報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「橘丸」 出港前

2020-07-31 20:09:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日22:15.天候:曇 東京都港区海岸 竹芝客船ターミナル→東海汽船 橘丸船内]

 改札が始まり、私達乗客は係員の案内でタラップへ向かった。
 途中で係員が乗船券の改札をしている。
 半券をちぎって、残りの券を渡してくる。
 いわゆる、『モギリ』である。

 斉藤:「荷物を載せてるのね」

 タラップからはコンテナを積み込むシーンを見られる。

 愛原:「これは貨客船だからね。乗客も貨物も一緒に運ぶ船なんだよ」

 貨物船であっても、12名以下なら乗客を乗せても良いことになっているが、今の時代はあまり一般的ではない。
 但し、2017年、アメリカのルイジアナ州の片田舎で起きたバイオハザード事件は、貨物船でBOWエヴリンの運搬中にそれが暴走したのが発端らしい。
 バイオテロ組織は、貨物船に便乗した乗客を装っていたという。
 リサもそうだがエヴリンもまた、完全に人間の少女に化けたBOW。
 私達がこうしてリサを貨客船に乗せようとしているのと同様、彼らも貨物船に便乗したというわけだ。

 リサ:「うっ……!」

 その時だった。
 クレーンがコンテナを船に積み込むところを見ていたリサが、突然呻いて頭を抱え、ふらついた。

 愛原:「リサ!?」
 リサ:「うぅう……」

 どうやら何かフラッシュバックが起き、それで激しい頭痛を起こしたらしい。
 リサはエヴリンと違い、元人間。
 非人道的な改造実験を受けた際、人間だった頃の記憶の殆どを失ってしまった。
 だが、失われたはずの記憶とリンクするような所があると、こうしてフラッシュバックを起こすのである。

 愛原:「大丈夫か、リサ?」
 リサ:「……大丈夫……問題無い……」
 斉藤:「リサさん?」
 リサ:「早く乗ろう」

 私達は係員に乗船券を渡し、部屋番号の書かれた半券を返された。

 係員:「船内の案内所で鍵をもらってください」
 愛原:「あ、はい」

 タラップを渡って船の中に入る。
 船内は明るくてきれいだ。

 愛原:「えーと……案内所はあそこか。ちょっと待ってて」
 斉藤:「はい」

 私が案内所に行くと、他にも特1等の乗客や特等の乗客が鍵を受け取っていた。
 特等の乗客は老夫婦で、もしかしたらこの人達が先に予約してしまった為、斉藤社長は特等を押さえることができなかったのかもしれない。
 だけど、それで結構。
 本来なら2等か特2等で十分なくらいなのに、特1等とは……。

 船員:「お客様のお部屋は5階になります」
 愛原:「分かりました」

 このフロアは4階になる。
 なので、ワンフロア上だ。

 愛原:「お待たせ。それじゃ、上に行こう」
 リサ:「はーい!」

 さっきまでのフラッシュバックはどこへやら。
 リサと斉藤さんはバタバタと階段を上って行った。

 愛原:「こらこら!鍵が無いと入れないぞ!」

 私は先に上に上がったリサ達をたしなめる。

 リサ:「先生!早く、早くぅ!」

 リサは階段の手すりに掴まりながら、階段の途中でしゃがみこんだ。
 その際、裾の短いスカートの中が見えてしまう。
 薄いピンク色のショーツが見えた。
 リサのヤツ、オーバーパンツ穿いてないのか?
 あれほど高野君に穿くよう言われてたのに……。

 愛原:「リサ、立って!見えてる」
 リサ:「はーい……。サイトーも先生にパンツ見せてあげて」
 斉藤:「うん。……って、ええっ?!」
 愛原:「こらっ!」
 斉藤:「『見せパン』穿いてますけど、いいですか?」
 愛原:「斉藤さんも真に受けない!」

 斉藤さんはちゃんとオーバーパンツ穿いてるんだな。
 今日日の女の子はそれが普通なんだろう。
 穿いておらず、パンチラ上等なのはAVとかエロコンテンツ限定なのが現実と思われる。

 愛原:「リサ、高野君に怒られるぞ」
 リサ:「高野さん、今日いないし」
 愛原:「そういう問題じゃない!」

 学校に行く時はちゃんと穿いていくのに……。
 といっても、体操着として穿くスパッツであるが。
 私が中学生の頃まで、女子はブルマーだったが、今は全廃されてスパッツになっている。
 体育の時とかは、その方が着替えも楽だろう。
 しかしリサのヤツ、あまり重ね穿きは好きではないのか、学校から帰って来ると、制服より先にスパッツを先に脱いでしまうのだ。
 ……と思ったら、斉藤さんちに遊びに行く時は、私服用のオーバーパンツを穿いて行くんだよなぁ。
 まあ、BOWになって感覚が人間とは違うようになってしまったから、何かあるんだろうな。

 愛原:「えーと……ここか」

 気を取り直して船室に向かう。
 途中で1等船客以上の者しか入ることを許されないエリアに入る為の自動ドアを通り抜けた。
 1等以上を上級船客、特2等以下を下級船客と分けているらしい。
 私達はもちろん前者だ。

 愛原:「ここが今宵の牙城だよ」
 リサ:「わぁ!」
 斉藤:「リサさん、どこで寝る!?」
 リサ:「先生はどこで寝る!?」
 愛原:「そうだなぁ……」

 そこで私はふと気づいた。
 要はここ、4人用個室じゃないか。
 男の私が一緒に寝泊まりしていい場所か?
 この前の研修センターだって、男女別だったというのに。

 愛原:「やっぱ俺、2等で寝るわ。多分、まだ席空いてる」
 霧崎:「は?」
 リサ:「えーっ!?何で何でー!?」
 愛原:「いや、キミ達はここでいいよ。しかし、男の俺がキミ達と同じ部屋で寝るのは……」

 一応、ベッドにカーテンは付いている。
 この前の研修センターの2段ベッドもそうだったが。

 愛原:「ねぇ、霧崎さん?こんなオッサンが同じ部屋なんて気持ち悪いよな?」
 霧崎:「私は一介のメイドです。御嬢様の御意向に従います」
 斉藤:「わ、私はリサさんの御意向に従います」
 リサ:「私は先生と一緒の部屋がいい。だから問題無い。サイトーもいいよね?」
 斉藤:「り、リサさんの御意向に従います」
 霧崎:「私は御嬢様の御意向に従います」
 リサ:「じゃ、決まりってことで」

 リサはニヤリと笑った。
 完全に人間の姿をした第0形態のはずだが、何故か口元に牙が覗いたように見えた。
 お、おかしいな?
 引率者は私のはずなのに、いつの間にかリサに主導権を奪われた感がしてしょうがない。
 さすがは大ボスも張った上級BOWリサ・トレヴァーの日本モデル改良版。

 愛原:「お、俺は上段でいいよ」
 リサ:「じゃ、私も上段」
 斉藤:「わ、私も!」
 愛原:「狭い狭い!」
 霧崎:「御嬢様方は下段へどうぞ」
 愛原:「ほら!メイドさんもそう言ってるぞ!」
 リサ:「私、下で寝る。先生の下」
 斉藤:「わ、私もリサさんと同じ……」
 霧崎:「御嬢様はそちらのベッドでお休みください。後々、旦那様への報告が大変なことになりますので」
 斉藤:Σ(゚Д゚) 「わ、分かったわよ。そっちで寝るわよ……」

 父親の存在が出ると、斉藤さんはおとなしく従った。
 私には柔和な斉藤社長だが、会社や家庭ではとても厳格な人物として振る舞っているらしい。
 そうこうしているうちに、船が揺れ始めた。
 どうやら出港したようである。
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“私立探偵 愛原学” 「竹芝客船ターミナル」

2020-07-31 16:07:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日21:30.天候:雨 東京都港区海岸 ゆりかもめ竹芝駅→東京港竹芝桟橋]

〔まもなく竹芝、竹芝。川崎重工東京本社前です。お出口は、左側です〕

 私達を乗せた“ゆりかもめ”は、無事に竹芝駅に到着した。
 この辺りまで来ると、帰宅ラッシュで混んでいる。

〔竹芝、竹芝。2番線は、新橋行きです〕

 電車を降りて、エスカレーターに向かう。

 愛原:「レインボーブリッジ、どうだった?」
 リサ:「あのスピードなら、ネメシスに追い付かれそう」
 愛原:「そこなんだ!」

 “ゆりかもめ”の最高時速は60キロ。
 レインボーブリッジは道路としても線形良いので、下層部を走る一般道でも、自動車はもっと高速で走る。
 その為、高橋曰く、『サツのボーナス商戦っス』とのこと。
 つまり、スピード違反の取り締まりをしやすいので、警察官も手柄を立てやすく、それがボーナスに反映されているという嫌味だろうか。
 さすがは元暴走族だ。

 愛原:「ネメシスってそんなに足が速いんだ」
 リサ:「タイラント君がそう言ってた」
 愛原:「まあ、日本にはいないと思うけど、もし襲って来たら、リサよろしくな?」
 リサ:「ん、任せて!八つ裂き、肉塊、塵芥にする!」
 愛原:「う、うん。実に頼もしい」

 駅を出て竹芝客船ターミナルに向かう。

 愛原:「それじゃ、乗船券を買ってくる」

 私は予約番号の書かれたメモ帳を手に、窓口に向かった。
 すぐには窓口に行けず、先客が終わるのを待つ必要があった。
 窓口の上には、これから乗る客船、橘丸の案内があった。
 2等船室はもちろん、1等船室でさえカーペットで雑魚寝のようだぞ?
 まあ、1等の方が定員も少なくて、1人当たりのスペースは広く取られているんだろうけど。
 果たして斉藤社長は、どこのクラスを予約してくれたんだろう?
 まさか、禿頭……もとい、特等なんてことは無いよな?
 写真で見る限り、シティホテルのツインルームみたいな部屋だぞ?

 係員:「いらっしゃいませ」
 愛原:「すいません。今日乗船で予約した者ですが……」

 窓口が空き、そこに向かう。
 私は予約番号を見せながら言った。

 係員:「特1等4名様で御予約の愛原様ですね」

 特1等!?
 私は窓口の運賃表を見た。
 それは特等の次に高い等級であった。

 係員:「それでは運賃の方が……」
 愛原:「す、すいません。カードで……」
 係員:「はい、ありがとうございます」

 う、うん、クレカが使えて良かった。
 因みに購入したのは片道だけ。
 往路はどういった形になるか、高橋と合流しないことには分からないからだ。
 八丈島なら、これから乗る船だけでなく、飛行機もある。
 しっかり領収証をもらって、後で斉藤社長に請求しないと……。

 係員:「それではこちらの乗船票に必要事項を記入してください」

 航空チケットのようなものが出されたと思ったら、半券部分に何か記入しないといけないらしい。
 そこは航空チケットと違うか。

 愛原:「ん?リサと斉藤さんは?」
 霧崎:「お手洗いに行かれました」

 ロビーのベンチに霧崎さんが1人でいた。
 どうやら、荷物の見張りで残っているらしい。

 愛原:「乗船票に名前とか、書かないとダメらしいんだ」
 霧崎:「それでは私が御嬢様の分まで記入します」
 愛原:「ああ、頼むよ」

 斉藤さんが絡めば楚々としたメイドさんなのだが、それ以外だとシリアルキラーの様相を見せる。
 記入台で私は自分のとリサのを記入した。
 それにしても……。
 本来は、連休前の夜なのだから、もっとターミナルは賑わってもいいはずだ。
 しかし、今はこんなものなのかといったほどに空いている。
 伊豆諸島は夏場が観光シーズンのはずだが、コロナ禍で海水浴場がオープンできないというのが大きいらしい。
 ガラガラというわけではないのだが、しかし思ったよりも空いている。
 私はつい、コロナ禍前のバスタ新宿みたいな感じを想像していただけに、そこは肩透かしといった感じである。

 リサ:「先生」
 愛原:「ああ、リサ。これ、乗船券な。船に乗る時に、係員にこの乗船券を渡すことになるから、これは1人ずつ持とう」
 リサ:「はーい」
 斉藤:「父はどこのクラスを予約しましたか?」
 愛原:「特1等だそうだ」
 斉藤:「ああ。あの2段ベッドの部屋ですね」

 斉藤さんは窓口の上の写真を指さした。
 確かに写真で見る限り、2段ベッドが左右に設置されていて、奥にテレビや椅子やテーブルが設置されているようだ。

 斉藤:「特等じゃなくて申し訳ないです。父がケチったんですね。後で言っておきます」
 愛原:「いや、いいよ!俺なんか2等でいいくらいだったのに!」

 もし今回の目的が、ただ単に高橋を追い掛けるというだけだったら、そうしていただろう。
 奮発しても、まるでブルートレインのB寝台車みたいな構造の特2等といったところか。

 愛原:「それに、写真で見る限り、特等は2人部屋っぽいよ。俺達、4人だしな」
 斉藤:「それもそうですね」
 リサ:「先生、あそこでちょっと買い物してきていい?」

 リサはターミナルに併設されているヤマザキショップを指さした。
 バスタ新宿にあるのはファミマだが、ここはヤマザキショップらしい。

 愛原:「ああ、いいよ」

 他にも伊豆諸島のお土産なども扱ったアンテナショップもあるようだ。

 愛原:「霧崎さん、ちょっと俺もトイレに行って来る」
 霧崎:「どうぞ」

 私はトイレに向かった。
 表向きは用足しであるが、他にもある。

 木村:「もしもし?」
 愛原:「ああ、木村君?さっきメッセージくれたよね?」
 木村:「あ、はい!」

 高橋の友人の木村に電話した。

 愛原:「何か情報が?」
 木村:「はい。マサのヤツ、八丈島から別の島に渡ったらしいっス」
 愛原:「それは青ヶ島かい?」
 木村:「いえ、違います」
 愛原:「違う?八丈島から、青ヶ島以外に何かあったっけ?八丈小島か?」
 木村:「いえ、それとは全く違う別の島です」

 私は木村君から初めて聞く島の名前を聞いた。

 木村:「俺達も信じられなかったんスけど、どうネットとかで調べても、消去法的にその島しかないんス」
 愛原:「そうなのか」
 木村:「センセー、探偵じゃないスか。その辺はセンセーの御力で調べてもらって……」
 愛原:「分かったよ。ありがとう」

 私は電話を切った。
 幸い離島なら、港を押さえれば大丈夫だ。
 八丈島には空港もあるが、無名な小島に空港があるとは思えない。
 つまり、高橋は八丈島のどこかの港からその島に船で渡ったのだ。
 これまた幸いなことに、コロナ禍で、そもそも観光客自体が少ない。
 ましてや、高橋が渡った島は観光地ではないだろう。
 そこで聞き込み調査でもすれば、すぐに見つかると思った。
 それにしても高橋、マジで一体何から逃げてるんだろうなぁ……?
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“私立探偵 愛原学” 「東京臨海新交通ゆりかもめ」

2020-07-29 19:50:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日20:47.天候:曇 東京都江東区豊洲 都営バス豊洲駅前バス停→ゆりかもめ豊洲駅]

〔「右へ曲がります。ご注意ください」〕

 豊洲駅前の大きな十字路交差点を右折し、その先にあるバス停でバスが止まった。
 豊洲駅には駅前ロータリーがあって、そこがバスプールになっているのだが、新橋行きのバスはそこには入らず、外側の通り沿いのバス停に止まる。
 屋根が無いので、雨の時は大変だろう。
 今は雲は出て来たものの、雨が降っていることはない。

〔「ご乗車ありがとうございました。豊洲駅前、豊洲駅前です」〕

 引き戸式の中扉が開いた。

 愛原:「よし。降りるぞ」
 リサ:「はーい」

 豊洲駅前バス停は乗り降りが激しい所なのか、下車客が多いものの、乗車客も多く、バス停の前で長い列を作っていた。
 バスを降りて、“ゆりかもめ”の駅に向かう。

 敷島:「いい加減、早いとこ連載再開してもらわないと……」
 シンディ:「既に忘れられているんじゃないでしょうか?」
 敷島:「それは困る」

 ん!?
 今すれ違った人、もしかしてだいぶ前、埼京線の幽霊電車で会った……あれ!?いない!?

 リサ:「どうしたの、先生?」
 霧崎:「何かございましたか?」
 愛原:「い、いや、あれ……?今そこに、眼鏡を掛けた俺くらいの歳のスーツの人と、背の高い金髪の白人みたいなお姉ちゃんがいなかったか!?」
 斉藤:「えー?いませんよ?」
 リサ:「先生、幻覚でも見た?」
 霧崎:「私も金髪に染めていますけど、私のことですか?」
 愛原:「違う!……あれ?……気のせいか」
 リサ:「先生、きっと疲れてる。早いとこ、船に乗ろう」
 愛原:「そ、そうかな」

 私は首を傾げて、“ゆりかもめ”の乗り場に向かった。
 もっとも、あの埼京線の幽霊電車でさえ、今となってはただの夢だったのではと思うくらいだ。

 愛原:「幽霊電車か……」
 リサ:「えっ?」

 あの幽霊電車は結局、運転士も車掌もいない自動運転だった。
 そして、これから乗る“ゆりかもめ”もまた、運転士も車掌もいない自動運転だ。

 愛原:「乗車位置は最後尾でいいかな?」
 リサ:「どこでもいい」

 ダメだ。
 未だにあの幽霊電車のトラウマが……。

 斉藤:「先生、こちらですか?」
 愛原:「そうそう」

 地下鉄豊洲駅が地下に潜るのに対し、高架鉄道の“ゆりかもめ”はエスカレーターで上がる。

 愛原:「Pasmoはまだ使うよ」

 いちいちキップを買わなくていい。
 便利になったものだ。

〔まもなく1番線に、折り返し、新橋行きが参ります〕

 愛原:「どうする?次の電車にするかい?」
 リサ:「そうする」

 “ゆりかもめ”の駅は全てホームドアが付けられている。
 完全に天井まで覆うタイプのものだ。
 だからなのか、乗客が転落して人身事故という話は聞かない。
 ゴムタイヤで走行する電車の為、鉄軌道とは違う走行音が聞こえてくる。

 愛原:「しれっとしてろ」
 リサ:「うん」

 地下鉄やケーブルカーにBOWが乗り込んで来るということは過去に他国であったそうだが、新交通に乗るBOWは史上初だろう。
 もっとも、そんなことを考えているのは私だけだろうがな。
 やってきたのは旧型の車両。
 でも、それで良かったかもしれない。
 新型だとロングシートしか無い。
 これは急増する“ゆりかもめ”の利用者数に合わせ、少しでも乗車定員を増やそうとした結果だ。
 旧型だとその前の想定なのか、ボックスシートが付いている。

 愛原:「“ゆりかもめ”から見る夜景もきれいなものだそうだよ」

 一瞬、展望席(開放された運転席)に目をやった私だが、旅心としてはこっちのボックスシートの方がいいだろう。
 窓側に向かい合わせに座るJC2人。

 愛原:「はい、撮るよー」
 リサ:「ん!」

 リサは斉藤さんと肩を組んだ。
 何か、まるで男の友情に見えてしまう。

 斉藤:「も、萌えっ?!……どうして写真を?」
 愛原:「斉藤社長に頼まれたんだ。俺が本当に斉藤さんを旅行に連れて行ったかどうかの証拠写真ね。都営バスは客が多かったし、あそこは撮る暇が無かった」

 あとは竹芝桟橋で船を待っている所とか、実際に船に乗っているところの写真でも撮ればいいだろう。
 尚、データ流出防止の為、この写真だけはスマホではなく、デジカメで撮る。

[同日21:03.天候:雨 ゆりかもめ東京臨海新交通線2132電車最後尾]

 発車の時間になり、ドアブザーが鳴ってドアが閉まる。
 ホームドアも閉まると、電車が走り出した。
 スーッと速い加速度なのは想定内だが、ガタゴトと揺れたのは道床のコンクリートのせいか?

〔本日も“ゆりかもめ”をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、新橋行きです。次は新豊洲、新豊洲です〕

 愛原:「俺達にとってのこのルートの見どころは、東京湾を渡る所だよ」
 リサ:「おー!夜景がきれいそう!」
 斉藤:「私達にとって?……とは何ですか?」
 愛原:「いい質問だ。この“ゆりかもめ”に乗った後、今度は船に乗り換えるわけだが、その船がこの“ゆりかもめ”の下を潜るんだよ」

 要はレインボーブリッジのことだ。
 この“ゆりかもめ”はレインボーブリッジの下層部を走行するが、乗り換え先の船は更にその下の東京湾で、レインボーブリッジを潜り抜けるのである。

 斉藤:「それは面白いですね。船でレインボーブリッジを潜り抜ける所、是非見たいです。ねぇ、リサさん?」
 リサ:「うん」
 霧崎:「ですが御嬢様、外は雨が降ってきたみたいですよ。外に居られるのはどうかと……」
 斉藤:「えっ!?」

 斉藤さんが改めて窓の外に目をやった。
 広いおでこが照明に反射し、それが更に窓ガラスに反射していることは黙っておかなくてはならない。
 もっとも、時折リサの瞳も赤く光ったりしているのだが。
 旅行気分で気持ちが高揚しているからだろう。
 ここで第1形態に変化するのは勘弁してほしい。

 斉藤:「ウソでしょ!?何でこんな時に雨が!?」
 愛原:「天気予報では曇マークになってるんだけどね」
 斉藤:「ウェザーニュースにクレーム言ってやるわ!」
 愛原:「まあまあ。これはただの通り雨だ。すぐに止むよ。雨マークに切り替わる間も無かったんだろう」

 私的には、どうせ降るなら今のうちここで降ってもらいたいものだ。
 八丈島で降られた上、海が時化ようものなら欠航だぞ。
 この時点でも欠航のお知らせは無いので、恐らく大丈夫だとは思うがな。
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義を追え」

2020-07-29 14:44:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 事務所から徒歩圏内のマンションに帰宅する。
 学校から事務所に立ち寄ったリサに今夜出発の話をすると、とても喜んでいた。
 で、準備の為に早くに帰宅していった。

 愛原:「ただいまァ」

 私が事務所から帰ると、カレーのいい匂いがした。
 どうやらリサがカレーを温めてくれているらしい。

 リサ:「お帰りなさい」

 リサは私服に着替えていた。

 リサ:「夕食、もうすぐできる」
 愛原:「おっ、すまないな」

 高橋が用意してくれている食事は今日の夕食まで。

 愛原:「出発の準備はできたのか?」
 リサ:「うん。宿題一気に終わらせた」
 愛原:「……早いな」

 一瞬、一緒に行く斉藤絵恋さんは大丈夫なのだろうかと不安がよぎってしまった。
 こういうのもまた引率者の私の責任なのかもしれないと思ったからだ。
 すると電子レンジから、チンというベルが聞こえて来た。

 リサ:「先生の分、できたー」

 冷蔵庫に保管されているものをレンジでチンするだけだから、手間は殆ど掛からない。

 愛原:「よし。早速食べようか」
 リサ:「お兄ちゃんいないと寂しいね」
 愛原:「まあ、静かなもんだな」

 昔は私1人だったのだが。
 いつの間にか賑やかになってしまった。

 愛原:「どれ……」

 私はリモコンでテレビを点けた。
 これから外洋に出るのだから、天気予報とか気にしておいた方が良い。
 幸いここは晴れているが、地方に行けば豪雨の被害が出ている有り様なのだ。

 愛原:「んー、テレビで見る限りでは大丈夫っぽそうだな」

 まあ、後で船会社のサイトで運航状況でも確認しよう。
 何しろ離島への船舶には、比較的高い確率で欠航がつきまとう。

 リサ:「食べ終わったら、荷物用意するね」
 愛原:「分かった。片付けは俺がやっておくから、リサはゆっくり準備してろ」
 リサ:「はーい」
 愛原:「足りないものとか、買い足さなくて大丈夫か?」

 まあ、途中で調達してもいいだろう。

 リサ:「うん。帰る時、コンビニで買って来た」
 愛原:「そうか」

 食べ終わると、リサは自分の部屋に行き、私は夕食の後片づけを始めた。
 私の場合は着替えとかで十分だが、リサみたいな女の子だと準備が大変そうだ。

 リサ:「……うん。今、準備してる。サイトーは……」

 リサの部屋から話し声が聞こえる。
 どうやら斉藤さんと電話しているようだ。

 リサ:「……うん。修学旅行、中止になっちゃったからね……」

 そ、そうだった!
 このコロナ禍で、都内の学校は殆どが修学旅行中止になったんだった。
 公立はそうだが私立はどうかなと思っていたが、さしもの学校法人東京中央学園も中止を決定したか。
 リサ達、かわいそうに。
 ……っと、私も準備をしなくては。
 八丈島行きの船の出発は22時30分。
 到着は翌朝だから、本当の夜行便だな。
 但し、バスと違って横になれるし、シャワーも付いているから、今から風呂に入る必要は無いだろう。
 それにしても高橋のヤツ、八丈島を経由して、また更に別の島に行くって、本当に何かから逃げるのが目的なんだろうか?
 よく分からない。

 リサ:「先生、ちょっといい」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「荷物、こんな感じでいいかな?」

 リサがボストンバッグを持ってきた。

 愛原:「ああ、うん。いいんじゃない」

 やはり多いのは着替えだった。
 女の子だと、着替えには気を使うのだろうと思いきや……。

 リサ:「変化したら汚れたり、破れたりするから多めに持って行く」
 愛原:「第1形態までなら、その心配は無いだろう?」

 因みに今のリサは第0形態。
 完全に人間の姿をしている状態。
 第1形態だと鬼の姿になる。
 ここまでなら、まだ許容範囲。
 第2形態から、そろそろ化け物の様相を呈して来る。

 リサ:「でも、万が一ってこともある」
 愛原:「うん。その万が一が無いことを祈るよ」

 私が想定しているのは船の欠航くらいだが、高橋を追うモノの正体によっては、リサの力を借りることになるかもしれないな。

 リサ:「サイトーは新しい服、用意して行くって言ってた。私は何を着ていけばいいと思う?」
 愛原:「あー……リサの場合は、動き易い服の方がいいな」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「高橋が何に追われているのかは知らないけど、それによってはリサの力を借りることになるかもしれない」
 リサ:「ハンターくらい私が倒すし、タイラント君やネメシスなら私がおとなしくさせるよ?」
 愛原:「だったら何も、離島に逃げる必要無いだろう?」

 “バイオハザード”シリーズ、プレイしている人なら分かると思うけど、見た目JCのリサの発言はとんでもないことであるとお気づきになるだろう。
 さすがはかつて大ボスを張ったことのあるリサ・トレヴァー、それの日本モデル改良版だ。

[同日20:26.天候:曇 同区内 都営バス菊川駅前バス停→都営バス業10系統車内]

 出発の時間になり、私とリサは菊川駅前で霧崎さんと斉藤さんと合流した。
 リサはノースリーブTシャツにプリーツの付いたミニスカートを穿いている。
 Tシャツの上には、半袖のグレーのフード付きパーカーを羽織っていた。
 私はいつものワイシャツにスラックス。

 愛原:「霧崎さんはメイド服、目立ちますなぁ……」

 そう、霧崎さんはメイド服で来た。

 霧崎:「御嬢様のお世話係として同行させて頂きますので」

 それは表向きだ。
 高橋を捕まえてボコボコにする目的だろう。
 ボコボコにするだけならまだしも、スカートの中に隠したアーミーナイフを振り回すのは勘弁してほしい。

 斉藤:「リサさんはシンプルな恰好で来たのね」
 リサ:「先生が、『いざという時の為に、動き易い服装で』って言うから」

 リサは空手の構えをしてみせた。
 別に空手に造詣があるわけではなく、実際に段持ちの斉藤さんの真似をしただけである。

 斉藤:「リサさんなら怖いモノ無しだもんね」

 斉藤さんは御嬢様らしく、フリル付きのスカートで来た。
 これから都営バスに乗るが、ロールスロイスが目の前に止まっても違和感の無い服装だ。

 リサ:「バス来たー」
 愛原:「ああ、あれだ、あれ」

 新橋行きのバスがやってくる。
 とはいえ、私達はそこまでは行かない。

 愛原:「大人2人」
 運転手:「はい、どうぞ」

 私はリサの分と一緒に払い、

 霧崎:「大人2人で」
 運転手:「は、はい」(←霧崎のメイド服に驚いている)

 空いている後ろの席に向かう。

 斉藤:「リサさん、ここにしましょ」
 リサ:「ん」

 リサと斉藤さんは2人席に座った。
 私は1人席に座る。
 なるべく、霧崎さんと離れて。
 いや、霧崎さんの前の席が空いていたのだが、そこはやめた。
 後ろから襲われそうな気がして……。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスが発車した。
 コロナ禍のせいで1番前の席は封鎖されている。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。この都営バスは木場駅前、豊洲駅前、勝どき橋南詰経由、新橋行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目。……〕

 私はスマホを取り出し、Wi-Fiに接続した。
 都営バスにはWi-Fiのサービスがあるからだ。
 今のところ、船会社から欠航のお知らせは出ていない。
 恐らく大丈夫だろう。
 そして、高橋からは相変わらず着信は無いし、こちらからの送信も着信拒否のままだ。
 しかし、電源は切れていない。
 一体、高橋の身に何が起きているのか。
 そして、高橋の真意は何なのか。
 今のところ、まだ謎のままである。
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の消息」 3

2020-07-27 20:04:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日13:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所→都営地下鉄菊川駅]

 高橋の友人の木村という男から、高橋が羽田空港に向かったという情報を得た。
 あいにくと、そこからどこへ向かったかまでは、まだ分からない。
 全日空の乗客が利用する第2ターミナルへ行ったことから、高橋は全日空の国内線に乗ったというところまでは分かった。
 しかし、その行き先たるや……。

 愛原:「7時台の飛行機、多過ぎるぞ!」
 高野:「そりゃそうでしょう。羽田空港だって、その時間帯は朝のラッシュですよ」
 霧崎:「申し訳ありません。私はこれから御嬢様の御夕食の準備がございますので……」
 愛原:「ああ。何か分かったら、すぐに連絡するよ」

 霧崎さんは事務所を立ち去った。

 愛原:「こうなったら、一縷の望みに賭けるしかない」
 高野:「え?何ですか?」
 愛原:「ちょっとまた出てくる」
 高野:「あ、はい」

 私は再び事務所を出た。
 それにしても、最近は公衆電話が少なくなったものだ。
 私は菊川駅に行ってみることにした。
 高橋の友人の木村は、菊川駅の公衆電話から私のケータイに掛けて来たのだ。

 愛原:「あった」

 幸いそれはラチ外コンコースにあった。
 失礼、ラチというのは改札のことだ。
 忘れられているかのように、そこにポツンとあった。
 何だかそれだけで一話作れそうだと、作者の声がするような気がする。

 愛原:「えーと……高橋の電話番号は……と」

 スマホを見ながら公衆電話を掛けるの図。
 あー、くそっ!こういう時に限って小銭が無い!
 私はすぐさま近くの自販機で飲み物を買いつつ、それで小銭を作った。
 昔はこんなに不便だったんだなぁ……。

 老婆:「もしもし?菊川駅に着いたよ」

 あー、くそっ!
 そんなことしている間に先越された!
 昔はこんなこともあったなぁ!

 雲羽:「かつて顕正会東京会館には、建物の外の敷地内に会員専用公衆電話が10台くらい設置されていて、折伏という名の勧誘の段取りを取る会員達で大繁盛だったんですよ」
 多摩:「いきなりケンショー思い出話するなや!」

 老婆:「……うんにゃ?ここにお巡りさんが来るの?で、そのお巡りさんに300万円渡せばいいの?」
 愛原:「お婆ちゃん、それ、100パー詐欺!!」

 昔はこんな詐欺無かったぞ!

[同日15:00.天候:曇 愛原学探偵事務所]
 
 全く。
 詐欺事件を解決しちゃったせいで、余計な時間を取られてしまった。
 まあ、詐欺グループが高橋の仲間じゃなくて良かった。
 かくして警察官を装っていた受け子は、私が通報した本物の警察に、あえなく御用と相成ったのでした。
 その為の事情聴取に時間を取られてしまったのだ。

 高野:「それで、マサがどこに行ったか分かったんですか?」
 愛原:「奴は東京から出ていない。正確に言えば、東京都から出ていない」

 私の目論見通り、高橋は公衆電話からの着信には出た。
 どうやら木村を始めとする仲間達との定時連絡に、今は公衆電話を使っているのかもしれない。
 相手が私だと分かると、とても驚いた様子だった。
 そして私が居場所を問い詰めると、あっさりゲロッた。

 愛原:「八丈島だ」
 高野:「八丈島!?……あっ!」
 愛原:「そうなんだよ。八丈島を含む伊豆諸島は東京都なんだよ!だから、『東京を出ていない』ことになるんだ!」
 高野:「すっごいこじつけですね。でも、どうして八丈島に?」
 愛原:「分からない。切られてしまった。しかもあいつ、八丈島が目的地じゃないらしい。『また別の島に行くんス』なんて言ってた」
 高野:「青ヶ島ですか?」
 愛原:「……かもしれないな。だけど、目的は教えてくれなかった」
 高野:「でも、マサは無事なんですよね?」
 愛原:「無事みたいだが、やっぱり心配だ。俺達も行こう」
 高野:「行き先、決まって良かったじゃないですか」
 愛原:「ん?」
 高野:「忘れたんですか?」

 高野君は斉藤社長からの依頼書を見せて来た。
 そうだった!斉藤社長から仕事の依頼があったんだった。
 私はすぐに斉藤社長に電話した。

 斉藤秀樹:「ほお、八丈島ですか。確かに『都民は東京都から出るな』という小池都知事の意向に沿った行き先ですね」
 愛原:「ただの偶然ですよ。今から交通手段を確保しますので……」
 斉藤:「船と飛行機がありますよ。愛原さんならどちらにします?」
 愛原:「船なら夜行便ですね。今夜に出発します」
 斉藤:「すぐに船室を手配しましょう。帰りはどうします?」
 愛原:「まだ分かりません。高橋がどういう状況なのか、それ次第です」
 斉藤:「なるほど。人員は?」
 愛原:「えーと……引率者が私で、リサと絵恋さんですね。それと……」

 私は高野君を見た。
 しかし、高野君は両手でバッテンを作った。
 どうやら高野君は参加したくないらしい。

 愛原:「できれば霧崎真珠さんを」
 斉藤:「娘の専属メイドですか?」
 愛原:「はい」

 もしも霧崎さんが高橋と再会した場合、逃げた罰としてナイフで切り刻もうとするだろう。
 それを止められるのは、絵恋さんだけだ。

 斉藤:「分かりました。愛原さんの推薦でしたら、そうしましょう」
 愛原:「ありがとうございます」

 私は電話を切った。

 愛原:「こんな所でいいかぁ。高野君は本当に行かなくていいの?」
 高野:「ええ。私は私で、別に予定がありますから」
 愛原:「そうか」
 高野:「それより、リサちゃん達に教えてあげた方がいいんじゃないですか?今夜出発でしょう?」
 愛原:「それもそうだ。リサ達、もうすぐ学校から帰ってくるだろう。その時でいいんじゃないかな」

 しばらくすると、再びファックスがやってきた。
 斉藤社長からで、どうやら八丈島行きの船を予約してくれたらしい。
 予約番号が書かれていて、これをターミナルの窓口に持って行き、そこで乗船券を購入する流れだとすぐに分かった。

 高野:「斉藤社長の肝煎りですから、高い席かもしれませんよ?」
 愛原:「あっ、そうか!」

 もちろん、交通費などの掛かった経費は全て斉藤社長が払ってくれる契約になっている。
 とはいえ、基本的には立替払いとなり、後で請求する形だ。

 愛原:「娘の為に新幹線のグリーン車を予約するようなオヤジさんだったな。有り得る。現金は少し多めに持って行くぞ」
 高野:「そうしてください。宿泊代と帰りの交通費もお忘れなく」
 愛原:「分かってるさ」

 後で斉藤社長が報酬と一緒に全部払ってくれることは分かっているのだが、どうしても値段にビビってしまう私なのだった。
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