報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「旧校舎を探索、その後……」

2024-07-31 20:27:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月24日11時30分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・教育資料館]

 事務室で鍵を借りた愛原は、それで教育資料館入口のドアを開けた。
 元はれっときとした旧校舎であり、怪談の宝庫である。
 木造2階建てであり、何度も取り壊しの計画が立ったのだが、その度に祟りのような現象があり、何度も頓挫した。
 その理由は現在、ただの怪奇現象ではなく、取り壊しを拒絶した特異菌の菌根が、関係者に胞子を吸わせて起こした幻覚・幻聴によるものだと判明している。
 今はその特異菌も除菌され、怪奇現象はウソみたいに無くなっている。
 このことから、今では取り壊し計画が再燃されようとしている。

 愛原「“トイレの花子さん”がいたのは2階だな?」
 リサ「うん、そう」

 教育資料館として再生しているのは1階部分だけ。
 2階部分は依然として立入禁止のままである。
 しかし、今回はその2階に上がった。
 1階はリニューアルされているが、2階は殆ど手つかずのままなので、かつての面影を色濃く残している。
 さすがに朽ちた床板などは交換されているが。

 リサ「“花子さん”がいるのは、奥から2番目の個室……」
 愛原「そして、ここで斉藤早苗が首吊り自殺したというわけか」
 高橋「それ自体は本当の話なんですね?」
 愛原「ああ。最強の事故物件だよ」

 特異菌の中には、そんな人間の残留思念を吸収し、具現化させる力を持つ者もいる。
 “トイレの花子”さんが幽霊でありながら、実体があるように見えるのは、特異菌の持つ能力によるもの。

 リサ「あっ!!」

 木製の外側に開くドアを開ける。
 この旧校舎は長らくの間、汲み取り式トイレであった。
 新校舎(現校舎)が落成したのは1980年代。
 その前から新校舎建設計画はあり、完成したら旧校舎は取り壊す予定だったので、最後まで水回りはリニューアルされなかったようである。

 愛原「何だ!?」

 中を覗くと、和式便器の横に1つの金庫が置いてあった。
 その金庫は鍵式であった。

 愛原「まさかこの鍵を……」

 愛原は城ヶ崎が持っていたという鍵を鍵穴に差した。
 そして……。

 愛原「開いた……!」

 愛原が金庫を開けた時だった。
 それは、突然中から飛び出してきた。

 愛原「うわっ!」

 それは手首だけのモノ。
 しかし、その手首は男の物のようにゴツく、黒カビだらけである。
 まるで、モールデッドの手首のようだった。
 そしてそれは、愛原の首を掴んだ。

 愛原「ぐっ……!!」
 高橋「て、てめっ!」

 高橋は手持ちの銃を取り出したが、愛原に被弾してしまう恐れがあるので、手首だけを狙って撃つことはできない。

 リサ「だぁーっ!!」

 リサは両手の爪を長く鋭く伸ばすと、それで愛原の首を絞める手首を引き裂いた。
 痛みを感じるのか、手首は愛原の首から離れた。
 更にリサはその手首を何度も踏みつけた。
 ようやく手首は、白く変色し、石灰化してバラバラに砕け散った。
 どうやら本当に、モールデッドの手首だったようである。

 リサ「先生、大丈夫!?」
 愛原「あ、ああ……」

 愛原は仰向けに倒れていたが、高橋の手を借りて、咳き込みながら何とか立ち上がった。

 高橋「くそっ!何てトラップだ!誰だこんなもん仕掛けたの!?」
 リサ「“トイレの花子さん”か、城ヶ崎かなぁ……」
 愛原「それより、金庫の中身は!?」
 リサ「あっ!」

 個室の中は、昼間でも薄暗い。
 また、1階は教育資料館として再生している為に通電しているが、2階は停電したままである。
 その為、愛原はマグライトを照らした。

 愛原「ん、無いじゃん!?」

 一見して金庫の中には何も無かった。

 リサ「あっ、待って。下の方に引き出しがあるよ?」
 愛原「ん?」

 リサが引き出しを開けると、その中には書類が入っていた。

 リサ「これは……?」
 愛原「ん?」

 A5版サイズの茶封筒に入った書類。
 そこには何故か、とある学習塾のGW特別講習のお知らせが入っていた。

 高橋「何だこりゃ???」
 愛原「学習塾の特別講習のパンフだな……。『中学受験コース』『高校受験コース』『大学受験コース』とか色々あるぞ」
 高橋「何でこんな物が!?バカにしやがって!」

 何かもっと他の重要な物を隠す為のカムフラージュではないかと思った愛原は、金庫の中をもっとよく調べてみた。
 しかし、どこをどう見てもそれ以外に怪しい物は無かった。

 愛原「そもそもこの金庫、前からあったか?」
 リサ「無いよ。前に来た時は無かったよ」
 愛原「すると、外から運び込まれたものか。どうやって?鍵は掛かってただろ?」
 リサ「先生!窓の鍵が開いてる!」
 愛原「えっ?」

 外から覗かれない為の配慮か、窓は曇りガラスになっている。
 明り取りと、換気用の窓として機能しているようだ。
 確かに、窓の固定具が外れている。

 愛原「たまたま誰かが閉め忘れたんじゃないのか?」

 愛原はガラガラと窓を開けた。
 窓の外は、現校舎の裏庭と、忘れ去られたかのように植わっている桜の木がある。
 この桜の木も、“学校の七不思議”に何度か登場する曰く付きなのだとか。

 バッ!

 愛原「!!!」

 と、突然、窓の上からぶら下がるかのように愛原の前に逆さに現れる女。
 それは逆さ女でもサスペンデッドでもなく……白い仮面を着けて、おかっぱ頭の少女……。
 それだけならリサと似ている……。

 愛原「わぁーっ!?」

 びっくりした愛原は後ろに仰け反った。
 その弾みで、すぐ後ろにいた高橋にぶつかってしまう。

 高橋「せ、先生!?」

 その結果、逆将棋倒し的な状態になってしまった。
 2人が仰向けに倒れたと同時に、仮面の少女はくるっと1回転して窓の桟に立ったかと思うと、すぐにジャンプして出て行った。

 愛原「り、リサ!あいつを追えーっ!」
 リサ「!!!」

 リサは反射的に、自分も2階から飛び降りた。
 鬼型BOW故、自分も2階から飛び降りたくらいでは何ともない。
 リサと同じくらいの身体能力を、仮面の少女は持っているようだ。
 そして、服装。
 ここの旧制服かと思うようなセーラー服を着ている。

 リサ「待てーっ!」

 リサが仮面の少女を追うと、少女は校庭のど真ん中で立ち止まった。
 そして振り向きざま……。

 リサ「ぎゃあああああ!?」

 リサは同じ、電撃技を使ってきた。
 まともに食らったリサは、まさか自分が食らうとは思わず、体中を痺れさせた。
 リサが感電している隙に、仮面の少女は学校の敷地外に出て行ってしまった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「午前中の会議と探索」

2024-07-31 15:18:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月24日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 臨時休校となった月曜日、リサは愛原や高橋と共に車で新橋に向かった。
 免許の点数も残り少なくなった高橋の運転の為、愛原は高橋に慎重な運転を求めた。
 その甲斐あってか、往路は特に警察の取り締まりを受けることもなく、また、駐車場も新橋駅前の地下駐車場を利用した為、駐車禁止の取り締まりも受ける心配は無くなった。
 愛原はスーツを着ていたし、リサは学校の制服を着ていたが、高橋は相変わらず私服。
 しかし、いつもの恰好である。

 

 リサ「新しい制服、無事ゲットだよ。ありがとう」
 善場「それは良かったです。卒業まで今年度中とはいえ、大事に着てくださいね」
 リサ「もちろん、わたしはそうしてる。敵対者が、気を使ってくれればねぇ……」
 高橋「まあ、使うわけねぇな」
 リサ「だよね」

 会議室に通され、各々椅子に座る。

 善場「今日はお集り頂き、ありがとうございます。本日は、先日にリサが手に入れた鍵のことについてでございます」

 モールデッド化した1年生男子生徒、城ヶ崎。
 校舎の屋上から飛び降り自殺を図った前生徒会長の弟である。

 愛原「鍵の出所が分かりましたか?」
 善場「こちらで調査しましたところ、鍵のロゴマークは、かつて日本アンブレラ100%出資の子会社、アンブレラ・ロジスティックスという運送会社の物に酷似していることが分かりました」
 愛原「そうだ!思い出した!霧生市の研究所、そこの駐車場に止まっていたトラックに描かれてたヤツだ!」
 リサ「それで何となく覚えてたんだね」
 善場「今は日本アンブレラから資本が切り離されて分社化し、本流の『UL運送』と、一部のドライバー達が独立して設立した『ユー・ライン』という、どちらも運送会社ですが、その2つに分かれています。そして、アンブレラ・ロジスティックスの倉庫部門だった所も独立して、『傘森倉庫』という会社になっています」
 愛原「佐川急便とか、ヤマト運輸に資本を買われたわけではないんですな」
 善場「そのようですね」
 愛原「その城ヶ崎さんは、その旧アンブレラ・ロジスティックスに関係が?」
 善場「東京中央学園のデータベースを確認したのですが、特にそういった物は見受けられませんでした。両親とも、日本アンブレラとは全く関係の無い仕事に就いています」
 愛原「んん?」
 善場「日本アンブレラのデータベースを確認しましたが、そちらにも『城ヶ崎』という名前の関係者はありませんでした」
 愛原「じゃあ、何で彼はその鍵を持っていたのでしょう?」
 リサ「拾った?」
 高橋「ボコして分捕った」
 善場「……この場合、リサの意見の方が現実的ですね」
 愛原「拾ったってどこで?」
 リサ「それは知らないよ。まあ、学校か家の近くとかじゃないの?」
 善場「私が想定しているのは、『斉藤早苗からもらった』なのですがね」
 愛原「まさか……!?」
 リサ「まあ、有り得るね。元々“トイレの花子さん”だったんだから、それに化けて……」
 愛原「まさか、今もそこにいるってんじゃないだろうな?」
 リサ「それはないでしょw 今はもう幽霊じゃないんだから」
 高橋「お前は先生の仰る事を否定するのか?」
 愛原「だけど、本来の予定では、旧校舎の2階に行くはずだったんだよな?」
 リサ「まあね」
 善場「……皆さんに御依頼があります」
 愛原「何でしょう?」
 善場「この鍵を持って、東京中央学園上野高校・旧校舎の探索をお願いします。もしかしたら、この鍵で開く何かがあるのかもしれません」
 愛原「分かりました。すぐに行って参ります」
 善場「私共は城ヶ崎家に行ってみたいと思います。何か分かりましたら、御連絡を」 
 愛原「了解しました」

 会議はものの30分程度で終わった。

[同日11時00分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 リサ「学校休みなのに、学校に来ちゃうなんて」
 愛原「これなら、俺もお祓いに行けば良かったかな」

 さすがにもうお祓いは終わっているらしく、関係者の姿は無い。
 車を来客用駐車場に止めると、愛原は現校舎の事務室に向かった。

 愛原「お疲れ様です。PTA会長の愛原です」
 事務員「愛原さん?お祓いなら、もう終わりましたよ」
 愛原「分かっています。予定としては、明日からは生徒も通常通りですね」
 事務員「そうです。それで、何か用ですか?」
 愛原「ちょっと鍵を貸して欲しいんです」
 事務員「鍵?どこの?」
 愛原「教育資料館です」
 事務員「教育資料館?そんな気軽に……」
 愛原「政府機関からの『捜査協力依頼書』です」
 事務員「えっ!?」

 警察関係者が、施設の監視カメラを確認したい時によく持って来る書類だ。
 今はもう警察手帳の提示だけでは、施設関係者はカメラの映像を見せない為。
 捜査令状があれば問答無用で応じなければならないのだが、その手続きは猥雑である。
 そこで、法的拘束力は無いものの、責任の所在を明確にする為の書類が折衷案として出され、それが『捜査協力依頼書』である。

 愛原「今日は探偵として参りました。よろしく御協力お願い致します」
 事務員「……わ、分かりました」

 愛原は無事に鍵を借りることができた。
 尚、捜査協力依頼書の発行元は、NPO法人デイライトではなく、警察庁になっている。
 だが、善場の本来の所属元がそことは限らない。
 善場の口ぶりからして、警察庁の上部組織の国家公安委員会、もしくは更にその上の内閣府である可能性を愛原は指摘している。

 愛原「よし、行こう」
 リサ「“トイレの花子さん”がいた場所は知ってるから、わたしが案内するよ」

 リサは愛原と高橋を先導すると、旧校舎たる教育資料館へと向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「日曜日の夜」

2024-07-29 20:25:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月23日17時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階・リビング]

 愛原「……そうですか。分かりました。では、リサにも伝えておきますので。わざわざありがとうございました。……はい、そちらの方も確認しておきますので。……はい。失礼します」

 リサと高橋がキッチンで夕食を作っている間、愛原は隣のリビングの固定電話に出ていた。

 愛原「リサ、ちょっといいか?」
 リサ「はーい?」

 リサは制服風の私服から一転して、黒いTシャツと緑のクォーターパンツに着替えていた。
 このクォーターパンツは、東京中央学園の体操服の1つである。
 復活させたブルマを穿いていることもあり、これは卒業までお払い箱となったが、たまにこうして穿くことがある。
 メーカーは違うが、実は今のクォーターパンツ、体操服メーカーのカンコーにあっては、『新ブルマ』という名称があるのだとか。
 確かにルーツを見ると、けしてショーツ型である必要は無いのだが、それでも恐らく、『E電』並みに定着せず、死語になる気がするのは作者だけか。

 愛原「今、学校から電話があった」
 リサ「わざわざ電話してくれたの?一斉メールは?」
 愛原「それも来てるだろう。あとは、学校の公式のサイトとか……」
 リサ「明日、どうするかだね?何だって?」
 愛原「臨時休校だそうだ」
 リサ「やっぱり……。明後日は?」
 愛原「一応、明日、体育館をお祓いするんだって」
 リサ「え?……意味あんの、それ?」
 愛原「無いと思う。だが、一応、『お祓いはしたから、明後日以降は心配は無いよ』ということかもしれない」
 リサ「はあ……」
 愛原「結局、生徒達にも事の経緯を説明しないといけないからね」
 リサ「そうだよね」
 愛原「その時に、どうしても体育館に集まらないといけないからね」
 リサ「あー、そうか」
 愛原「明後日は一応警察が来て、特別警備に当たってくれるそうだ」
 リサ「ふーん……」
 愛原「で、明日は代わりに新橋に行くぞ」
 リサ「デイライト?!」
 愛原「そう。例の鍵のことについて、何か分かったみたいだから」
 リサ「アンブレラの傘のマークが付いたヤツか」
 愛原「お前にも聞いて欲しいみたいたぞ」
 リサ「また行くの面倒だなぁ……」
 愛原「まあ、そう言うな。今度は車で行くから」
 リサ「そうなんだ」
 愛原「というわけで、高橋」
 高橋「はい?」
 愛原「点数残り少ないのは知っているが、お前に車を出してもらう」
 高橋「了解です!」

[同日18時00分 天候:雨 同地区 愛原家3階ダイニング]

 

 リサ「本当だ。学園の公式サイト見ても、明日は臨時休校になってる」
 愛原「だろ?明日は学校関係者だけでお祓いだ。神社から神主さんを呼んで、お祓いをやるそうだ」
 リサ「ただのパフォーマンスだね」
 愛原「鬼のオマエから見ればそうだろうな」

 むしろ鬼退治をするのは、剣士の方だろう。
 どうしても聖職者を出したくば、仏教の僧侶の方かも。

 高橋「先生、お代わりありますよ?」
 愛原「俺は一杯だけでいいよ」
 リサ「はーい!わたしお代わりー」
 高橋「マジかよ。オメーがバクバク食ったら、朝カレーが無くなるぞ」
 愛原「その時は普通の朝食でいい。食材はあるんだろ?」
 高橋「それはありますが……。いいんスか?『一晩寝かせたカレーは美味い』と、先生仰ってましたが……」
 愛原「無理して食うことはないよ」
 高橋「はあ……そうですか」
 愛原「それより、酒がお代わりだ」
 高橋「あ、ハイ」
 リサ「はーい!わたしもー!」
 愛原「お前は“鬼ころし”だけ飲んでろ」
 リサ「えー……」
 愛原「本当は“鬼ころし”も酒だから、飲んじゃいけないんだぞ?しかし、何故かオマエの暴走を抑えられるからってことで、特別に許可されてるんだ。あと3年待て」
 リサ「はーい……」
 高橋「暴走してリサをブッ殺そうとして化け物になったヤツ、どうしてアンブレラの鍵を持っていたんスかね?」
 愛原「分からんな。別に、両親を含めて、親族にアンブレラの関係者がいたとは聞いていないが……」
 リサ「別に、アンブレラ本体とは限らないよ?」
 愛原「えっ?」
 リサ「アンブレラって巨大企業だったから、いくつものグループ会社が存在したんだよ」
 愛原「知ってるよ。だけど、その殆どが潰れたそうじゃないか」

 一部は社名を変えて営業を続けていたり、他社に資本吸収されたりしている。

 リサ「グループ会社は、ロゴマークを微妙に変えていたからね。例えば、紅白の色を青白にしたりとか……」
 愛原「それが“青いアンブレラ”だろ。あれは関連企業じゃなくて、本体が変化したものだ」

 アンブレラの生き残りの関係者達が、かつての製薬企業だった頃に働いた悪事を反省し、それによって世界中に拡散されてしまったバイオハザードの種を回収するという目的で、業種を民間軍事会社にして復活させたもの。
 あえてアンブレラを名乗っているのは、かつての悪事の反省を忘れないようにする為なのだとか。
 但し、日本では民間軍事会社の存在は法律で禁止されている為、非合法である。
 しかしながら、かつての関係者が設立したこと、理由はハッキリしているとはいえ、昔の名前で活動していることから、その会社に不信感を抱いている者も少なくない。

 リサ「他にも紅白を逆にしたり、あのマークの真ん中にアルファベットを入れたりとかして、関連会社ですよってアピールしてる会社もあったね」
 愛原「まさか、その中に、『紅白の傘を横から見た図』を社章にしている関連会社があったのか?」
 リサ「どこかで見たことあるような気がするんだよねぇ……。どこだっけ?」
 愛原「いや、俺に聞くなよw」
 リサ「いや……でも、愛原先生と一緒だったような気がする」
 愛原「ええ?高橋は知ってるか?」
 高橋「うーん……。俺自身、そのマークを直接見たことはないんで……」
 愛原「そうだよな……。でも、そう言われてみると、『紅白の傘を横から見た図』をどこかで見たような気がする……」

 因みに、アンブレラ本体の社章は、『紅白の傘を上から見た図』である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「デートの終わり」

2024-07-29 16:10:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月23日15時21分 天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→愛原家]

 

 リサ達を乗せた京王電車……都営地下鉄新宿線内を走行中の京王電車だが、ダイヤ通りにトンネル内を走行していた。
 そして、菊川駅のホームに滑り込む。

 愛原「いよいよ、お出掛けも終わりだな」
 リサ「このままどっか遠くへ逃げたいなぁ~」
 愛原「何言ってるんだよ。この電車じゃ、遠くて千葉県市川市にしか行かないぞ」

 東京都営地下鉄なのに、終点が千葉県の都営新宿線。
 まあ、それを言ったら、東京メトロなのに、終点が千葉県の東西線もあるが。

 リサ「そこから京成線に乗り換えて成田空港」
 愛原「オイオイ……」
 リサ「……というわけには行かないかw」
 愛原「そりゃそうだw」

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 

 2人は電車から降りた。
 すぐホームに、短い発車メロディが鳴り響く。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 そして、ホームドアと車両のドアを閉めて、電車はトンネルの向こうに走り去って行った。
 出て行く時も、ホームには強風が吹き荒ぶ。
 リサの短いスカートが少しだけ捲り上がり、チラッと愛原の目にリサの黒いショーツが目に入った。
 制服ファッションに身を包んでいるものの、スカートの下にはブルマもスパッツも穿いていないらしい。
 スパッツは暑いから嫌だとリサは言う。

 愛原「今日はコンビニには寄らずに、そのまま真っ直ぐ帰るぞ?高橋達が待ってるからな」
 リサ「分かったよ」

 リサはニッと笑った。
 黒いマスクさえしていなければ、牙が覗いたことだろう。
 エスカレーターを昇って、コンコースに出る。
 さすがにリサもこの時はスカートを気にしていて、後ろ手で裾を押さえていた。

 愛原「それにしても、オマエも考えは人間に近くなってきたな」
 リサ「えっ、そう?どの辺が?」

 改札口を出て、今度は地上に向かう。

 愛原「スカートが捲れそうになった時に気にするようになったのと……」
 リサ「ゴメンね。先生には見せてもいいんだけど、他の人には見せたくないからね」
 愛原「いや、それでいいんだよw あとは……さっきの話」
 リサ「さっきの話?」

 リサは首を傾げた。

 愛原「ほら、『遠くへ逃げよう』って話」
 リサ「えっ、なに?まさか、今から本当に実行しようって?」
 愛原「違う違う。そういう発想が、人間に近いってことさ」
 リサ「そうなの?」
 愛原「そうだよ。例えば、エヴリンの例だ。研究所に行きたくないからと、移動中の貨物船内で暴走して、バイオハザードを引き起こしたわけだが……」
 リサ「ああ、あれね。お子様だよねw」
 愛原「リサなら、どうする?」
 リサ「うーん……。まあ、船内ではバイオハザードは起こさないかな。どうせ逃げ場無いし。わたしが船を操縦できるってんなら、確かに全員ゾンビ化させた後、自分で船を操縦して逃げるけどさ。実際できないし。降りたところを狙うかもね」
 愛原「そうだよな。もしもお前がエヴリンだったら、さっきの電車に特異菌をばら撒いていただろう」
 リサ「ねー。そんなことしても、何の解決にもならないのにね。皆バカなんだよ。ある意味、『大人しくしている』ことが最良なのにね」

 霧生市のバイオハザード。
 郊外山中にあった日本アンブレラの研究施設で事故が発生し、施設内のセキュリティシステムがダウンしてしまった。
 その隙に施設内に飼育されていた実験生物達は脱走し、それは日本版リサ・トレヴァー達も同様だった。
 しかし、ここにいるリサだけは施設内に留まった。
 ここにいる『2番』のリサ以外のリサ・トレヴァー全員が後に殺処分されたことを考えると、あの時の『2番』のリサの判断は正しかったと言える。
 今でも個体番号の『2』という数字は、左脇腹の下に入れ墨として入ったままだ。
 尚、最後に日本版リサ・トレヴァーとなり、『12』の数字を与えられた善場優菜は、後に『0』となっている。
 善場の左脇腹の下には、『12』という数字が消され、代わりの『0』の数字が入っている。

 愛原「分かってるじゃないか。賢くなるのも、人間に近づく方法の1つだよ」
 リサ「だよね!」

 そんなことを話しながら家に帰る。

 愛原「ただいまぁ……」

 1階からは、エレベーターで3階に上がった。

 高橋「先生、お帰りなさい!……おい、先生に荷物持たせるとは何だ!?」
 リサ「いや、わたしも持ってるから!」

 

 リサは制服の入った紙袋や、ドンキの袋を床に置いて高橋に反論した。

 愛原「まあまあ。お前達にも土産はあるから」
 高橋「えっ、マジっスか?」
 愛原「ドンキでも酒は売ってるからな。これで今夜は一杯やろうや」
 高橋「いいっスね」
 リサ「ちょっと着替えてくるね?」
 愛原「ああ」
 リサ「……見る?」
 愛原「い、いや、いいよ」
 リサ「遠慮しなくていいのにw」
 高橋「いいから、さっさと着替えて、夕飯作り手伝え!」
 リサ「はーいw」

 リサはペロッと舌を出すと自分の荷物を手に、階段で4階に上がった。

 リサ「わたしのブラウスは……いっか。前みたいに、脱衣カゴに入れとけば」

 そして、自分の部屋に入って、服を脱いだ。
 制服風の服だけでなく、下着や靴下も全部脱いで全裸になると、ベッドにダイブする。
 人間形態から鬼形態になって、大の字になった。
 顔は解放感に満ちた笑顔になっている。

 リサ「これが1番落ち着くー!!」

 しばらく解放感に浸った後は、ドン・キホーテで買った新しい下着を取り出すと、それを着始めた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「デート帰り」

2024-07-27 21:04:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月23日14時00分 天候:曇 東京都千代田区外神田 家系ラーメン武将家→同区神田岩本町 ドトールコーヒー]

 リサ「あー、美味しかった!ごちそーさま!」
 愛原「オマエ、凄いな……」

 リサは大盛のラーメンを平らげた。
 それだけじゃない。
 そこに辛子などをドバドバ入れて、辛味の強いものにしたのだ。
 いくらBOWのリサでも、これには体中を真っ赤にして汗をかいている。

 リサ「エヘヘ……。服……特にブラウスが、汗を吸って臭いそうだねぇ……?」
 愛原「そ、そうか。じゃあ、そうなる前に急いで帰らないとな」
 リサ「そうだねぇ!」
 愛原「じゃ、どうもごちそう様」
 店員「ありがとござっしたー!!」

 家系ラーメンの店舗は、基本的に食券制。
 この店舗とて例外ではない。
 その為、食べ終わったら速やかに退店すること。

 愛原「アキバにいることだし、このまま岩本町駅から地下鉄に乗って帰るか」
 リサ「そうだね……」
 愛原「帰ったら宿題やらないとな?」
 リサ「宿題ならもう片付けたよ?」
 愛原「早っ!……いや、学校のじゃなくて、高橋からの宿題だよ。ほら、夕飯にカレーを作るってヤツ」
 リサ「ああ!あったね!」
 愛原「カレーを手作りしようとすれば、煮込むのに時間が掛かるんだ。早めに帰った方がいいぞ」
 リサ「そんなこともないよ」
 愛原「えっ?」
 リサ「去年、調理実習でカレーを作ったけど、案外そこまで長時間煮込むことはなかったよ?」
 愛原「そうなの?」
 リサ「家庭科の先生も、『家庭用なら、そこまで長時間煮込む必要は無い』って言ってた」
 愛原「そうなのか」

 帰る途中で……。

 リサ「それにしても、辛いラーメンだった」
 愛原「いや、オマエが辛子ドバドバ入れるからだろ」
 リサ「先生に料理作る時は、甘口にしないとね」
 愛原「いや、中辛でいいよ」
 リサ「いや、カレーの話じゃなくて」
 愛原「ん?」
 リサ「料理全般のこと」
 愛原「オマエ、料理全部辛く作る気かw」
 リサ「喉が渇いた。どっか飲んで帰ろうよ」
 愛原「しょうがないな。確か、岩本町駅の近くにドトールがあったな。そこでいいか?」
 リサ「やった!」

 ドトールコーヒーに立ち寄り、愛原も愛原で食後のコーヒーが飲みたかったらしく、ブレンドコーヒーを注文していた。

 リサ「デザートはいいの?」
 愛原「いや、いいよ。リサはあれだろ?『辛い物食べたら、甘い物食べたくなる』とか言うんだろ?」
 リサ「さすがは先生!」
 愛原「何がいいんだ?」
 リサ「ミルクレープ」
 愛原「あいよ」

 あとは席に座って食べる。

 リサ「それで、明日は学校あるの?」
 愛原「まだ分からん。学校からは、まだ何の連絡も無い」
 リサ「困ったね。早くしてほしいね」
 愛原「BSAAの除染作業は終わったらしいんだが、警察の実況見分が長引いているらしくてな。何しろ、最初の事件の実況見分をしていた警察官が2名ともモールデッド化しちゃったんかだからな」
 リサ「そうだよねぇ……」
 愛原「オマエは平気だろうが、そんな所、気持ち悪くて嫌だっていう生徒もいるだろう」
 リサ「う、うん。まあ、確かにわたしは平気だ」

 リサもまたウィルスを撒き散らす側だからだろう。

 愛原「かといって、あくまでも事件の舞台は体育館だけであって、校舎とか他の建物は無事なわけだから、授業ができないわけじゃない」
 リサ「まあ、確かに……」

[同日15時14分 天候:曇 同地区 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1488K電車・最後尾車内]

 

 すっかり話し込んでしまい、岩本町駅に入る頃には15時を回っていた。

 愛原「すっかり遅くなってしまった!高橋には、俺からLINE送って謝っておく!」
 リサ「先生のせいじゃないよ」

 階段やエスカレーターを下りて、地下深い乗り場に向かう。
 地下深いホームに辿り着くと、愛原はスマホを取り出して、高橋にLINEを送った。

 愛原「これでいい」
 リサ「わたしも怒られるかなぁ……」
 愛原「なぁに。高橋には、俺から言っておくさ」

〔まもなく、4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で、到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 トンネルの向こうから強い風が吹いて来たと思うと、ホームに接近放送が鳴り響く。
 おかっぱ頭のリサの髪も、強い風に吹かれて揺れている。
 そして、電車が轟音を立てて入線してきた。
 京王電車であった。

 

〔4番線の、電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町。秋葉原〕

 都営の車両とは違い、ローズピンクのシートが目につく。
 優先席は青色だが、リサ達はローズピンクの方に腰かけた。
 急行電車の待避や、折り返しの設備もある駅だが、すぐに発車メロディが鳴る。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 ピンポンピンポンとドアチャイムが2回鳴ってドアが閉まる。
 都営地下鉄の車両とは種類が違うが、閉まり切ったら車掌が発車合図のブザーを鳴らすのは変わりない。
 走り出しても都営地下鉄の車掌は、出発監視が終わるまで、乗務員室のドアを開けたままである。
 ホームの途中まで来ると閉めて、あとは窓から顔を出しているのだが。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 愛原「おっ、高橋から返信来た」
 リサ「何て?」
 愛原「『了解です。帰ってきてからでも間に合うんで、気をつけて帰ってきてください』だって」
 リサ「お兄ちゃん、怒ってない?」
 愛原「まあ、俺からLINEしたというのもあるだろうがな。それに、岩本町から菊川は近いから、電車に乗ったらすぐというのもある」
 リサ「それもそうか」
 愛原「それに、あいつらにも土産の酒を買っておいたから」
 リサ「なるほど」

 リサは大きく頷いた。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする