報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む宿」 2

2024-04-30 21:37:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日15時00分 天候:晴 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園1階・大浴場(男湯)]

 高橋「あ!不肖の弟子!あ!高橋正義が!あぁっ!?先生をお背中を~をっ!お流し奉り候~也~~~~~ッ!あ!?」
 愛原「……うん。ここだけではお願いするよ、ここだけは」
 高橋「そんなこと仰らず、家でも御用命くだせぇ!」
 愛原「う、うん。絶対ヤダ」

 ところで、さっきから気になっていることがある。
 このホテル、私達の他に誰一人として宿泊客を見ていない。
 1階のロビーやレストランもそうだったし、この大浴場でもだ。
 確かにこのホテル、元々は宗教法人天長会の宿泊施設としてオープンしたのが始まりである。
 それを一般客にも開放したのが始まりであるから、どうしても一般客は少ない傾向がある。
 それでも週末である以上、何組かの宿泊客はいてもいいと思うのだが……。
 宗教施設の1つということもあり、宿泊料金は他の温泉旅館と比べて割安だと思うのだが。

 女性スタッフ(半鬼)A「失礼致します」
 女性スタッフ(半鬼)B「垢すりサービスに参りました」
 愛原「おーっ
 高橋「あぁ?」
 愛原「ま、まさか、これも上野利恵からの……」
 半鬼A「はい。副支配人からの御命令です」

 半鬼の女達は、湯女の姿をしていた。
 見た目は人間だが、瞳の奥が赤かったり、ピンク色だったりと人間では有り得ない色をしている。
 『最も危ない12人の巫女』がリサ1人だけになったことで、『巫女増やし』の儀が行われたことにより、天長会の信者達が半鬼と化した。
 その割には、男もなっているのだが?

 高橋「要らねーよ。俺の仕事取るんじゃねぇ。シッシッ」
 半鬼A「高橋様には、別のスタッフを御用意させて頂いております」
 高橋「あぁ?」

 すると、ぞろぞろ入って来たのは男の半鬼……じゃない!

 

 男鬼「えー、高橋様が『男好き』とお伺いしましたので、是非私共の方で三助をと……」
 愛原「ほ、本物ォ?!」

 すると青鬼の姿をした男は、人間の姿に戻った。
 いや、化けたというべきか。

 男鬼「私も『半鬼』ですよ。しかし、力を開放すると、このように見た目も鬼の姿になりまして……」
 愛原「リサよりも、更に鬼らしい姿だ……」
 男鬼「へっへ。それでは女達に代わり、私共の方で垢すりを……」
 高橋「

[同日同時刻 天候:晴 同ホテル1階・大浴場(女湯)]

 半鬼(女)C「どこかお痒い所ありますかー?」
 パール「いや、特に無い」

 半鬼の女達から普通に垢すりを受けているパール。

 半鬼(女)D「お客様、結婚されて何年目ですかー?」
 パール「いや、今月結婚したばっか」
 半鬼D「わぁ!新婚さんなんですねー!お相手の方は、どんな方なんですかー」

 ドゴーン!ドゴン!ドゴーン!

 半鬼C「きゃっ!」
 半鬼D「な、なに!?」
 パール「今の音……それに、男湯の方から聞こえたということは……。うん。私のダンナ、今、男湯でスーパーマグナムぶっ放したヤツ」
 半鬼C「ええーっ!?」

[同日16時00分 天候:晴 同ホテル1階ロビー→マッサージコーナー]

 上野利恵「この度はうちの従業員が、真に申し訳ございません!」
 愛原「いや、半鬼達はあなたの差し金だということなので、あなたにも責任があるよ?」
 利恵「はい、真に申し訳ございません!」
 高橋「くっそ!あのクソ鬼!マグナムでも死なねぇ!」
 愛原「そりゃ鬼だもの……。すいませんね、マグナム3発も命中させちゃって」
 利恵「いえいえ、こちらの責任ですので……」
 高橋「ホントだよ」

 因みに高橋にマグナムを3発も撃ち込まれた青鬼型の半鬼は、半死半生で救護室に運ばれた。
 シティホテルでも救護室がある所は珍しいが、このホテルには一応ある。
 但し、医師や看護師などが常駐しているわけではないそうだ。
 あくまでも、学校の保健室のようなもの。

 愛原「えらいサービスが良いことはけして悪いことではないんだけど、過剰サービスがいいかって言うと、ちょっとね……」
 利恵「仰る通りでございます」
 パール「マサ。まだ夕食まで時間あるみたいだし、部屋に戻ってよう」
 高橋「あ、ああ」
 パール「先生。マサは私が部屋に連れて行きますから。御夕食まで」
 高橋「ああ、済まない」
 高橋「クッソ!」
 パール「マサも我慢する所は我慢しないと、先生に迷惑掛かるんだからね?」
 高橋「わ、分かってるよ!」

 2人は先にエレベーターに乗って行った。

 愛原「あっ、そうだ。じゃあ、俺は時間までマッサージお願いしようかな」
 利恵「かしこまりました!お任せください!」
 愛原「ああ。温泉の後はな、マッサージで体をほぐしてナンボだろう」
 利恵「さようでございますね。どうぞ、奥のマッサージコーナーまでご案内させて頂きます」
 愛原「ありがとう。まずはボディケアがいいな」
 利恵「ボディケアでございますね」

 私は大浴場に併設されたマッサージルームに案内された。
 そこに専門のスタッフがいるのだろうと思いきや……。

 

 上野凛「いらっしゃいませ。本日、マッサージを担当させて頂きます上野凛です」

 何と、利恵の長女、凛がいた。
 しかも何故か、体操服にブルマ。

 上野理子「あ、アシスタントの……う、上野理子です……」

 次女の理子もいる。
 理子も同じ姿をしていた。

 愛原「こ、これは一体!?」
 凛「陸上部ではストレッチの他に、マッサージをやったりもするので、私が適任だと母に言われまして……」
 愛原「そ、そうなのか!で、でもその恰好は……?」
 凛「リサ先輩が、『お前も先生にブルマを見せないと殺す』と言われまして……」
 愛原「うちのリサが本っ当すいません!」
 理子「お姉ちゃんの場合、陸上部のユニフォームでもいいんじゃ?」
 愛原「あー、確かにな」
 凛「すいません。今、スパッツしか無くて……」
 愛原「なるべく早くブルマを導入するように!」
 凛「は、はい!」
 愛原「ま、それはそれとして、早速お願いしようかな」
 凛「はい!それでは、そこにうつ伏せに横になってください」
 愛原「はいよ」

 私はベッドの上に横になった。

 上野利恵「違うでしょ!」

 と、そこへ母親のダメ出しが入る。

 利恵「凛がメインでマッサージをするわけだから……理子!」
 理子「は、はい!」
 利恵「あなたが愛原先生に、膝枕をして差し上げなさい」
 理子「ええーっ!?」
 利恵「愛原先生の為よ。早くなさい」
 愛原「いいのか?お前の娘だろうが?」
 利恵「『人間の男の味』を早くから覚えさせるのも、鬼の世界では当たり前です」
 愛原「何だか厳しいな……」
 利恵「先生。女子中学生の膝枕、どうぞお楽しみください」
 愛原「……母親の言う事じゃねーからな?」

 とにかく言われた通り、私は正座する理子の太ももと太ももの間に顔を埋めさせたのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む宿」

2024-04-30 11:36:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日13時00分 天候:晴 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園]

 車は県道からホテルの正門へと入った。
 藤野の研修センターみたいに、鉄扉が堅く閉ざされているということはない。
 敷地内に入ってから、運転手がクラクションを3回ほど鳴らす。
 そして、ロータリーをゆっくり旋回しているうちに、正面玄関からぞろぞろと従業員が出て来た。

 運転手「着きました。お疲れ様でした」
 愛原「ありがとう」

 そして車は、正面エントランスの前に止まる。

 上野利恵「お待ちしておりました。愛原先生!」

 上野利恵が外から、ハイエースのスライドドアを開ける。

 利恵「東京から遠路遥々ようこそお越しくださいました」
 愛原「い、いや、大した距離じゃない。新幹線で1時間ちょいだし……」
 利恵「さあ、どうぞ。中へお入りください」
 愛原「う、うむ……」

 何回か来ているホテルだが、ここまでの大歓迎は初めてかもしれない。

 愛原「あー、それより、昼食がまだなんだが……」
 利恵「それはそれは、お腹が空かれましたことでしょう。あちらのレストランにて、御昼食を御用意してございます」

 このホテルには2つのレストランがあり、1つは最上階にある展望レストラン。
 主に宿泊客の朝夕食会場としての用途である。
 また、イベントホールとしての用途もあるらしい。
 もう1つは、日帰り入浴客などが利用する1階のレストラン。
 ロビーと隣接しているので、カフェラウンジとしての用途もある。

 利恵「チェックインは後ほどということで、まずは御昼食をどうぞ」
 愛原「あ、ああ、済まない」

 私が緊張しているのは、利恵達がただ単に私を招待しただけではないと想定しているからだ。
 リサがいれば、彼女達に睨みを利かすことくらい造作も無いことだが、今はいないので。
 私の血液や老廃物で良かったら、病気にならない程度であげても良いのだが……。
 レストランに行くと、『愛原学探偵事務所御一行様』と書かれた札が置かれており、そこに松花堂弁当と瓶ビールが置かれていた。

 愛原「ええと……」
 利恵「どうかなさいましたか?」
 愛原「これ、料金は如何ほどになりますのやろ?」
 利恵「私共から、愛原先生へのおもてなしです。どうぞ、御自由に召し上がってください」
 愛原「しかし、昼食までは招待プランに入っていないだろう?」
 利恵「今しがた入れました。どうぞ、御自由に」
 高橋「せ、先生。『タダより高い物は無い』と言いますが……」
 愛原「そ、そうだな」

 私を妖艶な目で見つめる利恵の目、瞳が赤く光っている。
 これは……鬼の女が獲物を物色する目である。
 たまに、リサもそういう目をすることがある。

 愛原「因みに今日って、満月だったっけ?」
 利恵「いえ、半月くらいだったかと思いますが」

 妖力が最大限になる満月じゃないのに、これか……。

 パール「頂きますか?」
 愛原「覚悟を決めて頂こう」
 高橋「先生がそのように仰るのならば」

 ビールは普通の味だったし、松花堂弁当も美味かった。
 『鬼の秘薬』が入っていないか、凄く気になったが、特に変わった味はしなかった。

[同日14時00分 天候:晴 同ホテル1階フロント→7階客室]

 昼食を食べた後、14時からチェックインできるらしい。
 私はフロントに行った後、宿泊者カードにペンを走らせた。

 利恵「ありがとうございます。それでは、お部屋までご案内致しますね」
 上野凛「愛原先生、いらっしゃいませ!」
 愛原「おー、凛ちゃんか。お世話になるよ」

 副支配人兼女将の利恵と同様、凛もまた仲居の着物を着ていた。
 妹の理子はまだ見かけないが、この姉妹は『元祖半鬼』ともいうべき存在で、本当に鬼の母親と人間の父親の間にできたハーフである。
 エレベーターに乗り込んで、7階の客室に向かう。

 利恵「こちらでございます」

 高橋とパールは、ツインの洋室だった。
 私はというと、1人部屋のシングルルームみたいな部屋……かと思いきや!

 凛「こちらです、先生」
 愛原「これは……1人で泊まるには広くないか?」

 4人布団を並べても、まだ余裕がある部屋だった。
 恐らく、高橋達が泊まるツインルームよりも広いだろう。

 凛「母が、『愛原先生の為に』と。こちらで、『愛原先生をおもてなしさせて頂くのだ』と。『その為には、部屋は広い方が良い』とのことです」
 愛原「それはありがたいことだが、その『おもてなし』は1泊で終わるるのかい?」
 凛「春休み目一杯使うことになるかもしれませんねw」
 愛原「……それ、リサの前でも言えるか?」
 凛「あっ……!」
 利恵「何かございましたか、愛原先生?」
 愛原「あ、いや、1人で使う部屋の割には、結構広いなと思って」
 利恵「この広い空間で、惰眠の限りを貪り尽くして頂きたく存じます」
 愛原「寝てていいの!?……いや、せっかく温泉に来たんだからさ、温泉に入りたいよ」
 利恵「それもそうですね」
 愛原「浴衣はそこにあるんだっけ?」
 利恵「さようでございます。タオルとかも、そちらに」
 愛原「そうか。高橋達誘って、大浴場に行こう。ちょっと、浴衣に着替えようかな」
 利恵「どうぞどうぞ」
 愛原「こういうのはな、着替えてナンボだろ」
 利恵「そうですね。お寛ぎになってください」
 愛原「その前に、夕食って何時からだっけ?」
 利恵「夕方6時からとなっております」
 愛原「18時か。まだまだ時間あるな」
 利恵「はい。ごゆっくりお寛ぎくださいませ。御夕食はお疲れの先生の為に、『精の付く特製料理』を御用意させて頂きます。夜には『スペシャルイベント』もございますので、何卒宜しくお願い致します」
 愛原「う、うん。キミ達にとって、むしろそれが目的だろうね。良かったねー。まだリサが目を覚ましていなくて」
 利恵「さようで……」
 凛「リサ先輩がいたら、できないもんねー」
 利恵「凛。後で、理子も呼んで来なさい」
 凛「理子も!?理子はまだ中学生だよ!?」
 利恵「4月から高校生です。関係ありません。鬼の女の『元服』は『初潮が来たら』です。『初潮=処女卒業』です。それを何ですか、あなた達は!」
 凛「そんなこと言ったって……」
 愛原「いや、ちょっと2人とも!今、ヤベェ話してるから、ちょっと黙っててくれ!」
 利恵「も、申し訳ございません!ハードボイルド探偵の愛原先生には……西村寿行作品のような『おもてなし』が必要という情報を得まして……」
 愛原「その情報、どっから仕入れて来たァ!?」

 規制が緩々だった半世紀前の名作家である。
 エロ本はその頃から販売に規制がされつつも、小説に関しては手つかずだった。
 その為、うっかり読んでしまった中高生の性癖が飴細工の如く、ねじ曲がったことは言うまでもない。

 利恵「リサ姉様からです」
 凛「リサ先輩からです」
 愛原「やっぱり!」

 リサの部屋から、私が隠し持っていた西村寿行先生の作品が見つかったことから、リサが怪しいと思ったのだが、実際その通りだったようだ。
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の北関東行」 2

2024-04-28 21:43:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日11時08分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東日本・東京駅新幹線ホーム→東北新幹線257B列車1号車内]

 

 やってきた列車は、“はやぶさ”の間合い運用で使用されるE5系と呼ばれる車両だった。
 前方に“こまち”用のE6系などが連結されているわけではなく、10両だけの単独編成である。
 リサはいないので特に先頭車などの縛りは無いのだが、喫煙所に最も近い車両ということで、最後尾の1号車に乗り込んだ。
 助手の高橋とパールが喫煙者だからである。

〔20番線に停車中の列車は、11時8分発、“なすの”257号、郡山行きです。この列車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から4号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 座った座席は、3人席。
 そこに並んで座った。
 私が窓側に座り、中央に高橋、通路側にパールといった感じ。

〔「お待たせ致しました。11時8分発、“なすの”257号、郡山行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時刻が迫り、ホームから発車ベルが聞こえて来る。

〔20番線から、“なすの”257号、郡山行きが発車致します。次は、上野に、止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 発車までの間、私は買った缶ビールの蓋を開けて一杯飲んでいた。

 愛原「かーっ、これだな!」
 高橋「お元気になられました?」
 愛原「おかげさまで」

 そして、ホームから甲高い客扱い終了合図のブザーが鳴ると、ドアが閉まる。
 車両の規格がほぼ統一されているJR東海道新幹線であればホームドアが付いているが、バラバラなJR東日本側ではホームドアが付けられないようである。
 なので、車両のドアが閉まれば発車する。

 愛原「あたりめあるか?」
 高橋「あ、はい。どうぞ」
 愛原「やっぱ旅行気分はな、缶ビールとつまみだよな」
 高橋「おっしゃる通りです」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“なすの”号、郡山行きです。次は、上野に、止まります。……〕

 列車が走り出す。

 高橋「先生。向こうの駅に着いたら、どうするんですか?」
 愛原「ホテル専用の送迎車が来ることになっている。それに乗って、まずはホテルに向かう。なぁに、安心しろ。駅に着いて、喫煙所で一服する時間は確保している」
 高橋「先生……!俺達の為に、何と勿体ないお気遣いを……!」
 愛原「大したことじゃない。ホテルも客室内は喫煙可だから、まあ大丈夫だろう」
 高橋「ありがとうございます」

 まあ、私はどちらかというと嫌煙家だから、2人とは別々の部屋がいいんだがな。
 ただ、1人部屋だと狭いか。
 因みにリサの意識はまだ戻っておらず、点滴治療などが行われているという。

[同日12時20分 天候:晴 栃木県那須塩原市大原間 JR東北新幹線257B列車1号車内→那須塩原駅]

 新幹線に関しては、順調な運行を続けていた。
 小山駅では後続列車の追い抜きは行われず、宇都宮駅3分停車で行われた。
 それから、下車駅に那須塩原駅。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。宇都宮線、黒磯方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、新白河に止まります〕

 愛原「無事に着いたな」
 高橋「それに、晴れて来ましたね。これなら、蓮華達は襲って来れませんよ」
 愛原「それな」

 上野利恵一派は鬼でも、リサの系譜に近い為に昼間でも活動できる。
 しかし、栗原蓮華一派は昼間の太陽が弱点である為、外に出ることができない。

〔「まもなく那須塩原、那須塩原です。お出口は、左側です。那須塩原で、3分ほど停車致します。発車は、12時23分です。発車まで、しばらくお待ちください。那須塩原から宇都宮線下り、黒磯行きは、7番線から12時33分の発車です」〕

 列車はグングン速度を落として行き、下り副線ホームに入線した。
 本線にはホームが無いので、そこを通過列車が猛スピードで通過して行くわけである。

〔ドアが開きます〕

 ドアチャイムではなく、自動アナウンスの後でドアが開く。

〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。2番線に到着の電車は、12時23分発、“なすの”257号、郡山行きです。新白河、終点郡山の順に停車致します。……」〕

 列車を降りた私達は、すぐに改札口に向かうのではなく、ホーム上の喫煙所に向かった。
 私は喫煙所の中には入らず、ホームの自販機でお茶を飲むことにする。

[同日12時40分 天候:晴 JR那須塩原駅西口→送迎車内]

 高橋夫婦の喫煙タイムが終わると、ようやく改札口に行く。
 非喫煙者からの目線で、喫煙者の喫煙タイムは物凄く効率が悪いように見えてしまう。

 運転手「お待ちしておりました!愛原様ですね!」
 愛原「あ、はい。愛原です」

 那須塩原駅に行くと、ロータリーに白いハイエースが止まっていた。
 佐元氏に事務所から東京駅まで乗せられたハイエースと違い、何のカスタムもされていない。
 せいぜい、黒い明朝体で、『板室温泉ホテル天長園』と書かれているくらいか。
 『天長会』という紺色の法被を着ていた。
 見覚えのある男だった。

 運転手「お待ちしておりました!」
 愛原「待って!あなたは確か、八王子で会った……」
 運転手「奇遇ですね。副支配人の指示で、愛原様達をお迎えに参りました。どうぞ、お乗りください」

 八王子の東横インで挨拶してきた、上野一派の『半鬼』。
 そんな彼が、助手席後ろのスライドドアを開ける。
 『半鬼』とはいうが、遺伝子的な『半鬼』の上野姉妹と違い、宗教法人天長会の信者達はまた違う存在らしい。
 見た目は普通の人間。
 しかも、日光に当たっても全く平気。

 愛原「ありがとう」

 私達は車に乗り込んだ。

 愛原「他にも誰か、宿泊者が乗って来るの?」
 運転手「いえ。今回は愛原様方だけでございます。それでは、出発致します」

 運転手はリアドアを閉めると、運転席に乗り込んで車を走らせた。

 愛原「ホテルの方は大丈夫ですか?栗原蓮華一派との小競り合いがあったと聞きましたが……」
 運転手「はい。夜しか活動できない連中と違って、昼間も活動できる私共の方が遥かに有利ですから。利恵様のおかげです」

 利恵から『血』を分けてもらったことで、『半鬼』と化した者は、利恵に心酔するようになるようである。
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物語の途中ですが、ここで帰省のもようをお伝えします。

2024-04-28 14:53:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2024年4月28日06時40分 天候:晴 東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目 バスタ新宿→京王バス9551便]

 
 JR新宿駅新南口を出た所にある、バスの発車票。
 航空便のタイムテーブルのよう。

 
 バスタ新宿内にあるバスタ新宿の模型。

 
 バスタ新宿内の案内板。

 
 京王バス9551便、仙台行きはA2番から出発。
 尚、壁沿いに並ぶのではなく、車道沿いの柵前に並ぶもよう。

 
 発車標。
 因みにA2や隣の乗り場からは、羽田空港や成田空港行きのバスも出るので、外国人の待ち客も多い。
 仙台行きのバスに、それらしいのは乗っていなかったもよう。
 朝早過ぎるからいないのか、それともマイナーだからなのか……。

 
 私の席は最前列、運転席の真後ろ。
 京王バスでは3列シートといっても、独立3列シートではなく、進行方向左側のA席とB席が2人掛けで、C席が1人用というタイプ。
 私はC席なので、1人席。
 また、車内は時間無制限の無料WiFi付き。

 
 肘掛けの下には、充電用コンセントもある。

 
 シートピッチは広く、人権無しの私の身長なら楽に足を伸ばせる。
 尚、何故か最前列席にだけフットレストが無い。
 また、撮影するのを忘れてしまったが、ヘッドレストは枕(ピロー)付き。
 夜行用の間合い運用だということが分かる。
 バスは6時40分、定刻に出発。

[同日08時05分 天候:晴 埼玉県羽生市弥勒 東北自動車道・羽生パーキングエリア]

 乗務員氏「担当乗務員は、京王バス○○営業所の○○です。仙台までの運行時間は、5時間15分を予定しております」

 ……何か、旅客機の機長の挨拶みたいだな。
 しかしながら、首都高速はだいたい空いていたが、東北道が混んでいた。
 浦和料金所を過ぎて、すぐに渋滞。
 乗務員氏の放送によると、定刻では7時45分くらいに羽生パーキングエリアに着く予定だったらしい。

 
 ゴールデンウィークだからか、大規模なサービスエリアやパーキングエリアには交通誘導員が配置されていた。
 警備会社に臨時警備として、委託したものだろう。
 今日は暑いので、同業者達は大変だ。
 しかし、こういう警備員達が配置されているからこそ、大型駐車場に駐車しようとするマナー違反普通車を防ぐことはできるんだからな。
 バスもまた、誘導員に従ってスムーズに駐車できるのだから助かる。
 ここで家族と、仙台の友人に土産を買って行く。
 15分休憩なので、8時20分に出発。

[同日09時48分 天候:栃木県那須郡那須町 同道・那須高原サービスエリア]

 

 埼玉県内の渋滞の後は、栃木県内の混雑。
 しかし、それでも東名高速や中央自動車道に比べればマシなのだろう。
 一般道並みのスビードでは走れたのだから。
 御登山での行き帰り、メチャ混みの東名高速を知っている身からすれば、東北自動車道はまだ人間界だな。
 もちろん、東名高速が地獄界なのに対してという意味で。
 10時ちょうどの発車だというので、トイレだけ済ませてバスに戻る。

 

 
 因みにバスは、平成顔の三菱ふそう。
 乗車率としては、窓側席が殆ど埋まる感じか。
 それでも、バスタ新宿の空席情報では『△(多少の空席あり)』と表記されていた。
 ゴールデンウィーク中でも満席ではないのだから、穴場なのかもしれない。
 実際、中央高速バスや空港行きのバスは軒並み満席の表示になっていたくらいだから。

[同日11時25分 天候:晴 福島県伊達郡国見町 同道・国見サービスエリア]

 
 ここで最後の休憩。
 トイレを済ませた後は、缶コーヒーでも買って腹を誤魔化しておく。
 因みに朝食は、バスタ新宿内にあるコンビニのパンを買って食べた。
 ファミマは撤退して、今はデイリーヤマザキになっている。
 この時点で、定刻より30分の遅れ。
 機長……もとい、乗務員氏の話によると、仙台駅前着は12時30分頃になるだろうとのこと。

[同日12時20分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区郷六 同道・仙台宮城インターチェンジ]

 かつては宮城郡宮城町にあったので、こういう名前。
 それより、ここは料金所からして渋滞していた。
 別に、料金所で何かあって渋滞しているわけではないらしい。
 接続している国道48号線のバイパス、仙台西道路で何かあったらしい。

 
 既に出口ランプ上で、このような渋滞。
 X(Twitter)によると、青葉山トンネル内で事故が発生しているとのこと。
 もっとも、私のバスが来た頃には事故処理が終わった直後だったようで、事故車両の片付けなども終わっていた。

[同日12時50分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台駅前40番バス停]
 
 
 バスは凡そ1時間弱の遅延で到着。
 ここまで長距離・長時間運転してくれた乗務員氏に礼を言って、バスを降りる。
 バスファンの勝手な想像だが、この後は共同運行先の宮城交通富谷営業所まで回送し、そこでバスの洗車は整備などして、折り返し、夜行便として新宿に帰るのだろう。
 上り便の場合、終点は渋谷マークシティだが、どちらも京王電車が出ている駅の最寄りであることに変わりは無い。

 この後は迎えに来てくれた家族の車に乗り、昼食を食べてから実家に向かった。
 弟夫婦とは会えなさそうだが、まあ、こっちの友達に会ったりして、ゆっくり過ごさせてもらうとしよう。
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の北関東行」

2024-04-26 20:52:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日10時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所前]

 約束の時刻になると、事務所兼住宅の前の通りに1台の白いハイエースが到着した。
 多少のカスタムがされており、やや威圧感を感じる。
 恐らくヘッドライトは、眩しい青白いものであろう。
 車体の横には、(株)佐元工務店と明朝体で書かれている。
 あと、会社のロゴマークなのだろうか、『SAM』というアルファベットも見られた。

 佐元「おはようございます。お迎えに参りました」

 運転席から降りて来たのは、高橋と歳は同じくらいなのだろうが、いかつい兄ちゃんといった感じ。
 高橋がややチャラ男とかホストのように見えるのに対し、こちらは本当に元ヤンって感じである。
 頭髪も坊主頭であった。
 肉体労働をしているせいか、筋肉は高橋よりも付いている。

 佐元「マサさん、結婚おめでとうございます」
 高橋「おー。祝儀は要らねーよ」
 佐元「……後でお持ちします」
 愛原「遠回しに請求してんじゃねーよ」
 高橋「さ、サーセン」
 パール「あー、後でアンタの妹に『金返せ』って言っといて」
 佐元「う、うちの妹が本っ当すんませんっ!」

 何があったのかは聞かないでおこう。
 元ヤン同士のいざこざに巻き込まれるのは御免だ。

 愛原「それより、乗ってもいいかな?」
 佐元「あっ、愛原社長!この度はうちの工務店を御指名頂き、ありがとやんス!来週からよろしくおなしゃす!」
 愛原「ああ。シャワールームのユニットは月曜日の午前中に届くから、そのタイミングで作業開始お願いね?」
 佐元「了解です!どうぞこちらです」

 佐元という男は、社長の息子のようだ。
 会社の車で来たのは、都心の現場に道具を持って行く予定になっているからだそうである。
 実際ハイエースの後ろには、見たことも無い工具が積まれていた。
 佐元に助手席後ろのスライドドアを開けてもらい、リアシートに横3人で乗る。
 狭くないかなと思っていたが、パールが細いおかげでそうでもなかった。
 私は運転席後ろの席に座らせてもらう。
 禁煙車というわけではない為、車内はややタバコ臭い。

 佐元「じゃあ、東京駅っスね」
 愛原「うん。なるべくなら、八重洲側の方でヨロシク」
 佐元「八重洲側っスね。ちょうど良かったっス。今日の現場、八重洲の方だったんで」
 愛原「なるほど。それはちょうどいいな」

 私達を乗せた車が走り出すと、家の中に残っていた手達はバイバイと手を振っていた。

[同日10時30分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 事務所から車でだいたい30分くらい掛かった。

 佐元「着きました」
 愛原「ありがとう」

 東京駅八重洲中央口に着けてもらう。

 愛原「これ、少ないけど謝礼」

 私は財布から1000円札を1枚出した。

 佐元「えっ、いいんスか!?」
 愛原「ああ。これでタバコでも買ってよ」
 佐元「さ、サーセン!」
 高橋「先生に感謝しろよ」
 パール「妹に『金返せ』って言っとけよ」

 事務所からここまで、普通にタクシーで行ったのでは明らかに1000円では足りない。
 なので、チップとしては妥当だろう。
 車を降りて、駅の中に入る。
 週末ということもあり、東京駅の中は多くの旅行客で賑わっている。

 愛原「まずは新幹線のキップを買わなくちゃな」

 私達は八重洲中央口にある券売機に向かった。
 自由席で良いので、指定席券売機でなくても良い。
 空いている券売機の前に立つと、私は新幹線の項目を押して、それから那須塩原までの新幹線のキップを3人分買い求めた。
 指定席券売機で買うと水色のキップ(青券)が1枚出て来るが、黒い券売機や緑色の券売機で買うと、赤色に近いオレンジ色のキップが2枚出て来る。
 これを3人分だから、合計6枚出て来る計算になる。

 愛原「キップは1人ずつ持とう」
 高橋「ありがとうございます」
 愛原「まずは在来線改札口を通過するぞ。こっちの乗車券だけを改札機に突っ込むんだ」
 パール「かしこまりました。何か、2枚とも突っ込んじゃいそうですね」
 愛原「多分、今の改札機は優秀だから、弾かれることはないと思うんだがな」

 もちろん、旅客営業規則上の観点からすれば、在来線の改札口は乗車券だけで通過できるはずである。
 実際、乗車券だけ入れて通過できた。
 こういう時、1枚に纏まった青券の方が楽かもしれない。
 それに、子供の頃の体験というのは貴重だ。
 『新幹線に乗る場合であっても、在来線改札口は乗車券だけで良い』というのは、まだ私が子供の頃、東京駅の改札口が有人しか無かった頃に教わった。
 当時は“みどりの窓口”で新幹線のキップを購入しても、乗車券と特急券は別々に発券された。
 そして2枚を『最初の改札口(在来線改札口)』の駅員に渡しても、駅員は乗車券にしか入鋏しなかった。
 この名残が自動改札機にも受け継がれているのならば、やはり乗車券だけ入れても弾かれないはずである。

 愛原「で、新幹線改札口では2枚重ねて入れる」

 有人改札時代、『2つ目の改札口(新幹線乗換口)』で、初めて新幹線特急券に入鋏される。
 この際、乗車券の方も確認されたから、自動改札になっても2枚入れるわけである。

 愛原「無事通過できたな。さて……」
 高橋「ビールとつまみを買って乗るんスね。売店は……」
 愛原「ホームだな。東海道新幹線だとコンコースが充実しているが、JR東日本だとホームだ」

 乗り場を確認して、ホームに上がるエスカレーターに乗る。

 愛原「11時8分発、“なすの”257号、郡山行き。20番線だ」

 

 1番在来線側に近いホームなので、列車がいないと、東海道本線(上野東京ライン)のホームが見える。

 愛原「車で一服してたけど、また一服する……よな?」
 高橋「さ、サーセン」
 パール「申し訳ありません」
 愛原「いや、いいんだよ。だったら、最後尾の1号車だな」

 喫煙所に最も近い車両。
 その前にホームの売店に立ち寄り、そこで缶ビールとおつまみを購入する。
 一気に旅行気分が高まった。

 愛原「お前達にも買ってやるぞ」
 高橋「ありがとうございます!」
 パール「ありがとうございます!」

 高橋は私と同じビールを所望したが、パールはチューハイを所望した。
 つまみは、あたりめだったり、カルパスだったりと色々買ってみた。

 高橋「じゃ、ちょっと一服してきます」
 愛原「ああ」

 まだ列車の時間まで間があるので、高橋とパールは喫煙所に行った。

 愛原「あっ、ヤベ!」

 酒もいいのだが、一応水も買っておこう。
 それを買い忘れたので、水のペットボトルは自販機で購入した。
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