるのだろうが、ソラシドエアには無い。
 ドスン!という衝撃があって、飛行機は無事に羽田空港の滑走路に着陸した。
 そして、強いブレーキでもって減速する。

 愛原「着いたか……」

 着陸しても、すぐに降りられるとは限らない。
 搭乗口に横付けして、ボーディングブリッジに接続してようやく降りられるわけである。
 基本的には進行方向前方左側のみが出口となるので、前の席に座る乗客から降りる形となる。

 愛原「無事に着いた……。雨は降ってるけど」

 五月雨ですぐに止むかなと思ったのだが、案外結構本格的に降っている。
 夏場のゲリラ豪雨みたいな強過ぎる雨プラス雷が鳴っている、というわけではないが。

 坂上「沖縄でも言ったように、明日は臨時休校です。ただ、スクールカウンセラーは増員しますので、もしも相談がある場合は学校に来てもらって構いません。荷物を受け取ったら、そのまま解散となります。土曜日、授業があるかどうかは明日、学校からメールでお知らせします。それでは、お疲れ様でした!」

 引率教師の1人でリサの担任の坂上先生が、最後にそう挨拶した。
 私と高橋は一応、後ろから生徒達が忘れ物無いかどうかをチェックしてから、飛行機を降りた。
 生徒達の中には、具合悪そうにしているコもいる。
 元気なのは、リサくらいか。
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“愛原リサの日常” 「沖縄からの帰り」 2

2024-09-19 21:14:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日15時00分 天候:晴 沖縄県那覇市鏡水 那覇空港・国内線エリア]

 保安検査場を通過したリサ達は、帰りの飛行機の搭乗口付近に向かった。

 愛原「えーと……搭乗口は31番だそうだ。良かったな。バスでアクセスとかじゃなくて」
 リサ「そういうの、あるんだ」
 愛原「バスでアクセスは無いけど、作者が成田からジェットスターに乗った時、ボーディングブリッジじゃなく、階段昇り降りからのタラップで搭乗だったらしいからね」
 リサ「……安い航空会社だからだよね?」
 愛原「ソラシドエアもLCCじゃなかったかな?」
 リサ「そうなんだ」

 既に搭乗口付近では、東京中央学園生が待機していた。
 その中に……。

 淀橋「リサ!」
 小島「リサ……無事だったんだね!」
 リサ「そりゃわたしは死なない……って、おい!」

 淀橋と小島が、リサに抱き着いて泣き始めた。

 リサ「わたしが不死身なの、知ってるだろう。エレンのことは残念だけど、あれくらいじゃわたしは死なないから」

 太平山美樹という強力な助っ人が現れたことは言えなかった。

 リサ(大ジャンプしながらの金棒ブンブン振り回し、あんなに強い鬼がいたなんて……)

 尚、美樹は美樹で、リサのことを、『電撃が使えて火炎攻撃も使える。あんなに強い鬼がいたなんて……』と思っているわけである。

 リサ「(気のせいかな……。美樹の体、何か人食いしたヤツの臭いがしたような気がしたけど……)そろそろ放してくれる?空弁買いに行きたい。まだ、お昼食べてないんだ」
 淀橋「えっ!?う、うん……」
 小島「何か、ゴメンね……」
 リサ「先生、あそこのお店で空弁買ってきていい?」
 愛原「いいよ。買ったら、すぐに戻って来いよ」
 リサ「はーい」

 リサは売店に向かった。

 淀橋「絵恋さんが化け物にさせられて死んだってのに……悲しくないの?」
 小島「ま、魔王様だからねぇ……」
 愛原「それもあるんだけど、もちろん、リサは絵恋さんのことを何とも思ってないわけじゃないよ」
 淀橋「そ、そうですか?」
 愛原「悲しみを通り越して、怒りの感情だよ、あれは」
 小島「怒ってるようには見えませんでしたけど……」
 愛原「キミ達は夢中でリサにハグしたから気づいてなかっただろうけど、リサのヤツ、怒筋が浮かんでたよ。あいつは悲しみより先に、怒りの方の感情が来るタイプなんだろう。もちろん、俺が死んだりしたら話は別だろうけど」
 淀橋「そういうもんですか」
 愛原「そこは……『鬼だから』ということで納得してやってくれ。もう1度言うが、けしてリサは絵恋さんのことを何とも思ってないわけじゃない」
 淀橋「はあ……」
 小島「愛原先生が仰るのでしたら……」

[同日15時30分 天候:晴 那覇空港・国内線エリア→ソラシドエア24便機内]

 搭乗時間になり、リサ達を含む乗客達は搭乗口に並んだ。
 まずは『お手伝いが必要な乗客』から搭乗が行われる。
 対象は、まあ『優先席』で譲られるような人達とでも言うか。
 その後で、修学旅行生達。
 ソラシドエアの座席は全てエコノミーである為、優先搭乗権のあるファーストクラスやビジネスクラスは無い。
 後ろ半分の座席を予約している修学旅行生が先に乗ることになる。
 もっとも、降りる時は前からなので、一般客からとなるが。

 
(写真はソラシドエア公式サイトより拝借)

 機内は往路のスカイマークと同様、通路が中央にあって、その両脇に3人席が並んでいる形になる。
 リサ達の席は、往路と同じ。
 リサを後ろから2番目の窓側の席に座らせ、中央の席に愛原、通路側に高橋。
 そして、リサのすぐ後ろの席にレイチェルが座る。
 こうすることで、万が一リサが暴走したとしても、すぐに対処できるようにしているわけである。
 前方の席にしなかったのは、リサが暴走して、コクピットを破壊したりしたら危険だからである。

 リサ「荷物を乗せて……と」

 小柄なリサでは、ハットラックに届かない。

 愛原「リサ、座先の下に、足を掛けるステップがある。これに足を乗せれば、届くよ」
 リサ「おー、なるほど!」

 リサが買った空弁は『石垣牛焼肉弁当』。
 すぐにでも食べたいと思っていたリサだったが……。

 愛原「まだダメだよ。離陸してから」
 リサ「えー……」

 搭乗してからすぐに離陸するわけでは無いため、離陸準備ができる前までは機内のトイレとかも使える。
 どうやらリサは、その隙に食べてしまいたいようである。

 リサ「このままだと、お腹が空き過ぎて暴走するかも……」

 リサは俯いた。
 せっかく人間形態に化けているというのに、少しだけ鬼形態に戻りかかる。
 と、そのせいで愛原のスマホのアプリが、『注意』を示した。

 愛原「こらこら、やめなさい!」
 リサ「だってぇ……。沖縄のステーキ、1枚しか食べれなかった……」
 愛原「羽田空港に着いたら、帰る前に夕食にしよう。沖縄ステーキじゃないけど、リサが食べたいステーキ御馳走するよ」
 リサ「! 分かった。ガマンする」
 愛原「よし、偉いぞ」
 リサ「早く離陸して!」
 愛原「まだだぞ」

 尚、機内にはボーディング・ミュージックが流れている。
 曲名は“はばたけ笑顔”とのこと。
 因みに往路のスカイマークでも、それは流れていて、曲名は“SKY BLUE”とのこと。
 往路と比べると、修学旅行生達は静かだ。
 今までの疲れもあるのだろうが、そもそも昨夜の出来事が決定打となっているのだろう。
 入院するほどのケガはしていないが、それでも一部の生徒の中には湿布を貼っていたり、大きな絆創膏を貼っている者もいる。
 本当なら、明日と明後日は午前中だけ授業があるのだが、急きょ明日は臨時休校となった。
 その代わり、緊急の保護者説明会がある為、愛原と高橋は忙しくなるだろう。
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“愛原リサの日常” 「沖縄からの帰り」

2024-09-18 20:59:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日14時18分 天候:晴 沖縄県那覇市鏡水 沖縄都市モノレール線電車(列番不明)先頭車内→那覇空港駅]

 

 電車に乗っている10分間、リサは太平山美樹と話をした。
 名字の太平山はその名の通り、秋田県内にある太平山という山から取ったこと。
 今は1つの一族だが、そのルーツは岩手県から落ち延びて来た鬼と、秋田県南部、恐らく宮城県北部辺りから落ち延びて来たと思われる鬼達が集合して今の一族になったと言われていること、鬼の女は少なく、とても貴重で、田舎ではお姫様扱いされているということ。

 美樹「一族の中だけでの結婚じゃ、自ずから限界ばあるし、かといって人間と結婚したら、血が薄まっちまう。まあ、今更手遅れだけンども。んだもんで、関東に別の鬼の女達がいると聞いて、ツアーを組んで温泉旅行に行ったっちゅうわけよ」
 リサ「ああ。確かに上野んとこ、女ばっかりだねw いいんじゃないの?利恵もオトコ欲しがってるみたいだしwww」
 美樹「子持ちの年増じゃねー……」
 リサ「ハハ、そうか。じゃあ、リンとリコは?」
 美樹「そんなんいるっちゃ?」
 リサ「まあ、人間とのハーフだけど」
 美樹「半鬼か。まあ、血が薄まってるっちゅうことが問題だから……。そこで、リサだよ」
 リサ「えっ?」
 美樹「リサは純血の鬼だし、電撃も火炎攻撃もできる。こらうちの一族じゃ、大歓迎だべよ」
 リサ「それは残念。わたしは愛原先生一筋」
 美樹「スクールラブだっちゃ?」
 レイチェル「違いますよ。愛原センセイは、探偵です」
 美樹「探偵?探偵さんが、なして学校に?」
 リサ「PTA会長だから。うちの学校、PTA会長も引率者をやるの」
 美樹「デカい学校は大変だっちゃねー」

〔♪♪(車内チャイム。「谷茶前(たんちゃめー)」)♪♪。 まもなく、終点の那覇空港、那覇空港駅に到着します。お出口は、左側です〕
〔本日は、沖縄都市モノレール(ゆいレール)をご利用頂きまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いように、お支度ください。ドア付近の方は、ドアに手を挟まれないよう、ご注意願います。また、お降りの際は、足元にご注意ください。空港ターミナルへは、中央の連絡通路をご利用ください〕

 沖縄民謡をアレンジしたオルゴール調の車内チャイムが流れると、乗客達は降りる支度を始めた。
 ド平日だというのに、あちらこちらから中国語などの外国語が聞こえて来る。

 レイチェル「降りたら、すぐターミナルに向かいましょう。時間ピッタリですよ」
 リサ「分かった。ミキはどこまで来るんだ?」
 美樹「取りあえず、そのターミナルまで。どうせ1日乗車券で、またモノレールで戻れるからね」
 リサ「そうか」

 電車がホームに停車して、ドアが開く。

 

〔……那覇空港、那覇空港、終点です。ゆいレールをご利用頂き、ありかとうございます。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 リサ達はホームに降りた。

 

 そこからエスカレーターに乗って、改札口を目指す。

 リサ「ミキ達はいつ帰るんだ?」
 美樹「明日。明日、羽田経由で帰る。この分だと、明日も自由行動になりそうだっちゃね。元々明日が自由行動なんだけどw」
 リサ「そうか」

 リサはこの他にも一応、ミキがどのホテルに泊まっているか聞いておいた。
 元々泊まっていたホテルは直接的な被害は無かったが、規制線内に入ってしまった為、やはり東京中央学園生と同様、バラバラのホテルになってしまった。
 中には郊外のホテルになってしまった者もいるという。
 幸い、美樹はまだモノレール沿線のホテルだったから助かったとのこと。

[同日14時30分 天候:晴 同地区内 那覇空港2階・国内線エリア]

 愛原「おー、ギリギリだったな!」
 リサ「間に合った?」
 愛原「ギリギリセーフ!じゃあ、チケット渡すよ」
 リサ「ういっス!」
 美樹「東京中央学園は、ソラシドエアなんだ」
 愛原「あれ?キミは確か……」
 美樹「秋北学院の太平山美樹です。予定が全部キャンセルになっちまって、自由行動になったもんで、リサの見送りに来ました」
 愛原「そうなんだ」
 美樹「あなたが愛原先生ですか?」
 愛原「はい。愛原学です。そこにいるリサの保護者です」
 リサ「と、同時にわたしのダーリン」
 美樹「ふぇっ!?もう『獲物』にしとんのけ!?そらたまげた!」
 愛原「何か、勝手にそうなっちゃって……」
 リサ「だから、美樹の一族には入れないねー」
 美樹「むむむ……」
 愛原「だから、何の話?」
 美樹「まあ、どっちにしろ、秋田さ来たら、遊びに来てけさいよ。思いっきし歓迎しますっけ」
 愛原「行く機会あるかなぁ……」
 リサ「ミキが東京に来ればいいんだよ。栃木までは行ったんでしょ?」
 美樹「あー、まあ……。いっそのこと、大学を東京にすっかな」
 リサ「まだ決めてなかったの!?」
 愛原「オマエも宙に浮いた状態ではあるだろ?」
 リサ「た、確かに……」
 美樹「そっか。リサもまた決めてねぇのけ」
 リサ「決めてたんだけど、ちょっとまた保留にしたっていうかぁ……」
 高橋「先生、そろそろ保安検査場に行きましょう。何か確認したら、リサ達が最後みたいっス!」
 愛原「何だ、そうか。誰も遅刻しないなんて、立派だなー」
 リサ「というか、昨夜のショッキングな出来事のせいで、はっちゃけられないんだと思う」

 早めに空港に行って、そこで時間を潰そうという者達が多かったらしい。
 リサだって本当なら、首里城とか国際通りを歩きたかったのだが。

 高橋「ホテルの売店で土産買っといて正解でしたね」
 愛原「まあ、結果的にはな」
 リサ「じゃあ、ミキ。見送りありがとう」
 美樹「連絡待ってっからね」

 リサ達は美樹と別れると、保安検査場に向かった。
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“愛原リサの日常” 「修学旅行最終日」

2024-09-18 15:48:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日13時00分 天候:晴 沖縄県那覇市壺川 メルキュールホテル沖縄那覇・客室]

 リサはワケの分からない夢を見て目が覚めた。
 最後には、人間だった頃の我那覇絵恋がやってきたが……。

 リサ「斉藤早苗……許さない……!」

 枕元に置いたスマホが着信音を鳴らす。
 画面を見ると、レイチェルからだった。

 リサ「もしもし……?」
 レイチェル「おはようです!そろそろ起きて準備しないと、チコクしますよ!」
 リサ「あー……ハイハイ。今起きる……」

 この部屋にはリサ1人しかいないことに気づいた。
 部屋は1人でも、同じ建物に監視者がいれば良いことになっている。
 レイチェルが掛けてきたということは、レイチェルがこのホテルにいるのだろう。
 リサは起き上がると、まずはバスルームに向かった。
 バスルームはトイレ、洗面台、バスタブやシャワーが一体化されたものだが、ビジネスホテルのそれよりはやや広い。
 リサにとってホテルの方が安心なのは、トイレが必ず洋式だからである。

 リサ「お腹空いた……」

 リサは洗面所で顔を洗ったり、トイレを済ませたりした。

[同日13時55分 天候:晴 同ホテル・ロビー]

 レイチェル「……はい。これからリサを連れて、那覇空港へ向かいます。集合時間には着けると思います。……はい。リサは部屋で寝ているようです。先ほど電話で起こしましたので……」

 ホテルに入って来る1人の制服姿の女子高生。
 それは太平山美樹。
 鬼の名前は『美鬼』とのこと。
 それと同時に、エレベーターからリサが降りて来る。

 リサ「お待たせ」
 レイチェル「リサ」
 美樹「リサさん!」
 レイチェル「Huh?」
 美樹「は?」
 リサ「んっ?ミキ、来てたの?」
 美樹「結局、今日は班別研修が中止になって、自由行動になったべね」
 レイチェル「リサ、知り合いですか?」
 リサ「昨日、エレンとの戦いで共闘した、太平山美樹。秋田から来た鬼だよ。ミキ、この人はレイチェル・グラハム。BSAAの養成員で、東京中央学園の留学生」
 美樹「ど、どンも。太平山美樹です。……日本語、分かります?」
 レイチェル「はい、大丈夫ですよ。ドウゾよろしく」

 美樹もリサより背が高いが、レイチェルはそれ以上だ。
 レイチェルから僅かだが、見下ろされる形となった美樹は少し退いた。

 美樹「よろスく……」
 レイチェル「それより、そろそろ那覇空港に行かないと。愛原センセイがお待ちです」
 リサ「おー、そうだった!カードキー返してくるね!」

 リサはフロントに行って、チェックアウトをしに行った。
 それからホテルの外に出る。
 ホテルの前は大通りになっていて、国道329号線(那覇東バイパス)となっている。
 外に出ると、やや少し強い風が3人に吹きかかった。
 金髪をポニーテールにしているレイチェルの髪が1番靡いたが、おかっぱにしているリサの方が、髪が顔に掛かるなどした。
 その中で1番髪が短い美樹は、特に影響は受けていない。

 美樹「潮の香りがするっちゃね」
 リサ「海が近いんだよ」
 美樹「山育ちなもんで、こういう海の匂いは結構鼻につくンだ」
 リサ「それはわたしも同じだね」
 美樹「鬼は基本的に山育ちだな」
 リサ「う、うん……」

 かくいうリサには、子供の頃に記憶が殆ど無い。
 辛うじて小学生の頃には、アンブレラの非人道的な実験でBOWにさせられた記憶はある。
 人間だった頃の記憶が無いという意味だ。

[同日14時08分 天候:晴 同地区内 沖縄都市モノレール壺川駅→沖縄都市モノレール線電車(列番不明)先頭車内]

 

 ホテルのすぐ近くにある壺川駅に行った。
 ここではSuicaやPasmoが使えるので、リサとレイチェルはそれで改札口を通過しようとした。
 だが、美樹は1日乗車券で改札口を通過した。

 リサ「美樹はキップなんだ?」
 美樹「他の皆、昨夜は大変で、疲れてっから。取りあえず、アタシ1人で回ることにしたっちゃ。なもんでリサさん達の見送りでも、させてもらうっちゃ」
 リサ「そうか。……ああ、リサでいいよ。私もミキって呼んだ方が呼びやすい」
 美樹「そっか。そんなら、リサ、よろしく」
 リサ「こちらこそ」

 尚、1日乗車券は投入口に入れるタイプではなく、QRコード読取タイプ。
 乗車券に印刷されたQRコードを改札機の読取機に読ませるタイプ。
 日本ではやや珍しいが、外国、特にアジア圏ではQRコード印刷の乗車券は珍しくないそうだ。
 ホームに行くと、2面2線の対向式になっていた。
 電車は2両編成または3両編成で、今度来る電車は2両編成のようである。
 尚、ワンマン運転となっている。
 昼間は10分に1本の本数。
 2両編成なので、リサはどちらの車両に乗っても良い。

〔♪♪♪♪。まもなく、2番線に、那覇空港行きの電車が参ります。危ないですから、柵から離れて、お待ちください〕

 

 そして、2両編成の電車がやってきた。
 平日の昼間にも関わらず、そこそこの賑わいである。
 地元に対する道路渋滞対策も去ることながら、モノレール自体が観光資源になったというのもあるという。
 電車に乗り込むと、リサ達は座席の前の吊り革に掴まった。
 他に東京中央学園の生徒は乗っておらず、皆して早めに空港に向かったのだと分かる。
 リサのスマホにも、淀橋と小島が先に那覇空港に行った旨のLINEが来ていた。
 ホームに発車メロディが鳴り響く。
 接近メロディも発車メロディも、沖縄民謡をアレンジしたオルゴールだった。

〔ドアが閉まります〕

 ワンマン運転のせいか、運転士が乗務員室の窓から顔を出して、出発監視をしている。
 車両のドアチャイムやホームドアチャイムは、首都圏で聴けるものと同じタイプ。
 ドアが閉まり切ったことを確認すると、運転士は運転席に座ってハンドルを操作した。
 エアが抜ける音がして、インバータの音が車内に響く。
 スーッと滑らかな滑り出しだが、東京モノレールよりも新しいせいか、そんなに大きく揺れることはない。

〔次の停車駅は、奥武山公園(おおのやまこうえん)、奥武山公園です〕

 リサはドアの窓から、街の方を見た。
 現場の近くということもあって、高架線を走るモノレールから見えないかと思ったのだ。
 辛うじてパトカーの赤色灯や、規制線のテープなどが僅かにチラッと見えただけだった。
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