報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「アリスの両親」

2017-03-01 21:59:02 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月4日23:00.天候:雪 廃ペンション別館3F]

 天窓の鍵を開錠したことで、ようやっと脱出口を確保することができた。
 あとはそこから脱出して、外部に救助を求めるだけである。
 ところが、だ。
 その天窓をブチ破って、突入してくる者がいた。

 敷島:「シンディ!お前……!!」

 それはシンディだった。
 エミリーが致命傷を与えたはずの首元はテープが貼られているだけの状態なのに、シンディは元気に稼働していた。
 しかも手には、チェーンソーを持っている。

 シンディ:「ゥワアアアアアアッ!!」
 敷島:「シンディ、何をするんだ!?」
 エミリー:「社長、逃げてください!シンディは暴走しています!!」
 敷島:「何だってー!?」

 エミリーはマグナムをシンディに放った。
 だが、それを避けるシンディ。

 シンディ:「アンタの動きはお見通しよ!!」

 そこは姉妹機。
 姉の癖を知っているのだろうか。

 エミリー:「くっ……!」

 エミリーは右手を光線銃に変形させた。
 が、それがマズかった。
 まだ使い慣れていない光線銃が変形する際に、エミリーの動きが鈍くなる。
 そこをシンディに突かれた。

 エミリー:「があ……ッ……!」
 敷島:「エミリー!」

 シンディはエミリーの右手にチェーンソーを振り下ろして、右手を切り落とした!
 右手から噴き出す赤黒いオイルと火花。

 敷島:「くそっ!」

 敷島はショットガンを放った。
 しかし、猟銃としての用途のショットガンがシンディに効くわけが無かった。
 敷島はマップ間移動(つまり部屋を移動)して、シンディを撒こうとした。
 だが、手にしたチェーンソーと元来の腕力で、壁をブチ破って来るくらいだった。

 敷島:「シンディのヤツ、とんでもねぇ!」

 敷島はエミリーの持つコルト・ガバメントを使おうと思った。
 ショットガンは効かなくても、マグナムなら効くだろうと思ったのだ。
 エミリーは仰向けに倒れていたが、敷島が近づいてきたのに気づいたか、起き上がって捨て身の体当たりをシンディにかました。

 シンディ:「首を切り落としてやる!」
 敷島:「そうは行くか!」

 敷島はガバメントを拾うと、シンディのチェンソーに向かって2発発砲した。
 チェーンソーはそれで壊れる。

 シンディ:「この野郎!!」
 エミリー:「!!!」

 エミリーは敷島に飛び掛かろうとしたシンディの右足を左手で掴んだ。
 そして、高圧電流を放った。

 シンディ:「うぎゃあああああああっ!!」

 シンディは断末魔のような声を上げて、エミリーに覆いかぶさるように倒れた。
 また、エミリーも捨て身の攻撃だった為、バッテリー上がりを起こして動かなくなった。

 敷島:「な、何ちゅう……!」

 と、そこへまた室内の電話が鳴る。

 敷島:「何だよ、全く!」

 敷島は電話を取った。

 アリス:「私よ。状況は?」
 敷島:「状況も帰郷もあるかっ!シンディとエミリーが同士討ちだぞ!!責任は誰が取るんだ!?」
 アリス:「落ち着いて。とにかく、そこから逃げて」
 敷島:「は!?」
 アリス:「パパがそっちに向かったわ。捕まったら、タカオも終わりよ。いいから早く逃げて!」
 敷島:「だから、パパって誰のことなんだ!?」

 だが、電話が切れてしまった。

 敷島:「萌もどこかに行っちゃったし……。こりゃ、機動隊100人どころじゃないな」

 敷島は天窓に向かおうと、2〜3歩ほど歩いた時だった。

 敷島:「!?」

 いつの間にか背後に現れた黄色いジャンパーの男に肩を掴まれ、無理やり振り向かされた。

 男:「Welcome to the family,son!」
 敷島:「うわっ!!」

 敷島の頭に衝撃が走る。
 黄色いジャンパーの男に1発でKOされてしまった。

[2月5日02:00.天候:曇 廃ペンション本館1F・食堂]

 敷島:「う……」

 敷島が目を覚ました。
 目の前に現れたのは……。
 ロウソクの立てられた食卓とその上に乗った料理、そして椅子に座る初老の夫婦らしき男女、そして……アリスがいた。
 初老の女は敷島を見てニヤけた顔をした。

 女:「ようやく起きたかい、ねぼすけさん?食べな。あなたの歓迎パーティーを始めるよ」
 敷島:「は?何だこれ?これはどうなってんだ?」

 テーブルの上に乗っている料理は、一見すれば確かに御馳走と言えるものだった。
 だが、匂いが何かおかしい。
 例えば、皿の上に山盛りになったフライドチキンやエビフライなどは、何だか機械油のような臭いがする。

 敷島:「アリス、お前、何やってんだ?この人達は誰だ?」

 だが、アリスはバカにした笑みを浮かべた。

 女:「いいから食べるんだよ。アリスとの結婚を正式に認めてもらいたければね」
 敷島:「は???」

 敷島はワケが分からなかった。

 アリス:「このバカには何言ったって分かるわけないわよォ!」

 アリスはグラスに入っていた飲み物を敷島に投げつけた。

 敷島:「アリスっ!てめっ、何しやがる!!」
 女:「アリス、何やってんだい?お行事悪いよ」
 黄色いジャンパーの男:「このバカモン!」

 男はアリスの頭をゲンコツした。

 アリス:「Ouch!勘弁してよ〜、ダディ!」
 敷島:「ダディ!?」

 アリスからダディと呼ばれた男は席を立った。

 男:「おい、キャシー。ちょっとどけ」
 キャシー:「あいよ、マーク」

 黄色いジャンパーの男はマークという名前らしい。
 それが敷島の横にやってくる。

 マーク:「好き嫌いはいかんぞ?夕食はちゃんと食わんとな。ほら、このフライドチキン、食ってみな?なかなか美味いぞ、ん?何せ、キャシーが腕によりを掛けた料理だからな。分かるか?」

 マークはフライドチキンを手に取ると、敷島の口の中にねじ込んだ。

 敷島:「ブボッ!!」

 口の中に広がる苦味。
 腐った肉?いや、違う。
 油だ!油が変なのだ!
 敷島はむせ返って吐き出した。

 キャシー:「吐きやがったよ、コイツ!フザけんじゃないよ!バラバラして捨ててやるよ!」

 キャシーは立ち上がって激昂した。

 マーク:「うるせぇぞ、キャシー!向こうに行ってろ!」

 マークはキャシーが座っていた椅子を蹴っ飛ばした。
 キャシーは敷島に糾弾の言葉を吐きながら食堂を出て行った。

 マーク:「この料理は我が家にとって最高のものでな。ん?分かるだろ?分かったら、さっさと食え。食うんだ。ほら、食うんだよ」

 マークは今度はエビフライを敷島の口にねじ込もうとした。
 が、そこへ何かの警報が鳴る。

 アリス:「パパ、またあのロボットが暴れたみたい」
 マーク:「くそっ、こんな時に……!すぐに戻ってくるからな?ここを動くんじゃないぞ。アリス、お前も来い」
 アリス:「はーい」

 アリスとマークも出て行ったことで、敷島は1人、食堂に残されることになった。

 敷島:「はあ、はあ、はあ……ッ!な……何なんだ、あいつら?アリスも一体……どうしたっていうんだ?」

 敷島は椅子に拘束されていたのだが、身をよじっているうちに腰縄が緩んでくる。
 そして、拘束から逃れた敷島は席を立った。

 敷島:「と、とにかくここから逃げないと……!」

 敷島は恐怖に震える体に鞭打ち、食堂の外に出ることにした。
コメント (1)
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