ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“私立探偵 愛原学” 「リサの入学前準備」 2

2018-10-18 10:33:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月13日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は午後から半休にして、リサの入学前の準備を行うことにした。

 愛原:「東京中央学園墨田中学校とは……」
 高橋:「地味に私立な学校狙いやがりましたね、あのネーチャン」

 名前の通り同じ墨田区であり、確かに徒歩通学可能な場所にある。
 多分、リサが毎朝見下ろしていた中学生の中には、そこに通うコも含まれていたのではないか。

 愛原:「まず先に揃えやすい物から揃えることにしよう」
 高橋:「何から行きますか?」
 愛原:「そうだな……」

 私はエージェントの善場氏からもらったリストを見た。

 愛原:「取りあえず、文房具から揃えるか」
 高橋:「ウっス!」
 愛原:「一応、リサも連れて行こう」
 高橋:「大丈夫ですか?」
 愛原:「俺達のセンスで、リサが納得すると思うか?」
 高橋:「……多分キレると思います」
 愛原:「だろ?こんなことで東京を第2の霧生市にはしたくないだろ?」
 高橋:「あー、今手元に銃が無いので、今すぐ起こられるとマジヤバっすね」

 手元に銃があれば、いつでもバイオハザードOKなのかよ。
 まあ、それはそれとして……。

 愛原:「そうと決まったら、リサを呼びに行くぞ」
 高橋:「はい」

 それから30分後、リサを連れて私達は再び都道50号線(新大橋通り)に出た。

 リサ:「愛原さん!早く早く!」

 リサははやる気持ちを抑えきれないでいる。
 嬉しい時くらいでは、テンションが上がっても腕がクリーチャー化することはなくなった。
 今でも、誰もいない所で自分の力を制御する練習はしているみたいだが……。

 高橋:「おい、リサ。あんまり先生を困らせるんじゃねぇぞ」

 高橋がすかさず窘めてくれる。
 それにしても、だ。
 私は善場氏に渡されたリストを見た。

 愛原:「入学に必要なものってこんなにあるんだなぁ。これだけで一ステージ分はあるぞ」
 高橋:「最後、脱出するのにクランクまで用意しろってことですかね?」
 愛原:「クランクはリストに載ってないな。まあ、それくらいの勢いでアイテムかき集めさせれるってことだよ。とにかく、先に文房具から揃えよう」
 リサ:「はーい!」(^O^)/
 高橋:「予定通りですね。うス!」

 で、私が向かった先は……。

 老婆:「いらっしゃーい」

 昭和時代にタイムスリップしたかのような、老婆の店長が切り盛りする文房具屋だった。

 愛原:「んー、これこれ。いや〜、文房具屋なんて今も昔も変わらないものだなぁ」

 私が懐かしがっていると……。

 リサ:「ずーん……」
 愛原:「な、なにその反応!?」

 リサの顔は暗く、心なしか少し肩が盛り上がっているように見えた。
 目も赤くなっている。

 リサ:「かわいくない……」
 愛原:「ええっ!?」
 高橋:「いや、先生。申し訳無いですけど、これはさすがにちょっとセンスヤバイかと……」
 愛原:「えっ、そう?」
 高橋:「はい。ここは1つ、俺に任せてください」
 愛原:「わ、分かった」

 私達は文房具屋をあとにした。
 今度は高橋に連れられて、裏路地に向かう。
 そして、何でここにあるのかイミフなジャンクショップに辿り着いた。

 愛原:「なにここ?」
 高橋:「知り合いがやってるジャンク屋なんですけどね、色々置いてあるんですよ。要はこれで、さっきの地味〜なペンとかをカッコよくカスタムするんです。おっ、これ見てください。このドクロなんか、カッターの頭に取り付ければ、いかにもバイオっぽくなりません?」
 愛原:「いや、ならないだろ!」(# ゚Д゚)
 リサ:「ずーん……」

 リサの両手の爪が長く鋭く伸びた。
 目が赤みも更に強くなっている。

 愛原:「ほら、怒ってるぞ!どうするんだ!?」
 高橋:「えっ?えっと……ですね……。オマエも黙ってないで、希望があればちゃんと言え!」
 リサ:「もっと可愛いのがいい……。キュートなの……」
 愛原:「……と、仰ってますが?」
 高橋:「あっ、えーと……。わ、分かりました!多分、あれのことだと思います!」
 愛原:「ほお、いい場所があるのか?」
 高橋:「ええ。ちょっと移動しましょう」

[同日13:50.天候:晴 都営地下鉄新宿線菊川駅]

〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は京王線内、区間急行となります〕

 愛原:「電車で移動するのか?」
 高橋:「まあ、やっぱり都心に行った方が揃ってますからね」
 愛原:「いや、そりゃそうだが……」

 トンネルの向こうから電車がヘッドライトの光を放ってやってきた。
 リサのショートボブの髪と、スカートの裾が風で揺れる。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王線内、区間急行となります。きくかわ〜、菊川〜〕

 やってきたのは京王線からやってきた電車。
 京王線と相互乗り入れしているせいか、乗り入れ先の電車が来ることも多い。
 空いているローズピンクのシートに腰掛ける。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ピンポーンピンポーンと2点チャイムを鳴らしてドアが閉まる。
 地下鉄に乗っていると、やっぱり霧生市のバイオハザードを思い出すな。
 あれは地下トンネルではなく、山岳トンネルではあったのだが……。
 電車が走り出す。

〔「この電車は京王線直通、各駅停車の大沢……失礼しました。橋本行きです。京王線内は区間急行となります。次は森下、森下です。都営大江戸線は、お乗り換えです」〕

 東京の地下鉄では珍しく、車掌の肉声放送が流れる。

 愛原:「一体、どこまで行くんだい?」
 高橋:「岩本町です。岩本町」
 愛原:「それって……?」
 高橋:「アキバは何でも揃ってますからね」

 ああ、やっぱり。
 ま、そんなことだろうとは思った。
 リサも落ち着いているようだし、取りあえずは順調といったところか。
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トリビア!「雲羽作品のトリビア」

2018-10-17 19:02:37 | 日記
「当ブログで発表している雲羽作品3作の全てにおいて、悲しい結末を迎えるキャラクターが存在する」
  
 Q:“ユタと愉快な仲間たち”“アンドロイドマスター”“私立探偵 愛原学”の全てが悲しい結末を迎える?

 A:作品自体が悲しい結末を迎えるわけではありません。ただ、登場人物の中には、明らかに悲しい結末を迎えるであろう境遇の者が紛れ込んでいるということです。

 Q:どういうことなのか?

 A:どの作品にも必ず、人間ではない『人外』が登場しています。3部作全てにおいて、人間と人外の交流を描いています。両者には寿命に格差がある為、必ず愛別離苦を味わうキャラクターが存在するのです。

 Q:例えば?

 A:“ユタと愉快な仲間たち”シリーズにおいては、最近になって準レギュラー化した鈴木弘明がそれに当たります。“ユタと愉快な仲間たち”シリーズに登場する魔道師達は、現在使用している肉体を200〜300年ほど使用します。これは契約した悪魔が簡単に契約先に死なれては困る為、それだけ魔力を供給しているからなのです。稲生勇太は魔道師になれた為、マリアンナと永劫の時を共に生きることができるようになり、こちらはハッピーエンドですが、入門の資格すらない鈴木は自分の老いを自覚しながら、老いないエレーナを見続けなければならないのです。

 Q:他作品では?

 A:“アンドロイドマスター”シリーズにおいては、ほぼロイド全般とオーナーやユーザーの人間達全てですね。ただ、敷島達辺りは自覚しているのか、自分達の子供を2代目マスターにしようと計画はしているようです。部品やボディさえ交換できれば、永劫の時を稼働できるロイドにとってはそれでも悲しいことでしょうが、人間達の方が覚悟している分、悲壮感は“魔女エレーナの日常”よりは小さいかと。こちらは、より現実的です。

 Q:“私立探偵 愛原学”もですか?

 A:こちらはまだ連載が進んでいないのでネタバレになる恐れがありますが、リサ・トレヴァーのオリジナル版の公式設定を見てもらえれば大体想像が付きます。オリジナルのリサ・トレヴァーはウィルス感染によってクリーチャー化はしたものの、肉体が老いることもなく、マグナムを何発も撃ち込まれてもダメージ0という脅威的な化け物で、アンブレラの研究資料でも『悪い意味で不老不死』とされていました。当作品に出ている日本版リサ・トレヴァーはアメリカのオリジナルの失敗作とは違い、成功例とされている為、『良い意味で不老不死』ということになります。つまり、リサにとっては親兄弟代わりの愛原達とは……【お察しください】ということになります。

「“アンドロイドマスター”シリーズの主人公・敷島孝夫と、準主人公・平賀太一が法華講員という初期設定があった」

 Q:これは本当?

 A:はい。確かに未発表の物を収録しているUSBメモリーの中に、そういう設定で作った“アンドロイドマスター”が存在します。

 Q:どうしてそのような設定にした?

 A:報恩坊に所属したばかりでしたので、“となりの沖田くん”の真似事でもしたかったのでしょう。

 Q:現在はボツ?

 A:はい。公開する気もありません。

 Q:現在の作品とどう違う?

 A:流れは基本的に変わりませんが、前期型シンディが『東京決戦』ではなく、『富士宮決戦』を行います。敷島はバージョンシリーズの軍団に、都営バスではなく、富士急静岡バスで大石寺の三門に突撃します。ですので、到底公開できません。

 Q:どうしてそのようにした?

 A:支部内のトラブルに巻き込まれてムカついていたので、作品内で宗内テロを起こしたかったのでしょう。

 Q:現在の作品に流用しているネタはある?

 A:あります。それは敷島達が世界的ロボットテロ組織KR団に最後まで所属していた、日本人の女性科学者を捜索する際に富士宮に行った部分です。

 Q:どんな感じ?

 A:エミリーが新町駐車場でボール遊びに興じていた子供達にボールを蹴ってやったりした部分です。

 Q:敷島孝夫と平賀太一はどこの支部に所属していた?

 A:敷島孝夫は離檀者、平賀は法道院という設定でした。

「雲羽作品に登場するキャラクターには、別人なのにモデルは同じというものがある」

 Q:キャラクターは違うけれども、モデルは同じというものがある?

 A:はい。確かに、キャラクターは違うのにモデルは同じというキャラクターがいます。それは“アンドロイドマスター”シリーズに登場するアリス敷島と、“ユタと愉快な仲間たち”シリーズに登場する女魔王ルーシー・ブラッドプール1世です。

 Q:モデルは誰?

 A:アメリカ人のポルノ女優で、日本でも白人AV女優としてデビューしていたミア・マルコヴァです。

 Q:どうしてミア・マルコヴァをモデルにしたキャラクターが別々に出た?

 A:それはルーシー・ブラッドプール1世は、元々多摩準急先生が書いていた“新人魔王の奮闘記”からのゲストキャラで、アリス敷島は私のオリジナル作品である“ユタと愉快な仲間たち”のキャラクターだからです。つまり、違う作者がたまたまキャラクターの原案を考えている時に、たまたまモデルにした者が一致してしまったということです。

 Q:他にモデルは一緒なのに、キャラクターはそれぞれ別という例はある?

 A:今のところは無いです。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの入学前準備」

2018-10-17 13:56:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月10日09:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は日本政府エージェントの善場さんが、リサのことで話があるとやってきた。
 私もリサのことで相談があるので、ちょうど良いタイミングであったが……。

 善場:「リサ・トレヴァーのことなんですが、ちゃんとした戸籍を取らせる代わりに、最低限の教育は受けてもらうということなりました」
 愛原:「えっ、それって……。リサを学校に通わせろということですか?」
 善場:「はい。ただ……いくら力が制御できる状態ではあるとはいえ、まだ10代前半の女の子です。精神的にも不安定になりやすい時期ですし、精神が不安定になった際に力が暴走する恐れがあるという観点からして、反対の声もあるのは事実です」
 愛原:「あー、でしょうねぇ……」
 善場:「愛原さんは今、表向きリサの後見人になっております。愛原さんの御意見も伺いたいのです」
 愛原:「リサを学校に行かせろというのは、善場さんの意見ですか?」
 善場:「いえ、もっと上です。ただ、その上層部の間でも賛否両論はあるということなんですよ。もしも彼女が高校生くらいの歳でしたら、通信制の高校でということで、決着は付けられたかと思います。ただ、義務教育である中学校となりますと……」
 愛原:「聞いたことないですね」
 善場:「都内に一校あるんですよ。中学校の通信教育を行っている学校が」
 愛原:「本当ですか?じゃあ、そこに入れればいいわけですね。……ただ、本人の希望は……」
 善場:「本人の希望?リサは何か希望を言ってるんですか?」
 愛原:「実は……はい」

 私はリサの現況を善場氏に話した。

 愛原:「……というわけで、普通の中学校を希望しているもようです」
 善場:「そうですか。実は中学校の通信教育を行っている所が都内には一校しか無いという実情から、そこへの編入は難しいと考えております」

 政府の国家権力を使えば造作も無いことだろうが、そこまでする必要があるかってことだ。

 愛原:「どうでしょう?今どうせ転入しようと思えば一年生になるわけでしょう?」
 善場:「そうですね」
 愛原:「どうせあと半年で進級です。それで様子を見るというのは如何でしょう?その間に一応、善場さん達にはその一校しか無い通信教育の場を用意して頂く。もしダメならそこへ移籍させればいいですし、問題無さそうならそのまま最初の学校へ通わせるというのは?」
 善場:「それはいい案ですね」
 愛原:「実は私も、リサが学校に行きたいと言った時、それもそうだと思ったんですよ。だけど、学力は大丈夫なんでしょうかね?しばらく小学校にも行ってなかったようですし……」
 善場:「日本アンブレラの研究所から押収した資料によれば、リサの知能やら身体能力やらは常人離れをしておりますので、恐らく大丈夫かと思います。こちらの研究所で検査をしても、明らかに小学校卒業程度以上の学力は持っているようです」
 愛原:「それは凄い。なら、特に問題無いのでは?要は、BOWとしての力が暴走しなければ、ということですよね?」
 善場:「そういうことです。上層部の反対派は、それを一番懸念しています」
 愛原:「とにかく、やってみないと分かりませんよ。私は試しに通わせてあげたいですね」
 善場:「分かりました。愛原さんの意見を上に伝えておきましょう」
 愛原:「ありがとうございます。ただ、学費などについては……」
 善場:「大丈夫です。学費関係につきましては、全てこちらで負担します」
 愛原:「おおっ!」
 善場:「将来、政府またはBSAAのエージェントになる候補ですから」

 恐らく、政府はどちらに将来リサが行ってもいいように今から駆け引きをするつもりなのだろう。
 BSAAは今世界中を騒がせているバイオテロを専門に鎮圧する国連軍として有名だ。
 その極東支部は、あいにくと日本には無い。
 しかしその利権は大きいので、リサに日本国籍を与え、日本人の子として育て上げ、BSAAに送り込めば、日本政府の声も無視できなくなるということだ。
 それに、もしダメなら日本政府のエージェントとして使えば良い。
 どちらに転んでもWIN-WINというわけだ。

 善場:「もしも愛原さんの意見が採用され、それが更に大きな結果(高校、大学と進学しても何の問題も無いということが分かれば)をもたらせば、愛原さんには多大な謝礼を致します」
 愛原:「おおっ!じゃ、もう入学の準備に取り掛かっていいですか?」
 善場:「そうですね。ただ、入学先はこちらで指定することになると思いますので、その辺は少しお待ちください」
 愛原:「あまり遠い所は困りますよ?」
 善場:「分かっています。ちょうど近くに、候補となる学校がありますので、そちらを当たってみます」

 それはどこだろう?
 まあ、国家の関わることだ。
 国立……あ、いや。
 近くに国立の中学校は無いぞ。
 すると、どこだろう?
 まあいいや。
 この辺は善場氏に任せるとしよう。
 いずれにせよ、リサが普通の中学校に通える所までは内定ということでいいな。

[同日18:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原家]

 愛原:「ただいまァ」

 事務所での仕事を終え、私と高橋は帰宅した。

 リサ:「お帰りなさーい」
 愛原:「留守番どうだった?」
 リサ:「今度は侵入者は誰もいなかった」
 愛原:「そうか」

 まあ、リサなら少女を狙う変態野郎が来たとしても……その変態の命が無くなるだけだ。

 高橋:「先生、すぐ夕飯作りますので」
 愛原:「ああ、悪いな。てか、昨夜のカレーがまだ余ってるだろう?あれにしよう」
 高橋:「いいんですか?」
 愛原:「カレーは一日寝かせた方が美味いというからな。それで余った分は完食できるんじゃないか?」
 高橋:「まあ、そうですね」
 リサ:「お兄ちゃんのカレーは美味しいよ」
 愛原:「そうだな」
 高橋:「ありがとうございます。また、作りますね」
 愛原:「ああ。それからリサ、1ついい話がある」
 リサ:「なーに?」
 愛原:「学校、行けるようになりそうだぞ?良かったな」
 リサ:「! おー!」

 リサは感激して両手を挙げた。
 嬉しいと両手を挙げる癖があるが、これは恐らくBOWとしての習性。
 両腕を変化させて、興奮状態のまま敵を薙ぎ払う為であろう。
 一応それを抑える訓練はしつつも、まだ癖は抜けないようだ。
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“私立探偵 愛原学” 「学校へ行きたいリサ」

2018-10-14 19:10:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月10日07:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今では同居人は高橋君の他、BOWの日本版リサ・トレヴァーと2人になっている。
 BOWとは『Bio Organic Weapon』の略で、まあ簡単に言えば遺伝子組み換えの生物兵器のことだ。
 アメリカのは完全に化け物と化して、特殊部隊に退治された上、研究所の自爆に巻き込まれてその生涯を終えたらしい。
 日本で開発されたリサ・トレヴァーは、恐らくこれが完成品。
 自我・理性共に失われておらず、普段は人間の姿そのままという正に完璧なBOWだ。
 それが何故私の所にいるのか、それは話せば長くなる。
 そのリサであるが、ここ1週間ほど、ベランダから外を眺めることが日課となっていた。

 彼女が見下ろしているものは、近くに小中学校がある為か、通学する小中学生達。
 リサの歳から言えば、本当なら中学1年生くらいか?

 愛原:「なあ、高橋君。さっきからずっと見てるんだけど、もしかして行きたいのかな?」

 朝食を終え、私は食後のコーヒーを啜っていた。
 食後の片付けをしている高橋は、手を休めて答えた。

 高橋:「リサですか?多分、そうだと思いますよ。ヤンチャな中坊は、誰でも必ず1度は考えるんですよねぇ。いやあ、若い若い」

 高橋は懐かしそうに頷いた。

 愛原:「いや、君の場合は今からたった10年そこら前の話だろう?何言ってるんだ。ってか、何の話だ?」
 高橋:「え?他校のヤンキー潰しの旅ですよね?俺もヤンキーの多い千葉まで行ってきましたよ。ちょうと京成線沿線が……」
 愛原:「違う!普通に登校だ!」

 私は高橋を窘めると、リサの方に向き直った。

 愛原:「リサ!」

 私はリサに話し掛けた。

 リサ:「何ですか、愛原さん?」
 高橋:「てめ、先生を先生付けで呼ばないとは……!」
 愛原:「いや、俺が止めさせたんだ。別にリサはキミと違って、俺の弟子ってわけじゃないんだし」
 高橋:「いや、しかしですね……」
 愛原:「いいから高橋君は黙っててくれ。……えーと……何だ。その……もし良かったら、学校……行く?」
 リサ:「! おー!」

 リサは目を丸くして大きく両手を挙げた。
 一瞬、両手の爪が長く鋭く尖る。
 が、すぐに元に戻った。

 高橋:「マジっすか、先生!?俺はヤンキーは潰しましたけど、学校ごと潰しはしませんでしたよ!?」

 高橋の言うことはもっともだ。
 リサの場合、本気でクリーチャーに変化すれば学校1つ潰すことなど、造作も無いことだろう。
 だが、本来は学校に行ってないといけない歳なのだ。
 しかも、本人は乗り気である。

 高橋:「しかもそんなカネあるんスか!?」
 愛原:「だからエージェントさんに相談する必要がある。事務所に行ったら、まずはエージェントさんに相談してみよう」
 高橋:「いやー、俺はエージェントからも反対されると思いますよー?」
 愛原:「その時はその時だ。な?リサ?取りあえず、キミの面倒を見てくれるお偉いさんに聞いてみるから、それまで待っててくれ」
 リサ:「分かった!」
 高橋:「いや、ぜってー無理ですって」

 高橋は口元を歪め、首を傾げて言った。
 ま、ダメ元だ。
 私も正直、高橋の言う通りになるとは思っていた。
 もしダメなら通信制教育とか、そういう手もあるだろう。

[同日09:00.天候:晴 愛原学探偵事務所]

 同じ地区の雑居ビル内に、私の事務所はある。
 雑居ビルと言っても、築浅のきれいなビルだ。
 そこは北区王子時代と比べれば、だいぶマシになった。

 高野:「おはようございます、先生」
 愛原:「おはよう。そうだ。高野君にも相談しておきたい」
 高野:「何ですか?」

 私は今朝あったことを高野君にも話した。

 高野:「いいじゃないですか。ずっと家に閉じこもっていたり、たまにこの事務所に遊びに来てくれるだけの生活よりは」
 愛原:「おー、高野君は賛成してくれるか」
 高野:「私『は』って……。マサ君は先生の言う事に反対したの?」

 高野君は高橋を睨みつけるように視線を向けた。

 高橋:「いや、つーか無理だろ!?BOWだぜ?女の世界にも、しっかりケンカはあるんだろ?そこでブチギレて学校ごと潰しやがったら、先生に迷惑が掛かるんだ!それくらい、エージェントも百も承知だろうが!」
 高野:「リサちゃん、しっかりしてそうだけどね。研究所で嫌と言うほど研究されてきたわけでしょう?だったら、我慢強い所とか有りそうだけどね」
 愛原:「いや、俺もそう思うんだよ。でも、エージェントさんレベルではどう思うかだ。そこは高橋君の言う通りだと思う」
 高野:「それじゃ、善は急げですね」
 愛原:「ああ。今からメールを送っておこう」

 私は自分の机に座ると、メールを作成することにした。
 と!

 愛原:「あれ?」
 高橋:「どうしました?」
 愛原:「元々今日、エージェントさんが来ることになってるわ」

 PCの画面には今日の10時、リサの様子伺いにやってくる旨のメールが受信されていた。

 高野:「ちょうどいいですね。この時、リサちゃんの希望を伝えてみては?」
 愛原:「そうだな」

 それから1時間後、まだまだ残暑が厳しいというのに、スーツ姿の女性エージェントがやってきた。
 名前を善場(としば)と言った。
 私よりは若いが、高橋君よりは年上だ。
 多分、高野君くらいの年齢(30歳手前)だと思われる。

 善場:「今日はお忙しいところ、お邪魔して申し訳ありません」
 愛原:「いえいえ。暑い中、お疲れ様です」

 私と善場氏は応接室に移動した。

 高野:「失礼致します」

 高野君が私達にアイスコーヒーを持って来た。

 善場:「お構いなく」
 高野:「どうぞ、ごゆっくり……」

 高野君が下がると、善場氏が先に口を開いた。

 善場:「用件というのは他でもありません。今、愛原さんが面倒を見て頂いているリサ・トレヴァーのことです」
 愛原:「実は私も、ちょうどリサのことで御相談させて頂きたいことがあったんですよ」
 善場:「そうでしたか。それは奇遇ですね」
 愛原:「先に、善場さんのお話から伺いましょう」
 善場:「はい。実は……」

 善場氏の話とは、一体何なのだろう?
 そして私の話、リサの希望は叶うのだろうか。
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特別読切!“雲羽百三と障魔との戦い” 第二部

2018-10-13 19:47:24 | 日記
[2018年某月某日夜間 天候:曇 静岡県富士市 JR新富士駅]

〔♪♪♪♪。まもなく、新富士です。新富士の次は、静岡に止まります〕
〔Ladies & Gentlemen.We will soon make a breaf stop at Shin-Fuji.The stops after Shin-fuji,will be Shizuoka.〕

 私、雲羽百三を乗せた“こだま”号は無事、新富士駅に接近した。
 勧誡前日の夜、障魔が競うピークである。
 これを『障魔が時』と言うw
 おふざけはさておき、雲羽を乗せたN700系はATCブレーキに従い、時速70キロ以下で新富士駅の副線下りホームに入る。
 そして停車すると、ドアチャイムが2回鳴ってドアが開いた。

〔しんふじ、新富士です。しんふじ、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 私が列車を降りると同時に、下り本線を“のぞみ”だか“ひかり”だかが通過していく。
 とても速過ぎる為、列車の判別はできない。
 スーツを着用し、手にボストンバッグを持った私はそのまま改札口へと向かう。

 

 雲羽:「ふむ……。怪しい者はいないか……」

 ここでケンショーレンジャーが待ち構えていた場合、私は構内警備を請け負う静岡支社の仲間を召喚しなくてはならないだろう。
 だが、それは杞憂に終わった。

 雲羽:「おや?」

 だがしかし、改札口を出た私の足元に落ちている1枚のキップ。
 ふと脳裏に、先日書いた予知夢のことを思い出す。

 雲羽:(まあ、改札口を出てすぐにまた引き戻されるトラップなんて、あんまり考えられないからなぁ……)

 そう思った私はそのキップを拾い上げた。
 それはこの駅の入場券。
 何だ、入場券か。
 これなら改札の中には入れても、列車には乗れないぞ。
 所詮はこんなものか。
 私はそのキップを上着のポケットに入れると、今宵の宿泊先であるビジネスホテルに向かった。

[2018年某月某日夜間 天候 晴 静岡県富士市 某ビジネスホテル]

 無事にチェックインし、割り当てられたシングルルームに入った私は、早速登山中のトチロ〜さんにメールを入れた。

 トチロ〜:「ここまで無事で何よりです。明日は●時に駅まで迎えに行きますので、それまでけして魔に負けないようにしてください」

 とのこと。
 私はすぐに返信し、

 雲羽:「明日の朝まで、ホテルからは一切出ないようにします。ホテルの中にいれば安全でしょう」

 とした。
 仕事が終わってそのまま電車に飛び乗って来た私は、今夜は早めに寝ようと、室内のバスルームにあるバスタブにお湯を入れた。

 雲羽:「明日はいよいよ、勧誡が行われるのか……」

 果たして今夜は眠れるのだろうか。
 緊張して眠れなくし、翌日は寝不足にさせるというのも魔の働きだとするのなら、さすがにこれには勝てないかも。

 そう思っていたが、23時に就寝すると、あっという間に眠りに落ちた。
 どうやら、報恩坊の皆さんが私如きの為に祈って下さっているらしい。
 何とも、ありがたいことだ。
 嬉しくて涙が……フワ〜ア……!
 ……すいません、眠くて出る涙の量の方が多かったですw
 それでは、おやすみなさい。

[2018年某月某日朝 天候:雨 静岡県富士市 某ビジネスホテル客室内→朝食会場]

 枕が変わると抵抗無く起きられるものだ。
 おはようございます。
 うむ。
 寝坊という魔は退くことができた。
 私はすぐに起き上がり、朝の身支度を整えるべく、バスルームに入った。
 これから御本尊様の御前にいく手前、服装・身だしなみはキチンと整えて行かなければならない。
 そういえばこのホテル、モーニングサービスがあったんだったな。
 しっかりとした勤行は、しっかりとした食事からだ。
 え?なに?普通、朝食は朝の勤行が終わってからだって?
 ……コホン。私はまだ勧誡していないのだ。
 まあ、細かいことはいいじゃないか。
 私は身支度を整えると、一旦部屋を出て、朝食会場に向かった。

 朝食会場にて、再びトチロ〜さんとメール。

 トチロ〜:「ちゃんと起きられましたか?約束通り、駅前でお待ちしております」

 とのこと。
 ここまで魔の揺さぶりは無かったぞ。
 これならもう安心なのだろう。
 私は朝食を終えると、荷物を取りにまた部屋に戻った。

[2018年某月某日朝 天候:雨 某ビジネスホテル正面エントランス外]

 チェックアウトをしてホテルの外に出る。
 うわ……。
 こんな時に雨かよ。
 9月30日の時も台風直撃だったし、諸天からは歓迎されてないのかね。
 と、そこへ1台のタクシーが止まった。
 白い塗装に青いラインの入ったプリウスα。
 カタツムリ型の黄色い行灯に、『個人』と書いてあるので、個人タクシーだろう。
 誰かがタクシーを呼んだのだろう。
 参ったな。
 まさかと思って、私は傘を持っていない。
 駅から近いホテルとはいえ、さすがにここから駅までダッシュで行っても濡れるだろうな。
 せっかく身支度を整えたのに、雨でずぶ濡れで行くのも御本尊様に申し訳が立たない。
 私がどうしようか悩んでいると……。

 運転手:「お迎えに上がりましたよ」

 白い帽子を深く被った運転手が窓を開けて私に話し掛けた。

 雲羽:「迎え?いや、私はタクシーは呼んでませんよ?」
 運転手:「失礼ですが昔、報恩坊に所属されていた雲羽さんでしょう?」
 雲羽:「え?ええ、そうですが……」
 運転手:「私も法華講員です。これから大石寺に向かう所なんですよ。一緒に乗りませんか?もちろん、料金は要りません」
 雲羽:「ですが、駅前でトチロ〜さんと待ち合わせをしているので……」
 運転手:「それなら駅まで乗って行きませんか?」
 雲羽:「いいんですか?」
 運転手:「ええ。どうせ通り道ですし……」
 雲羽:「それじゃ、よろしくお願いします」

 運転手はリアドアを開けた。
 そこはタクシー、自動ドアだ。
 私が乗り込むと……。

 I田:「やあ、雲羽さん。お久しぶりw」
 雲羽:「あれ!?法道院のI田さん!?」
 運転手:「この前はどうも」

 運転手が帽子を取ると、それは……。

 雲羽:「O原班長!?」
 O原:「それでは出発します。……法道院まで」
 雲羽:「いやいやいや!ちょちょちょ……!」
 I田:「ダメですよ、雲羽さん。元は法道院に所属してたんでしょう?また信心を始めたくなったのなら、法道院に戻るのが筋目じゃないですか?」
 雲羽:「いや、そんなの知らないし!」

 どんどん駅から遠ざかって行くO原タクシー。

 O原:「それじゃI田くん、Y沢講頭に『今月の誓願、うちの地区は達成です』って報告しといて」
 I田:「分かりました」
 雲羽:「俺が最後の1人なのかよ!?」
 O原:「いやあ、宝物殿の前で再会した時、正にキミはうちに戻るべき人間だと思っていたんだよ。やっぱり、仏縁ってのは大事だね」
 雲羽:「んが……!?」
 I田:「雲羽さん、街頭折伏とか、うちには色々とやることがやりますんでね、これからもよろしくお願いしますよ」
 雲羽:「降ろしてくれーっ!!」

 私を乗せたO原タクシーは一路、東京・池袋へと疾走して行った。

                                  雲羽百三と障魔との戦い 第二部 完
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