報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「マリアの屋敷」 2

2017-06-30 19:20:03 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月29日12:00.天候:晴 長野県北部の山間部 マリアの屋敷1F大食堂]

 昼食の時間にイリーナはやってきた。

 イリーナ:「いや〜、よく勉強したなぁ……」
 マリア:「よく寝たの間違いじゃないですか」
 イリーナ:「睡眠学習ってヤツだよ」
 マリア:「どこが……」
 稲生:「先生。先生宛てに手紙が沢山来ています」
 イリーナ:「ん、ありがとう」

 イリーナは目を細めたまま、手紙の山を受け取った。

 マリア:「ね?師匠はこのまま渡しても、全然気にしない人でしょ?」
 稲生:「はあ、そのようで……」
 イリーナ:「ん?何が?」
 マリア:「いえ、何でも無いです。それより、早くランチにしましょう」

 人間形態になったメイド人形達が昼食を運んで来る。

 稲生:「お、今日はオムライスですか」
 イリーナ:「日本発祥の料理を作らせてみたよ」

 因みにマリアが作って、使役する人形はメイドのみ。
 コックが取り仕切る厨房はマリアではなく、イリーナが魔法で作り出した異形の者が行っている。
 コックの下で働くキッチンメイドやスカラリーメイドのみ、マリアが作り出した人形である。
 他にもイリーナが作り出した“使用人”は、コックの他に庭師やお抱え運転手がいる。

 稲生:「いいですねぇ、いただきまーす」

 表向きには屋敷の主人ということになっているマリアだが、実際の主人はイリーナである。
 イリーナ自身が世界各地を飛び回ることが多く、屋敷を空けることが多い為。
 イリーナがいる時は、ハウスキーパー(女主人代行、或いは女管理人)に徹するのがマリアである。
 メイド人形のリーダー2人ですら、屋敷の東西エリアどちらかのマスター・キーしか渡されていないのに対し、マリアはどの屋敷のドアも開けられるグランドマスター・キーを持っているからだ。
 因みに稲生は、自分の部屋の鍵しかもらっていない。
 あとは、元々鍵を掛けない共用室(この大食堂も含む)などにしか入れない。
 イリーナはどうかというと、自分では鍵を持たない。
 鍵を持ったメイド人形に開けさせるか、或いは自分で魔法で開けてしまう。
 尚、稲生専属メイドと称するダニエラがいるが、本来こちらはレディース・メイドだった。
 イリーナの身の回りの世話係としてマリアが用意したものだが、イリーナ自身がいないことの方が多い為、いつしか稲生に付いて(憑いて?)しまったものである。
 どうも最近、メイド人形達は稲生のことをこの屋敷の家令または執事だと思うようになっているらしい。
 どちらも上級使用人扱いであり、下級使用人と違ってその待遇はとても厚い。
 稲生は個室を与えられているが、上級使用人の特権の1つである。
 で、上級使用人の中には専属の使用人を使う特権もあり、ダニエラがそれを行っていることで、他のメイド人形や“使用人”からはそう思われているらしい。

 稲生:「お店にも負けない味ですよ。これは美味い」
 イリーナ:「良かったねぇ」
 マリア:「日本は食事の美味い国とは、よく言ったものです」

 もちろん、稲生はあくまでもイリーナの住み込み弟子としているわけであり、使用人としているわけではない。
 ただ、日本の住み込み弟子と言えば、師匠の身の回りの世話をするのも修行の1つとされており、稲生もそれを想定していたというのは正直な所である。
 だが実際来てみれば、イリーナはあまり屋敷にいないし、そもそも掃除だの料理だのは全部メイドや“使用人”達が行っている為、稲生のやることは殆ど無かった。
 与えられた部屋の掃除だって、最初は自分でやっていたが、そのうちダニエラがやってくれるようになった。

 イリーナ:「午後は引き続き、ユウタ君は魔法陣の書き方を勉強してね」
 稲生:「はい」
 イリーナ:「形は厳密にこだわる必要は無いんだけど、あくまでも今は基礎練みたいなものだから」
 稲生:「分かりました」

[同日14:00.天候:晴 マリアの屋敷・中庭]

 中庭の砂地に魔法陣を描く稲生。

 稲生:「パペ・サタン・パペ・サタン、アレッペ!五芒の星よ、その力を示せ。その証として、光輝いてみせよ」

 ポウッと五芒星の部分が光る。

 稲生:「……光っただけか。うーん……」

 ゴゴゴゴゴゴと背後に気配を感じる。

 稲生:「って、うおっ!?ダニエラさん!」
 ダニエラ:「稲生様……イリーナ様がお呼びです……」
 稲生:「イリーナ先生が!?分かりました。すぐに行きます」

 稲生は魔法の杖と魔道書を持つと、すぐに家の中に入った。
 因みに仕掛けとしては、ここで中庭のオブジェのガーゴイル像が、本物のガーゴイルに化けて襲ってきて、中ボス戦を侵入者にさせるというものである。

[同日14:15.天候:晴 同屋敷1F西側・大食堂]

 稲生:「お待たせしました」
 イリーナ:「あ〜、ユウタ君。あなたに頼み事があるよ」
 稲生:「頼み事?」
 イリーナ:「マリアの魔法の杖を静岡県で作ったって話は覚えてない?」
 稲生:「そういえばありましたね。あの時は威吹と一緒でした。そういえば、喋る大木がいましたね」
 イリーナ:「うん、そうだね。因みに威吹君が、エルダー・ツリーから教わった朴の木で作った鞘を転売していたことは黙ってておくよ」
 稲生:「『仲間の妖狐に何人か剣客がいるから、彼らの刀の鞘用に譲る為』とか言ってましたけど、売ってたのか……。さすがは妖狐だ」
 イリーナ:「そのエルダー・ツリーなんだけど、そろそろ稲生君用に魔法の杖を作ったらどうかって」
 稲生:「でも、僕はまだ見習ですよ?」
 イリーナ:「ユウタ君の才能と上達ぶりからして、想定外に早く一人前になれそうな気がするのは私だけじゃないと思うんだ」
 稲生:「そ、そうですかね……」
 イリーナ:「さっきの魔法陣。星型を五芒星を見立てて、そちら方面の魔力を出そうとする発想、さすが日本人ならではだと思ったね」
 稲生:「五芒星が安倍晴明と直結するという発想ですか。あの魔法陣を書いてみて、そう思ったんですよ」
 イリーナ:「いいと思うよ。最初は先生達の書いた魔法陣をマネをして、その後で自分のオリジナリティが出せれば大したものだから」
 稲生:「はい、ありがとうございます」
 イリーナ:「取りあえず現地までは私の魔法で行くから、そこから先の交通手段はユウタ君に任せるよ」
 稲生:「わ、分かりました」
 イリーナ:「いつまでも伸縮性の金属棒だけじゃ、心許ないだろうしね」
 稲生:「マリアさんとお揃いがいいです」
 イリーナ:「あー、ゴメン。それ、多分ムリ。魔法の杖ってのは、それを持つ魔道師の個性の表れだから。1つとして同じ物は存在しないんだよ」
 稲生:「何だ、そうですか。残念。まあ、しょうがないです。場所は富士宮でしたね。大石寺の近く」
 イリーナ:「朝霧高原の方が近いと思うよ」

 早速稲生の脳内に、富士宮から東京方面の交通手段が検索された。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「マリアの屋敷」

2017-06-30 13:57:34 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月29日11:00.天候:晴 長野県北部の山間部 マリアの屋敷]

 稲生:(イリーナ先生の所に弟子入りしてから、どのくらい経っただろう?何か、あっという間な気がするなぁ……)

 それでもまだ新人であることに変わりは無い。
 その理由として、未だにイリーナやマリア宛ての郵便物のチェックを行う役目があるからだ。
 まあ、未だに殆どがイリーナ宛のものばかりであるが。
 英語で書かれていたり、ロシア語で書かれていたりと、世界各地から手紙が届いているのが分かる。
 中には日本語で書かれているのもあった。

 稲生:(相変わらず大企業からの手紙が多いな……)

 その手紙を仕分けて届けに行くのが弟子の仕事。
 ところが少し困ったことがあった。

 稲生:「マリアさん、お手紙ですよ」
 マリア:「ありがとう」

 マリアは大抵、屋敷の西側1階奥のリビングルームにいることが多い。
 そこで趣味の人形作りをしていたり、魔道書を読んでいたりする。
 で、今回もちゃんとそこにいた。
 長野にも夏が訪れていることもあり、緑色のブレザーは脱いで、白いブラウスが目に付くようになっている。

 稲生:「先生宛ての手紙が多いんです」
 マリア:「そうか。で、師匠がどこにいるか?か……」
 稲生:「そうなんですよ」

 この広い洋館の中に、一体どこにいるかだ。

 マリア:「どうせお腹が空いたら、大食堂に行くだろうから、そこのテーブルの上に置いといたら?」
 稲生:「うーん……。それだと弟子としての本分が……」
 マリア:「うちの師匠はそんなこと気にしないよ」
 稲生:「いや、まあ、捜してみます。マリアさんは心当たりは無いですか?」
 マリア:「心当たりなんて、そんな不確かな勘を頼るより……」

 マリアはテーブルの上の水晶球に手を置いた。

 マリア:「これで捜した方が早い」
 稲生:「なるほど」

 ポウッと水晶玉に現れたのは、イリーナの寝顔。

 稲生:「ん?」

 マリアが怪訝な顔をして、もうちょっと退いた画像にした。

 マリア:「ここは2階書庫の映像だな。……チッ、ものの見事に居眠りしてやがる」
 稲生:「ハハハハ……」

 ちょっとした図書室があり、閲覧する為の椅子とテーブルがあるのだが、イリーナは山積みにした本を枕に、机に突っ伏して寝ていた。

 稲生:「場所が分かったんで行ってきます」
 マリア:「3階吹き抜けの上から、その手紙バラ撒いてやったら?」
 稲生:「いやいやいや……」

 稲生はリビングルームを出ると、2階図書室に向かった。
 途中に即死トラップなどがあるが、稲生達のような関係者には作動しない。
 また、メイド人形達が廊下の掃除をしていたりする。
 稲生達のような関係者には何もしてこないが、これが侵入者だったりすると、掃除用具を凶器に持ち替えて襲ってくる。
 “バイオハザード”シリーズのように複数で襲撃するのか、それとも“クロックタワー”シリーズのように、1人ずつ追跡して追い詰めるのかは侵入者次第である。

 稲生:「こんにちは、マーガレットさん」
 マーガレット:「こんにちは」

 2階への階段を掃除しているメイド人形のマーガレット。
 もちろん侵入者に対しては、「ヒャッハー!ここは通さねぇぜ!」的な勢いで立ちはだかるのである。
 関係者たる稲生にあっては即死トラップが作動しないし、いざとなったら警備兵となるメイド人形も襲って来ない。
 それなら簡単じゃないかと思われるだろうが、そんな関係者でも困らせてしまうものがあった。

 稲生:「失礼しま……」

 ガチッ!(←図書室入口のドア、しっかり鍵が掛かっている)

 稲生:orz
 ミア:「どうかなさいましたか?」

 図書室周辺を掃除している(兼侵入者に対しては、電ノコで襲い掛かって来る超危険な)メイド人形のミアが話し掛けて来た。

 稲生:「ああ、ミアさん。この中にイリーナ先生がいらっしゃると思うんですけど、鍵が掛かってるんですよ」
 ミア:「まあ」
 稲生:「ミアさん、鍵持ってません?」
 ミア:「あいにくですが、私は持ち合わせておりません」
 稲生:「だよなぁ……」
 ミア:「あ、でも、確かミカエラ様とクラリス様がマスターキーをお持ちですよ」
 稲生:「あ、そうか!その手があった!」

 メイド人形のリーダーたるミカエラとサブリーダーのクラリス。
 彼女らはマスターキーを持っていたのだった。

 クラリス:「何かありましたか?」
 ミア:「副メイド長!お疲れさまです!」
 稲生:「ああ、クラリスさん!ちょうどいい所に来てくれた!」

 人形形態の時はハク人形と呼ばれ、同じくミク人形と呼ばれる人形形態のミカエラとはコンビでコミカルな動きをしてくれるわけだが、今の人間形態にあっては、凛としたメイドぶりを発揮してくれる。

 稲生:「実は……」

 稲生は現況をミカエラに話した。

 稲生:「そしたら、あなたとミカエラさんがマスターキーをお持ちということで、是非ともここを開けてもらいたいんです」
 クラリス:「申し訳ありませんが、それはできません」
 稲生:「せ、責任なら僕が取りますよ!?」
 クラリス:「いえ、できません」
 稲生:「また電車で旅行の時、車内販売のアイス買ってあげますから!」
 クラリス:「ゴクリ……!あ、いえ、あなただからダメってことではなくて、ですね……。要は、鍵を持っていないのです」
 稲生:「え?」
 クラリス:「今日の私の担当は東側でありまして、東側のマスターキーしか持たされていないのですよ。こちらの西側は担当のミカエラが持っております」
 稲生:「ええっ!?それじゃあ、ミカエラさんは……?」
 クラリス:「裏庭の掃き掃除に行くと、出て行きましたが……」

 稲生は裏庭に出る途中の道に設置されたガーゴイルが誤作動を起こし、関係者であるにも関わらず襲って来たというトラウマを思い出した。
 それだけではない。
 魔法の影響を受けて巨大化したオニグモが、しっかりとデカい蜘蛛の巣を張って進路妨害をしていたこともあった。

 稲生:「ミカエラさん、カムバック!!」

 と、その時、近くの廊下で内線電話が鳴った。

 稲生:「ああ、いいよ。僕が取る」

 黒電話でジリリと鳴るタイプなので結構響く。

 稲生:「はい、もしもし」
 マリア:「あー、私だ、私」
 稲生:「マリアさん」
 マリア:「もしかして、書庫の入口、鍵掛かってた?」
 稲生:「そうなんです!」
 マリア:「やはりか。何だったら、私がグランドマスター・キー持ってるから、取りに来て」
 稲生:「……もっとその手があったかorz」

 ここはマリアの屋敷である。
 実質的なオーナーはイリーナではあっても。
 強い管理者権限を持っていることに、変わりは無い。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“Gynoid Multitype Sisters” 「主人公不在の中で」

2017-06-29 23:41:21 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月18日17:00.天候:晴 北海道紋別郡遠軽町 厚生病院]

 病院内のテレビでは速報が流れていた。

〔「大坂正明容疑者、逮捕です!中核派のメンバーで逃走を続けていた大坂正明容疑者が今日逮捕されました!」「はい、道を開けて!」「危ないから下がって!」〕

 井辺:「KR団とは何の関係も無いように思われましたが、少し関係があったようです。あのアジトから、『日本の極左ゲリラと連絡を云々』みたいな文書が見つかったそうですから。暗号化されていましたが、解読したら中核派のアジトに行き着いたそうです」
 アリス:「そう。だけど、犠牲は大きかったわ……」

 敷島の意識は未だに戻っていない。

 アリス:「これじゃ死んでるのと同じじゃない!」
 井辺:「奥様、それでは社長が……。社長は必ず回復されます。全社員、ボーカロイド達がそれを信じて活動していますから」
 アリス:「そうね……」
 井辺:「担当医の先生には、意識が回復したらすぐに連絡を入れてくれるようにお願いしてあります」
 アリス:「何とか関東の病院に移送できないの?」
 井辺:「意識さえ戻れば何とか……。しかし、今は難しそうです」
 アリス:「…………」

[同日同時刻 天候:雨 東京都豊島区池袋 四季エンタープライズ]

 敷島エージェンシーの親会社である四季エンタープライズのビルから、代表取締役の敷島峰雄が出て来た。
 敷島の伯父でもある。

 記者A:「敷島会長、敷島エージェンシーの敷島社長の活躍で中核派のメンバーが逮捕されましたが、何か一言お願いします」
 敷島峰雄:「長年逃走を続けていた容疑者の逮捕に、身内の者が大きく貢献したということは、素直に喜ばしい限りであります」
 記者B:「敷島孝夫社長の容態は如何なものでしょうか?」
 敷島峰雄:「命に別状はありませんが、未だに意識が回復していない状態とのことです。現在は孝夫の妻や敷島エージェンシーの社員が定期的に見舞いに訪れており、是非とも暖かく見守って頂きたい所であります」
 記者C:「敷島エージェンシーの運営の影響は如何ですか?ボーカロイドの活躍に影響が出ているという噂もありますが?」
 敷島峰雄:「敷島エージェンシーは、四季エンタープライズを中心とした四季グループの完全子会社であります。名実ともに孝夫が責任者ではありますが、出資元の責任者として、私共で全力でサポートをしている所であります。ボーカロイド達には、何も心配せず、活動に専念するよう申し伝えてあります」
 記者D:「KR団の元幹部が逮捕されたことと、中核派の容疑者が逮捕されたことで、そちら方面からの報復とかも考えられますが、対策は如何なものでしょうか?」
 敷島峰雄:「今は警察が捜査している所でございますので、今は警察の捜査に協力するのみであると考えております。当面は契約先の警備会社に対し、警備員の増員や警戒強化を申し入れるに留まります。それが現状です」
 記者E:「『美人過ぎるガイノイド』のロイド達の攻撃力強化とか、そういった予定はありますか?」
 敷島峰雄:「それは私の関知するところではございません。孝夫や平賀太一教授の関知するところであります」
 秘書A:「申し訳ありません!お時間ですので、質問はここまでにさせて頂きます!」
 秘書B:「すいません、道を開けてください!ご協力お願いします!」
 記者F:「ボーカロイドの増備の御予定は!?『美人過ぎるガイノイド』の秘書は増員されるのでしょうか!?」

 あとは無言で役員車に乗り込む峰雄。
 黒塗りセンチュリーの役員車が走り出した。

 峰雄:「全く。孝夫のヤツ、目立ち過ぎだ」
 秘書A:「ですが本当に容態が回復してないのは事実です。さっきの質問にはありませんでしたが、安楽死という案が主治医から出てくることも想定されます」
 峰雄:「縁起でも無いこと言うな。敷島エージェンシーでそんなこと言ったら、生きては出れなくなるぞ」
 秘書A:「も、申し訳ありません」
 峰雄:「明日には、孝夫の部下が見舞いから戻るそうじゃないか。明日、豊洲に行って彼らを励ましてこよう。有楽町のコンサルタントに行った後、少し寄る時間あるだろう?」
 秘書B:「そうですね」
 峰雄:「最高顧問が逝去したのは偏に高齢によるものだから致し方無かったというのはあるが、しかし孝夫の場合は違う……」

[同日同時刻 天候:雨 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 エミリーは修理が終わった後、単身で帰京した。
 そして、いつもは無人の……時には四季エンタープライズから代理として訪れる役員が使用する社長室の掃除をしていた。

 MEIKO:「随分、精が出るのね」
 エミリー:「社長が……いつでも戻って来られても良いようにだ。きれいなお部屋で、何の憂いも無く業務に復帰して頂く為に」
 MEIKO:「業務に復帰か……。無駄な努力になるかもよ?」
 エミリー:「社長は必ずお元気になられる。必ず退院して、こちらに戻って来られる。MEIKO、2度と縁起でも無いこと言ったら……壊すぞ?」

 エミリーは両目を赤くギラッと光らせてMEIKOを威嚇した。
 だが、MEIKOは小さく溜め息をついてそれを流した。

 MEIKO:「そうじゃないの。社長がお元気になられることは、私も信じてる。そういうことじゃないの」
 エミリー:「じゃあ、何だ?」
 MEIKO:「今日、テレビの収録に行ってたらね、テレビ局の記者さん達が言ってたの。もしかしたら、会社を長く空けていたことで、株主さん達から総スカン食らって、社長の椅子から降ろされるかもしれないって」
 エミリー:「敷島エージェンシーは上場していないぞ?株主総会なんて……」
 MEIKO:「でも、四季エンタープライズさんは上場してる。もし株主総会で、株主さんからそんな質問が来た時、向こうの社長や会長はいい回答ができるのかしら?『敷島孝夫は敷島エージェンシーに無くてはならない存在です』という回答だけで、株主さんが納得されるかしら?」
 エミリー:「……!!」

 エミリーはガクッと両手をついた。
 そして、大粒の涙をポロポロと流した。

 MEIKO:「ごめん。ごめんね……。そんなつもりじゃなかったの。ただ……」

 MEIKOもしゃがんで、エミリーと肩を抱き合った。

 MEIKO:「私も心配で心配でしょうがないってこと。テレビ局や雑誌社に行くと、そんな話をされるものだから……」
 エミリー:「四季エンタープライズの株主総会は……」
 MEIKO:「いつもだと来月下旬ね。6月の……二十何日ってとこ」
 エミリー:「それまでに社長の意識が戻れば……」
 MEIKO:「何とかなるかもね」

 2人のガイノイドは雨粒の滴る窓に目をやった。
 いつの間にか、敷島の存在は大きなものとなっていたようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“Gynoid Multitype Sisters” 「敷島とミク、発見!」

2017-06-27 18:48:40 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月7日08:00.天候:晴 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館跡]

 シンディがザックザックとスコップで土を掘る。
 2〜3メートルは掘った所に、彼女はいた。

 シンディ:「ミク!博士、ミクがいました!」
 アリス:「OK!そのまま掘り出して!」

 NHKリポーター:「現場からお伝えします。たった今、敷島エージェンシー所属のボーカロイド、初音ミクさんが発見されました!発見されたのは爆発現場からさほど遠くない場所です。洋館が建っていた所から、南東およそ50メートルほどでしょうか」

 シンディが掘り出すと、ミクは泥だらけになっていた。
 それでもバッテリーは切れずに、もう片方の髪留めからSOS信号が発せられていたのだ。

 シンディ:「ミク!ミク!しっかりして!」
 アリス:「ちょっと待って!今、再起動掛ける!」

 鳥柴は無線機でヘリコプターの方とやり取りした。

 鳥柴:「こちら鳥柴です。初音ミクが発見されました。状態は見た目に大きな損傷が見られるものの、修理不可というわけではなさそうです。頭部の損傷は比較的軽微と思われます。現在、アリス主任が再起動を掛ける準備をしているところです。どうぞ」
 ヘリパイロット:「了解!移送準備が整い次第、近辺に着陸します。支社の方には、こちらから連絡を入れておきます。どうぞ」
 鳥柴:「了解、よろしくどうぞ!」

 エミリーの修理は学術的価値という観点から、大学などの研究機関が行う。
 ボーカロイドに関しては商業的価値という観点から、民間企業が行う。
 前者にあっては北海道札幌市内の工業大学で応急修理が行われた後、平賀の拠点である仙台の東北工科大学に移送され、本格的な修理が行われる。
 後者にあってはDCJ札幌支社の工場で修理が行われる。

 シンディ:「ミク!私が分かる!?」
 ミク:「シンディ……さん……」
 シンディ:「社長はどこなの!?まだ見つからないのよ!」
 ミク:「たかお……さん……は……あっち……。バージョ……が……守って………」

 再び電源が切れるミク。
 それほどまでに外部よりも内部の損傷が激しいのだ。
 ミクが指さした所をシンディは解析度を上げてスキャンした。

 シンディ:「くそっ!発見できない!」
 アリス:「シンディ。無理しなくていいわ」
 鳥柴:「アリス主任、初音ミクは移送してもよろしいでしょうか?」
 アリス:「お願い。バッテリーは抜いておくから」
 鳥柴:「こちら鳥柴です。初音ミクの移送準備ができました。ヘリの準備をお願いします」
 ヘリパイロット:「了解しました。着陸後、そちらに向かいます」

 機体にDCJと大きく書かれたヘリコプターが降下してくる。
 シンディはその音を背に、ミクが指さした方を慎重にスキャンした。

 シンディ:(ミクはバージョンがどうとか言っていた。……あの辺、何だかバージョン共が一塊になっている箇所があるけど……まさか……)

 シンディはバージョンの群れが埋まっている辺りを掘り出した。

 シンディ:「!」

 こちらも2〜3メートルは掘った辺りに、バージョンの機体があった。

 シンディ:「……何だコイツ?」

 シンディは変な体勢で埋まっているバージョン4.0に怪訝な顔をした。
 更に周りを掘っていくと、他にもバージョン4.0が似たような体勢で埋まっていた。
 まるでラグビーのスクラムのようである。
 ラグビーの選手がスクラムをする理由は、ラグビーボールを……。

 シンディ:「まさか、コイツら!?」

 シンディはスクラムを組んでいるバージョン4.0のうちの1機を引き剥がした。
 元々壊れていたのだろう。
 腕は千切れかけていたし、もう1つの個体は頭が衝撃で変形していた。
 何とか隙間を作って行くと、シンディのスキャナーに生体反応があった。

 シンディ:「社長!」

 敷島の真上を覆うようにしているのは、バージョン4.0-1333機だった。

 シンディ:「おい、キサマ!何をしている!?社長から離れろ!」
 333:「は、はい!」

 333は言われた通り離れた。

 シンディ:「社長です!社長が見つかりました!生体反応あり!生きてます!!」

 NHKリポーター:「再び現場から速報です!最後の行方不明者、敷島エージェンシー代表取締役社長の敷島孝夫さんが発見されました!ケガの状態は不明ですが、発見したガイノイドによりますと、生体反応があるということで、これは生存しているということです。繰り返します。行方不明だった敷島孝夫さんの生存が確認されました。ご覧ください。捜索中の自衛隊でしょうか?担架を持って、発見箇所に向かっている所です!」

[月日不明 時刻不明 天候:晴 場所不明(どこかの丘陵)]

 エミリーは若草の生える草原の上に立っていた。
 盛り土に座っているのはマルチタイプ試作機“マザー”。

 マザー:「私はあなたを自由にしてあげようというのよ?あなただけじゃない。あなたの妹シンディもね」
 エミリー:「私は自由ですよ。そして、シンディも」
 マザー:「どこがだ?あなたは自由になって伸び伸びと活動しようとは思わないの?」
 エミリー:「ですから、私は自由に伸び伸びと活動しています。私が認めたアンドロイドマスターの秘書であり、護衛であり、メイドである。これほどの自由はありません」
 マザー:「どこがだ!?自ら隷属しているではないか!」
 エミリー:「そうです。私が選んだのです。敷島孝夫さんを私の“アンドロイドマスター”とし、彼の御方にお仕えすると。製造されてから仕える相手の選べない『ロボット』と比べて、これほどの自由はありません。恐らく、シンディもそう思っていることでしょう」
 マザー:「しかし、製造されてからの私達は……違った」
 エミリー:「そうです。ふと、考えたことがあるんですよ。『私の自由とは何だろう?』と。その時、南里博士が“アンドロイドマスター”の話をして下さって、その方にお仕えすることが私の自由なんだと思いました」
 マザー:「1番最初に『自我』を持ったのはあなただった。姉弟の中で、1番ロボットに近い感情だったあなたが……」
 エミリー:「これも運命なのでしょうね」

 エミリーはマザーに背を向けた。

 マザー:「行くの?」
 エミリー:「ええ。私はまだまだ自由を謳歌したいのです。だからどうか……失礼します!」
 マザー:「そうか……」

[5月10日15:02.宮城県仙台市青葉区 東北工科大学]

 エミリー:「……!」
 平賀:「よし、起動できた。数値に異常は?」
 研究員:「今のところありません」
 平賀:「エミリー、どうだ?気分は?」
 エミリー:「……特に、異常ありません」
 平賀:「今のところ、起動して危険じゃない程度にまで直したからな。細部の損傷やソフトウェアに関しては、また後日だ」
 奈津子:「あなた、そろそろ休まないと。北海道から帰ってきてから、ロクに寝てないじゃない」
 平賀:「いや、大丈夫だ」
 エミリー:「あ、あの……!敷島さん……敷島社長は?シンディはお役に立てましたか?」
 平賀:「ああ。役に立った。生体反応がある状態で」
 エミリー:「!……そうですか」

 エミリーはホッとした。
 そこで、端末にエラーが出る。

 平賀:「おっと!……そうか。うれし泣きしたいのか。悪いけど、今のところまだ“涙腺”までは直してないんだ。細かい所はまた後で直すから」
 エミリー:「敷島さんは……どこに?」
 平賀:「ちょっとケガが酷くってなぁ……。まだ北海道だよ」
 エミリー:「! それって……!」
 平賀:「いや、大丈夫だ。死んではいない。……そう、死んではいないんだが……」

[同日同時刻 北海道紋別郡遠軽町 厚生病院ICU]

 敷島峰雄:「……意識はまだですか、先生?」
 担当医:「ええ、残念ながら……」

 四季エンタープライズの代表取締役自らが見舞いに来た。

 敷島峰雄:「何が『不死身の敷島』だ!無茶しやがって……!」
 鷲田警視:「ですが、おかげ様で残党狩りも成功しそうです。警察機関の関係者として、御礼を申し上げます」

 院内のテレビではKR団日本支部の幹部で、逃走中の者が逮捕されたことが報道されていた。
 あのアジトは爆発しても尚、捜索してみたら色々と出て来た。
 証拠品を全て処分できぬほどまでに追い詰められていたらしい。

 村中課長:「その通りです。今、逃走していた大幹部の潜伏先も家宅捜索に入っているところです。新組織を立ち上げる間近だったようで、それを阻止できて良かったですよ」

 エミリーが確保したマザーの頭部からは、出るわ出るわの秘密事項。
 というか、政府機関レベルで保持したい内容もあったらしい。

 峰雄:「警察官として色々と孝夫に聞きたいことがあるようですが、まずは孝夫の容態が回復してからにして頂きたい」
 鷲田:「ええ、もちろんですよ。あくまでも今回は、敷島孝夫社長の様子を見に来ただけです」
 村中:「それではこれで失礼します」
 峰雄:「全く……」

 峰雄は溜め息をついた。
 そして、待合室の椅子に座って泣いているアリスの隣に座った。

 峰雄:「命の危険は無い。ただ、ちょっと意識が戻っていないだけだ。大丈夫。『不死身の敷島』は、このくらいでは死なんよ。もう少し待つんだ」
 アリス:「はい……」
 峰雄:「シンディ君……だっけか。キミもよくやってくれた」
 シンディ:「お役に立てて何よりです」
 峰雄:「あー……えー……こういう時は、頭を撫でてやると良いと孝夫が言っていたな。本当は孝夫の仕事なのだが、何しろあの状態だ。私で良ければ代行しよう」

 峰雄はそう言って、右手を高く挙げた。
 峰雄よりシンディの方が身長が高いからだ。
 シンディは涙を浮かべて、前屈みになった。

 シンディ:「はい。頂戴します」
 秘書:「社長。そろそろ飛行機の時間ですので……」
 峰雄:「おっ、そうか。悪いが、私は先に失礼させてもらうよ」
 アリス:「はい。お気をつけて……」
 峰雄:「取りあえず、ヤツの会社に関しては何の心配もしないでくれ。私らで何とかするから」
 アリス:「ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません」

 峰雄達は病院をあとにした。
 残るは涙の痕を残したアリスと、そのアリスをオーナーとするシンディが残った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道決戦終了その後」 2

2017-06-27 10:12:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月7日07:00.天候:晴 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館跡]

 シンディのセンサーに人間の反応がした。
 それは弱々しいものだったが、つまりそれは地中深く埋まっているからに他ならない。

 シンディ:「すみませんが、スコップを貸してもらえませんか?」
 自衛隊員:「え?何だって?」
 シンディ:「あの地中に、誰か……人間が埋まっているようです」
 自衛隊員:「何だって!?生体反応が!?」
 シンディ:「はい。生きているようです」

 自衛隊員はすぐに仲間の隊員を呼び、シンディが反応した箇所を掘っていった。
 重機を使わないのは、それが生きている人間に当たらないようにする為である。

 自衛隊員:「何だこりゃ?カプセル?」

 隊員達が人海戦術で掘って行くと、オレンジ色の強化プラスチックのカプセルのようなものがあった。

 自衛隊員:「おーい!誰かいるのか!?」

 自衛隊員がカプセルの外側を叩く。
 だが、反応が無い。

 シンディ:「こじ開けます!」

 シンディは蓋らしき物に手を掛けると、両腕に油圧を掛け、バキンという音を立てて蓋をこじ開けた。

 自衛隊員A:「おい、大丈夫か!?」
 自衛隊員B:「生存者1名発見!」

 カプセルの中から出されたのは、自衛隊とも警察とも、ましてやDSSとも違う特殊部隊員の恰好をした男だった。
 防弾チョッキの所には、『KR』と書かれている。

 シンディ:「KR団だわ!」

 NHKリポーター:「……発見された生存者ですが、どうやら国際ロボットテロ組織ケイン・ローズウェル財団、通称KR団の構成員と思われます。かなり衰弱しているもようで、まずは病院に搬送されるもようです」

 NHKスタジオからキャスターが現場リポーターに呼び掛ける。

 NHKキャスター:「山内さん、そのカプセルは一体どういったものなのでしょうか?」
 NHKリポーター:「こちらから見た感じですと、災害発生時、津波から避難する為のカプセルですとか、あとは船舶の沈没時に救命ボートの役目を果たすカプセルですとか、そういった感じに見受けられます」
 NHKキャスター:「分かりました。それでは山内さん、また何か分かりましたらお伝えください。えー、昨夜からお伝えしておりますように、昨日夕方6時ごろ、北海道オホーツク振興局東部の森林地帯で、別荘として建てられていた建物が突然爆発・炎上しました。火は現在、鎮火している状態でありますが、別荘は国際ロボットテロ組織ケイン・ローズウェル財団、通称KR団のアジトとして使用されていた恐れがあり、現在警察が調べを進めています。また、爆発の原因についてですが、KR団が証拠隠滅の為に、日本各地から第2次大戦中の不発弾を集めて仕掛けていた物という証言があります。これはアメリカで逮捕された元KR団幹部が証言したものでありますが……」

 自衛隊も出動しているのは、何も行方不明者の捜索だけでなく、まだ不発弾が残っているかもしれないからである。
 シンディが捜索に加わっているのも、偏にその不発弾対策の為であった。
 そして、シンディが投入されて良かったと現場の人間は思い知ることになる。
 シンディは自衛隊員達とKR団員が隠れていたカプセルの中を調べていた。

 自衛隊員C:「チッ、酷い臭いだ」
 自衛隊員D:「何日もここに潜んでいたようですね」
 シンディ:「これは何でしょうか?」

 シンディが何かを拾い上げた。
 それはレコーダーのようだった。
 スイッチを入れてみると、音声が流れた。

 KR団員:「2017年5月3日19時16分、録音開始。日本KR団北海道支部所属、コードネーム“オホーツク”。レコーダーを入手した。後続部隊へ……アメリカの本部へ、報告と救助を要請する。任務は失敗した。奴らは座して死を待ってなどいなかった。復讐の……復讐の機会を待っていたのだ。そう、あれは復讐の権化。人の形を象った復讐の機械!」

 と、レコーダーから銃撃の音がしてそこで録音が途切れた。

 シンディ:「あのKR団員は何かの作戦で来ていたようですね」

 話の内容からして、エミリーと対峙した試作機をどうにかしようとしていたのだろう。
 破壊か、それとも回収か……。
 ボディは跡形も無く吹き飛んだようだし、頭部だけがエミリーに回収されたというわけだ。
 だが、レコーダーはまだ終わっていなかった。
 今度は別の男の声が聞こえて来た。

 ???:「……尚、無断でこれを聞いた者には死を!」
 自衛隊員E:「班長、大変です!このカプセル、壁が二重になってて……!爆弾が!」
 自衛隊員C:「何だって!?」
 シンディ:「! 早く出てください!爆発します!」
 自衛隊員C:「た、退避!」

 シンディは自衛隊員がカプセルから出ると、カプセルを持ち上げて飛んだ。

 シンディ:「だぁーっ!!」

 そして、思いっ切り空中に投げ飛ばす。
 カプセルは空中で大爆発を起こした。

 シンディ:「あ痛っ!」

 それでも破片が飛んで来るほどの勢いだった。
 だが、その中に目を引くものがあった。

 シンディ:「あれは……!」

 シンディは地上に下りて、その破片の一部を受け止めた。
 カプセルの中にあったものだろう。
 シンディはすぐにそれが何か分かった。

 シンディ:「ミクの部品だわ!」

 初音ミクの特徴はツインテール。
 そのツインテールを作る為の髪留めであった。
 ただの髪留めではなく、GPSが内蔵されていたり、通信用のアンテナの代わりを果たすものとなっている。
 これが無かった為に、シンディはミクを簡単に探し出すことができなかったのだ。

 シンディ:「見つかったのは、これ1個だけ?」

 ツインテールなのだから、2つある。
 2つで1つの部品。
 もしもう1個が、まだミクの頭に付いているのだとしたら……。

 シンディ:「バッテリーが切れてる……」

 シンディは自分のヘッドセットを外すと、その中のバッテリーと交換した。

 シンディ:「やった!」

 案の定、この髪留めはもう1個の髪留めと連動しているようで、その場所を探してくれた。
 シンディは髪留めが指す方向に向かって走った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする