報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター”「双子の絆」 2

2014-01-30 18:01:37 | 日記
[14:00.市内のテレビスタジオ 敷島孝夫、鏡音リン、MEIKO、KAITO]

「あっ、やっと来た」
「プロデューサー、遅いわよ!」
「ゴメンゴメン!途中で渋滞にハマっちゃって……。すぐに用意してくれ」
 ビー!
「!?」
 敷島の持っているタブレットが警報を鳴らした。
「! リン、お前……!?」
 タブレットには、こう書いてあった。

『警報:鏡音リン 種別:機器異常 内容:水式冷却異常、空気式冷却異常 ……』

「リン!大丈夫!?」
 リンがガクッと膝をついた。
 口をパクパクさせているが、熱が排出される様子が無い。
「こ、これはマズい。キャンセルを……」
 しかし、リンは敷島の服を掴んだ。そして、首を横に振る。
「大丈夫だよ。リン、歌えるよ」
「いや、ダメだろ!警報出てるし、お前……」
 その時、スタッフが中に入ってきた。
「すいません、出演者の皆さん、リハーサルしたいと思いますので、スタジオまでお越しください」
「は、はい!」
「ちょっと!どうするの!?」
「取りあえず、リハはMEIKOとKAITOだけで頼む」
「プロデューサー!?」
「あくまで、リンも共演しているという設定は崩さないように」
「は、はい」
「……どうなっても知らないからね。行こう」
「ああ」
 2人の成人ボーカロイドは控え室を出て行った。
「排熱できないのか?」
「う、うん。何度もやってるんだけど……」
「ファンは?」
「ファンが壊れてるわけじゃないみたい……。でも……とにかく、リンがいくら指令を送っても動いてくれないの……」
「水冷もか?」
「ラジエーターはちゃんと入ってるのに……」
 敷島は冷蔵庫からペットボトルの水を1本出し、冷凍庫から氷の入った袋を出した。
 ボーカロイドは精密機械の塊であるからして、熱は大敵だ。だから仕事を1回こなすごとに、人間以上の冷却は欠かせない。
「ふう……」
 氷の入った袋を頭に当てると、ジュウと水蒸気が立った。
「このままだとオーバーヒートを起こして、完全に故障する。ある程度、体を冷やしたら電源を切るんだ。それで、急いで研究所に戻ろう。所長も講演会が終わる頃だろうから、ちょうど……」
 すると、リンは首を横に振った。
「ヤダ……。リン、歌う……歌いたい……」
「ダメだ!冷却系統が全部故障してる状態で歌ったらどうなるか分かってるだろ!息を止めて歌うようなものだぞ!」
「リンは人間じゃないから……」
「いや、そういうことじゃなくてだな!」
「リンね……レンと一緒に仕事がしたかったの……」
「えっ?」
「でも……今、そんなこと言うのは、ただのワガママだと思うんだ……。今は……レンの方がずっとリンの先を行ってるし……そんなリンが言ったって……。リンが負けてるの……レンより、仕事が少ないってのもあると思うし……」
「それはリンが悪いんじゃない。俺のプロデュースが悪かったんだ。とにかく、今はダメだ!」
「『歌えないボーカロイドはただのガラクタ』」
「!?」
「ルカ姉ちゃんが言ってた言葉……」
「いや、お前の場合は故障さえ直せばまた歌えるから。そんなこと言うなよ!」
 その時、またスタッフが入ってきた。
「あ、すいません。プロダクションの方……」
「あ、はい?」
「ディレクターがお呼びです。ちょっとよろしいでしょうか?」
「あ、はい。今行きます。いいか、リン。体が冷えたら、電源切れよ?」
「…………」
 敷島が出て行くと、リンは……。

[同時刻 財団仙台事務所 鏡音レン、初音ミク、巡音ルカ、赤月奈津子]

「レン、今日は何だかダンスの動きが遅かったわよ」
 赤月がレンに注意した。
「ご、ゴメン」
「リンのことが気になるんだよね?」
 ミクはレンの顔を覗き込んだ。
「ま、まさか!そんなこと無いよ!ボクとリンは徹底抗戦中なんだから!」
 レンはそう嘯いた。
「赤月先生、ちょっといいですか?」
 財団職員に呼び止められる。
「あ、はい。何でしょう?」
「本部からの通達がありまして、来月の……」
「ああ、それなら大学の研究室とも相談しまして……」
 少し長い立ち話になりそうだ。
 その時、レンにリンからのホットラインが届いた。それは、ここにいるミクやルカも傍受できた。
「う……」
「ほら、かわいいお姉ちゃんが呼んでるわよ」
 ルカはニッと笑った。
「そうよ。早く仲直りしなって」
 ミクも笑みを浮かべた。
 レンはヘッドホン形の右耳を押さえた。
「……な、何だよ?ボク達は今、徹底抗戦中でしょ?」
{「レン……SOS……」}
「!?」

[1時間後。市内のテレビ局]

「幸か不幸かと言うべきか……」
 敷島は控え室の椅子に深く座っていた。
 ディレクターによると、急に番組の構成が変わってしまい、ボーカロイド達の出番はトリになってしまったそうだ。
 そこへ、
「お疲れ様です。陣中見舞いに来ましたよ」
 赤月がやってきた。
「おおっ、赤月先生!」
「まあ、レンがどうしても来たいって言ってたんですけどね」
「ほお……。やっと仲直りする気になったか」
「今、どんな状態なんですか?」
「ああ。番組の途中でゲストとして登場する予定だったんですけど、急に構成が変わって、トリ出演ですって」
「その方が目立っていいじゃないですか」
「まあ、そうですけどね」
「あの……!」
 その時、レンが言った。
「お願いです。ほんの少しだけでいいんで、リンと2人きりにしてもらえませんか?」
「え?」
「いいけど、出演まであと15分しか無いぞ?」
「分かってます。10分だけでいいんです」
「ちゃんと10分以内に仲直りするのよ?」
「はい」
 リン・レンを除く、他のメンバー達は控え室を出て行った。

[10分後。テレビ局の控え室]

「すいませーん!そろそろスタンバイお願いしまーす!」
 スタッフが呼びに来た。
「あ、はい!おい、リン・レン。そろそろ……」
 敷島は控え室に入った。
 そこには衣装を着たリンと、私服姿のレンがいた……。
「そろそろ出番だぞ!」
「はーい!」
「あれ?なっちゃんは?」
「急に研究所から呼び出しが来て、急いで行っちゃったよ。とにかく、早くスタンバイしてくれ」
「はーい」
「じゃ、行ってきます!」
 リンはMEIKOやKAITOと一緒に、スタジオのセット裏に向かった。

[スタジオ]

「さあ、最後に特別なゲストを紹介しちゃいましょお!只今、絶好調!人気上昇中のボーカロイド!MEIKO、KAITO、鏡音レンの3人です!どうぞ!」
 観客の歓声と共にスタジオに飛び出す3人。
「ボーカロイドの皆さんの新曲と共に、今日はお別れです。早速歌ってもらいましょう!」

 歌が始まる。
「凄いねー」
 リンがアドリブで、バック宙をやって更に観客席を沸かした。
「リンって、バック宙できたっけ?」
 ルカが首を傾げた。
「レンはできるけど……」

[夕方の南里研究所]

「あー、リンや。すぐに修理を始めるから、奥へ来い」
 南里が手の骨をパキポキ鳴らしながら言った。
「あっ、ドクター。それ、レンですよ」
 ルカがレンを連れて行こうとする南里をたしなめた。
「バカモン。ワシの目は節穴ではない。そうだな?リンや」
「ご、ゴメンなさい……」
「えーっ!?」
 他のボーカロイド達は『リン』を見た。
「ご、ゴメン……」
 頭部の取り外しができるのは、レンだけである。それなのに、『リン』が頭部を取り外した。
「ボク、レンです」
「ええーっ!?」
「それじゃ、さっきのテレビ……」
「まあ、そんなことだろうとは思ってたけどな……」
 敷島は溜め息をついた。
「リンとレン、入れ替わってたんだな?」
「はい」
「うん」
「全く。いつも驚かされるわよ」
 MEIKOは呆れたように肩を竦めた。
「し、しかし、確か、入れ替わりは禁止だと赤月博士が……」
 KAITOがハッとしたように言った。
「もう!管理が混乱するから、勝手に入れ替わるなって何度言ったら分かるのよ!!」
「まあまあ、赤月君。説教は修理が終わってからにしてくれ。どうも今回は、ただの故障ではなさそうじゃからの」
「ただの故障じゃない?」
 すると赤月は咳払いをした。
「どうもね、リンはどこかでウィルスに感染したみたいなのよ」
「ウィルス!?」
「完全に新型のウィルスなんだけど、どうも出所はウィリーみたいね」
「またあいつか!」

[現在 財団仙台支部事務所 敷島孝夫&アリス・フォレスト]

〔「またあいつか!」〕
「ボーカロイド達に搭載したカメラの映像を編集して、1つのドキュメンタリーにしてるわけね。グッド・アイディアだわ」
「そうだろ?その後、レンにも感染してさ。一応、感染はそこで食い止めたけど……」
「じー様が頭抱えていたわ。思ったほど強い症状が出ない上に、感染力も強くできなかったから、こいつは失敗作だって。じー様の想定内だったら、とっくに南里研究所のロボット達は全部廃棄物になっていたはずよ」
「そうか。でも結局、リンがどこで感染したのか分からなかったんだ」
「バージョン2.0とか来なかった?」
「ああ。この映像の前か。エミリーが秒殺したけど。何で今更あんな旧式を送り込んできたのか、首を傾げていたんだけどね」
「マルチタイプには、感染しても発症しないように設定していたの。だから、あの時点でエミリーは感染したけど、発症しなかったわけね。で、発症しないと本人も知らないから、その後で最初に接触したのがリンだったんじゃない?」
「あー……そうかも」
「感染力が弱いから、その後で鏡音レンにも感染したんだろうけど、そこでストップしたわけね」
「じゃあ、今のエミリーは!?」
「何年もずっと同じメモリー使ってるの?」
「あっ……」
「じゃあ、大丈夫」
「そうだったのか……」
「フフン♪もう今度からはアタシがいるから心配無いよ」
「そうか。そうだな……」
「兄ちゃん、ちわーっ!」
「お疲れさまですー」
 そこへリンとレンがやってきた。
「おう、お前達。どうした?」
「近くまで来たので、寄っちゃいました」
「そうか」
 アリスはリンとレンに冷凍倉庫に閉じ込められたという因縁があるが、今は何とか和解している。何より、
「あの……右手の動きが左手に比べて鈍くなっちゃって……」
 レンが恐る恐るといった感じてが言うと、アリスは、
「OK.じゃあ、ちょっと見せて」
 ウィリーから自慢の後継者として世に出ただけのことはあり、腕前は財団所属の研究者の中で、既にトップを争うまでになっていた。
 エミリーの整備だけのつもりが、ボカロの整備の仕事まで来るようになったという。
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“アンドロイドマスター”「双子の絆」

2014-01-30 15:26:36 | 日記
[2月27日 11:00.財団仙台支部事務所 敷島孝夫&アリス・フォレスト]

 敷島は事務室の椅子に座って、動画の編集作業をしていた。
「だーかーらっ!あの話はナシって言ったでしょ!知らないもんは知らないんだってば!文句あんなら、そっちから日本に来なさいよ!……ったく!」
 日本語訳するとこんな感じだろうか。アリスが苛立った感じで、ケータイ片手に事務室に入ってきた。
「うるさいな。ここは事務室なんだから静かにしろよ」
 敷島は部屋の奥の自分の席から、アリスに注意した。
「イリノイ州のサツがうるさいのよ。だいたい、じー様の隠しアジトなんて全部知らないっての」
 アリスはあからさまに不機嫌ってな感じで、空いている椅子にドカッと座った。
「お前、ウィリーから財産全部受けたんじゃないのか?」
「じー様から受け取ったのは金と研究成果だけ。あと、じー様の研究理念とか……。ハコモノについてだったら、アタシよりプロフェッサー十条の方が詳しいわよ」
「十条理事ねぇ……。確か、前にウィリーの隠し財産発掘に行ってくるとか言ってたけど……。ん?イリノイ州?」
「そうよ。何かね、アメリカの中西部に、じー様のラボがあったらしくて」
「お前は知らないのか?」
「だって、アタシを引き取る前の話だし」
「あ、そうか。イリノイ州というと、シカゴがある州か」
「そうね。アタシは行ったこと無いけど」
「ふーん……」
 まあ、大都市ではあるが、首都ではないからなぁ……。敷島がそう思ってると、
「生まれのテキサス州しか知らないし」
「まあ、テキサス州だけでも日本の何倍以上の広さがあるしな。独立国家だった歴史もあるし」
「そうそう。テキサス共和国ね」
「大日本電機もなあ、ニューヨークに支社だか営業所だか作ろうなんて話あったのになぁ……」
 敷島はしみじみと言った。
「ちょっと。なにジジ臭いこと言ってんのよ。作るんだったら、アタシの生まれのダラスにしたら?ニューヨークより土地代安いよ」
「ははははは!ダラスがどこにあるか知ってる社員が、あの中にいたかどうか……」
「いいのよ。アメリカ人の8割はニューヨークがどこにあるかも知らないよ」
「嘘ぉ!?」
「ところで、何か面白そうな動画ね。それ何?」
「ああ。俺がボカロ・プロデューサーやってた頃の記録映像だよ。せっかくだから、ちゃんと編集して取っておこうと思ってね」
 ちょうど今、鏡音リン・レンがモニタに映っていた。
「コンピュータ・ウィルスの一種で、“インフルエンザ”って知ってる?」
「ええ。確か、じー様の試作ウィルスだったかな。ヒト・インフルエンザみたいに空気感染していくみたいな、パンデミックを引き起こす画期的なウィルスだって、年甲斐も無くはしゃいでたなぁ……」
「それに纏わる話だよ、これは」
「えっ?」

[5年前の1月30日 南里研究所 鏡音リン・レン]

「レンのバカ!もう知らないからっ!!」
「リンこそ、いい加減にしろよ!」
「2人とも、ケンカはやめようよー」
 取っ組み合いとまでは行かないまでも、口論する双子の姉弟。池波由紀奈が見かねて止めに入ろうとするが、
「ゆきぴょんは黙ってて!」
 姉弟に同時に文句を言われてしまった。
「おい、どうした?2人とも」
 そこへ敷島が事務室から出てきた。
「どうもこうも、“ベタな双子キャラの法則”通りよ」
 MEIKOが肩を竦めた。
「なに?」
「必ず1話分は取っ組み合いのケンカをして、最後には仲直りするっていうね」
 呆れと苦笑を混ぜた顔でそう言った。
「MEIKO!ボクはリンと徹底抗戦するからね!余計な口出ししないで!」
「ゆきぴょんもだよ!」
「ま、まあ、とにかく、リン。仕事の時間だから、早く出発の準備しろ」
 赤月もやってくる。
「レンもよ。ほら、早く支度して」
「ベーッ!」
「イーッ!」
 最後に2人の姉弟は睨み合った。

[同日 車の中 敷島孝夫&鏡音リン]

〔「……最近、インフルエンザが流行しています。リスナーの皆様も、うがい手洗いをこまめに行って……」〕
 ラジオからはパーソナリティを務めるKAITOの声が聞こえてくる。
「一体、ケンカの原因は何なんだ?」
「兄ちゃんには関係無いでしょ!リン達、今徹底抗戦中なんだから!」
「あー、ハイハイ。ま、それはともかく、アイドルは笑顔が大事なんだからな。撮影までに、そのふくれっ面何とかしてくれよ」
 するとリンはニコッと笑った。
「もちろん。久しぶりの歌の仕事ですからー」
「最初はグラビアの撮影からだぞ」
「やっぱり、ボーカロイドは歌を歌うのが使命だからねー」
「何だ、急に?」

[市内のスタジオ 敷島孝夫&鏡音リン]

「……どうしたの?リンちゃん、何か怒ってる?」
 ふくれっ面を何とかすると言ったリンだが、そう簡単には行かないようで、表情の豊かさが求められるグラビア撮影はつまずいた。
「別に怒ってないよ」
「どうも表情が硬いな。すいません、ちょっと調整しますので、時間頂けませんか?」
 敷島はリンを控え室に連れて行った。
「冬でもグラビアの撮影は水着なんだな。屋内の撮影とはいえ、人間だとちょっと寒いかな」
「……そうだね」
「なあ、リン。仕事までにレンとのケンカのことは忘れるって言っただろ?」
「……兄ちゃん、レンとのケンカの原因聞きたい?」
「じゃあ、教えてくれ」
「午前中、雑誌の取材があったんだ」
「ああ、知ってる。確か、赤月先生が一緒だったな」
「うん」

[同日午前中 南里研究所の応接室 鏡音リン・レン]

「ここ最近、姉弟別々に仕事をすることが多くなったようですが、それについてどう思いますか?」
 雑誌記者がインタビューし、それにリンとレンが答える形式である。
 レンが答えた。
「正直確かに少し寂しいです。でも、いくら仕事が別々になろうとも、ボク達は2人で1つなのに変わりはありませんから」
「なるほど。先月のファン投票によると、意外にもリンちゃんとレン君で、少し差が開いた気がします。リンちゃんは、レン君よりやや順位を落としてしまいましたが、それについては?」
 何故かそこでピリッとリンの体に過電流が一瞬流れた感触があった。
「えー……」
 リンが答えに詰まったと見るや、レンが代わりに答えた。
「それはたまたまです。確かに先月はボク、リンより仕事が多かったのは事実で、それが原因だと思うんです。だからけしてリンが人気が無いとか、そういうことじゃなくて、さっきも言ったように、ボク達は作られた時から絆というか、そういうので結ばれているので……」
「……リン、悔しいよ」
 リンはポツリと言った。
「リン?」
「レンに負けて……弟に負けて、悔しいよ……」
「な、なに言って……!?」

 取材が終わってから……。
「リン、さっきは何であんなこと言ったのさ!変な誤解されたらどうするんだ!!」
 レンが双子の姉に食って掛かる。
「リンは正直に答えただけだよ」
「いや、だから、相手は芸能雑誌の記者さんなんだ。それに何だよ、正直って?リンはボクのこと、そんな風に考えてたのか!」

[同日午後 再び車の中 敷島孝夫&鏡音リン]

「ふーん……。そんなことがあったのか」
「うん……。何でリン、あんなこと言っちゃったんだろう」
 リンは後悔という2文字がぴったり合う、そんな顔をしていた。
「お前達はどんどん成長していってる。ボーカロイドには、そういった“成長ブログラム”が組み込まれてるからな。仕事の方向性が2人で変わってきたことで、意見が衝突するかもしれんって所長が言ってたけど、どうも本当だったみたいだな」
「博士が?」
「ああ」
「レンとは方向性が違うって……じゃあ、兄ちゃんはリンをどんなアイドルにしてくれるの?」
「人間のアイドルとは違うからな、それと同じじゃダメだというのは分かってるんだけど……。正直、まだ俺自身がどうするかってな……ハハハ……(乾)」
「えーっ?」
「最初、KAITOがヒントを言ってくれてはいたんだけどな」
「KAITOっとが?」
「確か、『ボク達には色々な個性・特色があります。それを大いに活用してください』みたいな?」
「ああ。兄ちゃんがダブルブッキングやらかして、危うくクビになりかけた時?」
「悪かったな……。まあ、とにかく、その答えはもう少し待っててくれ。リンは何も歌うだけでなく、ダンスや演技も1番上手いと思う」
「ほんとに!?」
「ああ。何の身体改造も無くして、あのミュージカルの主役を成功させたのは大きかったよ」
「あれだって結局、準主役のレンに人気を持ってかれちゃってさ……」
「まあ、レンは悲劇の主人公みたいな役だったからな」
 その時、敷島のタブレットからアラームが鳴った。
「何だ?誰か異常か?」
 特殊なアプリを作って、インストールしてある。ボーカロイド達の体などに異変が起きた時に鳴る音だった。
「あ、兄ちゃんは運転中だから、リンが見るね」
「ああ」
 リンは急いでタブレットを取ると、すぐにアラームを止めた。
「誰だ?」
「う、うん……。ルカ姉ちゃんみたい」
「ルカが?ルカに何があったんだ?」
「ちょっと発声機能に負荷があったみたいだね」
「ルカは確か……。ああ、赤月先生と合流して、PVの撮影だったか」
「そうそう。みくみくとも一緒だったね」
「そうだそうだ」
 リンはニコリと笑って、タブレットをリア・シートに隠した。そのモニタには、こう表示されていた。

『注意報:鏡音リン 種別:機器異常 内容:冷却系 ……』
 と……。
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冨士参詣深夜便

2014-01-30 02:24:41 | 日記
郵便投函中に無人の車が踏切に…東武東上線衝突(読売新聞) - goo ニュース

 この前にも人身事故か何かあって、沿線の利用者の皆さんは大変ご苦労なさったと思う。
 今回の踏切事故の方が、賠償責任は重い。運転再開までの時間が掛かったのも去る事ながら、事故車両がメトロ有楽町線または副都心線から乗り入れて来た7000系だったからである。つまり、賠償請求が東武鉄道からだけではなく、電車の修理代を東京メトロからも請求される確率大ということだ。車も全損・廃車確定だろうから、車の無い生活をしてみてはいかが?
 え?それだと生活が成り立たない?知らねーよ!んなこたぁ!(←遠く離れた有楽町駅で被害に遭った人)

 http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/snk20140129558.html

 河野談話で有名な河野洋平氏を国会にて証人喚問する動きがあるとのこと。それだけではなく、朝日新聞の社長(新聞社だと社主か)も一緒に呼ぶらしい。うむ。実に素晴らしい事だ。売国奴共をどんどん追及していってもらいたい。というわけで、ついでに村山富市氏と福島みずほ氏もヨロ!
 河野談話と村山談話は早期に破棄するべきだ。
 本来ならこれ、自民党がするべきなんだけどね。既存政党だと難しいのかな?
 維新の支持率アップなるか?今後とも注目していきたい。

 http://news.goo.ne.jp/topstories/nation/68/209ae57722bd1bd436646951f80617cc.html

 最近、ロスト・チルドレンが流行している。関西であったビッチ中学生やその前の小学生の件は、どうもただの家出だったようだが、こちらは北海道ということもあり、多少事情が違うように思える。
 私も冬の北海道に旅行に行った際、当時はバリバリの顕正会員で、夕勤行とビデオ放映をまだ一民家を借り上げただけの札幌事務所で参加しようと思ったことがある。
 現在の札幌会館の最寄り駅は失念してしまったが、当時の事務所は地下鉄東西線の菊水駅が最寄りだった。結構、街中である。幹線道路もあり、住宅街もありで、けして寂しい場所にあるわけでもない。晴天であれば、難無く着けたであろう。
 ああ、そうだとも。当時は猛吹雪で、歩いているそばからどんどんどんどん雪が積もって行ったのだ。危うく、街中で遭難するところだったぜ。
 私と違って、この行方不明のコは地元民だからそんなことが分からないとも思えない。
 真冬の札幌市内でヒグマに遭遇するとも思えないし(東北だとツキノワグマなんだが)、まあ、仙台市内だとどこぞのクマが南里研究所の近く泉区の住宅街に出没したなんて話もあったが、そういう話では無いだろう。
 早く無事で見つかることを願うものである。
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久しぶりの映画鑑賞

2014-01-28 17:28:21 | 日記
 今日はいよいよ、アイマスファンにとっては待望の劇場版アイドルマスターを観に行った。
 私1人ではなく、幸い職場に私と同じ二次ヲタの同僚(HNいとす)がいるため、休みの日が合う本日行った次第。
 平日の空いてる時に行けるというのは大きく有利だ。お盆も年末年始も関係無い仕事ならではの役得と言えよう。
 2人で行きやすい場所が錦糸町ということもあって、あっつぁさんの本拠地でもあるところの錦糸町(TOHOシネマズ)にした。
 秋葉原まではいつもの時間、いつもの電車に乗るわけだが、スーツ着用で乗る通勤時と違い、私服で乗る。それだけで、別の電車に乗っている気分だ。
 秋葉原で総武線各駅停車に乗り換えるわけだが、いつも東京駅まで乗るところを途中下車するのだから、そこでやっと違和感を覚えるわけである。
 いとす氏は東武スカイツリーラインから半蔵門線まで乗り通すところ、私は楽に向かうことができた(京浜東北線は大宮から乗車で着席、総武線は千葉方面なので空いている)。
 因みに“アンドロイドマスター”にも登場した錦糸町駅だが、エリちゃんが蹴飛ばした自販機は未だに健在であった。このネタの原作は、ポテンヒットさんの“カンバレ!特盛くん”からの拝借であります。

 錦糸町駅の北側にあるオリナスに向かう。果たして、あの大人気のアニメ作品の映画化ということで、ファンはどれだけいるのかと思ったが、平日の午前中ということもあって、結構空いていた。因みに、私は先にパンフレットを買う方。ここは“聖☆おにいさん”のイエス・キリストに通じている。だからといって、完全にネタバレOKというわけではなく、それは袋に入れたまま帰宅してから見る為である。買い忘れを防止する為に、先に買っただけである。
 私の場合、少し前の記事にも書いたと思うが、少しだけならネタバレOKな方だ。ウィキペディアに記載されている程度かな。もっとも、今回は新しい作品なので、あまり詳しいことは書かれていない。アンサイクロペディアは、却って首を捻る内容のものが多いし。チャクウィキは【お察しください】。
 映画鑑賞にはポップコーンとコーラに限る。正にベタな法則。その前に、私といとす氏がネット購入した前売り券を指定席券に引き換える。といっても下の半券がもぎられて、上の閣下天海春香のイラスト入った部分は残るので、いい記念になる。栞に使えるかもしれない。
 内容についてはネタバレになるので詳細は述べないが、これはもう定価の1800円払ってもいいものであった。
 アイマスならではのお約束ネタもちゃんと盛り込まれており、ファンやプロデューサー達の期待を裏切らない。
 まず間違いなく公開終了後、DVD化されるだろうから、それを買ってもいいと思う。さすがは二番煎じ、三番煎じのアイドル成長アニメが出るほどだ。
 映画の後は再び総武線に乗り、秋葉原へ。行きも帰りもE231系だ。この後、山手線や宇都宮線で乗っているので、京浜東北線以外、E231系三昧だったということになる。何だか、鉄道の方は味気無いなぁ……。
 秋葉原ではいとす氏と共に、アニメイトやとらのあなで戦利品商品を物色する。こういった専門店では、発売日の1日前には既に発売されている。私といとす氏が購入したのは、上記の映画の主題歌。ブルーレイ付きである。まだこちらは中身を見ていないが、後でゆっくり見ることにする。
 いとす氏は2月にさいたまスーパーアリーナライブを控えているというし、私も気をつけないと搾取されてしまう。しかし、気にしたら負けである。

 そう、搾取を気にしたら……ファン、プロデューサー共に失格なのだ。
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“アンドロイドマスター”「狂科学者の孫娘」 5

2014-01-27 22:24:22 | 日記
[2月23日07:00. 敷島のマンション 敷島孝夫&エミリー]

「おはよう・ございます」
「ああ、おはよう」
 いつもの時間に起きると、エミリーはいつもの通り、朝食の用意をしていた。
 昨日の如く、アリスはまだ起きていない。
 先に顔を洗うことにした。

「なあ、エミリー」
「何でしょう?」
 洗面所から戻ると、敷島は昨夜のことについて聞いた。
「アリスの泣き声が聞こえて来たんだが、何かあったのか?」
「ああ……その……」
「別に、聞いてどうこうするわけじゃないよ」
「ドクター・アリスが・泣かれていたのは・本当です」
「何で?」
「寂しさのあまり・時々・そうなる・そうです」
「……!?」

[2月22日02:00. アリスとエミリーの部屋 アリス&エミリー]
(尚、本来は英語で話しているところですが、日本語に訳しております)

「パパ……ママ……どうしていなくなっちゃったの……」
 充電を終え、“起床時間”までスリープ状態になっていたエミリーは、アリスの声に反応して再起動した。
「シンディ……お祖父ちゃん……どうして死んじゃったの……」
 エミリーは啜り泣くアリスに近寄ると、スッと抱き寄せて膝枕をした。
「何も・御心配・いりませんよ」
「シンディ……」
「私が・シンディの・代わりに・なります。どうぞ・好きなだけ・泣いて・ください」
 その時、アリスの脳裏に幼い頃の記憶が蘇った。
 まだ、養護施設から引き取られたばかりの頃。それでも寂しさは紛れるわけでもなく、よく泣いた。
 その時、そっと寄り添ってくれたのはシンディだった。シンディもまた、エミリーと同じ言い回し(口調は違うが)で、アリスを慰めてくれたものだ。
 アリスはエミリーに抱きついて、わんわん泣いた。

[2月23日07:30.敷島のマンション(ダイニング) 敷島孝夫&エミリー]

「……と・いうわけ・です」
「そ、想像できん。あのシンディが……!」
 敷島にとっては、狂ったように笑って、ついには作り主を笑いながら刺し殺した暴走ガイノイドのイメージしか無いのだが……。
「敷島さんに・復讐をする為に・動いていた時は・寂しさも・忘れていた・そうですが」
「まあ、人間そんなもんだ。目標を失ったら、確かにそんな気分になるだろうな。分かったよ。まあ、とにかく、アリスを起こしてくる」
「イエス」
 敷島はアリスの部屋に向かった。

「おーい、入るぞー」
 敷島はドアをノックした。
「う……」
「クカー……」
 前回と同じ、180度ひっくり返った体勢でいびきをかいているアリスの姿があった。
(本当に泣きじゃくったのかよ……)
 まあ、エミリーが嘘をつく性格ではないというのは知っているので、本当なのだろう。
「おい、起きろよ」
 敷島はアリスの肩を揺さぶった。
「うう……ん……。あ……おはようなの……」
「ああ。もう朝飯できてるから、早く起きて着替えろよ」
「OK.……シキシマ。今日はペーパー(新聞紙)丸めて叩かないの?」
「何度も同じ手使ったらウケないだろうが。じゃ、早くしろよ」
「ウケ?……何か、今日は優しいね?」
「そうか?同じ手は使わない主義なだけだよ」
 敷島はそう言うと、ダイニングの方へ向かった。
「Good morning.」
 アリスは立てかけているポートレートに向かって言った。
 そこに写っていたのは、幼い頃の自分と一緒に写るドクター・ウィリーとシンディの姿だった。
(アタシも日本で頑張るから。絶対に見ててね)
 心の中で亡き“肉親”達に言うと、アリスは着替えを始めた。
 自分のことを『狂科学者(マッド・サイエンティスト)の孫娘』と呼ぶ科学者が多いのは知っている。
 血の繋がりは無いが、そう呼ばれることをアリスは疎ましく思う。養祖父とて、違う形とはいえ、人類の為のロボットを作っていたのは間違いない。
(マッド・サイエンティストの孫娘じゃなく、天才科学者の祖父となるまで……ね)

                                             『狂科学者の孫娘』 終
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