ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「天長園の夜」

2022-06-25 21:12:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日21:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 ホテル天長園7F客室]

 念願の露天風呂に入った後は、部屋に戻った。
 で……。

 リサ:「いらっしゃいませ。『リサ・トレヴァーの出張マッサージ店』へ。ただいま、緊急オープンします」

 浴衣姿のリサが鼻息荒くし、両手をわきわきさせて言った。

 愛原:「う……風呂上がりのマッサージは格別だが、俺の岩のように凝り固まった肩をほぐすことができるのか?」
 リサ:「ここの温泉、効能に『肩こり』とあった。それで先生の肩は、ある程度ほぐれてるはず。そこへ私がトドメを刺せば、先生の肩コリは治るはず」
 愛原:「いや、トドメ刺すな。……まあ、そういうことだったら、お願いしようかな」
 リサ:「こっちに来て、椅子に座って」

 リサ、私の手を引っ張る。
 そして、窓際の椅子に私を座らせた。

 リサ:「どこがお疲れですか?」
 愛原:「えっと……だから、肩……」
 リサ:「他には?」
 愛原:「あとは腰とか……」
 リサ:「あとは股関節が疲れてますね。分かりました」
 愛原:「やっぱりセラピストが決めるんかい!」
 リサ:「それでは全体的にほぐしていきますので、よろしくお願いします」
 愛原:「あ、ああ。よろしく」
 リサ:「それでは、ベッドに横になってください」
 愛原:「あ、ああ。分かった」

 私は自分のベッドに横になろうとした。
 だが、リサは私の手を掴んだ。

 リサ:「そこじゃなくて、こっち!」
 愛原:「えっ?」

 リサは隣のツインルームに連れて行くと、ドアを閉めた。
 高橋が私達の部屋に取り残された感じだ。

 高橋:「おい、コラ!開けやがれ!!先生をどうする気だ!?」

 向こうから高橋の怒鳴り声と、ドアを乱暴に叩く音がする。

 リサ:「わたしのベッドに横になって。『リサ・トレヴァーの個室マッサージ店』へようこそ」

 リサはニタァッと笑った。
 口元からは牙が覗いている。
 要は、第1形態に戻ったということだ。

 愛原:「個室マッサージの意味が分かってるんだろうな!?」
 リサ:「もちろん。早くうつ伏せになって」
 愛原:「うう……分かった」

 こりゃマッサージが終わらないことには、部屋から出してもらえなさそうだ。

 愛原:「高橋、大丈夫だ!普通にマッサージしてもらっているだけだ!心配するな!」
 高橋:「本当っスか!?」

 こう言っておかないと、本当に高橋はどこからかロケットランチャー調達して、隣の壁をぶっ壊しそうだ。
 リサは私の上に跨ると、肩を揉み始めた。

 愛原:「うう……そこそこ……」
 リサ:「ここですか?この辺りですか?」
 愛原:「そうそう」
 リサ:「温泉のおかげで、だいぶほぐれてる。これなら、わたしでも肩こり解消させられそう」
 愛原:「うう……何かスマンねぇ……」
 リサ:「いい。前回は先生の肩だけほぐせなかった。だから今回は、そのリベンジ。温泉の効能に『肩こり』って書いてあったから、これである程度ほぐせば、イケると思った」
 愛原:「ホントだなぁ。きっとほぐれるよ」
 リサ:「エヘヘ……」

 時折、顔の横にチラつく長い爪が少し怖いが、少なくともその爪は私を引き裂く為の物ではないと信じている。

 リサ:「次は腰~」
 愛原:「腰もなかなか疲れてるんだよなぁ……」

 鬼の姿をしたBOW(生物兵器)にマッサージされている人間なんて、世界中どこを探しても私だけだろうなぁ……。

 リサ:「次は太もも~」
 愛原:「リンパマッサージだな」
 リサ:「ふふ……先生のここ、ゴリゴリ言ってる……」

 リサは私の血中老廃物に涎を垂らした。

 リサ:「でも、まだ我慢。はい、では仰向けになって」
 愛原:「おー」

 私は仰向けになった。
 これが本当のマッサージ店だと、目にタオルなどを当ててくれるのだが、リサはそうしなかった。
 リサは私の頭側に回ると、今度は肩の前側を手で押して来た。

 リサ:「腋にもリンパが通ってて、ここも疲れが溜まりやすいんだって」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「はい。しっかりほぐしましょうね」
 愛原:「ああ」
 リサ:「次は足つぼ。……今日は色々歩いたから、老廃物が溜まってそうだね……じゅるっ」
 愛原:「やっぱり吸うのか?」
 リサ:「吸いたーい……」

 リサは右手の人差し指をくわえて言った。
 そして、ペロッと舌を出す。

 愛原:「分かった。じゃあ、吸い出してもらおうかな」
 リサ:「わぁい」

 リサは私の足裏をマッサージし始めた。
 所々、ゴリゴリとする箇所がある。
 老廃物が溜まっている場所だ。
 リサは指先を変化させ、無数の髪の毛より細い触手をそこに突き刺した。
 髪の毛よりも細い針なので、痛みは全く無い。
 しかも傍目から見て、一応足つぼマッサージをしているように見えるのだから不思議だ。
 但し、老廃物だけきれいに吸い取れることはなく、やはり血も少し吸われてしまう。
 リサとしては、私への吸血も目的の1つなのだ。
 だが、疲れが取れる感覚はあっても、血が吸われている感覚は無かった。

 愛原:「どうだ、リサ?俺の血と老廃物は」
 リサ:「美味しい……。先生、だいぶ疲れてるね?前回マッサージした時よりも、更に血がドロドロだよ?」
 愛原:「そ、そうか。やっぱり、俺も歳だなぁ……」

 それにしても、リサのこのマッサージは癖になる。
 本当にスッキリする感じだ。
 貧血にならない程度の吸血でこれだけスッキリ、酔いも醒めるほどなら、毎日やってもらいたいほどだ。

 リサ:「……ック!」
 愛原:「ん?どうした」
 リサ:「な、何でもない……ヒック!」

 しゃっくりしてる?
 私の老廃物と血を吸い取っているのだから、腹いっぱいになってゲップをするのなら分かるが、これではまるで……。
 ん?私の酔いが醒めている?

 リサ:「ヒック!ひゃ、ひゃっくり……ック!ひゃっくり……止まんにゃい……!」
 愛原:「リサ!?」

 私が飛び起きると、リサの顔や体全体が赤みがかっており、目も充血していた。

 愛原:「お、オマエ、もしかして!?」
 リサ:「も……もうダメ……」

 リサはバタッと仰向けに倒れた。
 浴衣の胸がはだけ、下に着けている黒いスポブラや、下半身からは黒いショーツが覗いている。

 リサ:「グー……!グー……ッ!」

 リサはイビキをかいて昏睡した。
 私は風呂上がりにビールを飲んでいた。
 そして、そこに含まれていたアルコールは、私の血中を巡る。
 それをリサを吸い取った為に、リサもまた酔っ払ってしまったのだ。
 で、逆にアルコールを吸い出された私の方の酔いが醒めた。

 愛原:「わ、悪かったな、リサ」

 私はリサを抱き抱えて、ベッドに寝かせた。
 ラスボスを張る実力を持つ上級BOWは、酒に弱かった!

 高橋:「先生、あのリサを倒すなんてさすがです!やっぱ先生は一流の探偵ですよ!!」
 愛原:「いや、探偵は関係無いと思うが……」

 リサは酔っ払うとすぐに寝込むタイプか。
 うむ、一応覚えておこう。
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“私立探偵 愛原学” 「天長会と天長園」

2022-06-24 20:04:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日17:00.天候:雨 栃木県那須塩原市 ホテル天長園・大浴場]

 高橋:「あ!この、不肖の弟子、高橋正義がぁ~!あ!無二の師匠、愛原先生にぃ~!あ!断固としてお応えして参るぅ~!あ!決意でありますぅ~!」
 愛原:「毎度いつもの恒例……」
 天長会信者:「あのお兄さんは、顕正会の信者さんか何かで?」
 愛原:「いえ、違います……。恥ずかしいからさっさとやってくれ!」
 高橋:「いざ!参らん~!」

 高橋、喜び勇んで私の背中を流し始めた。

 愛原:「全くもう……」
 天長会信者:「ハハハ……。まるで、寅さんに付き従うチンピラの少年みたいですな」
 愛原:「フーテンの寅さんに、そういう役の子が出てくる話、ありましたっけ?」
 高橋:「はぁ~♪グッと来て~♪ガッと来て~♪」
 愛原:「何だその歌……」

 私は呆れる他、無かった。
 雨はまだ降り続いてる為、露天風呂は諦めることにした。
 また雨が止んだら来ることにしよう。

[同日18:00.天候:雨 同ホテル・最上階レストラン]

 入浴の後は最上階のレストランに行き、そこで夕食。
 テーブル席に行くと、『愛原様』という表示がしてあった。

 愛原:「ここだな」
 凛:「お客様、お飲み物は何になさいますか?」
 愛原:「おっと!?凛ちゃん!?」

 そこへ着物を着た凛がやってきた。

 愛原:「何してんの?」
 凛:「17時から22時まで、臨時のアルバイトです。明日は朝6時から9時までのシフトに入りました」
 愛原:「働くねぇ……」
 凛:「家業の手伝いなので、私でも大丈夫なんです」

 女将の職は外されたが、経営者一族の1人という点は変わっていないわけだ。
 その娘なのだから、家業を手伝うという事か。
 そういえばうちの近所にはスナックがあるのだが、そこのママの娘がまだ小中学生くらいなのに『お手伝い』と称して、夜でも働いてたな。
 店舗兼住宅だからこそできることだと思うが。
 凛もその感覚でバイトしているということか。
 リサは……【お察しください】。

 愛原:「そうなのか。偉いなぁ。じゃあね、俺はビール」
 高橋:「俺も先生と同じので」
 リサ:「わたしも先生と同じので」
 愛原&高橋:「アホかーっ!」
 凛:「えー……先生方は瓶ビール2本に、リサ先輩はオレンジジュースで宜しいですね」
 愛原:「リサ、そうしろ」
 リサ:「ぶー……オレンジジュース」
 凛:「かしこまりました。少々お待ちください。それでは、お鍋に火を点けます」

 こういう旅館・ホテルの夕食の定番。
 固形燃料に火を点けて温める一人鍋。
 今日は1人すき焼きのようだ。

 愛原:「リサ、その肉は生で食べないように」
 リサ:「うっ……はーい」

 どうやら生で食べようとしていたらしいのだが、私に先に釘を刺されたようだ。
 そして、凛が瓶ビールとオレンジジュースを持って来る。
 オレンジジュースも瓶入りで、既に開栓されていた。

 高橋:「さ、先生、どうぞ!」
 リサ:「さ、先生、どうぞ!」
 愛原:「こらこら!ビールとオレンジジュースを混ぜる奴があるか!リサは自分で注ぎなさい」
 リサ:「えー……」
 愛原:「次は俺のを注いでもらうから」
 リサ:「ほんと!?」
 愛原:「じゃあ、まずは乾杯だ!乾杯!」
 高橋:「お疲れ様っしたーっ!」
 リサ:「お疲れー!」

 リサは早速、バクバク食べ始める。

 愛原:「しっかし、露天風呂入れなくて残念だったなー」
 高橋:「もう、そろそろ雨止むんじゃないスかね?」
 凛:「夜は晴れるそうですよ」
 愛原:「やっぱり。夜、また入りに行くか」
 高橋:「そうしましょう」

 私がグラスのビールを飲み干したので、今度はリサが注いでくる。

 愛原:「おっ、ありがとう」
 リサ:「先生!わたし!わたしにも!」

 リサは自分のオレンジジュースの瓶を渡してきた。

 高橋:「おい。先生に注がせるとは、てめぇ……」
 愛原:「まあ、いいじゃないか。オマエも、ほら」
 高橋:「あっ!さっ、サーセン!」

 するとリサ、こんなことを言い出した。

 リサ:「先生、ジュースを口に含んで」
 愛原:「ん、何だ?」
 リサ:「で、口移しして?」
 愛原:「どんなプレイだ!?」
 高橋:「そういうプレイ……ですね。アホだ、こいつ……」

 食欲が旺盛なうちは、性欲が抑えられているはずなのだが……。

[同日20:00.天候:晴 同ホテル・大浴場]

 夕食を食べた後で、もう一度大浴場に行った。
 もう雨が止んでいることもあり、露天風呂に入ることができた。
 すると、更に外から太鼓の音と鐘の音が聞こえて来た。

 愛原:「どうやら、天長会で何かお祈りの儀式でもやっているようだな」

 気が付くと、先ほどは大浴場がそれなりに賑わっていたのに対し、今は空いている。
 こういう所では夕方よりも、夜の方が賑わうイメージがあるのだが、逆だ。
 恐らく今日の利用者の大半である天長会信者達が、あの太鼓や鐘の鳴り響く会場にいるのだろう。

 愛原:「何だか神秘的だねぇ……」
 高橋:「何だか気味悪いです」
 愛原:「そうか?」
 高橋:「『煮えたぎる湯に浸けて……死ねば人間、生きていれば魔女』みたいな……」
 愛原:「そりゃ魔女裁判だ!」

 すると、太鼓の音色が変わった。
 それまでは、速いテンポでドンドコドンドコ鳴っていたのが、今はドン!ドン!ドン!ドン!と規則正しい音色に変わった。

 高橋:「天長会はガサ入れしないんスかね?」
 愛原:「いや、しただろ。したけど、何も見つからなかっただけだ。白井の犯行を裏付けるような、何かをな。多分、上手く天長会の教義にカムフラージュしてるんだろうな」

 天長会が運営していた児童養護施設。
 そこと日本アンブレラが癒着し、『養子に出す』と称してアンブレラが子供を引き取り、人体実験を行っていたところまでは分かっている。
 リサもそこにいたことで日本アンブレラに捕まり、『最も危険な12人の巫女』の1人となるべく、様々な人体改造を受けて今に至っている。
 と、いうことは……。

 愛原:「向こうの儀式に、リサは参加しなくていいんだよな?」
 高橋:「リサは信者じゃないでしょう?」
 愛原:「信者というか……崇め奉られる側?」
 高橋:「ああいう新興宗教は、教祖様が神だから、関係無いんじゃないスか」

 実際にリサが呼ばれたり、連れて行かれるようなことは無かった。
 『最も危険な12人の巫女』は、天長会の教義には出ているものの、リサがそのうちの1人だと喧伝はされていなかったからだろう。
 どうも、今は消えてしまった東京中央学園上野高校の“トイレの花子さん”がそうだとされているようだ。

 愛原:「まあ、そうだな」
 高橋:「どうします?」
 愛原:「どうするも何も、俺達はただの一般利用者だ。知らんぷりしておこう」
 高橋:「うス」

 もっとも、その割には関係者割引を物凄く使っているのだから、私も都合が良いな。
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“私立探偵 愛原学” 「何度目かのホテル天長園」

2022-06-24 14:58:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日16:30.天候:雨 栃木県那須塩原市 ホテル天長園]

 愛原:「急げ!急げ!急げ!」

 予定通り、路線バスをホテル前の通り上で降りる。
 さすがに路線バスということもあり、ホテルの前までは入ってくれなかった。
 で、バスを降りると空には雷鳴が轟き、雨が降り出し始めた。
 大粒の雨だ。
 私達はバスを降りると、急いでホテルまで走った。

 愛原:「間一髪間に合った……のかな?」

 ホテル正面入口の屋根の下まで行くと、シャワーみたいな雨が降り出していた。
 空からはゴロゴロと雷が鳴っている。

 高橋:「普通の雨ならギリセーフなんでしょうけどねぇ……」
 リサ:「まあ、何とかなる精神で何とかなった」
 凛:「早く入りましょう」

 入口の所には、歓迎札が掲げられていて、そこに『愛原学先生御一行様』と書かれていた。

 高橋:「偉いっスね!ちゃんと、先生を先生と呼んでますよ?」
 愛原:「俺は別に偉い先生じゃないんだがねぇ……」

 本来、探偵はそんな風に呼ばれるものではない。
 だが、私に師事する高橋がそう呼び、リサがそれを真似して、リサの周囲の者達がそれを真似して……といった構図だ。

 フロント係:「いらっしゃいませ」
 愛原:「予約していた愛原です」

 私がフロントに向かうと、凛も付いてきた。
 凛は当然の如く、フロントの中に入って行ったので、私は一瞬ビックリする。
 だが、元々凛は女将であった母親と共に、ここでアルバイトをしていたのだった。
 高校進学を気にアルバイトを辞めたと思うが、母親が名義上このホテルの共同支配人の1人であった為、ここでも自由に振る舞えるようだった。

 凛:「愛原先生は、こちらの書類に書いてください」

 恐らく特別割引を利かせる為の書類があるのだろう。
 一般の宿泊者カードとは違う物を書かされた。
 書く内容そのものは同じであったが。

 フロント係:「ありがとうございます。それでは、こちらがカードキーなっておりますので」
 愛原:「ありがとう」
 凛:「それじゃ先生、どうぞごゆっくり。私達は寮に戻ります」

 このホテルの裏手には従業員寮があり、上野姉妹はそこに住んでいた。
 2人とも上京の為、引き払ったわけではないようだ。
 母親の上野利恵がいつ釈放されるか分からないので、引き払うにも引き払えないのだろうか。

 リサ:「えー?リン達は泊まらないの?」
 凛:「このプランは『スタッフ紹介プラン』なので、スタッフが泊まると意味が無いんです。お風呂だけは御一緒させてもらいますから」
 愛原:「まあ、いいじゃないか。部屋に行こう」

 私は部屋のカードキーを持って、エレベーターに向かった。
 驚いたことに、古いエレベーターはリニューアルされていた。
 それ自体は珍しいことではないが、セキュリティが強化され、乗り場ボタンの下にカードリーダーが設置された。
 ここに先ほどのカードキーを当てないと、ボタンを押しても反応しないというものだ。

〔上に、参ります〕

 昔、都内のビルの防災センターに勤務していた経験から、もしかしたらと思ったのだが、やはりそうだった。
 カードリーダーは内側にもあって、乗り込んだ後で内側のカードリーダーにもカードを当てないと、やはり行き先階のボタンが押せないようになっていた。

〔ドアが、閉まります〕

 高橋:「いきなりメンド臭くなりましたね?」
 愛原:「何かあったんだろうなぁ……」
 リサ:「何かあったに決まってるでしょ。先生が襲われた!」
 愛原:「え!?それのせいなの!?」
 高橋:「エレベーターは関係無くね?」
 愛原:「なあ?」

 リサ達の得意技に、ダクトを通ってマップ移動できるというものがある。
 BOWや、最近のザコクリーチャーもそれをやってのけて来ているので、逃げ込んだ部屋に誰もいないからと言って安心してはいけない。
 ダクトを通って追い掛けて来る恐れがある。
 私も上野利恵には、それで部屋に侵入されて襲われた。
 リサも第3形態まで変化させれば肉体を軟化できるということもあり、そのスキルを使用することができる。

 愛原:「一応、報道もされたから、外部向けに『館内セキュリティを向上させました』というアピールなのかもしれんね」

〔ピーン♪ 7階です。下に、参ります〕

 私達が宿泊する客室フロアに到着する。

〔ドアが、閉まります〕

 因みにこのエレベーター、オーチス製で、アナウンスは富沢美知恵氏という声優が声をあてている。
 氏は有名どころでは、“クレヨンしんちゃん”の『まつざか先生』や、“ゴーストスイーパー美神”の『小笠原エミ』、“ブラックラグーン”の【某メイドさん】の役を務めている。
 が、先にそちらの声を知っている者がエレベーターのアナウンスを聴くと、『本当に本人?』と首を傾げるのである。

 愛原:「えーと……この部屋だな」

 私はつい和室二間の部屋を想像していたのだが、入って見るとそこは洋室だった。
 ツインの部屋が2つ繋がった、いわゆる『コネクティングルーム』であった。

 愛原:「よし。俺と高橋はこっちのベッドで寝るから、リサは隣のベッドで寝てくれ」
 リサ:「えー?ベッド1つ余るよ?」
 愛原:「3人なんだからしょうがない」
 リサ:「だから先生が、私の隣で寝て?」
 高橋:「マグナム撃ち込むぞ、コラ!」
 愛原:「まあまあ」

 その時、部屋のチャイムが鳴った。

 高橋:「俺が出ます!」

 高橋はマグナムを構えた。

 愛原:「おいおい。そんな身構えなくても……。リサ、BOWの気配はするか?」
 リサ:「ううん、しない」
 愛原:「ほら。普通の人間だよ」

 外国ではそれが強盗である可能性もあるのだが、今さら人間の強盗くらいで驚く私達ではない。
 こちとら、もっと恐ろしい化け物達を相手にしてきているのだ。

 女将:「失礼します。御挨拶の方、よろしいでしょうか?」

 入って来たのは新しい女将だった。
 上野利恵が不祥事案件を起こした為に解任となり、代わりに別の女将が就任したようだ。
 今度の女将は、普通の人間らしい。
 私よりもずっと年上の女性だった。
 さすがに、私の母親ほどではないがな。

 愛原:「どうぞどうぞ」
 女将:「本日は天長園をご利用頂き、ありがとうございます。よろしければ、お部屋の御説明と館内の御説明をさせて頂きたいと存じますが、宜しいでしょうか?」
 愛原:「是非」

 こういう女将の説明も、旅行気分の1つだと私は思う。
 既に何度か泊まっているホテルなので、新しい情報は殆ど無かったが、しかし全く無かったわけではなかった。
 やはり、この部屋はリニューアルされていた。
 元々はやはり和室だったらしい。
 それを前の女将の不祥事案件により、損傷してしまった為、思い切って洋室に改装したのだそうだ。
 確かにホテル外観と、部屋の外側と比べれば、やけにこの部屋は真新しい感じを受ける。

 女将:「愛原様方には前任の者が多大な御迷惑を掛けてしまい、そのお詫びの意味も込めまして、こちらのお部屋を御用意させて頂いた次第でございます」

 確かに、私が利恵に襲われた部屋と同じフロアだったような気がする。
 ていうか、まんまこの部屋だったのでは?
 しかし、さすがにダクトは存在したままだった。
 まあ、建物の構造上、仕方が無いとは思うが。

 女将:「御夕食は6時からとなってございますので、それまでの間、どうぞごゆっくりとお寛ぎくださいませ」
 愛原:「ありがとう」

 私は夕食の前に、温泉に浸かることにした。
 外は相変わらず大雨が降っている。
 露天風呂は、この時間帯は諦めざるを得ないだろう。
 まあ、どうせゲリラ豪雨か何かだろうし、夜には止むだろうから、その時に入ればいいか。
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“私立探偵 愛原学” 「GW最後の行楽」

2022-06-22 13:44:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日10:35.天候:曇 栃木県那須郡那須町 那須ハイランドパーク]

 那須塩原駅からバスで1時間15分。
 一般の路線バス車両でこの所要時間だから……。

 愛原:「腰が痛ェ……」

 1番後ろの広い席に座っていたとしても、さすがに腰が疲れた。
 尚、このバスは板室温泉経由であり、ホテル天長園の前も通るのだが……。

 高橋:「先生、さっきのホテル見ました?でっけェ看板で、『歓迎!愛原先生御一行様』って書いてありましたよ?」
 愛原:「いや、見てなかった。おい、ウソだろ?」
 凛:「いえ。『最も危険な12人の巫女』様の1人が来られるという話をしたら、何だか歓迎ムードになりまして……」
 リサ:「わたし、神!?ゴッド!?」
 凛:「いえ、巫女です。白い仮面は持って来ましたか?」
 リサ:「いつも持ってる」

 尚、毎年、東京中央学園の七不思議は更新されているという。
 バスを降りると、私達は早速パークに向かった。

 愛原:「さて……」

 私が手に取るのはデジカメ。

 愛原:「俺は撮影係だ。あとは適当に楽しんでくれ」
 リサ:「えー、先生も楽しもうよ」
 愛原:「リサ達の行動をレポして、デイライトさんに提出しないといけないんだ」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「俺にとっては、これも仕事さ。というわけで、どのアトラクションにも乗れるパスポートを買ってあげるから、適当に楽しんでくれ」

 私はデジカメの電源をONにした。

[同日12:00.天候:曇 那須ハイランドパーク・スマイルサニーレストラン]

 えー、まずBOW達をホラーアトラクションに連れて行ってはいけないことを知った。
 半分は人間であるはずの上野姉妹は、キャーキャー言っていたが、肝心のホラーを提供する側が、リサ達を見てそれ以上にビックリしていたことは【お察しください】。

 リサ:「お客さんがBOWになって、獲物を追いかけ回すアトラクションとかはどう?」
 愛原:「そんなものあるか!」

 東京中央学園高等部の文化祭において、リサが『ホラーハウス』でオリジナル版リサ・トレヴァーの役をやった際、会場が阿鼻叫喚の地獄と化した。

 高橋:「センセ、やっぱりこういう所は絶叫系っスよ。絶叫系なら盛り上がったでしょ?」
 愛原:「これがか!?」

 私が写真を撮り出すと、リサが絶叫を上げながら背中から触手を出したものだから、後ろの客が別の理由で絶叫を上げているシーンが写し出されていた。

 高橋:「後ろでこんなことが……!?」

 私と高橋が隣り合って座り、その後ろにリサ達が座っていたのだが……。
 上野姉妹も微妙に変化しているように見えるが、リサみたいに触手を出すわけじゃないからな……。

 愛原:「そうだよ」
 リサ:「とにかく、お昼にしよ!」

 リサはビーフカレープレートを食べ始めた。

 愛原:「全く……」

 私は醤油ラーメン。
 たまに昼間、ラーメンを食べたくなる。

 愛原:「午後は気を取り直して、あまりリサ達が興奮して変化しない所に行こう」
 リサ:「えー、それじゃつまんないよ」
 高橋:「オマエらが変化するから、先生に気を使わせてんだろうが」
 リサ:「ゴメンナサイ」

[同日15:30.天候:曇 同パーク・ウーピーズキングダム]

 午後は大観覧車やミニトレインなど、絶叫系やホラー系を避けたアトラクションに終始した。
 最後はウーピーズキングダムと言う、土産やグッズを取り揃えたショップに立ち寄った。

 愛原:「御用邸チーズケーキ、斉藤社長へのお土産に買って行ったっけなぁ……」
 高橋:「善場の姉ちゃんに買って行ってあげたらどうっスか?」
 愛原:「『国家公務員として、民間からそのような物は受け取れません。贈収賄罪に問われかねませんので』と言って断られた」
 高橋:「相変わらず頭の固ェ姉ちゃんだ」
 凛:「それなら、一緒に食べるのはどうですか?」
 愛原:「なるほど。それはいいかもしれない」

 たまに、善場主任の方から事務所に来ることがある。
 その時にお出しすればいいのかも。

 リサ:「もしムリなら、『自分への御褒美』で先生が食べる」
 愛原:「いいのかな……。そういうリサは、友達に何か買って行かないのか?」
 リサ:「もちろん買う。これが鬼斬り先輩用」
 愛原:「蓮華さんに買って行ってあげるのか」
 リサ:「うん。『これで、わたしを斬るのはカンベンしてください』って」
 高橋:「女桃太郎には弱ェな!」

 いや、一応ケンカはリサの方が強いのだが。
 だが、本当に鬼の首が斬れる刀というのは、リサにとってはロケットランチャーより怖い武器らしい。

 リサ:「リンも買って行った方がいいかもしれない」
 凛:「そ、そうですか。先輩がそう仰るのなら……」
 理子:「私も買って行った方がいいですか?」
 リサ:「リコは中等部だから、多分大丈夫。校舎も違うし」
 理子:「そうですか」

 まあ、BSAAやブルーアンブレラ以外にも、抑止力があるのはいいことだ。

[同日16:00.天候:曇 同パーク『那須ハイランドパーク』バス停→関東自動車バス車内]

 1日2本しか無いバスの終便に乗り込む。

 愛原:「すいません。ホテル天長園の前で降ろしてもらえますか?」
 運転手:「ホテル天長園の前ですね。分かりました」

 ホテルのある辺りはフリー乗降区間なので、バス停ではないホテルの前でも運転手に言えば降ろしてもらえる。
 途中で降りるので、前の方の席に座った。

〔「板室温泉、黒磯駅西口経由、那須塩原駅西口行き、発車致します」〕

 バスは、だいたい席が埋まる程度の乗客を乗せて発車した。

 愛原:「いやあ……疲れた……」
 高橋:「先生、あとはホテルでゆっくり休んでください」
 愛原:「そうさせてもらう」

 ぐったり疲れているのは私だけではない。
 バスには他にも家族連れが乗っているのだが、やっぱり親は疲れているようだ。
 彼らがどこまで乗って行くのかは知らぬが、多分彼らがバスを降りる頃には【お察しください】。

 凛:「今日はありがとうございました。ホテルの御案内は任せてください!」
 愛原:「ふふ……若いっていいねぇ……。よろしく頼むよ」

 今日は温泉にし、明日を遊園地にするという手もあったのだが、先に行っておいた方が後で疲れなくていいと思ったのだ。

 高橋:「先生、何か降りそうですよ?」

 空はどんよりと曇っている。
 もうだいぶ日が長くなったはずだが、真冬の日の長さかと思うくらい、薄暗くなっている。

 愛原:「ああ。遊園地で降られなくて良かったな」

 ホテルにいる分には、まあ雨が降っても良い。
 私はそう思った。
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“私立探偵 愛原学” 「那須紀行」

2022-06-22 11:03:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日07:44.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東北新幹線355B列車8号車内]

〔22番線から、“やまびこ”355号、仙台行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 ホームから発車ベルの音が聞こえてくる。
 東海道新幹線では発車メロディを導入しているが、それ以外の新幹線ホームではベルである。
 発車ベルが鳴り終わると、甲高い客扱い終了合図のブザーが流れてくる。
 これは駅員が車掌に対して、『乗客の乗りが終わったので、ドアを閉めても良い』という合図である。
 英語で言えば、『All aboard』である。
 これを直訳すると、『皆さん、ご乗車ください』ということらしいが、実際にアムトラック(全米旅客鉄道公社)の車掌が『発車オーライ』的な感じで歓呼しているのを見ると、『全員乗車完了』という意味のような気がしてしょうがない。
 新幹線では駆け込み乗車が無かったか、スムーズに発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“やまびこ”号、仙台行きです。次は、上野に止まります。……〕

 私を含めて、朝食の駅弁に箸を付ける。
 いつもより朝食時間が遅かったせいか、リサは一心不乱に弁当の中身をかき込んでいた。

〔「皆様、おはようございます。本日も東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。7時44分発、各駅に停車致します“やまびこ”355号、仙台行きです。東北新幹線では3月16日に起きました地震の影響で、現在暫定ダイヤでの運転となっております。……」〕

 東海道新幹線で言えば、“こだま”号のような列車である為、車内の混雑はそれほどでもない。
 多分、編成が長いからというのもあるだろう。
 元々この列車は、“やまびこ”205号であったそうだ。
 それが暫定ダイヤで、列車番号が変わっている。
 いずれにせよ、各駅停車タイプであることに変わりは無い。
 暫定ダイヤで郡山駅以北で徐行運転を行う為に、所要時間が長くなっていることを放送で言っていた。
 徐行運転を行うのはそうであったとしても、通常ダイヤよりも遅くなるのは栃木県からである。
 なので、私達が下車する那須塩原の時点で、既に影響が出ているというわけだ。
 東京駅を出発すると、私はすぐに善場主任にメールで報告。
 主任からはすぐに返信メールが来た。
 土曜日でも出勤されるのだろうか。

 愛原:「善場主任、今日も出勤なのかね。報告メール送ったら、すぐに返信が来たよ」
 高橋:「あの姉ちゃんも働き者ですね。あれも化け物ですから、案外体力はガッツリあるのかも」
 愛原:「おいおい、失礼なこと言うんじゃないよ」
 高橋:「ここだけの話っス。霧生市に行った時、その化け物ぶりを俺は直に見たんスから」
 愛原:「ああ、聞いたよ」

 人間なら致命傷とも言うべき傷を負った善場主任だったが、刺さった物を高橋に抜いてもらっただけで、傷は見る見るうちに塞がって行き、ついには何の痕も無く消えてしまったそうだ。
 これはGウィルスの効力の1つである。
 同じ現象をアメリカのシェリー・バーキン氏も起こすことができるそうだ。
 いくらBOW化が防げたとしても、感染者の遺伝子に深く侵蝕する為に、例えワクチンを投与しても、後遺症は長期に亘り(或いは一生)残り続けるという。
 ただ、後遺症というのは苦しむべき病状のことを言うのだが、Gウィルスの場合はちょっと違う。
 はっきり言って、特異菌よりも危険なウィルスなのである。
 傷をたちどころに癒やしたり、超人的な身体能力を手に入れられたり、老化が止まるなんて後遺症とは言えないだろう。

 愛原:「俺はGウィルスなんてカンベン願いたいね」
 高橋:「全くです」
 リサ:「…………」

[同日09:03.天候:曇 栃木県那須塩原市大原間 JR那須塩原駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。東北本線、黒磯方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、新白河に止まります〕
〔「まもなく那須塩原、那須塩原です。お出口は、左側です。停車の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、電車の揺れにご注意ください。お乗り換えの御案内を致します。宇都宮線下り……」〕

 愛原:「新幹線だとあっという間だな」

 私はそう言うと、席を立って荷棚に乗せた荷物を降ろした。
 電車が揺れるというのは、那須塩原駅のホームは本線から外れた副線にある為、そこへのポイント通過で揺れるという意味である。
 新幹線では、よくある構造だ(東海道新幹線では、新富士駅もそうだね)。
 そして、ホームの無い本線を通過列車が轟音を立てて通過して行くのが醍醐味だ。

 愛原:「忘れ物に気をつけろよ」
 高橋:「大丈夫っス」

〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物の無いように、お降りください。……」〕

 ドアが開くと私達はホームに降り立った。
 ここでの下車客も、意外と多い。
 特に、自由席から降りてくる客が目立った。
 東京駅出発の時点では賑わう自由席車も、こういう所で空いてくるのだろうか。

 愛原:「次はバスに乗るけど、所要時間結構掛かるから、先にトイレとか行っておいた方がいいな」
 高橋:「そうですね。そうしましょう。俺は一服してきますんで」
 愛原:「行ってらっしゃい」
 リサ:「じゃあ、わたしもトイレ行って来る」
 愛原:「ああ。バスの時間は9時20分だ。遅れるなよ」

 もっとも、そのバスはホテル天長園の前を通ることもあってか、上野姉妹はよく知っているようだ。

 高橋:「バスで行くと、遊園地までどれくらい掛かるんスか?」
 愛原:「時間にして、1時間ちょっとだね」
 高橋:「マジっスか!」
 愛原:「マジです。だから、先にトイレは済ませた方がいい」
 高橋:「タバコもですね?」
 愛原:「……そだね」

 こいつはどうやら禁煙する気が無いらしい。
コメント
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