ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“戦う社長の物語” 「雨中行軍」

2018-06-30 22:05:36 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日13:00.天候:雨 宮城県栗原市花山 道の駅“路田里はなやま”]

 敷島達が昼食を終える前に雨が降り出して来た。
 どうやら廃坑で敷島達を遭難させようとした雷雲がここまでやってきたらしい。
 もっとも、ここでは雷鳴などは無かったが。

 敷島:「雷注意法が出てる。早いとこロイド達は車の中に移動させよう。また暴走されたらたまらん」
 アリス:「いや、もう大丈夫でしょ」

 昔の話だ。
 まだ敷島が南里研究所の事務員兼ボカロプロデューサーだった頃。
 今でもオプション装備として活用することがある超小型ジェットエンジンを南里が開発した。
 エミリーは飛行能力のデータ蓄積の為、しばらく空を飛んだり着陸したりの実験を行っていた。
 雷注意報が出ているにも関わらず飛行実験をしていたのだが、そこへ雷が直撃した。
 ボディなどに大きな損傷は無かったのだが、AIが狂気と化し、敷島を襲い始めた。
 南里の命令もガン無視である。
 これがきっかけで、外部からの制御装置を開発することにした。
 それが今、敷島達の持っている端末である。

 アリス:「本当にエミリーをトラップに掛けて止めたの?」
 敷島:「高圧電線に触れさせて、もう1度感電させた話?そうだよ。安全装置は付いていたもので、それでエミリーが強制停止したんだ」
 アリス:「よく壊れなかったねぇ……」

 もっとも、その無茶ぶりが前期型の寿命を縮めたのは否めない。
 最後に敷島が乗ろうとした時だった。
 敷島のスマホに着信があった。

 敷島:「何だ何だ?」

 画面を見ると、相手は鷲田になっていた。

 敷島:「はい、もしもし。どうしました、鷲田部長?」
 鷲田:「そっちにDCJの関係者がいるだろう?」
 敷島:「ええ、いますよ。2人」
 鷲田:「デイジーを誰に売ったか教えてもらえんか?」
 敷島:「それってつまり……?」
 鷲田:「デイジーを買い取った人間が1番怪しい。デイジー本体を見つけるより、買い取った人間を捕まえて締め上げて吐かせることにした」
 敷島:「平賀先生もアリスも研究職であって、営業職ではありませんから分かりませんよ」
 鷲田:「だったら、平賀教授だ。平賀教授はDCJの役員でもあるんだろう?」
 敷島:「外部執行役員ね」
 鷲田:「役員の権限で、私らに買い手の情報を伝えるよう、社員に命令を出してもらうように伝えてもらえるか?」
 敷島:「と、言いますと?」
 鷲田:「『顧客情報は一切明かせません』『令状無き捜査協力は致しません。捜査協力依頼書?ですから、任意には応じません。強制権を持ってきてください』の1点張りだ」
 敷島:「おお〜、さすが外資系。カッコいい!」
 鷲田:「アホか!」
 敷島:「デイライトグループの本場、アメリカには捜査機関がいくつもある理由が分かりますね」
 鷲田:「上司の命令とあらば聞くだろう。頼むよ」
 敷島:「分かりましたよ。私にもツテがあるので、聞いておきますよ」
 鷲田:「ほお?……分かった。じゃ、よろしく頼む。代わりに、今度のさいたまスーパーアリーナライブの時、駐車違反を見逃してやる」
 敷島:「そんなことしないし、警視庁と埼玉県警は違うでしょ!」

 敷島はピッと電話を切った。

 敷島:「全く、もう……」

 敷島は文句を言いながら、別の電話番号を探した。
 鏡音リンが降りて来る。

 リン:「しゃちょー、まだ出発しないの?」
 敷島:「ああ、ちょっと待っててくれ。急用が入った。今からちょっと電話しないといけないんだ」
 リン:「男?女?」
 敷島:「女だ。いいから、車に戻ってろ」
 リン:「はーい」

 リンは悪戯っぽい笑顔を浮かべると、車に戻った。

 シンディ:「こら、リン。今、雷注意報が出てるんだから、外に出ちゃダメでしょう」
 リン:「はーい」
 エミリー:「社長はどこへ電話されている?」
 リン:「女の人だって」
 アリス:「Huh!?」
 シンディ:「マスター、これはきっと……」
 リン:「不倫ふりーん♪」
 平賀:「いや、違うと思うけど……」
 アリス:「
 シンディ:「マスター、ちょっと行ってきます」
 アリス:「お願いね」

 シンディは車を降りた。

 エミリー:「シンディ、ちょっと待て」
 シンディ:「これは私のオーナーの命令なの!いくら姉さんでも黙っててくれる!?」
 エミリー:「いや、しかし……」

 シンディはつかつかと敷島の所へ歩いて行く。
 それでも仕方なく後ろを付いて行くのはエミリー。

 敷島:「はっはっはー!そうかそうか。じゃあ、今度土産話を聞きながら飯でも一緒に食おうか!」
 シンディ:「『仕事以外、勝手に女性と食事の約束』は不倫の対象である!」

 シンディは両目をギラリと光らせ、左手に電気を集めた。

 敷島:「うわっ!何だ、シンディ?!」
 シンディ:「仕事以外での女性との勝手な連絡は不倫と見なします!覚悟!!」
 敷島:「ちょっと待て!」
 シンディ:「問答無用!」
 エミリー:「いいから、待てって」

 エミリーはシンディを後ろから羽交い絞め。

 シンディ:「何するのよ!?」
 エミリー:「その前に確認しろ。お電話の相手はどちらですか?」
 敷島:「鳥柴主任だよ!DCJ成田営業所、営業主任の!営業所は違うかもしれんが、表向きは営業職だし、それに裏の仕事が仕事だから、それで調べられると思ったんだ!」
 シンディ:「……という言い訳の、鳥柴主任との不倫ですか。分かりました。覚悟!!」
 敷島:「いや、だから待て!」
 鳥柴:「何か、修羅場のようですね。敷島社長の御依頼は承りましたので、これで失礼致します。どうか、御無事で」
 敷島:「おい、何だその挨拶は!?シンディ、ちが、違うんだーっ!」

[同日14:00.天候:雨 宮城県栗原市志波姫 イオンスーパーセンター内セルフスタンド]

 リン:「車返すのに、わざわざ燃料入れるの?」
 敷島:「それが日本のレンタカーってもんだ。井辺君だって、ワンボックスやミニバン借りた時はそうしてただろ?」
 リン:「そうかもー」
 敷島:「レギュラー満タンで」
 村上:「せっかくじゃから、トイレを借りるとしよう」
 ロイ:「護衛します」

 敷島が給油しようとすると、また電話が鳴った。

 平賀:「敷島さん、自分がやりますよ」
 敷島:「平賀先生、すいません。……はい、もしもし」
 リン:「また女の人だYo?」
 シンディ:「いいから黙ってな」
 敷島:「……そうか。いや、さすがだな。DCグループのエージェントなだけある。じゃあ早速、この情報を鷲田警視に送っとくわ」

 敷島は電話を切った。

 平賀:「どうでした?」
 敷島:「デイジーを買い取った人物の住所が分かりましたよ。日本国内、それも都内です。これなら警視庁の刑事が堂々と捜査できるってもんです。早速、鷲田警視に送ってあげましょう」
 平賀:「敷島さん自身も、立派なエージェントさんですよ」

 平賀は呆れるやら感心するやらといった表情で、車の燃料を入れていた。
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“戦う社長の物語” 「ゲームだとクイックタイムイベント(QTE)が発生した件」

2018-06-29 19:12:36 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日11:30.天候:雨 宮城県栗原市郊外 廃坑入口]

 敷島:「……はい、そうです。エミリー達が一部始終を映像に記録していますので、これが何よりの証拠です」

 敷島は電話で東京の鷲田警視に連絡を取っていた。

 敷島:「……ええ。もちろん、銃火器は使用していませんよ。これも映像を観て頂ければ分かります。……分かりました。じゃあ、私達は帰京します。取り急ぎ、まずは映像だけを送信しておきますので。……はい。それでは、失礼します」

 敷島が電話している間、平賀がエミリーから送られて来た動画を鷲田に送信する作業を行っていた。

 平賀:「よし、送信っと」

 そんなことをしている間にエミリー達が戻って来た。

 村上:「おお、皆の衆。大儀であった」
 エミリー:「只今、戻りました」
 敷島:「お疲れさん、4人とも」
 鏡音レン:「ボク達は何もしていませんけど……」
 平賀:「しょうがない。想定内の事が起こったんだ。あのままお前達を進めるわけにはいかないさ。ですよね、敷島さん?」
 敷島:「その通り。それに、事件性ありと確定した以上、あとはもう警察に全て任せることになる。俺達の仕事はこれで終わりだ」
 シンディ:「結局、デイジーがいたかどうかは分かりませんでしたね」
 アリス:「アンタ達のレーダーでは?」
 シンディ:「捕捉できませんでした」
 平賀:「もしかしたら、デイジーが自分達を近づけない為の策だったのかもしれませんね。死体を発見した以上、民間人の自分達はもう動けないことを知って、わざと死体をあそこに置いたのだとしたら悪質です。しかも爆弾付きのヘルメットを被せておくなんて」
 村上:「解せんのは、山田君の行動じゃ。ロイドのお前達に死亡確認がされたというのに、あれではまるで……そう、ホラー映画のゾンビじゃ」
 敷島:「本当に死んでたんだよな?」
 シンディ:「ええ。体温も低かった上に、呼吸も脈拍も測定できませんでした。それ以前に、死後硬直が……」

 ズズン……!

 敷島:「ん!?」

 何か崩れる音がした。
 いつの間にか雨足が強くなっている。

 平賀:「敷島さん、一旦ここから待避しましょう。廃坑になってからロクに道の整備がされていなかったのでしょう。もしかすると、崩落の危険があります」
 敷島:「そ、それもそうですね。早く、車に乗ってください」

 敷島達は車に乗った。
 すぐに敷島がエンジンを掛けて、車を出す。
 一旦、バックして方向転換をしなければならない。
 と!

 敷島:「うわっ!?」

 車を止めていた所は崖っぷちであった。
 それが、急に強くなった雨足のせいで地盤が緩んでいたのだろう。
 後輪の部分が崩れ落ちた。

 敷島:「く、くそっ!」

 敷島は急いでギアをドライブに入れてアクセルを踏み込んだ。
 咄嗟の判断のおかげで車が落ちることは無かったが、かといって前にも進めなくなってしまった。
 このままではまた崩れて、今度こそ谷底へダイブとなるだろう。

 ロイ:「私が崖下に下りて、車を受け止めます!」
 鏡音リン:「さすがロイろい!自己犠牲!」

 ロイは車から飛び降りると、崖下に下りようとした。
 が!

 エミリー:「バカ!私達が車を前から引けば良いのだ!なに落ちる前提で行動している!!」
 鏡音レン:「そ、それもそうですよね」
 ロイ:「失礼しました!」

 ロイは言われた通りエミリーと2人で車の前に回り、車のバンパーを掴んだ。

 エミリー:「一気に引くぞ!」
 ロイ:「はい!」
 シンディ:「手ェ抜くんじゃないよ!姉さんに手間かけさせたら、シバき……!」

 シンディは助手席の窓からロイにハッパをかけた。
 だが、そんなシンディの髪をエミリーが掴んで引っ張る。

 エミリー:「お前が1番重いのだ。お前も降りろ」
 シンディ:「ゴ、ゴメンナサイ……」

 現時点におけるマルチタイプの自重、エミリーが120キロ、シンディが130キロ、ロイが100キロである。
 尚、リンとレンは50キロである。
 エミリーはシンディを引きずり降ろすと、再び車を引っ張った。

 敷島:「よし、上がれたぞ!さすがはエミリーだ!」
 村上:「ロイもよくやったぞい。最初の行動に問題はあるが……」
 エミリー:「お役に立てて何よりです」
 ロイ:「もっと学習させて頂きます……」

 敷島はエミリーとロイが乗り込んだのを確認すると、すぐに車を出した。

 敷島:「うわ、まるで洗い越しだな」
 シンディ:「まんま、洗い越しですね」

 洗い越しとは、道路を横切る川のことである。
 よくテレビなどで、大型のRV車(ハマーなど)が川の中をザブザブ進んで渡って行く映像を御覧になった方もいるだろう。
 それのことである。
 日本にも国道でありながら、そういった洗い越しのある所は今でも存在する。
 もちろん日本国内のそれは小川であり、テレビ映像のような大きな川ではない。
 しかし、天候状態の如何によっては【お察しください】。
 西日本では国道157号線(国道418号線と重複する区間)の岐阜県本巣市根尾黒津〜温見峠の間、東日本では国道352号線の福島県南会津郡の奥只見湖沿いにある。

 敷島:「天気が崩れるとは言っていたが、これほどとは……」
 村上:「山の天気は変わりやすいというからのぅ……」

 そして敷島達、何とか県道に復帰することができた。

 敷島:「ここまで来れば、もう安心だろう」

 そして、県道から今度は国道へと入った。

[同日12:00.天候:曇 宮城県栗原市(旧・栗原郡花山村村域) 道の駅“路田里はなやま”]

 敷島:「ちょうどお昼時なので、ここで休憩していきましょう」
 村上:「うむ。そうじゃな」

 駐車場に車を止める。

 敷島:「じゃあ、俺達は昼飯食って来るから」
 リン:「行ってらっしゃーい!」(^_^)/~
 村上:「『自然薯の館』とな?」
 平賀:「自然薯が名物みたいですよ」
 敷島:「アリスにとろろ芋が食えるかな?」( ̄ー ̄)
 アリス:「Tororo-Imo?」(・・?

 人間達が道の駅のレストランに向かったのを見届けるロイド達。

 リン:「レン、ヒマだからゲームでもしようYo〜」
 レン:「それしか無いね」

 ボーカロイド姉弟はPSPを取り出した。
 エミリーとシンディは車から降りて、周囲の警戒に当たる。

 シンディ:「デイジーのヤツ、本当に仕掛けて来たのかしら?」
 エミリー:「分からない。だけど、実は本当はもっとあの坑道を探索した方が良かったのかもしれない」
 ロイ:「真相に近づく為には、エミリー様の仰る通りだったと思います。ですが、安全性となると……」

 山の方を見ると、どんよりとした雲が空を覆っていた。
 この辺はまだ雨が降っていないが、敷島達を逃がした雨雲が今追い掛けて来ている最中なのだろう。
 そして恐らく、再び敷島達は雨に捕まることになるだろう。

 エミリー:「土砂災害に巻き込まれた恐れがある。確かに社長達の安全無くして、探索を続けるわけにはいかない」
 シンディ:「そうね……」

 それにしても、とエミリーは思う。

 エミリー:(あの時、坑道の奥にいたのは誰だったのだろう?他の犠牲者だったのだろうか……)
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“戦う社長の物語” 「戦闘開始」

2018-06-27 19:22:02 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日10:32.天候:曇 宮城県栗原市郊外 某廃坑]

 エミリーら4機のロイドが廃坑の入口に辿り着く。

 エミリー:「エレベーターがある」

 恐らくそれは採掘現場へ作業員達を運ぶエレベーターだろう。
 しかし今は廃坑。
 当然ながら動いているわけがない。

 シンディ:「調査チームの人達はどこに行ったの!?」

 ここまで来る間に、1人の人間とも会わなかった。

 エミリー:「エレベーターを調べてみよう」

 エミリーはエレベーターの周りを調べてみた。
 坑道へ向かうエレベーターであり、オフィスビルやホテルのそれのような装飾などがされているわけがない。

 鏡音リン:「ねぇ、これ見て!」

 リンが何かを見つけたようだ。
 エミリー達が駆け寄ると、それは分電盤だった。
 ケーブルが途中から千切れている。
 そのケーブルを辿って行くと、それはエレベーターに通じているようだった。

 シンディ:「姉さん、このケーブル、まだ新しいわ。廃坑なのにおかしいよね?」
 エミリー:「確かに……」
 鏡音レン:「もしかして、バッテリーか何かと接続されていたんじゃない?」
 シンディ:「バッテリーかぁ……」
 エミリー:「そのようなもの、どこにも……」

 エミリーが怪訝な顔をしかかった時だった。

 黒いロボット:「Ho!Ho!Hooooooo!!」

 壁をブチ破って、1機の黒いロボットが飛び込んで来た。

 レン:「うわっ、出た!!」
 シンディ:「あんた達は下がってな!」
 エミリー:「でやぁーっ!」

 銃器の装備が許されていないマルチタイプ達。
 こういう時、近接戦が得意なのはエミリーである。
 エミリーは黒いロボットにエルボーをお見舞いし、そしてそのボディを石の床に叩き付けてやった。
 黒いロボットは抵抗する間も無く、体をバラバラにされた。

 シンディ:「さすが姉さん!」
 エミリー:「こんなの楽勝だ」

 その時、エミリーはあることに気づいた。
 黒いロボットは背中にバッテリーを搭載している。
 エミリーの攻撃では、黒いロボットは前から地面に叩き付けられて壊れた。
 つまり、背中のバッテリーは無事だ。

 エミリー:「これを取り外せ!」
 シンディ:「姉さん?」
 エミリー:「これをエレベーターのバッテリー代わりに使う!」
 レン:「なるほど、そうか!」

 ロイド達は黒いロボットからバッテリーを取り外すと、それをケーブルに接続した。
 等身大のロボット1機を稼働させるほどのバッテリーである。
 エレベーター1機も稼働させることができた。

 エミリー:「よし、これで行こう」

 エミリー達はエレベーターに乗り込んだ。

 その様子はエミリー達の『目』を通して、地上の敷島達の端末にも映し出されていた。

 敷島:「あの黒いロボットだ!」
 アリス:「でもこの前、富士山の地下で見た奴らとは少し違うわ」
 敷島:「どういうことだ?」
 アリス:「『ざびざび』と喋ってたのに、今は『Ho!』よ」
 敷島:「それ、大きな違いか?」
 平賀:「大きな違いかもしれませんね」
 敷島:「平賀先生」
 平賀:「これは富士の地下で撮影された黒いロボットの画像ですが、これと細部が違います。もしかしたら、マイナーチェンジかもしれません」
 敷島:「マイナーでもメジャーでも、今のエミリーの攻撃を見る限り、取るに足らない相手であることは分かりましたよ。とにかく、彼女らを信じるしか無いですね。……お、地下に着いたぞ」

 ガラガラと扉が開く。
 もちろん手動式で、開けたのはシンディだが。

 敷島:「あっ!」
 平賀:「ああっ!?」
 アリス:「What!?」
 村上:「何と!?」

 そこで人間達はある光景に驚く。

 敷島:「誰かいる!」
 平賀:「誰か倒れてる!」
 アリス:「そういえば、戻りのエレベーターのバッテリーどうすんのよ!?」
 村上:「廃坑なのに照明が点いとるぞ!?」

 敷島と平賀はともかく、残る2人の反応が……。
 もちろん、ロイド達は倒れている人間に駆け寄った。

 エミリー:「大丈夫ですか!?」

 うつ伏せに倒れている人間をエミリーは揺り起こした。
 シンディは生命反応を確認する。

 シンディ:「マスター!生命反応無し!死亡しています!」
 村上:「何じゃと!?それは誰じゃ!?至急、身元を確認せい!」
 シンディ:「了解!」

 エミリーは死亡者の遺体を仰向けにした。
 まるで鉱山の作業員みたいな感じに見えるのは、服装が作業服にヘルメットを被っているからか。

 村上:「あ、あれは……山田君!くくく……!何と痛ましい……!」
 ロイ:「博士……」
 敷島:「エミリー、シンディ。一旦、戻ってきてくれ。その遺体を取りあえず回収しよう」
 エミリー:「了解しました」
 シンディ:「かしこまりました」

 エミリーが山田という男の遺体を抱え起こした時だった。
 ピピピという電子アラーム音が聞こえた。

 エミリー:「!?」
 シンディ:「なに?」

 それは山田のヘルメットから聞こえて来るようだった。
 ヘルメットに何か仕掛けがある?
 と、その時だった。

 山田:「ウガァーッ!!」

 突然、山田の目が開くとそれがエミリーに掴みかかった。

 敷島:「なっ!?し、死体が起きた!?」
 平賀:「どうなってる!?」
 アリス:「ホラーだわ!」
 村上:「山田君!やめるんじゃ!」

 ピピピピピピというアラーム音が響く。
 これはまるでJRの防護無線のあの音だ。

 シンディ:「姉さん、爆発する!」
 エミリー:「うっ!くっ!」

 エミリーは山田を引き剥がし、蹴りを入れた。
 山田はよろよろと壁にぶつかった。
 と、同時にヘルメットが爆発した。

 アリス:「うっ……!」

 アリスは目を背けて吐き気を堪える。

 村上:「い、一体どうなっとるんじゃ!?」

 爆発の威力は意外に大きく、もしもエミリーがあのまま組みつかれたままだったとしたら、大損傷していたことだろう。

 ロイ:「博士!あのヘルメットは調査チームの所有しているものではありません!」
 博士:「なにぃ!?」
 敷島:「エミリー達、一旦戻れ!作戦の練り直しだ!」
 エミリー:「了解!」

 エミリー達はエレベーターに急いだ。
 こういう時、よく映画ではエレベーターが動かず、仕方なく奥へ進むことになる展開だったり、エレベーターが来る前に敵が集団で襲ってきて、それを殲滅しなくではならない展開になると思う。
 だが、ここではちゃんとエレベーターは来たし、敵が襲来してくることも無かった。

 エミリー:「早く乗れ!」

 エミリーは辺りを警戒しながら、先に3人を乗せ、自分は後から乗った。
 そして蛇腹式の鉄扉を閉めると、シンディが上に行く為のボタンを押した。
 ガコンという音がして、エレベーターが再び地上へと戻って行く。
 といっても坑道用のエレベーターだ。
 オフィスビルやホテルのそれと違い、速度は遅いものである。

 エミリー:「!?」

 ゆっくりと上昇するエレベーター。
 地下の坑道の奥に、エミリーは何かを見たような気がした。
 しかしそれは照明が背後から照らされ、しかも戦闘で巻き起こった砂埃により、シルエットでしか見えなかったのである。
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“戦う社長の物語” 「廃坑入口」

2018-06-27 10:36:41 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日09:58.天候:曇 宮城県栗原市郊外 某廃坑]

 くりこま高原駅から西に1時間ほど車で走った。
 駅前のレンタカーで借りたワンボックス(日産・キャラバン)に乗り込んで、現場に向かっている。

 敷島:「曇って来たなぁ……。また雨かな」

 ハンドルを握る敷島が呟いた。

 エミリー:「梅雨時ですからね」

 助手席のエミリーが答えた。

 平賀:「村上先生、調査チームはこんな山奥に?」
 村上:「うむ。レーダーを受信した時、グーグルマップで調べてみたのじゃが、どうも鉱山の中らしいな」
 平賀:「鉱山!?……確かに、この辺りは昔、鉱山がありましたが、今はもう地質調査用を除いて全て廃坑になっているはずでは?」
 村上:「うむ。その中には“細倉マインパーク”のように観光坑道として再生した所もあるが、中にはもう手つかずの廃墟のようになってしまった所もあるわけじゃな。デイジーのヤツ、そこを目ざとく見つけたようじゃ」
 平賀:「……か、或いはそこを見つけた第三者がデイジーを隠す場所にしたか」
 村上:「うむ。……あ、敷島社長、そこを左じゃ」
 敷島:「はい」

 敷島は言われた通り、ハンドルを切った。

 敷島:「うわ、舗装が無くなった。県道から一気に林道に入った気分」
 シンディ:「前期型の私を思い出すわね……」
 鏡音レン:「ボクの首を引っこ抜いた時かい?確かにあの時も宮城県北部の山の中だったね」
 シンディ:「そうね……」

 ドクター・ウィリーは表立って活躍するようになったボーカロイドをどういうわけだか忌々しく思ったようだ。
 ライバル視していた南里志郎の開発したロイドが活躍することに、何か腹が立ったのだろう。
 前期型のシンディに命じて、ボーカロイドの破壊をさせたことがある。
 その時、レンを拉致して首と胴体を引きちぎったことがあった。
 如何にボーカロイドでも、そんなことされたら壊れるのが普通だ。
 しかし、レンは壊れなかった。
 それもそのはず。
 レンだけがそういう改造をされていたからだ。
 別に、何もシンディにそんなことをされることを予想していたわけではない。
 たまたまミュージカルで中世ヨーロッパが舞台のものにメインキャラクターとして出演することが決まり、レンはギロチンで首を刎ねられるシーンがあったので、そういう改造をされただけである。
 レンも強かなもので、シンディに首と胴体を引きちぎられた後も壊れたフリをして誤魔化した。

 ※上記エピソードは未公開です。

 敷島:「ん?あれは……」

 しばらくして錆びついた鉄門が見えてきた。
 そして、その横にはミニバンが2台ほど止まっていた。

 村上:「おお、間違いない。調査チームはやはりちゃんと辿り着けていたのじゃ」

 鉄門は少し開いていて、そこから入ったのが分かった。
 敷島は車をそのミニバンの横に止めた。

 村上:「中に入ったじゃと?この中にデイジーがいるのは間違い無いのなら、ここまでのルートを把握するだけで良いと言ったのに……」
 敷島:「エミリー、シンディ、スキャンできるか?」
 エミリー:「ここからではちょっと無理です」
 シンディ:「実際に中に入らないと分からないわ」
 敷島:「分かった。今、進入の準備をしよう」
 平賀:「敷島さん、警察に連絡しなくていいんですか?」
 敷島:「鷲田警視に?おおかた、『廃坑に侵入しただと?よし、建造物侵入の容疑で逮捕だ』とか言うだけだからいいです」
 平賀:「www」
 村上:「まあ……いざとなったら、ワシの知り合いが地元の弁護士会の顧問をやっているから、そこから弁護士を頼めば良い」
 敷島:「よろしくお願いします」

 アリスやロイド達が廃坑に入る為の準備をする中、平賀は無人の車内を覗き込んでみる。

 平賀:「鍵は付いてるか……」

 止まっているミニバンのうち、1台の運転席のドアを開けてみる。

 平賀:「特に変わった所は無いか……」

 エミリーのスキャンでも、生体反応も金属反応も無いそうだ。

 平賀:「それにしても妙ですね」
 敷島:「先生もそう思いますか?」
 平賀:「ええ。調査チームは村上先生から、あれほど『中に入るな』と言われていたんです。それなのに……」
 村上:「まだ20代の若者達じゃ。つい、好奇心に駆られてしまったのじゃろう」
 平賀:「ですが、全員いなくなるなんて……。調査チームは全部で12人ですね?確かに好奇心に駆られて入りたがる者も出たでしょうが、中には頑なに進入を拒む者もいたはずです。その者達が残っていても良さそうなのに、全員いなくなるなんて不自然ですよ」
 敷島:「それもそうですね。しかも、そういったことを連絡して来なかったんですよね?進入反対派は」
 村上:「うむ……」
 敷島:「つまり、こういうことか。『進入反対派ですら、進入したくなるようなことが起きた』あるいは、『進入せざるを得ない状況に陥った』」
 平賀:「もっとありますよ。『SOSを発進する間もなく、全員が坑内に拉致された』」
 敷島:「! ケーサツ呼びますか?」
 村上:「いや、どちらかというと敷島社長の仮説のような状況じゃったのではないか?」
 平賀:「どういうことですか?」
 村上:「もしも平賀君の言うような状況が発生したのじゃとしたら、もっとこの辺が荒れていると思わんか?」
 平賀:「あ……!」
 敷島:「坑内から『黒いロボット』やデイジーそのものがやってきて、彼らを襲ったのだとしたら、確かにそうですよね。車だって壊れているだろうし、抵抗して殺された者の死体も転がっているかもしれない」
 村上:「死体に関しては後で処分すればいいじゃろう。しかし……周りに争った形跡が全く無い」
 平賀:「確かに……」

 もう1台の車も調べてみたが、こちらも特に目ぼしい物は見つからなかった。

 敷島:「進入前に鷲田警視に連絡だけしておくか」

 敷島は自分のスマホを取り出した。

 敷島:「……というわけで、調査チームは全員行方不明です」
 鷲田:「分かった。こちらも県警に連絡しておく。気をつけて調査に当たってくれ」
 敷島:「分かりました」
 鷲田:「あくまでも行方不明者の捜索と、場合によっては人命救助だ。それ以外は警察で行うから、その辺を忘れるんじゃないぞ?」
 敷島:「分かりました」

 敷島は電話を切った。

 敷島:「よし、部長の許可が出たぞ。準備はいいか?」
 エミリー:「はい、万端です」
 シンディ:「同じく」
 鏡音リン:「オッケーだYo!」
 レン:「はい、大丈夫です!」
 敷島:「よし。じゃ、気をつけて行け!」

 マルチタイプ2機とボーカロイド2機は、坑内へと進入した。
 残った人間4人と執事ロイド1機は、鉄門の外で待つ。
 もちろん、それぞれ端末を手に、マルチタイプから送られてくる映像を確認する。

 平賀:「すぐに見つかるといいですね」
 敷島:「ええ。ですが、私の見立ててでは、そうは問屋が卸さないと思いますよ」
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“戦う社長の物語” 「くりこま高原駅」

2018-06-25 19:12:06 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日08:00.天候:晴 JR東北新幹線“やまびこ”41号9号車内]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、古川に止まります〕

 朝一の下り列車が仙台市内を走行する。
 仙台からは既にそこ始発の下り列車が出ている為、もうこの列車は初電ではなくなる。

 敷島:「ここから平賀先生が乗って来るはすだ。……おい、リン。そろそろ席を空けとけ」

 敷島は平賀の席に座っているリンに言った。

 鏡音リン:「ぶ、ラジャー!」

 リンはパッと立ち上がると、自分の席に戻った。

 敷島:「人の席に座りたがる奴らだな」
 シンディ:「この前、社長の椅子に座ろうとしていたので、すぐに注意しておきましたけどね」
 敷島:「それでか。俺の執務室のドアの鍵だけ、やたら厳重になってたの」
 シンディ:「そういうことです」
 エミリー:「オマエの電子キー設定のせいで、私まで入れなくなっていたぞ?」
 シンディ:「ゴメンナサーイ!」
 敷島:「それでか!エミリーがドアの修理していたの!」

 どうやらエミリーがマルチタイプ特有の腕力でこじ開けたようである。

 アリス:「面白い会社ね」
 リン:「博士も遊びに来てよー!」
 鏡音レン:「歓迎しますよ」
 アリス:「そうしたいけど、アタシも忙しくてねー」

 そう話しているうちに列車は大きく揺れて、下り副線の11番線に到着した。

〔「仙台に到着です。仙台から先は、終点盛岡まで各駅に停車致します。……」〕

 仙台駅で降車する乗客は多い。
 だが、乗車客もそれなりにいる。
 その中の1人に平賀がいた。

 敷島:「平賀先生、おはようございます」
 平賀:「敷島さん、おはようございます」
 村上:「これで、全員集合じゃの」
 敷島:「そうですね。どうぞ、平賀先生。この席です」
 平賀:「どうもどうも。……ん?温かい?」
 敷島:「ああ。さっきまでそこにリンが座ってたもんで……」

 敷島がそんなことを言っていると、タタタッとリンがやってきた。

 リン:「殿!温めておきました!」
 平賀:「ああ……うん。サンクス」
 敷島:「そりゃ反応に困りますよね」

 発車の時間が迫り、ホームからオリジナルの発車メロディが聞こえて来る。

 平賀:「あれから何か状況は変わりましたか?」
 村上:「全然。情報なし、手掛かりなし、皆無じゃ」
 平賀:「じゃ、どうするんですか?」

 ピー!という客終合図が聞こえてくる。

 村上:「取りあえず、彼らが今どこにいるかは分かっておる。そこに向かうしか無いじゃろう」

 少し揺れて列車が走り出した。

 平賀:「罠の可能性は?」
 敷島:「先生。私達にその予見は不要ですよ。迷ったらとにかく行動です」
 村上:「敷島社長の言う通り。もし仮に平賀君の言う罠じゃったとしたら、尚更先遣隊が危険な目に遭っとるということじゃないか。人命救助に、迷っているヒマは無いぞ」
 平賀:「それはそうですが……」
 敷島:「もちろん、実際に探索を行うのはロイド達です。私達は安全な場所を確保して、そこから見ていればいい」
 エミリー:「お任せください」
 シンディ:「任務遂行が最優先です」
 ロイ:「その通りです!」
 シンディ:「オマエは残って、博士達の護衛でもしてな」
 ロイ:「そんな、御無体な!」
 村上:「いや、まあ、そこは……シンディの言う通りじゃな。スマンが、それで頼む」
 ロイ:「博士がそう仰るのでしたら……」

 ロイは渋々応じた。

[同日08:27.天候:曇 宮城県栗原市 JRくりこま高原駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、くりこま高原です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。くりこま高原の次は、一ノ関に止まります〕

 車窓には田園風景が広がるが、ようやく大型のショッピングモールなどが見え始めた頃に放送が流れた。
 ぐんぐん列車は速度を落として行く。

 村上:「調査チームもまた、この駅で降りたはずなんじゃよ」
 敷島:「なるほど」

 列車がホームに停車する。
 東北新幹線開通時には開業しておらず、後付けで設置した駅の為、ホームは狭い。
 通過線が無い為に、この駅には早くからホームドアが設置されていた。

〔くりこま高原、くりこま高原です。ご乗車、ありがとうございました〕

 敷島達はホームに降りた。

 敷島:「新幹線にはよくお世話になってるが、この駅を利用したのは初めてだな……」
 アリス:「そうね」

 エミリーとシンディが大きなスーツケースを両手に降りて来た。
 因みに平賀も持っている。

 ロイ:「平賀教授、お持ちしましょう」
 平賀:「あっ?……ああ、すまない」

 ロイはヒョイと人間なら重たいスーツケースを簡単に持ち上げた。
 中身はもちろん、平賀が開発したサブウェポンである。

 敷島:「途中で職質されたら、間違い無くタイーホだな」
 平賀:「えっ!?国家公安委員会の許可を取って来たんじゃ!?」
 敷島:「禁止事項にサブウェポンが入っていなかったから、まあいいかと思いまして……」
 平賀:「……相変わらず、敷島さんの度胸にはヒヤヒヤさせられますよ」
 敷島:「どうもすいません」
 村上:「それで、ワシらはこれからどうやって行けばいいのかね?言っておくが、調査チームは駅近にいるわけではないぞ?」
 敷島:「分かってますよ。ちゃんとレンタカーを予約しています。こっちです」
 村上:「それならいいがな」

 ホームは高架上にあるが、改札口は地上にある。
 いかに新幹線の駅と言えど、1時間に1本しか列車が止まらない小さな駅である為、まるで在来線の駅のような雰囲気だ。

 敷島:「それじゃ、私はレンタカーの手続きをしてきますので……」
 村上:「うむ。よろしく頼む」
 平賀:「敷島さん、自分も行きますよ」

 まずは、現地に向かう為の足となる車を確保することから始まる。
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