報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「半鬼姉妹の都内観光」

2022-04-30 20:33:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月29日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 デイライトでの善場主任の話は、主に上野利恵の処遇についてであった。
 さすがにまだ釈放することはできないものの、上野姉妹の入学式には特別に臨席できるよう取り計らうという。
 先に妹の理子の入学式が4月6日にあり、その次の高等部の入学式が7日にある。
 そこで利恵は5日に都内入りし、都内に2泊する形で滞在するという。
 もちろん、その間はずっと監視付きだ。

 善場:「錦糸町のホテルに滞在してもらいます。ここなら上野高校にも墨田中学校にも出やすいので」
 愛原:「それはいいですね」
 善場:「但し、一緒に滞在することはできません」
 凛:「……ですよね」

 そういう話に終始した。
 それが終わってから、次に向かう。

 愛原:「2人とも、ご苦労さん。取りあえず、入学式はお母さん出られて良かったな?」
 凛:「そうですね」
 理子:「…………」

 卒業式は出られなかったので。

 リサ:「先生、次はどこに行く?」
 愛原:「まずは山手線で、渋谷に行こうと思う」

 本当は都営バスや銀座線で行くのが早い。
 だが、JRもついでに乗っておいて、元を取ろうと思ったのだ。
 それに、リサはなるべく地上を行きたいだろうし。
 他の皆は、特に異論を出して来なかった。

 愛原:「その後は原宿だな。原宿で、クレープ御馳走してあげるよ」
 リサ:「おー!クレープ!」

[同日10:11.天候:晴 同地区内 JR新橋駅→山手線929G電車最後尾車両]

〔まもなく4番線に、品川、渋谷方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕

 新橋駅で山手線電車を待つ。
 新橋駅のホームはカーブしているので、安全の為に立ち番の駅員が常駐している。

〔「4番線、ご注意ください。山手線、品川、渋谷方面行きが参ります」〕

 風を切って新しい電車が入線してくる。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます〕

 ホームはカーブしているが、ちゃんとホームドアが設置されている。
 さすがに朝ラッシュも終わっているので、電車は混んでいない。
 私も空いている座席に腰かけさせてもらった。
 すぐにホームから発車メロディが流れてくる。

〔4番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 JRの電車は2点チャイムを3回鳴らして、ドア開閉する。
 しかしこれは、都営新宿線の都営車と同じだ。
 駆け込み乗車があったのか、何回か再開閉してやっとドアが閉まる。

〔「駆け込み乗車はおやめください」〕

 そして、電車は半ば急加速するような感じで発車した。

〔次は浜松町、浜松町。お出口は、左側です。東京モノレール羽田空港線、都営地下鉄浅草線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです〕

 高橋:「先生の計画では、渋谷、原宿ときて、次は新宿ですか?」
 愛原:「おっ、よく分かったな。新宿で昼飯でも食おうと思う」
 高橋:「それはいいですね」
 愛原:「午後は山手線の外側に出るぞ」
 高橋:「ほお……」

[同日13:00.天候:晴 東京都新宿区西新宿 新宿アイランドB1F・雛鮨]

 リサは本当に食べ物だけを漁っていたが、半分人間の血が入っている上野姉妹はそこまででもなく、渋谷や原宿のファッションに興味を示した。
 そこは普通のティーンズといったところか。
 栃木でも宇都宮辺りまで行かないとそういう服が買えないのか、そこで買っていた。
 これが自分達の土産のようなものであろうか。
 リサはあんまり興味を示さなかったが、たまにはもっとファッションに興味を持つように言ったところ、

 リサ:「渋谷系ギャルになれって?先生、ギャル物好きだったっけ?ロリ系は好きみたいだけど」

 などと言ってきたので、軽くゲンコツしておいた。
 原宿に移動すると、さすがに3人の少女はクレープを食べたが、他にもチュロスとか、原宿って案外グルメな町だったのね。
 で、昼は西新宿のビルにある寿司屋で寿司食べ放題にしようと思った。
 実はこの寿司屋、手持ちの東京フリーきっぷで料金が割引になるのである。
 果たして、私は元が取れるかどうか分からない。
 だが、このコ達が元を取ってくれるものと信じていた。
 そして、板長氏の表情から、それに成功したのだと確信した。

[同日14:10.天候:晴 同地区内 都営地下鉄都庁前駅→大江戸線1317B電車先頭車内]

 リサ:「あー、美味しかった」
 愛原:「さようで……」

 私はさすがに手持ちの漢方胃腸薬を使わざるを得なかった。
 リサ達に合わせて食べたのでは、こちらの胃袋が破裂してしまう。

 リサ:「次はどこに連れて行ってくれるの?」
 高橋:「新宿の次は、山手線の外側に出るということでしたが……」
 愛原:「ああ。今度は映画を観に連れて行ってやるぞ」
 高橋:「映画ですか。御言葉ですが、映画くらいならこいつらの田舎でも観れると思いますが……」
 愛原:「まあ、そうなんだが。BOWのこいつらに、見せておきたい映画があるんだよ。で、その料金も、このフリーきっぷで割引になるから」
 高橋:「そうですか」
 愛原:「まあ、とにかく行こうや」
 高橋:「はい」

 今度は都営大江戸線のホームに向かう。

〔まもなく4番線に、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 やってきた電車は、そんなに混んでいなかった。
 まだこの時間は帰宅ラッシュでもない為、むしろ新宿方面の方が乗客が多いくらいで、放射部の光が丘行きは空いていた。

〔とちょうまえ、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです〕

 硬いクッションの赤い座席に腰かける。

〔4番線から、光が丘行き電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 ホームの自動放送と車外スピーカーからの発車メロディが同時に鳴る。
 その方が駆け込み乗車も無いのだろうか、再開閉せずに1回で閉まり切った。
 電車がスーッと走り出す。

〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、光が丘行きです。次は西新宿五丁目(清水橋)、西新宿五丁目(清水橋)。お出口は、右側です〕

 都営大江戸線の特徴にはいくつかあるが、コロナ禍になってから特に酷くなったものがある。
 それは騒音だ。
 元々がカーブの多い路線なので、電車がカーブを曲がる度に車輪の軋む音がトンネル内に響く。
 窓を閉めていても気になる程なのに、コロナ禍で換気促進の為に窓を開けていると、余計にやかましいのである。
 似たような構造で開通した仙台市地下鉄東西線を走る車両は、窓が一切開かないタイプである。
 正直、そっちが良いのではと思った。

 理子:「東京の電車ってスゴいね、お姉ちゃん」
 凛:「そ、そうだねー」

 理子は両耳を押さえながら言った。
 リサなど、頭からフードを被ったほどである。

 高橋:「大江戸線って、電車ん中でもWi-Fiあるんスね」

 高橋の方は暢気だ。
 だが、Wi-Fiが繋がると知った瞬間、リサも自分のスマホでWi-Fiに接続した。
 中高生のプランだと、どうしてもギガ数が限られているので、Wi-Fiが繋がる環境は重要だとリサはとても理解していた。
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“私立探偵 愛原学” 「上京2日目の半鬼姉妹」

2022-04-30 14:02:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月29日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「おはよう」
 高橋:「あっ、先生。おはようございます。今、朝飯作ってますんで、もう少しお待ちください」
 愛原:「いいよ。顔洗ってくるから」

 私が洗面所に行くと、浴室からシャワーの音が聞こえた。
 どうやら、リサがシャワーを浴びているらしい。
 朝からシャワーを使うなんて珍しいな。
 私がそこを通り過ぎようとすると、バスの前扉のような折り戸が少しだけ開いて……。

 リサ:「先生、一緒に入る?
 愛原:「俺を食い殺す気か!」
 リサ:「ちょっとゾンビになってもらうだけ
 愛原:「アホか!」

 体内にTウィルスとGウィルスを宿しているリサは、本当にそれができるのだから冗談じゃない。
 また、体内に侵入した寄生虫を逆にウィルス感染させて、使役するくらいだ。
 こりゃ、アレだな。
 生理前か何かでムラムラして、昨夜何度もオ○ニ○したのだろう。
 それで汗をかいたので、こうやってシャワーを浴びていると見た。

 愛原:「今日は先に新橋に行くぞ」
 高橋:「善場の姉ちゃんの所ですね。車は返しちゃいましたよ?」
 愛原:「今日は車を使わない。公共交通機関を使う」
 高橋:「あ、そうですか」
 愛原:「打ってつけのフリー乗車券があるからな、それを使う」
 高橋:「さすがは先生です」

[同日08:30.天候:晴 同地区内 都営地下鉄菊川駅]

 朝ラッシュで賑わう菊川駅。
 その地上出入口で待っていると……。

 愛原:「おっ、来たなー」

 駅前交差点の横断歩道を渡って来る上野姉妹がいた。

 上野凛:「おはようございます!今日もよろしくお願いします!」
 上野理子:「おはようございます」
 愛原:「ああ、おはよう。よく眠れた?」
 凛:「まあ、大体は」
 愛原:「そうか。今は平日の朝ラッシュで混んでいるが、こっちに上京する以上は避けて通れない道だ。ちょっと今は、それを体験してもらう」
 凛:「はい!」

 栃木の山奥に住んでいたこの姉妹が、東京の朝ラッシュにどれだけ耐えられるかな?

 愛原:「今日は都区内を色々と歩き回るから、フリーきっぷを買おう」
 リサ:「何てフリーきっぷ?」
 愛原:「『東京フリーきっぷ』だよ。ICカードに登録できるから、紙のキップは買わずに済む。……キミ達、ICカードは持ってる?」
 凛:「はい」
 理子:「はい」

 2人の姉妹が出したICカードはSuicaでもPasmoでもなく、totoraという地位連携ICカードだった。
 2人の姉妹が住む地域を走る路線バス会社などが共同で発行しているものだ。
 一瞬、これでも行けるのかと思ったが、よく見るとSuicaのマークが付いているので、行けると思った。

 凛:「今はこれで地元のバスに乗ったりしているんですけど……」
 愛原:「キミの友達か誰かで、これでJRに乗ったことのある人はいる?」
 理子:「あ、はい。信者さんの中には、そういう人がいます」
 愛原:「JRに乗れるんなら大丈夫だろう」

 私はそれで全員分の東京フリーきっぷを購入した。

 愛原:「これで都区内の電車とバスは乗り放題だ(私鉄は除く)。それじゃ、行こう」
 凛:「はい!」

 急行電車が通過した為に、ホームどころかコンコースにまで強い風が吹いてくる。
 スカートを穿いている理子は、その裾を押さえるようにして歩いた。

 リサ:「そう簡単にめくれないよ」

 リサ自身は、昨日とは違う黒いミニスカートを穿いている。
 チェーンを着けているが、その先にあるものとは……。

 凛:「理子は恥ずかしがりやさんなので……」
 リサ:「ふーん……」

 リサは理子にそっと耳打ち。

 凛:「でも愛原先生には、見せてあげると喜ぶよ?」
 理子:「ええっ!?」
 愛原:「こら、リサ!」

〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。京王線内、区間急行となります〕

 トンネルの向こうから、通勤客満載の京王電車が入線してきた。
 尚、先頭車両はこの時間帯、女性専用車となるので、最後尾に乗ることになる。

 リサ:「おっと」

 電車が強風を伴って入線してきた。
 さすがのリサも、ふわっと捲くれ上がりそうになるスカートの裾を押さえる。
 昨日と違うのは、今回のスカートはもう少し制服のプリーツスカートに近い生地だということだ。
 上に着ているパーカーは、グレーではなくピンク色のものだ。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕

 乗車客は多いが、降車客も案外いる駅である。
 でも、急行は止まらない。
 取りあえず、乗り込むことはできた。
 まあ、痴漢が発生しそうなほどのメチャ混みぶりではない。
 恐らく、そのピークは過ぎているのだろう。
 お世辞にも空いているとは言い難いが。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディの後で、電車のドアが閉まる。
 京王電車の場合、2点チャイムが2回ずつ鳴る。
 音色はJR東海の313系等と一緒。
 車掌室から鳴る発車合図のブザーが聞こえたかと思うと、エアーの抜ける音がして、電車が走り始めた。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 菊川から新橋なら都営バスの方が乗り換えも無くて便利なのだが、バスの車内では東京フリーきっぷが買えないので。
 尚、このフリーきっぷ、ただ単に都区内のJR、地下鉄、都営バスが乗り放題というだけではない。
 一部の施設では、割引などの特典も受けられるという優れものだ。
 これで食事代なども、割引してもらうこともできる、と……。

[同日09:15.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 馬喰横山駅で電車を降り、地下道で繋がっている東日本橋駅へ移動する。
 そこから都営浅草線に乗れば、新橋へ行ける。
 都営浅草線も混んでいたので、上野姉妹には良い洗礼となったようだ。
 ぞろぞろと事務所に行くのもアレなので、事務所には私1人で行くことにした。
 どうせ善場主任に、昨日預かった書類を渡すだけだ。
 そしたら……。

 善場:「会議室なら空いているので、どうぞ皆さん入ってください」

 とのことだ。
 どうやら私以外にも、上野姉妹に言いたいことがあるらしい。
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“私立探偵 愛原学” 「中央自動車道と首都高速」

2022-04-29 21:49:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日17:30.天候:晴 東京都渋谷区代々木神園町 首都高速4号線・代々木パーキングエリア]

 中央自動車道をひたすら走った私達。
 途中で道路混雑に遭い、中・低速運転させられた箇所もあったが、それでも大きな渋滞に巻き込まれることはなかった。
 渋滞時間が決まっている平日ならではの状況と言えるだろう。
 で、首都高には夕方ラッシュが始まる頃に差し掛かった。
 そしてその頃に、リサ達が空腹を訴え始めた。
 よくよく考えてみれば、今日の昼食は早かった。
 そうなると、早めに腹が減るのは当然だろう。
 本当は高速を降りてからファミレスにでも入ろうかと考えていたのだが、その前に渋滞にハマったりすると大変だ。
 私は高橋に言って、代々木パーキングエリアに寄らせた。
 高橋は私の真意を知って、ニヤッと笑った。
 そこは元走り屋。
 代々木パーキングエリアに何があるのか知っているのだろう。

 

 S字カーブの途中に、パーキングの入口がある。
 そこに滑り込むようにして中に入った。

 

 まるで都会のガソリンスタンドのような佇まいだが、実はこれ、元々は料金所の跡である。
 道路の写真を見ると、S字カーブのようになっているが、元々は料金所の跡地をパーキングにしたので、こういう線形になったという。
 首都高には、こういった元料金所の跡地や、現料金所の敷地の一部をパーキングにした所がまま見受けられる。
 ドトールコーヒーの看板が目立つが、中には他にもレストランがある。
 途中には永福パーキングエリアもあったが、そこはトイレと自販機しか無かったので、食事をするには無理がある。
 そこで、この代々木パーキングエリアにした次第。

 愛原:「ここなら、食事ができるぞ」
 リサ:「おー!」

 レストランの名前は、“よよぎの森”という。
 レストランというよりも、フードコートのような佇まいだ。

 愛原:「何がいい?」
 リサ:「カツカレー!」(≧∇≦)
 愛原:「あいよ。皆は?」
 凛:「それじゃ、私もカツカレーで」
 理子:「わ、わたしも……」
 愛原:「了解。俺はハムカツカレーにするか」
 高橋:「じゃあ、俺も」
 愛原:「全員カレーだな」

 まあ、昼間は全員ラーメンだったので。
 因みにカツカレーには、サラダとスープも付いている。
 リサ達は、トンカツをバリボリ食べていた。
 これで少しは、暴走の危険性が抑えられたかな。

 愛原:「2人は菊川のホテルだったね?」
 凛:「はい」
 愛原:「車でホテルまで送って行くから」
 凛:「ありがとうございます」
 愛原:「明日は善場主任の所に書類を届けた後、東京見物と行こう。キミ達の場合、グルメツアーの方がいいかな?」
 凛:「た、助かります!」

 陸上部員である以上、食べてばかりではダメなのだろうが、今は活動中というわけではないのでということかな。
 因みに善場主任には既に連絡していて、斉藤元社長の意識はまだ元に戻っていないそうだ。
 ただ、意識が無いというだけで、瀕死の重傷というわけではないらしい。
 “青いアンブレラ”の病院船で治療でも受けたのか、治療された形跡はあるという。
 いずれにせよ、柏崎市内の病院は厳重に警戒が施されており、“青いアンブレラ”が来ても奪還されないようにしているとのことだ。
 何だろう?
 警察の機動隊でも配備されているのだろうか?
 病院の内外がいきなり厳重警備された、他の患者達も気が気でないだろうな。
 意識が戻ったら都内へ移送されるのだろうが、これとて厳重な警備態勢が取られるものと思われる。

 リサ:「御馳走様でした」
 愛原:「腹一杯になったか。良かったな?」
 リサ:「うん、腹7分目」
 愛原:「えっ?」
 リサ:「あとは食後のデザート。ドトールで買って来る」
 愛原:「マジか……」
 リサ:「ポイントカード溜まってるから、ポイントで手に入るはず」
 愛原:「な、なるほど……」
 理子:「お姉ちゃん、あっちにアイスの自販機あったよ」
 凛:「う、うん。私達はそっちに行こうか」

 さすがの上野姉妹も、半分は人間の血が入っているせいか、生粋のBOW(元人間)の食欲には少し退くらしい。
 アイスなら消化に良いからいいのだが、リサはドトールコーヒーでケーキを買って食べる始末であった。
 これで太らず、しかし体の成長が遅いのだから、変化のエネルギーは凄いのだろうと思う。
 あとは、体内に有しているGウィルスや寄生虫に栄養を持って行かれるというのもあるだろう(というか、多分これが大きいのでは?)。
 体内にGウィルスと特異菌を有してはいるが、寄生虫は有していない上野姉妹は、また体質が違うというのが分かる(変化の時に鬼の角が生えるのは、Gウィルスの影響らしい)。
 デザートを食べ終わった後は、トイレに行ったり、高橋はそれにプラス喫煙所で一服したり。
 私は食後のコーヒーを、外の自販機で購入した。
 ドリップ中に“コーヒールンバ”が流れる、紙コップタイプの自販機である。

 愛原:「昔、アラブの偉いお坊さんが♪……ってか」

 何だかんだ言って、1時間は休憩した。
 上野姉妹は、自販機や売店でお菓子やパンを買っていた。
 どうやら、夜食用らしい。
 ホテルで姉妹仲良く食べるのだろう。
 因みにリサも便乗して買っていたようで、それはさすがに注意した。

[同日19:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 リバーサイドホテル墨田・江東前]

 車がホテル前に到着する。

 愛原:「この辺だな。おーい、着いたぞー」

 私が振り向くと、リサを含めて3人の少女はウトウトしていた。
 特に、最年少の理子さんは完全に窓に寄り掛かって寝落ちしていた。

 愛原:「おーい、起きろー!」
 リサ:「……あ、もう着いたって」

 リサが真っ先に起きて、隣の凛を揺さぶった。

 凛:「……あ、はい」

 後ろに積んだ荷物を降ろして、取りあえず明日、事務所前に集合する旨約束して、それから別れた。
 朝食はホテルのサービスで出るらしい。
 なので、グルメツアーは昼以降だな。
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“私立探偵 愛原学” 「面会」

2022-04-29 15:06:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日13:30.天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター(地下研究施設)]

 藤野パーキングエリアをあとにした私達は、上野原インターで中央自動車道を降りた。
 そこから一般道でセンターに向かう。
 センターに入っても、すぐに面会できるわけではない。
 入構手続きから何やらで、正門に着いてから実際に面会に至るまで30分くらいは掛かるのである。

 守衛A:「面会できるのは、3人までです」
 愛原:「そうですか。それでは私とこちらの2名を……」
 リサ:「! 先生、それはキケンだよ!」
 愛原:「大丈夫だ。利恵さんは反省しているし、ここは警備も万全だから。それに、いざとなったらリサが助けに来てくれればいい」
 
 リサと高橋には控室で待っててもらって、私と上野姉妹で面会することにした。
 その前に、差し入れを出すことにする。
 やり方は監獄施設のそれと、殆ど同じであった。
 差入品としては、私は善場主任から預かった書類。
 上野姉妹は、現金や色々な物であった。
 東京拘置所と違い、差入店が近くにあるわけではないし、あくまでも収監しているのは、『人を食べた』または『人を食べそうになったBOW』である為、他の人間の犯罪者とは扱いが別なのだ。
 で、今のところ収監されているのは上野利恵1人だけである。
 日本版リサ・トレヴァーが収監されることも想定されたらしいが、結局そうなる前に全員死亡している。
 何か制限はあるのかというと、少なくとも姉妹が持ってきた差入品が返されることはなかった。
 自殺防止の為の長い紐付きの物とかは禁止だろうが、ここでは禁止ではないらしい(BOWが首吊り程度では死なない為か)。

 愛原:「面会時間はどれくらいですか?」
 守衛A:「いつでもいいですよ」
 愛原:「は?」
 守衛A:「収容者が1人しかいないので、特に制限時間は設けてません。ただ、遅くとも16時までには終了して頂きたいですね」

 とのこと。
 そこは拘置所の面会時間と変わらなかった。
 確か、東京拘置所も面会時間は16時までであった。
 但し、弁護士との接見の場合はこの限りではない。
 上野利恵には弁護士が付いていないが、デイライトは付いている。
 私が善場主任から書類を預かったのも、それだ。

 守衛B:「それじゃ、終了したら呼ぶように」
 上野利恵:「はい、ありがとうございます」

 面会室自体は、拘置所のそれと大して変わらなかった。
 ただ、拘置所の場合は刑務官が立ち会うのだが、ここでは特に守衛の立ち会いは無かった(因みに守衛は警備会社からの派遣ではなく、直接雇用の国家公務員である。国会警備の衛視や国立印刷局や造幣局の警備官と同様)。
 人間の犯罪者とは違うからだろう。
 もっとも、天井を見ればしっかり監視カメラが稼働しているから、それで監視はされているだろうが。

 愛原:「デイライトの善場主任から、あなた宛てに書類を預かってきました。後で差入品として渡されるはずなので、中をよく読んでおいてください」
 利恵:「はい。ありがとうございます」
 愛原:「それじゃ、私はこれで。あとは娘さん達と話をしておいてください」

 私はそう言って、退室した。
 利恵はグレーの囚人服のような服を着ていた。
 だが、首にランプの点いたチョーカーを着けている辺りが、人間の収容者ではないことを物語っている。

[同日16:00.天候:晴 同施設1F 体育館]

 施設の地上部は表向きの研修センターである為、体育館もある。
 新年度からはここを使用する公務員達がいるようだが、年度末は閑古鳥である。
 その為か、待っている間だけという条件で、体育館が解放された。

 高橋:「ほらよ!」
 リサ:「ん!」

 体育館が解放されると、リサと高橋はバスケットボールを持ち出し、1on1を始めた。
 リサは上着のパーカーを脱いで、下の白いシャツの状態で1on1に興じた。
 下は黒いスカートのままである。
 時折捲れて中がチラリと見えてしまうが、ショーツも黒いせいか、それが下着なのか、オーバーパンツなのかは分からない感じだった。
 体を動かす方が好きなリサには、良い暇潰しになったようだ。

〔ポーン♪ 「来訪者の愛原さん、来訪者の愛原さん。お連れ様と一緒に1F守衛所までお越しください」〕

 こんな館内放送が流れた。

 愛原:「おっ、もうこんな時間か。それじゃ、そろそろ行こうか。ボールはちゃんと元に戻してな」
 リサ:「はーい」

 片付けをしてから、1Fの守衛所に向かった。

 守衛A:「ご苦労さまでした。それでは、これが愛原さん宛ての『宅下げ品』です。ご確認ください」

 差入品として渡した茶封筒と同じ物を返された。
 どうやらこれは、上野利恵から善場主任宛てへの書類のようである。
 実は上野利恵はこれまでの態度が認められ、監視付きで特別に娘達の入学式への臨席が認められたのである。
 それに関する書類だと、私は聞いている。
 中をチラッと見ると、同意書とか誓約書とかが入っていた。
 これを善場主任に持って行けばいいのか。
 よし、明日持って行こう。

 高橋:「それじゃ俺、車持って来ます」
 愛原:「ああ、頼む」

 高橋は駐車場へ向かった。
 そこへ、研修棟から上野姉妹がやってくる。
 どうやら、面会が無事に終わったようだ。

 愛原:「ご苦労さん、どうだった?」
 凛:「はい。おかげさまで、いっぱい話せました」
 愛原:「そうか」
 凛:「あの……母は、いつ出られるんでしょうか?」
 愛原:「俺じゃ分からんなぁ……」
 守衛A:「それじゃ皆さん、こちらで退構手続きを」
 愛原:「お、そうでした」

 入構証の返却や、退構時の書類手続きなど。
 ここで見聞きした物については、一切口外しないという誓約書を記載して提出する。

 愛原:「それでは、お世話になりました」
 守衛A:「お気をつけて」

 車に乗り込むと、固く閉じられていた鉄扉が開放される。

 愛原:「帰りは相模湖インターから乗るか」
 高橋:「分かりました」

 私達はセンターをあとにし、中央道のインターへと向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「中央自動車道の旅」 2

2022-04-28 20:22:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日12:20.天候:晴 神奈川県相模原市緑区小渕 中央自動車道・藤野PA]

 昼食を食べ終わった私は、善場主任に電話してみた。
 だが、善場主任も忙しいのか、電話が繋がらなかった。
 取りあえず、お昼ぐらいに場所を移動することにした。
 石川PAにはお土産も売っているが、上京したての上野姉妹にはまだ買う段階に無いからだ。
 本当なら藤野の研究施設に行くには、相模湖インターで降りるのが良い。
 しかし、それだと石川PAの次に時間調整できるパーキングが無い為、その次の藤野PAで時間調整することにした。
 このPAの次は上野原インターであるが、そこからでも藤野の研究施設にはアクセスできる。

 

 藤野PAは石川PAと比べれば規模が小さい。
 下り線にあっては、フードコートはもちろんのこと、飲食店すら無い状態だ。
 辛うじてコンビニがあるくらいである。
 歩道の前に、斜めに車の頭を突っ込ませるようにして駐車し、出る場合はバックでというのは石川PAと同じ。
 東名高速で言えば、江北PA上り線みたいな構造だろうか。
 あそこは辛うじて食事できる所があるが、こちらには無い。
 また、賑わいもそこや石川PAほどではなかった。

 愛原:「ちょっと25分くらい休憩しよう。俺は電話するから、適当に45分までは車に戻るようにして」
 リサ:「はーい」

 平日ということもあってか、普通車よりも大型トラックの方が多いくらいだ。

 愛原:「あの窓から、研究施設が見えるかもな」

 歩道の前には透明の防音壁がある。
 そこ越しに、相模湖畔に建つ施設が見えるかもしれなかった。

 上野理子:「お姉ちゃん、見て。手紙のマーク」
 上野凛:「わっ、ホントだ!」

 パーキングエリアから南の山の方を見ると、そこにはラブレターのような封筒のオブジェが聳え立っている。
 その謂れも、ちゃんと看板が立っている。
 だいぶ古いように見えるが、平成元年に作られたそうなのでそのはずだ。
 私はスマホ片手に、コンビニ横のベンチに座り、善場主任に掛けようとした。

 愛原:「おっ!?」

 するとちょうどタイミング良く、善場主任から電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「善場です。お疲れ様です」
 愛原:「善場主任、お疲れ様です」
 善場:「先ほどは電話に出れなくて申し訳ありません。今、どちらにいらっしゃいますか?」
 愛原:「中央道の藤野パーキングエリアです。ここで時間を調整中です」
 善場:「そうでしたか」
 愛原:「それより、ニュースで見ました。斉藤元社長が新潟で捕まったそうですね?」
 善場:「意識不明ですので、まだ逮捕はされていません。私も今から新潟へ向かうところです」
 愛原:「そうですか。私達は……」
 善場:「愛原所長方は、上野姉妹を看ていてください」
 愛原:「分かりました。斉藤元社長は、北朝鮮から来たのでしょうか?」
 善場:「可能性は十分に有り得ます。あの高野自身、私はコリアンだと思っています」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「つまり、韓国または北朝鮮のスパイですね。気を付けてください。北朝鮮の拉致手法を逆手に取って、彼らは斉藤容疑者を日本に送致して来たのです。愛原所長方が拉致されないとも限りませんから」
 愛原:「そ、それは困ります」

 高野君、在日朝鮮人だったの!?
 い、いや、高野という名字も通名でまま見られるものではあるが……。
 本名は『高(コ)』か。
 エイダ・ウォンじゃなかったのね。

 善場:「外務省の関連団体とも調整して対応しております。何か分かりましたら、愛原所長にもお知らせしますので、もう少しお待ちください」

 外務省出て来た!
 ということは、やっぱりデイライトさんは別の省庁の関連団体だったのだ。

 善場:「資金は足りていますか?何しろ大食のBOWが3人もいますからね」
 愛原:「それは大丈夫です」
 善場:「いいですか?くれぐれも、彼女達を暴走させるようなことはしてなりませんよ?半分人間の血が入っているとはいえ、もう半分はBOWの血ですから」
 愛原:「分かってますよ」

 暴走させなければ、自由に接して構わないということでもある。
 その辺、お役所関係は細かな指示を出さない。
 もしも細かく指示を出して失敗しようものなら、当然その責任を問われるからだ。
 お役人達は、そんな責任など取りたがらない。
 だから、危ない橋は民間委託して渡らせるのである。
 自分達は安全な場所にいて責任逃れできるし、何かあったとしても、『民間業者に委託して、それなりのことは対応していた』と言い訳もできる。
 そういうものだ。
 もっとも、善場主任の方はまだ現場に出て対応している方だとは思うけどな。
 こちらとしても、破格の報酬は出してもらえるのだから、文句は無い。

 高橋:「先生、ちょっとタバコ買ってきます」
 愛原:「ああ」

 高橋はコンビニの中に入っていった。
 ふと、遠くから列車の走行音が聞こえて来た。
 この近くには、中央本線が通っており、そこを走る貨物列車の音だった。
 私もトイレに行っておくことにした。

 凛:「あっ、愛原先生」
 愛原:「よう。リサはどうした?」
 凛:「トイレが空くのを待ってます」
 愛原:「女子トイレ、混んでるんだ?」
 凛:「というか、和式しか空いてないので、洋式待ちです。私達は別に和式でもいいんですけどね」
 愛原:「ああ、そういうことか……」

 別に、リサも和式が使えないわけではない。
 ただ、アンブレラの研究所にいた時、実験や観察と称して、研究員達の見ている前で排尿、排便させられるという屈辱を味わったが為に、和式にはそういうトラウマがあるからだ。
 その公開排便は、和式便器で行われたそうなので。

 凛:「東京中央学園のトイレは洋式なんですね」
 愛原:「洋式もあるし、和式もある。両方だな」

 もちろん、私は男子トイレしか入ったことが無いが、男子トイレでそうなのだから、女子トイレもそうなのだろうと想像している。
 リサはその辺何も言ってこないから、実際そうなのだろう。
 もっとも、さすがに旧校舎は和式のみだが。

 愛原:「ああ……これから入学するキミ達にこんなことを言うのはアレなんだけど……」
 凛:「何ですか?」
 愛原:「中等部も高等部も、他の学校と比べて異様に怪談話が多いみたいだよ?」

 もっとも、リサがその話を鋭意更新中w
 『暗くなる前に下校しないと、校舎内を徘徊する鬼が現れて捕まる』『放課後の技術室からヤスリで何かを研ぐ音がする』『放課後の女子トイレから呻き声が聞こえる』などなど、犯人は全部リサだ。

 凛:「本当ですか!面白そうですね!」
 理子:「お化けさんと勝負できるかな!?」
 愛原:「……う、うん。そだねー……」

 2人の半鬼姉妹は怖がるどころが、むしろ楽しみにする始末であった。
 半分は人間の血が入っているはずだが、この辺の感覚のズレはBOWか。
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