報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

小説の途中ですが、ここで本日の雑感をお送りします。0131

2016-01-31 23:33:31 | 日記
 昨日、今日と私の支部では支部総登山が行われたはずだ。
 私は両日とも仕事であった為、不参加であった。
 今年から、ますます週末休みにくい現場へ配属されたので、土休日に行われる行事への参加はほぼ絶望的と言わざるを得ない。
 その代わり、平日は事前に申請すれば簡単に休めるというメリットがある。
 正に、警備業というサービス業の哀しい宿命であろう。
 顕正会から世法的に逃げたい方には、お勧めの職業である。

 そういう私は明日、添書で大石寺に向かう。
 支部登山が行われた後で添書で向かうというのも、オツなものだろう。
 ある意味、嫌味かもしれん。
 これは、平日の部を設けてほしいという無言の要望でもあるのだが。
 今年の予定表を見ると、夏期講習会は相変わらず平日の部が無いようなので、今年もそれはバックレ決定である。
 4月は御虫払大法会が平日に行われるようだが、果たして参加枠があるかどうか……?

 因みに支部登山について、昨日、紹介者にメールを送ったのだが、相変わらず返信が遅い。
 忙しいのは分かるが、顕正会経験者からすれば、とてものんびりとしたものだ。
 返信が遅いだけで嫌味を言われる所だったからね。
 まだ嫌味を言われるだけならいいが、サトー様みたいな上長だったりしたら【お察しください】。
 もっとも、そのサトー様も老けたねぇ!
 最近になってまた顕正新聞にチラッと出てきたりしたが、ケンショーレンジャーのイメージとは程遠いものだ。
 恐らく、もう下っ端を怒鳴りつける気力も無くなったのではないか。
 もしそうなら、怒鳴りつけられた人は復讐するチャンスだと思うがね。
 サトーさんは、夜道に気をつけた方がいいんじゃないかな。
 もっとも、唱題の時間を割くよりも折伏に時間を割くことを最上とする顕正会であれば、電話やメールの返信が早いのは当たり前だ。
 唱題に勤しんでいると、なかなかメール着信に気づかないこともあるからね。

 幸い明日はそんなに天気も悪くないようだし、なかなかの登山日和になるのではないだろうか。
 私にとっては今年初の御登山であり、昨年に現れた功徳に対する御礼参りの意味合いもある。
 謹んで参詣させて頂くとしよう。

 ところで余談だが、私の昨年の登山回数は10回である。
 多いのか少ないのか分からない。
 ブログにレポしなかった回もあったりするので、昨年の記事の回数と小説ネタ帳に記載した回数が合っていない。
 で、ワッペンは基本的に取っておかないクチなので。
 ネタ帳には毎回書き込むので、そちらの数字が正しいのだろう。
 添書・支部合わせて10回だった。
 多分これ、武闘派さんから見れば少ないと言われるんじゃないかな?
 多くは特別布教区の方達なのかもしれないが(樋田さんを除く)、それを差し引いても、やはり私の年間登山数は少ないと思われる。
 そもそも、初登山が2月の時点で【お察しください】。

 今年も救い難い不良信徒でありますが、何卒面倒見てやってくださいとお願いさせて頂こう。
 熱血信徒になる為に、何かカンフル剤になるようなものをくださいというのもいいかな。
 武闘派さん達だって、何も、急にそうなったわけではあるまい。
 何かしらのきっかけがあったはずだ。
 それは人それぞれであると思われ、私には私ならではのきっかけがあるはずだ。

 差し当たり、今夜の勤行においては明日の御登山の無事を祈るってところかな。
 私1人の悪い行いのせいで、登山バスが事故ったんじゃ申し訳が立たない。
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“大魔道師の弟子” 「サンモンドの疑惑」

2016-01-30 20:49:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月24日04:00.魔界レッドスターシティ郊外山中にある魔道研究所・医務室 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、アレクサンドラ・エヴァノビッチ(サーシャ)、サンモンド・ゲートウェイズ]

 ワクチンを投与して暴れ出した稲生だったが、その後でまた昏々と眠りに就いた。
 その間はマリアが看ており、サンモンドやサーシャが古城内の探索に当たっていた。
「この古城の裏口と裏門を見つけた。化け物の気配は無い。この城から脱出するなら、そこが適切だと思う」
 サンモンド達が医務室に戻って来てそう言った。
「ただ、問題があってね。裏口は内鍵で開けられるんだけど、肝心の門が開かないんだ」
 と、サーシャ。
「魔法使い達の研究所だから、そこも魔法の結界か何かで閉じられてるのかと思ったんだけど、そこの船長でも分からないらしいんだ」
「魔法で閉じられているとは思えないが、鍵穴も無い。これはもしかしたら、どこかで遠隔で開けるタイプの門ではないかと思ってね」
「そうなのか」
「かといって、門の周辺を調べても、それらしいのは見つからなかった。稲生君が目が覚めたら、改めて手分けして探したいと思うのだが……」
「う……」
 その時、稲生が呻き声を上げた。
「稲生君!?」
「稲生!」
「ユウタ!?」
 呻き声といっても、それはゾンビの呻き声ではなく……。
「う……ん……」
 稲生が目を開けた。
 それはゾンビのような濁った白目ではなかった。
「マリアさん……?」
「稲生、無事か?」
「サーシャ……?ここは……?」
「魔道研究所の中にある医務室だ。キミはウィルスに感染して、危うくゾンビ化するところだったんだよ。どこか痒かったり、熱っぽい感じはしないかい?」
「……いいえ。特に無いです」
「そうかい。それは良かっ……」
 サンモンドが言い終わらないうちに、マリアが稲生に抱きついた。
「ま、マリアさん!?」
「ユウタ……良かった……良かった……!」
「す、すいませんでした……」
「感動の場面のところ申し訳無いが、ゆっくりしてはいられないみたいなんだ。感動の続きは、ここを脱出してからにしよう」
 と、サンモンド。
「急いで脱出する必要があるのかい?」
 サーシャがサンモンドを見据えた。
「理由は2つある。重要な理由ともっと重要な理由があるが、どっちから聞きたい?」
「普通に重要な理由から聞かせてくれ。あとの方がメシマズ的な話になりそうだ」
 サーシャがそう答えた。
「分かった。まずそれは、大量のゾンビ達がここを目指して歩いている」
「ええっ?!」
「恐らく町の方には、奴らの食す“食料”が無くなってしまったのだろう。まあ、大火から避難してきたというのもあるだろうが」
「城の入口にはキッツい坂があって、足の腐った奴らが登れるとは思えないけどね?」
「城の屋上から見てみたんだが、奴らには仲間意識というものが無い。途中で力尽きて倒れた者でも、平気でそれを踏み越えてしまう。つまり、そういった者達を踏み越えて、こっちに来る可能性が大ということだ。今頃、入口の門扉を呻き声を上げながら力任せに叩いているところだろう。破られるのも、時間の問題だ。裏口はその反対側だから、そんな所に化け物がいるとは思えない」
「なるほどね。もう1つは?」
「さすがの政府も、この事態を嗅ぎ付けらしい。あの惨状を見て、生存者ゼロと見なしたようだ」
「じゃあ、待っていても救助は来ないというわけか」
 と、マリア。
「救助が来ないどころか、夜明けと共にこの町は無くなる」
「は!?」
「何だって!?」
「どういうことですか?」
「これを見てくれ。私の発言のソースだ。この城には、既に治安部隊が突入しててはいたらしい。もっとも、化け物に殺されて全滅していたがね」
 それは何枚かの文書。

『……レッドスターシティの惨状においては、もはや一刻の猶予もならぬ。原因の調査と並行して生存者の救助を最優先としたいところだが、もはやそれも絶望的であることが分かった。こうなった以上、政府として取れる手段は、町そのものの滅菌(滅却とも言う)しか手立てが残されていない。政府はこの程、軍部に雷光集積兵器“ライディーン”の発動を命じた。発動は夜明けと共に行われる。任務に当たっているものは、夜明けまでに町を脱出すること』

「その軍人達、連絡手段は持ってないのかい?」
「私が見つけた何人かは持っていたのだが、既に壊れていた。化け物と戦っている間に壊れたのだろう」
「分かった。じゃあ、探すことにしよう」
「頼む。じゃあ、手分けして探すことにしよう。稲生君は私と来なさい」
「は、はい」
「!?」
「先ほどまで私は、サーシャと一緒に行動していたからね。今度はパートナーを入れ替えて、行動しようじゃないか。その方が効率的だ」
「船長、私は……」
 マリアは何か言い掛けたが、サーシャがそれを制した。
「分かった。マリアンナさん、別にいいじゃないか。ここを脱出できれば、また稲生と再会できるんだから」
「それはそうだが……」
「それじゃ、行くよ」
「私達は西館を探す。キミ達は東館をよろしく」
「分かった。まあ、この城の化け物達は粗方倒しておいたから、安心して探索するといい。この時季の夜明けといったら、6時くらいだろう。それまでに何としてでも脱出手段を見つけるんだ」

[同日04:30.魔道研究所・西館 稲生&サンモンド]

 西館側の警備室に行ってみた。
 そこでは警備員の死体が転がっていたのだが、ゾンビ化して襲って来ることはなかった。
 室内の資料を読んでいると、あることが分かった。
 裏門付近は最近、不審者の影がちらつくようになったので、用心の為、普通の鍵から遠隔操作で開けるタイプに変えたそうである。
 但し、魔法での施解錠はできないようにした。
 この研究所の特性から、そうする必要があったとのこと。
「この研究所の特性?」
「魔法タイプにしてしまうと、強かったり弱かったりと一貫性を見ないからということだろう」
「ああ。そういえば、オークタウンで見たヤツもそうでしたね。……地下の制御室から操作して開けるタイプですか。何だか、大掛かりだなぁ……」
「それだけ、普段は開けないつもりなのだろうね」
「地下に行くには……」
「途中でそれらしき階段を見つけたよ。ただ、鍵が掛かっていたんだが……。あ、そうか」
 サンモンドはポンと手を叩いて、警備員の死体のポケットを探った。
「あったあった。これだ。マスターキー」
「おー!」
「これで行ってみよう。夜明けまでもう時間が無いから急ごう」
「はい!何か船長と一緒にいると、何でも上手く行きそうな気がしますよ」
「!……そ、そうかい?それは光栄だね。さ、早く行こう」
 サンモンドは稲生を促した。

 どうして一瞬、サンモンドは稲生の何気ない言葉に焦ったのだろうか。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の嘆き」

2016-01-29 22:53:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月24日01:00.天候:曇 魔界レッドスターシティ郊外山中・魔道研究所 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、サンモンド・ゲートウェイズ、アリッサ・バラム・ハミルトン]

 サンモンドの快進撃により、本当に硫酸弾3発で大蛇(オロチ)は血反吐を吐きながら倒れた。
「よし。私の手に掛かれば、こんなものだ。しかし、材料とやらはどこに……?まあいい」
 サンモンドは部屋の外で待っている魔女2人を呼びに言った。
「キミ達、大蛇は倒したよ」
「さすがだな」
「マジか……」
「立てるか、アリッサ?」
「ああ、何とか……」
 アリッサはマリアに肩を貸してもらいながら立ち上がった。
「ところで、さっきから気になっていることがある」
 と、マリア。
「何だい?」
「ユウタの話では、船長は目が殆ど見えないと聞いている。確かに今も薄いサングラスを掛けているが、だいぶ見えてるように見える。どういうことだ?」
「その目が見えるようになる薬を、この研究所で手に入れたんだ。ただ、飲み続けなければいけないものらしいからね。いずれまた目が見えなくなってしまうそうだ。そんな時、この研究所で事故が起きたと聞いて、駆け付けてみたらこのザマだ」
「そうだったのか」
「それよりアリッサ君、材料とやらはどこだい?」
「あの棚の中にワクチンベースが入っているはず……。まずは、あれが無いと話にならない」
「了解」
 サンモンドは棚の中からワクチンベースを取り出した。

 と!

「!!!」
 壁が突然壊され、そこから大蛇が飛び出してきた。
 大蛇は一匹だけではなかったのだ!
 大蛇はサンモンドをかわして、魔女達に突っ込んでいった。
「マリアンナ!」
 アリッサは自分の肩を貸しているマリアンナを振り解くと、それを突き飛ばした。
「うわっ!」
 大蛇はアリッサに食らい付いた。
「アリッサ!!」
 マリアは魔法の杖を出した。
「ぱ、パペ、サタン、パペサタ……がっ!」
 あまりの展開に舌が回らない上、舌を噛んでしまった。
 そうしているうちに、大蛇はアリッサを丸飲みしてしまった。
「リロード終わった。行くぞ、蛇の化け物め!」
 実はその間、サンモンドは空になったグレネードガンに硫酸弾をリロードしていたのだった。
 サンモンドは確実に弾を大蛇に当て、大蛇は最後に頭部を吹き飛ばされ、血を噴き出して、仲間の死体の上に折り重なるようにして死んだ。
「あ、アリッ……サ……」
「大丈夫か、しっかりするんだ!」
「ぶっ……!」
 マリアは仲間の死に直面し、ついに胃の内容物を吐き散らした。
「ま……また……死ん……!」
 サンモンドは手持ちの大型ナイフで、アリッサを丸飲みした大蛇の体を掻っ捌いてみたが、既に消化された後だった。
「短時間で完全に消化させるとは、何て蛇だ!」
「ううう……アリッサ……どうして……」
「嘆くのは後にしなさい!このままグズグズしていたら、今度は稲生君の命が危ないぞ!」
「……ユウタが……!」
「ワクチンベースは手に入れた。どうやら、他にまだ必要な物があるらしい。急いでそれを探すんだ!」
 幸いワクチンベースの入ったキットの中に、ワクチンを作る為に必要な物が書かれていた。

[同日02:00.魔道研究所地下1階 サンモンド&マリア]

 見た目は何だか錬金術にでも使いそうな変な形の器械。
 しかしそれこそが、ワクチンの製造機であった。
 他に手に入れた培養液などと一緒に、その器械に入れる。
 その間もドアを突き破って、ゾンビだけでなく、皮を引ん剝いたゴリラのような化け物が襲い掛かったりしてきたが、サンモンドやマリアが迎撃したりしているうちに、そして誰もいなくなったようだ。
「早くしてくれ!このままだとユウタが……!」
「落ち着きなさい。今は器械に任せるしかない」
 だいたい10分ほど待たされて、ようやっと試作ワクチンが出来上がった。
「よし!これで……」
「数人分はあるな。よし、そこのまだ開けてない新品の注射器も何本か頂戴していこう」
「数人分?数回分ではないのか?」
「いや、回数は1回が御の字だろう。いかにワクチンとはいえ、元はゾンビウィルスであることに変わりはない。多用すると、逆に感染してしまう。そこはインフルエンザのワクチンと同じだよ」
 インフルエンザの予防接種だって、弱らせて毒性を抜いたインフルエンザウィルスの培養液を注射するものである。
 つまり、わざと症状が出ない程度に感染させて、抗体を作るのが目的なわけだ。
 ただ、元がウィルスなだけに、人によっては微熱などの弱い症状が出ることはある。
「では?」
「キミとアレクサンドラ、そして私も接種しておくんだ。あいにくとだが、私達も奴らの攻撃を受けてしまったからね。この時点で症状が出てないということは、ある程度の抗体は私達も最初から持っていたのだろう。とはいえ、ワクチンを打っておくことに越したことはない」
「……分かった」

[同日02:30.魔道研究所1階・医務室 マリア、サンモンド、稲生勇太、アレクサンドラ・エヴァノビッチ(サーシャ)]

「遅かったじゃないか」
 サーシャは手を腰にやって苛立ちをぶつけてきた。
「しょうがないだろう。私達だって、遊んでいたわけではない」
「とにかく、首尾はバッチリだ。これを早速、稲生君に注射しよう」
 稲生は痙攣などを起こすこともなく、昏睡状態に陥っていた。
 これがゾンビ化する直前の状態。
 次に目が覚めた時、稲生はゾンビ化する。
 サンモンドは稲生の右手にワクチンを注射した。
「この後で、私達もワクチンを打っておく必要がある」
「そ、そうかもしれないね……」
「サーシャ?」
「私も背中がとても痒いし、熱っぽい……」
 確かにサーシャの顔も赤かった。
 よくよく考えてみれば、サーシャの方が受けた傷は大きい。
 サーシャが1番感染の確率は高かったのだ。
 逆に、あまり攻撃を受けていなかった稲生が真っ先にゾンビ化するところであったのだが。
 やはりゾンビ化する速度は、個人差が激しいらしい。
「わああああああっ!!」
「稲生君!?」
「ユウタ!?」
 突然、稲生が絶叫を上げて飛び起きた。
「稲生君!落ち着きたまえ!サーシャ、稲生君を押さえるの手伝ってくれ!」
「あいよ。……って、コラ!暴れんなっつーに!!」
「マリアンナ君も手伝ってくれ!」
「あ、ああ!……いたっ!」
 稲生はとにかくひどい暴れようで、サンモンドもサングラスが飛ぶほどの顔面パンチを受けた。
「……てかさ、もうぶった切った方が早くね?」
 と、サーシャ。
「何だか私もそんな気がしてきたよ」
「ダメーッ!!」

 で、結局稲生はどうなったのかというと……。
「落ち着いたと思ったら、眠ってしまったか」
「本当に大丈夫なんだろうね?」
 稲生が落ち着いた後で、同じワクチンを打つ3人。
「さっきまでと違って、肌の色も元に戻っているし、顔色も良くなった。多分もう大丈夫だ」
「うう……稲生の気持ちが少し分かる。か、体が……け、け、け……」
 稲生の次に症状が進んでいたサーシャも、大きく体を震わせた。
 恐らく、体内のウィルスが必死の抵抗を行っているのだろう。

 とはいえ、まだ初期症状で済んでいたサーシャと、そもそもまだ症状が出ていないマリアやサンモンドはともかくとして、ゾンビ化直前まで症状の進んでいた稲生は実際にワクチンが間に合ったのだろうか。
 最悪は【お察しください】。

 主人公死亡で、この物語は強制終了だ。ヒャッハー!
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“大魔道師の弟子” 「生き残りの魔道師」

2016-01-28 21:12:25 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月23日23:00.天候:雨 レッドスターシティ郊外山中の魔道研究所 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット&アレクサンドラ・エヴァノビッチ(サーシャ)]

 昔は帝政時代の貴族が使用していたと思われる古城。
 それを転用したのが魔道研究所であった。
 主に魔法の妙薬を開発する施設であったらしい。
 魔界には色々と魔法を研究・開発している施設があるという話をマリアは聞いていたが、実際に来たのはこれが初めてだった。
「あった!サーシャ!やっぱりこの研究所は、薬を開発していた!」
「やっぱりね」
 城内を徘徊するゾンビやその他の化け物の攻撃を交わしつつ、稲生の病気を治す為の手段探しに走るマリアとサーシャ。
「町の惨状は、やはりこの施設が原因だったか……」

『今朝5時頃、警備員のスコットに突然叩き起こされて、シェルターへの避難を促された。何でも研究所の方で事故があったらしい。魔法使いの奴ら、夜も寝ないで実験ばっかりやってるからこんなことになるんだ』

 所内からはゾンビ化したスタッフの手記なんかも見つかった。
 当然こんな奇病なんて、感染した本人も知らないだろうから、書いている本人も自分が化け物になっていくのを自覚できないまま、文章だけがおかしくなっていった。

『夜、からだ中、あつい かゆい。胸のはれもの かきむしたら 肉がくさりおちやが おれ 一体どうなって 』
『かゆい かゆい スコットきたー ひどいかおなんで ころして く た。うまかっ です 』
『かゆい うま 』

「ユウタもこうなって……」
「そんなことはさせないよ。早いとこ薬を探そう!」

 ある部屋に飛び込んだ。
 どうやら、普段は倉庫として使っている部屋らしい。
「誰だ……?」
 柱の影に誰かが倒れていた。
「その声は……!」
 マリアは見覚えがあった。
 柱の陰に駆け寄ると、そこには黒を基調としたワンピースに身を包んだ魔女の姿があった。
 マリアと違い、黒髪に赤いカチューシャが目立っている。
 だが、あちこちをケガしていた。
「アリッサ!アリッサなのか!?」
「その声は……マリアンナ……。無事だったのか……」
「知り合いかい?」
 サーシャが辺りを警戒しながら聞いた。
「私と同門のアリッサだ。どうしたんだ、その傷は!?」
「ま、マリアンナ……。こ、この城は……マジでヤバい。は、早く逃げろ……。さもないと……」
「待て!今、回復魔法を掛ける」
「無駄だ。毒に冒された」
「毒!?ここのゾンビは毒を持ってるのか!?」
「違う。ここにいるのは……ゾンビだけじゃない」
「えっ?」
「へ、蛇だ……。恐ろしく巨大な……くっ!」
「蛇!?」
「多分……魔法の実験で……巨大化したものだと思う……。血清は見つけたんだけど……この体じゃ……」
「分かった!今、取って来る!場所はどこだ!?」
「医務室……1階の医務室……」
「分かった!今取って来る!もう少し頑張ってくれ!」

 マリアとサーシャは医務室に取って返した。
「おう、2人とも!早かったな。首尾はどうだ?」
 マリア達が出て行った後も、やはりゾンビ達がちょこちょこ訪れて来たらしい。
 医務室の外では、サンモンドに銃弾で頭を撃ち抜かれたり、蜂の巣にされて血だまりを作って倒れている個体がいた。
「ここに血清があるはずだ。……これだ!」
「血清?しかし、稲生君の病気はそれで治らないと思うよ?」
「この城の奥に、マリアンナの仲間が倒れてた。彼女は巨大な毒蛇に噛まれたらしいんで、血清が必要なんだ」
「何だって?するとこれから、もしかしてその巨大な毒蛇と戦うかもしれないのかね?」
「その恐れは十分にある。私の剣で戦えると思うが、毒を吐いてきたりしたら危険だね」
「ふむ。それなら、アレク……もとい、サーシャ。私と交替しよう」
「えっ?」
「私が銃で、遠くから攻撃すれば良い」
「そんな簡単に行く?」
「実はここに来る前に、いい物を見つけたんだ」
 サンモンドは自分の荷物の中から、ある物を取り出した。
 それはグレネードガンと硫酸弾(榴散弾ではない)。
「あまりにデカ物だから、私の手に負えないと思っていた。体の腐った連中相手なら、正直ハンドガンでもいいくらいだからね。だが、巨大な爬虫類が相手となったら話は別だ。正にこの武器は、そういった敵用と言っても過言ではないだろう。これなら、大きな毒蛇も真っ青だ」
「なるほど。まあ、倒してくれることに越したことはないね。じゃあ、私はここで稲生を見てるよ」
「気をつけてくれ。さっき目を開けたのだが、もうゾンビのような目をしていた。起き上がって襲って来たら、その時は……遠慮しない方がいい」
「分かってるよ。その時はマリアンナ、恨まないでくれよ?」
「……しょうがない。というか、早いとこアリッサに血清を打たないと!」
「うむ。急ごう」

 再びマリア達がアリッサの所に行こうとすると、新たな敵が待ち受けていた。
 しかし、それは巨大な蛇ではない。
 どこに隠れていたのかと思うほど、ゾンビが待ち構えていた。
 そこはサンモンドが手持ちの銃(グレネードではない)で、ゾンビ達を撃ち抜いた。
 幸い、アリッサが倒れていた空間にはゾンビ達も入り込めないようである。
「アリッサ!大丈夫か!?血清だ!」
「ありがとう……。うっ……!」
 マリアンナがアリッサに血清を注射した。
「……ふふっ。こんな時でも……注射は痛いな……。ああ……何だか、少しは楽になった気がする……」
「それは良かった。ジェシカ達が“魔の者”に殺されたってのに、もう2度とうちの一門から死人は出したくないからな」
「その通り……」
「一体、何があったんだ?この城で?」
「この城は……ただの魔道研究所じゃない」
「えっ?」
「マリアンナは系統が違うから知らないだろうけど、ここの研究員達は皆、アルカディア政府を良く思っていない」
「どうしてだ?弾圧していたのはバァル大帝の方だろう?今の政府は、特に弾圧はしていないと聞いてるが……」
「宮廷魔導師の職を廃止した安倍総理を恨んでる。皆、その職に登ることが憧れだったのに……」
「確かにルーシー女王の要望で、復活することになったらしいが……。別に、あっても無くてもいいんじゃないか?」
「それはまだマリアンナが、魔道師の世界についてまだよく理解していないだけだ。とにかく、魔道師は全て正義の味方とは限らないってこと。人間界でのほほんと暮らしているアンタ達とは違う……」
「言ってくれるな。それより私の弟弟子がゾンビに成りかかってる」
「えっ!?」
「特効薬があるって聞いたんだが、知らないか?」
「……特効薬そのものは無い」
「なにっ!?」
「だけど、それを作ることはできる」
「作り方は!?助けてあげたんだから教えてくれ!」
「それはもちろん。ただ、材料の1つが、そっちの部屋にあるんだけどね……」
「そっちの部屋?」
「……私が大蛇に遭遇した部屋。逃げてなければ、多分まだそこにいると思う」
「よろしい。ここは私の出番だな」
 サンモンドがグレネードガンに、硫酸弾をリロードした。
「これだけあれば、3発くらいでくたばるだろう。“魔の者”の手先であるのなら、私にとっても敵だからね」
「私はここでアリッサを見てていいか?」
「ああ、構わんよ。蛇をブッ飛ばしたら呼ぶから、その時は来てくれたまえ」
「分かった」
 サンモンドは巨大な毒蛇が潜んでいるという部屋に向かった。
 手にはグレネードガンを持って。

 別のドアからは、ゾンビが呻き声を上げて、ドンドンとドアを叩いている。
 もはや、一刻の猶予も無かった。
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“大魔道師の弟子” 「新感染」

2016-01-27 23:01:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月23日22:15.天候:雨 レッドスターシティ郊外山中の魔道研究所 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、アレクサンドラ(サーシャ)]

 研究所の門扉から中に入ると、まずは中庭があった。
 建物はマリアの屋敷のような洋館ではなく、むしろ古城のようだった。
 どうやら研究所といっても、旧貴族の城を転用したものらしい。
 そして、その中庭にも、
「アアア……」
「ウー……」
 ゾンビが何体かたむろしていた。
 やはり町中にいた奴らよりも、腐敗が進んだタイプだ。
 まだそんなに腐敗していなかった町中のゾンビは、掴みかかって来るのが殆どだったが(殺してから食おうと考えるタイプ)、腐敗が進むとそれも難しくなるのか、ヨタヨタと近づいてきて、カプッと噛み付いてこようとしてくる(生きたまま食いたい)タイプだ。
 もちろん、町中よりも弱体化しているこれらのタイプはサーシャ達の敵ではない。
「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!サラマンダーよ、炎の精よ、あの不浄なる者どもを焼き払え。ヴェ・ギュラ・マ!」
 マリアの杖の先から火炎の帯が飛び出て来て、ゾンビ達を包み込んだ。
 ゾンビ達は叫喚の声を上げながら、強制的に火葬された。
「さすがー!」
 サーシャは心から感心した。
「早いとこ、中に入ろう。多分、中も化け物だらけだろうが、休める所くらいあるだろう」
 正面のドアは重厚の木造のドアだったが、鍵は掛かっていなかった。
 中に入ると、マリアの屋敷のエントランスホールを更に大きくした2階吹き抜けのホールがあった。
 ベタな法則で、こういうホールに敵はいないものだ。
「マリアンナの家だと、休める場所はどこだ?」
「まあ、どこの部屋でもいいが、ゲストルームは2階にある」
「じゃあ、私らも2階へ行こう。ゲストルームに住民の化け物はいないだろう」
「どうかな……」
 サーシャのこじつけ過ぎる論に、マリアが首を傾げた。
 すると、
「そこまでだ!侵入者共め!!」
「!?」
「!!!」
 2階から声がした。
 2人が見上げると、吹き抜け階段の上からガウンを羽織った初老の男がこちらを睨みつけていた。
「よくも私の城を荒らしてくれたな!タダでは済まさんぞ!」
「な、何だと?!」
「ちょっと待ってよ!私達、たった今来たばかりの客だよ!?そういう言い方って無いんじゃない!?」
「黙れ!もう2度と私は騙されんぞ、魔女共め!今度は傭兵を連れて来て、私の城を荒らしに来たことは分かっている!」
「いや、私は別に金は貰ってないけどね」
「私もこの城の者とは無関係だ」
「問答無用!私はア……!」

 初老の男が更に何か言おうとしたが、それはできなかった。
 何故なら一発の銃声がして、男の頭が撃ち抜かれたからである。
「!?」
「な、なに!?」
 銃弾が飛んできた方向を見ると、サーシャ達の後から入って来る者がいた。
「何だか危険そうだったので、思わず撃ってしまったよ。あの男はキミ達の父親か何かかい?」
「サンモンド船長!?」
 マリアはその男に見覚えがあった。
 クイーン・アッツァー号で“魔の者”と戦った際、沈没しかかった船から助けてくれたことまでは覚えている。
「ていうか、全然違うし!あんたこそ、あの男のお茶飲み友達だったのかい!?」
 サーシャが言い返した。
「ははははっ(笑)、心外だな。さすがの私も、お茶飲み友達を狙撃するほど冷酷な男ではないよ」
 サンモンドは肩を竦めた。
「それより、お久しぶりですなぁ?アレクサンドラ・エヴァノビッチ殿」
「!!!」
「昔お会いした時は清楚なお嬢様だったのに、今では立派な筋肉質の逞しい女性になられて、小生、複雑な気持ちです」
「だ、黙れ!私はサーシャだ!」
「今、モメてる場合じゃない!ユウタが……!」
「稲生君は、どうしたんだい?」
「原因不明の熱病にうなされてるんだ。どこかで休ませないとマズい」
「ふーむ……。だったら、ちょうど良い部屋を見つけた。こっちだ。ついて来るといい」
 サンモンドはマリア達が来るより先に、この古城を探索していたのだろうか。

[同日22:30.魔道研究所1F医務室 稲生、マリア、サーシャ、サンモンド・ゲートウェイズ]

 医務室はちゃんとあった。
 だが、学校の保健室に毛を生やしただけの設備で、特に立派な医療設備があるわけでもない。
 それでも、ベッドに稲生を寝かせてあげることはできた。
「あの雨の中ずっと走り回ってたからね、風邪を引いたかもしれないんだ」
「なるほどね」
 サンモンドは稲生の額に濡らしたタオルを置いた。
「う……」
「ん!?」
 その時、一瞬稲生が薄目を開けた。
「どうした、船長?」
「い、いや……。(気のせいか?一瞬、稲生君の目がゾンビみたいなものに見えたんだが……)」
「さすが医務室だね。色んな薬が置いてある。これなんか、解熱剤じゃないのかい?」
「ああ。今は意識が無いから、注射するタイプでいいだろう」
「船長はどうしてここに?ていうか、サーシャを知ってるの?」
「最初の質問だが、“魔の者”が関わっていると聞いてここに来たんだ」
「やはり町の惨状は、“魔の者”が?」
「いや、まだ分からない。だが、どうもガセのような気がしてきたね。最後にこの城主から話を聞こうと探していたんだが、キミ達とのやり取りを聞いていて、何にも知らないことが分かった」
「だから、撃ち殺したのか!」
「あのまま私が何もしなかったら、キミ達が蜂の巣になっていたよ。あの男、後ろにガトリング砲を控えていたからね」
 その時、稲生がガクガクと体を震わせた。
「稲生!?」
「ユウタ!?」
「いかん!熱痙攣を起こしたか!?」
「か、かゆい……!」
 稲生の体が土気色に変色してきた。
 そして、稲生が全身の痒みを訴え出した。
「ちょ、ちょっと!?これ、本当に風邪の熱なのかい!?」
「風疹か何かか?」
「……非常にマズいことになっているかもしれない。どういう経緯でこうなったかは知らんが、恐らくこのままでは……」
 サンモンドは唇を噛みながら、マグナムリボルバーを船長服のポケットの中から出した。
 その銃口を稲生に向ける。
「お、おい!何をする!?」
「稲生君はゾンビ化する。そうなったら完全に手遅れだ。そうなる前に楽にして……」
「だ、ダメだ!」
「そうだよ!まだ助かるかもしれないじゃん!」
「助かる……かどうか……」
 マリアが言った。
「ここは魔道研究所で、薬師系魔道師達が色んな薬の研究をしていた所なんだろ?てことは、ユウタの病気を治す薬があるかもしれないじゃないか!」
「まあ、そうだけどね……」
「私も稲生には世話になった。このまま殺すなんて反対だね。難しいかもしれないけど、どうせ悔し泣きするんだったら、必死にあがいた後で泣けばいいさ」
「分かった。そこまで言うなら、キミ達の意見を尊重しよう。私はこの部屋を押さえておこう。この古城には、まだ化け物が徘徊しているみたいだからね。稲生君は私が全力で守ろう」
「……信じていいのか?」
「安心したまえ。もし化け物がやってきたら、私のマグナムとライフルで蜂の巣にしてやるさ。……それはつまり、稲生君が化け物になってもそうするということなんだけどね」
「分かった。急ごう」
「いいかい?稲生を殺すのは、本当に化け物になってからだよ?いいな!?」
「もちろんさ。私もこのような逸材を今すぐ殺すのは、本当は惜しい」

 マリアとサーシャは医務室を飛び出した。
「アアア……」
「ウウ……」
 医務室に美味しそうな獲物があることを嗅ぎ付けたゾンビ達がすぐ近くまでやってきていたが、もちろんサーシャの剣で首を跳ね飛ばされたり、マリアの魔法で真っ黒焦げにされた。
「どこへ向かう!?」
「まずは資料室だ!」
「オッケー!」
 2人は研究所の奥へと突き進んだ。
コメント (7)
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