ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“ユタと愉快な仲間たち” 「多摩先生の原案」編

2014-05-31 19:33:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 ※私のオリジナルでは屋敷の地下室に避難していたマリアを訪ねて来たのは、マリアが使役しているミク人形でしたが、多摩先生の原案だとこうなります。

[5月31日02:00.長野県某所にあるマリアの屋敷 地下室 マリアンナ・ベルゼ・スカーレット]

 今現在動かせる人形は2体。
 それほどまでに低下した魔力を回復させるのは容易なことではない。
 ミク人形とフランス人形1体だけが、広い屋敷を徘徊するように歩き回って侵入者の警戒に当たってる。
 屋敷の主人たる魔道師の師匠イリーナからは、マリアの命を狙う者がいるということで、魔力が回復するまではなるべく地下室に避難しているように通達されていた。
 常時10体の精鋭たる人形を操れただけに、たった2体では心許ない。

 どうしてこんなことになったのか。
 イリーナの予知夢はよく当たる。そして、ユタの予知夢も確率が高い。
 その2人が同時に、自分が死ぬ夢を見たからだという。
 イリーナ曰く、順番的にイリーナの予知夢の内容が早そうだから、それを回避すればユタの夢の内容も回避できるだろうという。
 師匠にケチをつけるわけではないが、そんな簡単な話なのだろうか。

 その時、地下室のドアが開いた。

 入ってきたのは……。

「マリア、いい子にしてた?」
「師匠?どうしたんですか?こんな時間に……」
「緊急事態よ。すぐにこの屋敷を出て」
「緊急事態?でも、ここにいた方が安全だって……」
「事情が変わったの。急いで!」
「は、はい」
 マリアは地下室から外に出た。
 昼も夜も基本は地下室にいなければならなくなったのだから、久しぶりに地上に出るとまだ邸内とはいえ解放感がある。
「一体、何があったんですか?」
「鬼族が動き出したみたい。あなたの命を狙って、この屋敷に向かってる。そうなる前にここを出ましょう。妖狐達が対策に乗り出してるから、ユウタ君達と合流するのがベストね」
「なるほど」
 2人の魔道師は屋敷の玄関までやってきた。
「内側からはあなたの魔法でしか開かないようにしているから、あなたが開けて」
「はい」
 マリアは自分の杖を持ち、ドアに向けて、開錠の呪文を唱えた。
「一時開錠です。ドアを1度開けてまた閉めたら、ロックが掛かります」
「外の安全を確認してね」
「はい」
 マリアは玄関のドアを開けて、外を確認をした。
「師匠、外には誰も……」

 ドスッ……!

「え……?」
 突然背中に痛みが走る。
 振り向くと、
「師匠……?どうし……て……?」
 力が抜け、床に崩れ落ちるマリア。
 辛うじて保てた意識を持って師匠だった者を見上げる。
 その姿は、師匠のイリーナではなかった。
 赤毛が特徴の師匠ではなく、髪も服装も黒い女……。
 それは自分の感情が高ぶり、相手に『復讐』をする時に浮かべるものと同じ“狂った笑い”を浮かべていた。
「あなたは……!?」
「ポーリン先生!エレーナはやりました!あなたの愛弟子、エレーナ・マーロンは見事やり遂げたのです!はは……はははははははは!!」
 エレーナ・マーロン?
 どこかで聞いたことがあるような名前に、マリアは聞こえた。
「死ぬがいい!『裏切りの魔道師』イリーナ・レヴィア・ブリジッドの手下よ!」
 ポーリンという名前は聞いたことがある。
 確か、師匠が修行時代に一緒に修行していた姉弟子の……。
 ポーリンの弟子だというエレーナと名乗る女は、何度もマリアの胸にナイフを突き刺した。

(ユウタ君、ごめんね……)

 これが最後に心の中でつぶやいたマリアの言葉だった。

[同日03:00.マリアの屋敷付近 蓬莱山鬼之助]

「鬼之助さん、こんな所に魔道師の屋敷が?」
 鬼之助は数十名の手勢を連れ、マリアの屋敷に向かっていた。
「おう、そうだ。奴らは今、他の魔道師と抗争中だって話だから、やるなら今だと思う。が、もしかしたら裏を掛かれてるかもしれねぇ。だから一応、警戒しておけよ?一応な」
「はい」
 鬼之助は鬱蒼とした木々をかき分けた。
「んで、調査報告によると、場所はあの辺……おおっ、あった!」
「マジですか」
「いきなり現れるもんですなぁ……」
「よし。いきなり攻め込んで罠が待ってるかもしれねぇ。誰かちょっと様子を見てこい」
「へい。アッシが」
「藪鬼(やぶき)か。頼むぜ」
 藪鬼と名乗る小柄な体型の赤鬼は、そのイメージ通り、すばしっこい行動で屋敷に向かって行った。
 その間、他の手勢達は小休止に入る。
「あんまり月が見当たりませんな?」
 1人の部下が鬼之助に話し掛けた。
「ほんの数日前まで、新月だったからな。現れたとしても、ほんの僅かしか顔を出すこたぁねぇさ」
 と、そこへ、別の部下が、
「鬼之助さん!姐さん(美鬼のこと)にばれたようです。鬼門の左右と直属鬼女隊を連れて、こちらに向かっているとの情報が入りました!」
「ちっ!いちいちうるせーんだよ、姉貴はよォ……。こりゃ、のんびりもしてられねぇな。藪鬼が戻り次第、決行するぜ」

 しばらくして藪鬼が血相を変えて戻って来た。
「鬼之助さん、大変です!」
「なにっ?やっぱり迎撃準備万端か?くそっ、世の中そう甘くはねぇか!」
「いや、それが……対象のマリアンナ魔道師が死んでました!」
「はあ!?」

[同日03:30.マリアの屋敷、玄関前 蓬莱山鬼之助]

「うっ!こ、こりゃ……!?」
 無残なマリアの死体を発見した鬼之助。
「マジで死んでる」
「見たところ、刃物で背中や胸を何ヶ所も刺されております。死因はそれによる失血死かと」
 藪鬼が片膝をついて報告していた。
「おいおい、マジかよ!誰がやったんだ!?こっちはわざわざ長野くんだりだったのによ!」
「分かりませんが……」
「とにかくアレだ!」
 鬼之助は自分の妖刀を抜いた。
 そして既に死体と化しているマリアの首を刎ねた。
「こいつを手土産に持って行く!首桶を持ってこい!」
「ははっ!」
 部下の1人が首桶を持って来る。
「あとの者は屋敷内を検索しろ!誰もいなかったら、この屋敷を火を放つ!」
「ははっ!」
「早くしろ!夜が明ける前に!」
「ははっ!」
 部下達は邸内に散って行った。

[同日05:30.さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ]

 ユタはいつもの通り、朝の勤行を行っていた。
 だが、仏間の外はいつもと違う雰囲気が漂っていた。

[同日06:00.同場所 稲生ユウタ]

 外の騒がしさに負けず、何とか朝の勤行を終えた。
「一体、何なんだよ?」
 ユタは仏間を出ると、つかつかとリビングに向けた。
「いや、だからこっちも何も知らん!」
「情報をすぐに集めろ!そうだ!幻想郷側にも協力を求めて構わん!」
 家の固定電話とカンジの携帯電話がひっきり無しに鳴り響いていた。
「これは一体……!?」
 固定電話の方の対応に当たっていた威吹が、ユタに気付く。
「ユタ、すまん!今日の添書登山は中止にしてくれ!大変なことが起きた!」
「大変なことって?」
「マリアと鬼之助が殺された!」
「はあ!?」
「鬼之助がマリアを殺しに、手勢を引き連れて屋敷に向かったそうだ。その後、その屋敷に隕石が落ちて……!」
 威吹はリビングのテレビを点けた。
 そこでは既に長野県に隕石が落ち、山1つ消し飛んだことが報道されていた。
 また固定電話が鳴る。
「……まだ亡骸の回収ができたとの報告は入っていない。というか、山1つ消し飛んだ状態ではムリだ!」
「幻想郷側に影響が出ているとの噂もある。向こう側の王国が動き出す恐れが……」
「そ、そんな……」
 威吹とカンジの電話のやり取り、そしてテレビに映し出される地獄絵図のような大規模な山林火災。
 封鎖された県道から、生々しいリポートを行うリポーター。
 その県道は、前にマリアの屋敷に向かう時、駅から乗った1日2本しか無いバスが走る道路だった。

 その時、ユタのケータイに着信があった。
 それは藤谷からだった。
{「ああ、稲生君、朝早くから悪いな」}
「いえ……」
{「今さっき、栗原さんと合流した」}
「確か栗原さんは、ずっとキノの家にいるはずですが……」
{「帰されたんだよ。もうキノが死にやがって、何の利害も無くなったから。全く。勝手な連中だよなぁ……」}
「キノが死んだのは本当なんですか?」
{「ああ。魔道師を襲撃に行ったら、隕石が落ちて来て、直撃を食らったらしいな。生き残った部下が証言したっていうから、間違い無いだろうさ」}
「あの、マリアさんは?」
{「……あいにくと、キノに殺されたらしい。その部下は首桶を持っていたらしいんだ。ほら、戦国時代に敵の武将の首を刎ねた後、それを運んだり保管したりする桶のことだよ。威吹なら知ってるんじゃないか?……その中に、マリアの首が入っていたらしいぜ。栗原さんもショックで口が利けなくなっちまった。さっき、キノのお姉さんって人から一通り聞いてさ。取りあえず、栗原さんは地元の大病院にしばらく入院ってとこだな。……稲生君?」}
「うう……うわあああああああああっ!!」
 突然のユタの号泣に、電話応対に忙殺されていた2人の妖狐がユタを見た。
「ユタ、しっかりして。こりゃもうダメだよ。仏法なんぞやってても幸せにはなれないってことさ。仏にすがる時間があったら、もっと安全な所に避難させるべきだったんだ」

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 何だよ、これ。
 多摩先生もひでぇな。
 稲生ユウタはもちろんのこと、栗原江蓮もついでに不幸になってんじゃんよ。
 で、最後の威吹のセリフが、正にアンチ日蓮正宗の先生の言いたいことか……。

 とてもじゃないが、私の作風には合いません。
 え?もっとこの後続きがあるだろって?
 ええ、ありますよ。だけど、とても御紹介できませんって。
 ほら、31日ってユタが添書登山に行く設定でしょ?
 私の作品では威吹が同行して、更にケンショーレンジャーが登場したりしたけど、多摩先生の原案ではユタは単独で登山する。
 すると、何がどうなるかっていうと、エレーナを倒すヤツがいなくなるんだよ。
 てことは、御開扉の際に、扉が開かないままになって御開扉は中止。
 エレーナは手持ちのスイッチを押しちゃって、大御本尊を……これ以上は言えません。

 と、とにかく明日、多摩先生と直接交渉に入ります。
 明日、更新できるといいけど……。というか、ブログ自体潰されなきゃいいけど……。
コメント (5)

“ユタと愉快な仲間たち” 「時を超える魔道師」

2014-05-31 15:17:51 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月31日17:15.大石寺・第2ターミナル 稲生ユウタ、威吹邪甲、マリアンナ・ベルゼ・スカーレット]

「え?ここでお別れですか?」
「ああ。本当はもう少し一緒にいたいんだけど、師匠と合流しないと……」
 マリアも少し残念そうな顔をした。
「何でも、拠点たる屋敷の再建をしなければならないそうだ。お前達の魔法なら、数日で再建可能だろうが」
 威吹は補足するように言った後、呆れた様子でマリアを見た。
「ただ、再建すればいいってもんじゃない。幻想郷の入口を塞ぐ必要があるのと、また隕石を落とされては元も子もないので、その対策も必要だ」
「そうですか」
「まあ、ポーリン師やエレーナもしばらくは動きが取れないだろうから、しばらくは安心して良いとのことだ」
「イリーナさんが?」
「どことなく抜けてるヤツが言ったところで、大船の気分が湧かないのだが……」
「師匠のお考えが分からないうちは、そうなるだろう」
「あー、そうかい」
 そう話しているうちに、呼んでいたタクシーがやってきた。
「マリアさん、もうバスは無いんですけど、本当に大丈夫ですか?」
「ああ。別に市街地に行く必要は無い」
 ユタと威吹はタクシーの後部座席に乗り込んだ。
「ユウタ君、色々とありがとう」
「いえ、僕は別に……」
 窓越しに握手を交わした後で、タクシーがバスの営業所に向けて走り出した。
(師匠じゃないけど、本当にもったいない。魔道師の素質があるのに……)

[5月31日17:45.静岡県富士宮市内、国道139号線 稲生ユウタ&威吹邪甲]

〔「夕焼けを2人で♪半分ずつ♪分け合おう♪私は昼♪」「ボクは夜♪」「手を繋げばオレンジの空〜♪」「……鏡音リン・レンで“トワイライト・プランク”でした。ではここで、交通情報をお送りします。……」〕

 春先なら本当に夕方なのだろうが、夏至の近づくこの時季はまだまだ外は明るい。
 タクシーのラジオから流れてくる歌を聴きながら、ふとそう思う威吹だった。
「あ、運転手さん。そこのファミレスに入ってもらえます?」
「はいはい」
 タクシーは国道沿いのファミレスに入った。
「ユタ?」
「いや、まだ時間があるから、何か食べて行こうと思って」
「ああ」
 それで威吹は納得した。
「バスの営業所、すぐそこだし」

[5月31日18:00.ガスト富士宮店 ユタ&威吹]

 夕食時ではあるが、まだピークではないのか、店内はそんなに混雑していなかった。
 夕食を取りながら、ユタが言った。
「そういえば、僕が六壺にいる間、マリアさんと何か話したの?」
「いや、あの魔道師は無口だから。特に、信頼に値しないヤツとは、話もしたくないって感じだね」
「なるほど……」
「ああ、でも、あんなことは言ってたな……」
「なに?」
「『師匠が、魔道師達の抗争に巻き込んでしまって申し訳無い、と謝っていた』と……。これはユタにも言いたいことだから、ボクにも言ったんだろうね」
「そうかぁ……」
「何を今更言ってるんだって感じだけどね」
 威吹は苦笑いした。
「そりゃ1000年……いや、それ以上前からヤツらが抗争しているんだから、ボク達もグゥの音も出ないよね」
「ははは……。『歴史を陰から操る者』か。日本史や世界史の教科書に載ってる、色んなことに関わってきたのかな」
「多分ね」

[同日18:30.富士急静岡バス富士宮営業所→“やきそばエクスプレス”18号 7A席:ユタ、7B席:威吹]

 今日最後の東京行きは定刻通り、バス営業所を発車した。営業所前の道路は狭いので、そこを出発する時は一苦労である。

〔……本日もJRバス関東をご利用頂きまして、ありがとうございます。このJRバスは東名江田、東名向ヶ丘経由、東京行きです。……〕

 行きと違って広いタイプの座席ではなかったが、威吹的には“獲物”と密着しやすくて却って良いらしい。
 始発のバス営業所を出た時点では、乗客はユタと威吹しかいなかったが、乗客名簿をチラッと見たら途中の富士宮駅や富士宮市役所前などから乗って来るらしい。
 昔はイオン富士宮の前(ジャスコ富士宮)にも止まっていたが、踏切を渡らなくてはならなく、定時性確保に難ありということでルート変更の際、廃止された。

[同日19:00.場所不明 イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・ベルゼ・スカーレット、ポーリン・ルシフェ・エルミラ、エレーナ・マーロン]

「師匠、稲生君達は予定通り、バスで東京に向かいました」
「何の予知も出なかったから、予定通り着けるでしょう」
 イリーナは、少し離れた場所にいる魔道師師弟をチラ見しながら納得したように頷いた。
「もう時間ね」
 ポーリンはローブの中に隠した懐中時計を見て、イリーナ達に近づいて来た。
「言っておくけど、大師匠の前ではケンカは無しよ?」
「分かってるって」
 イリーナはポーリンに釘を刺したが、ポーリンは無表情のまま頷いた。

 突然、雷が鳴り出し、それが近づいてくる。
 4人の魔道師(見習も含む)は、頭頂部が平場になっている岩に向かって片膝をついた。
 雷がその岩に落ちる。
 落雷したにも関わらず、岩自体には何の損傷も無い。
 マグネシウムを燃やしているかのような光が輝いた後、その岩場の上には黒いローブにフードを被った魔道師が立っていた。
「お久しぶりです。師匠」
 イリーナは頭を深く下げながら言った。
 フードを被ったイリーナとポーリンの師匠は、顔が全く分からなかった。
 この4人の弟子(更には孫弟子)の前にいる大師匠は、本当に正体を現しての姿なのかも分からない。
 大師匠はイリーナの言葉には全く答えず、声を発した。
「お前達の仲の悪さには、今更とやかく言うつもりはない……」
 その声はしわがれた老人の声だった。
 老婆ではない。
「ただ、歴史の表に出て騒ぎを起こすことは本意ではない。今後は、個人的な争いを禁ずる。良いな?それと……」
 まるでLEDの光のような強い眼光をイリーナに向ける大師匠。
「私の元を飛び出して、何をしたかと思えば……。良かろう。あの功績に免じて、正式に免許皆伝をしよう」
「ありがとうございます」
「師匠!?」
 その裁決に納得できなかったのはポーリンの方だった。
「待ってください!私は師匠の元で真面目に修行してきました!何で不真面目なコイツを“卒業”させるのですか!?」
「だから、お前には最初に免許皆伝をした。こいつが私の元を飛び出て、早700年。その後の功績を考えれば今、免許皆伝をさせても良かろう。そこの者……」
 大師匠はマリアに魔道師の杖を向けた。
「は、はい……」
 マリアは緊張した面持ちで前に出た。
「名を何と申す?」
「マリアンナ・ベルゼ・スカーレットと申します」
「勝手にミドルネームも与えて、イリーナは傲慢過ぎます!」
 ポーリンは大師匠に異議申し立てを行った。
「ふむ……」
 大師匠はマリアの全身を見つめていたが、
「マリアンナとやらをイリーナの正式な弟子として認める。……が、まだミドルネームは時期尚早であろう。しばらく、『ベルゼ』の名は私が預かる。そこにいるエレーナ・マーロンと共に切磋琢磨をせい」
「は、はい……!」

[同日19:25.東名高速足柄SA 稲生ユウタ&威吹邪甲]

「あれ?」
 サービスエリアに向かうに従って、急に天候が悪化した。
 上空では稲光が光り、雷鳴も響いて来て、大粒の雨がバスの窓ガラスを叩いた。
「夕立かな?」
「随分暗くなってから降る夕立だねぇ……」
 バスは大型のワイパーを規則正しく動かしながら、広大な駐車場の中に入った。
「どうしよう?傘持ってないや」
「お任せを」
 威吹は腰まである長い銀髪の中に手を入れた。
 その中から、ビニール傘が2本出て来た。
「はい、傘」
「さ、さすがだ……」
 因みに妖刀と脇差も隠しており、こういう帯刀できない場所では髪の中に隠している。

 夕立が降る中、ユタ達を含む乗客達はバスを降りた。
「東京では止んでるといいなぁ!」
 バシャバシャと水たまりを避けながら、小走りにトイレに向かうユタと威吹。
「ホトケに祈ってくれ!」
 威吹はユタの言葉に答えた。
(それにしても、何らかの恣意性を感じる夕立だなぁ……)
 と、威吹は思った。

 休憩時間が終わり、バスが再び発車する頃には小降りになっており、下り線の右ルートと左ルートが合流する辺りにある大きな橋を渡る時には雨は止んだ。

 後日、ユタ達はカンジが購読している週刊誌で、魔道師達の抗争が停戦化したこと、マリアのミドルネームが外されたことを知った。
 ただ、ユタは休戦と停戦の違いが良く分からなかった。
 イリーナは停戦だと思い、ポーリンは休戦だという認識であるという。
 大師匠の命令で仕方なくということだったようだが、いずれにせよ何かの拍子でまた抗争が始まるのだろうと予想した。
 マリアのミドルネームが外されたことにユタは驚いたが、当のマリアとしてはあっけらかんとしていて、むしろ、
「イリーナ師匠の正式な弟子と認めてくれたことの方が嬉しい」
 とのことだった。更に、
「魔道師としてあるまじきことをやったのだから、本来なら破門の上、追放にされてもいいくらいだ。ミドルネームを外された程度で済んで、本当に良かったよ」
 と、ホッとした様子だったという。
                         マリア編 終

※6月7日 表現方法に一部誤りがありました。お詫びして訂正致します。
コメント

小説の途中ですが、ここで通常の日記をお送りします。

2014-05-30 23:58:32 | 日記
 http://oshiete.goo.ne.jp/watcher/entry/e3eaf67315e5ace878ec7925f341af51

 ここに作者という『魔法使い』がいる。
 が、あいにくとマトモな人間でないことは確かなので、フツーの人は通常生活していて遭遇することはない。
 安心して頂きたい。
 私の場合もご多聞に漏れず、童貞なのはもちろんのこと、恋愛経験すら無い。
 それが主人公に恋をさせるストーリーを作っているのだから、そこが最大の笑い場なのかもしれない。

 でも、悪いとは思っていない。
 こういう生き方もアリなんではないかなと思っている。
 いい歳して童貞だから罪障というわけでもあるまい。
 1人で気ままに生きたところで、信仰の基本が押さえられていれば成仏できるはずだ。
 まあ、私の代で断絶してしまっても、それはそれでOKということで。
 余計な塔婆供養をせずに済むではないか。
 先祖代々の罪障を断ち切る方法に、自分の代で血縁を終わらせるという手もあるということだ。

 過去世の罪障を消滅出来なかったから、現世に転生して罪障消滅という名の罰ゲームという疑問に対して未だ納得の行く回答を得られていない。
 この世に生まれて来ること自体が罰ゲームなのだから、ヘタに子供は作らない方がいいってね。
 でも……罰ゲームだと知っていて、それに乗っている自分がいるのもまた事実。

 まもなく勧誡1周年を迎えるが、まあよく1年も持ったなと思う次第なわけである。

 1年では、何も変わりそうもない。

 このペースでは3年経っても変わりそうも無いな。

 おっと!まずは辞めないことを目標にすることだ。そもそも、これが肝心。
コメント (8)

“ユタと愉快な仲間たち” 「御開扉妨害は重罪である」

2014-05-29 20:03:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月31日13:00.静岡県富士宮市郊外にある稲荷神社 威吹邪甲]

「人間界ではここが1番落ち着く」
「おう」
 威吹はこの辺を取り仕切る同じ妖狐の者を訪ねていた。
 因みに自動販売機でお茶を買い、人間が備えた油揚げを失敬するのは今時の常か。
「しっかし、お前さんも悪いヤツだな」
 威吹より年上だが、見た目はそんなに違わない地元の妖狐が笑い掛けた。
「何が?」
「“獲物”さんが日蓮信仰をしてるのなら、オレ達は完全悪だぜ?謗法ってヤツでな」
「それは内緒でござる」
 威吹は油揚げを食べながら、ペットボトル入りのお茶を飲んだ。
「よく騙し通せたもんだ。でも、“獲物”持ちもいいもんだろ?退屈しなくてさ」
「その通り」
「お前さんの話だが、ヨーロッパの魔道師もうろついて来たよ」
「さようか?それはイリーナとかいう者か?」
「いや。フードを被っていたからよく分からんが、1人は金髪で、もう1人は黒髪だった」
「別の者共か……」
「まだこの町にいる感じだな」
「なにっ?」
「オレ達は神社・仏閣ではなかなか悪さできないが、魔道師は厳密に言えば妖怪ではない」
「姿形で騙されたが、もしかして仙人みたいなものか?」
「まあ、それに近いな。だから、オレ達よりもより人間らしく振る舞うことができるし、つまり神社・仏閣の中に入って行けるということだ」
「そ、そうか」
「……つまりは、お前さんの“獲物”に危険が迫っているかもしれないという危機感を何故持たん?」
「今すぐ戻る!」
 威吹は急いでその場を離れた。

[同日同時刻 大石寺・奉安堂 稲生ユウタ]

〔「御開扉に先立ちまして、注意事項を申し上げます」〕

 ユタは1人、他の信徒達と共に奉安堂内部に入った。
 誘導係の僧侶の指示に従い、座席に腰掛ける。

〔「……御開扉は厳粛な儀式でございますので……」〕

 ユタは他の信徒と同様、小声で大御本尊が安置されている扉に向かって御題目三唱した。
 今度はまた突然数珠が切れてもいいように、予備をポケットに忍ばせている。
「ん……?」
 しかし、何だかユタは落ち着かなかった。
 何かむず痒いというか、そわそわするというか……。
(何だこれ……?)

[同日13:30.大石寺・奉安堂内部 稲生ユウタ]

 マイクで僧侶が唱題を始め、信徒達が合わせて唱題する。
 その間に、他の僧侶達や御法主猊下であるところの日如上人が出仕してきた。

 いつもの御開扉。

 何事も無く行われるはずの御開扉だ。

「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
 ユタの右手がガクガクと震える。
 額に脂汗が浮き出て来た。
 右隣りの中年の信徒が気づいて、ユタの方を見た。
「扉が開かない……!」
 左隣の信徒が驚愕の声を上げた。
 いつものタイミングで開くはずの上下式の鎧戸が開かない!

[同日同時刻 同場所……の屋根の上 エレーナ・マーロン]

「全ては……あの御方の為に」
 エレーナは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「あとはこのスイッチを押せば……バイバイ」
 エレーナはリモコン式のスイッチを押そうとした。

 ドスッ……!

「な……!」
 その直前、自分の背後から刃物が貫通したのが見えた。
 後ろを振り向くと、そこにいたのは威吹。
 持っていた妖刀……ではなく、普通の脇差の方を突き刺した。
 以前、魔道師に妖刀は効かないとマリアが言っていたのを思い出したからだ。
「きさま……!」
 エレーナは威吹を半分驚愕の目、もう半分は憎悪の目で見たが、その姿が煙のように消えた。
 その代わり、残っていたのは黒猫のぬいぐるみだった。
 それを妖刀で突き刺したのは、後から追ってきた地元の妖狐。
「やったか!?」
 威吹は金色の瞳をぬいぐるみに向けた。
「……いや、ただのぬいぐるみだ。依り代にしてただけのようだ。本体は別の場所にいる」
「くそっ!」
「だが、ここでの力は無くなったはずだ。この下の僧侶や信徒達も無事だろう」

[同日13:40.奉安堂内部 稲生ユウタ]

「開いた開いた!」
 電動鎧戸が開いた。
 信徒達の歓喜の声で堂内が包まれたという。

[同日13:45.大石寺・新町駐車場 威吹邪甲&鞍馬主斗]

 御開扉を妨害した魔道師見習を撃退した妖狐達は、取りあえず、自分達が滅される前に大石寺境内の外に出た。
 地元の妖狐で、威吹に加担したのは鞍馬主斗(くらま・かずえ)という中性的な男だった。
 威吹もそうだが、艶やかな姿と名前からしてよく女性と間違えられるという。
 人間に化けてもそんな姿だから困るとのことだった。
「後でうちの“獲物”に説明しておくよ。本当にかたじけない」
「いやいや。“獲物”持ちになるべく協力するのも、妖狐族の掟だからな。せっかくあと数人高レベルの人間がいるのに、妖狐族の手に入らなくて残念だ」
「他にいるのか?」
「ここは総本山だからな。全国や他国から信徒が集まる。その中にA級が何人かいる。S級はあんたが手掛けてる者だけみたいだな」
「そうか……」
「創価学会には何人もA級がいたんだが、破門になってしまったからな」
「街中の浅間大社はどうだ?」
「話にならんな。神職であっても、C級ばかりだ」
「景気悪いな」

[同日14:15.大石寺 売店(仲見世) 稲生ユウタ&威吹邪甲]

「びっくしたなぁ……もう。御開扉の時に、扉が全然開かなかったんだ。こりゃダメだと思った時、開いたんだよ。いやあ、当たり前だと思っていたことがそうでなくなる時って、ああなんだなぁって……」
「うん。そうか。それは良かったね。じゃあ、ちゃんと願い事はできたってことだね?」
「そう!」
 ユタは大きく頷いた後で、
「何だかね、また『マリアさんに会いたい』って願うようになったんだ」
「しかしあの魔道師達は、抗争を避ける為に避難中だ。ユタが巻き込まれては、元も子もないからね。キミが願うのは、あの魔道師の安全だろう?」
「それもそうなんだけど……」
「それなら心配無い。少しなら話ができる」
「そう上手く行くわけないさ。確かに結果的に、ボク達は……」
「やっぱり話が出来過ぎてるかな……」
 背後からマリアの声がしたような気がして、ユタと威吹は振り向いた。
「マリアさん!」
 本当にいた!
 しばらくの間、ユタは涙を堪えていた。

[同日14:30.大石寺売店(仲見世)“藤のや” ユタ、マリア、威吹]

 3人は大石寺売店内にある喫茶店に入った。
「マリアさん、本当に無事で良かったです」
「ああ。ユウタ君のおかげだ」
 店内にあるテレビではワイドショーをやっていて、長野県に落ちた隕石のことをまだやっていた。
 隕石落下によって起きた山林火災は、ようやく鎮火したらしい。
「電話を切って、すぐに外に飛び出した。その直後、隕石が落ちて来た」
「何でそんなことを!?誰が!?」
「やったのはポーリン師だろう。目的は私の殺害というよりも、むしろ保管している魔道書の処分だったかもしれんな」
「仇敵の魔道師は、魔道書とやらが欲しくなかったのか?燃やしてしまうのが目的だったようだな?」
「私の屋敷に保管してあった物は、師匠の更にその上の師匠がお持ちのコピーだ。コピーだから、同じ本を実は師匠も別の場所に保管している。ま、私にとっては人形がほぼ全滅してしまったのが痛い……」
 咄嗟のことだったので、当時動かせたミク人形とフランス人形の1体だけが脱出できたという。
 せっかく作った『ユタぐるみ』も全壊し、全焼した屋敷の中にいた。
(『ユタぐるみ』に命を吹き込まなくて良かった……)
 あくまでも観賞用に作ったとしてはいたが、もしいっそのこと……という思いもあった。
 だが、思い留まって正解だったということだ。
 もし命を吹き込んでいたら、キノぐるみと同じ運命を辿っていただろう。
「奉安堂の屋根の上に、敵の魔道師がいたぞ」
 威吹が言った。
「えっ!?」
「見た目、どことなく栗原殿に似てはいたがな。だが、栗原殿ではないよ」
「それ、エレーナ・マーロンだな」
 マリアは言った。
「ポーリン師の弟子で、どちらかというと、本当の魔女に近いタイプのヤツだ。よく黒猫に化けている」
「おう。殺したと思ったら、黒猫の人形になってびっくりだよ」
「魔道師には刃物は効かない。例え妖刀でも、普通の刀であっても……」
「一応、効いた感じはしたんだけどなぁ……」
 威吹は首を傾げた。
「ただ、依り代を失ったのだから、しばらくは行動できないはずだ。ポーリン師と同様、エレーナもな。だからこうして、私は少し出てきて話ができるようになったのだ」
「そうでしたか!でも、どうしてそのエレーナ・マーロンは御開扉を妨害しようとしたんでしょうか?」
「S級の霊力を持つ稲生さんが、ここで信仰していることに脅威を感じるのは妖怪達だけではないってことさ」
 マリアはズズズと紅茶を啜った。
「どういうことですか?」
「深く考える必要は無い。ユウタ君から見て、障魔が御開扉を妨害した。しかしユウタ君達の厚い信心で、それを跳ね飛ばすことができた。そう考えていいだろう。妖狐達の行動については、仏の手によるものと思えば……」
「ボクは仏の駒かい」
 威吹は苦笑いした。
「まあ、だったら威吹。きっと死んでも、特別扱いしてくれるってことだよ、うん」
「あんまり想像したくないけどなぁ……」
 威吹は苦笑を止めることができなかった。
「これからどうするんだ?」
「取りあえず、16時半からの六壺の勤行に出ようと思います」
「分かった。じゃあ、私は境内で待ってる」
 マリアは微笑を浮かべた。
 それは感情が高ぶって、相手を攻撃する時に見せる『狂った笑顔』ではなかった。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「バスに揺られて大石寺参り」

2014-05-29 16:02:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月31日09:35.東名高速足柄SA 稲生ユウタ&威吹邪甲]

〔「足柄サービスエリアです。こちらで10分の休憩を取らせて頂きます。発車は9時45分です。乗り遅れないよう、ご注意ください」〕

 バスは東名高速でも大規模な足柄SAに止まった。
 ここからでも天気が良いので、富士山がよく見える。
「ユタ、足柄だよ」
 ユタが目を覚ました様子なので、威吹が声を掛けた。
「そっかぁ……。じゃあ、降りてみるかな……」
 2人はバスを降りた。
 初夏の日差しが照らすので、何だか汗ばむ陽気である。
「何だか、変な夢見た」
「そう?」
「2人の魔道師が薄ら笑いを浮かべてる、薄気味の悪い夢だよ」
「それは予知夢?」
「いや……。マリアさんの屋敷が焼け落ちるシーンだったから、予知夢ではないね。きっとあれが、イリーナさん達と敵対しているという魔道師なんだろう」
「ふーん……」

[同日10:00.さいたま市中央区 ユタの家 威波莞爾&蓬莱山鬼之助]

「あ、何だって?ユタとイブキは留守だぁ?」
「稲生さんなら大石寺参りだ。先生も護衛として御一緒だ。用件なら、オレが代わりに聞くが?」
 玄関先で舌打ちをするキノと、ポーカーフェイスを崩さないカンジの姿があった。
「1人で行ったのか?」
「だから、先生と御一緒だと言ったはずだが?」
「他の信者と一緒じゃねーのかって聞いてんだっ!」
「それは知らん。で、何の用だ?」
「オレ達がユタの予知夢に助けられたようだから、姉貴が礼と非礼の詫びを同時にしてこいって無茶ぶり&ハードルがん上げの命令しやがってよ」
「ああ。マリア師に復讐しに行ったら、別の魔道師についでに全滅させられるという夢か。とどのつまり、それ自体が大きな罠だったってことだな。良かったじゃないか。まんまと引っ掛からなくて」
「ユタをボコしたことも詫びて来いってさ。いや、オレ的にはよ、最初にケンカ売ったのはあいつだから……」
「いや、そうなるように仕向けたのはお前の方だったぞ?」
「イブキがそこで止めなかったのが気になるがな」
「……咄嗟のことで、先生も動けなかったのだろう」
 カンジはそう答えた。
(稲生さんに危害が加えられたことを口実に、こいつを粛清するおつもりだったのかもしれんが……)
「いねぇんならしょうがねぇな」
「まあ、お前がその件で来たことは伝えておく」
「じゃ、これが落とし前の品な」
「中身は何だ?」
「地獄界で仕入れた人肉のミンチだが、ユタ食うのか?」
「……オレと先生しか食わんと思う。てか、人間に合わせた侘びの品持ってこい」

 以上、妖怪同士の会話であった。

[同日11:00.大石寺・第2ターミナル 稲生ユウタ&威吹邪甲]

 

 新しくできたバスターミナルで、2人はバスを降りた。
「威吹はどうするの?布教講演聴いてく?」
「ボクを滅するつもりかい?やめておくよ」
「それは残念」
「ボクはこの辺を取り仕切る同族と会ってくるよ。街中は神社(浅間大社)、山裾は寺があって、随分とやりにくそうだし」
「う、うん……」
 威吹は手をヒラヒラさせて、国道の方に歩いていった。
 ユタは反対方向の登山事務所に向かった。

[同日11:50.大石寺・総一坊 稲生ユウタ]

(それにしてもあの人達、よく見かけるなぁ……。さすがは塔中坊の人達だ)
 布教講演に参加したユタ。
 前方には特盛くんとエリちゃんがいた。

〔「……これを持ちまして、本日の布教講演とさせて頂きます。ご清聴、真にありがとうございました」〕

 布教講演が終わると御題目三唱を行う。

〔「講師が退場します」〕

 顕正会の“アデランス”と違い、柔らかな口調の僧侶の司会であった。
「お腹空いたよぉ……」
「ちょっと、あんた!正座椅子!」
「んー?」
「んーじゃない!あんたの体重で、畳に食い込んでるっつーの!」
 エリちゃんが巨漢の特盛くんに突っ込む姿は、もはやお約束である。

[同日12:10.大石寺・売店(仲見世)“なかみせ” 稲生ユウタ]

「うーん……!ゴハンが止まらなーい!……てか、ちょっと足りない」
「少しはダイエットしろっつの!これくらいで十分!」
「えー……」
「えーじゃない!」
「だってぇ……」
「だってじゃない!」
 夫婦漫才に笑いを堪えつつ、ユタは“大白法”に目を通していた。
 つか、この2人、結婚したのか。
「はい、お待ちどうさま。豚汁定食です」
「あ、どうもー」
 ユタは“大白法”閉じ、定食に箸をつけた。
「オバちゃーん、ゴハンおかわりー」
「おかわりじゃねーだろ!つか、おかわりすんなよ!」
 特盛くんのおかわり要求にも、快く応じてくれるオバちゃん。
「すいません。後でよく言っておきますから」
 エリちゃんは、おかわりを持ってきてくれたオバちゃんに恐縮する。
「あー、ほらもう!ゴハンつぶ付いてるし!」
「ゴハンが止まらなーい!」

 ガラッ!(店のドアが開く音)
 ザシャアァァァッ!(ポテンヒットさんゴメンナサイ)

「ああっ!?のんきに飯だとっ、クソ法華講員ども!」(ケンショー・ブルー)
「私の分析によりますと、危機感が全く足りませんね」(ケンショー・グリーン)
「他国侵逼は近いのよ!何度も言わせないでちょうだいっ!?ねぇっ!」(ケンショー・ホワイト)
「いいですかー?ここは昔、ソッカーのダイ・サークによって、ケンショーを怨嫉した謗法の地なのですね。見てごらんなさい。ここにはかつてケンショーの精鋭だった者が騙されて、ここに連れ込まれています。かつての同志を救うのは今しかないと考えまするが、皆さんどうでしょう?」(ケンショー・イエロー)

 パチパチパチパチパチ……。

「うわっ、出たーっ!ケンショーレンジャー!」
 ユタは目を剥いて、テーブルの下に隠れた。
「特盛っ!あんたも釣られて隠れない!地震じゃないんだから!つか、お前ら!ウゼぇっての!」
「ぇでもぉ、お嬢さん。ぇ正しいのはぇケンショーだけだよ」(ケンショー・レッド)
「うるせぇんだよ!平成25年の誓願ブッちぎったくせに!」
 ユタと特盛くんが防御態勢に入る中、エリちゃんだけが立ち向かう。
「私の分析によれば、それは無かったことになっていますね」
「つーかよ、クソビッチ!オメーもよ、特盛に『平成25年の誓願はただの目標』って言ってたじゃねーかよっ、ああっ!?」(ブルー)
「イエローの壮大過ぎる誓願は所詮凡夫には理解できないのよ!何度も言わせないでちょうだいっ!ねぇっ!?」(ホワイト)
「その通り。いいですか?私の誓願は正に壮大なものであり、その場しのぎのものなんですね。大聖人様とて、目が点になるほどのものなのです。しかし、おかげで魔が競うことはない。顕正会員は凡夫の集まりです。魔が競わないように計らうのも……むっ!そこのキミ、何をしておるのかね?」(イエロー)
 ユタはどこかに電話していた。
「ああっ!?テメー、まさかサツに電話してんじゃねーだろうなぁ!?」
 レンジャー達はユタに近づいた。
「ぇ警察に通報されたら、ぇまたケンショー本部に、ぇ家宅捜索が入っちゃうよォ」
「いかん!あの青年から、電話を取り上げるんじゃ!」
「おうっ!」
 イエローの号令に、ユタに向かって行くレンジャー達。
「警察には電話していない!」
 と、ユタ。
「私の分析によりますと、警察ではなく……」

 ザシャアァァァッ!

「おとなしくしろ!ケンショーども!」
「何度も御山を荒らしやがって!」
「今度という今度は許さんぞ!」
 駆け付けた黒スーツの男達。
「げぇっ!?お、お前達は……みょ、みょ……妙観講!?」
 声が裏返るイエロー。
「このクソ野郎!サツよりメンドくせぇとこに通報しやがって!」
 ブルーがユタを睨みつけるが、もう後のお祭りドンドコショである。
「今日は大草講頭が直々に御登山しておられる!今日はみっちり講頭の折伏を受けてもらうからなぁっ!!」
 ズルズルと妙観講員に店の外へ連れ出されるケンショー・レンジャー達であった。
(駐車場に大草講頭のベンツが止まっていたの、確認しておいて良かった)
 ユタはホッとして、再び豚汁定食に箸をつけた。

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 妙観講の皆さん、勝手に登場させてごめんなさい。
 でも一応、山内の警備を行っていると聞いたもので。
 きっと、ケンショー・レンジャーみたいな輩どもなんぞ、厳しく取り締まってくれるのだろうなぁと……。
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