ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“Gynoid Multitype Sisters” 「“はやぶさ”1号」

2017-05-30 20:09:11 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月2日06:58.天候:晴 JR大宮駅新幹線ホーム]

 シンディが手に荷物を持って、新幹線ホームへの階段を上る。
 シンディの荷物は、アリスが敷島に渡せと持たせたものである。
 その為、乗車はグランクラスのある10号車から乗る必要があった。

 シンディ:「ん?」

 “はやぶさ”1号は、その前方に“こまち”1号を併結している。
 隣の11号車がそのグリーン車になっているのだが、そこに1機のメイドロイドがいた。
 メイド服を着ているので、すぐに分かる。
 規格上は『平賀規格』であろうが、髪型にはバリエーションが持たされており、シンディが見かけたロイドは金髪のロングをツインテールにしていた。
 もしすぐ近くにマスターたる人間がいれば見て見ぬふりをするところだが、見当たらなかったので声を掛けてみることにした。

 シンディ:「よっ、任務中?」
 メイドロイド:「あっ、シンディ様!どうも!今、御主人様がお手洗いに行かれたので、ここで待っている所です」
 シンディ:「そうか。ご苦労さん」
 メイドロイド:「いえ。私達なんてガラクタ扱いのマルチタイプ様に声を掛けてもらえるなんて光栄です」
 シンディ:「そんなことないよ。エミリーはどう思ってるか知らないけど、私は少なくとも今はあなた達を『下等で愚かな機種』とは思っていないよ」

 つまり、昔はそう思っていたということ。

 メイドロイド:「そうなんですか?」
 シンディ:「少なくとも、あなた達のハウスキーパー(※)に私は思い知れされたわ」

 ※本来は1つの家に複数雇われているメイドのリーダー格のこと。メイド長と言えばこれ。転じて量産されたメイドロイドにとっては、当初の試作機で今も尚稼働しているベテラン機がそう呼ばれて尊敬されている。何機かが該当するが、ここでは七海のこと。

〔17番線に、6時58分発、“はやぶさ”1号、新函館北斗行きと“こまち”1号、秋田行きが17両編成で参ります。……〕

 ホームに接近放送が鳴り響く。

 メイドロイド:「御主人様が戻られます」

 メイドロイドは階段の方を見て言った。

 シンディ:「じゃ、私はそっちに戻るわ。悪かったね。任務中に邪魔して」
 メイドロイド:「いえ、滅相もございません」

 シンディは10号車の方に向かった。
 もっとも、10号車の乗車口に並ぶ者はいなかった。
 11号車の方を見ると、意外にもアリスと同年代と思しき若い女性がいた。
 けして、裕福な老夫婦だけがユーザーではないということだ。

 シンディ:(七海の意外な抵抗か……)

 列車が眩いヘッドライドを光らせて入線してくる。
 その風にシンディの金髪ポニーテールと、スリットの深いロングスカートの裾が靡く。
 “東京決戦”の際に平賀を捕捉した前期型のシンディ、手持ちの大型ナイフで平賀を刺殺しようとしたが、力が雲泥の差である七海の抵抗にあった。
 もちろんシンディは、すぐに七海の首根っこを掴んで頭からコンクリートの壁に突っ込ませるなどの攻撃をしたが、それでも怯まなかったことを思い出した。

 シンディ:(あいつらが束になって抵抗してきたら、さすがの私も手こずるかもしれないね……)

 マシンガンで一斉掃射すれば一網打尽にできるかもしれないが、今はそれを取り外されてしまっている。

〔「17番線に到着の電車は、東北新幹線、北海道新幹線直通“はやぶさ”1号、新函館北斗行きと秋田新幹線直通の“こまち”1号、秋田行きでございます。次は、仙台に止まります。……」〕

 ドアが開くが、全車両指定席の列車で、ここで下車する旅客などいるわけが無かった。

 シンディ:「社長、おはようございます」
 敷島:「おっ、シンディか。ちゃんと来たな」
 シンディ:「はい。それで、奥様がこれを社長にお渡しするようにと」

 シンディは持っていたアルミ製のアタッシュケースを渡した。

 敷島:「中身は何だ?」
 シンディ:「Rデコイです」
 敷島:「ブッ!」

 Rデコイとはアリスの開発した爆弾のこと。
 手榴弾を改造したもので、起爆スイッチを入れると、特殊な光やアラーム、信号が発せられる。
 人工知能の劣るロボットはそれに引き寄せられてしまう。
 そして、粗方引き寄せられたところで爆発するというものだ。
 バージョン・シリーズや、その他のテロロボットには効果てきめんであった。
 恐らく、北海道で遭遇した“黒いロボット”にも効くのではないかと思われる。

 シンディ:「奥様が、あの黒いロボットにも効くだろうとのことです」
 敷島:「効くかもしれんが、これ……サツに見つかったら一発でタイーホものだぞ。……これはお前が持っててくれ」
 シンディ:「分かりました。それじゃ、私は隣の車両に行きますので」
 敷島:「そうしてくれ」

 シンディが9号車のグリーン車に行ってしまうと、敷島は溜め息をついた。

 敷島:(アリスのヤツ……)

 確かに今回の北海道行きは、表向きはボーカロイド達の興行である。
 しかし実際は、他に目的がある。
 ミクの持ち歌に隠された謎。
 ミクだけが他のボーカロイド達とは一線を隔す特別な存在である理由。

 リン:「あっ、シンディ!おはよう!」

 シンディが9号車に行くと、リンがブンブンと手を降った。

 シンディ:「相変わらず、元気だね。アタシの席はここでいいの?」
 エミリー:「そう、ここ」

 エミリーは自分の隣の席を指さした。
 通路を挟んで隣の席では、ボーカロイド達が座席を向かい合わせにしている。
 と言っても、最近の鏡音姉弟は携帯ゲーム機の方にハマっているようだ。

 KAITO:「リン!手伝ってくれ!よそ見してる場合じゃない!協力して尾を切断するぞ!キミが頼りだ!」
 リン:「了解!んじゃ、合わせて行くよ!」
 シンディ:「KAITOもゲームにハマッたか……」
 MEIKO:「そうなのよ。『女性ばかりで落ち着かない』なんて言って、そっち側に行っちゃって……」
 シンディ:「イケメンボーカロイドとして女性ファン対応係の言うセリフじゃないよね、それ」
 エミリー:「ゲーム内でも信頼関係は厚いということだ」
 シンディ:「いいのかなぁ……。あ、プロデューサー、おはようございます」
 井辺:「あ、シンディさん。おはようございます。お久しぶりです」
 シンディ:「ええ。今じゃ、姉さんがいない時の代役に下がってしまいましたからね」
 井辺:「そんなことありませんよ。エミリーさんと同様、あなたも事務所の華でした。また、いつでもお待ちしておりますよ」
 シンディ:「ありがとう。でもあまり出しゃばると、姉さんにブッ飛ばされるからなぁ……」
 エミリー:「何か言ったか?」
 シンディ:「ホラホラ」
 井辺:「平和的にお願いしますよ」

 列車は徐行区間を過ぎていた為、最高速度を目指して一路北へと突き進む。
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本日の雑感 20170530

2017-05-30 19:21:20 | 日記
 いや、今日は別に大したことはしていない。
 午前中にブログを1本更新した場合は、本業が公休日で何も予定が無い日だと思って頂いて差し支えない。
 せいぜい、自分の部屋の布団乾燥と掃除、ドラッグストアに買い物に行ってきただけである。
 家の近くにパチ屋があり、中から“海物語”のBGM(“あっぱれジャパン”ではなかった。今は流れてない?)でも流れて来たような気がしたが、友連れでない限りは入ることが無い。
 スロットではジャグラーをやっていたことがあったが、目押しが全然できないのですぐに止めた。
 警備員には必要な動体視力を鍛えるという点ではいいかもだけどね。
 だからって、警備員にパチスロ好きが多い理由はそれではありませんよ。

 再び敷島孝夫の物語に戻ったわけだが、ぶっちゃけ敷島のキャラが立ち過ぎて、他のキャラが目立っていないような気がする。
 やはりそこは所詮、素人の作品というわけだ。
 実は今、中途半端な立ち位置の井辺翔太だが、彼が本来は敷島の後を継いで主人公になってもらう予定だったのだ。
 敷島には第一線を退いてもらい、あくまでもアドバイザー的な役割を果たすという役割だ。
 それに失敗したので、今度はロイドとしてはキャラが立っているシンディに主人公でもやってもらおうと思って、タイトルを彼女にしてみたのだが、やはり敷島がいないとキャラが立たないことが分かり、こちらも頓挫した。
 やはり、日本人版ブルース・ウィリスみたいなものだからねぇ……。

 当作品においては“ユタと愉快な仲間たち”シリーズの主人公、稲生勇太と同じく『歩く生存フラグ』なのである。
 せっかくだから、“ユタと愉快な仲間たち”シリーズについても、少し語ろう。
 ダンテ門流に登場する魔道師の中で、多くの白人女性が登場する理由だが、別に私自身が白人女性が好きというわけではなく、実は『殺しやすい』からである。
 洋画を観てもらえれば分かるが、実は意外と黒人は死んでいない(ゾンビ化や瀕死の重傷は負っていたりするけど)。
 1番死んでいるのは白人男性よりも、白人女性なのである。
 何故か?
 これが1番ドラマになる上、殺してもどこからも抗議が来ないからである。
 黒人だと、やれ『人種差別だ!』とか、どこからか文句が来るんだってさ。
 なので、私もこの流れに従っているわけである。
 尚、ゲーム版“バイオハザード”シリーズでは黒人がクリーチャーに殺される確率が映画版と比べて高いのだが、これはゲームの製作者が日本人だからだろう。
 何の差別意識も無く、たまたまそうなっただけである。
 ちゃんと操作プレイヤーとして活躍する黒人も存在する。

 生存フラグとしては、主人公が存在そのものが生存フラグというのは常識だ。
 そうでないと話が進まない。
 一部のマンガでは死亡してしまう主人公もいるが、死後の世界で活躍するというストーリーだったりするので、これは死亡フラグに含まれない。
 あいにくと私ら警備員は、存在そのものが死亡フラグであることが多い。
 映画やゲームなんかでは、真っ先に敵に殺されるのが王道だ。
 私なんか、後から活躍してくれるであろう主人公の為に攻略メモを残しておこうと考えているよ。

 一般人クラスで生存フラグというのなら、バーのマスター辺りは固いかも。
 バーのある場所が敵に占拠されたりした場合は別だが(ハート様に殺されたマスターが良い例)、それ以外の中立的な場所で、しかも主人公に情報を提供する側(ケンシロウやバットに情報を提供したジョニー)であったとしたら、これは物語最後まで生き残るパターンだ。
 そして主人公がどこかに旅立った後のエンディングで、後からやってきた客に主人公の動向を語り、場面が主人公が旅を続けるシーンに切り替わって終了するパターンだな。

 敵対側は基本的に死亡フラグであり、本来はシンディもスクラップにされて終了するはずだったのだが、某名誉監督が酔っ払った勢いで紆余曲折を経て後期型として復活することが急きょ決まった次第。
 何の脈絡も無く、廃墟ホテル跡でシンディの予備ボディが見つかったのが急きょであったという証拠である。
 あと、“ユタと愉快な仲間たち”シリーズのエレーナも、本来はイリーナ組との交戦に敗れて死亡するはずだった。
 私のノートには、静岡県上空でマリアと戦い、ホウキの扱いに慣れていないマリアの不利を見事に突いて一瞬勝利を掴みかける。
 しかし、イリーナの命令に応じて駆け付けたドラゴンのリシーツァ(ノートでは名前は無かったが、イリーナが使い魔としてドラゴンを飼っているというアイディアは結構前からあった)の炎の攻撃でホウキを焼かれ、慌てて地面に降下しようとするも途中で失速、全速力の“のぞみ”号に轢かれて死亡という迷惑極まりない死に方をするはずだったんだが。
 当時はバリバリの信徒だったもんで、仏罰を大聖人様に代わって下すという勢いもあったんだな、きっと。
 なるほど。日本海の向こうから渡って来た辺さんに、ファビョられるわけだ。

 とにかく、これからしばらくは『歩く生存フラグ』が活躍しますので、よろしくお願いします。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「東京駅の朝」

2017-05-30 10:57:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月2日05:56.天候:曇 JR京葉線514Y電車内→東京駅]

 ワインレッドのラインカラーが目立つ電車が地下トンネルを突き進む。
 このトンネルは成田新幹線の建設計画の際に掘られたもので、当然ながらこの計画は頓挫してしまっている。
 残ったトンネルを京葉線に転用して活用しているわけである。

〔まもなく終点、東京、東京。お出口は、左側です。新幹線、東海道線、横須賀線、総武快速線、中央線、山手線、京浜東北線、上野東京ラインと地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 エミリー:「GPSによりますと、井辺プロデューサーも東京駅に接近しています」
 敷島:「そうか。井辺君は錦糸町から総武快速か。トンネルは違えど、同じ地下を進んでいるわけだな」
 エミリー:「はい」

 電車がホームに滑り込んだ。

〔とうきょう、東京。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 敷島達は多くの乗客と共に電車を降りた。

 敷島:「さあ、ここからが大変なんだ」

 電車は地下京葉線ホームに到着した。
 ここは地下深い所であり、地上の新幹線ホームまで行くのに15分は余裕を見なければならない。

 敷島:「待ち合わせ場所はどこだっけ?」
 エミリー:「新幹線南乗換口前です」
 敷島:「うん、そうか。……読者の皆さんの中で、それだけで場所が特定できた人は東京駅ヘビィユーザーです」
 エミリー:「誰に向かって言ってらっしゃるんですか?」

[同日06:10.天候:曇 JR東京駅構内]

 動く歩道を3つ越え、更に長いエスカレーターも昇って、ようやく地上に辿り着いた。

 エミリー:「やはりタクシーで向かわれた方が良かったのでは?」
 敷島:「いや、これも運動だ。何しろあとは、体を動かすことはあまり無いんだからな」
 エミリー:「社長のお体は社長お1人だけのものではないので、よろしくお願いしますよ」
 敷島:「井辺君みたいなこと言うなぁ……」

 待ち合わせ場所に行くと、既にボカロ達は集合していた。

 鏡音リン:「あ、社長!遅いYo〜!」
 敷島:「おいおい。新幹線が出発する時間には、まだ余裕があるだろう?」
 エミリー:「そうだ。社長は具体的な時間を指定されておられない」

 エミリーがギラッと両目を赤く光らせてリンを睨みつけた。

 リン:「怖っ!」

 因みに赤い光はサーチライトとは別であり、こちらは両目に装備されている。
 今でこそロイドは表情が豊かになってきたが、感情を表現する為のものとして装備されていた名残だ。

 MEIKO:「時間は指定しておいた方が良かったんじゃない?」
 敷島:「そうか。すっかり忘れてたよ」

 もっともボカロ達には何時のどの新幹線に乗るかは伝えてあったので、何時に来れば良いかという計算は自分でしたようだ。

 巡音ルカ:「社長、まだ井辺プロデューサーが到着されておりませんが……」
 敷島:「あれ?おかしいな。エミリー、さっきGPSで分かったんだよな?」
 エミリー:「はい。位置的には総武快速線のトンネルを。今現在は東京駅構内を進んでいるようですが……」
 敷島:「何だ。てっきり、俺達より先に着いてると思ったよ」
 MEIKO:「ちょっと待って!エミリーのGPSで、そんな地下トンネルも入るの!?」
 エミリー:「見くびるな。私のGPSは他のロイドと互換性があり……ん?」
 MEIKO:「ん?」
 敷島:「他の何のロイドと互換性を持たせたんだ?」

 すると……。

 井辺:「おはようございます!申し訳ありません。遅くなりました」
 リン:「遅いYo、プロデューサー!」
 鏡音レン:「やめろって」
 敷島:「はは、おはよう。どうした?迷子になったんかい?」
 井辺:「そうなんです。すいません。私は道を知っていたのですが、萌がどうしても任せろというものですから……」
 萌:「へへ、どうも〜!」

 萌が井辺のスーツの内ポケットか現れた。

 敷島:「萌!」
 リン:「おお!モエモエじゃん!」
 エミリー:「何故お前がここにいる?」
 萌:「それは……井辺さんを愛してるからです!
 井辺:「萌、真面目に答えてください」
 リン:「やっぱり!」
 KAITO:「いわゆる、ファンシーキャラ萌えってヤツですね。分かりました」
 井辺:「意味が違います!」
 エミリー:「今すぐ科学館に戻れ!」
 萌:「えー」
 エミリー:「えーじゃない!」
 萌:「だって……」
 エミリー:「だってじゃない!言う事聞かないとへし折るぞ!」
 初音ミク:「たかお社長、そろそろホームに行かないと乗り遅れますよ」
 敷島:「っ、そうか!しょうがない。萌なら手荷物扱いの無料で乗れるだろうから、そのまま行こう!」
 井辺&エミリー:「いいんですか!?」
 敷島:「科学館には俺から説明するよ」
 萌:「わーい!わーい!😄」
 敷島:「確かに時間的に余裕が無さそうだ。このままだと、“ホームアローン”の家族みたいになっちまう!」
 エミリー:「向こうは飛行機ですけどね」

[同日06:32.天候:晴 JR東北新幹線“はやぶさ”1号]

 敷島エージェンシーで予約した車両は3両に跨っている。
 もちろん3両分貸し切ったわけではない。
 グランクラスが敷島と、仙台から乗る平賀。
 グリーン車が東京駅に集合したベテランのボカロ達と、総合プロデューサーの井辺、社長秘書のエミリー、そして大宮から乗るシンディ。
 普通車がMEGAbyteの3人である。

 リン:「社長、1人で寂しくない?」
 敷島:「いや、俺も後ろの車両でいいって言ったんだけど、敷島峰雄社長と矢沢専務が『分際を弁えろ』ってここを指定してきやがったんだ」
 エミリー:「ものの見事に序列が付いてますね」
 リン:「芸能界の悪しき慣習だねぃ」
 敷島:「そんなことは無いと思うけど……」
 エミリー:「時間が無くて食事が用意できませんでしたけど、如何しましょうか?」
 敷島:「幸いグランクラスには弁当が付くらしいから、それで何とかするよ。それに、車内販売もあるだろ」
 エミリー:「はい」

 エミリーとリンが9号車に戻って行くと、外から発車ベルの音が微かに聞こえて来た。

〔21番線から、“はやぶさ”1号、新函館北斗行きと“こまち”1号、秋田行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 敷島:「まあいいや」

 敷島は手持ちのノートPCを取り出した。

 敷島:(なるほど。俺達みたいなのが、こうやって乗りながら仕事できるようになっているのか……)

 こうして列車は定刻通りに東京駅を発車した。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道紀行」 2

2017-05-29 23:48:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月2日05:34〜05:46.天候:曇 新木場駅りんかい線ホーム→JR京葉線ホーム]

 新木場駅りんかい線ホームに新木場行きの始発電車が到着する。

〔しんきば、新木場、終点です。JR線、東京メトロ有楽町線はお乗り換えです。1番線の電車は折り返し、各駅停車、大崎行きです〕

 ここまでの乗客が降りて行くが、この時点ではまだそんなに乗客は多くない。
 りんかい線の名に相応しく、電車を降りると潮の香りがするような気がする。
 また、風も強い。
 どちらかというと、首都高辺りから吹いてくる風が強いような気がする。
 エミリーは強い風でスリットの深いスカートが捲れ上がるのも気にせず、片手で大きなキャリーバッグを持ち、階段を上った。

 敷島:「こういう時、力持ちのロイドがいてくれると助かるな」
 エミリー:「ありがとうございます。何でもお申し付けください」

 本来なら、両手でやっとこさ抱えて登るような大型のケースをエミリーは片手で軽々と運んだ。
 改札口を出て、右手に向かう。
 ほとんどお隣さんと言っても差し支えない場所にJRの改札口があり、そこから京葉線乗り場に向かった。
 新木場駅は二層構造になっており、下層部分を有楽町線とりんかい線、上層部分を京葉線が使用している。

 敷島:「久しぶりの早起きだから眠い」

 敷島はホームで電車を待っているまでの間、大きな欠伸をした。

 エミリー:「新幹線の中でお休みになってはいかがでしょうか?」
 敷島:「そうだねぇ……」
 エミリー:「移動中はほぼ何もできない状態です。本日、会社の方は四季エンタープライズの矢沢専務にお願いしていますし、実際のことは北海道に到着してからになると思います」
 敷島:「まあ、そうだな」

 敷島が頷いていると、ようやく電車の接近時間になった。
 今日は今のところ、京葉線などの千葉方面のJR線には大きな遅れが出ているような情報は出ていない。

〔まもなく2番線に、各駅停車、東京行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この電車は、10両です。次は、潮見に止まります〕

 ワインレッドの帯を巻いた電車がやってくる。
 ヘッドライトのHIDランプが眩しく光る。
 因みにエミリーの左目(パーツ交換や点検などにより右目に変更されることもある)に仕掛けられたサーチライトはLEDになっている。
 再び電車が巻き起こす風と、折からの海風でエミリーのスカートが靡くが本人は全然気にしていない。

〔しんきば、新木場。ご乗車、ありがとうございます。次は、潮見に止まります〕

 早朝の電車ながら車内はそこそこ賑わっていたが、新木場駅でぞろぞろと降りて来た。
 上り電車よりも下り電車目的の乗客が多いのは、偏に舞浜駅までが目的地の者達だろう。
 敷島達はそんな乗客達を尻目に、先頭車両に乗り込んだ。
 運転席の後ろに立つ。
 ホームで流れる発車メロディは、特段珍しいものではない。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 先ほどのりんかい線の電車と似たチャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
 ここから東京駅までは、ほんの10分ほどだ。

〔この電車は京葉線、各駅停車、東京行きです。次は、潮見です〕

 敷島:「ボカロ達はちゃんと東京駅に向かってるかな?」
 エミリー:「御心配要りません。ちゃんと向かっております。鏡音リンだけが不規則な動きをしておりますが……」
 敷島:「それってつまり……?」

 エミリーが左目のサーチライトを一瞬光らせて答えた。

 エミリー:「はしゃぎ回っているということですね。後で、叩き聞かせておきます」
 敷島:「いや、言い聞かせてくれればいい」
 エミリー:「ゲンコツでも、ビンタでも、お尻ペンペンでも、社長のお好きな刑を言い渡してください」
 敷島:「よし。それなら、鞭打ちの刑だw」
 エミリー:「かしこまりました。あいにくですが今、電気鞭はシンディが持っていますので、シンディと合流するまでお待ちください」

 今、エミリーが巻いている腰のベルトは普通のベルトだが、同じ服装をしているシンディの場合、腰のベルトは実は電気鞭になっていたりする。

 敷島:「冗談だよ。とにかく、体罰を普通にするな。リンには言い聞かせてくれればいいって」
 エミリー:「社長がそう仰るのでしたら、そうします」

 エミリーは残念そうに頷いた。
 マルチタイプは往々にしてドSになるような設計になっているようである。

 エミリー:「社長、9号機のデイジーはいつ再稼働されますか?」
 敷島:「買い手が付くまでは難しいだろうな。ただ、何しろ孝之亟の爺さんが100%好みで設計した為に、なかなか万人受けしなくてなぁ……」

 マルチタイプ後継機でありながら、その性能を一介のメイドロイドにまで落としたというのは大きなマイナスである。
 しかしまたマルチタイプ規格の性能にするには、公安委員会の許可を取り付けなくてはならない。
 エミリーやシンディのKR団との戦いや、人間を守る為の行動が、却ってお役所関係からは危険視されてしまったのが大きい。

 敷島:「とにかく、買い手が付くまでは会社の倉庫で寝ててもらうしかない」
 エミリー:「せっかく作られたのに、マスターがいないとは可哀想です」
 敷島:「何とか買い手が付くように、俺達も売り込んでみるさ」

 稼働していなくても、維持費が掛かってしまうのがロイドだ。
 また、処分するにしても、それはそれで大きな費用が掛かってしまう。
 敷島が後期型シンディの再稼働に最終的に賛成したのは、そこが大きな理由だ。
 とはいえさすがに、バージョン・シリーズなどが暴れ回っていた中、いきなり現れたシンディにはさすがにびっくりしたが。

 エミリー:「ありがとうございます」

 彼女達のサーチライトは本来、両目に設置することが可能だ。
 しかし今はLEDだけでも十分明るい為、片目だけで良いということになった。
 鉄腕アトムは両目にサーチライトを備え、両目点灯しているが、実際は片目だけで十分足りる。
 そして何より、いくら省電力のLEDとはいえ、両目を点灯させるとバッテリーの消費が大きくなるからというのも理由だ。
 余った片目はカメラを仕掛け、今の視点を常時録画できるようにしている。
 何だかんだ言って、芸は細かい。

 尚、これから電車は地下トンネルを進むことになるが、トンネル内などの暗い所では、彼女らの瞳がうっすらと光っているのが分かる。
 これは電源ランプが人間でいう眼球部分の奥にある為、それがレンズを通して鈍い光として出てしまっているのが理由。
 要はそれでロイドがちゃんと電源が入っているかどうか判断が付くわけであるが、知らない人間が見たら不気味に見えるかもしれない。

 敷島:「今日は平日だから、もっと時間経てば満員電車になるぞ。痴漢が出るくらいの」
 エミリー:「社長、私のお尻でよろしかったらどうぞ触ってください。あ、オッパイもモミモミします?」
 敷島:「お前は痴女か!」
 エミリー:「とんでもない。私は敷島さんの忠実な秘書であり、メイドであり、性奴隷です」
 敷島:「最後だけ違う!」
 
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“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道紀行」

2017-05-28 19:41:12 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月1日14:00.天候:曇 東京都内某所 某ラジオ局]

 ラジオ局でゴールデンウィークのイベントの告知をするMEGAbyteのメンバー達。

 結月ゆかり:「5月3日から札幌ドームで、『北海道ボーカロイドフェスティバル』が行われます!」
 Lily:「私達、MEGAbyteも参加させて頂きますので、皆さんよろしくお願いします」
 未夢:「楽しいイベントなので、是非来てくださいね〜」
 パーソナリティ:「MEGAbyteの皆さんも参加されるということですが、あえて五大ドームツアーでなく、札幌ドームのみでのイベントにしたのはどうしてなんでしょう?」
 Lily:「初音ミクさんなど、大元の開発メーカーが北海道にあるんです。言わば、北海道はボーカロイド発祥の地でもあるんです。それに因んだそうです」
 パーソナリティ:「そうなんですね。MEGAbyteの皆さんとしては……」

[同日同時刻 天候:曇 ラジオ局の外]

 ラジオ局の外に止まっている1台のクラウン。
 車内のラジオからは、今正にMEGAbyteが出演しているラジオ番組が受信されていた。

 鷲田:「明日から出発なのか?敷島社長」
 敷島:「ええ、そうですよ」

 敷島はリアシートに座って、運転席と助手席に座る鷲田警視と村中課長と話をしていた。

 鷲田:「いい加減、そろそろ無茶ぶりはやめてもらいたいものだね」
 敷島:「私はボーカロイド達の運用責任者としての責務を果たすだけですよ」
 村中:「はははっ!そう言うと聞こえはいいがね」
 鷲田:「ボーカロイドだけではないだろう?社長の秘書さんにも関することではないかね?」
 敷島:「どうですかねぇ……」

 車の外ではエミリーが周囲を警戒していた。

 鷲田:「私としては、まだ金髪の方が話が通じそうでいいと思うんだがね」
 村中:「そうですか?あのクールな人もいいと思いますよ」
 鷲田:「村中君!」
 村中:「おっと、失礼!」
 敷島:「北海道にはエミリーやシンディも連れて行きます」
 鷲田:「ほお?いいのかね?奥さんの方の護衛は……」
 敷島:「アリスは結構強いですし」
 村中:「はははっ!」
 敷島:「それに身の周りの世話の方はメイドロイドがいますし、警備に関してはあいつ自作のマリオとルイージがいます」
 鷲田:「なるほど。人間は信用できんということか」
 敷島:「あいにくと。ロボットをテロに使おうとする人間かいたのは事実です」
 村中:「ま、気持ちは分かる」
 敷島:「何かあったら連絡はしますよ?」
 鷲田:「そうしてもらいたいものだね。何しろ、KR団の首領らしい者をまだ検挙しておらん」
 敷島:「そうですね」

 するとエミリーがこちらを向いた。

 敷島:「すいませんが、そろそろ時間のようです」
 村中:「ああ。余計な時間を取らせて済まなかったね。とにかく、気をつけて」
 敷島:「どうも」
 鷲田:「会社に帰ったら、今回の旅行の行程表と日程表を送ってほしいのだが?」
 敷島:「ええ。ファックスにします?それともメール?」
 村中:「メールで」
 鷲田:「ファックスだ。メールだとどこで流出するか分からん」
 敷島:「分かりました」

 敷島がリアドアを開けた。
 スッと降りてすぐにドアを閉める。
 鷲田達が乗ったシルバーのクラウンは、スーッと都道を走り去って行った。

 エミリー:「社長、大丈夫でしたか?」
 敷島:「ああ。まさか、ここで警視庁の特別捜査班に職質食らうなんてな」
 エミリー:「MEGAbyteのラジオ出演がまもなく終わる予定です」
 敷島:「井辺君に教えてあげよう」

 敷島は自分のスマホを出した。

 敷島:「井辺君に急な別件が入ったもんだから、代わりに俺が来てみたものの、どうやらその必要は無かったみたいだな」
 エミリー:「はい」

[同日17:00.天候:曇 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島:「どうかな?」
 整備士:「はい、特に異常ありません」
 敷島:「よしよし」

 明日に備えてボーカロイド達の整備は怠らない。
 もっとも、平賀が専属整備役として同行してくれることになっている。
 最後の整備をしていたのは、巡音ルカ。

 敷島:「ルカ、どうだ?調子は?」
 ルカ:「あ、はい。特に異常ありません」
 敷島:「明日から、よろしく頼むな?」
 ルカ:「はい、お任せください」

 もっとも、明日は移動だけで、実際はその次の日からである。

 敷島:「ん?」

 ボーカロイドが発声練習(という名の調整)を行う部屋は、ちゃんと防音が施されている。
 それでも鉄扉の外には聞こえるものだ。
 初音ミクの声がした。

 敷島:「この歌は……?」

 敷島は鉄扉のドアを開けた。

 初音ミク:「……騒ぐな海鳥♪波よ♪船を揺らすな〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪」

 歌い終わった後で、ミクがハッと後ろを振り向く。

 ミク:「たかお社長!」
 敷島:「調整は上手く行ってるみたいだな」
 ミク:「はい、おかげさまで」
 敷島:「いつ聴いても、お前の歌は素晴らしい」
 ミク:「ありがとうございます」
 敷島:「何度も言うように、お前は兵器じゃない。歌を聴いた人間を幸せにするボーカロイドなんだからな。何も気にせず、持ち歌をきちんと歌えばいい」
 ミク:「はい!」

 敷島は社長室に戻った。

 敷島:「明日1日のことは、矢沢専務にお願いしたし……。あとは大丈夫かな?」
 エミリー:「はい、大丈夫です。……あっ、井辺プロデューサーが戻られたようです」
 敷島:「そうか。井辺君も明日から北海道まで来てくれることになっているからな、ちょっと話をしてこよう」

 敷島は今度は隣の事務室へ向かった。

[5月2日05:32.天候:曇 東京都江東区東雲 TWR東雲駅]

 敷島:「朝早いな。今日は1日、移動だけだ」
 エミリー:「そうですね」

 敷島とエミリーは始発電車を待っていた。

 エミリー:「社長、タクシーで東京駅まで行っても良かったんですよ?」
 敷島:「いや、無駄な金は使いたくない。都営バスの始発が6時半くらいだとは……」

〔まもなく2番線に、電車が到着します。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 東雲駅は高架駅であるが、屋根の無い場所で待っていると、首都高を走る車の喧騒な音で放送の声が聞こえにくい。

〔2番線の電車は、各駅停車、新木場行きです〕

 りんかい線の車両が入線してくる。

〔しののめ、東雲。2番線は、各駅停車、新木場行きです〕

 まだガラガラの始発電車に乗り込んだ。
 途中駅のせいか、発車メロディが僅か数秒しか鳴らない。

〔2番線から、電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 ドアチャイムの音と共にドアが閉まる。
 ガラガラの車内でもエミリーは座席には座らず、敷島の横に立つだけである。
 尚、大きなキャリーケースを持っているが、エミリーにとっては空のダンボール箱のようなものである。

〔「次は新木場、新木場、終点です。JR京葉線、東京メトロ有楽町線はお乗り換えです」〕

 電車はほぼ直線の線路を東へ向かってグングンと進む。
 昇り始めた朝日は雲間から僅かに覗く程度であるものの、けして幸先は悪くないスタートだった。

 敷島:「ボーカロイド達は直接、東京駅に行くんだったな」
 エミリー:「そうです。井辺プロデューサーもです」
 敷島:「うん」
 エミリー:「シンディは大宮駅から、平賀博士は仙台駅から乗られます」
 敷島:「予定通りに行くといいな」
 エミリー:「はい」
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