報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

今年最後の更新

2014-12-30 20:33:48 | 日記
 小説はサブ。メインは日記なので、やはり日記で締めるのがスジだろう。
 今年もまたコミックマーケット87の臨時警備に行ってきた。
 相変わらずの人の多さに、いずれはやってくるのであろうと立場上信じざるを得ない広宣流布の姿を見られるのがコミケ開催中のビックサイト、並びにその周辺だ。
 いや、ほんとほんと。
 大石寺(広布後は本門寺になるんだっけ?)に、あれだけの人数が押し寄せることになるということだぞ?
 はっきり言って、今の大石寺の境内の広さでも捌けないくらいだと思う。
 いや、ほんとだって!……ちょっとちょっと、そこの武闘派さん!
「ユタの野郎、また御宗門をバカにしやがって!」
 じゃなくて、マジで現実を見てくれって。本当に今の大石寺ではムリだから。
 ……もっとも、だったら、久遠寺や池上本門寺を大本山に指定して分散させるという手もあるけどね。

 もっとも、大石寺をそのまま本門寺にするのではなく、新たに本門寺を作る(顕正会で言うところの国立戒壇。場所はあそこじゃないよ!あんな所、建てられないから!)というのがベストのような気がする。
 で、時の猊下が、
「ここが日蓮正宗の新しい総本山です」
 ということにすれば。
 なぁに、金ならすぐ集まるさ。
 大聖人も別に、総本山を移転してはならないという御金言は残されていないでしょ(だったら、日興上人がそれを破ってしまったことになる)。
 コミケの風景を、警備という違った視点で見ると、色々と考えてしまうのである。

 で、ウォンテッドの漫画家顕正会員とパラパラ茜さんだが、あの状態では捕捉することはできなかった。
 私の配置場所は主にコスプレイヤーが往来する場所で、実際に同人誌が販売されるエリアではなかった。
 従って、漫画家さんの捕捉は断念。
 レイヤーさん達の方だが、これまた困難だ。
 レイヤーの人数は回を重ねる事に増加の一途を辿り続け、専用更衣室の利用だけで行列ができる有り様なのだ。
 せめて、茜さんが何のコスプレをしていたかくらい分かればいいんだがな。
 アイドルグループ系はお嫌いのようだから、アイマスやラブライブのキャラではないだろう。当然、ボカロでもないはずだ。
 いや、待て。40過ぎのオバハンが初音ミクのコスプレしやがってたら、マジでブッ飛ばしに行きますw
 許されるのは、20代まで!いいですかー?20代までですからね。大事なことなので、2度言いましたよ。
 ベルバラのキャラを見かけたが、それか?
 いずれにせよ、分からない。
 コスプレのキャラにも流行というものがあって、今話題のアニメキャラだと、それだけで数十人もいるくらいだ。
 “鬼灯の冷徹”の主人公、鬼灯も相当いたな。
 あれも地獄界が舞台の漫画だが、鬼灯と会えるなら堕獄しても良いと、とかく堕獄を訴える顕正会員の折伏を断った例があると聞いたが本当だろうか?地獄界は常に好景気である。
 私も成仏は難しいので、臨終後、獄卒採用試験があったら受験してみたい。
 教官がうちのキノみたいなヤツだったら、確かに地獄かもしれない。

 厳虎独白にも書いたが、私の今年の功徳は……発表できるものは無い。
 せいぜい、今年も生き延びれたということくらいか。
 しかし、それだけで折伏ができるほど世の中甘くない。
 もう少し、こうテコ入れできるものが欲しい。
 何も、大白法や妙教で体験発表できるほどの大功徳が欲しいと言ってるのではない。
 折伏の土台となるものが欲しいと言っているのだ。
 相手が宗教人であれば、教学でもって折伏ができるだろう。実際、慧明のアポ無し折伏隊は、それで相手宗教の幹部を逆ギレさせてるくらいだ。
 しかし、無宗教者にそれは通じない。却って、日蓮正宗の評判を落とすだけだ。
「愚人に褒められたるは第一の恥ぢなり」
 という御金言は確かにある。不良信心の私でも知っている。
 しかし、後進の初心者が折伏しにくくなる状況を作るはのやめて頂きたい。
 今の顕正会が正にそうだろう?

 ま、そうなる前に私がやればいいだけのことなんだけどね。
 で、そんな状況を作り出している某M講とウチは違うんですという所を如何に説明して納得してもらえるかだ。
 アポ無し折伏隊のせいで、ブラックリストに入ってるだろ?間違い無く。

 来年はどうなるだろう。
 どうもまた厄年になりそうな気がしてしょうがない。
 折伏するのはいいけど、当の紹介者が罰で苦しんでたら世話無いよなー。

 最後の更新が愚痴ばっかりで申し訳無い。
 それだけ今年はあまりいいことが無かったということで。
 ヘタな小説と、愚痴ばかりの日記にお付き合い下った皆様には感謝申し上げます。
 来年もこの調子で続けて参りますので、ヒマな時にでも覗いて下されば、大変喜ばしいです。

 それでは、良いお年を。
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休載のお知らせ

2014-12-29 20:46:09 | 日記
 本日は多忙のため、更新をお休みさせて頂きます。
 翌日、体力と気力が余っていたら、日記の方を更新するかもしれません。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「百戦錬磨の見た目は将校」

2014-12-28 19:45:59 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月21日16:44.JR藤野駅 ユタ、威吹、カンジ、マリア、キノ、江蓮]

〔まもなく2番線に、中央特快、東京行きが参ります。危ないですから、黄色い線まで、お下がりください。この電車は、10両です。次は、相模湖に止まります〕

 もうすっかり暗くなったホームに、電車のヘッドライトが近づいてくる。
「逢魔が時……か」
「えっ?」
「これから隧道を通るまでの間、ボク達は妖力を解放するから」
 威吹が言った。
「えー……」
 ユタはその意味を分かっていた。
 ドアボタンを押してドアを開け、電車の先頭車に乗り込む。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 電車はすぐに走り出した。

〔次は、相模湖です〕

 威吹とキノは妖力を解放した。
 2人の瞳が赤色にボウッと光る。
 それだけでなく、蛍光灯の光がその影響を受けて薄暗くなった。
 よく怪奇現象が発生する時に、蛍光灯などの明かりが薄暗くなる描写があるのはそのため。
 実際はあからさまに薄暗くなるのではなく、何となく薄暗いという程度。
 トンネルの中に入ると、あれだけ威吹達が対応したにも関わらず、妖気があった。
 あわよくば、先日の貨物列車のように襲い掛かる恐れがあったのかもしれないが、2度も強い高等妖怪に睨みを利かされては、そうもいかないようだ。
 慌てて逃げて行く様子が感じ取れた。
「因みにトンネル区間は、2つ先の高尾までだ。よろしく」
 マリアは傍観者のように言った。
(それ、僕のセリフ……)
 と、ユタ。

[16:56.JR高尾駅 上記メンバー]

〔まもなく高尾、高尾。お出口は、左側です。京王線は、お乗り換えです〕

「お、お疲れ様。もう大丈夫だよ」
 ユタが言うと、妖気を元に戻す2人。
「妖気を解放すると腹が減るな。昔はそんな時には、手近な亡者を取って食ったり、人間界に出て物色しに行ったりしたものだが……」
「今そんなことしたら退治するからな?」
 と、江蓮。
「さすがにA級霊力ぶつけられると大ケガするもんでよぉ……」
「同感だ」
 威吹は同調した。
(では、S級はもっと恐ろしいわけか……)
 カンジはタブレットを見ながら、チラッとユタにも視線を向けた。
 タブレットが受信している異世界通信オンラインだが、相変わらず、不安を煽る記事ばかりだ。
(安倍総理が会見でもすればいいものを、それもできないほど大変な事態になっているということだ……)

[同日17:54.JR新宿駅 上記メンバー]

 ユタ達は終点の東京駅ではなく、途中の新宿駅で降りることにした。
「そのまま帰るのか、キノ?」
「ああ。今のところ湘南新宿ラインも埼京線も普通に走ってるみてぇだし、それで帰るぜ。まあ、腹減りはもう少し我慢するさ」
 途中で夕食を取ってから帰ろうということになったのだが、キノと江蓮は固辞した。
 恐らく江蓮だけ未成年なので、酒が飲めないからだろう。
 厳密に言えばカンジもそうなのだが(19歳)、妖狐の世界においては成年に達しているという理由で(15歳元服の法則)。
「それじゃ、稲生さん。勧誡のチャンスが来たら、連絡くれよ。藤谷班長よりはしっかり世話するよ」
「ハハハ……。その時はよろしく」
 駅構内で別れた。
「実際、藤谷班長は姿を見せなくなったな?」
「そういえばそうだねぇ……」
「雪女に精気を抜かれましたかね?」
「可能性はあるな」
「ええー……?」
「そんじゃま、取りあえず、適当な店でも探そうか」
「イリーナさんの顔利く、安くていい店無いんですか?」
 ユタが言った。
「アタシの顔ねぇ……」
 いつもは目を細くしている(糸目という)イリーナだが、少し開眼してニンマリと笑った。
(久しぶりに師匠の目が開く所を見たな)
 と、マリアは思った。
 イリーナの目が見開かれたのは、覚えている限り、メチャクチャ怒られた時だ。
 キノに復讐と称して、イリーナから禁じられた魔法を使ったのがばれ、大叱責と平手打ちを食らった。
 その際、目がカッと開かれたのを覚えている。
 いつもはのほほんとしている人物ほど、怒らせると怖いということだ。

[同日18:30.新宿駅界隈 某チェーン居酒屋 ユタ、威吹、カンジ、マリア、イリーナ]

 さすがにイリーナの顔利く所は、何だかヤバそうな感じがあったので、普通の店にした次第。
 うわばみのイリーナと威吹はグイグイ行くが、他の3人はローペース。
 カンジ曰く、
「人間形態では酒が弱い」
 とのこと。
「威吹君の刀、カッコ良くなったじゃない」
 イリーナがハイボールを片手に言った。
「まだ使い勝手に慣れておらん。出来栄え自体は良いが、新機能が余計なものなのか否かは、今後に掛かっている」
「あんなに大金を積んだのに、余計な機能だなんて……」
「ああ。でなければ困る」
「タチアナのアイディアだからね。刀に籠もった妖気を溜めて、それを放つ機能ってのは……」
「西洋の剣なら有りなのかもしれんが、これはどうだか分からぬな」
「キノは前向きだったけどね」
 と、ユタが言った。
「キノは新し物好きというのもあるだろうね」
 キノと比べれば保守的な考え方の威吹には、多少困惑の新機能のようである。
「今後、魔界からの揺さぶりはもっと強くなる。とにかく今は、使えるものは何でも使うつもりでやった方がいいと思うよ」
「まあ、そういう向きもあるがな」
 威吹はそう言って、お猪口に入った日本酒をクイッと飲み干した。
「近いうち、魔界に行くことになると思う。威吹君はその時、初恋の人を探せばいいんじゃないかな」
「お前、案内しろ」
「師匠に向かって、お前とは何だ!」
 マリアが威吹にくって掛かった。
 いつもは雪のように白い肌だが、飲酒と怒りのせいか、露出している肌が全体的に赤くなっている。
「アタシも知らないんだよォ……」
「その割には知っているような口ぶりだが?」
「何気ない心当たりはあるけどね。ただ、もしかしたら、アタシの思い過ごしかもしれないし」
「それでも良い。別に、生きていなくてもいいんだ。せめて亡骸でもあれば、それを人間界に戻してやりたい。あいつがいた社(やしろ)はまだこの時代でも現存しているようだ。そこに行って、供養させるさ」
(僕が脱講する前なら、そこだけは阻止するところなんだろうけどねぇ……)
 ユタは心の中で苦笑いして、サワーを口に運んだ。

[同日同時刻 アルカディア王国 王都アルカディアシティ 魔王城最深部・大水晶 ルーシー・ブラッドプール1世&大師匠]

「大水晶がまた点滅している。本当に大丈夫なの?」
 ルーシーは眉を潜めて、黒いローブを羽織り、同じ色のフードを深く被る大魔道師に問うた。
「御心配の通り、正直申し上げまして、かなり不安定な状態です。これはやはり、バァル大帝が何らかの理由で、引き返していることに他なりません」
「何とかならないの?約束の時期は数百年だけど、このままじゃ……」
「最後の手段を用いる必要があります。しばし、時間を頂きたい」
「えっ?」
 また大水晶が強く、しかし鈍く点滅する。
 赤色だったり、青色だったり、緑色だったりと、色には一貫性が無い。
 ただ、たまに水晶の中に人影のようなものが映り出すことが気になっていた。
(大水晶を作り出す時に、人間を依り代にしたって噂は本当なのかしら)
 と、ルーシーは思った。
 今現在、左手に握っている魔王の杖。
 バァルから預かって久しいが、早めに手放すことになるのだろうか。
 王座に対する執着は無いが、魔界の改革が軌道に乗り出している時に手放すのは、何とも納得しがたい所はあった。
(バァル……。さすがは勘の鋭い老翁ね)
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“ユタと愉快な仲間たち” 「合宿終了」

2014-12-27 21:23:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月21日16:00.神奈川県相模原市緑区某所 タチアナ・イシンバエワの家 ユタ、威吹、カンジ、マリア、キノ、江蓮、イリーナ]

 約束の時間に魔法機講技師であるタチアナの住宅兼工房を訪れたユタ達。
「刃が変わってやがる……」
 刀の修理・強化を依頼した2人の剣客は、その出来栄えに目を疑った。
 刃が変わったとキノは言ったが、形が変わったわけではない。
 見た目に変わったのは色。
 威吹の刃は青み掛かった色になり、キノの刃は赤茶色になっていた。
「何か、錆びてるように見えるんだが、どうしてこうなった?」
「錆びてなんかいないよ。むしろ10年はどんな激戦を潜った後でも、全くのノーメンテでいいくらいだ」
 タチアナは自信満々に言った。
「のーめんて?」
「何の手入れもしなくて良いということです、先生」
 カンジがタチアナの横文字を翻訳した。
「でもまあ、確かに帯びている妖気が強くなったような感じはするな……。試し斬りをしたいのだが、何かいいものは無いか?」
「そういうことならお任せ」
 イリーナが魔道師の杖を高く掲げて、何か魔法を唱えた。
 すると地面の中から、異形のモンスターが現れる。
(ドラ◯エの“つちわらし”に似てるな……)
 と、ユタはとある有名RPGを思い出した。
「こりゃ、東北辺りの土着妖怪“土童(つちわらし)”じゃねーか?」
 と、キノの言葉にズッコケるユタ。
「あ、実在の妖怪だったの……」
 そういえば、童という漢字、東北では『わらし』と呼ぶのが一般的だ。
「関東では『わっぱ』、関西では『わらべ』でしょうか?」
 と、カンジ。
「いや、知らん」
 威吹は新しい刀を構えた。
 そこでユタ、ふと気づく。
(確か、このつちわらしって、分裂するんじゃ……)
 ユタはゲームの内容を思い出した。
「うわっ、分裂した!?」
「アメーバか、こいつらは!?」
 威吹とキノは、つちわらし達に向かって行った。
「ったく!江戸時代なら、侍のフリして辻斬りできたのによォ!」
「知るか!」
 江戸時代の辻斬りは、新人の侍が人を斬ることに慣れるため、もしくはベテランであっても、新しい刀を手にした際、それに慣れる為に横行したそうである。当然、治安の悪化を招くため、幕府は幾度と無く禁令を出したのこと。

 で……。
「刃から、何か飛ばなかったか!?」
「う、うん……」
「魔力……まあ、妖怪だと妖力か。それが刀にある程度の量たまると、刃からビーム出るから」
「それ、とある有名SF映画の光る棒ちゃいます?」
 ユタは変な顔をして突っ込んだ。
「だが、遠くの敵を斬る為の飛び道具代わりにはなるな」
 と、キノ。
「慣れるまで大変そうだが、なぁに、実戦で慣れるだろう。せっかくだから、この機能も有効活用させてもらう」
 キノは懐の中から、
「ありがとよ」
 バンと何十枚もの札束を置いた。
「ふむ。キノがそう言うのなら、オレも新機能とやら、しばらく使ってみよう。刃自体は直ったわけだからな。今の魍魎を倒した時点で、刃こぼれ1つ無いというだけでも素晴らしい」
 威吹も懐から小判の束を出して置いた。
「毎度ありー」
「じゃあ、帰ろうか。今から藤野駅に行けば、中央特快に乗れるかも……」
「だが、またあの急な坂を登り下りするのは、ボク達はともかく、ユタが大変そうだ」
 そんなことを話しながら工房を出ると、
「帰りはあれに乗ったら?」
 と、タチアナがある物を指さした。
 そこにあるのはバス停。
 で、

〔「名倉循環、藤野駅行きです」〕

 バスが到着した。
「でーっ!お世話さまでしたーっ!」
 ユタはバタバタと時間調整で停車中のバスに向かって走り出した。
「むぅわってーっ!!」
 体力不足のユタを楽々追い越す江蓮。
 体育会系とはいえ女子高生より身体能力の劣る、文科系男子大学生のユタだった。
「じゃあね、タチアナ。また来るからね」
「今度は何か手土産持って来いよ」
「あいよ」

〔「藤野駅行き、発車します」〕
〔発車します。お掴まりください〕

 イリーナを最後に乗せると、バスがすぐに走り出した。

〔次は園芸ランド事務所前、園芸ランド事務所前。……〕

「これで、あの急坂を登り下りしなくていいぞ」
「確かに」
 因みに刀は日本国内の法令を守る為、威吹は長い髪の中に隠して帯刀せず、キノは江戸扇子に化けさせて、袴の左腰に付けている。
「ふふふふ……。得したぜ」
 キノは見た目以上に良くなった刀の使い勝手を気に入った様子だ。
「オレはまだ調整が必要かもな」
「新機能を使いこなせてこその強化だぜ?」
「まあ、それもあるけどな」

 ※尚、富士急山梨バス・名倉循環線は平日・土曜のみの運転で、実際には日曜・祝日は運転しません。

[同日16:11.JR藤野駅 上記メンバー]

「むぅわってーっ!!」

 プシュー、ガラガラ……バン。(←無情にも江蓮の目の前でドアが閉まる115系)
 ………ガタンタタン、ガタン………タタンタタン、ガタン………。(←走り去って行く115系6両編成)

「あー、ちょっとタイミング悪かったねぃ……」
 後から来たイリーナが目を細くして言った。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、16時44分発、中央特快、東京行きです。この列車は、10両です〕

「あ、でも、次の電車は東京行きだってよ」
「なるほど」
 ポンと手を叩くユタ。
 だが、
「で、その中央特快とやら、何分後だ?」
「33分後」
「は!?」
「まあ、こんなもんだよ。ハハハ……」
「しゃあねぇ。高崎線の高崎から上とかよりはマシだろ」
「そうそう」
 江蓮は空いているベンチに座った。
「とはいえ、少し寒いな……」
「改札横の待合室にでも行きます?」
「あー、そうしよう」
「また階段を昇り下り……」
「エレベーター使う?」

 待合室内はさすがに暖房が効いていた。
「地獄界に戻るのか?」
「ああ。明日、帰ることにする。まだ油断ならねぇ」
「……だろうな」
 カンジがポーカーフェイスで眺めているタブレット。
 異世界通信社のオンライン記事が映っているが、反政府ゲリラ達の活動は止まず、正規軍達が躍起になって押さえ込みに走っているという内容だった。
 新しく結成した正規軍と、取りあえず攻撃力だけはあった反政府ゲリラとでは、前者の方が不利だったりする。
 だから、戦い慣れている人間界在住の妖怪や地獄界の鬼族にもお鉢が回ろうとしているのだ。
「新年……迎えられるといいけど……」
 ユタは不安そうな顔をした。
「まあ、ユタに関しては心配しなくいいよ。ボクがいるから」
「私もな」
「お、お手柔らかに……」

 先行の特急列車が轟音を立てて通過していった。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「合宿最終日」

2014-12-27 15:20:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月21日07:30.神奈川県相模原市緑区某所 合宿所1F・食堂 ユタ、威吹、カンジ、マリア、キノ、江蓮、イリーナ]

「あー……」
 ユタは半分放心状態で、朝食を取っていた。
「何やってんだ、コイツ?」
 キノは変な顔をして威吹らに聞いた。
「今日は正証寺の最後の支部登山だったのに……!」
 申し込みもしていたのだが、両親の慟哭と憤怒により強制脱講させられたユタであった。
「けっ、ざまぁみろ。一代法華の哀しさを呪うんだな。なぁ、江蓮?」
 キノの言動に冷やかな目を向ける江蓮。
「あ?何だよ?」
「アタシもアンタのせいで御登山できないんだけどねっ」
「あ……!」
 江蓮もユタと同じ支部だった。
「帰ったら、両親から『大御本尊様よりオトコを取った』って、ブッ飛ばされそうだよ!」
「わ、分かった。オレが責任取るから……」
「どうやって取るつもりだ?」
 威吹、やや嘲笑めいた顔になる。
「ついでに体の責任も取らせてもらおう!」
 江蓮に抱きつこうとするキノだが、
「この無責任軟弱野郎!!」
 江蓮の木刀に引っ叩かれてしまった。
「……別の日に添書で行こう」
「そ、その方がいいよ……」
(両親が猛反対して泣きを見たユウタ君と、逆に熱心で泣きを見る栗原さん。果たして、どちらがいいのだろう……?)
 マリアはズズズと味噌汁を啜り、今のやり取りを見てそう思った。

[同日09:00.合宿所の近所 タチアナ・イシンバエワの家 イリーナ、マリア、ユタ]

「まだ刀の修理なら先だよ。午後4時前後にでも来てくれ」
 店を訪れると、ゴーグルを着けたタチアナが工房から出て来た。
「分かってるよー。何か掘り出し物が無いかどうか見に来たんだよー」
 イリーナは目を細くして言った。
「魔法使いの初心者が色々道具を揃えに来ることはあるけどね、イリーナみたいなベテランが欲しがる物があるか?」
「初心者向けでも、カスタマイズ次第で強くできるんだよー」
「それがさらっとできるのは、イリーナとポーリンくらいだっつの。さり気に全員できるような言い方するなよ」
 タチアナは両手を腰に当てて呆れた顔になった。
手先の器用なスカーレットを弟子にしたのも、それ繋がりだろ?」
「バレた?」
「ウチらの間じゃ、有名だよ。だいたいさー……」
 2人のベテラン魔法使いが話をしている間、ユタは落ち着きが無かった。
「どうしたの?」
 マリアが聞いた。
「いえ……。その……何だろう?この感じ……」
 とはいえ、この何とも言えない感覚自体は初めてではなかった。
「頭の中に、何か……外国語の歌……キリスト教辺りで歌われるような……そんなのがループしてて……」
 ユタがその感覚の正体に気づいたのは、倒れた直後だった。

 足に力が入らなくなり、まるで地球の引力が逆転したかのような錯覚に陥る。
 目はちゃんと開けてるはずなのに、周囲が真っ暗になる。
 それは貧血の症状に似ていた。

 1時間後……。

「……!」
 目が覚めると、そこは見覚えのある部屋だった。
「ああ、ユウタ君。体は大丈夫?」
「マリアさん……。えーと……」
「まあ、簡単に言えば貧血と似た症状があって倒れた。それだけだ」
「何でいきなり……?」
 タチアナの家の中。
 応接間のソファの上。
「あそこ、魔法具が並んでいたでしょ?普通の人間にはアンティーク品同然だけど、知っての通り、タチアナ師が実際製作した魔法具だからね。魔力の素質のある者には、少なからず影響がある。その影響を受けただけだってさ」
「えーっ?何で今更?」
「それまではユウタ君も、曲がりなりに守護されるものがあった。仏の加護だね。でも今はそれが無くなった。そのせいだって師匠は言ってたね」
「やっぱり勧誡しないとダメだ……」
「今は体も慣れただろうから、もう大丈夫だって言ってたよ。それに、数珠の代用品もある」
「代用品?」
 マリアが自分のローブの中から指輪を出した。
 全体的に黒い色をしている。
 特に装飾品が付いているということはない。
「これを着ければ、魔法具から発せられる障害がカットされるんだってさ。私もまあ、最初は悩まされたものだから、師匠にもらった」
 よく見ると、マリアの右手の人差し指にも同じ物が着いている。
「そうなんですか」
 ユタは早速、自分もそれを同じ場所に嵌めた。
(さすがに左手の薬指ではないんだな……)
 とは思ったが。
 しかし、好きな人と同じ物を着けられるのはいいことだ。
 嵌めた感じは特に何も無い。
 何か感覚に変化があるだとか、そういうことは一切無い。ただ単に指輪をはめたというだけの感覚だ。
「これ、宗教は関係無いですよね?」
「当たり前だ。だからこそ、イギリス以外のヨーロッパ大陸ではクリスチャンに追い回された歴史がある」
(イギリス以外の……?)
 イギリスの魔法使いの話と言えば、“ハリー・ポッター”や“魔女の宅急便”が有名だが……。
 イギリスは寛容なのか。

[同日12:00.合宿所1F・食堂 ユタ、威吹、カンジ、マリア、キノ、江蓮、イリーナ]

 合宿所での最後の食事。
 カツカレーが出た。
 魔界の敵に勝つというゲン担ぎなのか、それとも、カレーだけに『早よ、帰ぇれ』という意味なのか……。
「ユタ、貧血で倒れたんだって!?」
 威吹が驚いた顔をしていた。
「ま、まあ……ちょっとね。あ、もう大丈夫だから」
「魔女達がユタの精気を吸い取ったんじゃないのか?」
 威吹はイリーナを睨むように見た。
「妖怪じゃあるまいし!言い掛かりはやめろ!」
 マリアが言い返した。
「そうだよ、威吹。少し疲れが出ただけさ。それと……やっぱり、脱講した罰がそろそろ出始めてるってことかな……」
「そんなことないさ。仏の加護とやら、ただの幻想だってことに気づくいい機会だ」
「ユタもガリガリの虚弱体質だからよー。そのカレー、ちゃんと完食しろよ?おめーには食う肉の量が足りねぇってことだよ」
 キノが言った。
「まるで幽霊に取り憑かれたみてーにガリガリだからよー。今までは仏の加護で不良亡者(獄卒から見た、堕獄を拒んで人間界に留まる幽霊のこと)の干渉は無かったが、それも辞めたんだから、油断するなよ」
「だから、ユタはオレが守るって」
「それが本当ならな」
 と、マリア。
「ああ!?」
「記録では、ばっかん鬼に一撃でやられて、ユウタ君に多大なる不安を与えた、とあるが?」
「ああ。漢字変換不能の、不良鬼の1人だな。懐かしい名前が出て来たぜ。なに?イブキのくせに、そいつ相手にしたのか?バッカじゃねぇの。あいつぁ、刀で倒れるタマじゃねーよ」
「くっ……」
「ばっかん鬼とは?」
 カンジが目を丸くした。
「見た目は山みてぇにでっかい鬼だ。人間共の間で有名な桃太郎も、最後に相手したのはそいつだって話だぜ。人間共は都合のいいように脚色して、やれKO勝ちだの、やれギブアップさせただのと書いているみてーだが、実際は判定勝ちってところだな。まあ、人間の分際であいつに判定勝ちしたのは凄ェと思うよ」
「それで、その鬼は今どこに?」
「判定負けとはいえ、人間に負けたからにはもう人間界にはいられねぇってんで、魔界のどこかにいるんじゃねーの?まあ、地獄界に来たかったみてーだけど、あんな無駄飯食い、オレんとこだっていらねーよ」
「ドサグサに紛れて、地獄界に攻めて込んで来たとか?」
 と、威吹。
「いや。オレもそう思ったんだけどよ、そんな情報は全く無ェ。まあ、後で来るかもしれねーが、今んところはまだ来てねーよ」
「なるほど……」
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