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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京した探偵」

2025-05-16 14:25:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日17時42分 天候:雨 東京都千代田区外神田 JR京浜東北線1719B電車・最後尾車内→JR秋葉原駅]

 外はもう日が暮れたのかと思うほどの暗さになっているが、まだ雨は降っていない。
 電車は夕方ラッシュの中を走っているが、まだ車内はそんなに混んでいなかった。
 逆に、大宮方面の方が混んでいるようだ。
 そして、電車は秋葉原駅に到着した。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に、停車します〕

 ここで電車を降りる。
 元々が賑わう町の中心にある駅であり、終日多くの利用客で賑わう所であるが、夕方ラッシュの最中ということもあり、多くの利用客でごった返していた。
 エスカレーターでコンコースに下りる。
 周りの壁には、萌えキャラ達のポスターが等間隔に貼られている。
 1階のコンコースに下り、中央改札口を出て左に曲がると、バスロータリーに出るのだが……。

 愛原「わー、降って来た!」

 バケツをひっくり返したような雨が降り始めていた。
 外にいて傘を持っていない者は、慌てて駅構内に駆け込んで来るし、外に出ようとする者は立ち往生している。
 私はスマホを取り出すと、それで新庄氏に電話した。

 新庄「今、着きましたか?それでは、『風ぐるま』の乗り場に着けますので、お急ぎください」
 愛原「分かりました」

 『風ぐるま』とは、千代田区が運行しているコミュニティバスのことである。
 同じバスロータリーの中から発車している。
 見覚えのある黒塗りタクシーがそこに着いたのを確認すると、私とリサはダッシュしてその車に飛び乗った。

 新庄「すぐに出発します!」
 愛原「は、はい!」

 車はすぐに発車した。
 どうやら、直後にバスが来たようである。
 シートベルトを締める間も無い。

 新庄「大変でしたねぇ……」
 愛原「まさか、このタイミングで降って来るとは……」

 新庄氏はタクシーのスーパーサインの『予約』表示を消した。
 これで、メーターが回ることになる。

 愛原「思ったより、そんなに到着が遅れるわけではなさそうだな……」

 私は時計を見て呟いた。

 愛原「そうだ。パールにも伝えておこう」
 新庄「良かったら、私から伝えておきますよ」
 愛原「そ、そうですか?」
 新庄「私も支部長ですからね、すぐに連絡はできるようにしてあるんですよ」

 そう言って新庄氏は、右耳に着けているインカムで連絡を取った。
 その時、私のスマホに着信が入る。
 善場係長からだった。

 愛原「はい、もしもし?」
 善場「お疲れ様です。善場です」
 愛原「善場係長、どうなさいました?」
 善場「クリニックから、所長の検査結果が届きました。確かに、異常は無いようですね。これを踏まえた上で、今後どうするか決めましょう」
 愛原「分かりました」
 善場「明日、そちらにお伺いしても宜しいでしょうか?」
 愛原「あ、はい。大丈夫です」
 善場「午前か午後になるかはまだ分かりませんが、また御連絡させて頂きます」
 愛原「分かりました。では、明日、お待ちしております」
 善場「宜しくお願いします」

[同日18時25分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 平日の夕方ラッシュ真っ只中であり、しかも大雨が降っているという状況であった為、道路状況も芳しくなかった。
 あちこちで渋滞を起こしており、タクシーはいつもより長い所要時間で事務所に到着した。

 新庄「申し訳ありません。いつもはこんなに時間は掛からないのですが」
 愛原「この状況ではしょうがないですよ。迎えに来て頂いてありがとうございます」

 車は1階のガレージに入ってもらった。
 それなら雨に濡れずに済む。
 メーター通りの料金を払い、領収証をもらう。
 これは後で経費精算しよう。
 車を降りる。

 新庄「私も事務所に向かいますので」
 愛原「じゃあ、一緒に乗りましょう」

 エレベーターに乗り込む。
 4人乗りの超小型エレベーターだ。
 ホームエレベーターではないタイプでは、最小の機種。
 先月末にメンテナンスが入ったが、そのメーカーでは、もうこのタイプの機種は製造していないと聞いた。
 2階で新庄氏が降りて、私とリサは3階で降りた。

 愛原「あれ?」

 3階のダイニングに入ると、何故かメイド服を着たテラセイブのメンバーがそこにいた。

 ルビー「お帰りなさいませ!」
 ダイヤ「お帰りなさいませ!」
 パール「お帰りなさいませ!」
 愛原「は?」
 リサ「おおっ、メイドカフェ!」
 愛原「これはどういうことなんだ?」
 パール「本日は特別です。いつもは私以外いません。今日は事務所開所初日なので、皆集まっただけです」
 愛原「そ、そうなんだ」
 パール「それより、脳検査の結果が異常無しで良かったです。夕食を用意しておりますので、どうぞ」

 

 リサ「おおっ!今日はステーキ!」

 リサ好みの大きなサイズである。

 愛原「あ、ありがとう。どうしたの、この肉?」
 パール「ルビーがコストコの会員証を持っていますので、そこから仕入れて来ました」
 愛原「あ、他にもコストコの会員証持ちはいるのね」
 リサ「早速、いただきまーす!」
 愛原「そうしよう。……あ、因みに2階の事務所に新庄さんがいるから」
 パール「事務作業と、他支部や本部との連絡でしょうね。ルビー、ダイヤ。あとは私だけで大丈夫」
 ルビー「おけ」
 ダイヤ「あとはよろしく」

 ルビーとダイヤは階段の方から下りて行った。

 愛原「普段はメイド喫茶で働いてるの?」
 パール「そうですね。それ以外の所で働いているコもいますけど……」
 愛原「ふーん……」

 これも情報収集活動の一環なのだろうか?

 愛原「明日、午前か午後かはまだ不明だけど、善場係長が来られることになってるから」
 パール「承知しました」
 愛原「俺の今後の事に対する相談だということだけど、ついでにテラセイブの事務所も見たいんじゃないかな?」
 パール「そういうことですか。それでは、支部長にも伝えておきます」
 愛原「その方がいい」

 私は缶ビールを開けると、それを片手にステーキ肉に箸を付けた。
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“私立探偵 愛原学” 「帰京する探偵」

2025-05-15 20:42:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日16時50分 天候:曇 埼玉県川口市前川 イオンモール川口前川バス停→国際興業バスSC01系統車内]

 

 イオンモールのスタバで休憩した後、私とリサは敷地内にあるバス停に向かった。
 そこから京浜東北線の蕨駅に向かうバスが出ている。

 リサ「バス来た」
 愛原「ああ。あれで帰ろう」

 

 バスは往路に乗った時とは、別の車種だった。
 都営バスでは全廃されたワンステップバスだった。
 ここまでの乗客を降ろした後、運転手が車内の確認をしに入る。
 それから折り戸式の前扉を閉め、今度は引き戸式の中扉を開ける。
 バスに乗り込むと、また私とリサは後ろの2人席に隣同士で座った。
 路線バスの2人席は、どうしても大の大人2人で座ると窮屈である。
 リサはあと2ヶ月で18歳になる高校3年生だが、それでもまだ1年生、ヘタすれば中学3年生に見えるほどの体型だ。
 それでも、胸とか尻とかは成長してきたように思える。
 リサ的には狭い座席の方が、私と密着できて良いらしい。

〔「お待たせ致しました。16時50分発、蕨駅循環、発車します」〕

 しばらくして発車の時刻になり、運転手がバスのエンジンを掛ける。
 ようやくバスの車内に冷房の風が吹くようになった。
 リサはそれの吹き出し口を自分に当てている。
 そして、中扉が閉まった。
 ドアチャイムは、往路のノンステップバスと変わらない。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスはゆっくり走り出し、モール外の公道に出た。
 車内はそろそろ夕方のラッシュが始まる時間帯ということもあり、座席の殆どが埋まっている状態である。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは、蕨駅東口経由、蕨駅循環です。途中お降りの際は、お近くのブザーでお知らせください。次はイオンモール川口前川、イオンモール川口前川。……〕

 同じ名前のバス停が2つ続くが、構内始発のバスはそこを出ると、今度は県道上の同じ名前のバス停に止まるからである。
 乗換案内のサイトによっては、構内のバス停が3番乗り場、次に止まるバス停が2番乗り場という表記をしていることもある。
 ここで私は、パールにこれから帰る旨を伝えた。
 夕食はいつも18時からだが、京浜東北線で帰るとなると、少し遅くなるかもしれない。
 何せ昼間は快速しか走っていない京浜東北線は、それ以外の時間帯は全て各駅停車のみとなるからである。
 当然、所要時間も快速より多くなる。
 パールからは了解の旨、返信があった。
 それと……。

 パール「これからゲリラ豪雨が降るようです。良かったら、新庄さんに迎えに来てもらっては如何でしょうか?先生さえ宜しければ、私から連絡させて頂きます」

 とのことだ。
 私はバスの窓の外を見た。
 ちょうどバスは、同じ名前のバス停に停車して、そこからの乗客を乗せている。
 あっという間に満席になり、吊り革や手すりに摑まる乗客が出始めた。
 この時、バスは西の方を向いているはずで、時間帯にはそこから西日が眩しく差し込んで来るはずだが、太陽が殆ど顔を出さなくなっていた。
 確かに、黒い雲がこちらに迫っているように見える。
 これではパールの言う通り、都内に着く頃には大雨かもしれない。
 で、傘は持って来ていない。

 愛原「じゃあ、そうしようかな。蕨駅に着いたら、また連絡する。何時の電車に乗れるか、まだ分かんないから」
 パール「かしこまりました」

 というLINEのやり取りを行った。

[同日17時00分 天候:曇 同県蕨市中央 JR蕨駅→京浜東北線1719B電車・10号車内]

 バスはダイヤ通りに走れたのかは分からない。
 一応、大きな渋滞に捕まるというようなことは無かった。
 信号待ちとか途中のバス停での客扱いくらいだろうか。
 前扉からバスを降り、6差路の交差点を渡る。
 残念ながら斜め横断はできない。
 それで蕨駅に到着する。
 さすがに夕方ラッシュが始まり掛かっているということもあり、電車が到着すると、多くの降車客が改札口に詰めかけた。

 愛原「17時9分発の次が12分発か。夕方ラッシュって感じだな。12分発に乗ろう。こっちの方が空いている」

 ホームに降りると、進行方向後ろの方に向かって歩く。
 多分、そっちの方がもっと空いている。
 そこで電車を待ちながら、パールに再びLINEを送った。

 愛原「17時12分発の電車に乗るが、新庄さんはどの駅に迎えに来てくれるのかな?」
 パール「少々お待ちください」

 普段は東京駅で客待ちしているるそうなので、もしかしたら、東京駅かもしれない。

〔まもなく、1番線に、各駅停車、大船行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。次は、西川口に、止まります〕

 電車がやってくる。
 最後尾の車両に乗る為、電車の風圧をもろに受けることとなるのだが、生暖かい風と冷たい風が混じったものだった。
 その理由は分からなかったが……。

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます。次は、西川口に、止まります〕

 予想通り、先頭車はほぼ満席だったが、最後尾はガラガラだった。
 それだけ南浦和駅の階段やエスカレーターは前寄りに偏っているということだろう。
 青い座席に隣り合って座る。
 すぐに発車メロディーが鳴る。
 曲名は、“ジュピター”。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 ホームドアと電車のドアが閉まる。
 駆け込み乗車があったか、何回か再開閉してから閉まった。
 その為か、やや急発車気味に発車する。

〔次は、西川口です〕

 電車が蕨駅のホームを出ると、私のスマホにLINEの着信があった。
 パールからで、往路と同じように、秋葉原駅でピックアップしてくれるという。

 パール「行きは昭和通りで降りられたとのことですが、帰りは中央口のロータリーまで来てくださいとのことです」
 愛原「了解。中央口ね」

 恐らく、そこで待機してくれるのだろう。
 まあ、それもまた経費で落とせばいいか。

 リサ「外がどんどん暗くなって行くね?」
 愛原「冬なら当たり前だが、この季節は、さすがに違うな」

 どうやら、ゲリラ豪雨がすぐそこまで迫っているらしい。
 確か、予兆として冷たい風が吹くのだった。
 ということは、さっきの風は、ゲリラ豪雨が迫っているという予告であったか。
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“私立探偵 愛原学” 「脳検査を受ける探偵」

2025-05-15 14:48:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日14時07分 埼玉県蕨市 JR京浜東北線1236A電車・1号車内→蕨駅]

 秋葉原駅で新庄氏のタクシーを降りた私とリサは、そのまま中に入り、京浜東北線に乗り込んだ。
 この時間帯は全ての電車が快速運転をしており、結構早めに着いた感がある。

〔まもなく、蕨、蕨。お出口は、右側です〕

 私とリサの乗った最後尾の車両は、秋葉原から乗った時は空いていたが、今は席が全部埋まって、立ち客も出ているくらいだ。
 これは次の南浦和駅では、後ろの車両の方が武蔵野線乗り換えや改札口に行くのに便利だからだろう。

〔「まもなく蕨、蕨です。この電車は、次の南浦和が終点です。浦和、大宮方面においでのお客様は、この後参ります、大宮行きにお乗り換えください」〕

 恐らく前の車両は、南浦和止まりということもあって空いているだろう。
 電車は蕨駅のホームに滑り込んだ。

 

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます〕

 私とリサは電車を降りた。
 進行方向に歩き、改札口に向かう。
 改札口は2階にあるので、1階にあるホームからはエスカレーターに乗った。
 菊川駅にも外国人はいるが、ここはもっと多い。
 駅構内のあちこちからは、明らかに英語ではない外国語が聞こえてくる。

 リサ「先生、トイレに行く時間ある?」
 愛原「あるよ」

 エスカレーターで1階に上がると、コンコース内にトイレがある。
 駅前からクリニックの方に行くバスの本数は比較的多いので、慌てて行く必要は無い。
 リサはトイレに行き、私も男子トイレに行った。
 トイレはリニューアルされているのだが、いかんせん民度が低いのか、放置されたゴミが多いのが気になった。
 コンコース内にもゴミ箱はあるのだが……。

[同日14時24分 天候:晴 埼玉県川口市芝新町 蕨駅東口バス停→国際興業バスSC01系統車内]

 リサのトイレが終わると改札口を抜け、東口に出た。
 駅前にはそんなに大きくないロータリーがある。
 そこにキッチンカーが1台止まっている。
 そのロータリーを時計回りに回って、商業施設のビルの前を通る。
 ロータリーの規模的に、バスプールが造れなかったのだろう。
 100メートルくらい東進すると6差路の交差点があり、ここが蕨市と川口市の境になる。
 横断歩道を渡って、コンビニの前が、これから乗るバスの停留所なのだが、そこがもう川口市となる。
 バスを待っていると、大型の路線バスがやってきた。
 車種は都営バスでも見かける、ごく普通のノンステップバスだ。
 違うのは乗り方。
 前乗りではなく、地方では当たり前の後ろ乗り前降りの運賃距離制。
 なので、乗る時に読取機にICカードを当て、降りる時にもそれに当てて運賃が引き落とされる。
 バスに乗り込むと、後ろの2人席に座った。
 さっきまで乗客を乗せて来たこともあり、車内はクーラーが効いていた。
 暑がりのリサは手を伸ばして、クーラーの吹き出し口を自分に向ける。
 今日はノースリーブの黒いTシャツに、デニム生地のスカートを穿いていた。
 タイトスカートではなく、ゆったりした感じのミニスカート。
 下にブルマを穿いているかまでは分からない。
 聞いたら教えてくれるのだろうが、今はそんな気分ではない。
 バスは乗客を入れ替えると、再びエンジンを掛けて、入口のドアを閉めた。
 ドアチャイムは、都営バスのそれと変わらない。

〔♪♪♪♪。毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは、イオンモール川口前川行きです。次は猫橋、猫橋でございます。……〕

 エンジンが掛かると、クーラーの吹き出し口から強い風が吹いてくる。
 都内もそうだが、埼玉も暑い。
 窓側に座ったリサはスマホを開いて、LINEをやっているようだ。
 『魔王軍』か、あるいは他の知り合いとやっているのだろう。
 検査を受けるまで私も緊張しているし、リサも緊張している。
 もちろん、今日の通院の事は善場係長も知っている。
 何せ、最近の悪夢の事を相談したら、『脳の検査を受けるように』と、これから行く脳外科クリニックを紹介された。
 前回みたいに、また何か変な物が見つかるのだろうか。
 私もまたスマホを取り出し、善場係長にメールを送ることにした。
 本来ならクリニックに着いてからするつもりだったが、何かしていないと不安だったからだ。

 愛原「お疲れさまです。愛原です。先ほど蕨駅に到着し、クリニックの近くまで行く路線バスに乗車しました」

 と報告すると、

 善場「了解です。気をつけて行って来てください。検査の結果はこちらに送られることになっていますが、そちらでも医師の診察があると思いますので、その話の内容も併せて御報告願います」

 という返信があった。

[同日16時30分 天候:晴 埼玉県川口市前川1丁目 イオンモール川口前川1階・スターバックス]

 検査は1時間くらいで終了した。
 その後、医師の診察があったのだが、検査の結果は異常無しであった。

 医師「もしも毎晩悪夢に悩まされると仰るのでしたら、それは脳に原因があるわけではなく、精神的なものが原因と思われます。精神科ですとか、心療内科の受診をお勧めします」

 と、言われた。
 脳などは異常無しと診断されたことは、1つの安心感だが、原因が分からない事に対する不安は一層増す形となってしまった。
 取りあえず休憩の為、イオンモールに立ち寄り、そこの1階にあるスタバでコーヒーやおやつでも食べて一息ついているところだ。
 リサはWiFiに自分のスマホを繋げて、再びLINEに興じている。
 私もまたスマホで善場係長にメールで報告すると、すぐに返信があった。

 善場「かしこまりました。検査の結果は一両日中にこちらにも来ることになっていますので、今後の事については、また後日相談しましょう」

 とのことだった。
 一体、私の体……いや、精神か?……に、何が起きているというのだろう?
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“私立探偵 愛原学” 「悪夢を見る探偵」

2025-05-15 11:37:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日05時02分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・愛原の部屋]

 斉藤玲子「私と体を交換してよ。そうでないと私、いつまで経っても成仏できないのォ……!」
 白井伝三郎「今の私には、キミの体が必要だ。もう逃げれないよ」

 愛原「わあーっ!」

 そこで目が覚めた。
 このところ、毎晩だ。
 毎晩、斉藤玲子とその体を乗っ取っている白井に追われる夢を見る。
 その手は何度振り払っても、追い掛けて来るのだ。

 愛原「はぁ……はぁ……」

 2人に追われる場所はだいたい同じ。
 斉藤玲子の場合は東京中央学園の旧校舎(現・教育資料館)の中であり、白井の場合は、どこかの科学実験室のような場所。

 愛原「ん?」

 その時、部屋の扉がノックされた。

 リサ「先生、大丈夫?」

 リサの声がした。

 リサ「何か、大きい声がしたよ?」
 愛原「あ、ああ。大丈夫だ。うるさくて申し訳無かったな」
 リサ「本当に大丈夫?」
 愛原「ああ、大丈夫大丈夫」

 私は机の上に置いた水のペットボトルを飲んだ。
 そして、再びベッドに潜った。
 今度は悪夢を見ることは無かった。

[同日07時30分 天候:晴 同地区内 愛原家3階・ダイニング]

 朝食を3人で囲む。
 今はリサが夏休みである為、少し朝食の時間は遅い。

 愛原「今日から2階に、『NGOテラセイブ日本支部』が開所されるな」
 パール「お陰様で……」

 事務所名は私が言った通りなのだが、支部とは名ばかりで、実際は非常勤職員しかいない出張所のようなものである。
 事実上の常勤職員は、私の事務所の住み込み事務員を兼任しているパールくらいのものである。

 愛原「今日はテープカットだな」
 パール「そんな大げさなものではありませんよ。過去に大きな不祥事があったせいで、今はその立て直し中なわけですから」
 愛原「そうか」

 特にテラセイブの偉い人が来るというわけでもないようだ。
 個人的には、テラセイブ幹部職員のクレア・レッドフィールド氏や、その兄のクリス・レッドフィールド氏が来たら面白いかなと思うのだが。

 リサ「先生、本当に大丈夫なの?最近、悪い夢を見るんでしょ?」
 愛原「ああ、大丈夫だよ。午後は病院に行くから」

 脳に異常が無いかを診る為、再び善場係長から脳神経外科を紹介された。
 過去に検査を受けたクリニックである。
 そこでは頭に埋め込まれたマイクロチップが発見され、後ほど別の場所で摘出手術を受けた。
 おかげで今は、それまでに悩まされていたフラッシュバックや、それに伴う激しい頭痛も無くなった。
 それがまた、脳の検査を受けろという。
 これでまた異常が見つかったら、リサが暴走しかねない。
 リサは病院に付き添うと言う。

[同日10時00分 天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所2階]

 テラセイブ日本支部の開所式が行われた。
 この時、日本支部に所属するメンバー(といっても、数える程度の人数だが)が参加することになっているのだが、そのメンバーというのが……。

 サファイヤ「愛原先生、お久しぶりです!」
 ダイヤモンド「今日からお世話になります!」
 ジェイド「宜しくお願いします!」
 愛原「……は!?」

 集まったメンバーは、皆何となく見覚えのある者達ばかりだった。
 かつて、埼玉の斉藤家で雇用されていたメイド達である。
 そして……。

 新庄「愛原先生、お久しゅうございます」
 愛原「新庄さん!?」

 かつて、斉藤家のお抱え運転手だった新庄氏まで現れた。

 新庄「一応、ここの支部代表として勤めさせて頂きます。普段は個人タクシーの運転手ですが」

 元々新庄氏自体、斉藤家に雇われる前は、タクシーの運転手をしていたと聞いた。
 その期間も含めれば、個人タクシーを開業できる資格はあったということか。

 愛原「もしかして、斉藤さんは……!」
 新庄「旦那様は、テラセイブにも出資されておられたのでございます。善かれと思われて“青いアンブレラ”にも出資したのが、日本政府には嫌がられてしまい、大変な御苦労をされておられます」
 愛原「そうだったんだ……!」
 新庄「テラセイブ日本支部の活動方針は本部が掲げる『バイオテロ・薬害事件を秘匿・隠蔽する企業や組織を糾弾・告発すること』並びに、『バイオテロ・薬害事件に遭った被害者や犠牲者を支援・救済すること』の他、旦那様に対する法的支援とさせて頂いております」
 愛原「もしかして、元々はさいたま市のあの家が支部でした?」
 新庄「さようでございます。もっとも、本部からは正式な事務所としては認められておりませんでしたが」
 愛原「ふーん……?」

 その理由については不明だ。
 テラセイブとしては、なるべく中立な立場でありたいという方針から、製薬会社の社長の家を事務所にすることは躊躇われたのだろうか。

[同日13時30分 天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅・昭和通り口]

 テラセイブ日本支部開所式とその昼食会を終えた私は、午後の予約に合わせ、埼玉県川口市のクリニックに向かうことにした。
 その際、何と新庄氏が自分のタクシーで送ってくれることになった。
 新庄氏は笑顔でクリニックまで送迎すると申し出てくれたのだが、さすがにそれは申し訳ないと思い、固辞した。
 『自家使用』で無料送迎もそうだし、メーター回してもらって菊川から川口市内まで往復のタクシー料金は【お察しください】。
 そこで、秋葉原駅までにしてもらうことにした。
 これならメーター回してもらっても、片道2000円くらいで行ける。
 タクシーは黒塗りクラウンハイブリット。
 普段は東京駅近辺で仕事をしているという。

 新庄「東京駅は外国人のお客様も多く、中にはBSAA関係者なども利用されます。テラセイブのメンバーとして、情報収集にはタクシーの仕事は打ってつけなのです」

 とのこと。
 ホテルでそのような関係者の送迎をすることもあるという。

 新庄「他にも休暇で来日されたBSAA関係者をディズニーランドや羽田空港まで送迎することもあります」

 とのこと。
 秋葉原駅の昭和通り口付近で降ろしてもらい、領収証も受け取った。

 新庄「もしお迎えが必要であれば、電話して頂ければお迎えに上がりますから」
 愛原「分かりました。宜しくお願いします」

 そう言って私とリサは、冷房の効いたタクシーからムワッと蒸し暑い駅前へと降りた。
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“私立探偵 愛原学” 「夕方の事務所とゲリラ豪雨」

2025-05-14 20:31:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月28日16時58分 天候:曇 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前停留所→愛原学探偵事務所]

 NPO法人デイライト東京事務所の善場係長との打ち合わせを終えた私は、近くのバス停からバスに乗り、それで事務所へ帰ろうとしていた。

〔「ご乗車ありがとうございました。菊川駅前です」〕

 

 そして、私の事務所最寄りのバス停に到着する。
 都営地下鉄への乗換バス停ということもあり、下車客は多い。
 私も前の乗客に続いてバスを降りた。
 バスはディーゼルエンジンを音を響かせて、発車して行く。
 事務所の方に向かって歩くと、反対方向、菊川駅の方向から私服姿のリサが近づいてくるのが分かった。
 リサは久しぶりに、『魔王軍』のメンバーと会っていたはずだ。
 確かに、真夏のこの時期はまだまだ明るい時間帯ではあるが……。
 割と薄暗いのは、これからゲリラ豪雨が降るからであろう。

 リサ「あっ、先生」
 愛原「よお、リサ。今、帰りか?」
 リサ「うん。先生も?」
 愛原「ああ」

 リサは緑の水色のTシャツに、青いショートパンツを穿いている。
 しかもTシャツは裾を結んで、ヘソ出しにしていた。

 愛原「オマエ、そんな恰好で……」
 リサ「だって暑いんだもん!ほら見て!もう汗びっしょりで……」

 リサの体からは、汗の匂いが漂って来る。
 不思議といい匂いだ。

 リサ「帰ったらお風呂入りたい!」
 愛原「そうしなよ」
 リサ「ミキがお土産にくれた湯の花があるでしょ?あれ、使おう」
 愛原「そうだな」

 湯の花は温泉の素にも使われる。
 温泉地では観光客への土産物として販売されていることもある。
 鬼は風呂好きということもあり、鬼里村でも温泉は湧いていて、その私やリサが温泉好きだということで、湯の花を大量に譲ってくれた。

 愛原「それより急ごう。遠くから雷聞こえて来た」
 リサ「そうだね。でも、もう遅いみたいだよ」
 愛原「は?」

 もう少しで事務所というところ、大粒の雨がポツリポツリ降り出してきた。
 それがあっという間に強い雨となる。

 愛原「わっ、降ってきたぞ!」

 私は駆け足で、事務所1階のガレージに飛び込んだ。
 幸い、そんなに濡れずに済んだ。
 だが、リサは……。

 愛原「おい、何やってんだ!?」

 リサはそこには入らず、わざと雨に打たれた。

 リサ「あー、気持ちいい~!」

 天然のシャワーに打たれる鬼娘だった。

 愛原「早く入れ!」

 私は鬼の姿に戻ったリサの腕を引っ張ると、中に引き入れた。

 愛原「全く!わざとずぶ濡れって、何考えてるんだ!」
 リサ「だって暑いんだもん!」
 愛原「3階の風呂じゃなくて、4階のシャワーを使えよ!」
 リサ「ぐぇ~」

 私とリサはエレベーターに乗り込んだ。
 私は2階の事務所に行き、リサは4階に向かわせた。
 2階の事務所にパールはいなかった。
 夕方ということもあり、夕食の支度をしてくれているのだろう。
 私は夕食までの間、自分の席に座ると、打ち合わせの内容を纏めることにした。

[同日18時00分 天候:雨 同地区内 愛原家3階ダイニング]

 リサ「凄い雨だねぇ……」
 愛原「そりゃ、夏場のゲリラ豪雨だからな」

 シャワーを浴びたリサは、体操服とブルマに着替えていた。
 今日はエンジ色のブルマらしい。
 どこで買っているのか、ブルマの枚数が増えているような気がする。
 リサは窓の外を見ていた。

 パール「できましたよ」
 愛原「おっ、ありがたい」
 リサ「いただきまーす!」

 リサの方は焼肉定食のようだ。
 ステーキ肉ではなく、豚肉の生姜焼きか。
 私の方は焼き魚定食。
 ホッケが横長の皿に載っている。

 愛原「パール。善場係長に、テラセイブの事務所開設の話を伝えたぞ」
 パール「それで、どうでした?」
 愛原「テラセイブはBSAAの友好団体であり、後方支援組織でもあるから、特に反対する理由は無いって言ってた」
 パール「ありがとうございます」
 愛原「あとは日本の法律に則ってやってくれだってさ。絶対、“青いアンブレラ”意識してる」
 パール「あ、はい。それはもう気をつけます。日本支部のメンバーは基本的に日本国籍者ばかりですし、顧問や指導監督者としてアメリカ人などがいるというだけですから。戦闘訓練もありますが、それはBSAAに行ってやります」
 愛原「正式な事務所の引っ越しは、いつになる?」
 パール「そうですね……。先生方はお盆期間中、ここを留守にされるのですよね?」
 愛原「ああ。リサ達の合宿に付いて行く予定だからな」
 パール「先生に御迷惑をお掛けしないよう、その間に引っ越し作業をさせて頂きたいと思います」
 愛原「お盆期間中でいいのか?」
 パール「はい」

 あくまでも2階の空き室を間借りするだけなので、住み込みで働いているパールと違い、基本的には3階から上に行くことは無いとのこと。
 ただ、1階のガレージも借りたいとのことだった。
 ガレージは車が2台駐車できるスペースがあるが、そのうちの1台分で良いという。

 パール「駐車場代もお支払い致します」
 愛原「そ、そう?」

 仕事が無い時は、テラセイブの家賃収入で何とかするしかないな。

 愛原「まだ、パールの仲間を紹介してもらってないな」
 パール「そうでしたね。後ほど名簿を御用意させて頂きます」
 愛原「分かった」

[同日21時00分 天候:晴 同地区内 愛原家3階・浴室]

 私は湯の花を浴槽に入れ、温泉気分を味わった。
 リサは夕方にシャワーを浴びているが、改めてまた入りたいと言っている。
 一番風呂をもらっているというわけだ。
 浴槽から出て、頭と髪を洗っていると……。

 ???「背中、流そうか?」
 愛原「ん!?」

 どこからか、女の声がした。
 どこから声がしたのかは分からない。
 聞き覚えのあるような無いような、そんな声だった。
 声の感じからして若い。

 愛原「……気のせいか?」

 浴室には窓は無いが、換気扇は回っている。
 当然、ファンやダクトを通じて外に繋がっているから、時々外からの音が聞こえてこなくもない。
 最初はそれかなと思った。
 それからシャワーで流す。
 目の前の鏡が曇っていたので、それもシャワーで流した。
 当然、鏡には私の姿が映り……。

 愛原「!?」

 私は反射的にバッと後ろを振り向いた。
 しかし、背後には浴室のドアがあるだけ。
 その向こうには、人影すら無い。

 愛原「……おかしいな」

 疲れているのだろうか?
 この時は、そう思っていた。
コメント
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