報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「沖縄からの帰り」 2

2024-09-19 21:14:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日15時00分 天候:晴 沖縄県那覇市鏡水 那覇空港・国内線エリア]

 保安検査場を通過したリサ達は、帰りの飛行機の搭乗口付近に向かった。

 愛原「えーと……搭乗口は31番だそうだ。良かったな。バスでアクセスとかじゃなくて」
 リサ「そういうの、あるんだ」
 愛原「バスでアクセスは無いけど、作者が成田からジェットスターに乗った時、ボーディングブリッジじゃなく、階段昇り降りからのタラップで搭乗だったらしいからね」
 リサ「……安い航空会社だからだよね?」
 愛原「ソラシドエアもLCCじゃなかったかな?」
 リサ「そうなんだ」

 既に搭乗口付近では、東京中央学園生が待機していた。
 その中に……。

 淀橋「リサ!」
 小島「リサ……無事だったんだね!」
 リサ「そりゃわたしは死なない……って、おい!」

 淀橋と小島が、リサに抱き着いて泣き始めた。

 リサ「わたしが不死身なの、知ってるだろう。エレンのことは残念だけど、あれくらいじゃわたしは死なないから」

 太平山美樹という強力な助っ人が現れたことは言えなかった。

 リサ(大ジャンプしながらの金棒ブンブン振り回し、あんなに強い鬼がいたなんて……)

 尚、美樹は美樹で、リサのことを、『電撃が使えて火炎攻撃も使える。あんなに強い鬼がいたなんて……』と思っているわけである。

 リサ「(気のせいかな……。美樹の体、何か人食いしたヤツの臭いがしたような気がしたけど……)そろそろ放してくれる?空弁買いに行きたい。まだ、お昼食べてないんだ」
 淀橋「えっ!?う、うん……」
 小島「何か、ゴメンね……」
 リサ「先生、あそこのお店で空弁買ってきていい?」
 愛原「いいよ。買ったら、すぐに戻って来いよ」
 リサ「はーい」

 リサは売店に向かった。

 淀橋「絵恋さんが化け物にさせられて死んだってのに……悲しくないの?」
 小島「ま、魔王様だからねぇ……」
 愛原「それもあるんだけど、もちろん、リサは絵恋さんのことを何とも思ってないわけじゃないよ」
 淀橋「そ、そうですか?」
 愛原「悲しみを通り越して、怒りの感情だよ、あれは」
 小島「怒ってるようには見えませんでしたけど……」
 愛原「キミ達は夢中でリサにハグしたから気づいてなかっただろうけど、リサのヤツ、怒筋が浮かんでたよ。あいつは悲しみより先に、怒りの方の感情が来るタイプなんだろう。もちろん、俺が死んだりしたら話は別だろうけど」
 淀橋「そういうもんですか」
 愛原「そこは……『鬼だから』ということで納得してやってくれ。もう1度言うが、けしてリサは絵恋さんのことを何とも思ってないわけじゃない」
 淀橋「はあ……」
 小島「愛原先生が仰るのでしたら……」

[同日15時30分 天候:晴 那覇空港・国内線エリア→ソラシドエア24便機内]

 搭乗時間になり、リサ達を含む乗客達は搭乗口に並んだ。
 まずは『お手伝いが必要な乗客』から搭乗が行われる。
 対象は、まあ『優先席』で譲られるような人達とでも言うか。
 その後で、修学旅行生達。
 ソラシドエアの座席は全てエコノミーである為、優先搭乗権のあるファーストクラスやビジネスクラスは無い。
 後ろ半分の座席を予約している修学旅行生が先に乗ることになる。
 もっとも、降りる時は前からなので、一般客からとなるが。

 
(写真はソラシドエア公式サイトより拝借)

 機内は往路のスカイマークと同様、通路が中央にあって、その両脇に3人席が並んでいる形になる。
 リサ達の席は、往路と同じ。
 リサを後ろから2番目の窓側の席に座らせ、中央の席に愛原、通路側に高橋。
 そして、リサのすぐ後ろの席にレイチェルが座る。
 こうすることで、万が一リサが暴走したとしても、すぐに対処できるようにしているわけである。
 前方の席にしなかったのは、リサが暴走して、コクピットを破壊したりしたら危険だからである。

 リサ「荷物を乗せて……と」

 小柄なリサでは、ハットラックに届かない。

 愛原「リサ、座先の下に、足を掛けるステップがある。これに足を乗せれば、届くよ」
 リサ「おー、なるほど!」

 リサが買った空弁は『石垣牛焼肉弁当』。
 すぐにでも食べたいと思っていたリサだったが……。

 愛原「まだダメだよ。離陸してから」
 リサ「えー……」

 搭乗してからすぐに離陸するわけでは無いため、離陸準備ができる前までは機内のトイレとかも使える。
 どうやらリサは、その隙に食べてしまいたいようである。

 リサ「このままだと、お腹が空き過ぎて暴走するかも……」

 リサは俯いた。
 せっかく人間形態に化けているというのに、少しだけ鬼形態に戻りかかる。
 と、そのせいで愛原のスマホのアプリが、『注意』を示した。

 愛原「こらこら、やめなさい!」
 リサ「だってぇ……。沖縄のステーキ、1枚しか食べれなかった……」
 愛原「羽田空港に着いたら、帰る前に夕食にしよう。沖縄ステーキじゃないけど、リサが食べたいステーキ御馳走するよ」
 リサ「! 分かった。ガマンする」
 愛原「よし、偉いぞ」
 リサ「早く離陸して!」
 愛原「まだだぞ」

 尚、機内にはボーディング・ミュージックが流れている。
 曲名は“はばたけ笑顔”とのこと。
 因みに往路のスカイマークでも、それは流れていて、曲名は“SKY BLUE”とのこと。
 往路と比べると、修学旅行生達は静かだ。
 今までの疲れもあるのだろうが、そもそも昨夜の出来事が決定打となっているのだろう。
 入院するほどのケガはしていないが、それでも一部の生徒の中には湿布を貼っていたり、大きな絆創膏を貼っている者もいる。
 本当なら、明日と明後日は午前中だけ授業があるのだが、急きょ明日は臨時休校となった。
 その代わり、緊急の保護者説明会がある為、愛原と高橋は忙しくなるだろう。
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“愛原リサの日常” 「沖縄からの帰り」

2024-09-18 20:59:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日14時18分 天候:晴 沖縄県那覇市鏡水 沖縄都市モノレール線電車(列番不明)先頭車内→那覇空港駅]

 

 電車に乗っている10分間、リサは太平山美樹と話をした。
 名字の太平山はその名の通り、秋田県内にある太平山という山から取ったこと。
 今は1つの一族だが、そのルーツは岩手県から落ち延びて来た鬼と、秋田県南部、恐らく宮城県北部辺りから落ち延びて来たと思われる鬼達が集合して今の一族になったと言われていること、鬼の女は少なく、とても貴重で、田舎ではお姫様扱いされているということ。

 美樹「一族の中だけでの結婚じゃ、自ずから限界ばあるし、かといって人間と結婚したら、血が薄まっちまう。まあ、今更手遅れだけンども。んだもんで、関東に別の鬼の女達がいると聞いて、ツアーを組んで温泉旅行に行ったっちゅうわけよ」
 リサ「ああ。確かに上野んとこ、女ばっかりだねw いいんじゃないの?利恵もオトコ欲しがってるみたいだしwww」
 美樹「子持ちの年増じゃねー……」
 リサ「ハハ、そうか。じゃあ、リンとリコは?」
 美樹「そんなんいるっちゃ?」
 リサ「まあ、人間とのハーフだけど」
 美樹「半鬼か。まあ、血が薄まってるっちゅうことが問題だから……。そこで、リサだよ」
 リサ「えっ?」
 美樹「リサは純血の鬼だし、電撃も火炎攻撃もできる。こらうちの一族じゃ、大歓迎だべよ」
 リサ「それは残念。わたしは愛原先生一筋」
 美樹「スクールラブだっちゃ?」
 レイチェル「違いますよ。愛原センセイは、探偵です」
 美樹「探偵?探偵さんが、なして学校に?」
 リサ「PTA会長だから。うちの学校、PTA会長も引率者をやるの」
 美樹「デカい学校は大変だっちゃねー」

〔♪♪(車内チャイム。「谷茶前(たんちゃめー)」)♪♪。 まもなく、終点の那覇空港、那覇空港駅に到着します。お出口は、左側です〕
〔本日は、沖縄都市モノレール(ゆいレール)をご利用頂きまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いように、お支度ください。ドア付近の方は、ドアに手を挟まれないよう、ご注意願います。また、お降りの際は、足元にご注意ください。空港ターミナルへは、中央の連絡通路をご利用ください〕

 沖縄民謡をアレンジしたオルゴール調の車内チャイムが流れると、乗客達は降りる支度を始めた。
 ド平日だというのに、あちらこちらから中国語などの外国語が聞こえて来る。

 レイチェル「降りたら、すぐターミナルに向かいましょう。時間ピッタリですよ」
 リサ「分かった。ミキはどこまで来るんだ?」
 美樹「取りあえず、そのターミナルまで。どうせ1日乗車券で、またモノレールで戻れるからね」
 リサ「そうか」

 電車がホームに停車して、ドアが開く。

 

〔……那覇空港、那覇空港、終点です。ゆいレールをご利用頂き、ありかとうございます。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 リサ達はホームに降りた。

 

 そこからエスカレーターに乗って、改札口を目指す。

 リサ「ミキ達はいつ帰るんだ?」
 美樹「明日。明日、羽田経由で帰る。この分だと、明日も自由行動になりそうだっちゃね。元々明日が自由行動なんだけどw」
 リサ「そうか」

 リサはこの他にも一応、ミキがどのホテルに泊まっているか聞いておいた。
 元々泊まっていたホテルは直接的な被害は無かったが、規制線内に入ってしまった為、やはり東京中央学園生と同様、バラバラのホテルになってしまった。
 中には郊外のホテルになってしまった者もいるという。
 幸い、美樹はまだモノレール沿線のホテルだったから助かったとのこと。

[同日14時30分 天候:晴 同地区内 那覇空港2階・国内線エリア]

 愛原「おー、ギリギリだったな!」
 リサ「間に合った?」
 愛原「ギリギリセーフ!じゃあ、チケット渡すよ」
 リサ「ういっス!」
 美樹「東京中央学園は、ソラシドエアなんだ」
 愛原「あれ?キミは確か……」
 美樹「秋北学院の太平山美樹です。予定が全部キャンセルになっちまって、自由行動になったもんで、リサの見送りに来ました」
 愛原「そうなんだ」
 美樹「あなたが愛原先生ですか?」
 愛原「はい。愛原学です。そこにいるリサの保護者です」
 リサ「と、同時にわたしのダーリン」
 美樹「ふぇっ!?もう『獲物』にしとんのけ!?そらたまげた!」
 愛原「何か、勝手にそうなっちゃって……」
 リサ「だから、美樹の一族には入れないねー」
 美樹「むむむ……」
 愛原「だから、何の話?」
 美樹「まあ、どっちにしろ、秋田さ来たら、遊びに来てけさいよ。思いっきし歓迎しますっけ」
 愛原「行く機会あるかなぁ……」
 リサ「ミキが東京に来ればいいんだよ。栃木までは行ったんでしょ?」
 美樹「あー、まあ……。いっそのこと、大学を東京にすっかな」
 リサ「まだ決めてなかったの!?」
 愛原「オマエも宙に浮いた状態ではあるだろ?」
 リサ「た、確かに……」
 美樹「そっか。リサもまた決めてねぇのけ」
 リサ「決めてたんだけど、ちょっとまた保留にしたっていうかぁ……」
 高橋「先生、そろそろ保安検査場に行きましょう。何か確認したら、リサ達が最後みたいっス!」
 愛原「何だ、そうか。誰も遅刻しないなんて、立派だなー」
 リサ「というか、昨夜のショッキングな出来事のせいで、はっちゃけられないんだと思う」

 早めに空港に行って、そこで時間を潰そうという者達が多かったらしい。
 リサだって本当なら、首里城とか国際通りを歩きたかったのだが。

 高橋「ホテルの売店で土産買っといて正解でしたね」
 愛原「まあ、結果的にはな」
 リサ「じゃあ、ミキ。見送りありがとう」
 美樹「連絡待ってっからね」

 リサ達は美樹と別れると、保安検査場に向かった。
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“愛原リサの日常” 「修学旅行最終日」

2024-09-18 15:48:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日13時00分 天候:晴 沖縄県那覇市壺川 メルキュールホテル沖縄那覇・客室]

 リサはワケの分からない夢を見て目が覚めた。
 最後には、人間だった頃の我那覇絵恋がやってきたが……。

 リサ「斉藤早苗……許さない……!」

 枕元に置いたスマホが着信音を鳴らす。
 画面を見ると、レイチェルからだった。

 リサ「もしもし……?」
 レイチェル「おはようです!そろそろ起きて準備しないと、チコクしますよ!」
 リサ「あー……ハイハイ。今起きる……」

 この部屋にはリサ1人しかいないことに気づいた。
 部屋は1人でも、同じ建物に監視者がいれば良いことになっている。
 レイチェルが掛けてきたということは、レイチェルがこのホテルにいるのだろう。
 リサは起き上がると、まずはバスルームに向かった。
 バスルームはトイレ、洗面台、バスタブやシャワーが一体化されたものだが、ビジネスホテルのそれよりはやや広い。
 リサにとってホテルの方が安心なのは、トイレが必ず洋式だからである。

 リサ「お腹空いた……」

 リサは洗面所で顔を洗ったり、トイレを済ませたりした。

[同日13時55分 天候:晴 同ホテル・ロビー]

 レイチェル「……はい。これからリサを連れて、那覇空港へ向かいます。集合時間には着けると思います。……はい。リサは部屋で寝ているようです。先ほど電話で起こしましたので……」

 ホテルに入って来る1人の制服姿の女子高生。
 それは太平山美樹。
 鬼の名前は『美鬼』とのこと。
 それと同時に、エレベーターからリサが降りて来る。

 リサ「お待たせ」
 レイチェル「リサ」
 美樹「リサさん!」
 レイチェル「Huh?」
 美樹「は?」
 リサ「んっ?ミキ、来てたの?」
 美樹「結局、今日は班別研修が中止になって、自由行動になったべね」
 レイチェル「リサ、知り合いですか?」
 リサ「昨日、エレンとの戦いで共闘した、太平山美樹。秋田から来た鬼だよ。ミキ、この人はレイチェル・グラハム。BSAAの養成員で、東京中央学園の留学生」
 美樹「ど、どンも。太平山美樹です。……日本語、分かります?」
 レイチェル「はい、大丈夫ですよ。ドウゾよろしく」

 美樹もリサより背が高いが、レイチェルはそれ以上だ。
 レイチェルから僅かだが、見下ろされる形となった美樹は少し退いた。

 美樹「よろスく……」
 レイチェル「それより、そろそろ那覇空港に行かないと。愛原センセイがお待ちです」
 リサ「おー、そうだった!カードキー返してくるね!」

 リサはフロントに行って、チェックアウトをしに行った。
 それからホテルの外に出る。
 ホテルの前は大通りになっていて、国道329号線(那覇東バイパス)となっている。
 外に出ると、やや少し強い風が3人に吹きかかった。
 金髪をポニーテールにしているレイチェルの髪が1番靡いたが、おかっぱにしているリサの方が、髪が顔に掛かるなどした。
 その中で1番髪が短い美樹は、特に影響は受けていない。

 美樹「潮の香りがするっちゃね」
 リサ「海が近いんだよ」
 美樹「山育ちなもんで、こういう海の匂いは結構鼻につくンだ」
 リサ「それはわたしも同じだね」
 美樹「鬼は基本的に山育ちだな」
 リサ「う、うん……」

 かくいうリサには、子供の頃に記憶が殆ど無い。
 辛うじて小学生の頃には、アンブレラの非人道的な実験でBOWにさせられた記憶はある。
 人間だった頃の記憶が無いという意味だ。

[同日14時08分 天候:晴 同地区内 沖縄都市モノレール壺川駅→沖縄都市モノレール線電車(列番不明)先頭車内]

 

 ホテルのすぐ近くにある壺川駅に行った。
 ここではSuicaやPasmoが使えるので、リサとレイチェルはそれで改札口を通過しようとした。
 だが、美樹は1日乗車券で改札口を通過した。

 リサ「美樹はキップなんだ?」
 美樹「他の皆、昨夜は大変で、疲れてっから。取りあえず、アタシ1人で回ることにしたっちゃ。なもんでリサさん達の見送りでも、させてもらうっちゃ」
 リサ「そうか。……ああ、リサでいいよ。私もミキって呼んだ方が呼びやすい」
 美樹「そっか。そんなら、リサ、よろしく」
 リサ「こちらこそ」

 尚、1日乗車券は投入口に入れるタイプではなく、QRコード読取タイプ。
 乗車券に印刷されたQRコードを改札機の読取機に読ませるタイプ。
 日本ではやや珍しいが、外国、特にアジア圏ではQRコード印刷の乗車券は珍しくないそうだ。
 ホームに行くと、2面2線の対向式になっていた。
 電車は2両編成または3両編成で、今度来る電車は2両編成のようである。
 尚、ワンマン運転となっている。
 昼間は10分に1本の本数。
 2両編成なので、リサはどちらの車両に乗っても良い。

〔♪♪♪♪。まもなく、2番線に、那覇空港行きの電車が参ります。危ないですから、柵から離れて、お待ちください〕

 

 そして、2両編成の電車がやってきた。
 平日の昼間にも関わらず、そこそこの賑わいである。
 地元に対する道路渋滞対策も去ることながら、モノレール自体が観光資源になったというのもあるという。
 電車に乗り込むと、リサ達は座席の前の吊り革に掴まった。
 他に東京中央学園の生徒は乗っておらず、皆して早めに空港に向かったのだと分かる。
 リサのスマホにも、淀橋と小島が先に那覇空港に行った旨のLINEが来ていた。
 ホームに発車メロディが鳴り響く。
 接近メロディも発車メロディも、沖縄民謡をアレンジしたオルゴールだった。

〔ドアが閉まります〕

 ワンマン運転のせいか、運転士が乗務員室の窓から顔を出して、出発監視をしている。
 車両のドアチャイムやホームドアチャイムは、首都圏で聴けるものと同じタイプ。
 ドアが閉まり切ったことを確認すると、運転士は運転席に座ってハンドルを操作した。
 エアが抜ける音がして、インバータの音が車内に響く。
 スーッと滑らかな滑り出しだが、東京モノレールよりも新しいせいか、そんなに大きく揺れることはない。

〔次の停車駅は、奥武山公園(おおのやまこうえん)、奥武山公園です〕

 リサはドアの窓から、街の方を見た。
 現場の近くということもあって、高架線を走るモノレールから見えないかと思ったのだ。
 辛うじてパトカーの赤色灯や、規制線のテープなどが僅かにチラッと見えただけだった。
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“愛原リサの日常” 「沖縄戦から一夜明けて」

2024-09-16 20:22:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日07時00分 天候:晴 沖縄県那覇市赤嶺 自衛隊那覇病院]

 特異菌の化け物と化した絵恋を倒したリサ達は、那覇空港に近接する自衛隊病院に向かった。
 BSAA極東支部日本地区本部隊は自衛隊出身者が多く、また、そこから出向者も数多い。
 その為、BSAA北米支部隊が米軍基地を拠点とするのに対し、日本地区隊は自衛隊駐屯地に拠点を置くことが多かった。
 沖縄の自衛隊駐屯地には普段、BSAAは常駐していないが、リサ達が修学旅行で沖縄に行くのに合わせ、地区隊もそこに出向している。
 今回、それが功を奏したわけだ。
 自衛隊病院の敷地内には、BSAAのドクターカーが裏手に駐車され、そこでリサと太平山美樹はウィルスチェックが行われた。
 その結果、リサは『陰性』で美樹は『陽性』。
 リサの場合、かつては体内に自分の特異菌を持っていたこともあり、絵恋から感染させられた特異菌をGウィルスが食べてしまったらしい。
 Gウィルスの無い美樹は、『陽性』。
 それでも見た目に症状が無いのは、鬼族の末裔だからか。
 何しろ、インフルエンザに感染したことが無いというのだから。
 だが、実際は『感染無症状』状態。
 直ちに、美樹には特異菌の特効薬が投与された。
 こっそりホテルに戻るつもりだった美樹だが、一晩様子を見なければならないとされ、美樹の宿泊先には善場が連絡することになった。
 リサの方は陰性だったので、ホテルに行っても良かったのだが、美樹のことが気になるからと、一緒に泊まることにした。
 尚、他の患者などに影響が無いよう、病棟内ではなく、ドクターカーの中で寝ることになった。

 美樹「あんまし寝られねがったっちゃねー……」
 リサ「ねー」

 ストレッチャーの上で寝る形になった為、あまり眠れなかったもよう。
 過ごし方は入院病棟に合わせているもよう。
 朝6時に起こされて、検温と問診が行われた。
 それから7時に食事が運ばれてくる。

 リサ「少なっ!」
 美樹「少なっ!」

 病院食なのだから仕方が無いとはいえ、その量はとても鬼娘2人の腹を満たせるようなものではなかった。
 食事が終わると、BSAAの軍医がやってきて、検査が行われた。

[同日09時00分 天候:晴 同病院敷地内・ドクターカー]

 BSAA軍医「陰性です」
 美樹「やった!」
 リサ「特異菌に感染して、全く症状が無いってのも珍しいね」
 美樹「そうなの?」
 リサ「うん。……もしかして、インフルエンザに罹ったことが無いって言っても、実は『感染無症状』だっただけなんじゃない?」
 美樹「あー……そう言われっとォ……」

 そこへ善場がやってくる。

 善場「おはようございます。具合は上々のようで何よりですね」
 リサ「善場さん」
 善場「それでは、ここを退出致します。着替えて、準備なさってください」
 美樹「あのー……ここの治療費は……?」
 善場「バイオハザードによる生物兵器ウィルスの感染については、その治療費等は全て国費負担となります。ですので、心配なさらないでください」
 美樹「すげェ!」
 善場「ただ、書類の手続きがありますので、後ほど……」
 美樹「学校の方は……?」
 善場「NPO法人デイライト東京事務所が、『正式且つ緊急に』あなたに協力を要請したということにしています。鬼の正体バレたらマズいですか?」
 美樹「いや……そこは公然の秘密ってヤツなんで、大丈夫です」
 リサ「わたしと同じだね」
 善場「あなたの場合は、『国家機密』です」
 リサ「……はーい」
 善場「というわけで太平山さん、リサの正体については、内密にお願いします」
 美樹「せっかく鬼の同族が見つかったと思ったのに……」
 善場「リサはあなたと違って、元人間ですよ。まあ、あなたも割と人間の血が混ざっているようですが……」
 美樹「へエ。本当は鬼の血が薄まっているはずが、何だかいきなり先祖返りを起こすようになって、このザマです」

 美樹は頭の角を指さした。
 いざという場合は、帽子を被って隠しているらしい。

 リサ「そうか!元から鬼だから、角が隠せないんだ!」
 美樹「そう。ん?角を隠す?」
 リサ「こう!」

 リサは鬼形態から人間形態へと変化した。

 リサ「はい、人間の姿」
 美樹「おお~!一流の鬼だべね!」
 リサ「だから違うって」
 善場「とにかく、着替えてください。今後の話は、それからです」

[同日10時00分 天候:晴 沖縄県那覇市壺川 メルキュールホテル沖縄那覇]

 自衛隊病院から車で移動したリサ達。
 まず最初に訪れたのは、そんな自衛隊基地から10分強走った所にあるホテルだった。
 愛原と高橋が、そこに泊まっているという。
 たまたまそこが、修学旅行生達の一部を受け入れたホテルでもあった。

 善場「私は太平山さんをホテルまで送って行きます。また後ほど」
 リサ「分かった」

 リサは車から降ろされると、その足でホテルの中に入った。
 そして、ロビーに向かう。

 愛原「リサ!」
 リサ「先生!」
 愛原「検査の方も何とも無かったみたいだな?」
 リサ「わたしはね。ミキが陽性だったから、心配になって付き合ってた」
 愛原「なるほど。いくら症状が無くても、油断はできないからな。もしかすると、突然、変異を起こして暴れるかもしれない。それに備えて残ってくれたというわけか」
 リサ「う、うん。そんなところ……」

 実はそこまで殊勝な理由ではなく、ただ単に気になっただけなのだが。

 リサ「他の皆は?」
 愛原「高橋も、他の修学旅行生も疲れて部屋にいるよ。何しろ、昨夜はあんなことがあった後だからな。元々今日が自由行動で良かったよ」
 リサ「そうなんだ」
 愛原「善場係長は、その太平山美樹さんってコをホテルに送ってから、またここに来るそうだな?」
 リサ「うん、そう。どうも、秋北学院も自由行動になりそうだよ」
 愛原「そうなのか?」
 リサ「だって秋北学院、那覇中央ホテルの隣のホテルに泊まってたんだもん。直接影響は無くても、避難命令とか出されたでしょ?てんやわんやだったのは、向こうも同じだよ」
 愛原「うーん……それもそうだな」
 リサ「秋北学院は元々今日、班別研修だったらしいけど」
 愛原「そうか」
 リサ「ところで、東京中央学園はどうするの?」
 愛原「一応、帰りの飛行機、予定通りの便に乗って帰ることになってる。それまでホテルの外に出て散策するも良し。ホテルの中で休んでるのも良しだ」
 リサ「じゃあ、わたしも少し寝ようかな。昨夜はあんまり寝れなかったし」
 愛原「そうするといい。部屋はシングルルームを用意してあるから。カードキーも預かってる」
 リサ「分かった。えーと……那覇空港での集合時間は……」
 愛原「14時30分。15時40分発のソラシドエアに乗るから」
 リサ「それまでに行けばいいんだね」
 愛原「そう。幸い、ホテルの前はモノレールの駅があるから、それで空港までは乗り換え無しで行ける。駅から空港までは10分くらいだ」
 リサ「近っ!」
 愛原「だからある意味、ゆっくりはできるんだよ」
 リサ「分かった。少し、休ませてもらうね」
 愛原「ああ。寝坊はするなよ?」
 リサ「分かってる」

 リサは愛原からカードキーをもらうと、それで客室へと向かった。
 腹は減っていたが、それよりも眠気の方が大きかった。
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“愛原リサの日常” 「沖縄戦終結」

2024-09-16 12:38:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月10日24時00分 天候:曇 沖縄県那覇市某所 那覇中央ホテル]

 太平山美樹「あと1回!」

 美樹が金棒で絵恋の頭頂部を殴る。
 既に金棒は棘がいくつか取れ、少し曲がっていた。
 殴った所からは、光る瘤が現れ、そこが弱点である。
 BSAAの戦闘ヘリが機銃掃射で、そこを集中攻撃する。

 絵恋「ギャアアアアアッ!!」

 ついにHPが0になった絵恋は断末魔を上げながら、体中を石灰化させていった。

 美樹「石化した!?」
 リサ「石灰化だよ!……特異菌に感染していたんだ……」
 美樹「特異菌???」
 リサ「あんたがどういう『鬼』で、わたしに近づいたか知らないけど、こっちはもっとヤバいことになってる。こいつは……巻き込まれただけなんだ……」
 美樹「一体、どういうことだ?」

 首だけになった絵恋がリサの近くに落ちる。
 その首は化け物ではなく、人間の状態だった。

 リサ「一体どうしてこんなことになった!?」
 絵恋「気をつけ……斉藤……早苗……。変なクッキー……食べ……ジュース……」

 そして、最後に残った首も石灰化していった。

 リサ「斉藤早苗か……」
 美樹「斉藤早苗……」
 リサ「デザート……食べられなかった……」

 リサは石灰の1つを手に取ると、名残惜しそうにした。

 美樹「デザート?」

 と、そこへ……。

 愛原「リサ!リサ!大丈夫だったか!?」

 愛原と善場が駆け付けた。

 リサ「愛原先生……」

 それから上空からは、BSAAの隊員達がヘリからロープを使って降下している。

 愛原「ケガは無いか!?」
 リサ「うん、大丈夫」
 愛原「ここはBSAAが捜査を始める!もうすぐ立入禁止になるから、ここから離れよう!」
 リサ「分かった」
 善場「絵恋は倒したのですね?」
 リサ「うん。これが、その残骸」

 リサは石灰を見せた。

 善場「特異菌に感染していたわけですか。しかし、どうして気づけなかったのか……」
 リサ「斉藤早苗に変なクッキーやらジュースやら飲まされて、それで感染したらしいよ」
 善場「やはり斉藤早苗ですか」
 美樹「あの……」

 そこへ美樹が話し掛けた。

 善場「あなたは……?」
 美樹「秋田県の秋北学院高校の太平山美樹と言います。さっきから斉藤早苗ってコ、探してるみてぇスけど、うちに来たことがあるんで、何か関係あるんスか?」
 善場「何ですって?……あなたの素顔は?」
 美樹「ああ……」

 美樹はやっと般若の仮面を外した。
 そこには高校3年生女子、年相応の整った顔立ちが現れた。
 髪はリサよりも短く切っていてボーイッシュ。
 但し、リサと同じように、頭からは2本角が生えている。
 そして、口元には牙が覗いていた。

 善場「BSAAのアプリに反応しない。あなた、一体……」
 美樹「よく分かんねぇけど、私は鬼の末裔です。ただ、先祖返り起こしてるみたいで、私の代、結構こういう御先祖様みてぇなことになっちゃってて……」
 善場「リサのようにGウィルスなどを保有することで、『鬼のような』姿に変化しているというわけではなく、本当に元から鬼だったのですね」
 美樹「まあ、そういうこってす。一体……東京じゃ何が起きてるんスか?それとも、沖縄だから、こんなことになったんですか?」

 美樹は東北の訛りを交えながら、本当にワケが分からないといった感じだった。

 美樹「私は、同族が沖縄の化け物と戦ってるみてぇだから助太刀しようと思って来たんですが……」
 善場「……機会があれば、いずれお話しします。どうも、斉藤早苗とも関わりがあるようなので、後ほどお話しを伺うことになるでしょう。連絡先を交換させて頂けませんか?」
 美樹「はい……」
 リサ「栃木の……板室温泉に泊まりに来た『秋田の鬼族』って、あなたのこと?」
 美樹「ああ、そうです。栃木で同族が経営している温泉があるって聞いて、相互扶助の精神で泊まりに行ったことがあります」
 リサ「京都からも酒呑童子の関係者が泊まりに行ったってよ」
 美樹「あの酒呑童子!秋田でも有名ですっけ!」
 リサ「まあ、わたしは2度と行きたくないけど」
 美樹「んん?」
 善場「取りあえず、ここを離れましょう。リサはBSAAへ。メディカルチェックを行います。あなたも来てください。いくら鬼族の末裔とはいえ、特異菌に感染していると良くないので」
 美樹「さっきからその特異菌って何なんスか?」

 愛原は、かつて我那覇絵恋だった石灰の欠片達を指さして答えた。

 愛原「簡単に言えば、人間をあんな化け物に変化させてしまう、恐ろしい菌だよ」
 美樹「ええっ!?生まれてこの方、インフルエンザにも罹ったことの無い私が!?」
 リサ「鬼って凄いよねぇ!」
 愛原「お前が言うな!……まさか、永遠に生きてるわけじゃないだろうな?」
 美樹「いえ、さすがにそれは無いです。吸血鬼とかじゃないんで。ただ、かなり長生きですよ。私の曽祖父ちゃん、113歳まで生きました」
 愛原「長っ!」
 美樹「だいたい、曾孫が大人になる頃に死ぬってーのが、うちの家系です」
 善場「……もしかして、アンブレラの関係者がそちらに行ったりしませんでしたか?」
 美樹「あ、来ましたよ。何か、『血を採らせてくれー』とか来たらしいですが」
 善場「やっぱり……」
 愛原「何か御存知なんですか?」
 善場「……後ほど、お話しします」

 現場ではBSAAが、かつて我那覇絵恋だった石灰を回収している。
 解析や分析を行うのだろう。
 リサ達は規制線の外に出ると、そこに止まっていたBSAAの装甲車に乗り込んだ。

 美樹「ゴツい軍用車だなゃ~!初めて乗るっちゃね!」
 愛原「ところでキミも修学旅行中でしょ?抜け出してきて、大丈夫なの?」
 美樹「うちの学校、ビジネスホテル貸切で泊まってるんですよ。1人1部屋なんで、起床時間までに戻れば大丈夫です」
 リサ「そういうもんなのか……」

 尚、リサ達より後に沖縄入りした為、同じ3泊4日でも、帰りはリサ達より遅いとのこと。

 愛原「秋北学院ってことは、秋田県北部だな。大館能代空港からだと、那覇までの直行便は無いだろ?」
 美樹「へエ。なもんで、羽田で乗り換えです」
 愛原「なるほど」

 かつては伊丹空港へも航空便があり、沖縄方面への乗り換えなら、そちらの方が時間も短縮されるだろうが、あいにくと今は運休中であり、今は羽田便しか飛行機が飛んでいない。
 よって、乗り換えは羽田でしかできないわけである。
 まあ、羽田~那覇はその便数も多いので、乗り換えには困らないが。
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