ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“大魔道師の弟子” 「魔道師の旅路」 〜目的地、到着〜

2018-08-30 19:16:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月26日15:40.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区]

〔次は上落合八丁目、上落合八丁目でございます〕

 下車バス停が近づいて来たので、稲生は降車ボタンを押した。

〔次、止まります。バスが停車してから、席をお立ちください〕

 通常の自動放送は女声だが、注意換気は男声。
 バスは多くの車が行き交う県道上の停留所に停車した。

 稲生:「大人2人お願いします」
 運転手:「はい、どうぞ」

 稲生達はSuicaで運賃を支払った。

 運転手:「ありがとうございました」
 稲生:「どうも」

 前扉から降りる。

 ミク人形:「ども!」
 ハク人形:「どーもっ!」
 運転手:「ありが……ええっ!?」

 慌てて人形達をバッグに押し込むマリア。

 マリア:「ダメじゃない!勝手に出て来ちゃ!」
 ミク人形:「むぎゅ!」
 ハク人形:「むぎゅう……!」
 稲生:「魔法使いのファミリア(使い魔)は自由人だなぁ……」

 と、稲生。

 マリア:「温かい目で見てる場合じやないぞ。勇太もいずれはファミリアを持つんだ」
 稲生:「な、なるほど」
 マリア:「その際はイブキでいいんだな?」
 稲生:「威吹も家族持ちですからねぇ……」

 バス停の前にあるコンビニに立ち寄る。
 バスの中は冷房が効いて涼しかったが、降りると灼熱地獄が待っていた。
 それから待避する為に入ったと言えよう。

 稲生:「東京都内よりも暑いですからね、埼玉は」
 マリア:「暑さが世知辛い」

 ここでアイスクリームとペットボトル入りのアイスコーヒーを買った稲生達。
 で、またもや気温35度の外に出る。

 稲生:「長野も30度でしたが、5度の違いは大きいですね」
 マリア:「まあね」

 魔道師のローブは見た目には暑苦しいが、魔力が備わっていることもあり、着ると結構涼しいらしい。
 取りあえず、足早に稲生の実家に向かった。

[同日15:50.天候:晴 さいたま市中央区 稲生家]

 佳子:「まあまあ、マリアさん。こんな暑い中、ありがとうございます」
 マリア:「マタ、オ世話ニナリマス」

 マリア、自動通訳魔法を切る。
 そして、勉強中の日本語で話す。

 稲生:「また、いつもの部屋に」

 稲生はマリアを1階奥の部屋に案内した。
 既に来客用の折り畳みベッドが展開されている。

 マリア:「ここは落ち着く」
 稲生:「そうでしょう」

 マリアは荷物を置いた。

 稲生:「今、お茶を入れてきますから。アイスでも食べててください」
 マリア:「そうさせてもらう」

 稲生が客間から出て行くと、マリアは荷物の中から水晶球を出した。

 マリア:「師匠、師匠。マリアンナです。応答願います」

 まるで無線通信のようだと、他の魔女達からツッコミを入れられるマリア。
 だが、水晶球の向こうからは何故か銃声の音が。
 それも1つだけではない。
 ハンドガンの『パンパンパン!』という音もするし、ショットガンの『ズドン!ズドン!』という音も聞こえた。
 更に遠くからはマシンガンの『タタタタタ!』という足踏み式ミシンのような音もすれば、似たような音でもっと重低音のある『ダダダダダ!』という音も聞こえた。
 恐らくこれは据置式ガトリング砲の音だろう。

 マリア:「何事!?」
 イリーナ:「あ、マリア。今、先生は忙しいからまた後でね」
 マリア:「どこにいるんですか!?」
 イリーナ:「占いの依頼で、ちょっとソマリアまで……」
 マリア:「何でそんな無政府状態の所に行ってるんですか、もう!」
 イリーナ:「反政府軍の大佐から、『この戦争の行く末を占ってくれ』と頼まれたものでねぇ……」
 マリア:「魔道師でも蜂の巣にされたら死にますよ!?早いとこ脱出してください!」
 イリーナ:「ちょっと待ってね。今、ヒッチハイクしてるところだから」
 マリア:「ヒッチハイク!?」

 水晶球にどこのぞの軍隊か不明だが、1台の装甲車が停車した。

 イリーナ:「Hey!Excuse me!I need your car!I want to leave...(ちょっと失礼!乗せてくれないかしら?行き先は……)」

 明らかに装甲車に乗った軍人が、イリーナに銃口を向けているのだが。
 マリアはそこで通信を切った。

 マリア:「……ま、師匠のことだから何事も無く日本に来ることだろう」

 そこへ稲生がアイスコーヒーを持って来た。

 稲生:「何か、銃声のような音が聞こえましたが……?」
 マリア:「師匠にとっては、戦場もビジネスエリアということだ」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「私は地道に魔界で賞金稼ぎをする方を選ぼう」
 稲生:「は、はあ……」

 イリーナは極端だとしても、人間界で稼ぐ魔道師の方が多い。
 エレーナもその1人。
 マリアは時折魔界に足を運んでは、賞金首の悪質モンスター退治で金を稼いでいるようだ。

 マリア:「勇太もそろそろ考えた方がいいよ」
 稲生:「そうですねぇ……」

 女戦士サーシャ(本名、アレクサンドラ)と一緒に旅をした時、彼女に言われたことだが、どうしてもダンジョンを探索する際、魔法の結界が張られた場所などがあり、その対策として魔法使いが必要になることが多々あるという。
 稲生も見習ながら、魔法陣や結界については本科(教養科目)の1つとなっている為、何とか対応できた。

 稲生:「またサーシャが冒険に出るようになったら、行ってみようかなぁ……」
 マリア:「いや、別に女戦士だけがパートナーじゃないからね?」
 稲生:「違いますよ。赤の他人が一緒より、少しは顔見知りと行った方が気も楽じゃないですか」
 マリア:「女と行くなって言ってんの!」

 鈍い稲生に、少しキレ気味のマリア。

 稲生:「……すいません。威吹と行ってきます」
 マリア:「それならいい」

 マリアはアイスコーヒーにミルクを入れて口に運んだ。

 稲生:「イリーナ先生は、いつこちらに?」
 マリア:「さあ?そのうち、ひょっこり現れるだろう」
 稲生:(何の心配もしていないうちは、大丈夫ってことなんだろうなぁ……)
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の旅路」 〜西武バス〜

2018-08-28 19:11:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月26日14:46.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。東北新幹線、上越新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武鉄道野田線と埼玉新都市交通伊奈線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、上野に止まります〕

 列車が“ニューシャトル”の軌道と並走し、また東北新幹線と並走すれば、大宮駅はまもなくである。
 この時点で指定席は満席、自由席は立ち客も出たようである。
 周りの乗客達の会話によると、どうも帰省客は稲生くらいしかおらず、どちらかというと埼玉県内や東京都内であるという花火大会やさいたまスーパーアリーナへのイベント客の方が多いようである。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく大宮、大宮です。13番線に到着致します。お出口は、右側です。大宮からのお乗り換えをご案内致します。東北新幹線下り……」〕

 稲生とマリアは降りる準備をしていた。

〔「……尚、さいたまスーパーアリーナへお越しのお客様は、上野東京ラインの普通列車または京浜東北線にお乗り換えになり、次のさいたま新都心駅でお降りください。湘南新宿ラインは全列車通過となりますので、ご注意ください」〕

 稲生:「何かイベントでもあるんですね、きっと」

 埼京線北与野駅からでもアクセス可能だが、あえて案内しないか。
 湘南新宿ラインは元々ホームが無いので。
 誤乗した場合はそのまま指を咥えて、浦和まで乗り通すしかない。
 大栄橋(県道2号線)が見えて来ると、もう駅はすぐそこである。

 稲生:「大宮駅も、相当賑わってるだろうなぁ……」

 列車はホームに滑り込んだ。
 そして、ブレーキ→解除→ブレーキ→解除というハンドル操作を繰り返し、停止位置でやっと止まる。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ〜、大宮です。お忘れ物、落し物の無いようご注意ください。13番線に到着の電車は14時47分発、“あさま”618号、東京行きです。次は、上野に止まります」〕

 ぞろぞろと乗客達がホームに降りて来る。
 もちろん、稲生達もその中にいた。
 だいぶ降りたように見えるが、それでも車内を覗いてみると、あまり空席があるようには見えない。
 それほどまでに普通車は賑わっていたということだろう。
 無機質な電子電鈴を背に、エスカレーターを降りる。

 稲生:「おっ、やっぱり賑やかだなぁ……。ていうか……」

 大宮駅が賑わっていることよりも……。

 稲生:「暑いですね」
 マリア:「うん。クソ暑い」

 元々埼玉県内が暑いのに加え、人々の熱気で更なる暑さということだ。

 稲生:「少し休んでから行きます?」
 マリア:「そうしようか」

 新幹線改札口を出ると、多くの利用者が行き交うコンコースを抜け、東口の方に向かった。
 その途中にあるカフェに入る。
 ここはさすがにエアコンが効いて涼しい。

 稲生:「ちょっと軽く時間調整でもしていきますか」
 マリア:「おっ、いいね」

 アイスコーヒーを注文する稲生だが、マリアはアイスティーとスイーツを注文した。

 稲生:「甘い物は別腹ですか」
 マリア:「そう」

 テーブル席に向かい合って座るが、横に置いたバッグの中から人形達が顔を出し……。

 マリア:「はいよ」

 マリア、パンケーキを切り分けて人形達にお裾分け。

 ミク人形:「おいしー
 ハク人形:「おいしー

 この様子を見た稲生は……。

 稲生:(餌付け……?)

 と、思った。

 ベルフェゴール:「あー、これは選択肢を間違えたねぇ」
 レヴィアタン:「『餌付け』じゃなくて、『娘におやつをあげる母親』くらいの感覚でないとね」

 憑いて来ている悪魔達、何か後ろの席に座って言ってる。
 レヴィアタンはほんの数年前までは黒ギャルの姿をしていたが、今は白ギャルの姿をしている。
 悪魔というのはこの世界では正体を見せることは殆ど無く、ベルフェゴールが英国紳士のコスプレをしているのと同じように、レヴィアタンも稲生が興味を示す女の姿を借りているだけに過ぎないという。
 しかも、普通の人間には見えない。

 稲生:(悪魔達、うるさい)
 マリア:「勇太の御両親は家にいるんだって?」
 稲生:「日曜日ですからね。でも、父さんはゴルフに行ってるかもです」
 マリア:「こんなに暑いのに……」
 稲生:「涼しい所に行ってるんですよ、きっと」

 フランス人形くらいの大きさのミク人形達。
 スイーツをお裾分けしてもらうと、満足したのかさっさとバッグの中に戻っていった。

[同日15:30.天候:晴 JR大宮駅東口→西武バス大38系統車内]

 カフェで過ごした後は、最後の乗り換え先へと向かった。
 バス停のすぐ近くでは、エホバの証人が冊子配布をしている。
 この宗派に関して言えば、あまり魔道師は警戒していない。
 元々が異端審問から始まったとされる魔女狩り。
 エホバの証人自体がキリスト教主流派から異端視されている為、むしろ魔女扱いされて狩られる側だからである。

 稲生:「さすがに顕正会はいないか。たまに顕正新聞配りとかしてるんだけど……」
 横田:「クフフフフフ……。暑い中での布教活動、真にご苦労さまです。ですが、キリスト教の教えでは救われませんよ。まずは私めにあなたのパンティーの色を教えてくださいませんか?クフフフフ……」
 エホバ女性信者:「な、何ですか!?あなたは!?」
 横田:「冨士大石寺顕正会の横田です。先般の女子部班長会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。嗚呼、ブラウス透けブラがお美しい。私の分析によりますと、そのブラの形からして、貴女のパンティーの色は……ハァ、ハァ……」
 警察官:「ちょっとキミ。何してるの?」

 交番から警察官が出て来た。

 横田:「顕正会の折伏です。まずは邪教エホバの証人に折伏を……」

 どう見てもセクハラです。本当に、ありがとうございました。

 稲生:「放っといてさっさと乗りましょう」
 マリア:「あれで魔界共和党の理事だよ。信じられる?」
 稲生:「いや、ちょっと無理ですねぇ……」

 国際興業バスが出発した後、すぐ後にやってきた西武バスに乗り込む稲生とマリア。
 前者が大型車なのに対し、後者は中型車である。
 乗り込むと、1番後ろの席に座った。

〔発車します。お掴まりください。発車します〕

 バスは稲生達を乗せると、すぐに発車した。
 人間の乗客は他にいなかった。

 横田:「放しなさい!これは怨嫉謗法です!あなた達に罰が当たりますよ!」
 警察官:「いいからちょっと交番まて来て!」

 バスは交番の前を通り過ぎてロータリーを一周し、大宮中央通りに出た。

〔大変お待たせ致しました。ご乗車、ありがとうございます。このバスは住宅前、中並木、上小町経由、大宮駅西口行きです。次は仲町、仲町。……〕

 稲生:「マリアさん」
 マリア:「なに?」
 稲生:「多分、今回もブレない流れになるんでしょうね、きっと」
 マリア:「どうしてそう思うの?」
 稲生:「さっきの横田理事の寸劇が、それを如実に物語っているような気がしてしょうがないのです」
 マリア:「そこは師匠がいない(私達に危険が及ばない)という方を気にして予知した方がいいよ」

 取りあえず旧中山道とのスクランブル交差点において、すんなり右折できなかったことはお知らせしておく。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の旅路」 〜北陸新幹線あさま号〜

2018-08-28 10:28:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月26日13:00.天候:晴 長野県長野市 JR長野駅]

 稲生達を乗せたバスはほぼ満席の状態で、長野駅東口に差し掛かった。
 こちらは善光寺口と違い、かつては駅裏扱いで乗り入れるバス路線もほとんど無かったが、駅舎改築に伴う整備後、主に長野県内のスキー場や行楽地に向かう路線バスがこちらに集約された。
 その為、白馬から来たバスもここに到着する。
 但し、西口が「善光寺口」と称されているのに対し、東口は「東口」のままである。

 稲生:「着いたー」
 マリア:「このルートは初めてだ。松本駅とどこが違う?」
 稲生:「新幹線に乗るんですよ」

 バスを降りて駅の中に入りながら、そんなことを会話する。

 マリア:「高速バスのチケットは取れなかったのに、新幹線は取れたのか?」
 稲生:「そうなんです。ちょうどキャンセルが出たみたいで……」
 マリア:「……何かした?」
 稲生:「いえ、別に!強いて言うなら、心の中で御題目を唱えたくらいです」
 マリア:「勇太の場合は『ダンテの呪文』よりも、『日蓮の題目』の方がいいかもな」
 稲生:「かもしれません。イリーナ先生の話ですと、僕の前世は……」

 南光坊天海僧正と言われるが……。
 天海僧正が名古屋で病気になった際、江戸から医者が向かったが、箱根で医者の行列が持つ松明の火が大雨で消えてしまった。
 すると無数の狐が現れ、狐火を灯して道を照らしたという。
 この時、まだ幼少だった妖狐の威吹はこのことを知らない。
 但し、親兄弟の中にこの奇跡に参加した者がおり、威吹が郷里で稲生のことを話すと「あの時の僧侶だ!」と驚いたという。
 魔道師側からも、妖怪側からもそう言われている稲生。
 今の宗派は天台宗ではなく、日蓮正宗である。

 稲生:「これが新幹線のキップです」
 マリア:「おっ、ありがとう」

 弟子の身分では、乗る車両は普通車である。
 イリーナと一緒の時は付き人として、一緒にグリーン車に乗る機会もあるのだが。
 尚、よほどのことが無い限り、グランドマスターやハイマスターであってもグランクラスやファーストクラスには乗らない。
 それは、総師範たるダンテの乗る所だとされているからである。

 緑色の看板や筐体が目立つ新幹線改札口の自動改札機。
 これが東海道新幹線なら、オレンジの看板に青い改札機か。

 稲生:「……あっ!」
 マリア:「Huh?What?(え?なに?)」

 マリアを先に行かせたのだが、マリアの服と緑色の看板と改札機のコントラストを見て、そこで稲生はハッと気づいた。
 マリアのスカートの柄が、何かに似ているというもの。
 それが何なのか思い出せなくて、もやもやしていたのだが。

 稲生:「いえ、何でもありません」
 マリア:「?」
 稲生:(JR東日本205系の座面のモケットと似ていたんだ……)

 長野駅の新幹線改札口の雰囲気が大宮駅のそれと似ていて、大宮駅では新幹線乗り場の真下に埼京線乗り場があって、埼京線と言えばE233系だが、そのモケットの柄とは違うけども、その一世代前の205系の……それだ!
 と、稲生の脳内でそのような動きがあったものと思われる。

 ベルフェゴール:「緑であればいいのだよ。緑であれば」

 マリアの契約悪魔、ベルフェゴールはニヤリと笑って後ろから稲生の肩をポンと叩いた。

 稲生:「あ、そう」

 稲生はあまり相手にせず、英国紳士のコスプレをしたベルフェゴールから離れてマリアを追った。

 稲生:「今のうちにお昼を買って行きましょう」
 マリア:「お、そうか。駅弁だな」

 この他にも立ち食いソバ屋があるのだが、さすがに食べて行く時間は無い。

 稲生:「味噌カツ弁当とか美味しそうだな。マリアさんは何にします?」
 マリア:「これ」
 稲生:「牛めし弁当ですね。人形達にはアイスを買ってあげましょう」
 マリア:「車内では売ってないの?」
 稲生:「“あさま”は無いみたいですね」
 マリア:「さすが調べてるな。手に入らなかったら、帰れなくなっていたよ」

 ミク人形とハク人形は、マリアのバッグの中からジーッと稲生を見つめていた。

 稲生:「そ、そうですよね」

 先ほどのバスにおいても、高速バスではなく、特急バスである。
 つまりは、サービスエリアなどに停車する途中休憩が無いわけだ。
 アイスが買いに行けないではないかと、人形達が文句を言いに荷棚から下りて来た。

 稲生:「その辺は抜かりなく……」

 弁当と飲み物、カップアイスを買い求めた2人は新幹線ホームに向かった。

[同日13:20.天候:晴 JR長野駅新幹線ホーム→北陸新幹線あさま618号8号車内]

〔14番線に停車中の電車は、13時23分発、“あさま”618号、東京行きです。この電車は、各駅に停車致します。グランクラスは12号車、グリーン車は11号車、自由席は1号車から6号車です。……〕

 ホームに上がると、先行の“はくたか”が出発して行ったところだった。
 といっても同じE7系(またはW7系)なので、見栄えは変わらない。
 当駅始発なので自由席でも並べば座れただろうが、“はくたか”からの乗り換え客は座れただろうか。
 それくらい自由席は賑わっていた。

 稲生:「ここですね」
 マリア:「なるほど」

 8号車の中ほど2人席部分。

 人形達の入ったバッグを荷棚を上げるマリア。
 人形達はバッグの中から器用に出ると、早速アイスを食べ始めた。
 窓側にマリア、通路側に稲生が座ると、すぐにテーブルを出す。

 稲生:「お腹空きましたね〜」
 マリア:「それはカツレツ?」
 稲生:「そうです」

 そんなことをしているうちに発車の時間が近づいたらしく、ホームから発車メロディが聞こえる。
 “信濃の国”である。
 在来線ホームでは首都圏でも使われている汎用の発車メロディだが、新幹線ホームでは県歌であるこれが流れる。
 大宮駅ではさいたま市歌(“希望のまち”)を新幹線ホームではなく、京浜東北線ホームで流すのとは逆だ。
 列車は定刻に発車した。
 空いている各駅停車ながら、さすがに繁忙期は満席に近い状態だ。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は北陸新幹線あさま号、東京行きです。次は、上田に止まります。……〕

 マリア:「エレーナのヤツ、ついに鈴木を締め上げて、ケンショーグリーンにエレーナの下着のサイズの調査をさせたことを自白したらしい」
 稲生:「な、何ということを……」

 しかし、マリアは笑いを堪えている。

 マリア:「最初から鈴木を締め上げれば良かったのに……」
 稲生:「あー、ですよねぇ……」

 彼らは東京にいる。
 今回稲生の目的は帰省であり、マリアもそれについて行くという形であるが、隣県である為、やはり顔を合わせる確率は高いと言えるだろう。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の旅路」 〜アルピコ交通バス(導入部)〜

2018-08-26 20:26:33 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月26日11:45.天候:晴 長野県白馬村 白馬八方バスターミナル]

 観光客で賑わう小さなバスターミナルでバスを待つ魔道師2人。

 マリア:「今回は違うルートなのか」
 稲生:「そうなんです。バスタ新宿までのキップや、特急“あずさ”のキップが取れなくて……。夏休みも終盤だから、最後の混雑日のようです」

 そんな時、長野始発の“あさま”の指定席は確保できたので、このルートになったそう。
 それはいいのだが、この白馬から長野駅東口行きのバスは自由席である。
 自由席といってもトイレ無しの観光バスタイプで運行するので、座席定員制である。
 スキーシーズンの時は大勢の利用客がいる為、続行便が運行されるのもザラだという。

 稲生:「お、バス来た」

 このバスターミナル始発ではないので、既に乗客が乗っていた。
 ここで乗車券が購入できるので、乗り込む時に運転手に渡す。
 バスタ新宿行きのような長距離ではないので、本当にスタンダードな4列シートである。
 イリーナのような長身の者には窮屈かもしれないが、小柄な2人だとちょうど良いかも。

 稲生:「ここは涼しいですね」
 マリア:「少し寒いくらいだ」

 マリアは白い半袖のブラウスを着ており、その上から濃い緑色の魔法石の付いたペンダントを着けていた。
 プリーツスカートは緑色を基調としているが、黒い模様が入っている。
 それを見て稲生は、どこかで見た柄だと思っていたが、思い出せないでいる。
 冷房のよく聞いた車内。
 マリアはブラウスの上から、黒いローブを羽織った。
 真夏なのでブレザーは着て来ていない。
 ここで乗車率は7割くらいになった。
 この先も停車停留所があるようだが、積み切れるだろうか。
 夏でもこれなのだから、冬場は確かに続行便を出さないとダメだろう。
 バスは5分ほど遅れて、白馬八方バスターミナルを出発した。

〔……白馬駅、白馬五竜、サンサンパーク白馬、千見、終点長野駅東口の順に止まります。次は白馬駅、白馬駅でございます。……〕

 稲生:「いいんですか?僕がまた帰省するだけですよ?」
 マリア:「いい。勇太がいなくなると、また嫌な夢を見るから」
 稲生:「そうですか……」

 今回、イリーナは同行していない。
 もっとも、一日くらいは顔を出しに行くと言っていたが、イリーナほどの大魔道師なら、世界中どこからでも瞬間移動魔法で来日可能だろう。
 但し、遠ければ遠いほど魔力を消費する為、なるべく使いたくないそうだが。
 この辺が稲生の分からないところ。
 悪魔と契約して安定的に魔力の供給を受けているのだから、別にそういうことは気にしなくて良いと思うのだが。
 パケット通信だけで動画を見ようとすると後で大変なことになるが、Wi-Fiならそんなこと気にしなくて良いのと同じことである。

 ハク人形:「♪」
 ミク人形:「♪」

 尚、マリアの使役人形2体はブレずに人形形態となり、荷棚の上に乗っかっていた。
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“大魔道師の弟子” 「スピンオフは終わりだけど、本編はまだ続く」

2018-08-25 19:12:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月25日12:00.天候:晴 長野県北部山中]

 昼食時、屋敷の西側1階の大食堂に集まるイリーナ組。
 といっても、屋敷中央のエントランスホールから扉1枚隔てただけであるが。
 昼食にはパスタが出た。
 稲生はミートソース。
 大きなテーブルを挟んで、稲生の向かいにイリーナとマリアが座る。
 上座、エントランス側とは反対側の短辺部分にイリーナは座らない。
 この席はダンテ門流、総師範のダンテが座る席と位置付けている為だ。
 それではペーペーの稲生は1番エントランス側に座らされるのかというと、そうでもない。
 いや、もちろんここで食事会が行われ、イリーナと同期のグランドマスターやハイマスターなどの高位の魔道師達が集まってくれば、インターン(見習)の稲生はそこへ追いやられることになるだろう。
 それほどまでに、魔法使いの世界も上下関係は厳しいのである。
 だがその中において、1番それが緩いとされるイリーナ組においては、少なくともそういった高位の者達が他にいなければ、上座に近い所に稲生が座るのを許されていた。
 もっとも、イリーナ組は弟子が2人しかいない零細組だ。
 数十人もの弟子を抱える大所帯のアナスタシア組とは違う。
 稲生だけ1人ポツンとさせることは、却って先輩や師匠に気を使わせるだけと考えられているということだ。
 因みにダンテ門流において、男女比は1対9ないしは2対8とされるが(LGBTの比率はどうかって?んなもん知るかい!)、その殆どがアナスタシア組に所属しているとされる。
 稲生は本当に希少価値の高い男性魔道師なのである。
 その他の男性魔道師は弟子を取れる権限を持ちつつ、弟子は取っていない者がイギリスに在住していることが多いという。

 イリーナ:「んー!このナポリタン美味しい!」
 稲生:「それ、実は日本が発祥なんですよ」
 イリーナ:「知ってるわ。日本人のアイディアは最高ね」
 稲生:「それで先生、レポートの方は如何ですか?」
 イリーナ:「バッチリ!ダンテ先生も驚いてたわよ。まさか、魔法をパケットやWi-Fiに例えるなんて、とても斬新だって」
 稲生:「ありがとうございます」

 稲生は自分のスマホを取り出した。

 稲生:「ぶっちゃけ、水晶球の検索機能とこれがよく似ているなぁと思いまして……。そこで、ふと気がついたんですよ」
 イリーナ:「なるほど。『ハリーポッターは一体、何ギガの魔力を備えているのだろうか?』というくだりはアタシも紅茶吹いたわ」
 稲生:「ハリーポッターが悪魔と契約して、無限の魔力を手に入れる描写が無いんですよ」
 イリーナ:「まあ、書けるわけないわね。世界中のキリスト教徒を敵に回すことになるわ」

 ハリーポッターシリーズを読んでいるダンテ一門の魔道師達。

 イリーナ:「ハリーポッター達やキキのパケット使用派と違って、アタシ達はWi-Fi契約派ってか」
 稲生:「悪魔と契約して魔力を供給してもらい、それをもって魔法を使う所がそれとよく似ていると思いまして」

 パケットは消費しないものの、確かに契約自体は必要なものだし(ドコモWi-Fiを使いたければドコモと契約しなければならないのと同じ)、接続する為にはその為の操作(魔法においては『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ』という呪文を唱える)をしなければならない所が似ているという。
 尚、未だ悪魔と契約していない稲生であっても、弱い魔法は使えるようになっているが、これは自らの魔力を消費するものである。

 レヴィアタン:「聞いた?アタシ達、Wi-Fiのルーター扱いだよ?」
 ベルフェゴール:「コミケ会場でも背中に大きなルーターを背負って会場内を練り歩く者達がいるが、ああいった感じか」

 食堂内の隅で、魔道師達の会話を立ち聞きする悪魔達。

 稲生:「時代が時代なら、このスマホは魔法具ですよ」
 イリーナ:「ホントにねぇ……」
 稲生:「魔界にタブレット持って行ったら、サーシャに魔法具扱いされましたからね」

 サーシャとは稲生が魔界で知り合った女戦士のことである。
 ビキニアーマーがよく似合っていたのだが、知り合った時点で既に彼女は結婚済みで、今は子持ちであるという。
 多摩準急先生のネタでは、稲生の筆おろしをした者ということになっている。
 確かにマリアやイリーナと合流する前まで、2人で何日も魔界内を旅していたが、当の作者本人はそこまで考えていなかった。


 イリーナ:「マリアの補習も終わったことだし、9月まで夏休み入っていいよ」
 稲生:「1週間だけですか……。あ、いや。作者は現在、最長3日間までしか連休取れないらしいですけど……」

 雲羽:「とんだブラック現場に送られたもんだぜ、畜生!」
 多摩:「カットカット!カントクの声が音声に入ってる!」
 AD:「いえ、実際に入ったのは名誉監督の声です」
 多摩:「なに!?」

[同日15:00.天候:晴 長野県白馬村 JR白馬駅]

 白馬駅前に1台の車が停車する。
 よくタクシーに使われるセダンタイプの車種であるが、タクシーの装備は外観上確認できない。
 しかし運転手付きであり、そこのリアシートから降りて来たのは稲生だった。

 稲生:「今から電車のキップ、取れるかなぁ……?」

 稲生は駅構内に入った。
 そして、みどりの窓口に向かった。
 因みに、みどりの窓口のネーミングは、『緑色のキップを出す窓口だから』だそうである。
 今は水色だが、確かに昔は緑色(黄緑に近い)だった。

[同日同時刻 天候:晴 マリアの屋敷]

 マリア:「師匠、勇太のレポート、あれで本当に合格なんですか?」
 イリーナ:「もちろんよ。どうして?」
 マリア:「いや、魔力をパケットやWi-Fiに例えたところで、何がどうなるってわけでもないと思うんですけど」
 イリーナ:「そんなことは分かってるわよ」
 マリア:「では、何故?」
 イリーナ:「勇太君に出した課題の趣旨は、それではないからよ」
 マリア:「は?」
 イリーナ:「勇太君には、この歪んだ門内の男女比率について正しく知ってもらう為の課題でもあったのよ」
 マリア:「それとパケットとWi-Fiと、どう繋がるんですか?」
 イリーナ:「1番高得点だったのが、ここよ」

 イリーナが指さした所。
 それは、魔女の魔力が男性よりも不安定な理由を書いたものだった。
『魔女が魔力を失う時とは、生理が来た時である。キキの魔力が落ちたのも、その直前に体調不良(生理)になっている描写があり、大いに関係がある。にも関わらず、ダンテ門内の魔女達の魔力が落ちないのは、偏に悪魔から安定的に魔力の供給を受けているからであろう』

 マリア:「こ、これが高得点の部分ですか?」
 イリーナ:「そうよ。よく研究したじゃない」
 マリア:「もう1度言いますが、だから何なんですか?」
 イリーナ:「分からないのなら、もう1度補習を受けてもらうわよ?」
 マリア:「そんな殺生な!」
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