報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「伊藤家の探索」(※今回はリサも愛原も登場しません)

2024-02-29 20:39:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日12時00分 天候:晴 東京都板橋区常盤台 伊藤家]

 BSAA日本地区隊員「来たか」

 BSAA北米支部養成学校生であるレイチェルは、北米支部の隊員2名と共に、現場に駆け付けた。
 1人は白人のマイケル、もう1人は黒人のジムである。

 日本地区隊員「アメリカ人は時間にルーズだな。もう30分も遅刻だぞ」
 マイケル「バックレるよりかはマシだろ。で、現場は?」
 日本地区隊員「地元の警察から遺体を譲り受けた。現在、ウィルスの感染状況などを確認中だ」
 ジム「さて、この展開!我々の出番だと思いますけどー?なあ、レイチェル?」
 レイチェル「ええ、そうですね」
 日本地区隊員「待て。まだうちの地区隊員が、ウィルスの濃度をチェック中だ」
 マイケル「いいから任せておきなって、なあ?だいたい、こいつは他人んちを家探しするのが大の得意なもんでねぇ」
 ジム「聞こえてるぞ、グラインダー!」
 日本地区隊員「グラインダー?」
 マイケル「何か知らんが、勝手に俺のコードネームにされた。因みにジムはグレイハウンドだ」
 日本地区隊員「アメリカの長距離バス会社か」
 マイケル「そこは猟犬って言ってやれよ。まあ、他人んちを嗅ぎ回るという点でな」
 ジム「だから、聞こえてるって!」

 と、そこへ勝手口から防護服を着た日本地区隊員がぞろぞろと出て来る。

 衛生隊員「屋内は僅かながら、特異菌の反応あり!ただ、直ちに人体に影響があるレベルではない。ワクチンを接種するか、抗体があれば防護服は不要だろう」
 日本地区隊員「特異菌か」
 マイケル「日本でも特異菌が流行るとはねぇ……。工兵部隊の連中、日本のリサ・トレヴァーを見物しに行ったんだって?俺達も見物してぇなぁ……」
 ジム「グラインダーが行ったところで、迷惑なだけですよ」
 マイケル「言ってくれるな。……まあいい。中を探索しよう。BOWの気配は、僅かな特異菌だけか?」
 衛生隊員「今のところは……」
 ジム「じゃ、とっとと行きましょう。レイチェル、準備はいいか?実地訓練だが、本番同然だぞ?」
 レイチェル「分かってます」

 レイチェルは当然学校の制服から、BSAAの軍服に着替えている。
 手にはショットガンを持っていた。

 マイケル「それじゃ、探索開始!」
 ジム&レイチェル「了解!」

 3名の北米支部隊員は伊藤家の中に突入した。

 レイチェル「日本では、玄関で靴を脱ぐのがルールのようですが?」
 マイケル「普通はそうだが、今やBOWの屋敷だ。ルールもマナーも必要無い。このまま行くぞ」

 日本の警察でも、靴を脱いで行くのだが、元米軍人のこの2人は容赦無い。
 軍靴でドカドカと家に上がった。

 マイケル「日本人の家は狭いと聞いたが、この家は比較的広いのか?」
 ジム「高級住宅街にあるようですからね。ルイジアナ州の自分の田舎の家と、どっちが広いかな?」
 レイチェル「トールオークスの私の家よりは広そうですね」
 マイケル「トールオークスか。ネオ・アンブレラによるCウィルスのばら撒きテロで滅亡した町だったな」
 レイチェル「ええ。幸い、あの事件で先輩方が活躍されたおかげで、Cウィルスを封じ込めることができました」
 マイケル「『ラクーンシティ同窓会』なんて言われた事件だ。あれは凄かったな」
 ジム「あの時、俺達も養成学校生でしたもんね。俺も日本に留学したかったなぁ!」
 マイケル「お前が日本に留学したところで、秋葉原に入り浸ってるだけじゃないのか?」
 ジム「マイケルも日本留学したら、渋谷で毎日ガールハントですね?」
 マイケル「……バレたか」
 レイチェル「あなた達が日本に留学しなくて良かったです」
 ジム「で、どこを探しますか?」
 マイケル「この家に住んでいたのは、家族3人。家政婦やお抱え運転手もいたようだが、住み込みではなく、通いだったこともあって、事件には巻き込まれていない。事件に巻き込まれたのは両親。そして、息子がまだ見つかっていない」
 レイチェル「その息子というのが、私の留学先である東京中央学園上野高校2年5組のクラスメートです」
 マイケル「おいおい、マジかよ!留学先の友人だって!?」
 レイチェル「友人というほど仲の良い付き合いではなかったんですけどね。でもまあ、そういう縁はありました」
 ジム「この家に来たことは?」
 レイチェル「無いです」
 マイケル「よし。じゃあ、レイチェルのクラスメートの部屋を探そう。何か手掛かりがあるかもしれん」
 レイチェル「恐らく2階でしょうね。日本人の家は、大抵2階を自室にしているようですから」
 ジム「あっちに階段があります。あれで行きましょう」

 3人は階段を駆け上る。

 レイチェル「それにしても広い家ね。家族3人だけが住んでいた家とは思えない」
 マイケル「トールオークスのキミの家よりも広いってか?」
 レイチェル「実家はそもそも平屋建てだったので。そんなに裕福な家でも無かったですし」
 ジム「それが養成学校に入れば学費はタダ。全寮制だから生活費もタダ。しかも成績が良かったら、国防大学への推薦入学の道もある!」
 マイケル「俺達の成績は下から数えた方が早かったから、そんなの夢のまた夢だったがなw」
 レイチェル「……でしょうね」

 そして、伊藤縁のものと思しき部屋を発見する。
 だが、鍵が掛かっていた。

 レイチェル「どこかで鍵を探さないと……」
 ジム「いや、ちょっと待って」

 するとジム、銃を床に置くと、キーピックを取り出した。

 ジム「この手の錠は、ここをこうして……と」

 すると、カチッと音がして、鍵が開いた。

 ジム「はい、一丁上がり~!」
 レイチェル「凄い!手品みたい!」
 マイケル「さすがは家探しの鬼w」
 ジム「レイチェルみたいに、素直に喜んでくださいよ!それより中へ」

 3人は中に入った。
 中はカーテンが閉められているせいか、やや薄暗い。

 レイチェル「……!この臭い、男の部屋って感じ」
 マイケル「だが、まだ日本人の部屋だ。この程度の臭いはな」

 マイケルはそう言いつつカーテンを開けて外の光を取り入れ、窓を開けた。

 ジム「何か……凄い部屋ですね」
 マイケル「オタクのお前から見てもそう思うか?」
 ジム「何か……凄い執着心というか……」
 レイチェル「うん、凄い。リサの写真ばかり……」

 部屋にはリサの等身大ポスターやパネルなど、金に任せて作らせたと思われる、色々なグッズがあった。
 リサの写真をプリントした抱き枕まであるくらだ。

 レイチェル「うわ……何か気持ち悪い」
 マイケル「日本のリサ・トレヴァー、大人気だな。アークレイ山脈のアンブレラの施設のリサ・トレヴァーとは大違いだ」
 ジム「あれも、人間だった頃はかなりの美少女だったらしいですけどね」
 レイチェル「リサを隠し撮りした写真ばっかりだ。これは異常ね」
 マイケル「で、その本人はどこに行ったんだ?」

 3人は、もう少し邸内を探索することにした。
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“愛原リサの日常” 「忍び寄る人食い鬼」

2024-02-29 11:21:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日12時35分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・学食]

 リサ「今日のB定食はヒレカツ定食か。次の時間、体育だから、いい食後の運動になりそうだ」
 淀橋「さすがは魔王様」
 小島「わ、私はお腹もたれるから、お蕎麦でいいかな……」

 リサはそんなの気にしない。
 テレビ近くのテーブルに座る。
 学食内にはテレビがあるが、大抵のチャンネル権は3年生が持っている。
 しかし当の3年生達はもう卒業して行ったので、今は2年生が持っている。
 その2年生達も、来月には3年生になるわけだから……。

 リサ「この時間、情報番組しかやってないねぇ……」

 リサはリモコンのチャンネルを回しながら首を傾げた。

 淀橋「さすがにアニメはやってないと思うよ?」
 リサ「そりゃそうだ。“ひるおび”辺りしておこう」
 小島「無難なところ行きますね」
 リサ「間違い無いのを選ぶのが結局1番いいって愛原先生が言ってた」
 小島「なるほど」
 淀橋「それにしても、レイチェルはどうしたんでしょうねぇ?」
 リサ「レイチェルにもブルマ穿かせて体育受けさせようと思ってたのに」
 小島「この寒い時期に、半袖の体操服で体育受けられるの、魔王様たるリサだけだと思うけど……」
 淀橋「夏はいいんだけどねぇ……」

 レイチェルは11時台の授業中、突然、『BSAAからの呼び出しがあった』という理由で早退してしまった。
 BSAA北米支部養成学校に通うレイチェルは、5年間の養成学校期間中、前半2年の『予科』期間を東京中央学園で過ごすことが許されている。
 予科を過ぎると、2年間の本科、それから最後の1年間は専攻科となる。
 最後の1年間でもって、BSAAの何の部隊へ配属されるかが決まる。
 専攻科期間中は殆ど学校におらず、部隊に配属されている状態での実習期間である。
 レイチェルのことだから、既に予科期間の大部分を日本への留学に充てていることもあり、北米支部日本地区派遣隊に配属されるのではと言われている。
 これは人数の少ないBSAA日本地区本部隊への支援や合同作戦を実施する為の部隊である。

〔「ここで速報が入って来ました。えー、今日午前10時頃、東京都板橋区常盤台の住宅で、この家の住人と思われる遺体が発見されました。遺体はこの家に住む女性、伊藤松子さんと見られ……えっ?……少々お待ちください」〕

 小島「やだ、こんな昼間から……」
 淀橋「常盤台……伊藤……」

〔「失礼しました。もう1人ですね。もう1人の遺体も見つかったようです。こちらは全国のチェーンスーパーを展開するペンギン堂の経営者、伊藤忠太郎さんのお宅とのことです」〕

 リサ「ん!?ペンギン堂!?」
 淀橋「そうだ!あれ、伊藤縁の家だよ!?」
 リサ「ええっ!?」

 テレビの画面は、マスコミのヘリからの映像となる。

〔「海外出張から帰って来ました伊藤忠太郎さんを待っていた専属ドライバーの方が、『家の中から社長の叫び声がした』と、警察に通報したとのことです。それで、警察が駆け付け、家の中を調べたところ、遺体の発見に繋がったということです。えー、繰り返しお伝えします。今日午前10時頃、東京都板橋区常盤台の住宅で、この家の住人の2人の遺体が発見されました。うち1人は全国チェーンスーパーを展開するペンギン堂の社長、伊藤忠太郎さんと思われます。現在、警察の方で詳しい身元確認をしております。……」〕

 小島「これ、伊藤君の家なの?」
 淀橋「だってあいつ、前、リサに『うちは常盤台の大豪邸なんだ』って自慢してたじゃん!」
 リサ「ああ、言ってたね」

 金持ちを鼻に掛けて、リサを釣ろうとしていたのだろう。
 金には興味が無く、愛原一筋のリサは鼻にも掛けなかったが。

 リサ「! じゃあ、縁はどうした?」

 リサの指摘に、魔王軍四天王の2人は同時にテレビを観た。
 因みに残りの2人は1年生で、どちらも弁当派なのでここにはいない。

 淀橋「何も言ってないね」
 リサ「死体が発見されたのは10時。でも……縁はその前に、倉田先生からの電話に出てる」
 小島「あっ!」
 淀橋「これは一体、どういうこと?」
 リサ「分からない……」

[同日13時15分 天候:晴 同学園・生活指導室]

 昼食の後、更衣室に行って体操着に着替えたリサ達。
 今日は体育館で授業が行われるのだが……。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「生徒の呼び出しです。2年5組の愛原リサさん、2年5組の愛原リサさん、至急生活指導室まで来てください」〕

 リサ「ん!?」
 淀橋「生活指導室だって!」
 小島「魔王様、何かした?」
 リサ「いや、何もしてないよ、多分……」

 血液や血中老廃物の摂取も、今は『魔王軍』メンバー内で完結している為、新規者が後で騒ぐなんてことはないはずなのだが……。

 リサ「まあいいや。ちょっと行ってくる」
 淀橋「気をつけて……」
 小島「体育の授業、受けられるといいね」
 リサ「そうだな」

 リサは取りあえず、長袖のジャージの上着を羽織って、生活指導室に向かった。

 坂上「来たか。お前にお客さんだぞ」
 リサ「わたしに?体育の授業はどうするの?」
 坂上「お偉いさんとの面談だから、受けられないだろう。ただ一応、『見学』という形にしておくから、『欠席』にはならないから安心してくれ」
 リサ「タイミングの悪い……」

 リサはそうボヤきながら、生活指導室に入った。
 中は小さな会議室のようになっており、白いテーブルが1つと、椅子が4つ向かい合わせで置かれている。
 そして、そこにいたのは……。

 善場「こんにちは、リサ」
 リサ「善場さん!?」

 善場であった。

 善場「まだ授業中なのに、申し訳ないね。ちょっと緊急案件だから勘弁してね」
 リサ「う、うん」
 善場「御協力感謝します。終わりましたら御連絡致します」
 坂上「では……」

 室内にリサと善場、2人きりになる。

 善場「私がここに来た意味、分かるかしら?」
 リサ「もしかして、イトーエンのこと?」
 善場「分かってるじゃない。それじゃ、あの事件にあなたは何か関わりがあるの?」
 リサ「例のスーパーでトラブってからは、あいつと会ってないよ」
 善場「そう……」
 リサ「死体が見つかったんだって?縁の死体も見つかったの?」
 善場「見つかったのは、彼の両親の遺体だけ」
 リサ「両親の遺体かぁ……」
 善場「それも、かなり惨殺の状態。というか、食い殺されている」
 リサ「は?」
 善場「さっきBSAAに出動依頼を掛けたから。もしかしたら、犯人は栗原蓮華かもしれない」
 リサ「蓮華が都内に戻ってきたの!?」
 善場「そうかもしれないと思って、BSAAに出動依頼したわけ。その間に私達は、警視庁とは別に捜査を行うわけよ。だから、あなたにも協力してもらう」
 リサ「しろと言えばするけど、わたしは何も知らないよ。あいつの家だって、行ったこと無いんだし」
 善場「でも、彼には言い寄られていたようね。何か心当たりは?」
 リサ「無い。全然無い」

 どうや善場は最初、リサがトラブルの腹いせに伊藤家を襲ったものだと思っていたようだ。
 伊藤家に防犯カメラはあるのだが、そのどれにもリサは映っていなかったというのも潔白が証明された理由だ。

 善場「リサが犯人ではないのというなら、もう1人の容疑者は栗原蓮華。しかし、何故彼女が伊藤家を襲ったのかは不明。また、仮に偶然だったとするならば、縁君も襲われているはず。しかし、彼は行方不明……」
 リサ「逃げたんじゃない?あいつ、臆病な性格だからね。例のスーパーの時も、私が鬼の目で睨み付けてやったら、慌てて逃げて行ったからw」
 善場「逃げるにしてもどこへ?それこそ、警察に通報するなり、ときわ台駅前に交番もあるから、そこに駆け込んで助けを求めてもいいはずです」
 リサ「そんなこと言われてもねぇ……」
 善場「とにかく、検査をするから、保健室まで一緒に来てください」
 リサ「ちぇっ」

 本当にリサが人食いをしていないかどうかの検査である。
 そんなわけで、リサは体育の授業は『見学』となってしまったのである。
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“愛原リサの日常” 「満月の鬼」

2024-02-28 20:31:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日02時46分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]

 リサ「ん……?」

 リサはふと夜中に目が覚めた。
 別に変な夢を見たわけではないのだが、変な寝苦しさを憶えたのだ。

 リサ「んん……」

 リサはトイレに行こうと部屋を出た。
 ドアを開けると、真っ暗な廊下がある。
 リサはそこを照明を点けずに進んだ。
 今のリサは鬼形態なので、暗闇でも見えるのである。
 但し、瞳は赤くボウッと暗闇に浮かんでいることだろう。
 さすがに、トイレの照明は点ける。
 そこも照明を点けずに用を足していたら、以前鉢合わせになった愛原を驚かせてしまったので、さすがにトイレの照明は点けるようにしていた。
 ただ、リサにとっては大変眩しく、目を細めなくてはならなかったが。

 リサ「ふーん……」

 トイレから出た後、階段の所にある窓を見ると、窓からはだいぶ明るい月明りが差し込んできた。
 窓から外を見ると、それは満月だった。

 リサ「……!!」

 リサは何とも言えぬ高揚感を掻き立てられた。
 と、そこへ突然、食人衝動が沸き起こる。

 リサ「ウゥ……」

 視線の先には、愛原の部屋のドアがある。
 右手だけでパキッと骨を鳴らすと、爪を長く鋭く伸ばした。

 リサ「……って、ダメダメダメ!」

 ドアを蹴破ろうとした時、リサは正気に戻った。

 リサ「ううっ!」

 そして階段を駆け下り、キッチンに保管されている“鬼ころし”を開ける。
 それを飲むと、酔いが回って来るものの、食人衝動は失せて行った。

 リサ「そ、そういえば、樽1個分飲もうとしていた鬼がいたな……」

 全く夢を見なかったわけではなく、僅かに夢は見ており、どこかの日本屋敷を歩いていた夢だ。
 屋敷には人間はおらず、廊下や部屋には時折一張羅の男の鬼がいただけだったが、鬼化しているリサを見ても、何もしてこなかった。
 そして、ある部屋に入ると、女の鬼がいて……。

 

 こんな感じで“鬼ころし”を飲んでいた。
 リサが、『何をしているのか』問うと、リサと大して年恰好の変わらぬ鬼の女は、『酒を飲んでいるのだ』と答えた。
 いやもちろん、見れば分かる。
 どうして、そういう飲み方をしているのか聞いたまでだ。
 『医者に酒は1日一杯までと言われたから』とのこと。
 いや、違う、そうじゃないとリサは思った。
 そこで目が覚めたのである。
 鬼の常識は、人間の非常識なのだろうと改めて思った。
 そして、人間と鬼の両方を行き来できるリサだからこそ、ツッコミが入れられたのだろうと。

 リサ「もう寝よう」

 リサは“鬼ころし”1パックを空けると、自分の部屋に戻った。
 最後に夜風を浴びて、酔いを醒ますことにする。

 リサ「ん?」

 なるべく満月は見ないようにしながら窓を開けて、冷たい夜風に当たっていると、何だか変な予感がした。
 風は西から東に向かって吹いているように見える。
 その風に向かって、鬼の臭いがしたような気がしたのだ。
 まさか、この近くに鬼がいるのだろうか。
 愛原の血肉を狙っているのなら、全力で阻止しなくてはならない。
 鬼同士の戦いなど不毛なことこの上ないが、大事な“獲物”を取られては元も子もないのである。

 リサ「気のせいかなぁ……?」

 リサは窓を閉めて鍵を掛け、カーテンを閉めた。
 そして、再びベッドに入ったのだった。

[同日08時00分 天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校2年5組]

 翌朝になり、リサは学校は登校した。
 もちろん、昨夜に食人衝動が起きて、それを防ぐ為に“鬼ころし”を1パック飲んだことは愛原に報告した。
 その理由が満月を見たからと話すと、愛原は一応納得してくれたが、高橋からは、『狼男かよw』とイジられた。
 因みに2度寝した後、もう1度夢を見て、樽酒の“鬼ころし”を飲んでいた鬼女が現れた。
 そして、『人を食わない鬼も珍しいねぇ』と、珍しがられた。

 淀橋「作戦通り、『魔王軍』メンバーを10人くらい連れて来たよ」
 リサ「ありがとう。イトーエンが来たら、ヨドバシとコジマ、そしてレイチェルも含めて、皆で取り囲むんだ」
 レイチェル「わ、私もですか?私はマオーグンではないですが……」
 リサ「協力してくれたら、また愛原先生に頼んで、焼き鳥屋に連れて行ってあげる!」
 レイチェル「そういうことなら。でも、私は何も言えませんよ?」
 リサ「それでいい。レイチェルは後ろから圧掛けてくれればそれでいいから」
 淀橋「ついでに、マシンガンとかショットガン構えてたら?イスラムの武装テロ組織の犯行声明ビデオみたいにw」
 小島「『ジハード!』『神は偉大なり!』『十字軍どもにアッラーの制裁を!』って?w」
 レイチェル「ややもすると、私がその『十字軍』扱いされる側なんですけどねぇ……」
 小島「あっ、ごめんなさい!」
 リサ「それしても、あいつ、遅いな……」

 リサは伊藤縁の机を見た。
 しかし、彼が登校してくる様子は無かった。
 そして、ついに朝の全体朝礼開始の予鈴が鳴ってしまう。

 淀橋「あいつ、遅刻かな?」
 リサ「くそっ!」
 小島「しょうがない。一旦解散して、体育館に行こう。逆に私達が遅刻になっちゃうよ」
 淀橋「作戦の立て直しが必要みたいだね」
 リサ「うう……!」

[同日09時00分 天候:曇 同高校 2年5組]

 体育館における全体朝礼が終わった。
 3年生はもう卒業してしまったので、1年生と2年生だけの朝礼となった。
 教室に戻るが、伊藤縁の姿は無かった。

 坂上「伊藤!伊藤縁はいないのか?」

 担任の坂上修一にも欠席の連絡が来ていないらしい。

 淀橋「何だアイツ?サボりか?」
 小島「リサに振られたことが、よっぽどショックだったんじゃない?」
 リサ「わたしのせいなのか?」
 小島「い、いや、そういうことじゃなくって……」
 坂上「ん?愛原は何か知ってるのか?」
 リサ「い、いえ!別に、何も……」

 そこへ、副担任の倉田恵美がやってきた。
 何を隠そうこの2人、この学園のOB・OGどころか、学年も同じだったのである。
 クラスは違ったようだが……。

 倉田「坂上先生、伊藤君の家に電話してみて、ようやく本人が出ました」
 坂上「本人が?何だって?」
 倉田「体の具合が悪いので、今日は休むとのことです」
 坂上「何だ、そうだったのか」
 男子生徒「イトーのヤツ、仮病っスか、先生?」
 倉田「いや、電話に出た限り、とても具合が悪そうだったから、本当だと思うよ」
 男子生徒「へー……」
 淀橋「やっぱり、魔王様にフラれて大ショックだったんじゃない?」
 リサ「いや、だから、わたしのせいじゃないって」
 坂上「とにかく、授業を始めるぞ!教科書開いて!」

 伊藤縁が病欠だと分かったことで、一応の解決扱いとなり、授業が始められた。
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“愛原リサの日常” 「動き出す栗原蓮華」

2024-02-28 15:21:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日18時00分 天候:晴 東京都板橋区常盤台 伊藤家]

 板橋区の中でも屈指の高級住宅街、常盤台。
 この住宅地に大きな一軒家を構える伊藤家。
 ここに伊藤縁は住んでいる。

 母親「今日は縁ちゃんの大好きなフォア・グラよ」
 縁「はー……」
 母親「どうしたの?さっきから溜め息ばかりついて。何かあったの?」
 縁「食べたくない……」
 母親「えっ?」
 縁「ママ!ボク、フォアグラよりもっと食べたいものがあるんだ」
 母親「まあ、そうだったの!それだったら先に言ってくれたら良かったのに!どうして言わなかったの?」
 縁「だって、それ、ママにも作れないものだからなんだ」
 母親「まあ。主婦にして調理師免許も持っているママにも作れないものなんてあるの?分かったわ。パパに頼んで、縁ちゃんの食べたい物を作れるシェフを探して連れて来てもらうわ。言って。何が食べたいの?」
 縁「違うんだ、ママ」
 母親「何が違うの?」
 縁「ボクが食べたいのは、料理じゃないんだ。……いや、もうこの際、料理にして食べちゃいたいくらいなんだ!」
 母親「だから、何が食べたいの?」
 縁「ボク、愛原さんが食べたいんだ」
 母親「ええっ!?愛原さんって、同じクラスのちょっと変わった女の子の?」
 縁「うん!ボク、愛原さんが食べたくてしょうがないんだ。愛原さんの事を考えると、ママの作ってくれるどんな料理も食べれなくなっちゃうんだ!」
 母親「……縁ちゃん」
 縁「ママ!パパに頼んで、愛原さんをここに連れて来てくれないかな?どんな手を使ってもいい!もう監禁して食べたいくらいなんだ!」
 母親「……明日、病院に行きましょ。学校にはママから連絡しておくし、病院も探しておくから」
 縁「ママ!?」
 母親「運転手の田中に、明日は縁ちゃんを学校じゃなく、病院に連れて行くよう言っておきますからね」
 縁「ママ!何てこと言うんだ!?それじゃまるでボク、頭がおかしくなったみたいじゃないか!」
 母親「そうね。学校で色々あったのね。イジメられてるの?」
 縁「違うよ!ボクは本当に愛原さんを食べたいだけなんだ!」
 母親「……今日は早く寝なさい。パパも忙しくて、今夜は遅くなるみたいだから。江戸川の店舗で、何か騒ぎがあったみたいでね」
 縁「あれはボクが悪かったんだ!ボクがいきなり現れたものだから、愛原さんがビックリして……!」
 母親「でも、警察沙汰になったのだから、縁ちゃんと愛原さんを会わせるわけにはいかにないわね。縁ちゃんの教育に悪いわ」
 縁「そんな、ママ!?」
 母親「縁ちゃんは来年度からアメリカ留学が待っているんだから、いま女の子にうつつを抜かしている場合じゃないのよ?」
 縁「アメリカなんて行きたくない!」
 母親「何てことを言うの!?せっかくパパがアメリカ法人のCEOに話をしてくれて、CEOが懇意にしているハイスクールの校長先生に話をつけて、縁ちゃんの留学が実現したというのに!」
 縁「ママなんて、嫌いだぁーっ!」
 母親「縁ちゃん!?」

 縁はダイニングを飛び出すと、自室に飛び込んで行った。

[同日同時刻 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 パール「ペンギン堂南砂店で安い牛肉が買えなかったので、今日は近所のスーパーで辛うじて安く買えたチキンです」
 リサ「おー!チキンステーキ!激辛!?」
 パール「辛さの調整は、そこのスパイスなどで御自由に調整なさってください」
 愛原「いや、こういうのでいいんだよ、こういうので」

 リサは肉が食べられれば、それで良いようである。

 リサ「うっ……」
 愛原「どうした、リサ?」
 リサ「いやあ……何かさっきから寒気か……」
 愛原「おいおい。鬼型BOWともあろうリサが、風邪か?」
 リサ「いや、別に風邪っぽくは無いんだけど……」
 高橋「先生、御冗談を。リサのウィルスや特異菌からしてみりゃ、風邪のウィルスなんておやつ同然ですぜ?」
 愛原「そ、それもそうだな」
 リサ「何だろうねぇ……。どこかで呪いを掛けられてる感じがする……」
 愛原「むしろ呪いを掛ける側の鬼が掛けられるとか……」
 リサ「鬼に戻れば、大丈夫かな。……よっと」

 リサは人間形態から鬼形態に戻った。
 前頭部左右から2本の角が生える。

 リサ「まあ、これなら何とか……」
 愛原「一応、後で“鬼ころし”も飲んどけよ」
 リサ「分かったよ。“鬼ころし”は一杯だけ?」
 愛原「一杯というか、紙パック1個分だ」

 リサの人間としての年齢は17歳だから、未成年飲酒になってしまうのだが、何故か“鬼ころし”を飲むと暴走が抑制される為、“鬼ころし”の紙パック1個分だけは黙認されていた。
 “鬼ころし”だけ何か特別な成分が入っているわけでもないのに、どうしてそれだけが抑制効果があるのかは不明だ。
 恐らく、ネーミングによる暗示ではないかと言われている。

 高橋「それにしても先生、江戸川区のスーパーの件、善場のねーちゃんが揉み消してくれて良かったですね」
 愛原「日曜日なのに、申し訳ないことをしてしまった。明日は菓子折り持って、詫びに行くぞ。また、車出してくれ」
 高橋「デイライトの事務所っスね。了解っス」
 愛原「それと、ペンギン堂さんな」
 高橋「えっ!?」
 愛原「『リサが暴れて申し訳ありませんでした』って、向こうの店長さんに謝りに行かないと」
 リサ「あれは縁のゴミ野郎が……!」
 愛原「汚い言葉を使うな、リサ!!」
 リサ「……っ!」
 愛原「本当はお前を直接連れて行きたいところだが、明日は学校がある。伊藤君も来るだろうから、お前からも話ししておけよ」
 リサ「あんな奴に謝りたくないなぁ……」

 その気持ちは高橋も同じだったのか、見かねた高橋がそっと耳打ち。

 高橋「リサ。そういう時はな、仲間引き連れて、謝罪相手をグルリと取り囲み、外堀と逃げ場を分捕った状態で、『サーセンした』って言っておきゃいいんだよ」
 リサ「おー!そうか!」
 愛原「ヤクザの謝罪か!」

[同日22時00分 天候:晴 東京都板橋区常盤台 伊藤家・縁の自室]

 縁「ハァハァ……ハァハァ……」(*´Д`)

 縁、下半身裸の状態でベッドに横たわる。
 視線の先には、学校で隠し撮りしたと思われるリサのパンチラ写真。
 恐らく、ブルマもスパッツも穿き忘れた状態で登校した時に撮影したものだろう。
 その生写真はオ○ニー用に何十枚も焼き増しされており、そのうちの1枚を『使用中』だ。

 縁「ハァハァ……ハァハァ……」(;゚∀゚)=3

 更に別の写真は、リサの体操服にブルマ姿を撮影した物だった。
 これはリサと『魔王軍』が、ブルマ復活運動の一環で穿いていた時に撮影したものだ。
 ちょうどリサが足を開いて体育座りしていたところを、上手く撮影できた。
 それらの写真をオカズに、縁はオ○ニーに興じた。

 縁「ハァァァッ!」(*´▽`*)

 そして、大量の精液をリサの生写真にぶちまけた。

 縁「はぁ……はぁ……リサさん……」
 ???「よっぽどその女の事が好きみたいだねぇ?」
 縁「うわっ!?」

 突然、窓の方から女の声がした。
 ドアはもちろん、窓も鍵を掛けておいたはずだが!?

 栗原蓮華「なに鳩が豆鉄砲を食ったような顔してんの、変態野郎」

 そこにいたのは、月明りを背に銀髪をポニーテールにした女。
 何故か東京中央学園の制服を着ているが、ブレザーは着ておらず、しかも着ているのは夏服だ。

 縁「だ、誰だ!?」
 蓮華「私は恋のキューピット。その女と一緒になれるようにしてやろうか?私の言う事を聞いたら、その願いは叶うよ?」
 縁「……!」
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“愛原リサの日常” 「トラブル発生」

2024-02-26 21:23:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日15時00分 天候:晴 東京都墨田区内某所 某チェーンストアー]

 遅めの昼食を取ったリサ達は再び車に乗り込み、今度はスーパーに立ち寄った。

 パール「今日はここで、お肉の特売をやっているんです。リサさん、今度はお肉が食べたいと思って」
 リサ「さすがはメイドさん!後でエレンに、パールがいい仕事してくれたって伝えておくね!」
 パール「リサ様……ありがとうございます」

 人心掌握術を持っているリサであった。

 愛原「ステーキにするのか?リサのは安いアメリカ産牛肉とかでいいぞ。サイズが大きくて安けりゃいいんだ」
 リサ「先生!……でもまあ、ホント」

 国産牛肉と比べて硬めの外国産牛肉であるが、リサの場合、硬い肉でも鋭い鬼の牙でガシガシ噛み砕いて食べてしまうのである。
 カートに籠を乗せて、食品コーナーを突き進む。

 ???「愛原さん!」

 そこへ若い男の声がした。
 リサだけがこの声に聞き覚えがあった。

 ???「やっぱり愛原さんだ!偶然だね!」
 リサ「あ、ああ……どうも」

 リサは不快そうに眉を潜めた。

 愛原「キミは誰だい?」
 ???「あ、どうも、愛原さんのお父さん!」
 愛原「お父っ!?……なあ、高橋。俺、そんな歳に見える?」
 高橋「おいテメ、コラ!先生に失礼だぞ!?」
 リサ「わたしにも失礼だ!」
 ???「ひぃぃっ!す、すいません!」

 高橋に胸倉を掴まれ、リサと同じ歳くらいの青少年は顔を真っ青にした。

 愛原「高橋。ここで揉め事を起こすな」
 高橋「さ、サーセン」

 高橋はパッと青少年の胸倉を放した。
 愛原もそんなに背は高くない(約165cm)が、青少年はそんな愛原よりも背が低かった。
 リサ(約153cm)よりは高いが。
 高橋は181cmあるので、見下ろす形となる。

 愛原「それで、キミは誰ですか?」
 ???「申し遅れました!僕は愛原リサさんと同じクラスで、伊藤縁と言います!愛原さんとは懇意にさせて頂いております!」
 リサ「ウソつけぇ!」
 パール「あ、思い出した。麦茶のペッドボトルもセール中らしいので、買ってきます」
 愛原「ああ、分かった」
 高橋「伊藤園の麦茶だな」
 伊藤「伊藤園じゃないです!伊藤縁(いとう・えん)です!」
 リサ「似たようなもんだろ」
 伊藤「ボクの店に買いに来てくれるなんて、やっぱり愛原さん……いや、リサさんはボクのこと……」
 リサ「ンなわけねーだろ!キモい!!」

 パールはじぃーっと伊藤を上から見下ろした。
 パールもパールで身長170cm弱はあるので、伊藤を見下ろす形となる。

 パール「うーん……もう少し痩せた方がいいです。BMIがやや高めと思われます。それと、あと身長15cmは必要でしょう。頑張ってください」
 伊藤「なっ……!」
 リサ「先生!他の店に行こう!まさか、こいつの店だなんて知らなかった!」
 伊藤「この店だけじゃない!ペンギン堂は全国にチェーンを持つ大型ストア!僕はそこの御曹司なのさっ!」
 愛原「東京中央学園に通う子弟の中では、比較的裕福な家の子だね」
 リサ「だけど、エレンの所の大日本製薬には負ける?」
 愛原「資本金、10億円くらい差が付いてるね」
 伊藤「あんな、犯罪者の製薬会社と一緒にしないでくれ!リサさん!ボクと付き合えば、一生お金持ちだよ?」
 リサ「…………」

 リサは変な顔になった。
 顔には、『何言ってんの、コイツ』と書かれていた。

 リサ「先生、やっぱ他の店に行こう。ここでは買えない」
 愛原「お、おい!もうカゴ一杯だぞ!」
 伊藤「リサさんのお父さん、僕の一存で、ここの商品を全て無料にできますよ?」
 愛原「ウッソ!?」
 伊藤「何なら、この安いアメリカ産牛肉ステーキを、そこの近江牛霜降りステーキに交換することも可能……」
 リサ「余計なことすんな!!」

 リサはマスクを取ると鬼の牙を剥き出しにし、瞳を赤く光らせて伊藤を威嚇した。
 耳も少し尖ったが、髪からはみ出るほどではないし、角も生えていない。

 伊藤「うぎゃあああああああっ!!で、で、でで出たぁーっ!!けけ、け、警備員ーっ!!」

 伊藤は持っていた笛をピィーッと吹いた。
 その音色は甲高く、店内に響き渡る。

 愛原「ば、バカッ、リサ!!」
 高橋「先生、逃げましょう!!」

 リサ達はカゴの商品をそのままに、店から慌てて飛び出したのだった。
 そして、駐車場の車に飛び乗る。

 愛原「クラスメートに正体がバレたじゃないか!どうするんだ!?」
 リサ「後でミンチにして食い殺す。……マズそうだけど」
 愛原「違うだろ!!」

 愛原のゲンコツが飛んでくる。
 だが、リサは愛原の体罰にはマゾヒストになってしまうのだった。

 リサ「嗚呼っもっとブッてぇ……

 リサは恍惚な顔になると、スカートの上から股間を押さえた。

 高橋「先生がそいつを殴っても御褒美なだけです!後で俺がマグナム撃ち込んでおきますよ!」
 愛原「それも意味が無いような気がするが……」

 高橋は車を急発進させた。

 警備員A「止まってー!!」
 警備員B「待ってください!もうすぐ警察が……!」

 駐車場の警備員達が笛を吹いたり、赤い誘導棒を振って、この車を止めようとする。

 高橋「退けやコラぁーっ!!」

 高橋は車のライトをハイビームにし、パッパーッと改造した電子クラクションを鳴らすと、警備員スレスレのところでハンドルを切って、彼らに接触することなくすり抜けた。

 警備員A「うわっ!」
 警備員B「ひいっ!」

 警備員達は車を避ける為に転倒し、1人は被っていた制帽が地面に落ちた。
 ケガが無いといいが……。
 あと幸いなのは、警備会社が愛原の古巣の会社とは全くの別会社だったということだ。

 愛原「高橋!オマエ、いつの間にリース車のクラクション改造したよ!?」
 高橋「だ、大丈夫です!返却する時には、元に戻しますから!」
 愛原「商用バンを改造すんな!」
 リサ「あー、とんだ災難だった!」
 愛原「リサも落ち着けよ。男が嫌いなのは分かるけど、リサは可愛いんだから、そりゃ言い寄る男もいるって」
 リサ「わたしは先生一筋!以上!」

 リサは腕組みをして足を組み、ふんぞり返って座っていた。
 完全に機嫌を損ねており、鬼形態になっている。

 愛原「どうするんだよ、今夜の夕食?」
 パール「しょうがないので、近所のスーパーにしましょう。ただ、そこはお肉の特売はやっていませんが」
 愛原「牛肉が高いんだろ?豚肉とか鶏肉はどうだ?」
 パール「辛うじて、鶏肉はタイムセールをやる予定らしいです」
 愛原「じゃあ、今夜はチキンでいいよ。リサもそれでいいな?半分は暴れたオマエのせいなんだから!」
 リサ「分かってるよ!」
 パール「かしこまりました」
 高橋「まずは急いで家にズラかりましょう!それと先生!一応、善場のねーちゃんにも連絡しといた方がいいかもしれないっスよ?ガチでサツが追ってきたら、ちょっとヤバイっスから」

 高橋はハンドルを握り、ルームミラー越しに愛原を見て言った。

 愛原「それもそうだな」

 愛原は自分のスマホを取った。
 そして、揺れる車内の中、善場に連絡を取ったのだった。
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