報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔界の戦況」

2020-06-29 20:01:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日11:00.アルカディアシティ1番街 魔王城 視点:稲生勇太]

 警備兵A:「今は緊急事態ゆえ、不要不急の来城をお断りしております!」

 正門から入ろうとすると、門衛の警備兵に止められた。

 イリーナ:「私は宮廷魔導師ポーリンの妹弟子なの。ポーリン姉さんに取り次いで下さる?」
 警備兵A:「申し訳ありませんが、例え宮廷魔導師の旧知の方であってもお断りすることになっております!」

 警備兵は頑として聞かない。
 もちろん、これだけ命令に忠実な兵士は必要である。

 アリス:「では私の命令ではどうか?」
 警備兵A:「そ、その出で立ちは……!」

 警備兵はアリスの姿を見て、すぐに騎士団員だと分かった。
 何度も述べているが、騎士と兵士ではまるで身分が違う。
 例え騎士団の中ではまだ階級の低いアリスでさえ、所詮は中・下級国民から登用された兵士と比べれば、絶対的上級国民なのだ。

 アリス:「私の名前において、この方達の入城を許可するが、それでどうか?」
 警備兵A:「は、はっ!騎士団の方の御命令とあらば……」

 警備兵はアリスの前では敬礼をして、ついに稲生達を入城させてくれた。

 エレーナ:「ここではイリーナ先生よりも、アリスの方が偉いみたいですね」

 エレーナは皮肉めいた顔をして言った。

 アリス:「イリーナ師には申し訳ないが、今はダンテ一門の魔道士は多少評判が悪い。捕縛されなかっただけでも良しとして頂きたいものだ」
 イリーナ:「分かったわよ。ポーリン姉さんに会ったら、すぐに人間界に帰るわよ」

 イリーナは肩を竦めて答えた。

 女騎士A:「アリス!アリスじゃないか!生きてたのか!」
 女騎士B:「って、そこにいるのは魔道士達!?何だ、捕虜か!?」
 上級警備兵:「魔道士の入城はお断りしているはず!これは一体どういうことですかな?」
 アリス:「私は確かに生き残れたんだけど、瀕死の重傷だった。それをこの方達に助けられたんだよ」
 女騎士A:「ほ、本当か?」
 女騎士B:「何かされなかった?」
 上級警備兵:「それがもし本当なら、表彰ものですが……」
 アリス:「本部に戻って報告したいんだけど、その前にこの方達、ポーリン師に会いたいんだって」
 女騎士A:「そりゃ無理だろう。今、重役会議中だぞ?」
 イリーナ:「終わるまで待たせてもらえないかしら?」
 女騎士B:「それは無理だ。そもそもが今、魔道士が国中で暗躍しているせいで、あなた達を本来なら捕縛しなくてはいけないくらいなんだ」
 エレーナ:「私達、何もしてないぜ!?むしろ、あんた達の仲間を助けてあげたくらいだぜ!?」
 女騎士A:「あなた達に関しては仲間のアリスを助けてくれたこと、礼を言う。だが、用が済んだら、早々に退城して頂こう」
 稲生:「うーん……何か、すっかり信用されてないな」

 元々が魔道士という存在自体が得体のしれない者という扱いをされていたからだろう。
 騎士から見て下賤な身分である傭兵に付くことが多く、それもまた偏見の理由であろう。
 最初アリスも警戒していたくらいだ。

 稲生:「せめてこの前、クエストで訪ねた6番街とか、南端村が無事かどうかは確認したいですね」
 女騎士A:「あくまで攻撃を受けたのは7番街だけだ。6番街と郊外のサウスエンドは無事だ」
 稲生:「良かった」
 女騎士B:「アリスの家も、まだ戦火には見舞われていない」
 アリス:「そうか。それは良かった」

 アリスはそう言うと、稲生達に向き直った。

 アリス:「すまないが、ポーリン師への面会は無理みたいだ。私はこれから本部に報告に行く。色々と世話になったな」
 稲生:「……だ、そうです。どうしますか、先生?」
 イリーナ:「アリス。あなたの髪形、ポニーテールより、マリアと同じショートボブの方が似合うと思うわ」
 アリス:「What?」
 イリーナ:「というわけで、私は彼女の髪を切るから、理髪所に案内してくれるかしら?」
 女騎士A:「な、何を言って……」

 その時だった。

〔「城内総員に緊急連絡!ミッドガードの空機隊の接近を確認!至急、持ち場に配置されたし!繰り返す!……」〕

 城内放送が流れた。

 女騎士A:「また来たか!」
 女騎士B:「アリス!本部への報告は後だ!早くこっちへ!」
 アリス:「分かった!」
 イリーナ:「あらあら。これじゃ、私達もヘタに外には出られないわね」
 稲生:「ていうか、魔王城にミッドガード軍が接近って、制空権どうなってるんですか!?」
 エレーナ:「おおかた、あれだろ?無駄にデカくて小回りの利かない飛空艇しか、アルカディア軍は持ってないんだよ。ところが向こう、攻撃ヘリ持ってるから、飛空艇の攻撃なんかすぐ交わせるんだよ。そういうことだと思うぜ」
 稲生:「そういうもんなの?!」
 エレーナ:「私だって飛空艇の攻撃、交わせる自信あるぜ?」
 イリーナ:「しょうがない。今回は私自身のクエストと行きましょう」

 イリーナは勝手知ったる他人の家とばかりに、魔王城の奥へ進んだ。

 マリア:「どこへ行くんですか!?」
 イリーナ:「屋上よ、屋上」

 稲生達はイリーナに付いて、屋上へ向かった。

 警備兵B:「屋上は出入り禁止です!」
 イリーナ:「あー、もう!私達も戦うってのに!」
 アリス:「騎士団の私が許可する!」
 警備兵B:「は、ははっ!」
 稲生:「アリス!?」
 アリス:「まだ代わりに所属する騎士隊が決まってないので、私は城内待機となった。この際だから、あなた達の戦いに協力する!」
 イリーナ:「そう来なくっちゃ!」

 イリーナは屋上に出ると、急いで魔法陣を床に描いた。

 エレーナ:「あれは召喚魔法陣!も、もしかして、バハムートとかリヴァイアサン呼んじゃうパティーンっスか!?」
 イリーナ:「似たようなものよ!パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!さあ、私の使い魔、ここへ来なさい!」

 エレーナの使い魔が黒猫なら、イリーナほどの大魔道師ともなると、使い魔……というか、召喚獣を持っている。
 イリーナの場合……。

 稲生:「おおっ!あのドラゴン!」

 全身を緑色の鱗に覆われ、大きなコウモリの翼を持ったスタンダードタイプのドラゴンだった。
 名前をリシーツァという。
 サイズはYS11よりも若干大きい。

 イリーナ:「リシーちゃん、こっちよ!」
 アリス:「ど、ドラゴンを召喚獣としているとは……さすがだ」
 エレーナ:「でも、バハムートとかリヴァイアサンの方がもっと強いはずだぜ。あれらを召喚獣にしているのは……あっ!」

 その時、エレーナは気づいた。

 エレーナ:「皆、このドラゴンの大きさはTu-4くらいだが、攻撃力は爆撃機の比じゃないぜ。多分この戦争、こっちの勝ちだ」

 そしてニヤリと笑うと、イリーナの次にリシーツァの背中によじ登った。

 稲生:「? よく分かんない」

 稲生は首を傾げながら、エレーナの次にドラゴンの背中に乗った。
 マリアとアリスも乗ってくる。
 そして、ドラゴンは翼をはためかせ離陸した。

 稲生:「あれ!?ヘリじゃないじゃん!あれは……B-29!?テレビで観たことあるぞ!?」

 ミッドガード軍の空機隊とはヘリではなかった。
 第2次世界大戦で使われた戦略爆撃機の編隊だった。

 エレーナ:「おいおいおい!さっき冗談で言ったTu-4までいるぜ!?どうなってるんだぜ!?」
 イリーナ:「リシーちゃん。全部撃ち落として」
 リシーツァ:「……了解」

 リシーツァは口を大きく開けると、そこから……表現としては『波動砲』と言っていいのだろうか?
 それを放った。

 稲生:「大丈夫かな!?機銃掃射してくる飛行機とかいないかな!?」
 エレーナ:「あそこにP51がいやがる!」

 だが、それが機銃掃射してくる前にリシーツァが口から放った波動砲で撃墜されてしまった。

 エレーナ:「絶対これ圧勝だぜ!ざまぁみやがれだぜ!」
 稲生:「ドラゴンが人間界にいなくて良かった……」

 当然ながら、ミッドガードの編隊はドラゴン一匹により全滅させられた。
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本日の動静 20200629

2020-06-29 18:14:20 | 日記
 JR蕨駅→(京浜東北線1205B電車10号車)→JR東日本・東京駅→JRバス東京駅JR東海“JR全線きっぷうりば”→本家西尾八ツ橋そば処“為次郎”→都営バス東42-1系統→東武浅草駅前バス停→東京メトロ浅草駅→銀座線1471電車1号車→東京メトロ上野駅→JR上野駅→宇都宮線545M列車5号車→JR大宮駅→埼京線1548K電車10号車→JR戸田公園駅→国際興業バス蕨55系統→JR蕨駅→NEWDAYS蕨駅東口店→ガスト蕨駅前店

 太字が今回のメイン。
 来月、大石寺への登山参詣が決まった為、往路の新幹線のキップ、復路の高速バスのキップを入手する為である。
 別に新幹線は自由席なのだから当日でもいいのだが、そういう時に限ってバタバタしてしまって、余裕が無くなるものである。
 また、高速バスだって予約の後、やろうと思えばコンビニ発券でもいいだろうに、わざわざ東京駅まで足を運んだのは、偏に私のバスファンとしてのこだわりであろう。
 “バスターミナルなブログ”の管理人様やそこの住人の皆様は、どのように乗車券を入手して高速バスに乗車なさっているのか、気になるところだ。

 昼食は東京駅八重洲中央口付近にある「本家西尾八ツ橋そば処“為次郎”」で、ざるそばを頂いた。
 店名の通り、京都にルーツのある店らしいが、そばやうどんの汁は東日本人の舌に合わせたものとなっている。
 また、オマケとして八ツ橋が付いてくる。
 但し、生八ツ橋ではない為か、結構硬い。

 都営バスは南千住営業所が運行する。
 つい最近までは東42甲とか東42乙とか呼ばれていたのだが、番号に変わったようだ。
 車種はUDトラックス・スペースランナー。
 都営バスは全車にWi-Fiが装備されている。

 銀座線は既に新型車両の1000系に統一されている。
 仕様は魔界高速電鉄の地下鉄線と同じなので、いずれはこれも魔界高速電鉄に投入される日が……来るかどうか。

 宇都宮線は奮発してグリーン車に乗ってみた。
 作中で危うくエレーナを跳ね飛ばしそうになったE231系よりも新しいE233系だったが、グリーン車の内装は殆どどちらも変わらない(照明のカバーがアクリル板か、ステンレスのメッシュかの違い?)。
 尚、さいたま新都心駅では、エレーナが便乗した貨物列車のEH200形電気機関車牽引によるタンク列車が待機していた。
 エレーナがどうしてさいたま新都心駅で貨物列車から離れたのか、それでよく分かるという。

 埼京線はE233系。
 これで今回のJR電車は京浜東北線も含め、全てE233系だったことになる。

 蕨駅からの国際興業バスは、いすゞ・エルガミオ。
 この系統は中型車で運転されるようだ。

 先に乗車券を購入することにより外堀を埋め、内からなる魔を抑えるのが私のやり方。
 その為、内圧には強くても、外圧には弱いという欠点があるw
 ま、私ができるのはここまでだ。

 ……信心活動、特に折伏行においては、「私にできるのはここまでだ」という考え方は良くないらしい。
 ガチ勢に突っ込まれる前に、自分で突っ込んでおいた。
 要は外圧にも負けないよう、唱題をしっかりやろうということだな。
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“大魔道師の弟子” 「再び魔界へ」

2020-06-29 10:59:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日09:00.長野県北部山中 マリアの屋敷1Fエントランスホール→地下室 視点:稲生勇太]

 すっかり体も回復し、鎧を着込んだアリス。
 剣も差して、しっかり準備万端である。

 アリス:「今まで世話になった。この御礼はきっとさせて頂く」
 マリア:「私は師匠の指示に従っただけだから、気にしないで」
 稲生:「どうだい?エレーナよりも誠実・実直な魔道士もいるってこと、分かってくれたかな?」
 アリス:「ああ。よく分かった」

 イリーナは先に地下に向かった。
 この屋敷にも魔界へ移動できる魔法陣はあり、それで魔界へ向かおうということだった。

 マリア:「昨夜のアルカディアタイムスによると、ミッドガードはついにアルカディアシティにも攻撃を仕掛けて来たらしい。戦況は悪化してるみたいだ」
 稲生:「そんなにミッドガードは強いのかい」
 マリア:「中古とはいえ、中国やロシアの兵器を手に入れてるわけだからね。……もしかしたら、核兵器なんかも持ってたりして?」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「……それは無いか」

 と、その時、玄関のドアが開いた。

 エレーナ:「おう、見つけたぜ、アリス!100万ゴッズ払え」
 稲生:「そんな闇金みたいな……」
 マリア:「ぶち壊し!」

 アリスは一瞬、剣に手を掛けたが、すぐに溜め息を吐いて手を放した。

 アリス:「分かった。ちょうどこれから魔界に戻るところだ」
 エレーナ:「戻る場所、間違えないようにしないとな」
 稲生:「うん。戦闘の真っ只中に飛び込んで、巻き込まれても困るもんね」
 エレーナ:「それもあるけど、奴ら別の新型兵器使ったらしいぜ」
 稲生:「えっ?」

 エレーナはアルカディアタイムスを開いた。
 それは今朝配られたばかりの号外。
 そこには……。

 稲生:「『ミッドガード、アルカディアシティに新型兵器使用か!?』『突然、空が落ちてきた!?』『空に潰された7番街!!』」
 マリア:「何だ、これ!?」
 エレーナ:「私も知らん。恐らく、うちの流派じゃ分かんないと思うぜ」
 稲生:「魔法兵器か……」
 アリス:「とにかく、心配だ。行ってみよう」

 4人は地下室に下りた。
 プールに向かうのとは反対方向に向かう。
 その突き当りのドアを開けると、イリーナがいた。

 イリーナ:「おや、エレーナ。来たの」
 エレーナ:「ちぃーっス!ポーリン先生が心配なので、ちょっと様子見に行って来ます」
 イリーナ:「ポーリン姉さんは大丈夫だと思うけどね。それじゃ、行くよ。魔法陣の中に入って」

 4人は魔法陣の中に入る。
 そして、最後にイリーナが入って呪文を唱えた。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」

 魔法陣から光が現れ、5人はその光に包まれた。

[同日10:00.魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ1番街 アルカディアメトロ1番街駅 視点:稲生勇太]

 イリーナ:「やっぱり魔王城に直には行かせてもらえないか」
 エレーナ:「先生、さっき言うの忘れてたんスけど、7番街は崩壊しました」
 イリーナ:「ええっ!?」
 エレーナ:「ミッドガードの奴ら、『空を落とす』魔法兵器を造りやがって、それをこっちで使ったんです」
 イリーナ:「7番街って言ったら、すぐ近くじゃない!1番街は大丈夫なのかしら?」
 稲生:「行って見ましょう」

 稲生達が到着したのは1番街駅の倉庫。
 そこを出ると、コンコースは騒然としていた。

〔「お客様にお知らせ致します。今朝7時頃、ミッドガード軍の新型兵器使用により、7番街壊滅の為、現在、アルカディアメトロは全線で運転を見合わせております。環状線につきましては、12時頃に運転再開見込みです」〕

 どうやら1番街駅に被害は無かったようだ。
 駅の外に出ると、見た目に1番街には被害は無かった。
 さすが魔王城の御膝元であり、アルカディア王国の政治の中枢が集まる街である。

 稲生:「先生。取りあえずアリスを魔界に送ることはできましたけど、僕達はどうしましょう?」
 イリーナ:「そうね。多分、『帰れ』って言われるだろうけど、一応ポーリン姉さんに御挨拶してから帰りましょうか」
 マリア:「アリスはどうする?」
 アリス:「魔王城へ行くなら同行しよう。私も騎士団本部に戻らなくては」

 騎士団本部もまた魔王城にあるからだ。
 そして、その道すがらだった。
 馬に乗った騎士隊が稲生達の横を通り過ぎようとした。
 だが、その先頭にいた隊長らしき者が突然止まった。

 騎士隊長:「アリス!?アリスじゃないか!無事だったのか!」
 アリス:「ジル隊長!」

 先頭にいたのは女騎士であったが、アリスよりもずっと年上の凛とした感じだった。
 さすが隊長を任されるだけのことはある。

 ジル:「大丈夫。こいつはアリス・リンクス。あのレオナルド・リンクス大隊長の妹だ」

 ジルは稲生達を怪しむ部下達に説明した。

 ジル:「心配したぞ。お前の隊が全滅したって聞いてたからな」
 アリス:「はい。どうやら生き残ったのは私だけのようです」

 アリスの説明によると、ジルは士官学校の教官も務めており、アリスがそこの生徒だった時の教科担任であったという。

 ジル:「そうか。お前だけでも生き残ってくれて良かった。すぐ、本部に戻るよな?至急、本部に状況を報告してくれ」
 アリス:「はっ、了解しました!」

 そしてジルの部隊は走り去って行った。

 イリーナ:「何かジル隊長の部下達、私達を怪しんでいたわね」
 アリス:「当たり前だ。この戦争を焚き付けたのは、他ならぬ魔道士の一派だっていうぞ。ダンテ一門だって、物凄く怪しまれてる」
 イリーナ:「焚き付けるとしたら、このアルカディア王国だと思うわよ。ミッドガード共和国を焚き付けても、何のメリットも無いもの」
 稲生:「それでも、ミッドガードを焚き付ければ得をする一派があるということですよね?それは一体……」
 イリーナ:「まあ、私の見立てでは、やっぱり東アジア魔道団だと思うけどね」
 稲生:「やっぱり……」
 エレーナ:「とにかく、早く魔王城へ行きましょうや」
 マリア:「エレーナはカネさえもらえれば、ミッドガードの味方もしそうだな」
 エレーナ:「汚いカネはさすがに受け取らねーし。しかもその出所がダンテ一門の敵対組織とありゃ、もっと受け取れねーよ」

 エレーナは肩を竦めてマリアに反論した。
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“大魔道師の弟子” 「アリスのリハビリ」 2

2020-06-28 20:08:30 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日12:00.長野県北部山中 マリアの屋敷 視点:稲生勇太]

 イリーナ:「ん?お昼の時間なのに、まだ誰も来ないねぇ……」

 イリーナが1階の大食堂に行くと、まだそこには誰もいなかった。
 マリアのメイド人形が昼食の用意をしている。

 稲生:「あ、先生。すいません」
 イリーナ:「どうしたの?何か、随分と盛り上がってたみたいだけど……」
 稲生:「は、はあ……」

 稲生は言い難そうだった。

 イリーナ:「多分、勇太君は悪くないと思うから、正直に言ってごらん?」
 稲生:「実はアリスのリハビリに力を入れ過ぎて、却って、体を痛める結果となってしまいまして……」
 イリーナ:「中庭から随分と工事現場のような賑やかな音と振動がしてたと思ったら、それねぇ……」
 稲生:「マリア……さんはゴーレムを動かし過ぎてMPが0になり、アリスはゴーレムに殴り飛ばされてHP0になりました」
 イリーナ:「若いっていいわぁ……。だけど、ちょっと説教しておかないとね」
 稲生:「すいません。僕は2階からコントローラーで操作していただけなんですが、アリスが思ったほど強かったもので、僕も熱が入っちゃって……」
 イリーナ:「しかも操作係がゲーマーの勇太君とはね……」
 稲生:「とても今、2人は昼食を取れるどころでは……」
 イリーナ:「……マリアにはエーテル、アリスにはポーションの使用を認めるわ。但し、勇太君の昼食の後にね」

 エーテルとはMPの回復薬、ポーションとはHPの回復薬のことである。

 稲生:「は、はい」

 昼食にはパスタが出た。
 稲生には好物のミートソース。
 イリーナにはボロネーゼが出た。
 どちらも似たようなものだが、どうも作り方が違うらしい。
 食べ終わると、食後のコーヒーもそこそこに、稲生はマリアとアリスの部屋に向かった。
 まずは、アリスの部屋。

 稲生:「マリア、ちょっといい?」

 稲生はマリアの部屋のドアをノックした。

 マリア:「……なに?」

 ドアを開けたマリアはブラウスだけを着た状態で、下のスカートは穿いていなかった。
 それと、顔色が悪い。
 MPが0になった魔法使いの症状の1つである。
 どうやらベッドに横になっていたようである。

 稲生:「これ、エーテル。これでMPを回復させて。で、回復したら食堂に来るようにって」
 マリア:「あ、うん。分かった……」

 マリアはやっと自分の恰好に気づいたか、恥ずかしそうにブラウスの裾を引っ張った。

 稲生:「それじゃ……」

 稲生はマリアのエロい恰好に、飛びそうになる理性を何とか押さえ、部屋をあとにした。

 稲生:「ふぅ~、落ち着け、落ち着け……。まだ昼だぞ、まだ昼……」

 そして今度はゲストルームに向かった。

 稲生:「アリス……アリス卿。稲生勇太です」

 部屋をノックする。

 アリス:「何だ?たかがゴーレムに負けた私を嗤いに来たのか?」
 稲生:「なワケないでしょう」

 アリスは鎧を脱いで綿入れの姿をしていた。
 所々、手足に包帯を巻いている。
 せっかく魔法で塞がった傷が開いたのと、ゴーレムとの戦いで新たに傷が付いてしまったのだ。

 稲生:「これ、うちの先生からです。その傷だと……うーん……ただのポーションより、ミドルポーション……いや、ハイポーションの方がいいですね」
 アリス:「すまない」
 稲生:「これでHPを回復したら、先生が話があるというので、食堂まで来るようにとのことです」
 アリス:「ああ、分かった。どんな話がされるのかは分かっている。大いに反省の弁を述べさせてもらうとしよう」
 稲生:「それじゃ、また」

 稲生はゲストルームをあとにした。

 稲生:(騎士様はガードも堅そうだ)

 稲生が自室に戻り、自分のレベルに見合った魔導書を読んでいると、ダニエラがコーヒーを持って来た。

 稲生:「ありがとう」

 稲生が礼を言うと、ダニエラが顔を近づけて来た。
 稲生に何か報告があると、ダニエラは顔を近づけて来て、まるで内緒話をするかのように、コソッと言うことが多い。

 ダニエラ:「1F大食堂において、『暴風』『雷』警報が発令されました。解除まで、西側への接近を控えるよう進言致します」
 稲生:「先生のマリアとアリスに対する説教が始まったか。それでもアリスは騎士団員だし、さすがの先生も手加減するだろうけどね。問題は、マリアかぁ……」

 ゴーレムを召喚し、動力たる魔力を付与したのはマリアであるが、それを操作したのは稲生である。
 なので稲生にも責任があるような気がするが、イリーナは稲生には責任を追及しなかった。
 恐らく、こういうのはきっかけを作った者が全ての責任を負うべきというイリーナの考えなのだろうか。

 稲生:「それにしても、マリアのスカートだけ脱いだブラウス姿もエロかったな。今度、あの恰好で僕の部屋に来てもらえないかなぁ……」
 ダニエラ:「面と向かって頼もうものなら、恐らく思いっ切り殴られるものと思われます」

 ダニエラは無表情に近い微笑を浮かべて、稲生のエロ妄想にツッコミを入れた。

[同日15:00.同屋敷1F大食堂 視点:稲生勇太]

 クラリス:「ティータイムです」
 稲生:「おっ、ありがたい。……って、僕1人だけ?」
 クラリス:「イリーナ様は、部屋でお休みになられています」

 マリアとアリスに思いっ切り説教をしたものだから疲れてしまったのだろう。

 稲生:「で、マリアとアリスは先生にメチャクチャ怒られたから、部屋でヘコんでる?」
 クラリス:「いいえ。地下のプールで別のリハビリをしております。マスターがお客様のリハビリに付き合っているという形ですね」
 稲生:「何だかんだ言って、マリアも面倒見いいな。魔法使い以外の友達が欲しいのかな?」

 マリアの実年齢はともかく、見た目年齢に関してはアリスとほぼ同じだ。
 人間時代、同級生達に悉く裏切られ続けたマリアにとって、アリスは魔道士とも違うタイプであり、少し新鮮味でもあるのだろうか。

 稲生:「ん、待てよ。水泳でリハビリというのは分かるけど、アリスって水着持ってたっけ?」
 クラリス:「いいえ。スキニー・ディップ(全裸水泳)です」
 稲生:「! 僕だけティータイムってわけにもいかないから、ちょっと2人を呼んで来るね!」

 稲生は両目をハートマークにすると、地下への階段があるエントランスホールへのドアへ向かった。
 が!

 稲生:「がっ!?」

 いきなりドアが開けられ、稲生は開いたドアに激突した。

 マリア:「その必要は無い」
 アリス:「ティータイムって言うから戻って来たぞ」
 稲生:「いっ、いてててて……!お、お疲れさまです……」

 稲生は顔を押さえながら、何とか取り繕おうとした。

 アリス:「それにしても、まさかこの屋敷の地下にプールまであるなんて凄いな!私の家でも、さすがに大きめのバスタブがあるだけだぞ!」
 マリア:「私は泳ぎが苦手でね、師匠がその練習もできるようにって造ってくれたんだ」
 アリス:「そのプールに、躊躇無く裸で入ったけど、いつもそうなのか?」
 マリア:「いつもは水着を着るけど、スカイクラッドの一環で裸で入ることもある」

 魔女達の中で全裸で儀式を行うグループの名前がスカイクラッドと言い、ウィキペディアでも説明されている。
 ダンテ一門においては、特に難しいことをするわけではない。
 暑気払いでここのプールに入る時、最初は水着を着ているものの、盛り上がってきたらそれを脱いで全裸になったり、あとは日本で温泉に入る時に裸になるくらいである。
 マリアがアンナと2人でホテルの大浴場に入った時も、しっかりスカイクラッドの儀式の1つとして報告に上げていた。
 もちろんそれは女性の魔道士に限られることである為、稲生は排除される。

 稲生:「たまにエレーナが誘ってくれることもあるけど……」

 稲生がボソッと呟いたが、マリアはそれを華麗にスルーした。

 マリア:「他にもローブの下は全裸で外を歩いたり?」
 アリス:「うわ、ヘンタイ……」
 マリア:「いや、私はしないよ。ガチでそういう流派もあるって話。うちは違うけどね」

 本当の話である。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E5%A5%B3#%E9%AD%94%E5%A5%B3%E3%81%A8%E8%A3%B8
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“大魔道師の弟子” 「アリスのリハビリ」

2020-06-28 16:07:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日08:00.長野県北部山中 マリアの屋敷 視点:稲生勇太]

 朝食の時間になり、アリスが部屋から出て来た。
 案内するのはメイド人形のミカエラである。
 急いで洗濯、乾燥した服を着ていた。
 鎧の下に着る、いわゆる綿入れを着ている。
 ワインレッド系のノースリーブのワンピース型であった。
 騎士なので、いわゆる金を自分で稼ぐ傭兵などとは違い、ビキニアーマーなどは着ない。

 稲生:「Good morning!Sir.Links!」

 稲生は立ち上がってアリスに挨拶した。
 見た目が赤毛の白人なので、アルカディア王国第2公用語の英語で挨拶した。

 アリス:「Year.あなたが私を助けてくれた日本人?」

 アリスは英語で頷いた後、第1公用語の日本語で返して来た。

 稲生:「たまたま帰りの道すがら、あなたを発見しただけです。そして、この家にお連れしました」
 アリス:「そう。助けてくれてありがとう。私はアルカディア王国騎士団のアリス・リンクス。確かに叙勲はされているから、『Sir』と呼ばれるけど、ここでは単に『アリス』でいいから」
 稲生:「でも……」
 アリス:「あなた、名前は?」
 稲生:「あ、稲生勇太と言います」
 アリス:「よろしく。稲生」
 稲生:「よろしくお願いします」
 イリーナ:「さてさて。挨拶も済んだし、朝食と行こうかね」

 アリスの毛が本当に赤いのに対し、イリーナの赤毛はどちらかというと、赤茶色に近い。
 因みによくアメリカンドラマで、何人か出てくる白人の女の子のうち、大抵1人は『ジンジャー』と呼ばれる子が出てくるが、元々は『赤毛の子』という意味とのこと。
 黒人や黄色人種では、素の赤毛はいない為、彼女らが『ジンジャー』と呼ばれることはない。
 もっとも、ドラマを観ている限りでは、どういうわけだか、赤毛ではないのに『ジンジャー』と呼ばれる子もいるが(今はただ単に『赤毛だから』そう呼ばれるわけではないのかもしれない)。

 イリーナ:「体の具合はどうだい?」
 アリス:「昨晩よりはいい。ただ、まだ体が時々痺れる。……痺れるというのは、どういうことだろう?」
 イリーナ:「その『痺れ』というのは、本当は『痛み』なの。だけど、回復魔法ってのは『痛み』も取り去ってくれるから、それで本来、傷痕が疼く『痛み』が、代わりに『痺れ』という形で現れるのよ」
 アリス:「では、私のケガは見た目だけで、本当は治っていないと?」
 イリーナ:「そういうことよ。あくまでも回復魔法というのは、戦闘中にHPが0になって『戦闘不能』になるのを防止する為の魔法。だから、あなたのHPは今はマックスになっているはずよ」
 アリス:「なるほど。これはまた士官学校とは違うことを言われるものだ」
 イリーナ:「士官学校には魔道士はいないからね」
 マリア:「でも師匠、今のHPとかの表現、勇太の受け売りでは?」
 イリーナ:「日本のRPGは表現方法として面白いからいいわ」
 アリス:「すまん。ちょっと何言ってるか分からない……」
 稲生:「すいません。魔道士の会話で……」
 アリス:「『痺れ』が治まることが、イコール私のケガが完治するということでいいんだな?」
 イリーナ:「そんなところね」

 イリーナは大きく頷いた。

 イリーナ:「ケガが治るまで、ここで療養するといいわ。そうそう。騎士団本部には連絡が付いてね、『ケガが治ってからで良い』ということだったわ。だから、安心してゆっくり養生なさいな」
 アリス:「凄いな!どうやって騎士団本部に連絡を取ったのだ?」
 マリア:「アリス。うちの師匠は元・宮廷魔導師だ」
 アリス:「! そんなに偉い型だったとはっ!とんだ御無礼を!」

 アリスは慌てて椅子から立ち上がると、すぐにイリーナの前に片膝を付いて畏まった。

 イリーナ:「いいのよいいのよ。どうせ、バァルの爺さんの介護……じゃなかった。御守りしてただけだから」
 アリス:「宮廷魔導師の経験のある方とあらば、このような立派な屋敷に住まわれているのも十分納得が行く」
 稲生:「アリスも貴族の出でしょう?このくらいの屋敷に住んでるんじゃないの?」
 アリス:「いや、私の実家はここまで大きくはない。爵位も子爵程度で……」
 稲生:「男爵よりも上だ!凄いじゃない!」
 アリス:「いや、父が名誉の戦死を遂げたので、それで上がっただけのこと。本来、元々は男爵だったんだ」
 稲生:「なるほど。お父さんの後を継いで、騎士に……」
 アリス:「いや、兄が既に別の騎士隊の隊長をしている。子爵の爵位も兄が受け継いだ。兄妹で同じ隊にいるわけではない」
 稲生:「何だか圧倒されちゃうな。僕なんか絶対に叙勲されることがない……」
 イリーナ:「そもそもが、日本にはもう貴族制度も華族制度も無くなったから、ピンと来ないでしょ?」
 稲生:「そうですね」
 イリーナ:「貴族は『絶対的上級国民』とでも思えばいいんじゃないかしら」
 稲生:「ああ、なるほど」
 アリス:「あの、1つお願いがあります」

 アリスはイリーナに向き直った。

 イリーナ:「ああ、心配要らないわ。ケガが治ったら、王国へ帰してあげるから」
 アリス:「いえ、そうではありません。このまま寝ているだけだと体が鈍ってしまうので、リハビリをさせてはもらえませんでしょうか?」
 イリーナ:「リハビリねぇ……」

[同日10:00.同屋敷・中庭 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 アリス:「でやぁーっ!!」

 マリアが魔法で命を吹き込んだ失敗作の人形に斬り掛かるアリス。

 マリア:「ちっ!」

 マリアは両手に持った『見えない操り糸』で人形達を操っているが、アリスを翻弄させてやるつもりが、逆にバッタバッタと斬られていく。

 アリス:「くっ……!」

 ビリッとアリスの左腕に痺れが走る。
 見た目に傷は無いが、稲生に助け出された時、出血していた部分だ。

 マリア:「それだけ戦えれば、十分なんじゃないの?」
 アリス:「いや、まだだ!もう一回!」
 マリア:「もう代わりの人形は無いって。……あ、そうだ」

 マリアは何かを思いついた。

 マリア:「デカ物だけど、戦ってみるか?」
 アリス:「上等だ!来い!ゴーレムでも何でも、倒してみせるさ!」
 マリア:「うん。正しくそのゴーレムなんだけど」

 主人公の敵役の魔法使いがよく使役する巨大人型人形だ。
 但し、ゲーム作品によっては敵としてではなく、味方として、あるいは仕掛けを解く為のギミックとして登場することもある。
 マリアが召喚したのは顔の無いマネキンで、ボブ・サップみたいな体型をしたものである。

 アリス:「何だ、こんなものか。もっと大きいかと思った」
 マリア:「せっかく魔法で治ったケガが、また開いても知らないぞ」
 アリス:「分かってる。行くぞ!」

 アリスはゴーレムと対峙した。

 マリア:(騎士も所詮は根性論の体育会系か……)
 アリス:「何だ!?さっきの人形達よりも動きが細かいぞ!?」
 マリア:「だから、ただのゴーレムじゃないんだって」

 マリアはニヤリと笑いつつ、チラッと2階の窓を見た。
 そこには何故か、ゲームのコントローラーを握った稲生がいた。

 稲生:「せっかくPS4で遊ぼうと思ってたのに……」
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